第1 「2000円上告」の対象と現在の結論1 旧法事件と新法事件では手数料が異なる2 利用を検討できるのは数量的に可分な一個の金銭請求である3 申立手数料を抑えても受理要件は変わらない第2 訴訟物の価額10万円の場合の申立手数料1 新法事件と旧法事件の金額2 新法事件の納付方法3 旧法事件の郵便費用第3 上告受理申立てから理由書提出まで1 申立書は原裁判所へ提出する2 申立範囲と訴訟物の価額を一致させる3 上告受理申立て理由書は通知書送達から50日以内である第4 不服申立ての範囲を後から拡張する場合1 最高裁昭和44年7月10日判決2 上告受理申立てに当てはめる場合の注意3 「拡張予定」と別個請求の追加を区別する第5 訴額10万円とする旧法事件の申立書記載例1 この記載例の対象2 記載例第6 委任状と特別授権1 上告受理申立てには特別の委任が必要である2 特別授権がある場合の代理権と提出実務第7 原裁判所による審査の範囲1 受理要件の実質判断は最高裁判所が行う2 形式的な不備は別に審査される第8 申立て前後の確認事項第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 裁判所の手続資料4 文献
第1 「2000円上告」の対象と現在の結論
1 旧法事件と新法事件では手数料が異なる
数量的に可分な一個の金銭請求について,上告受理申立ての対象を控訴審請求額のうち10万円に限定すれば,訴訟物の価額10万円に対応する申立手数料で申立てをすることが考えられる。
ただし,「2000円の収入印紙を貼付する」という説明が当てはまるのは,原則として第一審の訴えが令和8年5月21日より前に提起された旧法事件である。
同日以後に提起された新法事件では,訴訟物の価額10万円の場合,電子申立ての手数料は3,100円であり,紙による申立てが許される場合の手数料は4,700円である。
裁判所の民事事件の手数料額早見表にも,この3区分が掲載されている。
旧法事件か新法事件かは,上告受理申立てをする日ではなく,原則として第一審の訴えを提起した日によって区別する。
具体的な経過措置については,mints対象事件の記事で説明している。
2 利用を検討できるのは数量的に可分な一個の金銭請求である
この方法は,一個の金銭請求のうち10万円の部分だけを当初の不服申立ての範囲とする場面を想定している。
複数の別個の請求を後から追加する場合,金銭請求とは性質が異なる請求を追加する場合又は数量的に分けられない請求には,そのまま利用できない。
申立書,上告受理申立て理由書及び後に提出する範囲拡張の書面では,どの請求のどの部分を不服申立ての対象としているかが一致していなければならない。
単に訴訟物の価額を10万円と記載するだけで,不服申立ての範囲が当然に特定されるわけではない。
3 申立手数料を抑えても受理要件は変わらない
民事訴訟法318条1項によれば,最高裁判所は,判例と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる事件について,上告審として受理することができる。
申立ての対象を10万円に限定しても,この受理要件は変わらない。
申立手数料を低くした場合に上告受理決定の可能性が上がることを示す公的資料は確認できない。
この方法は費用負担を限定する方法であって,理由の乏しい申立てを適法又は有力にする方法ではない。
第2 訴訟物の価額10万円の場合の申立手数料
1 新法事件と旧法事件の金額
訴訟物の価額10万円の場合の申立手数料は,次のとおりである。
適用手続申立方法申立手数料郵便費用の扱い
旧法事件紙による申立て2,000円別途予納する
新法事件電子申立て3,100円1,100円相当が手数料に含まれる
新法事件許容される紙申立て4,700円2,700円相当が手数料に含まれる
民事訴訟費用等に関する法律3条及び別表によれば,訴訟物の価額10万円に対応する第一審手数料1,000円の2倍が,上告及び上告受理申立ての基礎となる2,000円である。
新法事件では,電子申立てについて1,100円,紙による申立てについて2,700円の郵便費用相当額が加わる。
2 新法事件の納付方法
新法事件の弁護士等には,原則として電子提出義務がある。
電子申立ての方法,提出先及び提出後に保存すべき受付情報については,mintsで控訴・上告・上告受理申立てをする方法の記事で説明している。
民事訴訟費用等に関する法律8条1項では,新法対象手続の手数料は原則として現金で納めることとされている。
収入印紙による納付が認められるのは,紙による申立てが許され,かつ,やむを得ない事由がある場合である。
そのため,新法事件を「収入印紙を貼付する手続」と説明するのは正確でない。
3 旧法事件の郵便費用
旧法事件では,2,000円の申立手数料とは別に郵便費用を予納する。
必要額は裁判所,事件及び送達を受ける相手方の人数等によって確認する必要があるため,過去の特定の裁判所における固定額を現在の一般的な金額として使用すべきではない。
上告と上告受理申立てを同時に行う場合,両者の利益が共通する範囲では,一方について納めた手数料が他方についても納付されたものとみなされることがある。
民事訴訟費用等に関する法律3条4項の適用範囲は,不服申立ての対象が両手続で一致しているかを含め,個別事件ごとに確認する必要がある。
第3 上告受理申立てから理由書提出まで
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