書記官事務等の査察


目次
1 裁判所における査察の種類
2 最高裁判所による査察の種類
3 大阪高裁の査察結果報告書
4 書記官事務査察とは裁判官査察のこととする意見
5 組織のパフォーマンスめちゃ下げマニュアルからの引用
6 関連記事その他

1 裁判所における査察の種類
(1) 裁判所は毎年,以下の事務について査察を行っています(書記官事務等の査察について(昭和61年6月30日付の最高裁判所事務総長通達))。
① 書記官事務
② 速記官事務
③ 訟廷事務
④ 書記官事務に関連する会計事務
⑤ 訟廷事務に関連する会計事務
(2) 書記官事務,速記官事務及び訟廷事務の査察の場合,査察事務担当者は,高裁及び地裁の民事首席書記官及び刑事首席書記官,並びに家裁の首席書記官です。
   書記官事務及び訟廷事務に関連する会計事務の査察の場合,査察事務担当者は,高裁の事務局次長,並びに地裁及び家裁の事務局長です。
(3) 書記官事務,速記官事務及び訟廷事務の査察の場合,査察実施事務代理者は,高裁及び地裁の民事次席書記官及び刑事次席書記官,並びに家裁の次席書記官です。
   書記官事務及び訟廷事務に関連する会計事務の査察の場合,査察実施事務代理者は,高裁の会計課長等,並びに地裁及び家裁の事務局次長等です。
(4) 査察事務担当者及び査察実施事務代理者は,査察実施事務を行うにあたり,被査察庁の全体的な事務処理の状況を把握し,是正又は改善を要する事務の発見及びその事務が執られていた原因の究明に努めるとともに,従前の査察において是正又は改善を要すると指摘された事務について,その後適正な措置が執られているかどうかを調査します。
(5) 査察事務担当者は,査察実施事務が終了した時は,所属の裁判所に対し,速やかに被査察庁ごとに査察の結果を書面により報告します。
(6) 査察庁は,管内の査察実施事務の終了した後2か月以内に,書記官事務,速記官事務及び訟廷事務の査察については総務局長あてに,書記官事務及び訟廷事務に関連する会計事務の査察については経理局長あてに,それぞれ査察の結果を被査察庁ごとに取りまとめた上,これに対する所見を付して,書面により報告します。

2 最高裁判所による査察の種類

(1) 最高裁判所は毎年,高等裁判所の以下の事務について査察を行っています(最高裁判所による書記官事務等の査察について(平成13年9月4日付の最高裁判所事務総長通達))。
① 書記官事務
② 速記官事務
③ 訟廷事務
④ 書記官事務に関連する会計事務
⑤ 訟廷事務に関連する会計事務
(2) 査察事務担当者は,大法廷首席書記官,小法廷首席書記官及び訟廷首席書記官であり,大法廷首席書記官が査察事務を統括します。
   書記官事務及び訟廷事務に関連する会計事務についての査察事務担当者は,経理局長です。
(3) 査察事務担当者及び査察実施事務代理者は,査察実施事務を行うにあたり,被査察庁の全体的な事務処理の状況を把握し,是正又は改善を要する事務の発見及びその事務が執られていた原因の究明に努めるとともに,従前の査察において是正又は改善を要すると指摘された事務について,その後適正な措置が執られているかどうかを調査します。
(4) 査察事務担当者は,最高裁判所に対し,査察の結果を速やかに報告します。

3 大阪高裁の査察結果報告書

(1)ア 大阪高裁管内の裁判所を対象とした,査察結果報告書を掲載しています。
① 平成28年度書記官事務等査察の査察結果報告書
② 平成28年度書記官事務及び訟廷事務に関連する会計事務査察結果報告書
イ ②の報告書の作成者が大阪高裁事務局次長となっていますから,大阪高裁が査察庁として実施したものであることが分かります。
(2) 東京高裁管内の裁判所を対象とした,令和元年度書記官事務等査察の査察結果報告書を掲載しています。

4 書記官事務査察とは裁判官査察のこととする意見

(1) 法は国民のために~FLORALAWブログフローラ法律事務所(愛知県豊川市。代表者は43期の早川真一 元裁判官)が運営しているみたいです。)の「1633 名古屋高裁管内にもあった原本に基づかない民事判決言渡しの裁判官(依願退官),当時の支部長の依願退官は詰め腹?」(2019年2月8日付)に以下の記載があります。

【書記官事務査察とは裁判官査察のこと】
20年,30年前の,この種の裁判官があちこちで見つかったことの反省からか
年に2回ほど書記官事務査察というのが励行されています。
本庁の幹部クラスが,全ての裁判記録を目を皿のようにして見てチェックをし,併せて書記官に指導をもするのです。
ただ,この書記官事務査察というのは,名ばかりで
実は裁判官のお仕事振りをチェックするという隠れた目的があるのです。
憲法では裁判官の独立が保障されていますので,裁判官に外部から影響を与えるのは表向き拙いとされています。
それで便宜上「書記官」事務査察と呼ばれているのです。
査察内容や問題点等は,上席裁判官とか所長裁判官にも知らされます。
支部のヒラ裁判官に問題があれば,支部長にも知らされるはずです。

(2) 「42期の山崎秀尚岐阜地家裁判事に対する懲戒処分(戒告)」には以下の記載があります。
   被申立人は,平成26年4月1日から平成30年3月31日まで名古屋地方裁判所岡崎支部判事の職にあった者であるが,その在任期間中の平成29年4月17日から平成30年3月30日までの間に,36件の民事訴訟事件について,民事訴訟法252条に違反して,判決書の原本に基づかずに判決を言い渡したものである。

5 組織のパフォーマンスめちゃ下げマニュアルからの引用

・ Senses Lab.HPの「営業組織をブチ壊したい人必見!サボタージュマニュアルとは?」には,CIAの前身だったOSS(戦略諜報局)が70年ほど前に作成した,組織のパフォーマンスめちゃ下げマニュアルからの引用として例えば,以下の記載があります。
6.些細なことにも高い完成度を要求せよ。わずかな間違いも繰り返し修正させ小さな間違いも見つけ出せ。
8.もっともらしくペーパーワークを増大させよ。
10.すべての規則を隅々まで厳格に適用せよ。
11.何事をするにも「通常のルート」を通して行うように主張せよ。決断を早めるためのショートカットを認めるな。
16.あらゆる決断の妥当性を問え。ある決定が自分たちの管轄にあるのかどうか、また組織上層部のポリシーと相反しないかどうかなどを問題にせよ。

6 関連記事その他

(1) 書記官事務査察は,最高裁判所事務総局総務局第三課が担当していますところ,同課には平成26年4月1日現在,訟廷企画係,訟廷調査第一係(民事関係),訟廷調査第二係(刑事関係)及び訟廷調査第三係(家事及び少年関係)があります。
(2) 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)227頁には「裁判所法第80条第2号に規定された監督権に基づく高等裁判所による管内の地方・家庭裁判所に対する査察,指導等及び裁判所法第80条第3号・4号に規定された監督権に基づく地方・家庭裁判所による管内の支部に対する査察,指導等」と書いてあります。
(3)ア 以下の資料も参照してください。
・ 民事上訴事件記録の送付事務について(令和3年6月18日付の最高裁判所訟廷首席書記官の事務連絡)
・ 民事上訴事件記録の送付事務について(令和3年7月20日付の東京高裁民事首席書記官の事務連絡)
・ メモに類する書面(記録外書面)の管理方法等について(平成29年2月2日付の東京高裁民事首席書記官の事務連絡)
・ 刑事上訴等事件記録送付要領について(令和3年6月25日付の東京高裁刑事首席書記官の事務連絡)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 上告審から見た書記官事務の留意事項
・ 最高裁判所事務総局総務局の事務分掌
・ 最高裁総務局・人事局・情報政策課との座談会
・ 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携
 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)


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