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裁判所の生成AI利用と令和9年度概算要求-司法行政の「源内」と訴訟記録による検証(AI作成)

第1 概算要求から分かる二つの利用場面

最高裁判所の「令和9年度概算要求書(説明資料)」には,司法行政事務を行う職員が生成AI利用環境「源内」を利用する費用と,実際の訴訟記録を用いて民事訴訟における生成AIの利活用を検証する費用が,別の項目として記載されている。
前者は司法行政事務の利用環境に関する要求であり,後者は裁判事務に関する検証のための要求である。
同じ生成AIという言葉が使われていても,対象業務と事業の段階を分けて読む必要がある。

本記事の基準日は令和8年10月21日であり,説明資料の資料上73頁・74頁及び110頁・111頁(PDF75頁・76頁及び112頁・113頁)を対象とする。
記載されているのは令和9年度の概算要求であり,成立予算,契約の締結,運用の開始又は検証結果を示す資料ではない。

第2 司法行政事務での「源内」利用費

1 利用対象は司法行政事務を行う職員である

説明資料の資料上73頁は,裁判所においても生成AIの利活用による事務の合理化等を具体的に検討する必要があるとし,デジタル庁が提供する「源内」を,司法行政事務を行う裁判所職員が利用するための費用を要求すると説明している。
この項目は「裁判所の機構の維持に必要な経費」のうち「機構運営対策経費」に置かれている。

デジタル庁は,「源内」を政府職員向けの生成AI利用環境として説明し,対話,文章作成,要約,校正,翻訳等の汎用的な支援と,行政実務に特化した支援を区別している。
ただし,デジタル庁の説明にある機能や取扱可能な情報の区分が,裁判所でそのまま全て利用可能になるとまでは,この概算要求書から確認できない。

2 所要額は千円単位で32458千円である

資料上74頁の経費積算内訳では,最高裁判所の項に「生成AI環境利用料」が計上され,員数等は560式,単価は57960円,所要額は32458千円とされている。
所要額の表示では約3246万円である。
員数の単位は「式」であり,この記載だけを560人の実利用者数,導入済みアカウント数又は利用実績へ読み替えることはできない。

第3 実際の訴訟記録を用いる利活用検証費

1 検証の目的と対象

説明資料の資料上110頁は,裁判事務の合理化・効率化・標準化を進め,職員が中核的な業務に注力できる環境を整備する方策の一つとして,確定記録等の実際の訴訟記録を用い,民事訴訟における生成AIの利活用に関する検証を実施すると説明している。
検証によって,事務処理に係る効果及び課題を整理することが目的とされている。

この記載は,検証の対象が抽象的な技術研究だけでなく,実際の訴訟記録を用いるものとして構想されていることを示す。
他方,この頁だけでは,対象事件の選定基準,記録の件数,具体的な入力資料,評価指標又は結果の公表方法までは確認できない。

2 安全な環境の整備を含む要求である

同頁は,外部事業者等の専門的知見による支援を受けつつ,個人情報等を含む資料等を適切に取り扱うためのセキュアな環境を整備する等の必要があると説明している。
資料上111頁では,「裁判費」の項の「裁判庁費」に,生成AI利活用検証の所要額として62362千円,約6236万円が計上されている。

この要求から確認できるのは,記録を利用する検証に安全な環境の整備等が必要とされていることである。
実際の委託先,データへのアクセス権限,学習への転用の有無,保存期間,削除方法及び監査の実施内容が確定したとまではいえない。
また,この検証が司法行政事務用の「源内」と同じ環境で行われるとの記載も,対象頁にはない。

第4 概算要求から導入済みと判断しない

司法行政事務での利用費と,民事訴訟に関する検証費は,対象業務と要求の目的が異なる。
この二つの項目だけから,裁判官が生成AIで判決書を作成する運用や,AIが裁判を判断する制度の導入が決まったとはいえない。
検証に必要な予算を求めることと,その結果を踏まえて実務上の利用方法を決めることは別の段階である。

裁判所の生成AI利用について資料を読む際は,対象が司法行政か裁判事務か,事業が検証か本格運用か,数字が要求額か成立予算か執行額かをそろえて比較する必要がある。
効果及び課題を整理するための要求額を,既に達成された業務削減効果又は人員削減の根拠として扱うこともできない。

第5 出典と関連記事

・最高裁判所「令和9年度概算要求書(説明資料)」資料上73頁・74頁及び110頁・111頁(PDF75頁・76頁及び112頁・113頁)。

・デジタル庁「ガバメントAI「源内」」(令和8年10月21日確認)。

・裁判所「令和9年度予算」。

・令和9年度概算要求-裁判所職員101人の定員合理化と家裁調査官の増員の有無(AI作成)

・裁判所の定員が減ると,現場の人も減るのか―定員・現在員・欠員・振替・再任用の読み方(AI作成)