検察官は,犯罪を捜査し,起訴するかどうかを決め,刑事裁判で立証を行い,確定した裁判の執行を指揮監督する法律家である。検事は検察官の一種であり,検察事務官とは別の職である。
この記事では,検察官の仕事と他の職業との違い,検事・副検事になる経路,給料や氏名を調べる資料を案内する。
第1 検察官と検事の違い
検察庁法3条は,検察官を検事総長,次長検事,検事長,検事及び副検事の5種類に分けている。「検察官」はこれらの総称であり,「検事」はその中の官名である。
検事総長は最高検察庁の長,検事長は高等検察庁の長である。地方検察庁の長である「検事正」は,検事をもって充てる役職であり,法律が列挙する5種類にもう1種類を加えるものではない。
副検事も検察官であり,区検察庁に配置される。一定の場合には地方検察庁の検察官の事務を取り扱うこともある。官名と,所属する庁や担当事務とは区別して読む必要がある。
任命資格・級・補職の詳しい整理は検察官の種類等,副検事の仕事と進路は副検事とはを参照されたい。
第2 検察官の仕事内容
1 捜査と起訴・不起訴の判断
警察などから送致された事件のほか,直接の告訴・告発や自ら認知した事件についても捜査を行う。検察庁法6条は,検察官がいかなる犯罪についても捜査できると定める。
証拠を検討し,被疑者の言い分なども確認した上で,起訴するかどうかを決める。不起訴には,嫌疑が十分でない場合のほか,犯罪の軽重,情状や被疑者の事情などを考慮する起訴猶予もある。「不起訴」は常に「犯罪がなかった」という意味になるわけではない。
2 刑事裁判での立証と求刑
公判請求した事件では,証拠の提出,証人尋問などを通じて,犯罪の成立などを立証する。証拠調べの後に論告を行い,科すべき刑について意見を述べる求刑を行う。
求刑は検察官の意見であり,判決を決めるのは裁判所である。書類審査で罰金又は科料を科す略式命令請求もあり,起訴された事件がすべて通常の法廷審理になるわけではない。
3 裁判の執行と公益の代表者としての事務
裁判が確定すると,拘禁刑や罰金刑などが正当に執行されるよう,執行機関に指揮などをする。検察庁法4条は,公益の代表者として他の法令が権限を与えた事務を行うことも定める。仕事は捜査と起訴だけではない。
第3 警察官・裁判官・弁護士・検察事務官との違い
1 警察官との違い
警察官は犯罪捜査のほか,交通,地域の安全など幅広い警察業務を担う。検察官も捜査をするが,起訴・不起訴の判断と刑事裁判での公訴の維持を担う点が大きな違いである。
事件が警察から検察庁に送られる「送致」は,検察官による「起訴」とは別の段階である。送致されたことだけで有罪が決まるわけではない。
2 裁判官・弁護士との違い
裁判官は,検察官と弁護人の主張や証拠を審理し,判断を示す。検察官は刑事裁判で訴追を担う側であり,裁判官と同じ立場ではない。
弁護士は,刑事事件では被疑者・被告人の弁護人として防御を担うほか,被害者を支援する場合もある。民事・家事事件や契約なども業務の対象である。詳しくは裁判官とは及び弁護士とはを参照されたい。
3 検察事務官との違い
検察事務官は,検察官を補佐する捜査・公判事務のほか,事件・証拠品の管理,裁判の執行に関する事務,庶務などを担う職員である。検察官とは採用経路と法的な職務・権限が異なる。
一定の検察事務官が区検察庁の検察官の事務を取り扱う制度もあるため,職員が担当する事務は官名だけで判断できない。詳しくは検察事務官とはを参照されたい。職員としての就職先の比較には検察事務官と裁判所事務官の違いがある。
第4 検察官になるには
1 司法試験・司法修習を経て検事になる経路
代表的な経路は,司法試験に合格し,司法修習を終えて,検事として採用されるものである。検察庁の任官までの流れは,約1年間の司法修習と,いわゆる二回試験を経る経路を説明している。
司法試験の受験資格には法科大学院と予備試験を経る制度があり,法科大学院在学中の受験にも要件がある。受験資格の現在の説明は法務省の司法試験案内で確認する必要がある。
任命資格を得ることと,検事として採用されることは別である。採用願を提出すれば必ず採用されると説明することはできない。過去の採用日程・提出書類は司法修習生の検事採用までの日程に,採用面接と過去の志望者数の関係は検事採用願に関する資料に整理している。
2 副検事などの経路
検察庁法18条には,司法修習を終えた者のほか,裁判官の職にあった者や,所定の大学で3年以上法律学の教授・准教授の職にあった者についての資格も定められている。
副検事は,司法修習生となる資格を得た者,又は所定の公務員の職に3年以上あった者で,選考を経た者からも任命できる。さらに,3年以上副検事の職にあって所定の考試を経た者を二級の検事に任命する経路がある。具体的な対象職や選考資料は副検事の選考を参照されたい。
第5 給料・名前・勤務庁を調べるには
俸給月額と年収の違い,初任給調整手当を加えた条件付き計算例,手当・賞与・手取りの見方は,検察官の年収・給料はいくらかを参照されたい。
検察官の俸給は専用の法律と俸給表による。月額表に載る俸給と,手当・賞与を含む年収は異なる。金額と資料の基準日は裁判官・検察官の給与月額表で確認できる。
検事の名前や勤務庁を調べる場合は,検事期別名簿の年別一覧から,必要な基準日のPDF又はテキスト版を選ぶ。幹部については令和8年10月1日現在の法務・検察幹部名簿も利用できる。
名簿には基準日があるため,掲載された勤務庁を閲覧日現在の所属と決めつけないことが必要である。検事期別名簿と副検事名簿は別の資料である。
第6 よくある質問
1 検事と検察官は同じ意味か
日常の用語では重ねて使われることがあるが,法律上,検事は検察官の5種類のうちの1つである。副検事も検察官に含まれる。
2 検察官が有罪や刑の重さを決めるのか
検察官は起訴するかどうかを決め,裁判で立証し,求刑を行う。有罪・無罪や刑を判断するのは裁判所である。
3 検察事務官になれば検事になれるのか
検察事務官として採用されただけで検事になるわけではない。副検事選考には対象となる職務・在職期間などの要件があり,副検事から検事になるにも別の要件と考試がある。
第7 主な出典と関連記事
検察庁法3条,4条,6条,9条,18条。
検察庁「検察官の種類と職務内容」。
検察庁「任官までの流れ」。
検察庁から呼び出された交通事故の当事者向けの説明は,交通事故で検察庁から呼び出されたらを参照されたい。人事制度の資料は検察官の人事評価に整理している。