地方裁判所の専門部及び集中部

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目次
1 総論
2 各地方裁判所の専門部及び集中部,並びに破産再生執行保全部
3 専門部に関する国会答弁
4 東京地裁専門部の裁判官が執筆した書籍
5 医事部
6 専門部及び集中部に関する外部HPの説明
7 東弁リブラの「東京地裁書記官に訊く」等
8 行政事件に関するメモ書き
9 医事事件に関するメモ書き
10 関連記事その他
    
1 総論
(1) 専門部とは,特定の種類の事件が集中的に配点され,かつ,通常の事件が配点されない部をいい,集中部とは,特定の種類の事件が集中的に配点され,かつ,通常の事件も配点される部をいいます。
    ただし,破産事件,再生事件,執行事件又は保全事件を担当している部は通常,専門部又は集中部とはいわれません。
(2) 専門部があるのは東京地裁及び大阪地裁だけです。
(3) 専門部又は集中部につき,取り扱う事件の範囲はそれぞれの裁判所の事務分配で定められていますから,微妙に内容が異なります。
   
2 各地方裁判所の専門部及び集中部,並びに破産再生執行保全部
(1) 東京地裁の場合
ア   2民,3民,38民及び51民が行政専門部であり,8民が商事専門部であり,11民,19民,33民及び36民が労働専門部であり,14民,34民及び35民が医療集中部であり,22民が調停・借地非訟・建築専門部であり,27民が交通専門部であり,29民,40民,46民及び47民が知財専門部です。
イ   9民が保全部であり,20民が破産再生部であり,21民が執行部です。
ウ 東京地裁46民につき,2005年11月14日発行の「特技懇」誌第239号「知財部に配属になって」が参考になります。
(2) 横浜地裁の場合
ア   1民が行政・知財集中部であり,4民及び5民が医療集中部であり,6民が交通集中部であり,7民が労働集中部です。
イ   3民が破産再生執行保全部です(横浜地裁HPの「第3民事部の業務」参照)。
(3) さいたま地裁の場合
ア   1民が医療集中部であり,4民が行政・知財集中部であり,5民が労働集中部です。
イ   3民が破産再生執行保全部です。
(4) 千葉地裁の場合
ア   1民が労働・知財集中部であり,2民が医事集中部であり(千葉地裁HPの「医療集中部における取組」参照),3民が行政集中部です。
イ   4民が破産再生執行保全部です。
(5) 大阪地裁の場合
ア   2民及び7民が租税・行政専門部であり(平成28年3月までは行政集中部でした。),4民が商事専門部であり,5民が労働専門部であり,10民が建築・調停専門部であり,15民が交通専門部であり,17民,19民及び20民が医療集中部であり,21民及び26民が知財専門部です。
イ   1民が保全部であり,6民が破産再生部であり,14民が執行部です。
ウ 平成30年12月10日付の大阪地裁の司法行政文書不開示通知書によれば,大阪地裁第15民事部の審理モデルが書いてある文書は,同日までに廃棄されました。
(6) 京都地裁の場合
ア   2 民が知財集中部であり,3民が行政集中部であり,4民が交通集中部であり,6民が労働集中部です。
イ   5民が破産再生執行保全部です。
(7) 神戸地裁の場合
ア   1民が交通集中部であり,2民が行政集中部であり,5民が知財集中部であり,6民が労働集中部です。
イ   3民が破産再生執行保全部です。
(8) 名古屋地裁の場合
ア   1民が労働集中部であり,3民が交通集中部であり,4民が医療集中部であり,9民が行政集中部です。
イ   2民が破産再生執行保全部です。
(9) 広島地裁の場合
ア   1民が医療集中部であり,3民が労働集中部です。
イ   4民が破産再生執行保全部です。
(10) 福岡地裁の場合
ア   3民が医療集中部であり,5民が行政・労働集中部です。
イ   4民が破産再生執行保全部です。
(11) 仙台地裁の場合
ア   3民が医療集中部です。
イ   4民が破産再生執行保全部です。
(12) 札幌地裁の場合
ア   2民が医療集中部であり,3民が建築集中部です。
イ   4民が破産再生執行保全部です。


3 専門部に関する国会答弁
・ 35期の安浪亮介最高裁判所人事局長は,平成26年3月27日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 専門事件につきまして、事件数が多い庁につきましては専門部あるいは集中部という体制を取りまして、その知見を集中的に活用するという体制を、ノウハウというのを活用するという体制を取っております。
    そのような専門部、集中部につきましては一定のやはり事件数があるということが前提になるわけですけれども、そういうような要件を満たすような庁につきましてはそのような体制を今後とも考えていって、それぞれの事件について、裁判官についてもそのノウハウの蓄積、そのノウハウの活用ということをやっていきたいというふうに考えているところでございます。
② 各裁判所におきます裁判官の配置につきましては、毎年それぞれの裁判所の裁判官会議の議決によって定められるものでございます。
    東京地裁の行政部についてお尋ねがございましたが、東京地裁におきましても、裁判官会議の議決によりまして行政部の裁判官の配置を決めておるものでございます。
    その際に、殊更こういう裁判官を行政部にというふうなことで配置していることは考えられないところでありますし、最高裁といたしましても、そのようなことはあり得ないものと考えております。


4 東京地裁専門部の裁判官が執筆した書籍
(1) 裁判実務シリーズとして以下の書籍が出版されています(至誠堂書店HP「シリーズから探す」「商事法務 裁判実務シリーズ」参照)。
労働関係訴訟の実務,特許訴訟の実務,民事保全の実務
民事再生の手引,医療訴訟の実務,会社訴訟の実務
行政関係訴訟の実務,著作権・商標・不競法関係訴訟の実務
交通関係訴訟の実務,破産実務の基礎
(2)ア 東京地裁8民(破産部)の裁判官は,「破産・民事再生の実務」破産編民事再生・個人再生編のほか,「会社更生の実務」上巻下巻を執筆しています。
イ 東京地裁9民(保全部)の裁判官は,「民事保全の実務」上巻下巻を執筆しています。
ウ 東京地裁11民,19民,33民及び36民(労働専門部)の裁判官は,「類型別 労働関係訴訟の実務〔改訂版〕」Ⅰを執筆しています。
ウ 東京地裁21民(執行部)の裁判官は,「民事執行の実務 債権執行編」上巻下巻,及び「民事執行の実務 不動産執行編」上巻下巻を執筆しています。
エ 東京地裁22民(調停・借地非訟・建築専門部)の裁判官は,「Q&A 建築訴訟の実務-改正債権法対応の最新プラクティス」を執筆しています。
(3) 東京地裁民事交通訴訟研究会が執筆した「別冊判例タイムズ38号 (民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版) 」は,平成26年7月4日に判例タイムズ社から出版されています。



5 医事部
(1) 医療事故情報センターHPの「集中部型審理形骸化への警鐘」には「医療事件の集中部の設置は、平成13年4月の東京地裁(4ヶ部)からスタートし、以後、大阪、名古屋、さらには横浜、さいたま、千葉、札幌等の各地裁へと拡がっていきました。」と書いてあります。
(2) 大阪地裁HPの「第1部 医事部の誕生」には以下の記載があります。
    大阪地方裁判所では,平成13年4月,医療訴訟を集中的に取り扱う医事事件集中部(以下「医事部」といいます。)が2か部発足し,第17民事部と第19民事部が,医事部として,医療訴訟を集中的に取り扱ってきました。平成19年4月からは,新受事件の増加等を背景として,第20民事部も医事部となり,以後,3か部体制となっています。


6 専門部及び集中部に関する外部HPの説明
(1) 東北大学法科大学院HPの「民事訴訟における専門部・集中部について」には以下の記載があります。
    下級裁判所においては,部が複数あるとき,係属した事件をどの部で取り扱うかは各裁判所の裁判官会議において予め定められた事務分配規程の定めるところによるが,規模の大きな裁判所では,専門性の強い事件について特定部を取扱部と定めて,一つ又は複数の部に集約して取り扱うこととされていることが多い。例えば東京地裁では,行政・労働・知財・医療・建築・交通・商事の七つの専門訴訟について,専門的に取り扱う部を設け,これらの事件はそれ以外の部では取り扱われない。
    もっとも,このようにして特定の部で取り扱う専門訴訟事件は,各庁ごとにその取扱範囲が定義されており,同じように「行政部」「労働部」「建築部」という表現がされていても,その取り扱う範囲は各裁判所によって微妙に異なっている。東京地裁の場合,行政事件であっても,公務災害不認定処分の取消しなど労働に関する行政事件は労働部に,知的財産権に関する行政処分に関する行政事件は知財部が取り扱うものとされ,「行政部」(2 部・3 部・38 部・51 部)では取り扱われない。
    当該部が専ら特定の種類の事件のみを取り扱い,通常事件の配てんを受けないときには,その部を「専門部」と呼び,通常事件も併せて取り扱うときには,その部を「集中部」と呼んでいる。
(3) 林総合法律事務所HP「東京地裁での民事訴訟 – 通常部・専門部・集中部」が載っています。


7 東弁リブラの「東京地裁書記官に訊く」等
 東弁リブラには以下のとおり「東京地裁書記官に訊く」等が載っています。
・ 東弁リブラ2009年 1月号「東京地裁書記官に訊く(上)-保全・執行・刑事編-」
・ 東弁リブラ2009年 3月号「東京地裁書記官に訊く(下)-民事訴訟手続・破産編-」
・ 東弁リブラ2009年 7月号「東京家裁書記官に訊く-家事部編-」
・ 東弁リブラ2010年11月号「東京地裁書記官に訊く-建築関係訴訟・借地非訟編-」
・ 東弁リブラ2011年12月号「東京家裁書記官・調査官に訊く-少年部編-」
・   東弁リブラ2012年11月号「東京地裁書記官に訊く-労働部編-」
・ 東弁リブラ2013年 8月号「東京地裁書記官に訊く-交通部編-」
・ 東弁リブラ2014年11月号「東京地裁書記官に訊く-商事部編-」
・ 東弁リブラ2015年 5月号「東京高裁書記官に訊く-民事部・刑事部編-」
・ 東弁リブラ2021年10月号「東京簡裁書記官に訊く-民事訴訟手続を中心に-」
・ 東弁リブラ2021年11月号「東京地裁書記官に訊く-交通部編(2021年版)-」
・ 東弁リブラ2022年 9月号「東京地裁書記官に訊く-建築関係訴訟・借地非訟編-」

8 行政事件に関するメモ書き
(1)  医療法30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たります(最高裁平成17年7月15日判決)。
(2)ア 公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かの管理者の判断の適否に関する司法審査は,その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となります(最高裁平成18年2月7日判決)。
イ 弁護士法人ベリーベスト法律事務所代理人の阿部泰隆弁護士が東京地裁に提出した,「意見の要旨-本件のポイント-」(令和4年9月20日付)には「(山中注:裁量(要件を満たしたときに処分をすることができるという効果裁量)が認められる場合でも、最近の判例は、考慮すべき事項を適切に考慮したか、考慮すべきでない事項を考慮していないかについて、行政の判断過程を審理するのが主流です(最判平成19年12月7日判決民集61巻9号3290頁最判平成18年2月7日民集60巻2号401頁、最判平成18年9月8日判時1948号26頁等)。」と書いてあります。
(3)ア  情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において,不開示とされた文書を目的とする検証を被告に受忍義務を負わせて行うことは,原告が検証への立会権を放棄するなどしたとしても許されず,上記文書を検証の目的として被告にその提示を命ずることも許されません(最高裁平成21年1月15日決定)。
イ 開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟においては,その取消しを求める者が,当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負います(最高裁平成26年7月14日判決)。

9 医事事件に関するメモ書き
(1)ア 判例タイムズ1330号(平成22年11月1日号)及び判例タイムズ1331号(平成22年11月15日号)に「座談会 医事関係訴訟における審理手続の現状と課題」が載っています。
イ 判例タイムズ1389号(平成25年8月号)に,東京地裁医療訴訟対策委員会が作成した「医療訴訟の審理運営指針(改訂版)」が掲載されています。
(2)ア 自由と正義2021年12月号5頁ないし7頁に「ひと筆 弁護士と医師の仕事の両方を経験して」が載っています。
イ 弁護士平井健太郎HP「東京地方裁判所医療集中部における事件概況等(平成31年・令和元年)」が載っています。
(3)ア セコム医療システム株式会社HP「電子カルテを導入するメリット・デメリット」が載っています。
イ 社会保険労務士法人全国障害年金パートナーズHP「自殺率の高い4つの職業 | 社会保険労務士事務所 全国障害年金パートナーズ」によれば,医師が一番,自殺率が高い職業とのことです。
(4) 厚生労働省HPに「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」(令和元年12月25日付の厚生労働省医政局長の文書)が載っています。
(5) 最高裁平成13年11月27日判決は, 乳がんの手術に当たり当時医療水準として未確立であった乳房温存療法について医師の知る範囲で説明すべき診療契約上の義務があるとされた事例です。

10 関連記事その他
(1) 司法の窓80号(平成27年5月発行)「不動産競売物件情報サイト(BIT)が新しくなりました」が載っています。
(2) 二弁フロンティア2021年4月号「建築紛争処理の実務」が載っています。
(3)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 令和3年度専門訴訟担当裁判官事務打合せ 協議結果要旨及び配布資料
イ 以下の記事も参照してください。
 高裁の部総括判事の位置付け
・ 高等裁判所の集中部
・ 部の事務を総括する裁判官の名簿(昭和37年度以降)
・ 東京地裁民事第27部(交通部)
・ 東京地裁裁判官会議の概況説明資料

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