第1 この記事の対象と結論
平成19年司法試験の論文式試験・民事系科目第1問(商法)は,経営方針をめぐってA派とB派が対立する上場会社の甲会社において,A派の主導で乙会社に対する第三者割当てによる募集株式の発行が行われた事案である。
出題の趣旨によれば,設問1は第三者割当ての実施後にB派が執り得る対抗手段を,設問2は甲会社の株式を引き受けた乙会社の取締役の会社に対する責任を問うものである。
この記事は,法務省の出題の趣旨と,考査委員が採点実感等を述べた民事系科目のヒアリングの概要を基に24の評価項目を設け,そのうち7項目を重み5とした。
評価項目と重みは本記事独自の整理であり,法務省の採点基準や配点を示すものではない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 平成19年新司法試験論文式試験・民事系科目第1問(商法) |
| 問題文 | 論文式試験問題集[民事系科目](PDF1~8頁の第1問・資料①~③) |
| 試験日・答案の基準 | 平成19年5月18日(民事系科目第1問の論文式試験)。答案は試験当時の法令による。 |
| 出題の趣旨 | 平成19年新司法試験論文式試験問題出題趣旨(PDF3~4頁の民事系科目第1問) |
| 採点実感 | 新司法試験考査委員(民事系科目)に対するヒアリング概要(PDF8~11頁の商法) |
| 主な事項 | 有利発行,取締役会の招集と決議の効力,不公正発行,募集株式の発行の無効原因,引受人の差額支払義務,経営判断の原則,減損処理と損害 |
| 評価項目 | 24項目。重み5は7項目,重みの合計は98。 |
| 主な裁判例 | 募集株式の発行の無効原因について,最高裁昭和36年3月31日第二小法廷判決,最高裁昭和46年7月16日第二小法廷判決,最高裁平成6年7月14日第一小法廷判決及び最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決。取締役会の招集通知の欠缺について,最高裁昭和44年12月2日第三小法廷判決。 |
| 答案の分量 | 4942字(見出し,空白及び改行を除く。) |
| 法令の基準 | 試験当時の会社法(平成17年法律第86号)及び民法による。 |
| 資料の確認日 | 令和8年11月7日 |
本稿の答案は,払込金額の300円は特に有利な金額であり,本件の第三者割当ては主としてA派の経営上の地位を確保するための著しく不公正な方法による発行であると評価する。
その上で,適法な公告により株主に差止めの機会が与えられていたことなどから,各瑕疵は発行の無効原因とはならないとし,乙会社の差額支払義務等の金銭による措置を検討する。
設問2では,Cの離脱の危険と乙会社自身の統合利益を比較する判断過程を検討し,問題文の事実だけからはY1及びY2に8億8000万円の賠償責任を負わせることはできないとする。
重み5の7項目は,発行後の手段としての新株発行無効の訴え(番号1),払込金額の公正性(番号5),発行の主要な目的(番号9),差止事由と無効原因の区別(番号10),経営判断の審査の基準(番号18),二つの資料の比較による取得判断の評価(番号21),減損処理の額と法的な損害の区別(番号23)である。
第3に事実関係と設問の要求,第4に評価項目と重み,第5に答案と解説,第7に出典を置く。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
評価項目は,出題の趣旨と採点実感の指摘を,答案の記載から判定できる単位に言い換えた本稿独自の基準である。
表の番号は記事全体で通している。
出題の趣旨・採点実感の欄は,法務省が公表したPDFの頁と,関連する記載の要旨である。
平成19年の民事系科目では,採点実感等は司法試験委員会第40回(平成19年9月12日)の考査委員に対するヒアリングの概要として公表されているので,採点実感欄はその商法部分の頁と要旨を示す。
一方の資料に対応する記載がない場合は「記載なし」,一般的な指摘から導く場合は「間接」と表示する。
採用する構成によって評価する項目が異なる場合は,【適用条件】を付けた。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | その設問の判断を大きく分ける核心 |
| 4 | 結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ |
| 3 | 通常押さえる法的処理・事情の評価 |
| 2 | 論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意 |
| 1 | 補充的な引用・記述範囲の確認 |
重みとその合計は本記事独自の整理であり,法務省の配点,採点基準又は得点の目安を示すものではない。
条件付きの項目も重みの分布と合計に含める。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
甲会社は自動車の電子部品を製造する東京証券取引所(マザーズ)の上場会社であり,兄弟であるA1(代表取締役社長)とB1(取締役副社長)が共同経営を行ってきた。
取締役会は,A1とその妻A2,B1とその友人B2及び取引金融機関から出向しているDの5名で構成されていた。
甲会社の収益の柱であるゲームソフト開発部門は,B1と親交のあるCが責任者を務めていた。
業績に陰りが見え始めるとA1とB1の対立が生じ,甲会社の株価は300円前後に低迷した。
乙会社から経営統合の話が持ち込まれ,A1はこれに前向きの姿勢を見せたが,B1は経営陣による公開買付けの実施について外資系ファンドとの交渉を始めた。
これらの動きが報道されたことを契機として,甲会社の株価は平成18年5月中旬に900円台に急騰した。
A1は,B1とB2が海外出張に出かけた時期を見計らい,平成18年6月7日に臨時取締役会を開催した。
書面による招集通知は定款所定の期限(会日の2日前)までの6月4日に発され,B1らは同日に電子メールでも同内容の連絡を受けたが,取締役会までに帰国できなかった。
取締役会は,出席した3名の全員の賛成で,乙会社に550万株を1株300円で割り当てる募集株式の発行を決議した。
株主総会は開催されておらず,払込金額は直前6か月間の株価の平均額に90パーセントを掛けて算定された。
適法な公告の下で発行が行われ,乙会社は甲会社の議決権の55パーセントを保有する株主となり,B1とB2は9月の定時株主総会で再任されなかった。
乙会社は,株式を引き受けるに当たり,法律事務所の意見書(資料②)と監査法人の報告書(資料③)を受領していた。
意見書は,経営陣が交代すればB1に恩義を感じているCが退職するおそれが高く,ソフト開発部門が現状の収益を上げ続けることは非常に困難であるとし,報告書は,経営統合による約24億円の相乗効果の見込みを不合理とはいえないとした。
引受け後,Cが丙会社に引き抜かれて甲会社の株価は急落し,乙会社は保有する甲会社株式の評価額を1株当たり300円から140円とする減損処理を行った。
乙会社の株主Xは,乙会社に対し,代表取締役Y1と担当取締役Y2の損害賠償責任を追及する訴えを提起するよう求めた。
2 設問が求めること
設問1は,募集株式の発行が行われた後において,B1がどのような法律上の措置を執ることができるかを問う。
発行の効力を争う手段と,発行の効力が維持される場合にも残る引受人等の責任とを区別する必要がある。
B1が甲会社の株主であるかどうかは,問題文からは確定しない。
設問2は,Y1及びY2の乙会社に対する責任を問う。
株式を引き受けた時点の判断の当否と,その後の株価の下落による損害とを分けて論じる必要がある。
Xの提訴請求は,乙会社に帰属する損害賠償請求権を株主が追及する手続の前提となる事実である。
第4 評価項目と重み
1 設問1 発行後にB1が執り得る措置
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 発行後は株式発行無効の訴えにより効力を争う。 | 5 | PDF3頁。新株発行無効の訴えの提起が許されるかどうかの検討 | PDF8頁。新株発行無効の訴えの提起が許されるかどうかの検討が中心であること |
| 2 | 公開会社の提訴期間と,任期満了後のB1の提訴資格を具体化する。 | 4 | PDF3頁。新株発行無効の訴えの提起が許されるかどうか(期間と資格は本記事の具体化) | 間接(PDF8頁。訴えの提起が許されるかどうかの検討) |
| 3 | 認容確定判決の対世効及び将来効を,乙の支配関係への効果に結び付ける。 | 3 | 間接(PDF3頁。いかなる法的手段が可能かの検討) | 記載なし |
| 4 | 公開会社の通常の発行と,特に有利な払込金額の場合の株主総会特別決議・説明を区別する。 | 4 | PDF3頁。株主総会の決議を経ていないための有利発行規制違反 | PDF8頁。株主総会の決議を経ていないための有利発行規制違反 |
| 5 | 300円の公正性を,5月中旬以降の900円台の株価,6か月平均の9割という算定方法及び株価上昇の事情から判断する。 | 5 | PDF3頁。発行直前の市場価格を大きく下回る価額での発行 | PDF9頁。企業提携の動きと株価の推移を踏まえた有利性の議論で差が付いたこと |
| 6 | 特に有利な払込金額と判断する場合に,総会特別決議を欠く法令違反を指摘する。【適用条件】特に有利な払込金額と評価するとき | 3 | PDF3頁。有利発行規制に違反するかどうか | PDF8頁。株主総会の決議を経ていないこと |
| 7 | 定款所定の招集通知の発信時期と,取締役の出席・賛成の法定数を確認する。 | 3 | 間接(PDF3頁。海外出張中に行われた取締役会決議の効力) | 間接(PDF8頁。海外出張中に抜き打ち的に行われた取締役会決議の効力) |
| 8 | 反対派の出張中を狙った招集について,通知の認識と討議参加の機会を区別して決議の効力を検討する。 | 4 | PDF3頁。B派の取締役の海外出張中に行われた取締役会決議の効力 | PDF8~9頁。抜き打ち的に行われた決議の効力と,瑕疵ごとに何が法的問題かの正確な議論 |
| 9 | A派の地位確保と事業統合の利益を比較し,発行方法の主要な目的を判断する。 | 5 | PDF3頁。A派の支配権を維持するための不公正発行であったか | PDF9頁。企業提携の動きを踏まえた不公正発行の議論で差が付いたこと |
| 10 | 発行前の差止事由と発行後の無効原因を区別し,株主の差止機会を適法な公告のある本件に接続する。 | 5 | PDF3頁。瑕疵が認められる場合にそれらが無効原因となるか(差止めの機会と公告の位置付けは本記事の具体化) | PDF8頁。瑕疵が認められる場合にそれが無効原因になるかも併せて考えること |
| 11 | 取締役会の瑕疵について,会社内部の意思形成と株式取引の安全を分け,無効原因となるか判断する。 | 4 | PDF3頁。各瑕疵が無効原因となるか | PDF8~9頁。取締役会決議の効力と瑕疵ごとの議論 |
| 12 | 特別決議欠缺が発行の無効原因となるか,株主の判断機会と取引の安全を踏まえて判断する。【適用条件】特に有利な払込金額と評価するとき | 4 | PDF3頁。各瑕疵が無効原因となるか | PDF8~9頁。有利発行規制違反と瑕疵ごとの議論 |
| 13 | 著しく不公正な方法自体が発行を無効とするか,代表取締役による発行と第三者への影響を踏まえて判断する。【適用条件】著しく不公正な方法と評価するとき | 4 | PDF3頁。各瑕疵が無効原因となるか | PDF8~9頁。不公正発行と瑕疵ごとの議論 |
| 14 | 無効原因に関する判例の具体的判示と射程を示し,本件固有の事情との同異を説明する。 | 4 | PDF3頁。判例及び学説を踏まえ,本件特有の事情を考慮した自己の見解 | PDF8頁。判例や学説を踏まえ,本件特有の事情を考慮した自己の見解 |
| 15 | 乙の差額支払義務について,取締役と通じたこと及び著しく不公正な払込金額を検討する。 | 4 | PDF3頁。不公正な払込金額で株式を引き受けた者の責任(会社法212条1項) | 記載なし |
| 16 | 乙が負い得る公正価額との差額の支払先を甲とし,B1の行使経路を区別する。 | 3 | 間接(PDF3頁。会社法212条1項の責任) | 記載なし |
2 設問2 Y1及びY2の乙会社に対する責任
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 17 | Yらの善管注意義務を会社法423条1項の任務懈怠に結び付ける。 | 4 | PDF3頁。会社法423条の任務懈怠の責任と善良なる管理者の注意義務との関係 | PDF8~9頁。任務懈怠の責任と善管注意義務の関係。責任の法的根拠の正確な記述 |
| 18 | 引受時の情報を基準とし,経営判断の裁量と情報収集・判断過程・判断内容への審査を説明する。 | 5 | PDF3頁。注意義務違反の判断基準と経営判断の原則の意義 | PDF9~10頁。情報収集分析の注意と判断内容の合理性の二つの側面。裁量の幅が広いと述べるだけの答案 |
| 19 | 資料②の契約・人材・収益に関する事情から,C離脱の予見可能性と影響を評価する。 | 4 | PDF3頁。異なる視点から作成された意見書と報告書を読み解くこと | PDF9~10頁。意見書と報告書をそれぞれ正確に分析すること |
| 20 | 資料③の24億円を構成する各効果の根拠と限界から,乙にとっての取得の合理性を評価する。 | 4 | PDF3頁。異なる視点から作成された意見書と報告書を読み解くこと | PDF9~10頁。意見書と報告書をそれぞれ正確に分析すること |
| 21 | ソフト部門の危険と乙固有の統合利益を比較し,危険の検討の有無に応じて取得判断を評価する。 | 5 | PDF3~4頁。資料を読み解いた取締役の責任の有無についての説得力のある解答 | PDF10頁。両資料を総合した結論。一方の資料だけに基づく答案。結論はどちらでもよく議論の説得力で評価すること |
| 22 | 代表取締役Y1と担当取締役Y2について,役割に応じた注意義務と懈怠の有無を検討する。 | 3 | 間接(PDF3頁。乙会社の取締役の会社に対する責任) | 記載なし |
| 23 | 減損処理の8億8000万円と法的損害を区別し,任務懈怠がなかった場合との比較で賠償範囲を検討する。【適用条件】任務懈怠を肯定するとき(否定する答案でも予備的に検討してよい) | 5 | PDF4頁。取締役の責任があるとする場合の賠償すべき損害額 | PDF9頁。賠償すべき損害額。PDF10頁。非常に高額の賠償責任をごく簡単に認めた答案 |
| 24 | C離脱と株価下落について,取得前に予見できた危険と後日の事実を区別して因果関係を論じる。【適用条件】任務懈怠を肯定するとき(否定する答案でも予備的に検討してよい) | 4 | 間接(PDF4頁。賠償すべき損害額) | PDF9頁。責任がある場合の義務違反と損害との間の因果関係 |
3 重みの分布
24項目の内訳は,重み5が7項目,重み4が12項目,重み3が5項目,重み2が0項目,重み1が0項目であり,重みの合計は98点である。
設問別では,設問1が16項目・64点,設問2が8項目・34点である。
問題文は第1問全体の配点(100点)だけを示しており,設問ごとの配点の割合は示していない。
設問1の重み5(番号1・5・9・10)は,発行後の手段,払込金額の公正性,発行の主要な目的,差止事由と無効原因の区別である。
設問2の重み5(番号18・21・23)は,経営判断の審査の基準,二つの資料の比較による取得判断の評価,減損処理の額と法的な損害の区別である。
採点実感が差の付いた点として挙げた,瑕疵ごとの正確な議論,企業提携と株価の推移を踏まえた有利性・不公正発行の議論,経営判断の原則の正確な記述及び二つの資料の分析は,重み5又は重み4に整理した。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
答案は,試験当時(平成19年5月18日)の会社法及び民法により,設問ごとに規範,事実の評価及び効果を示す。
答案で引く最高裁判決はいずれも会社法の施行前の商法に関するものであり,会社法の対応する規定に引き直して用いた。
設問1では,払込金額は特に有利であり,発行は著しく不公正な方法によると評価した上で,発行の無効は認められないとする構成を採った。
設問2では,問題文から確定できる範囲で判断し,責任を認める場合の賠償の範囲も検討する。
答案では,最初の引用の後は会社法の条文を条番号だけで示す。
2 答案
第1 設問1
1 株式発行無効の訴え
本件では割当てと払込みが行われ,乙は払込期日の平成18年6月26日に株主となった(会社法209条1号)。
B1は既に完了した発行について210条の差止めを求めることはできず,発行の効力は828条1項2号の訴えによってのみ争うことができる。
実際に株式が発行された以上,不存在確認の問題でもない。
甲は上場する公開会社であり,提訴期間は効力発生日から6か月である。
甲を被告とし(834条2号),甲の本店所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄である(835条1項)。
B1は取締役である間は提訴資格を有する(828条2項2号)。
9月29日の任期満了後は,甲の株主であるなど別の資格がなければ提訴資格を有しない。
員数不足で権利義務取締役となる事実は示されず(346条1項),B1の持株も確定できない。
認容確定判決は第三者にも効力を有し(838条),発行株式は将来に向かって効力を失う(839条)。
したがって,認容されれば乙の本件株式に基づく支配を将来に向けて解消できる。
甲は確定時の当該発行株式の株主に払込額相当金を支払う(840条1項)。
無効原因については,発行後にその効力を覆すと株主資格を前提とした取引や会社関係を害するため,発行前の差止原因と区別して重大な瑕疵かを判断する。
2 取締役会決議の瑕疵
定款上,招集通知は会日の2日前までの発信で足りる(368条1項)。
6月7日の会日に先立つ6月4日に書面を発し,B1・B2は同日メールで内容も知った。
5名中3名の出席と全員賛成は369条1項の数を満たす。
A2がA1の妻であることだけで特別利害関係は認められない。
最判昭和44年12月2日は,招集通知を欠けば原則として決議は無効とし,欠席取締役が出席しても結果に影響しない特段の事情があるときは例外とした。
本件では通知は発せられており,その判決が直接適用される場面ではない。
しかし,招集手続は全員の討議参加の機会も保障する。
A1は反対派2名の出張時を狙って重大な支配権移転を付議し,開催を急ぐ事情も示されない。
メールによる認識は出席・討議を代替せず,B1らの説明によりDの判断が変わる余地もある。
したがってB1は,形式上の通知はあっても,開催時期の意図的な選択が信義則に反し,決議を無効にするほどの瑕疵だと主張し得る。
もっとも,決議が無効でも発行の効力は別である。
最判昭和36年3月31日は,会社を代表する権限のある取締役が新株を発行した以上,有効な取締役会決議がなくても発行は有効であるとし,取締役会の決議は会社内部の意思決定であって株式申込人には存否を容易に知り得ないことも理由に挙げた。
本件は公開会社の発行で,公告・割当て・払込みが行われ,乙の招集操作への加担は示されない。
決議の瑕疵だけで発行を無効とすべきではない。
3 有利発行
公開会社の募集事項は通常取締役会が決定するが,引受人に特に有利な払込金額の場合は,株主総会の特別決議及びその金額で募集する必要性の説明を要する(201条1項,199条2項・3項,309条2項5号)。
低価発行による既存株主の経済的持分の希薄化を,株主自身に判断させるためである。
公正な価額は決定時の時価を基準に,株価の推移,出来高,収益,発行規模,消化可能性等を考慮して求める。
最判昭和50年4月8日の旧商法上の公正発行価額の判断もこの比較の参考となる。
資金調達上合理的な値引きは許されるが,特定の算式に従っただけで有利性が消えるわけではない。
300円は6か月平均の9割であり,従前の業績悪化と株価低迷を反映する。
900円台には統合又は公開買付けへの思惑が含まれるため,直前値をそのまま公正価額とすることには反論がある。
しかし,株価上昇は数日の異常値とはいえず,報道は現実に進行する複数の取引の見込みを伝えたものである。
6か月平均はその情報が価格に織り込まれる以前の期間が大部分を占め,そこからさらに一割下げる根拠は乏しい。
550万株を一社が引き受けて過半数を取得する取引で,消化の困難を理由とする大幅な値引きも説明しにくい。
したがって300円は特に有利であり,総会特別決議を欠く発行は法令違反である。
最判昭和46年7月16日は,旧商法上の有利発行について,特別決議欠缺だけでは代表取締役による発行は無効にならないとした。
B1は,株主総会に留保された意思決定が全面的に欠け,経済的持分の希薄化と支配の移転が大きい以上,単なる内部手続の瑕疵より重いと主張できる。
しかし,適法な公告により株主は差止めを申し立てる機会を与えられていた。
公正価額には評価の幅があり,公開会社の株式取得者に特別決議の要否の判定を常に求めると取引の安全を害する。
甲の本件発行の効力は維持し,金銭による責任追及を検討するのが相当である。
4 著しく不公正な発行
発行の主要目的が既存経営陣の支配権の維持又は反対派の排除であれば,株主全体の利益から例外的に正当化される事情がない限り,210条2号の著しく不公正な方法に当たる。
これは取締役の選解任を決める株主の権限が,取締役の行為によって実質的に奪われるのを防ぐためである。
B1が公開買付けに向けて外資系ファンドと交渉する中で,A1はB1側が欠席する場で決議し,独立交渉中に発行を強行し,乙に55%を与えた。
乙の支配下でA1らが再任されB1らが外れた結果も,当初の排除目的を推認させる。
他方,甲は競争力が低下し,従前から取引のある乙との共同開発・調達には合理性がある。
経営統合が目的なら乙の支配取得にも理由があり,A1自身は単独支配を得ない。
しかし,直ちに過半数を譲る方法・時期・価格の必要性は示されず,B1側の参加を避けて強行した経緯と合わせると,A派の経営上の地位を確保することが主要な目的だったとみる余地が大きい。
私は著しく不公正な発行に当たると考える。
もっとも,最判平成6年7月14日は,代表権限のある取締役による発行では著しく不公正な方法自体を無効原因としない。
最判平成9年1月28日は,差止原因がある場合に差止めの機会を奪う公告・通知の欠缺を無効原因とした。
本件には適法な公告がある。
三つの瑕疵を総合すれば無効を主張する余地はあるが,発行前の救済の機会を確保した公開会社の発行であり,認容は困難である。
5 その他の措置
甲には,違法な低価発行を実施し又はその決定に関与したA1らに対し,任務懈怠と因果関係のある損害を423条1項に基づき請求する余地がある。
公正な条件で調達できた額等を立証すべきであり,支配権の変動自体をそのまま甲の金銭損害とすることはできない。
乙が取締役と通じて著しく不公正な払込金額で引き受けたことを立証できるなら,甲は乙に公正価額との差額を請求できる(212条1項1号)。
価格差や統合への合意だけで通謀を認めることはできない。
これらの請求権は甲に帰属する。
B1が継続保有要件を満たす株主なら,甲に提訴を請求し,原則60日以内に提訴されないときは甲のために責任追及等の訴えを起こせる(847条1項・3項)。
取締役の地位だけではこの訴えを起こせない。
B1固有の損害については429条1項も考えられるが,悪意・重過失と固有の損害を要し,任期満了で再任されなかったことから直ちにこれらを認められない。
9月の総会決議も,後の発行無効判決で当然に取り消されない。
独自の決議瑕疵とB1の資格があれば決議から3か月以内の取消訴訟を検討できるが(831条),乙の議決参加だけで瑕疵は認められず,取消しから任期満了したB1の当然の復職も生じない。
第2 設問2
1 責任の根拠と判断基準
Y1・Y2は乙に対し,善管注意義務及び忠実義務を負う(会社法330条,民法644条,会社法355条)。
任務を怠り,それによって乙に損害が生じたときは,乙に対し賠償責任を負う(423条1項)。
経営統合への投資は将来予測を伴うから,結果の不成功から直ちに義務違反とはいえない。
引受時に立ち,前提事実の把握に不注意な誤りがなかったか,投資規模・性質に応じた情報収集・分析がされたか,選択の過程と内容が経営者の裁量を逸脱するほど不合理かを検討する。
2 引受けの判断
乙は弁護士と監査法人に調査を依頼しており,単に根拠なく取得したものではない。
しかし,資料②によれば,ソフト部門は売上げの2割ながら経常利益の全部を担う。
CはB1への恩義で転職を断ってきた。
開発基本契約の大半はCの継続雇用を存続条件とし,Cは割増退職金を辞退して退職後の競業制限を回避でき,下請のSEの大半も取引を継続しにくい。
取引先・SEとの契約管理に問題がなく,完成済み開発のプレミアムフィーも主として2年間残るが,これは将来の新規収益の代替にならない。
B1の影響力を弱める買収を選ぶなら,C離脱に伴う甲の事業価値毀損は引受時に具体的に予見すべき危険であった。
一方,乙の目的は電子部品事業の統合である。
乙の事業計画は共同開発等による研究開発費の削減で約15億円,開発期間短縮等で約6億円,遊休工場の利用による調達・流通費等の削減で約3億円を見込んだ。
資料③の監査法人は試算の前提を検討し,約24億円の見込みを不合理でないと評価した。
人材交流の効果は計量されていない。
投下額は300円に550万株を乗じた16億5000万円であり,甲の株式価値が落ちても,乙に帰属する利益がそれを上回る投資判断はあり得る。
ただし,試算の前提・実現時期・費用と,C離脱後も甲の電子部品部門を維持できるかを吟味しなければ,両数値を単純比較できない。
特に24億円は試算であり,既に乙に帰属した確定利益ではない。
担当のY2には,C退職を織り込んだ評価,残存収益,部門の存続及び必要な価格調整・引受条件を検討し,判断材料を取締役会に示すことが求められる。
代表取締役Y1には,この規模の投資で二つの資料が別々のリスクと利益を示している以上,Y2の提案に依拠するにしても,その比較の根拠を確認し,再調査又は条件の見直しの要否を判断する義務がある。
全員賛成であったことや専門家を使ったことは免責事由ではない。
もし明示されたC離脱リスクを考慮せず,他方の報告だけで直ちに取得を決めたのであれば,Y2には立案・報告に,Y1には重要な前提を確認しない決定に,それぞれ任務懈怠が認められ得る。
他方,乙自身の統合利益が見込まれ,甲のソフト部門の悪化を織り込んでも投資採算が合理的に維持されると判断したのであれば,Cを引き留める保証が得られないだけで義務違反とはいえない。
問題文からは取締役会における比較検討の内容が明らかでなく,専門家報告を得た上で独自の統合利益を見込んだ判断が裁量を逸脱したことまで,直ちに認定できない。
3 因果関係と損害
X主張の減損額は160円に550万株を乗じた8億8000万円である。
監査法人の意見に従った帳簿価額の引下げは価値下落を示す一事情であるが,それだけで乙にその額の損害が発生したことや,Yらの任務懈怠によることは証明されない。
例えば合理的な検討をしていれば取得をしなかったという場合には,取得しない場合と実際の乙の財産状態を比較する。
取得時の株式の経済価値や乙に生じた統合利益も考慮し,損害と利益を同じ時点・同じ範囲で評価する。
より低額又は条件付きで取得できたという主張なら,その条件が実現可能であったことと,条件差による損害を立証する必要がある。
引受後に株価は一時600円台で推移し,140円への下落には丙によるCの引抜きと報道が介在する。
C離脱は予見可能な危険であったから第三者の介在だけで因果関係は切れないが,当初の任務懈怠がなければどの損害が回避されたかを示さなければならない。
合理的な検討を経ても同じ条件で取得したと認められる場合には,仮に判断過程に不備があっても,その取得による下落を賠償させることはできない。
以上より,Xの指摘する事実だけからY1・Y2に8億8000万円の賠償責任を負わせることはできない。
両名の任務懈怠と同一の損害が立証されれば連帯して乙に賠償する(430条)。
Xは6か月以上継続保有して乙に提訴を請求しており,乙が請求から60日以内に提訴しない場合は,乙のために責任追及等の訴えを提起できる(847条1項・3項)。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案の第1の1は番号1~3及び10,第1の2は番号7・8・11,第1の3は番号4~6・12,第1の4は番号9・10・13,第1の5は番号15・16に対応し,番号14は第1の2~4にまたがる。
答案の第2の1は番号17・18,第2の2は番号19~22,第2の3は番号23・24に対応する。
重み3の番号3・7・16・22は,認容判決の効力,招集の形式,差額請求権の帰属及び二人の取締役の役割に対応する。
第4の重み5・4の項目及び条件付きの項目について,模範解答との対応を次の表に示す。
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 1 | 5 | 発行後は株式発行無効の訴えにより効力を争う。 | 第1の1第1段落。発行済みなので差止めではなく無効の訴えによる。 |
| 2 | 4 | 公開会社の提訴期間と,任期満了後のB1の提訴資格を具体化する。 | 第1の1第2段落。B1が甲会社の株主であるかは問題文から確定しない。 |
| 4 | 4 | 公開会社の通常の発行と,特に有利な払込金額の場合の株主総会特別決議・説明を区別する。 | 第1の3第1段落。取締役会の決定から株主総会の特別決議に切り替わる条件。 |
| 5 | 5 | 300円の公正性を,5月中旬以降の900円台の株価,6か月平均の9割という算定方法及び株価上昇の事情から判断する。 | 第1の3第1・第2段落。直前の株価を起点に,報道,算定期間及び割当ての規模を評価する。 |
| 6 | 3 | 特に有利な払込金額と判断する場合に,総会特別決議を欠く法令違反を指摘する。【適用条件】特に有利な払込金額と評価するとき | 第1の3第2段落末尾。有利発行と評価したので適用する。 |
| 8 | 4 | 反対派の出張中を狙った招集について,通知の認識と討議参加の機会を区別して決議の効力を検討する。 | 第1の2第2段落。電子メールで知ったことと討議に参加できたことを区別する。 |
| 9 | 5 | A派の地位確保と事業統合の利益を比較し,発行方法の主要な目的を判断する。 | 第1の4第1・第2段落。提携の利益を評価しつつ,経営上の地位の確保を主要な目的とみる。 |
| 10 | 5 | 発行前の差止事由と発行後の無効原因を区別し,株主の差止機会を適法な公告のある本件に接続する。 | 第1の1第3段落,第1の4第3段落。差止めの機会と発行後の効力を分ける。 |
| 11 | 4 | 取締役会の瑕疵について,会社内部の意思形成と株式取引の安全を分け,無効原因となるか判断する。 | 第1の2第3段落。昭和36年判決を会社内部の意思決定と対外関係の区別に用いる。 |
| 12 | 4 | 特別決議欠缺が発行の無効原因となるか,株主の判断機会と取引の安全を踏まえて判断する。【適用条件】特に有利な払込金額と評価するとき | 第1の3第3段落。有利発行と評価したので適用する。昭和46年判決と本件の公告を検討する。 |
| 13 | 4 | 著しく不公正な方法自体が発行を無効とするか,代表取締役による発行と第三者への影響を踏まえて判断する。【適用条件】著しく不公正な方法と評価するとき | 第1の4第3段落。不公正発行と評価したので適用する。平成6年・平成9年の各判決を区別する。 |
| 14 | 4 | 無効原因に関する判例の具体的判示と射程を示し,本件固有の事情との同異を説明する。 | 第1の2~4。取締役会決議の欠缺,特別決議の欠缺及び公告・通知の欠缺の判例を瑕疵ごとに用いる。 |
| 15 | 4 | 乙の差額支払義務について,取締役と通じたこと及び著しく不公正な払込金額を検討する。 | 第1の5第1段落。価格差だけで通謀を推認しない。 |
| 17 | 4 | Yらの善管注意義務を会社法423条1項の任務懈怠に結び付ける。 | 第2の1。善管注意義務から423条1項の責任へ接続する。 |
| 18 | 5 | 引受時の情報を基準とし,経営判断の裁量と情報収集・判断過程・判断内容への審査を説明する。 | 第2の1。引受時に判断できた情報と,過程・内容の合理性で評価する。 |
| 19 | 4 | 資料②の契約・人材・収益に関する事情から,C離脱の予見可能性と影響を評価する。 | 第2の2第1段落。Cとの関係,継続雇用の条件,SE,既存のフィーの限界を評価する。 |
| 20 | 4 | 資料③の24億円を構成する各効果の根拠と限界から,乙にとっての取得の合理性を評価する。 | 第2の2第2段落。約15億円・約6億円・約3億円の根拠と試算の限界。 |
| 21 | 5 | ソフト部門の危険と乙固有の統合利益を比較し,危険の検討の有無に応じて取得判断を評価する。 | 第2の2第2~第4段落。乙会社固有の統合利益と甲会社の事業の危険を比較する。 |
| 23 | 5 | 減損処理の8億8000万円と法的損害を区別し,任務懈怠がなかった場合との比較で賠償範囲を検討する。【適用条件】任務懈怠を肯定するとき(否定する答案でも予備的に検討してよい) | 第2の3第1・第2段落。責任を否定する答案であるが予備的に検討した。減損額を出発点に,任務懈怠がなかった場合と比較する。 |
| 24 | 4 | C離脱と株価下落について,取得前に予見できた危険と後日の事実を区別して因果関係を論じる。【適用条件】任務懈怠を肯定するとき(否定する答案でも予備的に検討してよい) | 第2の3第2段落。予備的な検討として適用する。Cの離脱の介在だけで因果関係を否定しない。 |
(2) 設問1
出題の趣旨は,甲会社の募集株式の発行の手続等の瑕疵を見付け出し,それに基づいていかなる法的手段が可能かを検討させるものであり,具体的には新株発行無効の訴えの提起が許されるかどうかの検討が必要であるとする(PDF3頁)。
その上で,有利発行規制違反,海外出張中に行われた取締役会決議の効力及び不公正発行を挙げ,瑕疵が認められる場合にはそれらが無効原因となるかを,判例及び学説を踏まえつつ本件特有の事情を考慮して論じることを求めている(同頁)。
答案は,番号1~3で発行後の手段とその効果を確定し,番号4~9で払込金額,取締役会決議及び発行の目的の各瑕疵を順に検討した。
昭和44年判決は一部の取締役に対する招集通知を欠いた事案であり,本問では通知が発せられていたため,出席を困難にする時期の選択が決議の効力にどう影響するかを別に論じた。
番号10~14は,瑕疵の存在と,発行の効力が覆ることとを区別する項目である。
平成9年判決で問題となった公告・通知の欠缺は本問にはなく,答案は,適法な公告により株主に差止めの機会が与えられていたことを,各瑕疵を無効原因としない理由の一つとした。
採点実感では,法的な問題点をどれだけ見いだし,瑕疵ごとに何が法的問題かを正確に議論しているか,企業提携の動きと株価の推移を踏まえて有利性と不公正発行を説得力をもって議論しているかで差が付いたとされている(PDF9頁)。
番号15・16は,発行を有効とした場合にも残る会社法212条1項の責任であり,出題の趣旨が「なお」として挙げた問題である(PDF3頁)。
(3) 設問2
出題の趣旨は,会社法423条の任務懈怠の責任の有無,任務懈怠の責任と善良なる管理者の注意義務との関係,注意義務違反の判断基準と経営判断の原則の意義を問い,異なる視点から作成された意見書と報告書を読み解いて説得力のある解答をすること,責任がある場合には賠償すべき損害額を検討することを求めている(PDF3~4頁)。
答案は,番号17・18で引受けの時点の判断の基準を置き,番号19~22でソフト開発部門の危険と乙会社にとっての統合の利益を分けて評価した。
Cの離脱を予見できることと,離脱を織り込んでも投資が不合理になることとは別の判断であり,約24億円は乙会社の事業計画の見込みを監査法人が不合理とはいえないとした額であって,現実の利益や株式の評価額とは区別した。
採点実感では,経営判断の原則について,情報収集分析において尽くすべき注意と判断の内容の合理性という二つの側面に触れず,取締役の裁量の幅が広いとだけ述べる答案や,一方の資料だけに基づいて結論を出した答案が指摘され,責任の結論はどちらでもよく,議論の説得力で評価するとされている(PDF9~10頁)。
番号23・24は,減損処理の額と法的な損害を分け,任務懈怠がなかった場合との比較で賠償の範囲を検討する項目である。
ヒアリングでは,責任がある場合には義務違反と損害との因果関係や賠償すべき損害額も検討する必要があるとされ(PDF9頁),非常に高額の賠償責任をごく簡単に認めた答案が問題とされている(PDF10頁)。
答案は,取得後の株価の推移を,取得の時点の義務違反を遡って決める根拠にせず,損害と因果関係の検討で用いた。
(4) 答案の弱点と扱わなかった事項
取締役会決議の瑕疵と発行の無効原因については,B1が主張できる構成を示した上で,取引の安全と適法な公告の事実を重くみた。
乙会社の取締役会がCの離脱をどの程度具体的に織り込んだか,別の条件であれば取引が成立したかは,問題文からは確定できない。
甲会社の定時株主総会の決議とB1個人の損害については補足にとどめた。
ヒアリングで言及された,企業提携とシナジーの分配やファイナンスの側面の知識を織り込んだ議論(PDF10頁)は,答案では論証を補う材料として扱うにとどめた。
ヒアリングでは,設問1の法的問題点がやや多く,設問2があまり書けていない答案もあったとされている(PDF11頁)。
第6 関連記事
1 同じ年度の司法試験の記事
①平成19年司法試験公法系科目第1問(憲法)の模範解答と評価項目
②平成19年司法試験公法系科目第2問(行政法)の模範解答と評価項目
③平成19年司法試験民事系科目第2問(民法・民事訴訟法)の模範解答と評価項目
④平成19年司法試験刑事系科目第1問(刑法)の模範解答と評価項目
⑤平成19年司法試験刑事系科目第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目
⑥平成19年度旧司法試験論文式試験の模範答案―憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法の全12問と出題趣旨を踏まえた解説(AI作成)
2 同じ科目の別の年度の記事
①令和7年度司法試験民事系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した65項目と5段階の重み付け(AI作成)
②平成30年司法試験民事系第2問(商法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した38項目と5段階の重み付け(AI作成)
③平成23年司法試験民事系第2問(商法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した36項目と5段階の重み付け(AI作成)
④平成22年司法試験民事系第1問(商法・会社法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した35項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑤平成21年司法試験民事系科目第2問(民法・商法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した31項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑥平成20年司法試験民事系科目第2問(商法・民事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した34項目と5段階の重み付け(AI作成)
3 本問の論点に関連する山中弁護士ブログの記事
①会社法等に関する最高裁判例―裁判所HP掲載判例の論点別索引(AI作成)
②司法試験の出題法令の基準日―平成18年以降の年度別六法リンク(AI作成)
第7 出典
1 公式資料
①法務省「論文式試験問題集[民事系科目]」(平成19年新司法試験)(PDF1~8頁の第1問・資料①~③)
②法務省「平成19年新司法試験論文式試験問題出題趣旨」(PDF3~4頁の民事系科目第1問)
③法務省「新司法試験考査委員(民事系科目)に対するヒアリング概要」(PDF8~11頁の商法。司法試験委員会第40回(平成19年9月12日)の議事要旨として掲載)
④法務省「平成19年新司法試験の実施日程等について」(平成18年9月20日司法試験委員会決定。PDF1頁の試験日程)
2 法令
①会社法(平成17年法律第86号)の制定時の条文(衆議院)
②民法の一部を改正する法律(平成16年法律第147号)(衆議院)(民法644条)
答案で用いた会社法199条,201条,209条,210条,212条,309条2項5号,330条,346条,355条,368条,369条,423条,429条,430条,828条,831条,834条,835条,838条~840条及び847条は,上記の制定時の条文によった。
会社法209条は,制定時には項に分かれておらず,答案では「209条1号」と表記した。
3 裁判例
①最高裁昭和36年3月31日第二小法廷判決(昭和32年(オ)第79号,民集15巻3号645頁):有効な取締役会の決議を経ない新株発行の効力。
②最高裁昭和44年12月2日第三小法廷判決(昭和43年(オ)第1144号,民集23巻12号2369頁):一部の取締役に対する招集通知を欠いた取締役会の決議の効力。
③最高裁昭和46年7月16日第二小法廷判決(昭和46年(オ)第396号,集民103号407頁):株主総会の特別決議を経ずに特に有利な発行価額で新株を発行した場合と無効原因。
④最高裁昭和50年4月8日第三小法廷判決(昭和48年(オ)第198号,民集29巻4号350頁):上場会社の時価発行の発行価額が著しく不公正な発行価額に当たらない場合と,その考慮事情。
⑤最高裁平成6年7月14日第一小法廷判決(平成2年(オ)第391号,集民172号771頁):著しく不公正な方法によってされた新株発行の効力。
⑥最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決(平成5年(オ)第317号,民集51巻1号71頁):新株発行の公告又は通知を欠くことと無効原因。
⑦東京高裁平成17年3月23日決定(平成17年(ラ)第429号,高民集58巻1号39頁):経営支配権の維持・確保を主要な目的とする新株予約権の発行と著しく不公正な方法(答案の主要目的の判断枠組みの参考とした)。
4 留意事項
出題の趣旨はPDF3~4頁の民事系科目〔第1問〕の部分を,採点実感はヒアリング概要のPDF8~11頁の商法の部分を,評価項目の根拠とした。
平成19年の民事系科目の採点実感等は,司法試験委員会第40回の議事要旨に掲載された考査委員に対するヒアリングの概要として公表されており,採点実感欄に示した答案の傾向は考査委員の所感である。
答案と解説は試験当時の法令によっており,平成26年の会社法改正後の規定は用いていない。
評価項目,重み,答案の結論及び出題の趣旨の具体化は本記事独自の分析であり,法務省が一つの結論を指定したものではない。