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医療訴訟における経験則・採証法則違反―平成18年最高裁判決から見る専門意見の評価方法(AI作成)

医療訴訟では,複数の医師又は鑑定人の意見が対立することが多い。最高裁平成18年1月27日判決及び同年11月14日判決は,「どの専門家を信じるか」だけでなく,意見の前提となる客観的診療経過と推論過程を比較しなければならないことを示す。

第1 本記事の問題意識

事実審の証拠評価は原則として裁判所の自由心証に委ねられる。しかし,重要な専門意見を理由なく退け,客観的資料と整合しない中間評価から結論を導き,又は相反する意見を比較する審理を尽くさなかった場合,経験則・採証法則違反として破棄されることがある。

そこで,意見書の結論を引用するだけでなく,①何を証明する意見か,②どの事実を前提にするか,③どの資料を使用したか,④推論に飛躍がないかを分解する必要がある。

第2 最高裁平成18年1月27日判決

最高裁平成18年1月27日第二小法廷判決は,MRSA感染症を発症した患者に対するバンコマイシン投与の時機が問題となった医療訴訟である。

原審は,早期投与をしても救命できなかった可能性が高いとして医療側の責任を否定した。しかし,最高裁は,早期投与により救命できた可能性に関する医師の意見を十分に吟味せず,診療経過との関係も明らかにしないまま結論を出した原審判断に,経験則又は採証法則違反があるとした。

実務上は,抗菌薬の一般的有効性だけでなく,培養結果判明前後の症状,感染徴候,検査値,腎機能,用量,投与開始可能時点及び患者固有の予後を時系列で対応させる必要がある。一般論と当該患者についての因果関係を分けることが重要である。

第3 最高裁平成18年11月14日判決

最高裁平成18年11月14日第三小法廷判決は,手術後の出血とショック,その後の死亡との関係が争われた事案である。

原審は一方の専門意見に依拠したが,最高裁は,出血量,血圧,脈拍その他のショック徴候と意見の前提が整合するかを十分に検討せず,相反する二つの専門意見を比較しないまま,第1回口頭弁論期日に弁論を終結した審理経過も踏まえて,原審判断を維持できないとした。

重要なのは,「控訴審が独自鑑定を採用した」という形式ではない。各意見がどの数値・症状・時点を根拠にし,どの医学的機序を通じて死因又は過失を説明するのかを比較する機会が確保されたかである。

第4 平成18年4月18日事件の確認範囲

判例時報「最高裁民事破棄判決等の実情―平成18年度―」は,冠動脈バイパス手術後の腸管壊死等を扱った最高裁平成18年4月18日判決を紹介し,原審の専門的判断に対する検討不足を指摘している。

もっとも,本記事作成時点では,裁判所ウェブサイト上の対象判決本文を事件番号とともに確実に特定できていない。このため,本節は二次資料から把握できる問題構造の紹介にとどめ,正確な事実経過・判示を引用する際は,判例秘書その他の判例データベース又は掲載誌で判決全文を確認する必要がある。

第5 説明義務判決との区別

最高裁平成18年10月27日第二小法廷判決は,未破裂脳動脈瘤について,開頭術,血管内治療及び経過観察という複数の選択肢がある場合の説明義務を扱う。この判決は,専門意見の証拠評価を理由として破棄した判決ではない。

同判決が示したのは,複数の確立した治療法が存在し,いずれにも相応の危険があるとき,医師は各選択肢の内容と危険を説明し,患者が再度熟慮する機会を与えるべきであるという規範である。説明義務,過失,死亡等との因果関係,自己決定権侵害による損害を段階別に検討する。

第6 専門意見を比較する7項目

  1. 立証命題:過失,因果関係,後遺障害,余命又は損害のどれに関する意見か。
  2. 基礎資料:診療録,画像,検査値,病理,ガイドライン及び文献のどれを見たか。
  3. 時点:義務発生時,処置可能時,急変時及び結果発生時を分けているか。
  4. 前提事実:原判決が認定した事実と意見書の前提が一致するか。
  5. 推論過程:一般的医学知見から当該患者の結論へ飛躍していないか。
  6. 反対資料:相反する所見,代替原因及び他の専門意見に応答しているか。
  7. 結論の強さ:「あり得る」「相当程度」「高度の蓋然性」等を区別しているか。

「著名な医師の意見である」「鑑定だから優先される」という理由だけでは足りない。各意見を同じ項目で横並びにして,客観的資料との適合性を裁判所が検証できるようにする。

第7 証拠収集と尋問の設計

初期段階で,診療録一式だけでなく,検査結果の原データ,画像データ,麻酔記録,看護記録,投薬記録,モニター記録,病理資料,院内手順及び当時のガイドラインを確保する。後から作成された要約は,原資料との一致を点検する。

専門家への質問は,結論を求めるだけでなく,前提事実が変わった場合の結論,反対意見のどこに同意しどこに反対するか,追加資料により意見が変わる可能性を尋ねる。尋問では,専門用語を評価語のまま残さず,数値,所見及び時間軸に戻す。

第8 上告受理申立理由への落とし込み

「原審は当方の医師意見を採用しなかった」というだけでは,事実認定への不服にとどまる。申立理由では,原審が採用した経験則又は医学的前提を特定し,それが客観資料と矛盾する理由,重要な反対意見を検討しなかった理由及び違法が主文に影響することを示す。

さらに,原審で反論・立証の機会が与えられたかを記録に即して示す。意見書提出の時期,準備期間,期日の回数,証人・鑑定申請に対する判断等は,証拠評価の問題と手続保障の問題を結び付ける資料となる。

第9 資料の確認状態

最高裁平成18年1月27日,同年10月27日及び同年11月14日の各判決は,裁判所公表の判決情報・本文を確認した。平成18年4月18日事件は,判例時報論文の記述までの確認であり,対象判決本文は未確認である。

この平成18年度調査について,判例秘書は照会0件/ヒット不明/本文確認0件である。判例秘書で確認済みの別記事・別年度の事件と混同しない。

第10 出典・関連記事

① 最高裁平成18年1月27日判決全文
② 最高裁平成18年11月14日判決全文
③ 最高裁平成18年10月27日判決全文
④ 宮坂昌利・谷口豊「最高裁民事破棄判決等の実情(1)~(4)・完―平成18年度―」判例時報1966号,1967号,1969号及び1970号
⑤ 平成18年度最高裁民事破棄判決等の実情―110件から学ぶ破棄理由と訴訟実務(AI作成)
⑥ 上告審に関するメモ書き(AIリライト)
⑦ 終末期の予後説明義務違反と慰謝料