第1 契約書の構成と契約金額
第78期司法修習生考試の事務委託契約は,令和7年11月13日付で最高裁判所と株式会社全国試験運営センターとの間で締結され,税込契約金額は3582万7000円である。
本記事では,公開された契約書全28頁から,日程,試験監督の体制,答案の運搬,秘密保持等の契約条件を整理する。
仕様書の予定人数や要求事項は,実際の受験者数や履行の実績を示すものとは区別する必要がある。
1 資料の名称と確認範囲
対象資料は,第78期司法修習生考試事務業務委託に関する契約書(令和7年11月13日付)である。
以下の頁数は,このPDFの先頭を1頁とした実頁で示す。
契約書のかがみは1・2頁,添付の契約条項の表紙は3頁,契約条項第1条から第26条までは4~10頁である。
仕様書は11~16頁,業務範囲を定める別紙第1は17~26頁,提出書類を定める別紙第2は27・28頁にある。
2 金額・契約期間と裁判所の契約公表
かがみ1頁及び契約条項第1条によれば,契約金額は税込3582万7000円で,うち消費税及び地方消費税相当額は325万7000円である。
契約期間は令和7年11月13日から令和8年3月9日までであり,納入期限も同日である。
最高裁判所の競争入札に係る契約公表資料のPDF4頁にも,令和6年度(第78期)司法修習生考試事務の業務委託について,契約日,受注者,契約金額が同じ内容で掲載され,一般競争入札とされている。
契約書のかがみが用いる「令和6年度」と,仕様書第1が示す令和7年度の考試実施を混同してはならない。
第2 日程・会場・人数の契約上の想定
1 考試とリハーサルの日程
仕様書第2(PDF11頁)は,考試実施期間を令和8年3月2日(月)から同月6日(金)までの5日間と定めている。
仕様書第7及び別紙第1の記7(12頁,20・21頁)は,令和8年2月27日(金)に,監督職員の立会いの下で実演・体験方式のリハーサルを行うことを求めている。
試験室の設営も2月27日とされ,考試最終日の終了後速やかに原状回復する仕組みである(別紙第1の記8,21頁)。
2 受験者数と試験室数
別紙第1の記3・5(17・18頁)の想定受験者数は約1570人で,内訳は司法研修所約1245人,大阪会場約325人である。
試験室は司法研修所が最大41室,大阪会場が最大10室とされ,特例措置受験者等のための試験室も含まれる。
これは契約の仕様上の想定であり,確定した受験者数や実際に使用された室数を示す統計ではない。
実施場所は司法研修所と,大阪市内の試験実施可能な施設とされている(別紙第1の記2,17頁)。
この契約書だけから,大阪会場の具体的な施設名を確定することはできない。
第3 試験監督の経験要件と事前教育
1 毎日・会場ごとに満たす経験要件
別紙第1の記6(18・19頁)は,試験監督者の少なくとも半数について,国家資格試験又は大学入学試験の会場責任者,会場副責任者,監督,試験官等として10回以上の実績を求めている。
その余の試験監督者にも3回以上の実績が必要であり,監督補助だけの実績は,この監督者の実績から除かれている。
試験監督補助者については,少なくとも半数に監督補助等を含む3回以上の実績,その余に1回以上の実績を求めている。
これらの要件は会場ごと・日ごとに満たす必要があり,急病等で欠員が生じた場合にも資格要件を満たす者を補充することとされている。
ただし,会場別の監督者・補助者の配置人数には黒塗りがあり,この開示版から総配置人数を算出することはできない。
2 事務要領・実演と理解度の確認
別紙第1の記7及び別紙第2の記2(20・21頁,27頁)は,事務要領の原案を12月10日頃までに作成し,令和8年1月27日頃までに完成させ,全員へ配布してリハーサル前日までに熟読させる手順を定めている。
事務要領には,集合から解散までの作業予定,事務処理の内容,手順,発言事項等を記載する。
リハーサルは,試験監督者役,試験監督補助者役及び受験者役を配役し,誘導,問題等の運搬・配布,注意事項の発言,答案回収等を約2時間,実演する内容である。
理解度が低いことが判明した場合には,同日中のやり直しや監督者等の交替も求められる。
研修への出席だけでなく,手順を実行できるかまで確かめる契約となっている。
第4 答案の整理・運搬と引渡し
1 大阪会場から翌朝9時までに引き渡すこと
別紙第1の記11(23・24頁)は,答案表紙の一部を剝離し,答案と剝離部分をそれぞれ指定順に並べ,定められた通数で区分する作業を定めている。
大阪会場の答案は,各科目の整理後直ちに搬出し,翌日の午前9時までに司法研修所内の指定場所へ運搬して引き渡す。
翌日が裁判所の休日である場合も,同じ扱いである。
運搬車両は答案だけを運ぶ専用車両とし,車外から運搬物が見えず,ドアと荷台の両方を施錠できるものとされている。
司法研修所側と大阪会場側の業務責任者は,運搬者と常時連絡できる体制を整える。
2 数量・梱包と開封防止の確認
別紙第1の記12(24・25頁)は,発送時と受領時に個数・梱包状況を確認し,拠点間で連絡して監督職員に報告する手順を定めている。
運搬には耐火・防水等の素材のボックスを使用し,施錠・封緘等によって開封を防止する措置と,盗難防止の管理を求めている。
業務委託の契約管理では,発送したという記録に加え,発送時と到着時の個数,梱包状態,引渡時刻,確認者を対応させて残すことが,受渡しの検証に役立つ。
これは本契約の手順を踏まえた実務上の確認方法である。
第5 秘密保持・個人情報・再委託
1 業務終了後の消去・廃棄
契約条項第13条及び仕様書第9(6頁,13~15頁)は,問題,貸与記録・資料,答案の内容,試験運営方法等の秘密保持を定めている。
運搬業務の従事者も周知の対象である。
仕様書第9の3(7)は,紙に限らず,USBメモリ,CD,DVDやパソコンのハードディスクを含む電磁的記録媒体上の個人情報も,本業務終了後すべて消去又は廃棄することを求めている。
委託契約を点検するときは,名簿等の提出物に加え,作業用端末・複製物・運搬担当者が保有する情報まで終了時の処理対象を確認する必要がある。
本契約書は消去等の義務を定める資料であり,実際に消去が完了したことを証明する記録ではない。
2 責任者業務等の再委託制限と再実施
契約条項第5条は業務全部の第三者委託等を制限し,仕様書第10の5は,一部の業務についても事前の書面承諾等を求めている。
さらに,業務責任者・業務副責任者・本部員の業務とその人材確保,発注者との連絡・調整は,この承諾による例外の対象から除かれている(4頁,15・16頁)。
仕様書第10の1は,受注者の故意・過失による問題の漏えいや答案回収・整理の不備等によって修習終了の判断ができなくなった場合に,損害賠償義務に加え,受注者の負担で指定日に考試を再実施することを求めている(15頁)。
受注の検討では,人員と運搬の費用に加え,事故時の再実施に対応できる体制・費用の確認も必要となる。
第6 契約書から分かることの限界
本資料は,契約時に合意された運営条件を示すものである。
実際の従事者名簿,完成した事務要領,リハーサルの実施記録,答案の引渡記録,検査結果,消去・廃棄の実績をこの契約書から確認することはできない。
また,黒塗りの配置人数を推測して,監督体制が十分であったかを断定することもできない。
業務委託の確認では,条項番号だけで過年度の契約を参照せず,その期の契約条項・仕様書・別紙を対応させることが必要である。
例えば本契約の検査は第7条,代金支払は第8条,再委託の詳細は仕様書第10の5に置かれている。
本文だけの確認では,期限や再委託できない業務の範囲を見落とすおそれがある。
第7 出典・関連記事
1 一次資料
・第78期司法修習生考試事務業務委託に関する契約書(令和7年11月13日付)(全28頁。上記各節に確認頁を記載。)
・最高裁判所の競争入札に係る契約公表資料(PDF4頁の該当契約。)
2 関連記事
・二回試験の業務委託契約書一覧―65期以降の受注者・契約金額・公開資料(AI作成)
・77期二回試験の業務委託契約書の審査結果報告書
67期二回試験の仕様書違背と代金減額