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裁判所職員採用試験の得点分布と成績通知―平成29年度答申と現在の情報提供(AIリライト)

第1 得点分布の開示と個人の成績通知を区別する

裁判所職員採用試験について,全受験者の得点別人数や割合を知ることと,自分の試験結果の情報提供を受けることは,異なる手続・情報である。
得点分布に関する過去の不開示判断があることだけから,受験者本人も成績を確認できないと考えてはならない。

この記事では,平成28年度の得点分布を対象とした平成29年度の答申と,令和8年10月8日に確認した裁判所の個人成績通知の案内を区別して説明する。
試験区分,受験資格,科目及び採用までの全体像は,「裁判所職員採用試験とは―受験資格・試験科目・日程・倍率・採用まで」を参照されたい。

第2 平成29年度(最情)答申第21号が判断した対象

1 平成28年度の得点分布が分かる文書の開示申出

平成29年度(最情)答申第21号は,平成29年7月24日の情報公開・個人情報保護審査委員会の答申である。
件名は職員採用試験得点度数分布表の一部開示の判断に関するもので,開示申出の対象は,平成28年度の裁判所職員採用試験における得点分布が分かる文書であった。

最高裁判所事務総長は,第1次試験の基礎能力試験及び専門試験に係る得点度数分布表を対象文書として特定し,一部を不開示とした。
委員会は,この文書の特定及び一部不開示の判断を妥当とした。対象と結論は答申書1頁,対象文書の一覧は5頁に掲載されている。

2 第1次試験の得点別人数等に関する判断

答申書3頁では,不開示部分には各試験種目の得点別の受験者数,積算数及び割合が記載されていると認定されている。
したがって,この答申を「第1次試験の資料は一切開示されなかった」という意味で紹介するのは正確ではない。対象文書は一部開示され,その中の得点別人数等が不開示とされたものである。

最高裁判所事務総長は,試験種目ごとに下限の得点を定めて合否を決めていることを踏まえ,得点別人数等が開示されると,照会等の増加や適正な合否判定への支障が生じるおそれがあると説明した。
委員会はその説明を不合理とはいえないとし,適正な試験事務の遂行に支障を及ぼすおそれを理由に,当時の答申でいう行政機関情報公開法5条6号の不開示情報に相当すると判断した。

これは司法行政文書の開示判断を検討した委員会の答申であり,裁判所の判決ではない。
また,答申書は,司法試験の得点分布が公表されている一方,他の試験では公表事項が異なることも検討している。司法試験で公表されていることだけを理由に,裁判所職員採用試験でも同一の情報が公表されると判断することはできない。

3 第2次・第3次試験の得点分布に関する判断

苦情申出人は,小論文,専門記述,政策論文及び人物試験についても,得点分布が分かる文書は当然に作成されているはずだと主張した。
これに対し,最高裁判所事務総長は,特定した第1次試験の対象文書以外には,開示申出に該当する文書を作成・取得していないと説明した。

委員会は,試験方式等を考慮すると直ちに得点分布が分かる文書を作成する必要があるとはいえず,その説明を不合理とはいえないとした。
他に保有をうかがわせる事情も認められないとして,対象文書以外に開示申出に該当する文書を保有していないと認定した。判断理由は答申書3頁~4頁に掲載されている。

この認定は,平成28年度の資料について,当該開示申出及び答申の審査で判断されたものである。
それだけから,現在の全年度・全試験種目について,得点分布の資料が常に存在しないと一般化してはならない。

第3 現在案内されている個人の試験結果の情報提供

1 対象となる受験者

令和8年10月8日に確認した裁判所「採用試験に関するお知らせ」は,採用試験の第2次試験以降の全試験種目を有効に受験した者について,試験結果の情報提供の申出ができると案内している。
第1次試験を受験した全員が,この案内と同じ条件で成績通知を受けられるという意味ではない。

対象者であるか,必要な手続及び期間は,受験した試験の最新の公式案内を確認する必要がある。
全受験者の得点度数分布表に関する開示申出と,自分の試験結果についての情報提供の申出を取り違えないようにされたい。

2 マイページからダウンロードする方法

公式案内では,マイページの「成績通知書ダウンロード」ボタンから成績通知書を取得できる。
ダウンロード期間は,各試験の最終合格発表日の3週間後の日から,最終合格発表日の3か月後の日までとされている。

自分の試験の最終合格発表日を基準に期間を確認する必要がある。
他の試験区分の発表日を使ったり,受験日から3か月と読み替えたりしてはならない。

令和8年度の裁判所事務官の総合職(院卒者区分・大卒程度区分)及び一般職(大卒程度区分)は,最終合格発表日が7月29日である。公式申込サイトの8月19日付案内では,同日9時から成績通知書を取得でき,ダウンロード期限は10月29日(木)までとされている。対象は第2次試験以降の全試験種目を有効に受験した者であり,合格者だけに限るという意味ではない。

この10月29日期限を,最終合格発表日が異なる家庭裁判所調査官補又は一般職・高卒者区分の期限として使ってはならない。各区分の公式試験日程と,マイページの表示を確認されたい。

3 郵送で申出をする方法

郵送による方法では,公式案内に掲載された試験結果の情報提供の申出に関する書類を提出する。
申出期間は採用候補者名簿の有効期間満了日までで,公式案内は最終合格発表日から起算して1年と説明している。

最終合格発表日の翌日から申出をすることができるが,受付から返送までは3週間程度かかると案内されている。
オンラインのダウンロード期間と,郵送の申出期間は異なるため,マイページで取得できないことだけで,郵送の申出もできないと判断してはならない。提出書類と送付先は最新の公式案内を確認されたい。

第4 倍率や合格基準を調べるときの注意点

個人の成績通知だけから,全受験者の分布や,特定の順位にある者の採用可能性まで分かるわけではない。
また,実施結果に掲載された有効受験者数,合格者数及び倍率と,得点分布は別の情報である。

試験成績,最終合格及び採用を分け,資料がどの年度,試験区分及び段階を対象とするかを確認する必要がある。
人数等は「裁判所職員採用試験の倍率・合格最低点・採用者数―裁判所事務官等の年度別データ」,合格後の手続は「裁判所職員採用試験に最終合格した後は―採用候補者名簿・意向照会・採用漏れ」を参照されたい。

高裁別の合格最低点・最高点と,素点の下限・標準点の違いは,裁判所職員採用試験の合格最低点・合格最高点―高裁別・年度別の比較と標準点の読み方(AI作成)で説明している。個人の通知,合格者の最低点及び受験者全体の得点分布を区別して参照されたい。

第5 原資料と関連記事

① 平成29年度(最情)答申第21号―平成28年度の得点度数分布表等を対象とした答申書である。

② 裁判所・採用試験に関するお知らせ―個人の試験結果の情報提供について,現在の対象者,方法及び期間を確認できる。

③ 裁判所・試験の実施結果―年度別・試験別の人数や倍率を確認できる。

④ 平成26年度裁判所職員採用試験の採点処理ミス―24人の不合格判定と事後対応―平成26年度の採点処理の問題を扱う歴史資料の記事である。

⑤ 裁判所職員に関する記事の一覧―採用,職務及び研修に関する関連記事をまとめている。

⑥ 裁判所職員採用試験の試験結果の情報提供に関する事務取扱要領(平成28年3月23日最終改正)―以前から掲載している当時の取扱資料である。現在の申出方法・書式・期間は,第3の最新の公式案内と区別して確認されたい。

⑦ 裁判所・試験問題―公式に掲載された試験問題等への入口である。

第6 以前から掲載している通知書式等の参考画像

以下は,以前から本記事に掲載している総合職・一般職の試験結果通知書式及び平成26年度から平成30年度までの採用状況の画像である。
当時の参考資料として残しているものであり,現在の成績通知書の様式,申出方法及び直近年度の採用人数を示すものではない。現在の手続は第3の公式案内を確認されたい。

過去の総合職試験結果通知書式(裁判所事務官,大卒程度区分)

過去の一般職試験結果通知書式(裁判所事務官,大卒程度区分)

裁判所における男女別・試験別採用状況(平成26年度から平成30年度まで)