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裁判所における主なシステム―J・NET,RoootS,TreeeS,mints,NAVIUS及びKEITAS(AIリライト)

第1 本記事の対象と結論

1 「裁判所における主なシステム」の範囲

本記事は,令和8年8月9日現在の公表資料に基づき,裁判所の共通情報基盤,裁判事務に用いる事件管理システム及び国民・訴訟代理人が直接利用できるオンラインサービスを整理するものである。裁判所内部の全システムを網羅した公開台帳は確認できず,セキュリティ上公表されない構成もあるため,公表された予算書,調達資料,通達及び利用案内から名称と役割を確認できた範囲を扱う。

平成27年度の資料に掲載された一覧は,当時の構成を知る歴史資料としては有用であるが,令和8年現在の一覧ではない。現在は,民事分野ではRoootS,TreeeS及びmintsが,刑事・少年分野ではKEITAS,NAVIUS及び最高裁判所事件管理システムが重要であり,共通基盤についてもJ・NETを維持しながらGSSへ移行する過程にある。

2 現行システムの見取り図

区分主な名称主な利用者・役割令和8年8月9日現在の位置付け
共通情報基盤J・NET(司法情報通信システム)裁判所の回線,ネットワーク機器,共通サーバ等現行。GSSへの移行作業と併存
共通業務環境GSS,Microsoft 365,courtsクラウド裁判所職員の端末,ネットワーク,コミュニケーション及びクラウド基盤移行・運用中
民事事件管理RoootS裁判所職員による事件情報・期日等の管理令和6年7月サービスイン,令和7年1月に全裁判所へ導入
民事の「3つのe」TreeeSRoootS,e提出・e記録管理及びe法廷連携を含むシステム群開発・改修が継続中
民事の外部利用mints当事者・代理人による電子提出,受領及び記録閲覧現行。令和8年5月21日以後の新規民事訴訟に全面適用
刑事・少年事件管理KEITAS,NAVIUS,最高裁判所事件管理システム地裁刑事,簡裁刑事・家裁少年・高裁刑事,最高裁の事件管理現行。後継システムを段階開発中
民事執行・倒産等民事執行事件処理システム,倒産事件処理システム,債権執行事件管理プログラム,督促手続オンラインシステム執行・倒産・督促の事務処理現行。クラウド・GSS対応等を実施中
裁判員・検察審査会裁判員候補者名簿管理システム,裁判員量刑検索システム,検察審査員候補者名簿管理システム候補者名簿・選任事務,量刑資料,検察審査会事務現行。クラウド移行やオンライン化を実施中

この表の「現行」は,公表資料から運用又は運用保守を確認できるという意味である。調達資料に名称があることだけで,利用範囲,画面,権限,障害状況又は個別機能まで公表されているとは限らない。

第2 共通情報基盤及び司法行政のシステム

1 J・NET(司法情報通信システム)

J・NETは,各裁判所を結ぶ情報通信基盤である。平成30年の調達資料では,裁判所のメール,DNS,DHCP及びディレクトリ管理等の基盤機能を提供し,ネットワーク機器と各拠点を接続する回線を含むものと定義されていた。

令和8年度裁判所歳出概算要求書にも,司法情報通信システムの運用・改修経費として,J・NETデータセンタ分,最高裁分及び下級裁分が計上されている。したがって,令和8年現在もJ・NETは現行基盤であり,既に全面廃止されたと扱うことはできない。

2 GSS,courtsクラウド及びMicrosoft 365への移行

デジタル庁のGSS(ガバメントソリューションサービス)は,政府機関に標準的な業務用端末,ネットワーク,クラウドサービス等を提供する共通業務環境である。デジタル庁は,最高裁判所及び下級裁判所のGSS移行に係るネットワーク環境構築・保守を調達しており,最高裁も各業務システムについてGSS接続及びcourtsクラウドへの移行を進めている。

もっとも,GSSへの移行は,J・NETという名称の現行経費が直ちに消滅したことを意味しない。予算書・調達資料は,J・NETの運用と,GSS接続・クラウド移行の双方を掲げているため,記事上は「J・NETからGSSへの移行過程」と表現するのが正確である。

令和8年度の契約情報では,Microsoft 365等のライセンス調達も確認できる。平成23年以降の標準ワープロがMicrosoft Wordであったという従来記事の記載は歴史として残るが,現在の共通業務環境を説明するには,Microsoft 365を含む総合コミュニケーションツールの運用まで触れる必要がある。

3 司法行政・共通事務の主なシステム

令和8年度裁判所歳出概算要求書からは,裁判統計データ処理システム,保管金事務処理システム及び最高裁判所汎用受付等システムの運用又は改修を確認できる。これらは,事件の審理そのものを行うシステムというより,統計,保管金及び受付等の司法行政・共通事務を支えるシステムである。

令和8年度の調達予定には,「法令・判例等検索システム」と「法律雑誌等検索システム」が別案件として掲げられている。令和2年度から令和6年度までの第一法規株式会社との契約は期間が満了しているため,過去の契約先を現在の提供事業者であるかのように記載してはならない。

第3 民事裁判及び民事関係手続のシステム

1 RoootS

家事事件手続等のデジタル化に伴うシステム改修の調達仕様書は,RoootSを,全国の民事訴訟手続等並びに一部の非訟・家事事件手続等のe事件管理のためのシステムと定義する。裁判所職員が,事件番号,事件名,担当部,担当裁判官・書記官,当事者及び期日等の事件情報を管理するための内部システムであり,弁護士や当事者が直接ログインするmintsとは利用者が異なる。

RoootSは令和6年7月にサービスインした。電子納付に関する裁判所の案内によれば,令和7年1月6日に最高裁判所を含む全ての裁判所へ導入された。従前の「裁判事務処理システム(民事)」や簡裁民事等の複数の事件管理を,現在の民事分野ではRoootSを中心に把握する必要がある。

2 TreeeSとmintsは同義ではないこと

前記調達仕様書は,TreeeS(ツリーズ)を,RoootS,e提出・e記録管理システム及びe法廷のためのウェブ会議アプリケーションとの連携機能等を含む,「3つのe」を実現するシステム群の総称と定義する。他方,裁判所のmints案内は,mintsを,インターネットで裁判所へ書類を提出し,裁判所から書類を受領する際に使用する民事裁判書類電子提出システムと説明している。

したがって,TreeeS,RoootS及びmintsを一つの名称に置き換えることはできない。裁判所の公開案内は,外部利用者向けの現行サービス名としてmintsを用い,調達仕様書はRoootSとe提出・e記録管理等を含むシステム群をTreeeSと呼んでいる。本記事では,公表資料ごとの呼称と利用者の違いを維持する。

3 令和8年5月21日以後のmints

裁判所の民事裁判手続デジタル化ページによれば,令和8年5月21日に改正民事訴訟法等が施行された。同日以後に提起された民事訴訟事件では,事件の種類を問わずmintsを利用でき,弁護士等の訴訟代理人にはオンライン利用が義務付けられる一方,本人訴訟の当事者もアカウントを登録して利用できる。対象事件はmintsを利用できる裁判所と対象事件,義務者と例外はmintsの義務化はいつからか,本人当事者の利用はmintsと本人訴訟でそれぞれ扱っている。

mintsでは,書類の電子提出・受領だけでなく,電子化された事件記録の閲覧も行う。もっとも,令和8年5月21日の全面施行は,家事事件,人事訴訟,民事執行,倒産,民事保全,非訟事件等の全てが同日にmintsへ統合されたことを意味しない。

4 e法廷,Webex及びcourts Wi-Fi

民事裁判手続の「e法廷」ではウェブ会議が利用される。令和8年度の調達予定にはCisco Webexのライセンス提供・運用支援が掲げられており,courts Wi-Fi利用規約は,法廷等でmintsやウェブ会議を利用する来庁者向けのインターネット回線を定めている。

これらは互いに役割が異なる。mintsは提出・受領・記録閲覧,Webexはウェブ会議,courts Wi-Fiは来庁者向け通信回線であり,いずれもJ・NETそのものを外部利用者に開放するものではない。

5 民事執行,倒産,債権執行及び督促

令和8年度裁判所歳出概算要求書から,民事執行事件処理システム,倒産事件処理システム及び債権執行事件管理プログラムが運用・改修の対象として存続していることを確認できる。令和8年1月の契約情報では,民事執行事件処理システムのcourtsクラウド対応,GSS接続,移行及び運用保守も確認でき,同システムを利用した事務処理の運用通達も令和6年1月に改正されている。

督促手続オンラインシステムは,支払督促のオンライン申立て等に用いる独立した公開システムであり,mintsの全面施行後も運用保守・改修の調達が予定されている。したがって,「民事手続のオンラインシステムは全てmintsに統一された」という整理は誤りである。

家事事件,人事訴訟及び非訟事件等については,令和8年6月9日付けの公募資料が,RoootS・TreeeSの改修を令和10年3月までにサービスインする予定を示している。これは将来予定であり,令和8年8月現在に導入済みであるとは記載できない。

第4 刑事・少年事件のシステム

1 KEITAS

令和8年度の調達予定は,刑事裁判事務支援システムの運用保守及びGSS対応改修を掲げており,同システムが現行であることを確認できる。また,最高裁判所の令和7年版司法行政文書ファイル管理簿は,その名称を「刑事裁判事務支援システム(KEITAS)」と記載する。従前記事の「裁判事務処理システム(刑事)」は,現在の地裁刑事分野については,公表資料に基づきKEITASと整理すべきである。

2 NAVIUS及び最高裁判所事件管理システム

令和8年度の調達予定は,裁判事務支援システム(NAVIUS)の運用保守等を掲げる。また,令和7年11月10日付けの公募公告は,簡裁刑事,家裁少年及び高裁刑事の現行システムをNAVIUS,地裁刑事の現行システムをKEITAS,最高裁の現行システムを最高裁判所事件管理システムと明記していたが,同公告の当時の公開URLは令和8年8月9日現在,閲覧できない。

令和8年度裁判所歳出概算要求書は,最高裁判所事件管理システムの運用保守経費を独立項目として掲げている。したがって,現在の機能区分は,簡裁刑事,家裁少年及び高裁刑事がNAVIUS,地裁刑事がKEITAS,最高裁が最高裁判所事件管理システムである。

従前記事にある「少年事件処理システム」「高裁事件管理システム(刑事)」「簡裁事件管理システム(刑事)」は,平成27年度当時の名称としては残り得るが,現在の一覧ではNAVIUSに置き換えて説明する必要がある。また,「裁判事務処理システムの正式名称は裁判事務『支援』システムと思う」という従前記事の推測には根拠がなく,削除すべきである。

3 刑事新システムの二段階開発

刑事新システムは二段階で開発されている。令和7年10月の情報提供依頼書によれば,第1段階では,電子データのオンライン発受,電子記録の作成・管理及び令状事件管理の機能を令和9年3月までに,地方裁判所で使う現行システムの後継となる事件管理機能を令和10年5月までに開発する想定である。

第2段階では,簡易裁判所,家庭裁判所,高等裁判所及び最高裁判所の現行事件管理システムの後継機能等を令和11年3月までに開発する想定である。これらは調達時点の開発予定であり,各期限までに全機能が実運用に入ったと先取りして記載してはならない。

第5 裁判員,検察審査会及び外部向けシステム

1 裁判員関係

裁判員候補者名簿管理システムは,候補者名簿及び選任事務を支える現行システムである。令和8年1月の契約情報では,GSS接続,courtsクラウドへの移行,改修及び運用保守が契約されている。

令和8年度裁判所歳出概算要求書は,裁判員量刑検索システムの運用・改修経費も掲げている。これは裁判員裁判における量刑判断の参考資料を検索する裁判所内部のシステムであり,一般向けの裁判員制度ページとは区別される。

2 検察審査会関係

検察審査会行政文書の管理に関する通達は,検察審査員候補者名簿管理システムを現行の文書管理先として明記する。令和8年度裁判所歳出概算要求書には,同システムの端末・運用保守のほか,検察審査会への審査申立てをオンライン化するシステムの設計・開発及び運用保守経費も計上されている。

候補者名簿管理と,審査申立てのオンライン化は別の機能である。後者は開発・予算化の段階を含むため,現行の申立方法が全てオンラインに切り替わったと記載することはできない。

3 国民が直接利用できる主な公開システム

国民又は代理人が直接利用できるものとしては,①mints,②督促手続オンラインシステム,③不動産競売物件情報サイト(BIT),④裁判例検索,⑤司法統計検索及び⑥保管金の電子納付がある。

裁判例検索に掲載されるのは全裁判例ではない。また,公開検索サービスと,裁判所職員が利用する内部の「法令・判例等検索システム」は,利用者と収録範囲が異なるため,同一のシステムとして扱わない。

第6 平成27年度資料から現在までの変更

1 平成27年度資料の位置付け

裁判所における主なシステム(平成27年度判事任官者実務研究会の資料)には,J・NET,人事事務処理,裁判統計,保管金,裁判事務処理,音声認識,裁判員候補者名簿,量刑検索,民事執行,債権執行,倒産,少年,簡裁事件管理,督促手続及び検察審査員候補者名簿等のシステムが記載されていた。

この一覧は平成27年度時点の概念図であり,現在も全名称が独立した現行システムとして存続することを示すものではない。現在の公表資料に合わせると,民事の事件管理はRoootS・TreeeS・mints,地裁刑事はKEITAS,簡裁刑事・家裁少年・高裁刑事はNAVIUS,最高裁は最高裁判所事件管理システムという区分になる。

2 現行性を確認できない旧項目

平成27年度資料の「音声認識システム」については,現在も独立した主要システム名として稼働していることを公表資料から確認できなかった。裁判所がデジタル録音機を調達し,録音反訳業務を委託していることとは別問題であるため,廃止とも現行とも断定しない。

同資料の「民事執行事件配当管理プログラム」についても,令和7年度・令和8年度の主要調達資料から独立した現行名称を確認できなかった。民事執行事件処理システム及び債権執行事件管理プログラムの現行性は確認できるが,配当管理プログラムまで同様に現行であるとは推測しない。

3 霞が関WAN及び過去の検索契約

霞が関WANは平成24年末に運用を終了し,政府共通ネットワークへ移行した。金融庁の業務・システム最適化実績評価資料にも,霞が関WANの終了と政府共通ネットワークへの移行が記載されている。現在は政府共通ネットワークも新たな政府共通の業務実施環境に置き換えられており,裁判所について記載すべき現在の動きはGSSへの移行である。

また,令和2年4月1日付けの法令・判例等検索システム契約は,令和6年度までの契約である。令和8年度は新たな法令・判例等検索と法律雑誌等検索の調達予定があるが,受注者が確定する前に過去の受注者名を現在の提供者として書くべきではない。

第7 システム一覧を読む際の注意点

1 名称だけでは手続の実像を示さないこと

民事裁判のデジタル化では,法律・規則だけでなく,システムの仕様,入力項目,画面,初期設定,アクセス権及び外部システムとの連携が実際の手続を具体化する。内海博俊「各種仕様等の重要性とルール形成のあり方」(法律時報95巻11号50頁~55頁)は,仕様等の透明性,説明責任及び調達の在り方を含めて検討する必要を指摘する。

したがって,システム名を並べるだけでは足りず,少なくとも,誰が利用するか,どの事件・審級を扱うか,何を入力・提出・閲覧できるか,現行か開発予定かを区別する必要がある。

2 本人確認,セキュリティ,障害及び代替手段

東京弁護士会法友会編『実務が変わる!Q&A民事裁判手続IT化』(ぎょうせい,2021年)44頁~48頁は,事件管理システムについて,本人確認,ユニバーサルデザイン,情報セキュリティ,バックアップ,保守及び処理能力の確保を論点として挙げる。システム障害時には,期限遵守や手続保障との関係で代替提出方法と救済の検討が必要になる。

田中敦編集・民事裁判実務研究会編著『民事裁判実務論点大系』(ぎょうせい,2025年)132頁~140頁が示すとおり,裁判手続のデジタル化は紙を電子ファイルに置き換えるだけではなく,審理・事件管理,データ活用及び本人訴訟支援を含む業務改革として捉える必要がある。

3 生成AIに関する契約の位置付け

令和8年1月には,「裁判事務における生成AI利用の将来検討に向けた検証支援」の契約が公表されている。これは将来利用の検証支援であり,生成AIが裁判官の判断を自動化する現行システムとして導入されたことを意味しない。

公表資料から確認できる範囲を超えて,具体的な利用場面,入力データ又は導入時期を推測すべきではない。検証契約と本番システムの導入を区別することが必要である。

第8 関連記事

裁判所のデジタル化の経緯については,裁判所の情報化の流れを参照されたい。

民事分野の各システムの関係については,最高裁判所が開発しているmints,RoootS及びTreeeS(AIリライト)を参照されたい。

mintsの具体的な利用については,mintsの実務解説 弁護士向けQ&A―電子申立て・証拠提出・送達・障害対応(AI作成)を参照されたい。

裁判文書との関係については,民事事件の裁判文書に関する文書管理及び裁判文書の文書管理に関する規程及び通達を参照されたい。

第9 出典・参考資料

1 裁判所の一次資料

民事裁判手続のデジタル化及びmintsについて

家事事件手続等のデジタル化に伴うe事件管理システム・e提出・e記録管理システムの改修等業務一式に関する令和7年7月2日付け公募資料

TreeeS・RoootSの改修に関する令和8年6月9日付け公募資料

刑事手続デジタル化に係るシステムの設計・開発(第2段階)等業務に係る令和7年10月情報提供依頼書及び令和7年11月10日付け公募公告(当時の公開URLは令和8年8月9日現在閲覧不可)

令和8年度裁判所歳出概算要求書

令和8年度10万SDR以上調達予定案件

令和8年1月分の契約情報

民事執行事件処理システムを利用した事務処理の運用について

courts Wi-Fi利用規約督促手続オンラインシステム及び保管金の電子納付

検察審査会行政文書の管理の実施等について

2 政府共通基盤に関する資料

①デジタル庁ガバメントソリューションサービス

②デジタル庁最高裁判所及び下級裁判所のGSS移行に係るネットワーク環境構築・保守の意見招請結果に対する回答

③金融庁平成23年度業務・システム最適化実績評価資料

3 参考文献

①内海博俊「各種仕様等の重要性とルール形成のあり方」法律時報95巻11号(日本評論社,2023年)50頁~55頁

②東京弁護士会法友会編『実務が変わる!Q&A民事裁判手続IT化』(ぎょうせい,2021年)44頁~48頁

③田中敦編集・民事裁判実務研究会編著『民事裁判実務論点大系』(ぎょうせい,2025年)132頁~140頁