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東京地裁医療集中部とは-担当部,発足経緯,審理運営及び鑑定制度(AI作成)

第1 東京地裁医療集中部の概要

1 医療集中部の意味

東京地裁医療集中部とは,医療行為の当否が争点となり,審理に医学的知見を要する民事事件を集中的に担当する東京地方裁判所の民事部である。独立した裁判所又は特別な訴訟類型ではなく,専門性の高い事件について知識と審理運営の経験を蓄積するための事件配点上の仕組みである。
医療集中部に配点されたこと自体は,医療機関の過失,因果関係又は患者側の請求が認められることを意味しない。責任の有無は,各事件の主張及び証拠に基づいて判断される。

2 本記事の基準時と資料の読み方

本記事は,令和8年(2026年)9月22日現在の裁判所公開資料と,判例タイムズ1495号及び1497号に掲載された令和4年(2022年)のシンポジウム記録を区別して整理するものである。
シンポジウム記録にある件数,割合及び運用は,当時の実務報告であり,現在も同一であると断定できない。現在の担当部は最新の裁判所資料で確認し,個別事件の進行は担当部の指示に従う必要がある。

第2 現在の担当部

1 民事第14部,第30部,第34部及び第35部

東京地裁が公開している霞が関庁舎のダイヤルイン一覧では,民事第14部,第30部,第34部及び第35部に「通常・医療部」と表示されている。したがって,東京地裁本庁の医療事件を集中的に担当する部は,この4か部であると確認できる。
東京地裁霞が関庁舎のダイヤルイン一覧には各部の係別電話番号も掲載されている。ただし,問い合わせ先は事件の係属部及び担当係を確認した上で選ぶ必要がある。

2 担当裁判官と担当部の確認

東京地方裁判所の民事部担当裁判官一覧は,令和8年4月24日現在のものとして,民事第14部,第30部,第34部及び第35部の担当裁判官を掲載している。同一覧自体には各部が医療集中部であるとの表示がないため,医療部であることは前記ダイヤルイン一覧と突き合わせて確認するのが安全である。
裁判官の異動,部の担当事務及び電話番号は変更され得る。提出又は照会の直前に裁判所ウェブサイトの最新版を再確認すべきである。

第3 発足までの経緯

1 平成10年から平成13年まで

国立国会図書館の調査資料によれば,平成10年(1998年)に医療関係訴訟の運営に関する司法研究が始まり,平成11年(1999年)に東京地裁の委員会が医療事件の集中処理を提案した。東京地裁は平成12年(2000年)4月から民事第14部,第30部,第34部及び第35部で試行し,平成13年(2001年)4月に医療集中部を発足させた。
判例タイムズ1495号21頁のシンポジウム記録も,1年間の試行を経て平成13年4月に4か部が発足したと説明している。発足時には,裁判長が争点整理に主体的に関与できるよう配点を調整し,4か部で早期に共通の審理運営を形成することが意識されていた。

2 発足の目的

最高裁判所医事関係訴訟委員会の答申は,東京及び大阪の地方裁判所に平成13年4月から医療関係訴訟の集中部が設けられたとし,審理上のノウハウを蓄積するとともに,地域の医療界との連絡窓口として機能することが期待されると述べている。
したがって,集中部の意義は,単に事件を同じ部へ集める点だけにない。争点整理,医学的知見の獲得,鑑定人確保及び医療界との継続的な協議を一体として改善するところにある。

第4 医療集中部の審理運営

1 提訴前の調査と訴状

判例タイムズ1497号19頁から20頁では,医療事件では,提訴前に診療録に基づく診療経過の整理,医学文献の調査,協力医への相談及び医療機関への照会を行い,具体的な注意義務違反と因果関係を絞り込む必要性が繰り返し指摘されている。
集中部は当事者の調査又は立証を代行する制度ではない。争点を特定しないまま提訴すると,争点整理に長期間を要し,専門委員を早期に選任しても,当事者が負う主張立証の不足を当然に補えるわけではない。

2 診療経過と争点の可視化

判例タイムズ1495号21頁から22頁によれば,医療集中部の審理は,基本的書証を早期に提出し,診療経過一覧表によって時系列を共有し,当事者が参加して争点整理表を作成した上で,集中証拠調べへ進むという考え方を基礎としている。
同号25頁は,令和4年当時の取組として,訴え提起後2,3か月以内に実質的な答弁を踏まえた第1回期日を開くこと,ウェブ会議前に注意義務違反の内容等を記載したアジェンダを共有し,期日後に議論の到達点と次回までの準備事項を共有することを紹介している。これらは,期日間の準備を明確にし,争点整理を口頭議論だけで終わらせないための工夫である。

3 証人尋問の位置付け

判例タイムズ1497号27頁から28頁では,裁判官は診療録等から尋問前に暫定的な心証を形成するものの,事実関係に争いがある事件では,その心証を検証し,事案の理解を深めるために尋問が重要であると説明されている。
したがって,書面と医学文献が充実していることと,尋問が常に不要であることは同じではない。担当医,患者本人及び協力医の供述が,書面上の前提と一致するかを確認する機会として意味を持つ。

第5 医学的知見を審理へ取り入れる方法

1 医学文献と協力医の意見書

判例タイムズ1495号23頁から24頁及び1497号23頁から24頁によれば,協力医の意見書では,その医師が争点となる分野の専門的知見を有すること,事件の具体的事実を前提としていること,医学的知見の根拠となる文献を示していることが重要である。
意見書は,提出すれば足りるものではない。診療録,医学文献及び意見書の前提を照合し,争点との関係を説明する必要がある。また,争点が定まる前に網羅的な意見を求める場合と,争点整理後に焦点を絞った意見を求める場合とでは,意見書の目的が異なる。

2 専門委員

専門委員は,民事訴訟法92条の2に基づき,専門的知見について説明し,証人等への発問又は和解の場面に関与する制度である。判例タイムズ1497号20頁から22頁は,画像又は手術動画の理解などで有用な場合がある一方,専門委員を当事者の協力医又は鑑定人の代替として丸投げする制度ではないと説明している。
同記録によれば,東京地裁で専門委員に一般的説明を超える具体的意見を求める場合は,当事者双方の同意,質問事項及び資料範囲の事前確認,調書化並びに反証機会の保障が重要とされる。専門委員の説明又は意見をどこまで証拠として用いるかは,手続保障と区別して検討する必要がある。

3 鑑定とカンファレンス方式

最高裁判所医事関係訴訟委員会は,医事関係訴訟の鑑定人候補者を選定し,裁判所へ推薦することなどを目的として平成13年7月に設置された。鑑定人候補者の推薦経路は,医療訴訟の鑑定人はどう選ばれるか(AI作成)で別に整理している。
東京地裁では,複数の医師が事前の暫定意見を踏まえて法廷で相互に議論し,裁判所及び当事者が質問するカンファレンス方式の鑑定が行われてきた。判例タイムズ1497号29頁から31頁によれば,医学文献,協力医意見書及び医師尋問を経ても医療水準,機序又は因果関係について心証を形成できない事件が主な対象となる。鑑定の前に争点と鑑定事項を絞り込み,それまでの立証を充実させることが,鑑定の質を左右する。

第6 和解と統計の読み方

1 和解の機能

判例タイムズ1497号31頁から33頁は,令和4年当時の東京地裁では尋問前に成立する和解の割合が高かった背景として,診療録,医学文献及び協力医意見書により,尋問前でも暫定的な心証を形成できる事件が多いことを挙げている。
医療事件の和解では,金銭だけでなく,説明,謝罪,再発防止又は当事者間の認識共有が問題となる場合がある。ただし,和解は一方当事者の全面的譲歩を意味せず,判決で公的判断を示す必要がある事件もあるため,個別事案に応じて選択される。

2 令和7年の全国統計

裁判所が公表した令和7年(2025年)の医事関係訴訟統計では,全国の地方裁判所における新受件数は676件,既済件数は674件,平均審理期間は24.1月である。既済事件の終局区分は,和解51.3%,判決35.8%,その他12.9%であり,判決の認容率は23.9%である。
これらは全国の地方裁判所の概況であって,東京地裁医療集中部だけの数字ではない。また,認容率の分母は判決事件であり,和解事件を含む相談又は提訴全体の成功率ではない。詳しくは,医療訴訟の統計(令和7年)(AI作成)を参照されたい。

第7 制度を利用する際の注意点

1 集中部であることと立証責任

医療集中部には医療訴訟の審理運営に関する経験が蓄積されているが,患者側又は医療機関側の立証責任を軽くする制度ではない。診療録,画像,医学文献,意見書及び供述の関係を整理し,どの事実から注意義務違反又は因果関係を導くのかを具体的に示す必要がある。
医療過誤事件の調査・立証・判例・消滅時効(AIリライト)は,個別事件の調査及び立証に関する論点を別に扱っている。本記事は集中部の組織及び審理運営を説明するものであり,個別事件の見通しを示すものではない。

2 古い運用資料と現在情報の区別

平成13年の発足経緯,平成14年以降のカンファレンス鑑定及び令和4年のシンポジウム記録は,制度の形成過程と当時の運用を知る重要な資料である。しかし,過去の件数,部の構成,書式又は期日の運び方が現在も同じとは限らない。
専門部と集中部の一般的な違い及び他の地方裁判所の担当部については,地方裁判所の専門部及び集中部(AIリライト)を参照されたい。

第8 主な出典及び参考資料

1 裁判所及び国会図書館の資料

東京地方裁判所・民事部担当裁判官一覧
東京地方裁判所・霞が関庁舎ダイヤルイン一覧
最高裁判所・医事関係訴訟委員会
最高裁判所・医事関係訴訟委員会答申
国立国会図書館「医療事故をめぐる制度改革-医療事故調査制度と医療事故訴訟を中心に-」
最高裁判所・医事関係訴訟統計

2 判例タイムズ掲載論文

「東京地裁医療集中部20年を迎えて その到達点と課題(1)」判例タイムズ1495号20頁から43頁(2022年)
「東京地裁医療集中部20年を迎えて その到達点と課題(2)」判例タイムズ1497号19頁から36頁(2022年)
判例タイムズ1495号の公開書誌
判例タイムズ1497号の公開書誌