メインコンテンツへスキップ
       

交換部品・保守サービスの締出しと独占禁止法―アフターマーケットと技術的ロックアウト(AI作成)

第1 アフターマーケットとは何か

機械,設備,車両,ソフトウェアその他の本体を購入した後に必要となる交換部品,消耗品,修理,保守,診断,アップデート又はデータ利用の取引分野を,アフターマーケットと呼ぶことがある。
本体市場に複数のメーカーがいても,購入後に他社製品へ切り替える費用が高く,特定メーカーの部品・情報・認証が不可欠であれば,そのメーカーの製品ごとに強い拘束が生じ得る。

もっとも,「純正部品しか使えない」「独立系業者へ情報を渡さない」という事情だけで,直ちに独占禁止法違反になるわけではない。
安全性,品質保証,サイバーセキュリティ,知的財産権及び製造物責任に関する合理的な理由と,競争者排除の効果を具体的に比較する必要がある。

第2 まず市場と競争への影響を具体化する

独占禁止法上の検討では,①本体,②交換部品,③修理・保守,④診断装置・ソフトウェア,⑤技術情報及び⑥データのどこに競争上の制約があるかを分ける。
需要者が本体購入時に将来の保守費用を予測できたか,他社本体へ切り替えられるか,部品・情報に代替があるか,独立系保守業者が自ら調達・開発できるかを確認する。

関連市場を狭く画定すれば違法になるというものではない。
市場画定は出発点であり,行為者の地位,代替供給者,参入障壁,顧客の切替費用,対象行為の期間・範囲及び川下市場で競争者の事業活動が困難になる程度を総合評価する。

第3 問題となり得る行為

1 交換部品・診断情報等の供給拒絶

事業者が誰に商品を供給するかを選ぶことは,原則として自由である。
しかし,川下市場で事業を行うために不可欠で,自らの投資・技術開発による代替調達が現実的に困難な部品,情報又は機能について,合理的な範囲を超えて供給を拒絶し,独立系事業者の活動を困難にする場合は,排除型私的独占又は不公正な取引方法が問題となり得る。

供給拒絶には,明示的な拒否だけでなく,実質的に利用できない納期,正当なコスト差を超える価格差,差別的な数量制限及び過大な技術条件が含まれ得る。
他方,信用不安,供給能力,安全規格,知的財産権侵害の具体的危険又は過去の取引実績に基づく合理的な条件差まで一律に違法となるわけではない。

2 抱き合わせと保証条件

部品のみを販売せず,自社の取替え・修理・調整工事も併せて発注することを条件とする行為は,部品と保守サービスの抱き合わせとして検討対象となる。
本体保証を維持する条件として純正部品又は指定業者の利用を求める場合も,対象,期間,必要性及び違反時の効果を具体的に確認する。

安全上不可欠な一体提供と,独立系保守業者を排除するための一体提供は区別する必要がある。
故障原因の切分け,部品の適合性,作業資格,事故記録及び第三者認証を用いて,より競争制限的でない代替手段があるかを検討する。

3 知的財産権・技術的制限

公正取引委員会の知的財産ガイドラインは,知的財産権の行使とみられる行為であっても,実質的に権利の行使とは評価できず,知的財産制度の趣旨を逸脱し又は目的に反する場合は,独占禁止法21条の適用除外にならないとする。
ライセンス拒絶は通常それ自体で問題とならないが,競争者排除の目的・効果,権利取得の経緯,標準化,代替技術及び市場への影響によって評価が変わる。

暗号化,認証チップ,ソフトウェアロック,遠隔停止,診断ポートの制限又は部品ペアリングは,安全・セキュリティの手段にも,独立系事業者を排除する手段にもなり得る。
実装目的,必要性,対象範囲,解除手段,費用,事故防止効果及び競争への影響を設計段階から記録すべきである。

第4 公取委指針のエレベーター部品事例

公取委「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」は,エレベーター製造会社の子会社が,親会社製エレベーターの部品を一手に販売し,独立系保守業者と契約するビル所有者に対し,部品のみの販売をせず,自社への取替え・修理・調整工事の発注を条件とし,その後も部品を供給しなかった事例を紹介している。
指針は,この行為が不公正な取引方法に該当し,独占禁止法19条に違反するとされた大阪高判平成5年7月30日を参考例として挙げる。

この事例から,部品供給市場と保守市場を分け,部品が川下の保守事業に不可欠か,供給拒絶が独立系業者の活動を困難にするかを見る視点を得られる。
ただし,本稿では公取委の公式指針による引用を確認したものであり,当該判決の裁判所ウェブサイト又は判例秘書の全文は確認していない。

第5 違法性を左右する事情

次の事情を一つの表で整理すると,法的評価と事実調査を接続しやすい。

① 本体・部品・保守・情報の各市場と取引構造
② 行為者及び競争者のシェア,供給余力,ブランド力
③ 代替部品,互換品,代替情報及び他社本体への切替可能性
④ 顧客が本体購入時に保守条件を認識・比較できたか
⑤ 供給拒絶,価格差,納期,数量制限及び抱き合わせの内容
⑥ 対象となる顧客・競争者の数,期間及び取引数量
⑦ 安全,品質,セキュリティ,知的財産及び供給制約の根拠
⑧ より競争制限的でない代替手段
⑨ 川下市場からの退出,価格上昇,品質低下その他の効果
⑩ 行為決定時の社内資料,説明及び目的

「市場シェアが高いから違法」「特許があるから適法」という一要素だけの判断は避ける。
不公正な取引方法,排除型私的独占,抱き合わせ,取引拒絶及び差別的取扱いは要件と競争への影響の程度が異なる。独占禁止法上の類型全体は,不公正な取引方法に関する実務メモ(AIリライト)を参照されたい。

第6 証拠収集と社内審査

供給を拒絶された側は,注文日,部品番号,必要数量,見積条件,回答,納期,過去取引,代替調達の照会,修理停止期間,顧客流出及び損害を記録する。
口頭回答だけでなく,注文書,電子メール,録音,ウェブ掲載条件,価格表及びサービスマニュアルを保存する。

供給側は,安全・品質・セキュリティ上の理由を抽象語で済ませず,リスク評価,事故例,試験結果,資格要件,原価,供給能力及び例外承認の基準を保存する。
営業部門の競争者排除を示す表現と,技術部門の必要性説明が矛盾していないかを法務部門が確認する。

新しい部品認証,ソフトウェアロック又は保守契約条件を導入するときは,本体販売後に顧客が予測できない負担を課すか,既存の独立系事業者を排除するかを事前に審査する。
本体設計,利用規約,保証,部品供給及びデータアクセスを別々の部署だけで決めず,アフターマーケット全体の競争影響を確認すべきである。

第7 一次資料と確認状況

本稿は,独占禁止法,公取委の排除型私的独占ガイドライン,知的財産ガイドライン及び流通・取引慣行ガイドラインを一次資料として作成した。
エレベーター部品事例は公取委指針による確認であり,判決本文は未確認である。判例秘書は今回利用していない。法務省の令和4年司法試験「出題の趣旨」及び「採点実感」は閲覧していない。