目次
第1 首席書記官の法的位置付け1 首席書記官とは何か―担当書記官との違い2 首席書記官を置く裁判所と種類3 首席書記官は裁判官や担当書記官の判断を変更できるか第2 一般執務の指導監督1 査閲の対象と重点事項2 部門間調整,企画及び人事・研修への関与3 首席書記官を補佐する役職第3 首席書記官がつかさどる訟廷事務1 現行通達の23項目2 デジタル化対応の意味3 事件記録の保存及び国立公文書館への送付第4 支部及び管内下級裁判所に対する権限1 所属裁判所の支部2 管轄区域内の下級裁判所第5 査閲,査察及び個別検査1 査閲と査察の違い2 書記官事務等の査察における役割3 保管金,押収物及び事件記録の個別検査第6 裁判利用者から見た首席書記官の職務の射程1 事務運用上の問題と個別事件の判断は異なる2 関連記事第7 出典・参考資料1 法令・最高裁判所規則2 最高裁判所通達3 裁判所の公開説明
第1 首席書記官の法的位置付け
1 首席書記官とは何か―担当書記官との違い
下級裁判所の首席書記官(しゅせきしょきかん)は,裁判所書記官等の一般執務を指導監督し,事件受付・記録管理などの訟廷事務をつかさどる役職である。
裁判官及び担当書記官の法令上の権限との関係を区別しながら,仕事内容,次席・主任書記官との違い及び利用者が確認すべき事項を整理する。
職務の説明には,令和8年5月21日から実施された運用通達を用い,同年10月15日に現行の掲載版を確認した。
首席・次席・主任等の役職比較,職制上の段階の対応及び給与資料の読み方は,それぞれの説明箇所を参照されたい。
裁判所法60条は,個々の裁判所書記官について,事件に関する記録その他の書類又は電磁的記録の作成及び保管,法令・判例の調査補助その他の法令上の事務を定める。また,裁判所書記官は職務上裁判官の命令に従う一方,書類又は電磁的記録の作成若しくは変更を命じられ,その作成又は変更を正当でないと認めるときは,自己の意見を書き添え,又は記録することができる。
これに対し,首席書記官の中心的な職務は,個別事件の裁判判断ではなく,裁判所書記官及び裁判所速記官の一般執務を指導監督し,訟廷事務をつかさどることである。担当書記官が個別事件で行う法定事務と,首席書記官が組織全体について行う管理・調整とは区別する必要がある。
個々の書記官の仕事内容,裁判所事務官との違い及び養成・任命までの経路は,裁判所書記官とはで説明している。
本記事は,そのうち首席書記官が担う指導監督・訟廷事務等に対象を絞るものである。
裁判利用者が用件を整理する際には,次の違いを押さえておくと理解しやすい。窓口の名称や担当範囲は裁判所ごとに確認する必要がある。
立場中心となる職務利用者が区別すべき点担当書記官担当事件の記録・手続に関する法定事務事件番号を示して確認する手続上の用件首席書記官書記官等の一般執務の指導監督及び訟廷事務の管理組織としての事務運用・管理と,個別事件の判断の区別裁判官事件の審理及び裁判首席書記官の管理職としての権限と,裁判官の司法判断の区別
2 首席書記官を置く裁判所と種類
大法廷首席書記官等に関する規則1条及び2条により,最高裁判所には大法廷首席書記官,小法廷首席書記官及び訟廷首席書記官が置かれる。大法廷首席書記官は最高裁判所の裁判所書記官の一般執務を指導監督して訟廷事務をつかさどり,訟廷首席書記官はその命を受けて訟廷事務をつかさどるほか,大法廷及び小法廷の庶務を整理する。
同規則3条及び3条の2により,高等裁判所及び指定地方裁判所には民事・刑事の首席書記官,指定家庭裁判所には家事・少年の首席書記官,その他の地方裁判所及び家庭裁判所には首席書記官が置かれる。指定簡易裁判所にも民事・刑事の首席書記官又は首席書記官が置かれ,知的財産高等裁判所には知的財産高等裁判所首席書記官が置かれる。
3 首席書記官は裁判官や担当書記官の判断を変更できるか
同規則8条は,首席書記官,次席書記官,裁判部企画官その他同規則上の役職者の権限が,裁判所法その他の法令に定める裁判官,裁判所書記官及び裁判所速記官の権限に影響を及ぼし,又はこれを制限するものではないと定める。したがって,首席書記官は,裁判官又は担当書記官に代わって個別事件の司法判断を行う役職ではない。
第2 一般執務の指導監督
1 査閲の対象と重点事項
大法廷首席書記官等に関する規則の運用について第1の1によれば,首席書記官は,裁判所書記官等の事務が法律,規則,規程及び通達等に従って適正かつ能率的に処理されているかを査閲する。
査閲の重点事項は,①書類又は電磁的記録から成る事件記録等の作成・整理・保管・管理,②法令・判例等の調査補助,③帳簿諸票の備付け等,④送達・通知,⑤保管金・押収物等,⑥予納郵便切手・収入印紙,⑦録音反訳の利用,⑧速記及びその関連事務である。
紙の記録の保管だけでなく,電磁的記録の管理も組織として点検する職務である。
2 部門間調整,企画及び人事・研修への関与
首席書記官は,査閲結果その他の事情から必要があると認めるときは,部相互間の事務を調整し,裁判所書記官等に指示を与え,又は指導する。また,事務を適正かつ能率的に処理するための施策を企画立案・実施し,勤怠,執務態度及び行状に留意して,必要な注意を与えることができる。
首席書記官は,指導監督に関して必要と認める事項について,当該職員が属する部の裁判官に意見を述べることができる。さらに,裁判所長等が職員の配置,昇格・昇給その他の身分上の処置又は研修・協議会の企画を処理するときは,当該職員を監督する首席書記官等の意見を聴くものとされている。もっとも,首席書記官が人事の最終決定権者になるわけではない。
3 首席書記官を補佐する役職
現行通達上,首席書記官は,総括主任書記官,主任書記官,主任速記官,訟廷管理官,訟廷副管理官,裁判員調整官,裁判部企画官又は速記管理官に指導監督を補佐させることができる。また,指導監督権限は,裁判所書記官の補助者として部に配置された裁判所事務官にも及ぶ。
令和6年最高裁判所規則第5号により設けられた裁判部企画官は,首席書記官の命を受けて,裁判所書記官等の一般執務に対する指導監督及び訟廷事務の企画・立案に参画する。現行制度は,首席書記官の職務を個別の事務点検だけでなく,組織運営及び業務設計として支える体制を置いている。
首席,次席,総括主任,主任,訟廷管理官及び裁判部企画官の役職体系と設置裁判所の違いは,裁判所書記官の役職を参照されたい。
首席書記官と次席書記官の違いは何か。
(続きを読む...)裁判所の首席書記官とは―仕事内容・権限,次席・主任書記官との違い(AIリライト)