第1 この記事の対象と結論
平成22年5月13日に実施された平成22年新司法試験論文式・民事系科目第2問(民法・民事訴訟法)を扱う。
設問1・2・5が民法,設問3・4が民事訴訟法であり,全5設問について,法務省の出題の趣旨と採点実感から抽出した45の評価項目(民法18項目,民事訴訟法27項目)と,試験当時の法令に基づく模範解答を示す。
民事訴訟法では,設問3で被告になりすました者の訴訟行為の効力が,設問4で自認額のある債務不存在確認判決の既判力と,残債務の支払を条件とする抹消登記判決の可否が問題となる。
| 設問 | 答案の到達点 |
|---|---|
| 1 | 有権代理と権限外の行為の表見代理に分け,事実①②が何を示すかを答える。 |
| 2 | 取壊し後の残存担保と弁済期を踏まえて損害を論じ,未登記抵当権の対抗と背信性を検討する。 |
| 3 | 被告をEと確定し,Gのなりすましを顕名を欠く訴訟代理に類する行為とみて,弁護士代理の原則の趣旨から,第3回期日までのGの訴訟行為の効力はEに及ばないとする。 |
| 4 | (1)では二構成のいずれにも難点があり,前訴の既判力は平成20年3月の弁済の主張を遮断しないとし,(2)では将来給付の必要性と申立ての範囲を審理で確かめた場合に限り,500万円の支払を条件とする抹消登記判決ができるとする。 |
| 5 | 未提出の認知届と割合的包括遺贈を区別し,Hに対する支払額をC400万円・E200万円と算定する。 |
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 出題の趣旨と採点実感
出題の趣旨から設問の到達点を読み取り,採点実感から論証の深さや誤答例を確認した。
表は本記事が独自に抽出した評価項目であり,法務省の採点基準・配点を示すものではない。
出題の趣旨・採点実感の欄の頁は,法務省が公表したPDFの頁であり,〔間接〕は,該当箇所の記述から本記事が整理した対応であることを示す。
2 重み1~5の意味
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 1 | 補充的な引用・記述範囲の確認 |
| 2 | 論証を補強する事情・誤りの注意 |
| 3 | 通常押さえる法的処理・事情評価 |
| 4 | 結論を支える主要な論証・当てはめ |
| 5 | その設問の判断を大きく分ける核心 |
注意は誤りを避けるための区分である。
20~22番は[注意]を付けた項目であり,21番は追認を論じる答案だけを,22番は任意的訴訟担当を論じる答案だけを対象とし,他の構成に累積して求める項目ではない。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
Aの代わりにFとの契約の場に赴いたCは,A・F間でほぼまとまっていた1500万円の融資額を2000万円に増やして,Aの名で契約した。
抵当権の設定の登記は甲土地についてだけされ,乙土地・丙建物の贈与を受けたEは丙建物を取り壊した。
Aは,Fに対し,元本返還債務が1500万円を超えては存在しないことの確認を求める訴えを提起した(第1訴訟)。
Fは,丙建物を取り壊したEを被告として損害賠償を求める訴えを提起した(第2訴訟)。
訴状の送達を受けたEは,同居するGの身代わりの申出に「任せる。」と答え,GはEとして第3回口頭弁論期日まで主張や認否をした。
第4回期日にEとして出頭していた人物がGであることが判明し,第5回期日には,Eが選任した訴訟代理人Rが,それまでにGがした訴訟行為はすべて無効であると主張した。
第1訴訟は平成20年4月11日に口頭弁論が終結し,Aの請求を全部認容する判決が確定した。
その後,AはFに甲土地の抵当権設定登記の抹消を求め(第3訴訟),口頭弁論終結の前の平成20年3月15日に500万円,終結の後の平成21年3月15日に1000万円を弁済したと主張した。
別の事実関係を置く設問5では,Aが認知届の書類をEに預けた後に死亡し,遺産をC2・E1の割合で分ける旨の自筆証書遺言を残していた。
2 設問が求めること
設問1は,Fが選択的にする二つの主張それぞれにとって事実①②が法律上の意義を有するかを問う。
設問2は,(1)でFの損害をどのようにとらえるべきかを,(2)で抵当権の設定の登記がないことを理由とするEの反論の当否と再反論を問う。
設問5では,EがAの子であるかに触れつつ,Hに対するC・Eそれぞれの元本の支払義務と額を答える。
設問3では,訴状の送達後,Gが第3回口頭弁論期日までの間にした訴訟行為の効力がEに及ぶかを論じる。
設問4(1)は,Fの訴訟代理人Qが示した課題に司法修習生Sとして答えるもので,二つの法律構成の長所と短所を,Fの法律上の主張として裁判所に認められるかという観点から検討し,信義則違反は論じなくてよい。
設問4(2)は,審理の結果,元本500万円が残っているとの結論に至った場合を前提に,500万円の支払を条件とする抹消登記手続の判決ができるかを,全部棄却と比較して論じる。
設問4では,(1)(2)とも利息及び遅延損害金を考慮しない。
第4 評価項目と重み
1 設問1 代理
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Fの二つの選択的主張を,有権代理と110条の権限外の行為の表見代理として別々に扱う。 | 5 | PDF4頁 設問1・二つの構成 | PDF12頁の1,14頁の3(1)・両構成を別々に評価 |
| 2 | 有権代理構成の事実①を,AからCへの授権を推認する間接事実として評価する。 | 4 | PDF4頁 設問1・授権の推認 | PDF12頁の1,14頁の3(1)・有権代理側の事実① |
| 3 | 有権代理構成では事実②がA・C間の授権を基礎付けず,当該構成に特段の法律上の意義がないことを説明する。 | 4 | PDF4頁 設問1・有権代理側の事実② | PDF12頁の1,14頁の3(1)・有権代理側の事実② |
| 4 | 110条構成で事実①を,2000万円の借入権限を信じたことの正当理由を支える事情として評価する。 | 4 | PDF4頁 設問1・本人の働き掛け | PDF12頁の1,14頁の3(1)・110条構成側の事実① |
| 5 | 110条構成の事実①について,1500万円の限度の基本代理権を推認する事情としても説明できる。 | 3 | PDF4頁 設問1・基本代理権の推認 | PDF12頁の1・同じ発言のもう一つの用途 |
| 6 | 110条構成の事実②について,調査を試みた点と本人確認を得ないまま増額に応じた点を検討し,正当理由との関係を理由付きで示す。 | 4 | PDF4頁 設問1・支持方向と障害方向 | PDF12頁の1,14頁の3(1)・110条構成側の事実② |
| 7 | 有権代理構成の検討を,109条の代理権授与表示による表見代理に置き換えない。 | 2 | PDF4頁 設問1・二つの指定構成の区別 | PDF14頁の3(1)・表示による表見代理への置換例〔注意〕 |
2 設問2(1) 抵当権侵害による損害
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 8 | 抵当権の担保権性から,丙建物の価格そのものとFが失った優先弁済利益を区別する。 | 4 | PDF4頁 設問2(1)・担保権的性質 | PDF12頁の1,14~15頁の3(2)・損害の論証 |
| 9 | 取壊し後の甲・乙の換価額と被担保債権額を比較し,残存担保で充足できる場合と不足する場合を分ける。 | 5 | PDF4頁 設問2(1)・甲乙の価額と債権額 | PDF14~15頁の3(2)・優秀例と指摘 |
| 10 | 丙の取壊しが第1回弁済期前であることから,取壊し時の経済的不利益と回収不足を確定できる時点を分けて論じる。 | 5 | PDF4頁 設問2(1)・確定時期と二つの日付 | PDF14~15頁の3(2)・優秀例と指摘 |
| 11 | 価格資料が与えられていないため,具体的な損害額を作らず理論的な場合分けで示す。 | 2 | PDF4頁 設問2(1)・価額の与件なし | PDF12頁の1・抽象的な理論操作 |
3 設問2(2) 登記欠缺の反論
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 12 | 設定合意による抵当権の成立とEへの対抗を分け,Eに対抗できる権利の侵害かを709条の成立判断に位置付ける。 | 4 | PDF4~5頁 設問2(2)・対抗問題と不法行為要件 | PDF13頁の1・登記欠缺の要件上の位置 |
| 13 | Eは登記欠缺を主張できる177条の第三者に原則該当し,背信的悪意者は正当な利益を欠くため除外されると述べる。 | 5 | PDF4~5頁 設問2(2)・第三者からの排除 | PDF14~15頁の3(2)・背信的悪意者の論述 |
| 14 | Eの設定・未登記の認識と,無償取得,Aの働き掛け,居住目的などの両方向の事情を評価し,背信性と取壊しの違法評価を結ぶ。 | 4 | PDF4~5頁 設問2(2)・具体的事実と侵害 | PDF14~15頁の3(2)・Fとの関係で判断 |
4 設問3 被告になりすました者の訴訟行為
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 15 | GがE本人と称した行為を法的に位置付け,代理人としての顕名を欠くことの意味を説明する。 | 5 | PDF5頁 設問3・行為の位置付けと外形 | PDF16頁の3(2)・顕名なき代理類似の例示 |
| 16 | 訴状と請求の内容を基に被告をEと確定する。 | 4 | PDF5頁 設問3・当事者確定の基準論 | PDF16頁の3(2)・当事者適格との混同 |
| 17 | 弁護士代理の原則が裁判当事者と審理をどのように保護するかを示す。 | 4 | PDF5頁 設問3・弁護士代理の原則とその趣旨 | PDF16頁の3(2)・54条の趣旨 |
| 18 | Gが行為を独立に決めた事情を用い,弁護士代理原則又はその趣旨の適用を事案に即して検討する。 | 4 | PDF5頁 設問3・訴訟代理類似行為の効力 | PDF16頁の3(2)・適用が制限される余地 |
| 19 | 第3回までの主張・認否に依拠したFの負担と,発覚後に適法に審理を進める方法を比較する。 | 3 | PDF5頁 設問3・複数回の期日への配慮 | PDF17頁の3(2)・訴訟経済等から直ちに効力を導く論 |
| 20 | [注意]Eの事前の承諾や信義則を根拠にする場合も,その事情だけでGの行為を有効にしない理由を示す。 | 3 | PDF5頁 設問3・効力と弁護士代理の原則〔間接〕 | PDF16~17頁の3(2)・承諾・信義則による短絡 |
| 21 | [注意・追認を論じる場合]追認を検討する場合は,Eの事前の承諾と個々の行為についての事後の態度を区別する。 | 2 | PDF5頁 設問3・追認の明記なし | PDF17頁の3(2)・追認拒絶を無効とする論 |
| 22 | [注意・任意的訴訟担当を論じる場合]任意的訴訟担当を論じる場合は,Gが担当者として自ら当事者になる構成と,被告をEとする認定の整合を検討する。 | 2 | PDF5頁 設問3・訴訟担当の明記なし | PDF17頁の3(2)・担当者が当事者となる点との整合 |
5 設問4(1) 前訴判決の既判力
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 23 | 二構成の長短を,Fの準備書面に載せて裁判所に採用を求める主張として評価する。 | 4 | PDF5頁 設問4(1)・党派的な主張としての適否 | PDF17頁の3(3)冒頭・問いの取り違え |
| 24 | 自認額を超える部分が訴訟物となる最高裁の立場を基準に置く。 | 5 | PDF5頁 設問4(1)・最高裁の立場 | PDF17頁の3(3)ア・最二小判昭和40年9月17日 |
| 25 | ①②がいずれも自認額1500万円の存在を拘束的に確定させる構成であることを示す。 | 4 | PDF5頁 設問4(1)・判例と異なる二構成 | PDF17頁の3(3)ア・末尾・積極説としての位置付け |
| 26 | 先決関係を押さえ,前訴で自認部分の減少を争う機会と動機があったかを事案に即して論じる。 | 4 | PDF5頁 設問4(1)・前訴既判力の作用 | PDF17頁の3(3)ア・十分な攻撃防御の機会 |
| 27 | 構成①を,量的に可分な給付請求権の一部請求と残部請求の関係の裏返しとして検討する。 | 4 | PDF5頁 設問4(1)・量的一部請求との対比 | PDF17頁の3(3)イ・一部請求の裏返し |
| 28 | 構成①につき,前訴の全部認容の主文が自認部分の存在まで判断したといえるかを検討する。 | 5 | PDF5頁 設問4(1)・全部認容判決と自認部分の判断 | PDF17頁の3(3)ア・イ・自認部分の拘束 |
| 29 | 構成②につき,請求の趣旨を限ったAの意思から自認部分に関する請求の一部放棄を導けるかを論じる。 | 4 | PDF5頁 設問4(1)・放棄構成の技巧性 | PDF17頁の3(3)ウ・合理的な意思解釈 |
| 30 | 構成②につき,期日における放棄と調書記載の要件を示し,本件に放棄調書が示されていないことを指摘する。 | 4 | PDF5頁 設問4(1)・調書の作成がないこと | PDF17頁の3(3)ウ・通常の手続を踏んでいないこと |
| 31 | 構成②につき,放棄調書の確定判決と同一の効力が,実体判断を伴わない放棄に既判力まで与えるかを論じる。 | 5 | PDF5頁 設問4(1)・放棄と既判力の概念 | PDF17頁の3(3)ウ・放棄に既判力が認められるか |
| 32 | 構成②につき,放棄があったと仮定した時点と判決の口頭弁論終結時を区別し,500万円弁済の遮断が変わり得ることを示す。 | 4 | PDF5頁 設問4(1)・既判力の基準時 | PDF17頁の3(3)ウ・放棄の基準時への言及 |
| 33 | 平成20年3月の500万円弁済と平成21年3月の1000万円弁済を前訴の基準時で分け,残額への効果を示す。 | 3 | PDF5頁 設問4(1)・前訴既判力の作用〔間接〕 | PDF17頁の3(3)・自認部分と基準時〔間接〕 |
6 設問4(2) 条件付給付判決
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 34 | 無条件抹消の申立てから条件付きの質的一部認容をすることの可否を民訴法246条により検討する。 | 5 | PDF5頁 設問4(2)①・246条 | PDF18頁の3(4)・処分権主義 |
| 35 | 条件付き抹消を将来給付と位置付け,現在の給付である引換給付判決との違いを説明する。 | 4 | PDF5頁 設問4(2)②・将来給付と引換給付 | PDF18頁の3(4)・引換給付との混同 |
| 36 | 被担保債権の残額,条件の明確性と将来の争いを踏まえ,あらかじめ請求する必要を民訴法135条により検討する。 | 4 | PDF5頁 設問4(2)②・135条 | PDF18頁の3(4)・将来給付の要件 |
| 37 | 全部棄却判決の既判力は基準時の抹消請求権の不存在に及び,理由中の残額500万円の認定は別であると説明する。 | 4 | PDF5頁 設問4(2)③・棄却判決の既判力 | PDF18頁の3(4)・先決問題と数額 |
| 38 | 条件付き認容では500万円が主文に掲げられることから,その数額に既判力が及ぶかを条件の効力と債権額の独立した確定に分けて論じる。 | 5 | PDF5頁 設問4(2)③・残債務額の既判力 | PDF18頁の3(4)・数額に既判力が生じるか |
| 39 | 全部棄却に足りる残債務の存在の審理と,条件付き主文に必要な残額の確定を比較する。 | 4 | PDF5頁 設問4(2)③・残債務額と既判力〔間接〕 | PDF18頁の3(4)・1円と具体的な残額の対比 |
| 40 | 条件の固定が双方に与える利益・不利益を示し,原告の意思と当事者への不意打ちを具体的に検討する。 | 4 | PDF5頁 設問4(2)①③・246条と客観的範囲〔間接〕 | PDF18頁の3(4)・有利不利にとどまらない分析 |
| 41 | 全部棄却後も後発の完済を根拠に抹消登記手続を再請求できると示す。 | 3 | PDF5頁 設問4(2)③・両判決の効力の比較〔間接〕 | PDF18頁の3(4)・残債務弁済後の再請求 |
7 設問5 認知と割合的包括遺贈
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 42 | 成年Eの承諾があっても,未提出の認知届により父子関係は生じず,書類の作成・使者への交付と届出を区別する。 | 5 | PDF5頁 設問5・第1の問題 | PDF13頁の1,15頁の3(3)・届出なし |
| 43 | 遺言を非相続人Eへの遺産3分の1の割合的包括遺贈と解し,Cの3分の2は唯一の相続人に帰属する残余であると示す。 | 5 | PDF5頁 設問5・第2の問題 | PDF13頁の1,15頁の3(3)・割合的包括遺贈 |
| 44 | 990条の同一の権利義務と可分債務の承継を結び,Hへの元本支払義務をC400万円・E200万円と算定する。 | 5 | PDF5~6頁 設問5・第3の問題 | PDF15頁の3(3)・C・Eの分割承継 |
| 45 | 共同相続で可分の金銭債務を割合的に承継する規律を参照し,割合的包括遺贈の場合の対外的な請求に理由を付ける。 | 3 | PDF6頁 設問5・共同相続との比較 | PDF15頁の3(3)・金銭債務の分割承継 |
8 重みの分布
| 重み | 民法(設問1・2・5) | 民事訴訟法(設問3・4) | 計 |
|---|---|---|---|
| 1 | 0 | 0 | 0 |
| 2 | 2 | 2 | 4 |
| 3 | 2 | 4 | 6 |
| 4 | 7 | 15 | 22 |
| 5 | 7 | 6 | 13 |
| 項目数 | 18 | 27 | 45 |
| 重みの合計 | 73 | 106 | 179 |
重み5は1番,9・10・13番,15番,24・28・31番,34・38番,42~44番である。
構成の選択,残存担保と確定時期,第三者性,Gの行為の位置付け,判例の基準と自認部分の確定,条件付き認容の可否とその主文の拘束,父子関係と債務承継など,それぞれ設問の判断を分ける事項である。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
試験実施日(平成22年5月13日)当時の法制を前提とする。
答案の条文は,法令名を付けたものを除き,設問1・2・5では民法,設問3・4では民事訴訟法である。
設問ごとに指定された事実を用い,設問4では利息及び遅延損害金を扱わない。
答案は6080字(改行を除く)である。
2 答案
第1 設問1
1 無制限の授権を主張する場合
AがCに2000万円の借入れを含む代理権を授与し,CがAの名で契約したなら,借入れの効果はAに帰属する(民法99条1項)。
この構成で問題となるのは,実際に授与された代理権の範囲である。
①は,Aが交渉の経過をCに伝え,その後の処理をCに任せた旨の発言であり,AからCへの授権を推認する間接事実である。
もっとも,既に1500万円でほぼまとまっていた以上,①から増額も含めて任せたと推認できるかは別に検討を要する。
②は取引相手のFが増額について照会しようとした経緯である。
Fが権限を信じたことも,その信頼に正当な理由があることも有権代理の要件ではなく,電話がつながらなかったこと自体は,A・C間の授権の範囲を示すものでもない。
したがって,この構成では②に特段の法律上の意義はない。
2 1500万円を上限とする授権を主張する場合
1500万円までの借入権限が基本代理権であり,2000万円の借入れは権限外の行為となる。
Fは増額後の借入権限を信じたことに正当な理由があるとして,110条によるAへの効果帰属を主張し得る。
①は,A自身がFにCとの取引を進めるよう告げた点で,Fの信頼の正当性を支える。
他方,Aは既定の交渉経過を特に指しており,この点は1500万円を限度とする基本代理権の授与を推認させるとともに,増額権限まで信じる根拠を弱める。
②は,Fが増額をそのまま受け入れず,本人に確認を試みた点で,相応の注意を払ったことを支える。
他方,Aと連絡が取れず,Dからも融資をCに任せたという一般的な伝聞しか得られなかった。
500万円もの増額をCが持ち出したのに,本人の確認を待たずに融資したことは正当理由を妨げる方向にも働く。
②の評価は,①を含む契約締結時の事情全体によって決まる。
第2 設問2
1 損害の発生と確定時期
抵当権は目的物の交換価値から被担保債権の優先弁済を受ける権利である(369条1項)。
したがって,丙建物の取壊しによるFの損害は,建物所有者に生じる価格相当の損失と区別し,丙から優先弁済を受ける利益の喪失として把握すべきである(709条)。
取壊し前後で,担保から回収できる額を被担保債権額の範囲内で比較する。
丙の滅失後も甲・乙の換価による優先回収で全額を充足できる場合,丙がなくなったことだけから回収不足は生じない。
甲・乙で足りない場合は,丙が存続していれば補えた範囲が損害となり得る。
乙の未登記,競売の見込額,費用や先順位権の負担がある場合の控除も考慮する。
被担保債権額にも争いがあり,三物件の価額も示されていないので,具体額を断定できない。
取壊しは平成19年8月19日,第1回弁済期は平成20年3月15日である。
取壊し時に被担保債権が将来弁済されるか,実行時に残存担保で不足するかは明らかでない。
優先回収不足を損害と捉えるなら,少なくとも弁済期到来後の不履行,残債額,残存担保の換価額等から不足を具体的に評価できる時点を考える必要がある。
他方,弁済期前でも,客観的に担保価値が低下し担保の経済的価値が既に失われたと立証できるなら,その限度で損害を認める余地はある。
その場合も,残存担保の余裕やその後の回収を無視して建物価格全額を填補することはできない。
2 登記欠缺を理由とする反論
有効な設定合意があれば抵当権は成立する(176条,369条)。
ただし,Fの抵当権が未登記で,Eが丙の所有権を取得して登記を備えた以上,Eは原則として177条の第三者である。
Fが抵当権侵害を理由にEの行為を違法と主張するには,Eに対してその抵当権を主張できることが前提となる。
金銭賠償の形式を採っても,この対抗の問題は残る。
Fは,Eが設定と未登記を知るだけでなく,登記欠缺を主張することが信義に反する事情があり,正当な利益を欠く背信的悪意者であると再反論できる。
EはA・Cの会話から設定と未登記の事情を具体的に知り,Aが未登記に乗じてした無償の処分を受け,短期間で丙を取り壊した。
A・Cとの親密な関係も併せ,Fの担保を排除する処分への加担と評価する余地がある。
他方,Aの支援にはEの独立を助ける理由があり,Eにも自己の居住用建物を建てる目的があった。
Eが登記を妨害したり,担保排除をAに働き掛けたりした事実は示されていない。
単なる悪意や無償取得で直ちに第三者性は失われない。
背信性まで認められれば,Eは登記欠缺を主張できず,抵当権を知って丙を取り壊したことによって前記の損害が生じた限度で709条の責任を負う。
第3 設問3
1 当事者の確定とGの行為の性質
訴訟の当事者は,訴状の表示及び請求の内容から客観的に確定する。
FはEを名指しし,丙建物を取り壊したEの責任を問うており,訴状もE本人に送達された。
被告はEである。
Gが期日にEを名乗ったことで,Fの訴えの相手方が変わることはない。
Gは代理人であることを示さず,E本人の行為であるかのように主張と認否をした。
EはGに任せたが,個々の陳述の内容を決定してGに伝達させたという事情はない。
GがEのために自ら判断して訴訟を追行した点に着目すれば,顕名を欠く訴訟代理に類する行為と評価できる。
2 弁護士代理の原則と行為の効力
地方裁判所では,法令上の例外を除き,弁護士に訴訟代理を限る(民訴法54条1項)。
専門的な知識と職務上の規律を備えた者に代理させることで,本人の利益を守り,相手方との攻撃防御及び裁判所の審理を適正に進める趣旨である。
本人が陳述を決定し,その伝達だけを他人にさせる場面では,その者に訴訟追行を委ねる危険は小さい。
本件ではGが自ら認否をし,Eとして訴訟を進めたため,代理人と表示した場合と同じ危険がある。
54条1項の趣旨が及び,Eの承諾だけではGの行為の効力はEに帰属しない。
もっとも,Eは訴状を受け取り,Gの身代わりの申出を承諾した。
F側はGがE本人であると信じて第3回期日まで審理を重ねたため,Qとしては,Eの関与と,従前の手続をやり直す負担を考慮すべきだと主張できる。
しかし,本人が関与したことを根拠にGの追行を有効にすると,54条の保護が事前の承諾によって失われる。
第4回期日に事情が判明し,係属中の第5回期日にEと弁護士Rが出頭している。
E側に改めて主張・認否の機会を与えれば,これまでに明らかになった争点を踏まえて適法に審理を続けられる。
訴訟代理の欠缺には本人の事後の追認による遡及効が認められる場合がある(同法59条,34条2項)。
本件ではEが事前に「任せる。」と答えた後,E側は第5回期日にGの行為の効力を否認している。
追認の趣旨を類推しても,効力を認める事情を欠く。
したがって,訴状送達後から第3回期日までにGがした訴訟行為の効力はEに及ばない。
第4 設問4
1 二つの法律構成の長所と短所
(1) 判例の基準とFの主張の目的
Qに対する検討結果を述べる。
第3訴訟の訴訟物は所有権に基づく抵当権設定登記抹消登記請求権である。
抵当権の付従性により,被担保債権の存否がその先決問題となる。
第1訴訟の全部認容判決の既判力は主文に包含される判断に及び(民訴法114条1項),基準時は平成20年4月11日の口頭弁論終結時である。
最二小判昭和40年9月17日は,一定額を超える債務の不存在確認を求めた事案で,債権総額から残存を自認する額を控除した部分を申立ての範囲とした。
この立場では,前訴判決で自認部分の存否は確定しない。
Fが提示する①②は,いずれも1500万円部分を別の根拠で拘束的に確定し,平成20年3月15日の500万円弁済の主張を遮断しようとする。
構成が成り立てば,基準時後の平成21年3月15日の1000万円弁済を控除しても500万円が残り,Fは抵当権の存続を主張できる。
(2) 法律構成①
Fは,金額の限定をAが求める認容範囲の限定とみて,債務全体を一個の訴訟物とすることで,同一債務の額を一回の審理で確定できると主張できる。
これは量的に可分な債権の一部について給付を求め,後で残部を請求する場面の裏返しである。
一個の債権を一体として扱う考え方には,後訴で同じ事実を審理する負担を抑える利点がある。
一方,一部給付の申立てで請求する部分が明示されると,その部分に限って審理・判断することには合理性がある。
消極的確認でも,Aの申立ては1500万円を超える部分を明示している。
前訴の全部認容の主文は,残額が1000万円の場合とも1500万円の場合とも両立する。
そこから1500万円の積極的な存在まで判断されたと解するのは,114条1項及び申立ての範囲を尊重する246条との関係で難しい。
Aには前訴で請求を拡張する余地があった。
しかし,Aは先行弁済が前訴に意味を持つと思わず,Pに連絡しなかった。
元の請求を維持するには,先行弁済を主張する必要がなかった。
Fにも,1500万円部分の存在を既判力で確定させたいなら,その存在の確認を求める反訴を提起する余地があった。
前訴で自認部分を争う動機と機会が十分だったとは評価しにくく,Fの主張として採用される可能性は低い。
(3) 法律構成②
構成②も,元本返還債務の全体を前訴の訴訟物とする。
Fは,Aが自認部分について不存在確認請求を一部放棄した結果,判決の審判対象は超過部分となり,自認部分には一部放棄の効力が生ずると主張できる。
有効な請求放棄の調書には確定判決と同一の効力がある(民訴法267条)。
その文言から,当事者が処分した対象について再度の争いを許さない拘束を認める見解には根拠がある。
もっとも,放棄は当事者の一方的な訴訟行為で,裁判所はその部分の債務の存否を実体判断していない。
そのため,手続を終わらせる確定効と実体判断に対する既判力とを分けて理解する余地がある。
拘束を認めるとしても,何が放棄の対象となったかを確定する必要がある。
Aが初めから超過部分の確認だけを求めたことを,1500万円以下の部分についても請求を立てた上で放棄する意思表示とみるのは技巧的である。
しかも,本件では期日における放棄も放棄の調書記載も示されていない(同法266条,267条)。
さらに,放棄による拘束が生じるとしても,その基準時は放棄がされた時点と考える余地がある。
仮に平成19年7月27日の訴状陳述に放棄を読み込むなら,平成20年3月15日の弁済はその後の事由である。
判決の基準時より前の弁済であることだけでは,放棄により遮断されるとはいえない。
以上から,構成②にも難点があり,いずれの構成によっても,平成20年3月15日の弁済の主張が遮断されることを基礎付けるのは難しい。
この弁済が立証されれば,前訴の口頭弁論終結後の平成21年3月15日の1000万円の弁済と合わせて,元本は消滅する。
2 条件付給付判決と全部棄却判決
(1) 将来給付と事前に請求する必要
残元本が500万円ある以上,抵当権は存続し,口頭弁論終結時の無条件の抹消登記請求は理由がない。
Aが完済すれば,抵当権は付従性により消滅し,抹消登記を請求できる。
ここで条件付きの判決が命じるのは,完済で発生する抹消登記義務という将来の給付である。
同時履行の抗弁が認められたときの引換給付は,既に成立した給付義務について反対給付と引き換えに履行を命じるもので,これとは異なる。
将来給付には,あらかじめ請求する必要がある(民訴法135条)。
本件では原因となる法律関係が既にあり,残元本と完済の条件を特定できる。
残額を巡る対立が続き,Aがこれを支払った後もFが抹消に応じないおそれがあれば,再訴を避けるためにあらかじめ請求する必要がある。
一方,残額の確定と完済によりFが抹消に協力すると見込める場合には,その必要性は乏しい。
(2) 両判決の効力と処分権主義
全部棄却であれば,基準時に抹消登記請求権が存在しないとの判断に既判力が及ぶ。
棄却には被担保債権が一部でも残るとの認定で足り,仮に判決理由で残額を500万円と認定しても,その額に既判力は及ばない。
Aは,その後の完済を根拠に抹消を再請求できるが,その訴訟で残額が改めて争われる可能性がある。
条件付き認容には,いくら支払えば抹消を求められるかの審理が必要になる。
500万円が主文の条件として明示されるため,その額も拘束的に確定すると解する余地がある。
ただし,判決の対象は条件付きの抹消登記請求権である。
主文が特定する給付条件についての拘束と,別の貸金訴訟で債権額そのものが独立に確定するかは区別すべきであり,後者まで当然に及ぶとは考えない。
この判決はAに支払を命ずるものではなく,Aが条件を証明して執行文の付与を受けた時に,Fが抹消登記に必要な意思表示をしたものとみなされる(当時の民事執行法27条1項,174条1項ただし書)。
同じ抵当権の抹消を対象に,完済を付加する限度では,条件付き認容を質的一部認容としてAの申立てに含める余地がある(民訴法246条)。
しかし,Aにとっては無条件の認容を求める訴訟で,将来の抹消を受けるための支払額が固定される。
Fにも,残債務が一部でもあると示せば勝訴できると考え,残額の全体を争っていなかった可能性がある。
裁判所は,条件付きの請求をAが求める趣旨かを釈明し,双方に具体額と将来給付の必要性を争う機会を与えるべきである。
その審理を経て135条の必要性と246条の申立ての範囲が満たされる場合,条件付きの抹消登記手続を命ずる判決ができる。
必要性又は手続上の条件を欠けば,全部棄却すべきである。
第5 設問5
1 父子関係と遺言
EはA・Dの婚姻前に生まれており,Aとの法律上の父子関係には認知を要する(民法779条)。
成年のEの承諾があったとしても(782条),届出による認知は戸籍法に従った届出を要する(781条1項)。
Aが認知の意思を明確にし,署名押印済みの届書を使者としてのEに渡しても,Aの死亡までに提出されていない。
届出人が生前に郵便で発送した届書を死亡後も受理する戸籍法47条の事案でもない。
財産の割合を定めた遺言から認知の意思表示も読み取れず,EはAの法律上の子ではない。
遺言のEに関する部分は,特定の財産でなく,遺産全体の3分の1を与える割合的包括遺贈である(964条)。
Cは唯一の相続人であり,Cについての2の記載は,遺贈後の残余3分の2が相続によりCに帰属することを確認したものと解する。
2 Hへの支払額
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(990条)。
Eは積極財産だけでなく,Aの金銭債務も包括遺贈の割合で承継する。
共同相続の場合に可分債務が各承継者の割合に応じて当然に分割されるのと同様に,本件の貸金元本600万円も割合に応じてCとEに分かれる(896条,990条)。
したがって,Hに対し,Cは600万円の3分の2に当たる400万円,Eは3分の1に当たる200万円の支払義務を負う。
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案第1から第5は,表の1~7番,8~14番,15~22番,23~41番,42~45番にそれぞれ対応する。
第4の1は23~33番,第4の2は34~41番に当たり,19・20番は第3の2,33番は第4の1の(1)と(3),41番は第4の2の(2)で扱う。
下の表には,重み5・4の項目と,論じる場合に限る21・22番を示す。
22番は,答案が任意的訴訟担当を採らないため適用外である。
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 1 | 5 | Fの二つの選択的主張を,有権代理と110条の権限外の行為の表見代理として別々に扱う。 | 答案第1(①②を構成別に評価) |
| 2 | 4 | 有権代理構成の事実①を,AからCへの授権を推認する間接事実として評価する。 | 答案第1(①②を構成別に評価) |
| 3 | 4 | 有権代理構成では事実②がA・C間の授権を基礎付けず,当該構成に特段の法律上の意義がないことを説明する。 | 答案第1(①②を構成別に評価) |
| 4 | 4 | 110条構成で事実①を,2000万円の借入権限を信じたことの正当理由を支える事情として評価する。 | 答案第1(①②を構成別に評価) |
| 6 | 4 | 110条構成の事実②について,調査を試みた点と本人確認を得ないまま増額に応じた点を検討し,正当理由との関係を理由付きで示す。 | 答案第1(①②を構成別に評価) |
| 8 | 4 | 抵当権の担保権性から,丙建物の価格そのものとFが失った優先弁済利益を区別する。 | 答案第2の1(残存担保・確定時期) |
| 9 | 5 | 取壊し後の甲・乙の換価額と被担保債権額を比較し,残存担保で充足できる場合と不足する場合を分ける。 | 答案第2の1(残存担保・確定時期) |
| 10 | 5 | 丙の取壊しが第1回弁済期前であることから,取壊し時の経済的不利益と回収不足を確定できる時点を分けて論じる。 | 答案第2の1(残存担保・確定時期) |
| 12 | 4 | 設定合意による抵当権の成立とEへの対抗を分け,Eに対抗できる権利の侵害かを709条の成立判断に位置付ける。 | 答案第2の2(対抗・背信性) |
| 13 | 5 | Eは登記欠缺を主張できる177条の第三者に原則該当し,背信的悪意者は正当な利益を欠くため除外されると述べる。 | 答案第2の2(対抗・背信性) |
| 14 | 4 | Eの設定・未登記の認識と,無償取得,Aの働き掛け,居住目的などの両方向の事情を評価し,背信性と取壊しの違法評価を結ぶ。 | 答案第2の2(対抗・背信性) |
| 15 | 5 | GがE本人と称した行為を法的に位置付け,代理人としての顕名を欠くことの意味を説明する。 | 答案第3の1(被告とGの行為) |
| 16 | 4 | 訴状と請求の内容を基に被告をEと確定する。 | 答案第3の1(被告とGの行為) |
| 17 | 4 | 弁護士代理の原則が裁判当事者と審理をどのように保護するかを示す。 | 答案第3の2(弁護士代理・期日・追認) |
| 18 | 4 | Gが行為を独立に決めた事情を用い,弁護士代理原則又はその趣旨の適用を事案に即して検討する。 | 答案第3の2(弁護士代理・期日・追認) |
| 21 | 2 | [注意・追認を論じる場合]追認を検討する場合は,Eの事前の承諾と個々の行為についての事後の態度を区別する。 | 答案第3の2(弁護士代理・期日・追認) |
| 22 | 2 | [注意・任意的訴訟担当を論じる場合]任意的訴訟担当を論じる場合は,Gが担当者として自ら当事者になる構成と,被告をEとする認定の整合を検討する。 | 適用外。任意的訴訟担当を採らず,Gを当事者とする構成は採らない。 |
| 23 | 4 | 二構成の長短を,Fの準備書面に載せて裁判所に採用を求める主張として評価する。 | 答案第4の1(1)~(3)(Fの目的・攻撃防御) |
| 24 | 5 | 自認額を超える部分が訴訟物となる最高裁の立場を基準に置く。 | 答案第4の1(1)・(2)(Fの目的・攻撃防御) |
| 25 | 4 | ①②がいずれも自認額1500万円の存在を拘束的に確定させる構成であることを示す。 | 答案第4の1(1)・(2)(Fの目的・攻撃防御) |
| 26 | 4 | 先決関係を押さえ,前訴で自認部分の減少を争う機会と動機があったかを事案に即して論じる。 | 答案第4の1(1)・(2)(Fの目的・攻撃防御) |
| 27 | 4 | 構成①を,量的に可分な給付請求権の一部請求と残部請求の関係の裏返しとして検討する。 | 答案第4の1(2)(構成①) |
| 28 | 5 | 構成①につき,前訴の全部認容の主文が自認部分の存在まで判断したといえるかを検討する。 | 答案第4の1(2)(構成①) |
| 29 | 4 | 構成②につき,請求の趣旨を限ったAの意思から自認部分に関する請求の一部放棄を導けるかを論じる。 | 答案第4の1(3)・(1)(構成②・基準時) |
| 30 | 4 | 構成②につき,期日における放棄と調書記載の要件を示し,本件に放棄調書が示されていないことを指摘する。 | 答案第4の1(3)・(1)(構成②・基準時) |
| 31 | 5 | 構成②につき,放棄調書の確定判決と同一の効力が,実体判断を伴わない放棄に既判力まで与えるかを論じる。 | 答案第4の1(3)・(1)(構成②・基準時) |
| 32 | 4 | 構成②につき,放棄があったと仮定した時点と判決の口頭弁論終結時を区別し,500万円弁済の遮断が変わり得ることを示す。 | 答案第4の1(3)・(1)(構成②・基準時) |
| 34 | 5 | 無条件抹消の申立てから条件付きの質的一部認容をすることの可否を民訴法246条により検討する。 | 答案第4の2(2)(両判決の効力・当事者の手続保障) |
| 35 | 4 | 条件付き抹消を将来給付と位置付け,現在の給付である引換給付判決との違いを説明する。 | 答案第4の2(1)(将来給付) |
| 36 | 4 | 被担保債権の残額,条件の明確性と将来の争いを踏まえ,あらかじめ請求する必要を民訴法135条により検討する。 | 答案第4の2(1)(将来給付) |
| 37 | 4 | 全部棄却判決の既判力は基準時の抹消請求権の不存在に及び,理由中の残額500万円の認定は別であると説明する。 | 答案第4の2(2)(両判決の効力・当事者の手続保障) |
| 38 | 5 | 条件付き認容では500万円が主文に掲げられることから,その数額に既判力が及ぶかを条件の効力と債権額の独立した確定に分けて論じる。 | 答案第4の2(2)(両判決の効力・当事者の手続保障) |
| 39 | 4 | 全部棄却に足りる残債務の存在の審理と,条件付き主文に必要な残額の確定を比較する。 | 答案第4の2(2)(両判決の効力・当事者の手続保障) |
| 40 | 4 | 条件の固定が双方に与える利益・不利益を示し,原告の意思と当事者への不意打ちを具体的に検討する。 | 答案第4の2(2)(両判決の効力・当事者の手続保障) |
| 42 | 5 | 成年Eの承諾があっても,未提出の認知届により父子関係は生じず,書類の作成・使者への交付と届出を区別する。 | 答案第5(認知・割合的包括遺贈・分割額) |
| 43 | 5 | 遺言を非相続人Eへの遺産3分の1の割合的包括遺贈と解し,Cの3分の2は唯一の相続人に帰属する残余であると示す。 | 答案第5(認知・割合的包括遺贈・分割額) |
| 44 | 5 | 990条の同一の権利義務と可分債務の承継を結び,Hへの元本支払義務をC400万円・E200万円と算定する。 | 答案第5(認知・割合的包括遺贈・分割額) |
(2) 設問1
1~6番は,事実①②を同じ意味で扱わず,有権代理と110条の要件へ振り分けることを求めている。
有権代理の②は特段の意義がなく,110条の②は調査の試みと本人確認の不成立の両面を持つ。
7番は109条に置き換える誤りへの注意である。
(3) 設問2
8~11番では,丙の価格とFの優先弁済利益を分け,甲・乙の残存価値と弁済期を考慮する。
12~14番では,未登記がEに対する権利侵害の主張を妨げるかを検討し,Eの認識と背信性を区別する。
(4) 設問3
出題の趣旨は,当事者確定の基準論を前提に,Gが代理人と称さずにE本人として行為したことを訴訟法上どう位置付けるかを問う(15・16番)。
答案は,Gが訴訟を自ら進めた点に着目し,民訴法54条の趣旨を,陳述を取り次ぐだけの場面との比較から説明している(17・18番)。
採点実感は,なりすましの了承や信義則,訴訟経済・相手方保護だけで効力を肯定する論述の問題を指摘する。
答案では,Eの事前の承諾と第3回期日までの進行,Fの信頼と手続のやり直しの負担を資格規制と対比し,第5回期日からE本人側の関与を確保できることを検討する(19~21番)。
答案は資格規制を適用し,Gの行為の効力をEに及ぼさない見解を採る。
この結論は本記事が採った一つの構成であり,採点実感は,弁護士代理の原則の趣旨を本件に適用した場合の具体的妥当性を意識して結論を導くことを求めている。
(5) 設問4(1)
自認額を控除した部分を申立ての範囲とした最高裁判決を起点に,Fが二構成を主張する目的を押さえる(23~26番)。
構成①は,一部給付請求と残部請求の裏返しとして,金額の明示と全部認容の主文の意味を検討し,債務全体を訴訟物とするF側の利点と,主文に自認部分が含まれるかの難点をともに示す(27・28番)。
構成②は,放棄の意思と手続,放棄調書の効力の射程,放棄時と前訴の口頭弁論終結時の違いを分ける(29~33番)。
最高裁判決の事案から本問への適用,反訴の余地,放棄調書の効力に関する両方向の論拠は,条文と問題文に照らした本記事の検討である。
(6) 設問4(2)
出題の趣旨は,民訴法246条,135条,両判決の既判力の比較を求める(34~38番)。
採点実感が示す審理範囲の違いを踏まえ,答案では,残債務の存在を判断することと,支払条件として具体額を審理することを分けた(39番)。
この違いを,双方の攻撃防御の機会と,後発弁済による再訴の可否に接続する(40・41番)。
条件成就後の意思表示擬制は,試験当時の民事執行法による補足である。
(7) 設問5
42~45番は,届出がないため認知の効力が生じないことから始め,遺言をEへの割合的包括遺贈と解し,可分な貸金債務の承継割合を計算する。
Cへの記載は残余の帰属を確認するものと解する。
(8) 答案の弱点と扱わなかった事項
設問2の損害額は価額等の与件がないため数値化していない。
設問3は弁護士代理の規律を重く見る構成を採り,任意的訴訟担当を採る構成(22番)は,Eを被告とする本答案では採用していない。
設問4(2)の結論は,あらかじめ請求する必要と申立ての範囲が確認できることを条件にしている。
認知が将来成立した場合の準正や相続分は,設問5の現時点の支払義務とは区別し,答案では扱っていない。
当時の民事執行法174条は,後の改正で177条に移った。
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平成22年司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目
同年度の新司法試験問題(法務省)
2 他年度の民事系第2問
3 他年度の民事訴訟法
4 関連論点
第7 出典
1 問題・出題の趣旨・採点実感
平成22年新司法試験問題・論文式試験の民事系科目 PDF7~12頁の第2問を参照した。
平成22年新司法試験論文式試験問題出題趣旨 PDF4~6頁の第2問を参照した。
平成22年新司法試験の採点実感等に関する意見 PDF12~15頁の民法と16~19頁の民事訴訟法を参照した。
平成22年新司法試験の実施日程等について 1頁の試験日程を参照した。
2 法令
民法の一部を改正する法律(昭和22年法律第222号) 親族編・相続編の全部改正。
民法の一部を改正する法律(平成16年法律第147号) 民法の現代語化。
民事訴訟法の制定本文
平成15年法律第134号 試験当時の民事執行法174条。
令和元年法律第2号 177条への移動。
試験日当時の版はe-Gov法令検索で閲覧できないため,民法と民事訴訟法は,上記の改正法・制定時の条文と,e-Gov法令検索で閲覧できる最も古い版(民法は平成28年10月13日施行版,民事訴訟法は平成24年10月1日施行版)とを照らし合わせた。
答案で用いた条項の該当部分は,表記の整理を除き同じである。
戸籍法47条は,郵便で発送した届書に関する部分を引いている。
3 裁判例
最二小判昭和40年9月17日(昭和39年(オ)第987号)・民集19巻6号1533頁 一定金額を超える貸金債務の不存在確認請求は,貸金債権額から当該金額を控除した残債務額の不存在の確認を求めるものとした判示を参照した。
4 確認日
令和8年11月6日,法務省の問題・出題の趣旨・採点実感の上記範囲,上記の法令及び判決を確認した。
評価項目と重み,答案の結論は本記事の分析である。