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家庭裁判所調査官の役職―首席・次席・総括主任・主任と家庭審議官の違い(AI作成)

第1 家庭裁判所調査官の役職を理解する前提

1 家庭裁判所調査官の基本的な職務

裁判所法61条の21項は,各家庭裁判所及び各高等裁判所に家庭裁判所調査官を置くと定めている。家庭裁判所では,家事事件の審判及び調停,人事訴訟法上の附帯処分等の裁判並びに少年審判に必要な調査等を担当し,高等裁判所では,家事事件の抗告審及び附帯処分等の裁判の控訴審に必要な調査等を担当する。

家事事件手続法58条及び59条によれば,家庭裁判所調査官は,家庭裁判所から事実の調査を命じられ,結果を書面又は口頭で報告し,報告に意見を付すことができる。また,家事審判の期日に立ち会って意見を述べ,家庭環境等の調整のために社会福祉機関との連絡その他の措置を行うことがある。

少年法8条及び9条によれば,少年事件では,少年,保護者又は参考人の取調べその他の調査を行い,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識を活用して,少年の行状,経歴,素質及び環境等を調査する。このように,家庭裁判所調査官は,行動科学等の専門的知見を裁判官の判断に結び付ける専門職である。

2 裁判官の命令と役職者による指導監督

裁判所法61条の2第4項は,家庭裁判所調査官が職務を行うについて裁判官の命令に従うと定めている。他方で,首席,次席,総括主任及び主任には,一般執務及び調査事務についての指導監督が予定されている。

この二つは同じ指揮命令関係ではない。家庭裁判所調査官執務必携4頁~7頁は,一般執務の指導監督が裁判官会議の司法行政上の監督を補充し,調査事務の指導監督が担当裁判官の命令を補充するものと説明している。役職者は専門的観点から助言,調整及び指導を行うが,担当裁判官の指示又は命令に反する方法で調査を指導することはできない。

第2 家庭裁判所における役職

1 首席・次席・総括主任・主任

首席家庭裁判所調査官等に関する規則及び関係通達に基づく家庭裁判所の職制は,次のとおりである。

役職主な配置単位職務の中心
首席家庭裁判所調査官家庭裁判所調査事務の監督,関係機関との連絡調整及び部門全体の運営
次席家庭裁判所調査官家庭裁判所本庁首席の職務全般の補佐
総括主任家庭裁判所調査官最高裁判所が指定する家庭裁判所及び支部複数の組又は担当分野を横断する指導監督
主任家庭裁判所調査官調査官の組組に属する調査官及び調査官補の直接的な指導監督
家庭裁判所調査官家庭裁判所及び高等裁判所裁判官の命令に基づく調査その他の法律所定の事務

すべての家庭裁判所及び支部に,これらの役職が同じ人数で置かれるわけではない。また,規則が用いる「首席家庭裁判所調査官等」という表現は,条項により首席だけでなく次席,総括主任又は主任を含むため,個別の役職名と規則上の総称を区別する必要がある。

2 首席家庭裁判所調査官と次席家庭裁判所調査官

首席家庭裁判所調査官は,裁判所法61条の2第3項に直接の根拠を持つ。最高裁判所は,家庭裁判所調査官の中から首席を命じ,調査事務の監督,関係行政機関その他の機関との連絡調整等を担当させることができる。

運用上の職務はこれより広く,調査事務の処理方針及び処理状況の把握,調査官の配置及び育成,研修並びに組織運営にも及ぶ。詳細は,首席家庭裁判所調査官の職務及び首席家庭裁判所調査官等に関する規則の運用通達に整理されている。

次席家庭裁判所調査官は,家庭裁判所本庁に置かれ,一般執務及び調査事務の指導監督並びに関係機関との連絡調整について首席を補佐する。大規模な家庭裁判所では複数の次席を置くことができるが,次席が独立して首席と並ぶのではなく,首席の職務を助ける関係にある。

3 総括主任家庭裁判所調査官と主任家庭裁判所調査官

総括主任家庭裁判所調査官は,最高裁判所が指定する家庭裁判所及び支部に置かれる。首席又は次席の下で,複数の組若しくは担当分野にまたがる調査事務を指導監督する役割を持つ。

主任家庭裁判所調査官は,調査官の組ごとに1人置かれ,その組に属する調査官及び調査官補の一般執務及び調査事務を指導監督する。裁判所の現在の職員紹介でも,主任が組の管理職として調査官相互の意見交換及び連携を支える様子が説明されている。

第3 家庭裁判所調査官の「組」と役職者の配置

1 調査官の組の構成

昭和62年3月19日付け「家庭裁判所調査官及び家庭裁判所調査官補の配置,組の構成等について」によれば,原則として1人の裁判官のために1組を配置し,1組は3人以上の家庭裁判所調査官又は家庭裁判所調査官補で構成する。必要がある場合には,複数の裁判官に1組を配置し,1人の裁判官に複数の組を配置し,又は2人で1組を構成することができる。

各組には主任家庭裁判所調査官を1人置く。首席,次席及び総括主任は原則として特定の組に属さないが,家庭裁判所が相当と認めた総括主任は特定の組に属し,主任の職務を兼ねることができる。

家庭裁判所及び支部に置くことのできる組の数は,「家庭裁判所調査官及び家庭裁判所調査官補により構成する組の数について」の別表で定められている。裁判所ウェブサイトで公開されているPDFの改正履歴は平成31年3月8日までであるため,現在の具体的な配置人数ではなく,組を置くことのできる上限を示す公開通達として読む必要がある。

2 複数の次席及び総括主任の指定通達

裁判所ウェブサイトで公開されている平成24年3月22日付けの複数次席指定通達は,26家庭裁判所を指定している。同通達上の員数は,東京及び大阪が各4人,名古屋及び福岡が各3人,横浜,さいたま,千葉,水戸,宇都宮,前橋,静岡,新潟,京都,神戸,金沢,広島,山口,岡山,長崎,熊本,那覇,仙台,福島,札幌,高松及び松山が各2人である。

平成17年2月24日付けの総括主任設置指定通達も,26家庭裁判所又は支部を掲げている。もっとも,公開PDFには現在の東京家庭裁判所立川支部への移転前の「東京家庭裁判所八王子支部」が記載されており,文書自体の日付も古い。そのため,これらの指定通達を現在の実在人員一覧として扱うことはできず,最新配置を確認するには別の人事資料が必要である。

第4 高等裁判所の家庭裁判所調査官

1 抗告審等における調査

高等裁判所の家庭裁判所調査官は,家事事件の審判に対する抗告審及び人事訴訟法上の附帯処分等の裁判の控訴審に必要な調査を担当する。裁判所法61条の2第1項は各高等裁判所に家庭裁判所調査官を置くと定めており,東京高裁及び大阪高裁だけに置かれる制度ではない。

平成20年の家庭裁判所調査官執務必携20頁~21頁は,高裁で調査が行われる例として,①原審で調査官調査が行われていない場合,②原審の事実認定に重大な誤りがあるとの新たな主張について調査を要する場合,③原審の調査結果に問題があり再調査を要する場合,④原審後に事情変更が生じた場合を挙げている。これは平成20年当時の執務資料であるが,高裁調査の補充的な場面を理解する手掛かりとなる。

2 上席の家庭裁判所調査官

首席家庭裁判所調査官等に関する規則5条は,高等裁判所における「上席の家庭裁判所調査官」を定めている。上席の家庭裁判所調査官は,高裁の家庭裁判所調査官の一般執務及び調査事務を指導監督する。

同執務必携21頁~22頁によれば,上席の家庭裁判所調査官は,補佐する調査官をあらかじめ指定できるほか,高裁における調査事務が適正かつ能率的に処理されるよう施策を企画立案し,高裁長官又は裁判官へ報告又は説明した上で,決定された施策及び裁判官の命令を実施する。ここでも,個別事件における裁判官の命令と,役職者による組織上の指導監督とを区別する必要がある。

3 高裁所在地を管轄する家庭裁判所の首席による調整

同規則1条4項により,高等裁判所は,その所在地を管轄する家庭裁判所の首席家庭裁判所調査官に対し,高裁管内の各家庭裁判所の首席が行う事務の調整を命じることができる。この首席は「所在地首席」と呼ばれることがあるが,高裁の命令に基づいて連絡調整を行うものであり,常に他の家庭裁判所の首席の上司になることを意味しない。

第5 家庭裁判所調査官補

1 裁判所法上の官職

裁判所法61条の3は,各家庭裁判所に家庭裁判所調査官補を置き,上司の命を受けて家庭裁判所調査官の事務を補助すると定めている。家庭裁判所調査官補は,若手の家庭裁判所調査官を便宜上「補」と呼ぶものではなく,裁判所法が定める別の官職である。

2 採用後の養成課程

家庭裁判所調査官補は,裁判所職員採用総合職試験によって採用される。採用後は,家庭裁判所調査官養成課程で約2年間,行動科学及び法律等の理論並びに実務を学び,修了後に家庭裁判所調査官へ任命される。

養成課程には,裁判所職員総合研修所における合同研修と所属庁における実務修習がある。所属庁では研修生が3人1組となり,指導担当者の下で実務に当たると説明されており,家庭裁判所調査官補の段階から組による教育及び事件処理が行われている。

第6 家庭審議官は家庭裁判所調査官の職階ではない

1 家庭審議官の法的地位と職務

最高裁判所事務総局規則3条の3は,最高裁判所事務総局に家庭審議官を置き,裁判所技官をもって充てると定めている。家庭審議官は,家庭裁判所制度に関する重要事項の企画に参画し,関係事務を調整する官職である。

したがって,家庭審議官は,首席,次席,総括主任及び主任と並ぶ家庭裁判所調査官の職階ではない。家庭裁判所調査官の役職表の最上段に家庭審議官を置くと,最高裁判所事務総局の官職と各家庭裁判所の職制を混同することになる。

2 家庭審議官が設けられた経緯

家庭審議官の規定は,昭和56年最高裁判所規則第1号によって設けられ,昭和56年4月1日に施行された。『最高裁判所とともに』84頁は,家庭裁判所調査官制度を継続的に検討し,調査官出身者の最高裁判所事務総局におけるキャリア上の位置付けを整える趣旨があったと説明している。

この沿革は,家庭審議官に家庭裁判所調査官出身者が充てられてきた背景を示すが,現在の規則上,家庭審議官を家庭裁判所調査官の役職と位置付ける根拠にはならない。

第7 採用案内上のキャリアと裁判所書記官との比較

1 採用案内が示すキャリアイメージ

裁判所職員採用案内は,地方裁判所及び家庭裁判所を基準としたキャリアイメージとして,家庭裁判所調査官から主任家庭裁判所調査官,次席家庭裁判所調査官及び首席家庭裁判所調査官へ進む図を掲載している。また,学歴又は採用年次だけによらず,選考によって管理職へ昇任する仕組みであると説明している。

この図は職員向けの概略であるため,指定庁に置かれる総括主任家庭裁判所調査官が省略されている。実際の職制を確認するときは,採用案内だけでなく,首席家庭裁判所調査官等に関する規則及び配置通達を併せて見る必要がある。

2 法的な職階の対応表ではないこと

同じ採用案内は,家庭裁判所調査官のキャリアと,裁判所書記官の役職のキャリアを並べて表示している。このため,採用案内上の段階として,主任,次席及び首席をおおまかに比較することはできる。

もっとも,両職種は根拠法令,職務及び個別事件における権限が異なる。採用案内上の図又は給与上の級が近いことから,両職種間の法的な上下関係又は一対一の指揮命令関係を導くことはできず,家庭審議官と大法廷首席書記官との比較も家裁調査官の職制比較には当たらない。

第8 令和8年度の予算定員と指定職俸給表

1 役職別の予算定員

令和8年度一般会計予算書の「裁判所所管 予算定員及び俸給額表」308頁~309頁によれば,年度末の予算定員は次のとおりである。

職名予算定員俸給表上の内訳
指定職の首席家庭裁判所調査官7人予算書は個別号俸を記載していない
行政職俸給表(一)の首席家庭裁判所調査官43人10級2人,9級22人,8級16人,7級3人
首席家庭裁判所調査官の合計50人指定職7人と行政職43人の合計
次席家庭裁判所調査官82人8級15人,7級67人
主任家庭裁判所調査官454人7級47人,6級407人
家庭裁判所調査官918人6級8人,5級371人,4級333人,3級183人,2級23人
家庭裁判所調査官補109人2級109人

この数は年度末の予算定員であり,特定の日に実際に在職する人数とは限らない。また,総括主任家庭裁判所調査官は独立した職名として表に現れないため,この予算書から現在の総括主任の人数を読み取ることはできない。

2 指定職の首席7人と平成30年の号俸

令和8年度予算書から確認できるのは,指定職俸給表の適用を受ける首席家庭裁判所調査官の予算定員が7人であることまでである。予算書は7人の勤務庁及び個別号俸を記載していない。

これに対し,平成30年6月6日付け最高裁判所裁判官会議議決は,東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台及び札幌の各家庭裁判所の首席家庭裁判所調査官を指定職俸給表2号俸としていた。同議決は平成30年7月1日施行の歴史資料であり,令和8年度にも同じ7庁及び同じ号俸が維持されていることを直接証明するものではない。

指定職の適用又は号俸は給与上の取扱いであり,異なる職種間の法的な序列を示すものではない。したがって,指定職2号俸であったことだけを理由に,高等裁判所の首席書記官より上位であると評価することはできない。

第9 首席・次席・総括主任の任命基準

1 固定的な任命基準を記載した文書の不存在

最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会令和3年度第43号答申は,首席,次席及び総括主任の任命基準を記載した文書について,最高裁判所が作成又は取得していないとした判断を妥当とした。

同答申に記載された最高裁判所事務総長の説明によれば,これらは人数の限られた上級管理職であり,個別の事情を考慮して適任者を任命するため,役職固有の固定的な基準を定めていない。したがって,「首席等の任命基準がない」という表現は,固定的な基準文書が作成されていないという範囲で理解すべきである。

2 主任の任命基準及び一般の昇任要件との違い

同答申は,主任家庭裁判所調査官については高等裁判所が任命権を持ち,最高裁判所が通達で任命基準を定めていると説明している。また,下位の職制上の段階から首席等へ任命する場合には,人事院規則に定める一般の昇任要件を満たす必要があるとも説明している。

したがって,固定的な役職固有の基準文書が存在しないことと,昇任に法令上の要件が一切ないこととは異なる。規則上は「最高裁判所の定める基準に該当するものの中から」命ずるとされている一方,公開答申によれば,首席,次席及び総括主任について独立した基準文書は作成されておらず,個別に適性が判断されている。

第10 出典・参考資料

1 法令及び最高裁判所規則

裁判所法(昭和22年法律第59号)61条の2及び61条の3(e-Gov法令検索)

家事事件手続法(平成23年法律第52号)58条及び59条(e-Gov法令検索)

少年法(昭和23年法律第168号)8条及び9条(e-Gov法令検索)

首席家庭裁判所調査官等に関する規則(昭和57年最高裁判所規則第4号)(日本法令索引)

最高裁判所事務総局規則3条の3(裁判所ウェブサイト)

2 通達・公文書・予算書

① 最高裁判所事務総局家庭局『家庭裁判所調査官執務必携』(家庭裁判資料第185号,2008年)4頁~7頁及び20頁~23頁(PDF15頁~16頁及び23頁~24頁)

② 最高裁判所事務総長「家庭裁判所調査官及び家庭裁判所調査官補の配置,組の構成等について」(昭和62年3月19日付け総一第63号,PDF1頁)

③ 最高裁判所総務局長「家庭裁判所調査官及び家庭裁判所調査官補により構成する組の数について」(昭和62年3月19日付け総一第64号,平成31年3月8日最終改正,PDF1頁~8頁)

④ 最高裁判所事務総長「総括主任家庭裁判所調査官を置く家庭裁判所及び家庭裁判所の支部の指定について」(平成17年2月24日付け最高裁総一第000113号,PDF1頁~2頁)

⑤ 最高裁判所事務総長「複数の次席家庭裁判所調査官を置く家庭裁判所の指定及び次席家庭裁判所調査官の員数の定めについて」(平成24年3月22日付け最高裁総一第000266号,PDF1頁~2頁)

最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会令和3年度第43号答申(令和4年1月25日,1頁~3頁,PDF1頁~3頁)

令和8年度一般会計予算書「裁判所所管 予算定員及び俸給額表」308頁~309頁(PDF318頁~319頁)

⑧ 最高裁判所裁判官会議「指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸について」(平成30年6月6日議決,平成30年7月1日施行,別表はPDF3頁)

3 裁判所の採用・職務案内

① 最高裁判所「家庭裁判所調査官

② 最高裁判所「裁判所で活躍するProfessional:家庭裁判所調査官

③ 最高裁判所「チームで働く(裁判所事務官・裁判所書記官・家庭裁判所調査官)

④ 最高裁判所「研修生(家庭裁判所調査官・裁判所書記官養成課程)

⑤ 最高裁判所『裁判所職員採用案内』7頁(PDF7頁。掲載職員の所属・官職は令和7年7月1日現在)

4 文献

① 梶村太市・徳田和幸編著『家事事件手続法〔第3版〕』(有斐閣,2016年)174頁~175頁及び203頁~204頁

② 梶村太市・石井久美子・貴島慶四郎・芝口典男編『最新裁判書式体系第3巻 家事事件手続Ⅰ』(青林書院,2024年)54頁~55頁

③ 松本博之『人事訴訟法〔第4版〕』(弘文堂,2021年)392頁~393頁

矢口洪一最高裁判所とともに』(有斐閣,1993年)84頁