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相続手続・相続財産調査

証券口座の相続手続を弁護士が代理する方法-口座調査,必要書類,移管・売却(AI作成)

目次

第1 弁護士代理による証券口座の相続手続の全体像1 本記事の対象2 手続は三種類の書類を分けて考える3 弁護士に委任しても相続人本人の対応が残る場合第2 証券口座と保有資産の調査1 口座の手掛かりがある場合2 証券保管振替機構による口座開設先の調査3 特別口座及び残高証明書第3 誰が取得するかを確定する書類1 共同相続された株式等は当然には人数割りされない2 遺言がない場合又は遺産分割協議による場合3 遺言又は家庭裁判所の手続による場合4 法定相続情報一覧図と原本返却第4 代理権と証券会社所定書類1 委任状に記載する権限2 相続手続依頼書と受入口座3 複数の相続人への配分と端数第5 移管後の売却と完了確認1 売却の時点と指示の記録2 相続税評価額,取得費及び売却代金は別の金額である3 手続完了を示す資料第6 先に別問題を確認すべき場合1 相続放棄又は限定承認を検討している場合2 NISA,外国証券及び非上場株式第7 弁護士へ依頼する際の確認事項1 初回に整理する情報2 手続を止めて法的判断を先に行う場面3 証券口座の相続についてよくある質問出典・参考資料1 法令・裁判例2 制度運営機関及び職能団体の運用資料3 証券会社の相続手続案内4 国税庁の解説
第1 弁護士代理による証券口座の相続手続の全体像

結論として,証券口座の相続は,①口座の所在,②死亡日残高,③取得者,④受入口座,⑤必要書類,⑥商品別の移管又は換金,⑦完了資料の順に確認する。
株式,投資信託,MRF,NISA口座内資産及び預り金では処理が異なるため,口座全体を一括して「名義変更」又は「現金化」と考えないことが重要である。

1 本記事の対象

本記事は,法定相続人又は遺産分割によって証券を取得する相続人から委任を受けた弁護士が,証券会社に対する口座調査,残高証明書の取得,相続手続書類の提出,証券の移管及び売却に関与する場合を対象とする。
調査の基準日は令和8年9月6日であり,証券会社の必要書類及び受付方法は変更されるため,実際の手続では各社がその時点で交付する案内を確認する必要がある。

弁護士が遺言執行者として有価証券を換価して受遺者等へ分配する場合は,権限の根拠及び利益相反の検討が異なる。
その場合は,遺言執行者が相続株式・有価証券を売却して分配する際の実務上の問題点を参照されたい。

2 手続は三種類の書類を分けて考える

証券口座の相続手続で提出する資料は,①誰が証券を取得するかを示す相続資格・取得根拠の資料,②弁護士が誰を代理し,何を行うかを示す委任状及び本人確認資料,③証券会社が事務処理のために定める相続手続依頼書,移管先口座の届出その他の所定書類に分けて考えると整理しやすい。
戸籍がそろっていても取得者が確定していなければ移管できず,遺産分割協議書があっても代理権の範囲又は所定書類が不足すれば手続は止まる。

一般的な順序は,①口座の所在を調べる,②死亡日現在の残高を確定する,③証券の取得者を確定する,④取得者名義の受入口座を準備する,⑤委任状及び証券会社所定書類を提出する,⑥証券及び預り金の移管を確認する,⑦売却する場合は具体的な売却指示と完了資料を残す,というものである。

3 弁護士に委任しても相続人本人の対応が残る場合

弁護士は,委任状の範囲内で,証券会社への照会,必要書類の取り寄せ,残高証明書の請求,書類の作成補助・提出及び進行管理を行うことができる。
もっとも,証券会社はマネー・ローンダリング対策,税務上の届出及び適合性確認等のため,受入口座の開設時に取得者本人による本人確認,申告又は操作を求めることがある。
したがって,「弁護士へ依頼すれば相続人は一度も証券会社へ対応しなくてよい」とは限らない。

第2 証券口座と保有資産の調査
1 口座の手掛かりがある場合

証券会社名の手掛かりとしては,取引残高報告書,年間取引報告書,配当金計算書,株主総会関係書類,証券会社からの郵便物,登録メールアドレスの受信記録及び預貯金口座の入出金履歴がある。
証券会社が判明しているときは,死亡の連絡だけで終えず,①口座の有無,②死亡日現在の残高証明書の発行方法,③相続関係書類の一覧,④代理人による請求の可否と必要な委任状,⑤原本の返却方法を一度に確認するのが効率的である。

共同相続人の一人だけで顧客勘定元帳その他の取引履歴を請求できるかについては,証券口座の相続-共同相続人の一人だけで取引履歴を取得できるか(AI作成)を参照されたい。

代理人による口座情報の照会については,証券会社ごとに書類が異なる。
例えば,野村證券の相続手続案内は,弁護士等の代理人が口座の有無を確認する場合について,相続人の実印を押した委任状原本及び印鑑登録証明書原本等を案内している。

2 証券保管振替機構による口座開設先の調査

証券会社が分からないときは,証券保管振替機構の登録済加入者情報の開示請求を利用できる場合がある。
同機構の令和8年8月版案内によれば,法定相続人の任意代理人も請求でき,開示時点で振替株式等の口座が開設されている証券会社・信託銀行等の一覧を確認できる。

この開示で分かるのは口座管理機関の名称であり,銘柄,取引履歴及び保有残高ではない。
開示結果を得た後,各証券会社等へ個別に残高を照会する必要がある。

また,外国株式,国債,社債及び同機構の取扱対象でない非上場株式等は,この開示の対象外である。
そのため,開示結果に該当がないことだけで,被相続人に有価証券がなかったと結論付けることはできない。

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亡くなった家族の入通院先を調べる方法―遺族のレセプト開示とカルテの取得(AI作成)

第1 受診先が分からないときの調査順序

第2 当時加入していた医療保険を特定する

第3 遺族としてレセプトの開示を依頼する

1 請求できる遺族と必要書類

2 対象の指定,費用及び所要期間

第4 保存期間の「5年」をどう確認するか

第5 判明した病院・薬局から受診歴をたどる

1 病院・診療所の診療記録

代理人に依頼する場合の委任状
閉院・破産している場合

2 薬局の記録

3 介護の記録

第6 資料が出ない場合の確認と次の手段

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被相続人のスマホに関して,死亡直後に遺族がすべきこと(AI作成)

第1 死亡直後は端末の保管と携帯会社への連絡を並行する
第2 初期化と推測入力を避け,端末の状態を記録する
1 端末と関連資料の保管
2 ロック解除とデータ消去の違い

第3 回線の解約・承継と別契約の請求を分ける
1 携帯会社別の手続の入口
2 SMS認証,サブスク及び端末代金の確認

第4 Apple・Googleのデータ請求は端末解除とは別である
1 Appleの故人アカウント管理連絡先等
2 Googleのデータ請求と閉鎖の順序

第5 相続放棄を考えている場合とアクセス権限の注意点
1 財産調査,処分及び放棄後の保管
2 パスワードが分かっても利用権限は別に確認する

第6 スマホが開かない場合の調査と相談
1 郵便物・通帳・カード明細から調べる
2 専門的な調査へ進む条件

第7 出典
1 法令

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法定相続情報一覧図の作成方法―戸籍謄本の読み方と相続人の確認(AI作成)

第1 戸籍を読み終えてから提出用の一覧図を作る1 法定相続情報一覧図は自分で作成できるか2 無料の公式テンプレートを選び,取得後の用途も確認する3 必要書類は何を準備するか第2 戸籍謄本の種類と読む欄を区別する1 現在戸籍・除籍・改製原戸籍の違い2 本籍・筆頭者・戸籍事項・身分事項の読み分け第3 出生から死亡までの戸籍をつなぐ方法1 新しい戸籍から一つ前の戸籍へ戻る2 三つの戸籍を照合する架空の作業例3 死亡日・届出日・旧字体を照合する第4 戸籍から相続関係を確認する1 配偶者・子・親・兄弟姉妹の順序2 代襲相続と数次相続は死亡の先後で分ける3 兄弟姉妹相続では父母双方の関係を追う4 相続放棄と廃除の記載を混同しない第5 確認した情報を一覧図へ転記する1 書く情報と転記元を対応させる2 続柄は被相続人を基準にし,住所は利用先を考えて選ぶ3 代襲の線と複数枚のつながりを確認する4 前婚の子がいる場合は前配偶者を性別で表示する第6 必要書類をそろえ,不足や読めない部分を解消する1 申出用の書類と広域交付の範囲2 未取得・判読不能・廃棄を区別する第7 申出前の点検と他の相続手続の期限1 戸籍から図へ,図から戸籍へ照合する2 相続放棄と相続登記は別に期限を管理する第8 出典・参考資料1 法令2 法務省・法務局の手続案内と記載例3 裁判所の手続案内4 自治体の戸籍解説・実務資料

第1 戸籍を読み終えてから提出用の一覧図を作る

法定相続情報一覧図は,亡くなった人と,戸籍の記載から確認できる相続人との関係をまとめる書面である。
相続人等が一覧図を作成して戸籍等とともに申し出ると,登記官が記載内容を照合し,認証文を付した写しを交付するのであり,戸籍の束を持参すれば法務局が図を作成してくれる制度ではない(不動産登記規則247条)。

作業は,①被相続人の出生から死亡までの戸籍をつなぐ,②各人の身分事項から相続関係を確認する,③証明書に基づいて一覧図へ転記する,という順序で進める。
本記事は,令和8年9月25日現在の法令・公表資料を前提に,現在の相続法が適用される相続について,戸籍の読解と転記の方法を説明するものである。

本記事では,調査中の親族関係,取得済みの戸籍及び未確認事項を書き込む作業メモを,法務局へ提出する一覧図とは分けることを基本形とする。
法定相続分の計算,遺産分割の合意内容,調査上の疑問及び戸籍から確認できない推測は内部メモに置き,提出用の一覧図には,法定の記載事項と法務局の記載例に沿った情報を記載する。

もっとも,改製,転籍,複数回の婚姻,前婚の子又は代襲相続があり,戸籍束が厚い事案では,各戸籍の種類,本籍・筆頭者,確認期間,前後の戸籍とのつながり及び一覧図の該当箇所を記載した客観的な戸籍チェック表を,任意の審査参考資料として付ける方法がある。
付ける場合は「審査参考資料(法定の添付書面ではない)」と明示し,内部的な法律判断を記載せず,申出書・一覧図の後,戸籍束の直前に置いて,不要とされたときに外せるよう分けておく。

一覧図は,誰が最終的にどの財産を取得するかまで証明するものではなく,遺産分割協議書や相続放棄を証する書類が別途必要となる場合がある。
従来どおり戸籍の束で相続手続を行う方法も利用できるため,提出先が少ない場合には,一覧図を取得する手間も含めて選ぶことになる(法務省民事局「法定相続情報証明制度について」平成30年4月1日改訂,2頁・PDF3頁)。

遺言の有無や内容も,一覧図の記載だけでは確認できない。
公正証書遺言の存在を調べる場合は,「公正証書遺言の保存期間と検索方法」を参照されたい。

公正証書遺言の検索で相続人資格を示す資料と,弁護士への委任に必要な資料の区別は,「公正証書遺言の検索を弁護士が代理する方法」で説明している。

1 法定相続情報一覧図は自分で作成できるか

法定相続情報一覧図は,相続人自身が戸籍等を確認して作成し,保管・交付を申し出ることができる。
作成した図と申出書,必要書類を登記所へ提出し,登記官の確認を受けて,認証文付きの写しを取得するという順序である。

市区町村の窓口で集める戸籍等と,法務局で交付される一覧図の写しは別の書類である。
自分で入力・手書きした図だけでは,法務局の認証文付きの写しにはならない(不動産登記規則247条,法務局の手続案内)。

2 無料の公式テンプレートを選び,取得後の用途も確認する

法務局の様式・記載例ページでは,次のような相続関係に応じたExcel様式と記載例PDF等が公開されている。

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Appleアカウントの相続手続―故人アカウント管理連絡先,iCloudデータ及び端末の扱い(AI作成)

第1 この記事が扱うAppleアカウントの相続

1 対象と結論

2 一つの「相続」として扱えない理由

第2 故人アカウント管理連絡先が設定されている場合

1 アクセス申請に必要なもの

2 承認後のアカウントと3年間の期限

3 取得できるデータと対象外のデータ

第3 管理連絡先又はアクセスキーがない場合

1 日本で受け付けられる代替書類

2 Appleが示す裁判所命令の内容

3 拒否された場合の請求の絞り方

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Googleアカウントの相続手続―死亡後のデータ取得・資金請求・閉鎖(AI作成)

第1 対象範囲と結論

1 この記事の対象

2 アカウント,データ及び金銭を分けて考えること

3 パスワードは開示されないこと

第2 Googleが用意する三つの手続

1 三つの請求の違い

2 データ取得を先に検討する理由

3 処理期間,費用及び開示率

第3 申請前の確認と必要書類

1 低負担の初期確認

2 Googleフォームで求められる資料

3 データ取得と米国裁判所命令

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遺産分割と未支給年金――相続財産性,受給順位及び手続(AI作成)

第1 この記事が扱う未支給年金1 結論と対象2 未支給年金と遺族年金の違い第2 未支給年金が遺産分割の対象にならない理由1 相続ではなく法定遺族の固有の権利であること2 最高裁平成7年11月7日判決3 遺産分割協議書での扱い第3 誰が未支給年金を請求できるか1 親族の範囲と順位2 同順位者が複数いる場合3 法定の遺族がいない場合第4 生計同一をどのように判断するか1 同居だけで決まる要件ではないこと2 立証に用いる資料3 裁判例が示す判断の分かれ目(1) 別居していても生計同一が認められた例(2) 長期別居で生計同一が否定された例(3) 法律婚と事実婚が競合した例第5 死亡前入金,死亡後入金及び過払の区別1 死亡月分までの未払額2 口座への入金時点で結論が変わること3 支払対象月と受取額の具体例第6 相続放棄及び請求者死亡1 通常の未支給年金と相続放棄2 先順位者が請求前に死亡した場合第7 請求手続,時効及び税務1 請求書及び基本資料2 本人が生前に年金請求をしていなかった場合3 消滅時効4 相続税と所得税5 請求から受取までの目安第8 制度名によって結論が変わる例外1 旧共済年金の一部2 企業年金,確定拠出年金及び個人年金保険第9 実務上の確認順序第10 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政資料4 文献及び参考記事第1 この記事が扱う未支給年金
1 結論と対象

通常の国民年金及び厚生年金保険について,受給権者が死亡した時点で未払となっている死亡月分までの年金は,遺産分割の対象となる相続財産ではない。国民年金法19条及び厚生年金保険法37条が,死亡時に受給権者と生計を同じくしていた一定範囲の遺族に,自己の名で請求する固有の権利を与えているためである。

したがって,法定相続人であることだけでは請求できず,反対に,相続人でなくても法定の親族範囲,生計同一及び順位を満たせば請求できることがある。遺産分割協議によって,日本年金機構に対する受給順位を入れ替えたり,生計同一でなかった相続人を請求者にしたりすることはできない。

本記事は,令和8年8月9日現在の国民年金及び厚生年金保険を中心に扱う。
請求手続,受取時期及び税務の補足については,令和8年10月7日に日本年金機構及び国税庁の公開資料を確認した。
旧共済年金,企業年金,確定拠出年金及び個人年金保険は制度ごとに結論が異なるため,第8で別に説明する。

本記事は一般的な法制度及び手続の情報を提供するものであり,個別案件についての法律相談又は税務相談ではない。具体的な事情に即した相談は,「遺言・相続のお問い合わせ」から可能である。

2 未支給年金と遺族年金の違い

未支給年金は,死亡した受給権者に死亡月分まで支給されるべきであった年金について,支払時期又は手続の関係で未払となっている部分である。これに対し,遺族基礎年金及び遺族厚生年金は,被保険者等の死亡を支給事由として遺族に発生する別の給付であり,受給者の範囲,年齢要件,生計維持要件及び失権事由も異なる。

特に,未支給年金で必要なのは原則として「生計同一」であり,遺族年金で問題となる「生計維持」と同じではない。生計維持に関する年収850万円未満等の収入要件を,未支給年金の生計同一要件へそのまま当てはめることはできない。遺族厚生年金の生計維持要件そのもの(収入要件のライン,別居,内縁・重婚的内縁関係及びDVによる別居等の限界事例)については,「遺族厚生年金の生計維持要件——収入,別居,内縁及びDV別居の限界事例」で扱っている。

第2 未支給年金が遺産分割の対象にならない理由
1 相続ではなく法定遺族の固有の権利であること

民法896条は,被相続人の一身に専属するものを除き,相続人が被相続人の権利義務を承継すると定める。しかし,国民年金法19条及び厚生年金保険法37条は,この相続の一般原則とは別に,法定の遺族が自己の名で未支給年金を請求する仕組みを設けている。

この違いは,誰が受け取るかを決定する基準に表れる。遺産であれば相続人,遺言,法定相続分及び遺産分割が問題となるのに対し,未支給年金では親族範囲,死亡時の生計同一及び政令上の順位が問題となる。

2 最高裁平成7年11月7日判決

最高裁平成7年11月7日第三小法廷判決(平成3年(行ツ)第212号,民集49巻9号1829頁)は,昭和60年改正前の国民年金法19条1項が一定の遺族に未支給年金の支給を請求する固有の権利を与えたものであり,死亡した受給権者の未支給年金請求権が相続の対象になるものではないと判示した。本判決は,未支給年金を遺産分割から外す現在の実務の出発点である。

また,本判決は,法定遺族が行政庁への請求及び支給決定を経て具体的な支給を受ける仕組みを重視し,死亡した受給権者本人が提起していた年金支給請求訴訟を遺族が当然に承継することも否定した。受給権者に未払分があったという事実だけから,相続人が当然に金銭債権を承継するわけではない。

3 遺産分割協議書での扱い

遺産分割協議書では,通常の未支給年金を遺産目録に計上し,特定の相続人が相続するという書き方を避けるのが法的構造に合う。記載が必要であれば,「未支給年金は法令上の受給権者が別途請求する」旨を確認事項として置き,遺産そのものの分配条項と区別する方法が考えられる。

もっとも,受領者が家族関係への配慮から他の親族へ金銭を渡すことや,遺産全体の合意解決の中で別の財産配分を調整することまで禁止されるわけではない。ただし,それは未支給年金の受給権を遺産分割した結果ではなく,別個の合意又は金銭移転であるため,合意内容及び税務上の扱いを分けて検討する必要がある。

第3 誰が未支給年金を請求できるか
1 親族の範囲と順位

平成26年4月1日以後に受給権者が死亡した場合,請求できるのは,死亡時に受給権者と生計を同じくしていた①配偶者,②子,③父母,④孫,⑤祖父母,⑥兄弟姉妹,⑦これら以外の三親等内の親族である。
順位もこの順であり,死亡時の生計同一要件を満たす先順位者がいるときは,後順位者に請求権は生じない。
配偶者又は子が存在するというだけで判断せず,その者が生計同一要件を満たしていたかを確認する必要がある。

その他の三親等内の親族には,甥・姪,伯叔父母,曾孫等のほか,三親等内の姻族も含まれる。
具体的な続柄は,日本年金機構の請求書4頁の親族範囲図で確認できるが,図に含まれることだけで受給できるわけではなく,生計同一及び順位の要件も必要である。

平成26年3月31日以前の死亡では,その他の三親等内の親族への拡張前の規定が適用される。古い判例又は実務書に「兄弟姉妹まで」と記載されていても,現在の死亡事案へそのまま用いることはできない。平成26年4月に実施されたその他の年金・雇用保険・精神保健福祉法の改正と,施行日前の事案への適用関係は,平成26年4月の厚生労働省制度変更で整理している。

配偶者には,法律上の婚姻届がある者だけでなく,社会通念上夫婦としての共同生活が認められる事実婚の配偶者が含まれ得る。ただし,法律婚配偶者と事実婚の配偶者が競合する場合は,法律婚の実体,経済的援助,接触状況及び共同生活の実態を具体的に確認する必要がある。

2 同順位者が複数いる場合

同順位者が2人以上いる場合,その1人による請求は全員のために全額についてしたものとみなされ,その1人への支給は全員に対してしたものとみなされる。日本年金機構への請求及び支払は代表者1人にまとめられるが,早く請求した者が全額を終局的に取得するという意味ではない。

法令は,同順位者間の最終的な内部取得割合を明記していない。堀勝洋『年金保険法〔第5版〕』355頁~356頁は頭数による均等を説くが,この点を直接判断した公開裁判例は確認できないため,代表受領者は他の同順位者を確認し,分配方法を記録しておくことが安全である。

3 法定の遺族がいない場合

親族範囲,生計同一及び順位を満たす者がいない通常の国民年金・厚生年金では,未支給年金が相続人一般へ回る仕組みはない。相続人が存在しても,法定の未支給年金受給者に該当しなければ,その相続人は請求できない。

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昭和55年以前に開始した相続の法定相続分――時期区分と改正前民法900条の割合(AI作成)

第1 この記事が扱う相続と,適用される法の決め方1 相続分は相続開始時の法によって定まる2 適用される法の時期区分第2 昭和55年改正が設けた分水嶺1 改正法附則の経過措置2 改正された条文の内容3 e-Gov法令検索で経過措置を確認するときの限界第3 昭和23年1月1日から昭和55年12月31日までの法定相続分1 配偶者と血族相続人の割合2 同順位の相続人が数人あるときの割合3 昭和37年改正が変えたものと変えなかったもの第4 応急措置法が適用される相続の相続分第5 旧民法の遺産相続における相続分1 遺産相続人の順位2 庶子及び私生子の相続分第6 代襲相続の範囲が三段階に変わること第7 嫡出でない子の相続分と違憲決定の射程第8 地域による適用法の違い第9 相続分の計算に連動する制度1 遺留分2 寄与分3 相続税法上の相続分と配偶者の税額軽減第10 計算の手順と誤りやすい点1 計算の手順2 誤りやすい点3 計算した相続分が争われた場合出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公文書・歴史資料4 文献

第1 この記事が扱う相続と,適用される法の決め方

1 相続分は相続開始時の法によって定まる

相続登記が長期間されないまま放置された不動産や,先代・先々代の名義のままになっている土地について遺産分割や相続登記を進めるときは,被相続人が死亡した日を基準として,その当時に施行されていた法律による法定相続分を計算しなければならない。現行の民法900条1号は,子及び配偶者が相続人であるときの相続分を各2分の1と定めているが,この割合が適用されるのは昭和56年1月1日以後に開始した相続に限られる。本記事は,昭和55年12月31日以前に開始した相続について,どの時期にどの割合が適用されるのかを,官報に掲載された公布時の条文にさかのぼって整理するものである。作成に当たっては,AIを用いて官報,国会会議録及び裁判所ウェブサイトの原資料を通読し,条文の文言と数値を原典と逐語で照合した。

この整理の出発点となる経過措置は二つある。一つは,民法及び家事審判法の一部を改正する法律(昭和55年法律第51号)附則第2項であり,「この法律の施行前に開始した相続に関しては、なお、第一条の規定による改正前の民法の規定を適用する」と定める。もう一つは,民法の一部を改正する法律(昭和22年法律第222号)附則第25条第1項であり,「応急措置法施行前に開始した相続に関しては、第二項の場合を除いて、なお、旧法を適用する」と定める。相続分は,相続人の範囲と同じく相続開始時に施行されていた法によって決まり,その後の改正によって遡って変わることはない。

本記事は,被相続人が日本人であり日本法が準拠法となる場合を対象とする。被相続人が外国人であるときは相続の準拠法は本国法であり,最高裁判所第二小法廷昭和37年8月10日判決は,大韓民国人について昭和31年当時に生じた遺産相続の相続人を,当時の同国の慣習によって認定している。在日韓国・朝鮮人が被相続人である事案の相続人調査については在日韓国・朝鮮人の相続人調査で扱っている。また,相続人の範囲そのもの,すなわち家督相続と遺産相続の区別,家督相続人が選定されなかった場合の処理及び家附の継子の相続権については旧民法が適用される相続の相続人の特定で扱っているため,本記事は相続人が確定した後の割合の計算に対象を絞る。

2 適用される法の時期区分

相続開始日によって適用される法は,次の5期に分かれる。境界となる日付は,いずれも各法律の施行期日に関する規定から導かれる。

相続開始日適用される法昭和22年5月2日以前旧民法(明治31年法律第9号として公布された民法第四編親族・第五編相続)。家督相続又は遺産相続昭和22年5月3日から同年12月31日まで日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律(昭和22年法律第74号)及び旧民法の遺産相続に関する規定昭和23年1月1日から昭和37年6月30日まで民法(昭和22年法律第222号による改正後のもの)昭和37年7月1日から昭和55年12月31日まで民法(昭和37年法律第40号による改正後のもの)昭和56年1月1日以後民法(昭和55年法律第51号による改正後のもの)

各境界日の根拠は次のとおりである。応急措置法の附則は「この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。」と定めるから,同法は憲法施行日である昭和22年5月3日から適用される。昭和22年法律第222号附則第1条は「この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。」と定める。昭和37年法律第40号附則第1項は「この法律は、昭和三十七年七月一日から施行する。」と定め,昭和55年法律第51号附則第1項は「この法律は、昭和五十六年一月一日から施行する。」と定める。なお,応急措置法の附則には失効期日を定める規定が置かれておらず,同法及び同時期の関係法律の整理に関する法律にも同法を廃止する条項は見当たらないが,新民法の施行によって相続に関する規律が引き継がれた結果,昭和23年1月1日以後に開始した相続には新民法が適用される。

第2 昭和55年改正が設けた分水嶺

1 改正法附則の経過措置

民法及び家事審判法の一部を改正する法律は,昭和55年5月17日に公布され,官報同日付本紙第15994号5頁に掲載された。その附則は7項から成り,相続分の計算に直接かかわるのは次の2項である。

1 この法律は、昭和五十六年一月一日から施行する。

2 この法律の施行前に開始した相続に関しては、なお、第一条の規定による改正前の民法の規定を適用する。

この経過措置は,改正後の規定を施行前に開始した相続へは一切及ぼさないという完全な不遡及を定めるものである。したがって,被相続人が昭和55年12月31日に死亡した相続と,翌日である昭和56年1月1日に死亡した相続とでは,遺産分割や相続登記を現在行うとしても,適用される相続分の割合が異なる。

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被相続人の財産を調べる方法―相続人が被相続人の死亡後に行う財産・債務調査(AI作成)

◯山中弁護士への事件のご相談・ご依頼は「遺言・相続のお問い合わせ」から可能です。

第1 相続財産調査の目的と最初に管理する期限

1 全国一括検索だけでは調査は完結しない
2 3か月の熟慮期間を調査より先に管理する

第2 最初にそろえる権限資料と手掛かり

1 相続人と遺言を確定する
2 自宅,郵便物及び税務資料から候補表を作る

第3 財産・債務の種類ごとの調査方法

1 預貯金,貸金庫及び銀行取引

(1) 相続時預貯金口座照会で所在候補を探す
(2) 判明した金融機関へ残高と取引履歴を個別照会する

2 不動産

(1) 所有不動産記録証明で全国の登記記録を検索する
(2) 名寄帳と固定資産税資料を併用する

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国庫帰属した不動産のその後──相続土地国庫帰属法と民法959条による帰属後の管理・処分の実務(AI作成)

相続又は遺贈により取得した不要な土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度が令和5年4月27日に施行され,制度の利用は年々増えている。もっとも,弁護士が依頼者に助言する際に見落とされがちなのは,土地が国庫に帰属した「その後」に何が起きるのか,という点である。本記事は,不動産が国庫に帰属した後の管理・処分の法的枠組みと実際を整理し,弁護士が手続の選択及び依頼者への説明を行う際の検討事項を示すものである。個別の事案では,土地の物理的状況及び権利関係により結論が異なる。

目次

第1 国庫帰属した不動産をめぐる二つの系統と本記事の射程

1 相続土地国庫帰属法による帰属と民法959条による帰属の区別
2 帰属後はいずれも「普通財産」として管理・処分される

第2 相続土地国庫帰属法により帰属した不動産のその後

1 帰属の時期と管理機関
2 帰属後に残る法的リスク──承認の取消しと損害賠償責任
3 帰属した不動産の管理・処分の実際と評価方法

(1) 売却実績と帰属地の性質
(2) 簡易な評価手法と段階的な価格の見直し

第3 普通財産としての管理・処分の法的枠組み

1 処分の手段と貸付・交換・譲与・信託
2 適正な対価の原則と競争入札・随意契約

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旧民法が適用される相続の相続人の特定 ― 家督相続・遺産相続の区別と新民法附則の経過措置(AI作成)

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目次

第1 旧民法が適用される相続と本記事の射程

1 相続人の特定に適用する法は相続開始時の法である
2 旧民法・応急措置法・新民法の時代区分

第2 旧民法における相続の二本立て

1 家督相続
2 遺産相続
3 二本立ての区別が相続登記に与える影響

第3 昭和22年5月3日以後の相続と現行法附則の経過措置

1 応急措置法期の相続の位置づけ
2 家督相続人が選定されなかった場合の処理
3 応急措置法施行中に開始した相続と分配請求権

第4 家附の継子の相続権

1 嫡出子と同一の権利義務を有するための要件
2 分配請求権と適用除外

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NISAを相続するとどうなる?死亡届・課税口座への移管・相続税(AI作成)

目次

第1 制度の骨格――NISA口座は名義人の死亡でどうなるか

1 NISAが非課税とするのは所得税等であり,相続税は非課税とならないこと
2 名義人の死亡によるNISA口座の廃止と,相続人のNISA口座への引継ぎ不可

第2 所得税の取扱い――みなし譲渡・非課税・取得価額

1 死亡は「払出し事由」であり,死亡日の価額で譲渡があったものとみなされること
2 死亡日までの含み益は非課税,含み損は切り捨てられること
3 相続人の取得価額は死亡日の終値となること――所得税法60条の例外

第3 相続税の取扱い――相続財産としての評価

1 相続財産としての評価方法
2 相続税評価額と所得税の取得価額との相違
3 取得費加算の特例と準確定申告の要否

第4 相続人が複数いる場合――遺産分割の要否と移管

1 上場株式・投資信託受益権は当然分割されないこと
2 移管先口座の選択と現物移管の実務

第5 手続と依頼者からの聴取事項

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証券口座の相続と遺産分割-株式・投資信託の準共有,移管及び税務(AI作成)

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目次

第1 証券口座内の資産の法的性質――当然分割か準共有か

1 可分債権の当然分割という原則
2 株式・投資信託受益権・個人向け国債は当然分割されない

(1) 株式
(2) 委託者指図型投資信託受益権及び外国投資信託受益権
(3) 個人向け国債

3 相続開始後に生じた元本償還金・収益分配金
4 共同相続された株式から生じた配当金支払請求権
5 預貯金に関する判例変更と到達点

第2 遺産分割前の権利行使・管理と手続選択

1 準共有物の管理・保存・変更
2 共有株式の議決権行使と権利行使者の指定
3 遺産分割前の単独払戻し(民法909条の2)の射程
4 手続選択の分岐

第3 証券会社における相続手続の実務

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日本の証券会社経由で米国株式を保有していた場合の相続手続(AI作成)

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目次

第1 はじめに

1 問題の所在――四つの法分野が交錯すること
2 本記事の対象と留保

第2 相続人の確定と相続税の納税義務者の判定

1 相続の準拠法
2 相続税の納税義務者の区分と「住所」の認定

(1) 無制限納税義務者と制限納税義務者の分岐
(2) 「住所」の認定が争われた最高裁判決とその考慮要素

第3 米国株式は相続税法上「国外財産」であること

1 財産の所在に関する規定
2 評価と邦貨換算の実務

第4 米国連邦遺産税(非居住外国人課税)の構造

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iDeCo死亡一時金の民法上・税法上の取扱い(AI作成)

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目次

第1 iDeCo死亡一時金の基本構造

1 死亡一時金が支給される仕組み
2 受給権者の範囲及び順位
3 請求期限と相続財産への転化

第2 民法上の取扱い

1 受取人固有の権利という性質
2 遺贈及び遺産分割との関係
3 遺留分及び特別受益との関係
4 相続放棄との関係

第3 税法上の取扱い

1 支給が確定した時期による3区分

(1) 死亡後3年以内に確定した場合
(2) 死亡後3年を経過して確定した場合
(3) 5年の経過により相続財産となった場合

2 退職手当金等の非課税枠
3 相続人以外の受取人及び相続放棄者の課税

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非典型財産の相続実務(AI作成)

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目次

第1 はじめに──「非典型財産」という視点

1 なぜ「非典型」を意識するのか
2 相続の一般原則と「当然分割」の可否

第2 金融商品の相続

1 可分債権の原則と預貯金の例外
2 投資信託と個人向け国債

(1) 委託者指図型投資信託の受益権
(2) 個人向け国債
(3) 未分割期間中の管理と権利行使

3 上場株式・非上場株式
4 生命保険金

(1) 受取人固有の財産という原則
(2) 特別受益の持戻しが問題となる場合
(3) 団体信用生命保険
(4) 受取人の変更と遺留分

5 強制決済型のポジション

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相続事件に関する実務メモ-期限・手続・財産調査(AIリライト)

目次第1 相続事件で最初に確認する事項1 事件を五つの箱に分ける2 起算日と基礎資料を固定する3 確認が終わるまで不用意な処分を止める第2 先に管理すべき主な期限1 相続放棄・限定承認の原則三か月2 準確定申告の原則四か月3 相続税の原則十か月4 遺留分侵害額請求の一年と十年5 遺産分割の十年ルール6 相続登記の三年7 相続回復請求権の五年と二十年8 特別寄与料の六か月と一年第3 相続人と遺言を確定する1 戸籍を連続して確認する2 遺言の有無と方式を確認する3 外国籍・国外財産がある事件第4 財産と債務を調査する1 費用の低い資料から範囲を絞る2 預貯金・証券・現金3 不動産相続開始後・遺産分割前の賃料4 生命保険金・未支給年金その他の固有権5 債務・保証・税金6 デジタル財産7 継続契約と口座振替第5 単純承認・相続放棄・限定承認を選ぶ1 法定単純承認に注意する2 相続放棄3 限定承認第6 遺産分割の争点と手続を整理する1 分割対象・相続分・評価・分割方法を分ける2 特別受益・寄与分3 協議・調停・審判4 遺産分割前の預貯金の払戻し第7 相続税と民事上の解決を分けて管理する1 未分割でも期限内に申告する2 未分割財産と税額軽減の手続3 評価と分割案の税務影響4 申告期限までに協議が終わらない場合の確認表第8 早期に専門家へ相談すべき場面第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判所・行政機関等
第1 相続事件で最初に確認する事項

相続事件では,遺産をどのように分けるかを考える前に,期限,相続人,遺言,財産及び債務を確認する必要がある。
特に,相続放棄等の熟慮期間は原則三か月,準確定申告は原則四か月,相続税の申告・納付は原則十か月であり,調査や協議が未了でも期限だけが先に到来することがある。

本記事は,相続開始後の実務を,期限の管理から遺産分割及び税務までの順に整理したものである。
個別事情によって結論が変わるため,重要な処分をする前に,使用する制度の要件と起算日を確認する必要がある。
法令及び行政情報の基準日は令和八年九月九日である。

1 事件を五つの箱に分ける

相続事件の初動では,次の五つを別々の一覧にすると,調査の抜けを減らしやすい。
①期限,②相続人,③遺言その他の承継原因,④財産及び債務,⑤協議・裁判・税務その他の手続である。

遺産分割の対象となる財産と,相続人が固有の権利として取得する死亡保険金等は同じではない。
また,民事上の遺産評価,相続税評価及び売却見込額も目的が異なるため,一つの数字にまとめない方が安全である。

2 起算日と基礎資料を固定する

最初に,被相続人の死亡日,相続人ごとに死亡及び自己が相続人となったことを知った日,被相続人の最後の住所,本籍,国籍並びに常居所を記録する。
相続放棄,相続税,相続登記及び遺留分侵害額請求では,期限の起算点が同じとは限らないからである。

死亡診断書又は除籍謄本,戸籍資料,住民票除票又は戸籍附票,遺言書,固定資産税通知書,通帳,証券・保険・借入れ・税金に関する郵便物を集める。
紙の資料だけでなく,スマートフォン,パソコン,メール及びクラウドの利用状況も,デジタル財産を調べる手掛かりとなる。

3 確認が終わるまで不用意な処分を止める

相続財産の売却,解約,払戻し,廃棄又は自己のための消費は,法定単純承認や証拠喪失の問題を生じ得る。
葬儀費用や保存費用として預金を動かす必要がある場合でも,金額,用途,支払先及び領収書を記録し,事前に相続放棄への影響を検討すべきである。

第2 先に管理すべき主な期限
1 相続放棄・限定承認の原則三か月

相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から三か月以内に,単純承認,限定承認又は相続放棄を選択するのが原則である(民法九一五条)。
調査をしても判断資料がそろわないときは,期間満了前に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てる方法がある(裁判所「相続の放棄の申述」)。

後から債務が判明しただけで,その判明時から当然に新たな三か月が始まるわけではない。
相続財産が全くないと信じたことに相当な理由があるなどの事情によって例外的な起算点が問題となるため,請求書が届いた日,それ以前の郵便物及び財産調査の経過を保存する必要がある(裁判所「家事事件Q&A」)。

2 準確定申告の原則四か月

確定申告を要する者が年の途中で死亡した場合,相続人は,相続の開始があったことを知った日の翌日から四か月以内に,死亡した者の所得税について準確定申告と納税をするのが原則である(国税庁タックスアンサーNo.2022)。
不動産所得,事業所得,譲渡所得又は多額の医療費がある場合は,早期に申告の要否を確認すべきである。

3 相続税の原則十か月

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相続財産清算人,相続財産管理人及び不在者財産管理人の違いと代位による相続登記(AIリライト)

目次

第1 制度の違いと選び方

1 最初に確認する事項
2 相続財産清算人
3 民法897条の2の相続財産管理人
4 不在者財産管理人
5 遺産分割中の財産管理者と特別代理人

第2 管理人等の権限と訴訟上の表示

1 保存行為と権限外行為
2 相続財産法人と相続財産清算人
3 相続財産管理人,不在者財産管理人及び限定承認の管理人
4 公示送達との関係

第3 債権者による相続登記と競売

1 相続人が判明している場合
2 相続人の住所が分からない場合
3 相続人のあることが明らかでない場合
4 全部包括受遺者がいる場合

第4 相続財産清算手続

1 選任公告と債権申出公告
2 相続人が現れた場合
3 債権者,特別縁故者及び国庫帰属

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