令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容


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1 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
2 関連記事その他

1 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)434頁ないし438頁には,「情報通信技術を活用した裁判手続等の運用に必要な経費」として以下の記載があります。
(1) 民事訴訟手続のIT化のためのライセンス利用料等
<要求要旨>
    国民生活に関わる様々な分野でオンライン申請を始めとして,手続のIT化が進められ,それが広く受け入れられている状況にあることを踏まえれば,裁判所においても,民事訴訟手続のIT化を見据えて検討を進めていくことが必要であるところ,内閣官房における「裁判手続等のIT化検討会」の取りまとめを受けて,令和元年度から令和2年度にかけて,ウェブ会議等のITツールを積極的に利用した,より効果的・効率的な争点整理の運用(以下「フェーズ1の運用」という。)が第一次実施庁及び第二次実施庁において,順次開始されている。令和3年度には,IT化を更に推進するため,フェーズ1の運用を開始する庁を地方裁判所支部(第三次実施庁)の一部に拡大し,令和4年度には順次残りの地方裁判所支部に拡大していく必要がある。また,現在,法制審議会において民訴法の改正に向けた調査審議が進められており,令和4年中に法改正が実現した場合には,ウェブ会議を用いた非対面での和解期日等の運用(以下「フェーズ2の運用」という。)を同年度中に開始する必要があることから,少なくとも最高裁判所及び高等裁判所(支部を含む。)においてフェーズ1の運用やフェーズ2の運用(以下これを合わせて「ウェブ会議等の運用」という。)を開始する必要がある。
    そこで,最高裁判所及び高等裁判所(支部を含む。)におけるウェブ会議等の運用を開始するために必要となるLAN配線の敷設工事費用の経費を要求する。
    また,第一次実施庁,第二次実施庁及び第三次実施庁におけるウェブ会議等の運用のほか,最高裁判所及び高等裁判所(支部を含む。)でのウェブ会議等の運用開始に伴って,各庁において必要となるウェブ会議用ソフトのライセンス等の経費を要求する。さらに,ウェブ会議等の運用に当たっては,インターネット上で実際の事件情報を取り扱うところ,事件当事者の個人情報等を保護するため,適切な情報セキュリティ対策を施す必要があることから,必要なセキュリティ対策を徹底するための経費を要求する。

(2) ウェブ会議等の円滑な運用を進めるための支援業務費用
<要求要旨>
    令和元年度より,Microsoft365 を用いて,ウェブ会議等のITツールを活用した争点整理の運用(以下「フェーズ1の運用」という。)を開始しているが,令和4年中の民訴法改正が実現した場合にはウェブ会議を用いた非対面での和解期日等の運用(以下「フェーズ2の運用」という。)も同年度中に開始する必要があり,フェーズ1の運用やフェーズ2の運用(以下これを合わせて「ウェブ会議等の運用」という。)においてウェブ会議等を活用していく中では,不正アクセスや回線の故障のほかソフトウェアの不具合などに起因する,単なる使用方法の不明点の照会だけでは解消しない様々な障害が生じることが予想される。ウェブ会議等の運用を円滑かつ安定的に進めていくためには,障害発生時における原因の切り分けやその後の復旧対応等を迅速に行うことが重要であるところ,専門的な知識を有しない裁判所の職員がそれらの対応を行うことは不可能である。
    そこで,ウェブ会議等の運用を円滑かつ安定的に進めるために,専門業者に対し,障害発生時の対応等を行う運用支援の各業務を委託するための経費を要求する。

(3) 民事訴訟手続のIT化のためのウェブ会議用機器等の購入【要望】
<要求要旨>
    国民生活に関わる様々な分野でオンライン申請を始めとして,手続のIT化が進められ,それが広く受け入れられている状況にあることを踏まえれば,裁判所においても,民事訴訟手続のIT化を見据えて検討を進めていくことが必要であるところ,内閣官房における「裁判手続等のIT化検討会」の取りまとめを受けて,令和元年度から令和2年度にかけて,ウェブ会議等のITツールを積極的に利用した,より効果的・効率的な争点整理の運用(以下「フェーズ1の運用」という。)が第一次実施庁及び第二次実施庁において,順次開始されている。令和3年度には,IT化を更に推進するため,フェーズ1の運用を開始する庁を地方裁判所支部(第三次実施庁)の一部に拡大し,令和4年度には順次残りの地方裁判所支部に拡大していく必要がある。また,現在,法制審議会において民訴法の改正に向けた調査審議が進められており,令和4年中に法改正が実現した場合には,ウェブ会議を用いた非対面での和解期日等の運用(以下「フェーズ2の運用」という。)を同年度中に開始する必要があることから,少なくとも最高裁判所及び高等裁判所(支部を含む。)においてフェーズ1の運用やフェーズ2の運用(以下これを合わせて「ウェブ会議等の運用」という。)を開始する必要がある。
    そこで,運用開始となる裁判所のうち高等裁判所(支部を含む。)においてウェブ会議等の運用に必要となる機器等を整備するための経費を要求する。

(4) 民事訴訟手続のIT化に係るシステム(e 事件管理)開発等
<要求要旨>
    「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ ―「3つのe」の実現に向けて― 」における内閣官房の取りまとめ結果によると,「3つのeの検討・準備にいずれも着手した上で,そのうち実現可能なものから速やかに,段階的に導入していき,柔軟な見直しを図りつつ,IT化の全面実現に向けた環境整備を順次,かつ確実に進めていくのが相当」との提言があるところ,このうち,職員向けのe 事件管理システムの大部分については,法改正を経ることなく実現することが可能であり,法改正後のフェーズ3への対応を意識し,IT化の全面実現に向けた環境整備を進めていくためにも,クラウド環境への移行を前提としたe 事件管理システムを速やかに設計・開発して段階的に導入していくことが相当である。
    また,このように,e 事件管理部分について先行開発を行って段階的に導入していくことは,法改正後のフェーズ3への円滑な移行に資するものであることから,本システムの開発等に係る経費を要求する。

(5) 民事訴訟手続のIT化に係るシステム開発のための法改正等に伴う要件定義及び調達支援業務並びに移行設計方針策定
<要求要旨>
    未来投資戦略2017等を踏まえ,最高裁判所では,平成30年度に,様々な選択肢が考えられるIT化の範囲,手段又は費用の大枠を把握するためのコンサルティングを実施し,令和2年度には,全面IT化後の民事訴訟の業務フローの整理,システム構想の全体像と全体計画の明確化及び具体的なシステムの開発手法や導入展開方法を策定するためのコンサルティングを実施した。
    また,令和2年2月,法制審議会の専門部会である「民事訴訟法(IT化関係)部会」が設置され,この専門部会での調査審議を経て「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」等が取りまとめられ,令和4年中の関係法律の改正を目指すこととされている。
    そして,令和3年度には,上記全体計画を踏まえ,令和4年度からのシステム開発(令和5年度に先行リリースを目指す裁判事務処理システム(民事及び家事事件)(以下,「MINTAS」という。)相当機能のe 事件管理システムの開発に向けた要件定義)及び令和5年度からのシステム開発(残りのe 事件管理システム及びe 提出システム等)に向けた要件定義を実施する。
    以上の経過を踏まえ,本要求にかかる令和4年度においては,前記の令和5年度からのシステム開発に向けた要件定義について,法改正内容を踏まえた修正等を行う必要がある。また,令和7年度のフェーズ3実現時に,令和5年度に開発するシステムも含めて,e 法廷,e 提出及びe 事件管理の「3つのe」に係るシステムが整合的に稼動するよう,将来的な移行方針も定めておく必要がある。
    そこで,(1)令和3年度要件定義において明確に定義できなかった事項や変更点等について,令和4年の法改正の内容を踏まえた修正等を行うための経費及び(2)令和7年度にフェーズ3を実現するシステムを運用開始することを前提に,先行導入されている「e 法廷」(現在Teams を活用して運用している。),「e 提出」(クラウド(MicrosoftAzure)上に開発している。)及び「e 事件管理」(令和4年度から先行開発するシステム及び既存システム(オンプレミス上で稼動している裁判事務支援システム(NAVIUS)及びMINTAS等の諸システム。))からのスムーズな移行及び将来的な運用方針を立てるための経費を要求する。
    なお,こうした作業を裁判所職員のみで行うことは非常に困難であり,外部の知見も活用しつつ検討を進めていくことが必須である。

(6) 民事裁判書類電子提出システムに係るクラウド基盤の提供,運用・保守及び展開支援
<要求要旨>
    「3つのe」のうち,e提出の一部について,現行法上可能な範囲で先行実施するために,令和2年度から令和3年度にかけて開発した民事裁判書類電子提出システム(以下,「本システム」という。)の運用保守を行うための経費を要求する。
    具体的には,本システムは,令和3年度中に2庁について先行導入される予定であり,令和4年度以降,導入範囲を拡大する予定になっているところ,本システムで使用するクラウドサービスの提供,運用業務,ユーザサポート業務及びアプリケーション保守業務並びに令和4年度から令和5年度にかけて導入される各庁への導入支援を行うことで,本システムの安定的な稼動及び円滑な導入を実現するための経費を要求する。

(7) 民事裁判書類電子提出システムの改修等
<要求要旨>
    本システムは民事裁判事務における利用を想定して開発されたシステムであるところ,令和2年度及び令和3年度の開発は,小規模な運用開始を念頭においた必要最小限度の機能を実装するものであった。前記のとおり,令和4年度以降,導入範囲を拡大すると,利用業務及び利用者の範囲の拡大並びに利用事件数の増加が見込まれることから,これらに対応し,より合理化・効率化された裁判事務を実現するための機能を実装して,当事者及び裁判所職員の利便性を高めた利用しやすいシステムとし,また将来的にフェーズ3で必要になると思われる機能を実装することで,当事者及び裁判所職員に対してフェーズ3の円滑な導入を図るためにも,そのために必要な改修の経費を要求する。

2 関連記事その他

(1) 二弁フロンティア2021年10月号「裁判IT化の現在地」が載っています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
・ 最高裁判所の国会答弁資料
・ 最高裁及び法務省から国会への情報提供文書
・ 裁判所をめぐる諸情勢について
・ 裁判所の情報化の流れ
 歴代の最高裁判所情報政策課長
 最高裁判所事務総局情報政策課
 最高裁判所事務総局情報政策課の事務分掌
 裁判所における主なシステム
 民事事件の裁判文書に関する文書管理
 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達
 最高裁総務局・人事局・情報政策課との座談会


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