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価格転嫁の値上げ要請にどう回答するか―取適法の価格協議と発注者の回答例(AI作成)

第1 値上げ要請を受けたときの判断

取引先から1個50円の値上げを求められ、購買部門で20円の引上げを検討しているとする。
20円という結論だけを通知する前に、希望額をどの費目に分けて検討したか、どこに認識の差があるかを伝え、相手が説明や代案を出せるようにする。

取適法第5条第2項第4号は、給付に関する費用の変動その他の事情が生じ、受注者が代金の協議を求めたのに、協議に応じず、又は求められた事項について必要な説明・情報提供をせず、一方的に代金を決定して受注者の利益を不当に害することを禁止している。
申出は口頭でも成立し得る。
明示的な申出のほか、やり取りから協議を希望する意図が客観的に認められる場合も含まれる。
協議の申出を無視したり繰り返し先送りしたりすることも、協議に応じない場合に含まれ得る。

同種又は類似の給付に通常支払われる対価に比べ著しく低い代金を不当に定める買いたたきは、同条第1項第5号の別の規制である。
第2項第4号では著しく低い代金であることを要件とせず、協議の実質と一方的な決定による不当な利益侵害を確認する。
改正後の第5条は令和8年1月1日以降に行った対象委託について適用される。
対象となる委託類型と規模基準は取適法の企業実務を参照されたい。

第2 申出がない場合・一部受入れ・据置き

1 受注者から申出がない場合

労務費転嫁指針は、申出がなくても業界の慣行に応じて定期的な協議の場を設けることを発注者に求めている。
特に、単価を長年改定していない取引や、都度発注でも実質的には同じ条件で反復している取引について、労務費上昇分を反映する必要性を具体的に確認する。
コスト上昇があるのに明示的に協議せず据え置く行為は、事情により買いたたきや優越的地位の濫用として問題となり得る。
協議の申出があったことを要件とする取適法第5条第2項第4号とは、確認する事情が異なる。

取引先が多い場合、案内メールに回答窓口と候補時期を記すと、個別の協議につなげやすくなる。
案内後は、申出を受け付けたか、長期据置き先と具体的な話合いの機会を設けたかを確認する。

2 希望額の一部を受け入れる場合

値上げ幅について双方の試算が違うときは、対象品目、原価に占める各費目、比較期間、前回の改定で反映済みの範囲をそろえて協議する。
公取委の取適法Q&Aは、発注者が自ら妥当と考える額を値上げしても、協議を経ず受注者の申入れを下回る額を一方的に決定すると問題となり得ると説明している。

3 据置きを提案する場合

要請額の全部を受け入れられないときも、その理由や考え方の根拠を十分に説明し、相手の補足や代案を検討する。
例えば、前回改定と今回の対象期間が重複していると考えるなら、どの費目のどの期間をすでに反映したかを示す。
独禁法Q&Aでは、取引上の地位が相手方に優越する事業者が、コスト上昇を理由とする値上げ要請を受けたのに、転嫁しない理由を書面やメール等で回答せず従前価格を据え置くことを、優越的地位の濫用として問題となり得る例に挙げている。

第3 発注者が返すメールの文例

1 一部受入れを提案する場合

「製品Aについて1個50円の改定をご提案いただき、ありがとうございます。
当社の現時点の試算では、対象工程の労務費上昇分として20円を見込んでいます。
残る30円は、前回改定で反映した費目と今回の対象期間が重なるか確認したいと考えています。
当社の算定表をお送りしますので、○日に双方の前提を確認し、改定額と適用する発注分を協議させてください。」

2 据置きを提案する場合

「今回の申入れは、製品Bの原材料費の上昇を理由とするものと理解しました。
当社は、添付表の該当行に記載した仕入条件と前回改定の対象期間を前提に、現時点では単価据置きを提案します。
貴社の対象原材料又は比較期間について当社と認識が異なる点があれば、協議の場で確認させてください。
当社からも対象期間を採った理由をご説明します。」

いずれも架空の文例である。
実際の回答では、相手が求めた事項、説明の中身、その後に相手の説明を検討した経過まで記録する。

第4 資料の求め方と協議の記録

労務費の上昇について説明や根拠資料を求める場合、労務費転嫁指針は、最低賃金の上昇率や春季労使交渉の妥結額などの公表資料に基づくことを求めている。
公表資料を使った提案は合理的な根拠があるものとして尊重し、取引条件への当てはめを協議する。
合理的な範囲を超える詳細な内部原価の開示を協議の前提とする運用は、協議を困難にし、問題となるおそれがある。
公表資料を使った具体的な引上げ要請に対し、再委託先の契約単価が開示されないことを理由に、明示的に協議せず据え置く場合も同様である。

記録には、①申出の日と対象の発注、②希望単価と費目、③双方の資料・説明、④見解が分かれた点、⑤最終結論と適用開始時期をひも付ける。
発注後に既発注分の代金を引き下げる場合は、減額の禁止も別に確認する。

第5 公取委が示す想定例と公表実例

現行の取適法運用基準の想定例9-2は、経済の実態を反映すると考えられる公表資料に基づいて具体的な引上げ額が提示されたのに、算定が容易でない詳細な情報を求めて協議を困難にし、わずかな引上げにとどめた場面である。
想定例9-3(1)は、コスト上昇を踏まえた説明や資料の提供をせず、据置き又はわずかな引上げで代金を定める場面を挙げている。

別に、公取委の令和6年度下請法違反実例(勧告以外)には、運送の再委託をした同じ発注者が、コスト上昇を理由とする値上げ要請を受けたのに十分な協議なく据え置いた事例と、自社の予算単価だけを基準に引上げ額を決め、根拠を示さず十分な協議をしなかった事例が、旧下請法第4条第1項第5号の買いたたきとして掲載されている。
現行運用基準の想定例と、旧法下で公取委が公表した実例では、資料の性格と根拠条項が異なる。

第6 関連記事と出典

①取適法の企業実務
②買いたたき・取引打切りの裁判例と民事上の請求

①令和7年法律第41号・本文及び附則
②公正取引委員会・取適法運用基準(第4の5・9)
③公正取引委員会・取適法Q&A(価格協議の項)
④内閣官房・公正取引委員会・労務費転嫁指針
⑤公正取引委員会・独禁法Q&A(Q20・22)
⑥公正取引委員会・令和6年度下請法の運用状況(別紙2)