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平成20年司法試験公法系科目第1問(憲法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した24項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

平成20年司法試験の論文式試験・公法系科目第1問(憲法)は,インターネット上の有害情報を受信側の機器で遮断する仮想の法律の下で,遮断を回避するプログラムを提供して起訴されたAの刑事裁判を題材とする。
出題の趣旨によれば,本問は,インターネットという「より新しいメディア」における積極的な表現行為に対する表現内容規制をめぐる問題であり,青少年保護育成条例による有害図書規制の合憲性と同種の問題でありながら,重要な事案の違いもある。

この記事は,法務省の出題の趣旨と採点実感を基に24の評価項目を設け,そのうち7項目を重み5とした。
評価項目と重みは本記事独自の整理であり,法務省の採点基準や配点を示すものではない。

項目内容
対象平成20年新司法試験論文式試験・公法系科目第1問(憲法)
問題文論文式試験問題集[公法系科目](2~9頁の第1問・資料1~3)
試験日・答案の基準平成20年5月15日(公法系科目の論文式試験)。フィルタリング・ソフト法,内閣府令及びQ&Aは問題文の資料1~3に掲げられた仮想のものである。
出題の趣旨平成20年新司法試験論文式試験問題出題趣旨(1~2頁の公法系科目〔第1問〕)
採点実感平成20年新司法試験の採点実感等に関する意見(1~4頁の憲法)
評価項目24項目。重み5は7項目,重みの合計は98。
主な裁判例岐阜県青少年保護育成条例事件(最高裁平成元年9月19日第三小法廷判決),第三者所有物没収事件(最高裁昭和37年11月28日大法廷判決)
答案の分量4241字(答案部分の見出しを含み,空白及び改行を除く。)
試験後の立法答案は問題文の仮想の法律による。試験後に制定された実在の法令とは区別する。
資料確認日令和8年11月7日

本稿の答案は,対象を絞った青少年保護の措置と,Aのサイト全体の遮断とを区別する。
その上で,過大なサイト指定による遮断を維持するためにAを処罰することは憲法21条1項に反するとして,Aを無罪とする。

重み5の7項目は,A自身の表現の自由の制約(番号1),閲覧者の知る自由を援用する適格(番号3),内容規制という性格付け(番号6),審査基準の選択と調整(番号8),サイト全体の遮断(番号16),法令違憲と適用違憲の区別(番号19),閲覧を回復するプログラムの提供に対する処罰の過度性(番号22)である。
第3に事実関係と設問の要求,第4に評価項目と重み,第5に答案と解説,第7に出典を置く。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価項目は,出題の趣旨(1~2頁の公法系科目〔第1問〕)と採点実感(1~4頁の憲法)から判断できる事項を,答案で判定できる単位に言い換えた本記事独自の基準である。
表の番号は記事全体で通している。
出題の趣旨欄の「法令の違憲性①」等は,出題の趣旨が法令の違憲性に関して挙げた問題点①~⑧を,「処罰の違憲性①」等は,Aに対する処罰の違憲性に関して挙げた問題点①~④を指す。
採点実感欄の「1(1)」「3(4)ア」等は,採点実感の見出し(1 全体的印象,2 注意してほしいこと,3 改めて学んでほしいこと)とその下の項目の番号である。
一方の資料に対応する記載がない場合は「記載なし」,一般的な指摘や関連する記述から導く場合は「間接」と表示する。
「〔注意〕」は誤りを避けるための項目を,「〔条件〕」は特定の審査枠組みを採る場合に限り適用する項目を示し,その構成を採らない答案に重ねて求めるものではない。

2 5段階の重み付けの基準

重み判断基準
5その設問の判断を大きく分ける核心
4結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ
3通常押さえる法的処理・事情の評価
2論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意
1補充的な引用・記述範囲の確認

重みとその合計は本記事独自の整理であり,法務省の配点,採点基準又は得点の目安を示すものではない。
条件付きの項目も重みの分布と合計に含める。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

問題文は,インターネット上の有害情報から子どもその他の利用者を保護するため,フィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律(フィルタリング・ソフト法)が成立したという想定である。
同法の下では,内閣総理大臣が,有害情報が掲載されたウェブページと,これを含み内容的に一つのまとまりをなすウェブサイトを指定し,インターネット接続電子機器の製造業者・販売業者は,指定された適合ソフトを機器に搭載しなければならない。
適合ソフトを搭載した機器では,指定されたサイト内のウェブページを閲覧できなくなり,18歳以上の者が専ら使用する機器に限って,製造業者・販売業者に申し出て年齢の確認を受ければ適合ソフトを削除できる。

Aは,平和問題と死刑存廃問題に関係する情報を無料で配信するサイトを運営しており,戦場における死傷者の画像,拷問を受ける人々の画像,公開処刑の画像など,見る人に不快感を与える可能性のある画像も掲載していた。
Aは,そのような画像が表示される前に,不快感を与えるかもしれない画像が掲載されている旨の注意を促す文章を掲げていた。
本件サイトに含まれるウェブページの大半が有害ウェブページに,本件サイト全体が有害ウェブサイトに指定され,適合ソフトを搭載した機器では本件サイト内の全てのウェブページが閲覧できなくなった。
Aは,適合ソフトが搭載されていても本件サイトを閲覧できるようにするプログラムを開発し,別の自分のサイトから無償でダウンロードできるようにしたため,同法17条及び16条1項2号の罪で起訴された。

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・除外到達点
1Aの弁護人裁判において行う憲法上の主張を具体的に論じる。法律及びAに対する処罰の違憲を主張し,無罪を求める。
2検察官の主張を想定した上での自己の見解検察官の主張の部分は簡潔でよい(出題の趣旨)。憲法上の問題点について,理由を付して自己の見解を示す。

第4 評価項目と重み

1 両設問・訴追の仕組みと権利主体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1受信側の遮断により,A自身が政治的・社会的表現を届ける自由も制約されると論じる。51頁。自己の権利が直接,現在侵害されている場合の違憲主張1頁 1(1)③・3~4頁 3(4)ウ
2成人と18歳未満の閲覧者の知る自由を憲法21条1項の保障として位置付ける。41頁。サイトを見る人の「知る自由」の制約,法令の違憲性⑥⑦3頁 3(3)ウ・3(4)ア
3閲覧者の知る自由の侵害をAが独立に主張できる条件を,Aへの処罰との具体的な関係から論じる。51頁。他者の権利の制約を理由とする違憲主張の可否3~4頁 3(4)ア~ウ
4第三者所有物没収事件の附加刑・具体的利害関係を説明し,Aの処罰と閲覧者への遮断との同異を示す。41頁。第三者所有物没収事件判決の参照1頁 1(5)・3~4頁 3(4)
5首相の指定,適合ソフトの搭載義務,受信遮断,回避プログラム提供の処罰を根拠条文とともに区別して接続する。41頁。搭載の義務付けと提供の禁止という問題の設定間接(1頁 1(1)③・3頁 3(3)ア)

2 両設問・法令の審査

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
6伝達媒体に着目した規制と区別し,情報の残虐性等で選別する仕組みを内容規制と捉える。51頁。表現内容規制の問題,法令の違憲性②3頁 3(3)ア
7掲載後の指定と成人の閲覧経路を踏まえ,検閲該当性と継続的流通への負担を区別する。31頁。検閲に該当しないこと記載なし
8内容規制の一般的な審査基準を示し,本件の目的・表現・対象者ごとに厳格度を維持又は調整する理由を述べる。51頁。法令の違憲性②(表現内容を規制する法律の判断枠組み)4頁 3(5)イ~オ
9岐阜県青少年保護育成条例事件の法廷意見と伊藤補足意見を分け,媒体・入手経路・表現の価値の差を審査に反映する。41頁。有害図書規制との同種性と重要な事案の違い1頁 1(1)②・1(5),3頁 3(3)
10有害情報から青少年の健全な成長を守る目的について,害悪発生を支える立法事実とその限界を評価する。41頁。法令の違憲性①(立法事実)3頁 3(3)イ・ウ
1118歳未満の者自身が情報に接する価値を示し,保護目的と受信の自由を衡量する。41頁。法令の違憲性⑥3頁 3(3)ウ
12見たくない成人の利益を青少年保護と区別し,資料3の調査数字が支える範囲を吟味する。41頁。法令の違憲性①(見たくない18歳以上の者の保護)間接(2頁 2(3)・4頁 3(5)オ)
13成人専用機器の削除手続が残す不利益を,共用機器や青少年保護に伴う付随的負担と区別して評価する。41~2頁。法令の違憲性⑦⑧4頁 3(5)オ
14有害情報の基準の明確性を,表現の萎縮と刑罰の予測可能性の両面から,府令による補完も含めて審査する。41頁。法令の違憲性③3頁 3(2)ア~ウ
15有害情報の本質的事項が法律に定められているかを問うて,府令への委任の限界を検討する。3記載なし3頁 3(2)エ
16有害ページを超えてサイト全体を遮断する制度について,非有害ページへの効果とより限定的な手段を比較する。51頁。法令の違憲性④3頁 3(1)イ
17Aの情報が有害でも,制度が同種の他の発信者の保護される表現を遮断し得ることを,広汎性の根拠として論じる。41頁。法令の違憲性⑤間接(4頁 3(4)エ。過度の広汎性による法令違憲のアプローチ)
18回避プログラム提供の禁止について,年齢確認の潜脱防止と,適法な情報への到達手段まで含む射程とを比較する。41~2頁。提供の禁止,処罰の違憲性③間接(4頁 3(5)オ)

3 両設問・Aへの適用

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
19法令一般の広汎性とAの個別的な事情による適用・処分違憲を区別し,仮に法令が合憲でも処罰の可否を検討する。51~2頁。法律の違憲性とAに対する処罰の違憲性2~3頁 3(1)・4頁 3(4)エ
20刺激的な画像の存在と残虐性を助長する危険を区別し,平和・死刑を考える資料としての具体的な価値を評価する。42頁。処罰の違憲性①②間接(3頁 3(3)ウ・4頁 3(5)オ)
21Aが画像表示前に掲げた警告を,適用審査で誤接触を抑える事情として評価する。42頁。処罰の違憲性④3頁 3(1)イ・ウ
22本件サイトに限る閲覧回復の提供について,無償・年齢不問の提供が生じさせる危険と,処罰の過度性とを比較する。52頁。処罰の違憲性③間接(4頁 3(5)オ)

4 立場の区別と審査基準の注意

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
23弁護人の主張を示した上で,設問2で検察官の反論と自説を区別し,主要争点ごとに反論を受けた理由を示す。31~2頁。設問1の弁護人の主張と設問2の自己の見解1~2頁 2(1)
24〔注意〕〔条件〕中間審査の基準を採る場合に,目的審査を「正当な目的」で足りるとしない(「重要な目的」を要求する)。2記載なし4頁 3(5)ア

5 重みの分布

24項目の内訳は,重み5が7項目,重み4が13項目,重み3が3項目,重み2が1項目,重み1が0項目であり,重みの合計は98点である。
表の区分ごとには,訴追の仕組みと権利主体が5項目・22点,法令の審査が13項目・53点,Aへの適用が4項目・18点,立場の区別と審査基準の注意が2項目・5点である。
問題文の配点は第1問全体で100点であり,設問ごとの配点は示されていない。

重み5の7項目は,次のとおりである。
①番号1は,受信側の遮断がA自身の表現を受け手に届ける自由を制約するという,違憲主張の起点である。
②番号3は,閲覧者の知る自由をAが援用できるかという独立の論点であり,採点実感は,第三者の権利主張の可否は一つの重要な論点であるのに,これに触れていない答案の方が多かったとしている(3頁 3(4)イ)。
③番号6は,残虐性に着目した規制を内容規制と捉え,審査の出発点を決める。
④番号8は,一般的な審査基準を示した上で,本件で厳格度を維持するか緩和するかを理由付きで決める。
⑤番号16は,有害ウェブページの指定が正しくても生じるサイト単位の遮断の過大性であり,採点実感は,この広汎さが法令違憲で「明らかに問題になる」としている(3頁 3(1)イ)。
⑥番号19は,法令違憲と適用違憲(処分違憲)という二つの判断対象をつなぐ。
⑦番号22は,Aのサイトだけを閲覧できるようにするプログラムの提供に刑罰を科す手段の過度性であり,無罪の結論を直接左右する。

主要な理由付けと当てはめは重み4に,検閲該当性(番号7),府令への委任(番号15)及び立場の区別(番号23)は重み3に整理した。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

答案は,平成20年5月15日の試験当時を基準とし,問題文の仮想の法律(フィルタリング・ソフト法)を「法」,同法の内閣府令を「府令」と略す。
判例は試験日までのものを用い,判例と本問の比較や審査基準の選択は本答案の見解である。
設問1はAの弁護人の主張,設問2は検察官の主張の想定と自己の見解に分ける。

2 答案

第1 設問1(Aの弁護人)
1 規制の対象と違憲主張
Aは,戦争や死刑の実態を画像とともに伝え,その是非を考える材料を提供している。
この政治的・社会的な言論には憲法21条1項の保障が及ぶ。
成人も18歳未満の者も,同項の趣旨に照らし,情報を選んで受け取る自由を有する。

フィルタリング・ソフト法(以下「法」という。)2条2~5号及び5条により,内閣総理大臣が有害情報を含むページと,これを含む内容上一体のサイトを指定する。
6・7条による適合ソフトの指定・告示と,8・17条による刑罰を背景とした搭載義務が相まって,指定サイトの情報が搭載機器の利用者に届かなくなる。
Aが自サイトへの到達を回復するために行ったプログラムの提供を16条1項2号・17条で処罰すれば,遮断は更に強固になる。
Aはまず,自己の言論を受け手に届ける自由への現在の制約を主張する。

さらに,閲覧者自身の知る自由の侵害も援用する。
第三者所有物没収事件は,第三者への手続保障を欠く没収について,被告人への附加刑であることや,占有・使用収益や賠償に関する被告人の具体的な利害を踏まえて,その違憲を理由とする上告を認めた。
本件では,処罰を言い渡すこと自体が閲覧者に直接の法律効果を及ぼすわけではない。
しかし,Aへの処罰は,現に閲覧を阻まれている者にAの情報を届ける経路を刑罰で封じ,その遮断を実効化するものである。
Aの負担と閲覧者の負担が具体的に結び付くこの範囲では,閲覧者の知る自由の侵害も処罰の違憲を基礎付ける事情として主張できる。

2 法令違憲
本法は,残虐性等の表現内容を基準に,受信前に情報の到達を遮断する。
既に掲載されたサイトを対象とし,成人が所定の手続を経て閲覧できる余地がある以上,検閲の絶対禁止によるよりも,内容規制の強さを21条1項の下で争うべきである。
公共的な表現への接触まで国家の内容判断に委ねるため,規制は極めて重要な目的のため必要な限度に絞られていなければならない。

青少年の健全な成長は重要である。
しかし,資料3の使用率10%,不知70%は普及の不足を示すにとどまり,どの描写がどの年齢の子どもの成長を阻害するかを示さない。
岐阜県青少年保護育成条例事件で問題となったのは,成人には他の入手経路がある自販機への有害図書収納禁止である。
本法は広く使われる通信機器の閲覧を遮断し,政治的・社会的表現にも及ぶ。
青少年保護を理由に同じ審査の緩和を全体に及ぼすことはできない。

見たくない成人が偶然に接触することを避ける利益は,青少年保護とは別である。
資料3の不安を抱く者60%にはウイルスや法外な料金への不安が含まれ,残虐な内容を一律に遮断する必要性の裏付けとしては弱い。
9・12条の例外は成人専用の場合に限り,購入前でも使用開始後でも,製造・販売業者への申出と年齢確認を経なければならない。
共用機器を使う成人はこの例外を利用できない。
成人への情報提供と設定時の選択,青少年と成人の利用環境を分ける仕組みを用いれば,望まない接触を防ぎながら,より小さな負担で目的を達成できる余地がある。

また,法2条2号は残虐性の著しい助長と健全な成長を阻害するおそれを要求するが,具体的な限界は府令に委ねられている。
府令1条2号ロの「刺激的」な描写だけを決め手にすると,報道,反戦運動,死刑を批判する他の発信者も,どこまで許されるか分からず発信を控える。
これは21条1項の萎縮の問題である。
告示で指定の結果が分かっても,16条1項2号・17条による処罰範囲を行為時に判断できることとは別であり,刑罰の予測可能性を求める31条の問題が残る。
法律が規制の本質的な境界を示さず,府令が政治的な表現を含めて対象を実質的に決めるなら,41条及び73条6号ただし書の趣旨にも反する。

法2条4・5号及び6条1項は,有害ページを含むことを理由に,それ自体に害のないページまでサイト単位で遮断する。
仮にAの画像の一部が有害でも,他の発信者の適法な記事が同じ仕組みで遮断され得る。
ページを単位として遮断し,迂回が具体的に見込まれる場合に範囲を広げる方が,無関係な言論を巻き込まない。
16条1項2号・17条も,年齢確認を潜脱する一般的な解除手段と,適法な情報への到達を回復する限定的な手段とを区別せず,その過大な遮断を維持する。
以上から,少なくともこのような過度の遮断とその維持を許す範囲で法令は21条1項に反し,処罰の根拠とならないと主張する。

3 Aへの適用
仮に規定一般は合憲でも,Aの画像は戦争・拷問・処刑の実態を知らせるもので,見た者の多くは平和や死刑を真剣に考えるようになったと感想を寄せた。
これはショックの強さと残虐性を助長する危険とが別であることを示す。
Aが画像の表示前に警告したため,見ることを望まない者は閲覧を選び直せた。
画像のあるページの一部に指定の理由があるとしても,全ページの遮断を正当化しない。
Aのプログラムは本件サイトの閲覧を回復するものであり,フィルタリングを一般に解除するものではない。
この提供に16条1項2号・17条を適用することは過大であり,無罪を求める。

第2 設問2(検察官の主張を踏まえた私見)
1 違憲主張の範囲と審査基準
検察官は,利用者側の表示制御であり,Aは公開を続けられる上,閲覧者への遮断は刑の直接の効果ではないと主張し得る。
後者は没収事件と異なる。
もっとも,私人による自主的な拒否とは異なり,行政による指定と法定の搭載義務が,Aの情報を届ける能力を現に制約する。
まず自己の表現の自由に基づく主張を認める。
第三者の権利の援用は,Aへの提供禁止と同じ情報を受け取る自由への制約が一体である限度で認める。
少なくとも閲覧者の負担は,A自身に対する制約の強さと正当性を判断する上で考慮できる。

法の指定は発表前の網羅的一般的な審査を経させるものではない。
現に閲覧の負担はあるが,成人専用機器では削除手続も用意されている。
検閲には当たらず,発表済みの表現への到達を妨げる効果を21条1項で審査する。
提供罪の直接の対象はコードの機能であるが,処罰が維持する遮断の対象は情報の内容によって選ばれている。

内容による選別には,原則として,目的が極めて重要で,手段が必要な範囲に厳密に限定されることを要する。
検察官は,非対面・随時のアクセスに対する青少年保護の必要と専門的評価の余地を指摘できる。
岐阜県青少年保護育成条例事件の法廷意見は,自販機への収納禁止の必要性と成人に及ぶ制約の程度を考慮した。
伊藤正己裁判官の補足意見は,青少年にも知る自由を認めつつ,情報の選別能力に照らして厳格度を緩和し,害悪の相当の蓋然性を求めた。
成人への付随的制約を許し得るのは,青少年保護のために必要で,成人に入手経路が残る場合である。
私見でも,青少年自身に向けた保護措置には一定の緩和を認め,重要な目的と手段の実質的な関連性を要求する。
成人への負担や保護価値の高い言論への拡張は,青少年のみの制約として扱えないため,その必要性をより厳しく審査する。

2 法令の審査
閲覧が容易で,年齢を対面確認できず,保護者による設定に委ねるだけでは行き渡らない場合,費用助成と標準搭載は青少年への到達防止に役立つ。
青少年への害悪について厳密な科学的証明まで要しないが,ショックの大きさと非行・残虐性助長の危険を同一視できない。
資料3は普及策の必要性に資する一方,個々の表現の有害性は別の証拠や文脈から判断すべきである。
成人の不意の接触を避ける利益についても,標準搭載は設定を知らない者を保護するが,自分で選択できる成人に同じ制約を及ぼす理由は弱い。
初期設定での明示選択や,年齢確認を組み込んだ利用者別の設定が同程度に機能する範囲では,成人の選択を妨げない方法を採るべきである。

検察官は,府令の列挙,審議会の意見聴取及び告示によって明確性が確保されると主張できる。
法が有害情報の類型,程度及び青少年の成長阻害のおそれを定めていることから,府令をその範囲で判断の目安を具体化するものと解する限り,委任自体は許される。
刑罰については,通常の判断能力を有する者が,法令を通じて自己の行為が禁止されるか判断できることを要する。
告示はどのサイトが指定されたかを示す。
16条1項2号は,告示された適合ソフトの指定サイト遮断機能を妨げるプログラムの提供と読めるので,この提供の予測可能性は認められる。
他方,発信者を萎縮させる有害性の基準については,府令の類型とともに法の残虐性助長・成長阻害の要件を文脈に即して満たすことが必要である。
青少年保護のため一定の評価の幅を認めても,成人や公益的言論への影響を考慮すれば,刺激的という印象に依存する指定は許されない。

検察官は,同一サイト内で有害情報の移動や誘導が容易で,ページごとの対処では実効性を欠く場合があると主張できる。
サイト指定は,ページ単位の遮断では目的を達成できず,内容上の一体性に即して遮断範囲が必要な限度にとどまる場合に限ると解すべきである。
限定が許される以上,法令全体を無効とまではいえない。
提供禁止も,適法な遮断を実質的に破る一般的な回避手段については,購入後の年齢確認制度を維持するために合理性がある。

3 本件への適用と結論
検察官は,警告だけでは青少年が閲覧することを防げず,Aのプログラムは無償で年齢を問わず入手できるため,子どもにも有害な画像が届くと主張し得る。
警告は青少年保護のための遮断と同等ではない。
また,寄せられた感想から青少年への害悪がないとは断定できない。
しかし,本件の画像には平和や死刑の問題を具体的に考えるための価値があり,警告は特に成人の誤接触を防ぐ事情となる。
ページの大半が指定されていることを考慮しても,残るページまで遮断しなければ青少年保護を実現できない具体的事情は示されていない。

本件提供は同サイトへの到達を回復する。
適法に遮断し得るページへの到達も回復する危険は残るが,Aの全ページを一括で遮断したまま,限定された閲覧回復手段の提供全体に刑を科すには,より狭い遮断とそれに対応する回避防止では足りない理由が要る。
本件ではその理由が示されていない。
規定の一般的な効力は否定せず,過大なサイト指定による遮断を維持するためにAへ16条1項2号・17条を適用することは21条1項に反すると解し,Aを無罪とする。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の第1の1で訴追までの仕組みと権利主体を示し,第1の2と第2の1・2で法令を評価する。
第1の3と第2の3では,画像の文脈,警告及び回避プログラムの限定性を,Aへの処罰の当否に結び付けている。
次の表のほか,第2の1が番号7,第2の2が番号15,両設問の構成全体が番号23に対応する。

番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
15受信側の遮断により,A自身が政治的・社会的表現を届ける自由も制約されると論じる。第1の1・第2の1
24成人と18歳未満の閲覧者の知る自由を憲法21条1項の保障として位置付ける。第1の1
35閲覧者の知る自由の侵害をAが独立に主張できる条件を,Aへの処罰との具体的な関係から論じる。第1の1・第2の1。同一の受信経路に関する制約に限って援用する。
44第三者所有物没収事件の附加刑・具体的利害関係を説明し,Aの処罰と閲覧者への遮断との同異を示す。第1の1・第2の1。閲覧者に刑の直接の効果が及ばない点を区別する。
54首相の指定,適合ソフトの搭載義務,受信遮断,回避プログラム提供の処罰を根拠条文とともに区別して接続する。第1の1
65伝達媒体に着目した規制と区別し,情報の残虐性等で選別する仕組みを内容規制と捉える。第1の2・第2の1
85内容規制の一般的な審査基準を示し,本件の目的・表現・対象者ごとに厳格度を維持又は調整する理由を述べる。第1の2・第2の1
94岐阜県青少年保護育成条例事件の法廷意見と伊藤補足意見を分け,媒体・入手経路・表現の価値の差を審査に反映する。第1の2・第2の1
104有害情報から青少年の健全な成長を守る目的について,害悪発生を支える立法事実とその限界を評価する。第1の2・第2の2。統計の射程を限定し,個々の表現の有害性の判断と区別する。
11418歳未満の者自身が情報に接する価値を示し,保護目的と受信の自由を衡量する。第1の1・2,第2の1・2
124見たくない成人の利益を青少年保護と区別し,資料3の調査数字が支える範囲を吟味する。第1の2・第2の2
134成人専用機器の削除手続が残す不利益を,共用機器や青少年保護に伴う付随的負担と区別して評価する。第1の2・第2の2。年齢別の設定が機能する場合の留保を付ける。
144有害情報の基準の明確性を,表現の萎縮と刑罰の予測可能性の両面から,府令による補完も含めて審査する。第1の2・第2の2
165有害ページを超えてサイト全体を遮断する制度について,非有害ページへの効果とより限定的な手段を比較する。第1の2・第2の2。ページ単位では実効性がない場合のサイト指定の余地を残す。
174Aの情報が有害でも,制度が同種の他の発信者の保護される表現を遮断し得ることを,広汎性の根拠として論じる。第1の2
184回避プログラム提供の禁止について,年齢確認の潜脱防止と,適法な情報への到達手段まで含む射程とを比較する。第1の2・第2の2・3。適法な遮断を破る一般的な回避手段の禁止は許容する。
195法令一般の広汎性とAの個別的な事情による適用・処分違憲を区別し,仮に法令が合憲でも処罰の可否を検討する。第1の2・3,第2の2・3
204刺激的な画像の存在と残虐性を助長する危険を区別し,平和・死刑を考える資料としての具体的な価値を評価する。第1の3・第2の3。寄せられた感想だけで害悪がないとは断定しない。
214Aが画像表示前に掲げた警告を,適用審査で誤接触を抑える事情として評価する。第1の3・第2の3。警告だけでは青少年保護のための遮断と同等とはいえない。
225本件サイトに限る閲覧回復の提供について,無償・年齢不問の提供が生じさせる危険と,処罰の過度性とを比較する。第1の3・第2の3。年齢を問わず入手でき,有害なページも閲覧できるようになる危険を考慮する。
242〔注意〕〔条件〕中間審査の基準を採る場合に,目的審査を「正当な目的」で足りるとしない(「重要な目的」を要求する)。第2の1。青少年自身に向けた措置の審査で,重要な目的と手段の実質的な関連性を要求する。

(2) 設問1

出題の趣旨は,サイトを見る人の「知る自由」の制約も問題となるとして,他者の権利の制約が違憲であることを理由に法律や処分の違憲性を主張できるかを検討する必要があり,その場合にはまず第三者所有物没収事件判決を参照することになるとしている(1頁)。
答案は,A自身の表現の自由の制約を基礎としつつ,同判決を手掛かりに,閲覧者の制約をAが援用できる条件を示した(番号1~5)。
採点実感は,「Aの表現の自由」の制約の違憲性が実際には受け手の知る自由の制約であるという意識が明確化されないまま混同して記述する答案や,訴えの利益を論ずるなど本来の訴訟要件の問題と混同する答案を挙げている(3~4頁 3(4)ウ)。

法令の審査では,青少年保護と見たくない成人の利益を分け,非有害ページや他の発信者への遮断も検討した(番号6~18)。
画像の価値,警告及び限定した提供の評価は,Aへの適用の根拠として用いた(番号19~22)。
採点実感は,Aが注意を促す文章を掲げていた点を適用違憲(処分違憲)を念頭に置いて論じた答案は少なく,これを法令違憲の根拠として用いるものが多かったとしている(3頁 3(1)ウ)。

(3) 設問2

採点実感は,審査基準論を展開する場合に,なぜその審査基準を採用するのか,本件の事案に適用した場合にどうなるのかを丁寧に論ずる必要があるとしている(4頁 3(5)ウ)。
答案は,岐阜県青少年保護育成条例事件の法廷意見と伊藤補足意見を区別し,青少年に向けた措置と,成人や公益的言論にも及ぶ措置とで審査の密度を分けた(番号8~13・24)。
府令の文言を法の有害性の要件とともに読み,限定して解釈できる規定の一般的な効力と,本件の一括遮断を維持するための適用とを分けた(番号14~19・22)。

出題の趣旨は,最広義説に立っても,18歳以上の者は「解除ソフト」によって規制される情報を見ることができるので検閲には該当しないとしており(1頁),答案も検閲該当性を否定して表現内容規制の審査に進んだ(番号7)。
また,出題の趣旨は,「あなた自身の見解」は被告人側と検察側の主張のいずれかという二者択一である必要はなく,判例と同じであることも求められていないとしている(2頁)。
この限定解釈と適用違憲の選択は,公式資料が指定した結論ではなく,本答案の構成である。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

ページ単位の遮断でどこまで移動や迂回に対処できるか,また年齢別の設定がどの程度実効的かは,問題文から一義的には確定しない。
答案はこれらを条件付きの代替手段として扱った。
答案はAの刑事裁判を対象とし,指定の取消訴訟の要件や,問題文の仮想の法律と試験後の実在の法令との比較は含めていない。

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⑦平成20年度旧司法試験論文式試験の模範答案―憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法の全12問と出題趣旨を踏まえた解説(AI作成)

同年度の他の問題は,平成20年新司法試験試験問題の一覧で,出題の趣旨と採点実感は,平成20年新司法試験の結果についてで確認できる。

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平成30年の公法系科目第1問も,青少年の健全育成を目的とする図書類の規制について,青少年と18歳以上の購入者の知る自由及び岐阜県青少年保護育成条例事件を扱っている。

第7 出典

1 公式資料

①法務省「論文式試験問題集[公法系科目]」(平成20年新司法試験)(2~9頁の第1問・資料1~3)
②法務省「平成20年新司法試験論文式試験問題出題趣旨」(1~2頁の公法系科目〔第1問〕)
③法務省「平成20年新司法試験の採点実感等に関する意見」(1~4頁の憲法)
④法務省「平成20年新司法試験の実施日程等について」(平成19年8月2日司法試験委員会決定。論文式試験の公法系科目の実施日)

2 法令

①日本国憲法(e-Gov法令検索)(21条,31条,41条及び73条6号)
②フィルタリング・ソフト法及び同法の内閣府令は,問題文の資料1・2に掲げられた仮想の法令である。

3 裁判例

①最高裁平成元年9月19日第三小法廷判決(昭和62年(あ)第1462号,刑集43巻8号785頁,岐阜県青少年保護育成条例事件):有害図書の自動販売機への収納の禁止を憲法21条1項に違反しないとした。伊藤正己裁判官の補足意見は,青少年の知る自由を制約する規制には成人の場合のような厳格な基準が適用されないとし,規制が合憲であるためには害悪を生ずる相当の蓋然性があれば足りるとした。
②最高裁昭和37年11月28日大法廷判決(昭和30年(あ)第2961号,刑集16巻11号1593頁,第三者所有物没収事件):第三者の所有物の没収の言渡しを受けた被告人は,それが被告人に対する附加刑である以上,没収の裁判の違憲を理由として上告できるとし,被告人自身も没収に係る物について利害関係を有するとした。
③最高裁昭和61年6月11日大法廷判決(昭和56年(オ)第609号,民集40巻4号872頁,北方ジャーナル事件):憲法21条2項前段の検閲の意義を示した上で,表現行為に対する事前抑制について判示した。
④最高裁昭和50年9月10日大法廷判決(昭和48年(あ)第910号,刑集29巻8号489頁,徳島市公安条例事件):刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法31条に違反するかどうかは,通常の判断能力を有する一般人の理解において,具体的場合に当該行為がその適用を受けるかどうかの判断を可能とする基準が読み取れるかどうかによって決するとした。

4 留意事項

出題の趣旨は1~2頁の公法系科目〔第1問〕の部分を,採点実感は1~4頁の憲法の部分を,評価項目の根拠とした。
問題文のフィルタリング・ソフト法,内閣府令及びQ&Aは仮想の資料であり,答案はこれらと試験当時までの判例を前提にしている。
評価項目,重み,答案の結論及び出題の趣旨の具体化は本記事独自の分析であり,法務省が一つの結論を指定したものではない。