第1 要介護認定とは
1 介護サービスの必要度を判定する制度
要介護認定とは,介護保険のサービスを利用するために,介護や支援がどの程度必要かを市区町村が判定する手続である。
本人の認定調査と主治医意見書等を基に,一次判定と介護認定審査会の二次判定を経て,市区町村が認定結果を通知する。
病気の診断名や年齢だけで介護度が決まるわけではない。
認定される区分は,要支援1・2と要介護1~5の7区分であり,これらに該当しない結果もある。
要介護1と要介護5を比べれば,要介護5の方が介護の必要度が高い区分である。
ただし,区分の説明だけで自分や家族の介護度を確定することはできない。
本記事は,令和8年10月21日時点で確認した厚生労働省と自治体の資料を基に,申請から認定後の対応までを整理する。
通知内容の誤りを争う場合の資料収集や不服申立ては,要介護認定の結果に納得できない場合の資料収集と争い方で詳しく扱っている。
2 申請の対象になる人
65歳以上の第1号被保険者は,介護が必要になった原因を問わず,要介護・要支援状態に該当するかが審査される。
40歳以上65歳未満の第2号被保険者は,医療保険に加入し,加齢に伴う16の特定疾病により要介護・要支援状態となった場合が対象である。
特定疾病には,脳血管疾患,初老期における認知症,関節リウマチ,筋萎縮性側索硬化症などがある。
がんについては,医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限られ,40歳以上65歳未満でがんと診断された人が全員対象になるわけではない。
疾病の正式な範囲と診断基準は,厚生労働省の特定疾病の説明と市区町村の窓口で確認する。
40歳未満の場合は,この介護保険の要介護認定の対象にはならない。
支援が必要なときは,年齢や障害の状況に応じて利用できる別の制度について,医療機関や自治体に相談することになる。
第2 要支援・要介護の認定基準
1 7区分の比較と基準時間
厚生労働省の認定方法の説明は,要介護認定等基準時間を,介護サービスの必要度を測るために推計する時間として説明している。
次の表は区分の基準を整理したものであり,家庭で測った介護時間をそのまま当てはめる表ではない。
| 区分 | 要介護認定等基準時間の基準 |
|---|---|
| 要支援1 | 25分以上32分未満,又はこれに相当する状態 |
| 要支援2・要介護1 | 32分以上50分未満,又はこれに相当する状態。両区分は状態の安定性や認知機能等も踏まえて区別する |
| 要介護2 | 50分以上70分未満,又はこれに相当する状態 |
| 要介護3 | 70分以上90分未満,又はこれに相当する状態 |
| 要介護4 | 90分以上110分未満,又はこれに相当する状態 |
| 要介護5 | 110分以上,又はこれに相当する状態 |
この基準時間は,実際に家族が介護した時間でも,訪問介護等を利用できる時間の合計でもない。
家族の介護日誌は具体的な介助と頻度を説明する資料になるが,「1日110分以上介護したから要介護5になる」という使い方はできない。
2 要支援2と要介護1の違い
要支援2と要介護1は,基準時間の範囲が共通している。
そのため,時間だけでは区別できず,心身の状態が安定しているか,認知機能等の障害により予防給付等の利用について適切な理解が困難な状態かといった点も審査される。
同じ診断名の人や,同じ動作ができる人でも,個別の状態と資料によって結果が異なり得る。
3 要介護2と要介護3の違い
要介護2は基準時間が50分以上70分未満,要介護3は70分以上90分未満,又はそれぞれに相当する状態を基準とする。
要介護3の方が介護の必要度が高い区分であるが,「立てるかどうか」「認知症かどうか」という一つの特徴だけで両者を判別することはできない。
認定調査の基本調査,特記事項,主治医意見書等を総合して判断される。
第3 申請先と準備するもの
1 市区町村の介護保険担当窓口へ申請する
介護が必要になったら,まず介護保険の保険者である市区町村の介護保険担当窓口へ相談する。
高齢者の身近な相談先として,地域包括支援センターに相談する方法もある。
入院中で退院後の生活に支援が必要な場合は,病院の相談員等にも早めに相談するとよい。
本人が申請に行けない場合でも,家族による申請や,地域包括支援センター,居宅介護支援事業者等への申請手続の依頼を検討できる。
提出方法,委任状の要否,郵送・オンライン申請の可否は,提出先が案内する条件を確認する。
例えば,大阪市は親族等による申請の取扱いを具体的に案内しているが,その条件を全国共通と考えないようにする。
2 書類と主治医の情報を準備する
申請書に加え,介護保険被保険者証,本人確認に関する書類,主治医の氏名・医療機関名・連絡先などを準備する。
第2号被保険者について医療保険の資格を確認する書類が必要な場合は,資格情報のお知らせや資格確認書等のうち,自治体が指定するものを確認する。
マイナンバーの確認,代理申請の書類,紛失時の対応も提出先の案内に従う。
主治医には,申請予定と生活上困っていることを伝えておくとよい。
通院している病院が複数ある場合は,普段の状態を把握している医師について市区町村と相談し,主治医がいない場合も先に窓口へ相談する。
通常,市区町村が主治医に意見書の作成を依頼するため,自分で任意の診断書を取れば手続が済むわけではない。
第4 認定調査から結果通知まで
1 認定調査で普段の生活を伝える
認定調査では,調査員が本人に面接し,心身の状態や生活上の介助等を確認する。
本人が普段の困り事を説明しにくい場合は,家族等の同席を相談し,日頃の状況を具体的に伝える準備をする。
準備するのは,希望する介護度に合わせた説明ではなく,実際の生活の記録である。
食事,移動,排せつ,服薬,夜間の対応等について,誰が何を手伝い,どの程度の頻度で起きているかを短く記録しておくと,調査当日だけでは分からない事情を説明しやすい。
調査時と日頃の状態が異なる場合も,その違いと具体的な期間・頻度を伝える。
調査項目には,能力,実際の介助方法,行動等の有無という異なる評価の軸がある。
一律に「できない」と答えればよいのではなく,項目に応じて事実を伝えることが重要である。
記録の作り方は,既存記事の「本人側で作る資料」も参照されたい。
2 主治医意見書と一次・二次判定
主治医意見書には,傷病の経過,心身の状態,認知機能,医学的管理の必要性等が記載される。
認定調査の結果等と主治医意見書に基づくコンピュータの一次判定を原案として,保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が二次判定を行う。
二次判定では,特記事項や医学的意見も加味して審査するため,一次判定が最終結果とは限らない。
3 結果の時期と通知書で確認する点
認定は,原則として申請から30日以内に行う仕組みである。
ただし,特別な理由があるときには処理の見込期間と理由を通知して延期されることがあり,必ず30日以内にサービスを開始できるという保証ではない。
退院日や介護者が対応できなくなる日が決まっている場合は,その日付を申請時に伝え,申請中の対応も相談する。
結果通知書と介護保険被保険者証が届いたら,認定区分,有効期間,認定の効力が始まる日,通知を受け取った日を確認する。
認定の有効期間は一律ではないため,自分の被保険者証の記載を基準に更新の時期を管理する。
第5 結果を待てないときのサービス利用
1 暫定ケアプランと費用の確認
認定申請後,結果が出る前にサービスが必要な場合は,市区町村,地域包括支援センター,ケアマネジャー等に暫定ケアプランによる利用を相談する。
結果を待たずに利用できる場合がある一方,申請さえすれば,どのサービスでも予定どおり介護保険の対象になるわけではない。
利用前に,①見込む認定区分,②ケアプランの作成と届出,③利用するサービスと金額,④実際の認定結果が見込みと違った場合の負担を確認する。
認定結果が非該当となった場合や,実際の認定区分の支給限度額を超えた場合等は,全額自己負担となる部分が生じ得る。
大阪市では,暫定ケアプランに関する届出の時期等を別に案内しているため,利用を始めてから確認するのではなく,開始前に担当窓口と調整する必要がある。
2 がん等で状態が急速に変化するとき
厚生労働省の令和6年5月31日事務連絡は,がん等で心身の状況が急速に変化する人について,認定手続とサービス開始を速やかに進める取扱いを示している。
主治医,病院の退院支援担当者,市区町村,ケアマネジャー等に,病状の変化,退院予定日,すぐに必要な介助や福祉用具を具体的に伝えることが重要である。
この取扱いは即日認定や特定の介護度を保証する制度ではない。
認定調査を受ける前に死亡した場合の費用も,別に確認が必要である。
例えば大阪市は,認定調査前の死亡により介護保険給付を受けられない場合に,暫定的に利用したサービス費用の一部を補助する事業を案内している。
全国共通の自動的な補償ではなく,対象サービス,申請者,期限,必要書類等の条件を自治体の担当窓口で確認することになる。
第6 認定後の利用・更新・区分変更
1 認定区分に応じてサービスを相談する
要介護1~5では居宅介護支援事業所のケアマネジャー等に,要支援1・2では地域包括支援センター又は指定介護予防支援事業者等に,相談して必要なサービスを検討する。
認定結果だけでサービスの種類,回数,自己負担額が全部決まるわけではない。
本人の生活上の希望,家族の状況,利用条件,事業所の受入状況と費用も確認する。
非該当の場合でも,自治体の介護予防・日常生活支援総合事業等を利用できる場合がある。
介護保険の認定に該当しなかったことと,利用できる支援が全くないことは同じではないため,地域包括支援センター等に相談するとよい。
2 更新申請と状態が変わった場合の申請
認定には有効期間があるため,引き続きサービスが必要であれば更新申請をする。
例えば大阪市は,有効期間満了の60日前から更新申請ができると案内している。
通知を受け取っただけで更新が完了したと考えず,申請の受付と必要書類を確認する。
有効期間中でも心身の状態が変化した場合は,区分変更申請等を相談できる。
処分後に状態が悪化したため現在の支援を増やしたい場合と,当初の認定に誤りがあるとして争う場合とでは,目的と手続が異なる。
市区町村に,状態が変わった時期と,いつからどのような支援が必要かを伝えて検討することになる。
第7 結果に納得できないとき
まず,結果通知書と封筒を保存し,受け取った日を記録した上で,市区町村に決定理由の説明を求める。
認定調査票,主治医意見書,一次判定・二次判定の資料を取得できるか確認し,どの事実の把握や評価に疑問があるかを整理する。
提供対象,申出人,本人同意,利用目的等の条件は自治体ごとに確認する必要がある。
当初の処分に不服がある場合には,都道府県の介護保険審査会への審査請求等を検討する。
市区町村に相談を続けていても,審査請求等の期限が当然に止まると考えてはいけない。
資料の読み方,区分変更との選択,審査請求・訴訟の期限は,要介護認定の結果に納得できない場合の資料収集と争い方を参照されたい。
第8 要介護認定でよくある質問
1 要介護レベルはどのように判定されるか
認定調査と主治医意見書等に基づくコンピュータの一次判定を原案とし,介護認定審査会が特記事項や医学的意見を加味して二次判定を行い,市区町村が認定する。
病気の重さだけでなく,具体的な介護の必要度を判定する仕組みである。
2 要介護3と2の違いは何か
要介護3の方が介護の必要度が高い区分である。
基準時間では,要介護2は50分以上70分未満,要介護3は70分以上90分未満,又はそれぞれに相当する状態を基準とする。
実際の家族の介護時間や,特定の動作ができるかどうかだけで区分が決まるわけではない。
3 要介護1と5ではどちらが重いか
要介護5の方が介護の必要度が高い区分である。
ただし,要介護度は病気そのものの重さの順位ではなく,介護サービスの必要度を示す。
同じ病気でも,生活機能や必要な介助の違いによって区分が異なる。
4 要介護認定の原因1位は何か
厚生労働省の令和7年国民生活基礎調査では,在宅の要介護者について,介護が必要となった主な原因の第1位は認知症で23.6%である。
要支援者を含む総数でも認知症が第1位で16.7%だが,要支援者だけでは高齢による衰弱が第1位で17.7%となる。
このため,どの集団を対象とした数値かを区別する必要がある。
同調査は令和7年6月の要介護度による集計であり,全ての認定申請者や施設入所者を含む集計ではない。
また,この統計の「介護が必要となった主な原因」と,第2号被保険者の認定条件である16の特定疾病とは別の概念である。
第9 出典・参考資料
1 厚生労働省の制度説明・運用資料
厚生労働省「要介護認定」の入口と関連資料:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/index.html
厚生労働省「要介護認定に係る制度の概要」:https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo1.html
厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/gaiyo2.html
厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」:https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
厚生労働省「『要介護認定等の実施について』の一部改正について」(令和7年11月20日,介護保険最新情報vol.1439,令和8年4月1日適用):https://www.mhlw.go.jp/content/001598399.pdf
厚生労働省「『要介護認定における「認定調査票記入の手引き」,「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について』の一部改正について」(令和7年11月20日,介護保険最新情報vol.1440,令和8年4月1日適用):https://www.mhlw.go.jp/content/001598392.pdf
厚生労働省「がん等の方に対する速やかな介護サービスの提供について」(令和6年5月31日事務連絡,PDF2頁の認定手続・暫定ケアプラン):https://www.mhlw.go.jp/content/001262712.pdf
2 自治体の申請・サービス利用・不服申立ての案内
大阪市「介護保険 要介護・要支援認定」:https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000384395.html
大阪市「大阪市におけるケアプラン作成時の注意事項」(令和8年8月1日):https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000057665.html
大阪市「暫定サービス利用者等に係る介護支援事業」(令和8年7月10日):https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000682011.html
渋川市「介護認定申請後,すぐにサービスを利用することはできますか。」:https://www.city.shibukawa.lg.jp/faq/000543/000562/000566/p003961.html
大阪府「審査請求について」:https://www.pref.osaka.lg.jp/o090090/kaigoshien/kaigo-sinsa/sinsaseikyu.html
3 統計
厚生労働省「令和7年国民生活基礎調査の概況」Ⅳ介護の状況,表16(印刷22頁,PDF2頁):https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/05.pdf