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日弁連の会長・副会長―職務,選任,任期,報酬及び正副会長会(AIリライト)

第1 日弁連の会長

1 会長の定数及び職務

日本弁護士連合会会則第56条第1項は,日弁連に会長1人を置くと定めている。

会長は日弁連を代表し,会務を総理する(弁護士法第50条により準用される同法第35条第1項,会則第57条第1項)。

会長は理事会及び常務理事会の構成員となり,日弁連の会務執行を統括する。ただし,総会,代議員会,理事会及び常務理事会には会則上それぞれの権限があるため,会長がこれらの議決機関に代わって全ての事項を単独で決定できるわけではない。

2 現職会長及び任期

令和8年度及び令和9年度の会長は松田純一である。日弁連の会長からのメッセージ及び令和8年度役員一覧で確認できる。

会長の任期は2年であり,通常は選挙の翌年度の4月1日に始まる(会則第64条第1項及び第2項)。

第2 日弁連の副会長

1 副会長の定数及び職務

日弁連の副会長は15人である(会則第56条第1項)。

副会長は,会長を補佐するだけでなく,会長があらかじめ定めるところにより会務を執行する(会則第57条第2項)。

副会長も会長とともに理事会及び常務理事会の構成員となる(会則第58条第1項及び第59条の2第1項)。

2 会長に事故がある場合等の職務代行

会長に事故があるとき,又は会長が欠けたときは,副会長が会長の職務を行う(弁護士法第50条により準用される同法第35条第2項,会則第57条第3項)。

職務を行う副会長の順序は,会長があらかじめ定める。会長が順序を定めていないときは,弁護士名簿の登録番号順による。

3 単位弁護士会会長との兼務

令和8年度には,東京三弁護士会,大阪弁護士会及び愛知県弁護士会の各会長が日弁連副会長を兼務している。

もっとも,現行会則又は役員選任規程に,これらの単位弁護士会の会長が当然に日弁連副会長になるとの規定はない。この兼務は,法定又は会則上の当然の兼職ではなく,令和8年度の選任実例として理解すべきである。

第3 会長及び副会長の選任方法

1 会長の直接選挙

会長は,弁護士である日弁連会員の直接選挙によって選任される(会則第61条第1項)。

通常の会長選挙は任期満了前の2月中に行われる。選挙の詳細は,会長選挙規程及び日弁連会長選挙に関する別記事に記載している。

2 会長選挙の二重の当選要件

会長選挙は,単純な全国最多得票制ではない。

当選するには,全国集計の有効投票数が最多であることに加え,全国52弁護士会の3分の1を超える弁護士会,すなわち18会以上で最多得票者となることが必要である(会則第61条第2項)。

一つの弁護士会で最多得票者が複数となった場合,その弁護士会は18会以上という地域要件の算定に含まれない。この地域要件は,会員数の多い一部の地域だけで会長が決まることを避け,全国の弁護士会の意思を選挙結果へ反映させる仕組みである。

3 再投票及び再選挙

初回投票で当選者が決まらないときは,全国集計の得票数が上位の2人について再投票を行う。

再投票でも,全国最多得票と18会以上での最多得票という二重要件は維持される。再投票でも当選者が決まらないときは,あらためて候補者の届出から行う再選挙となる。

4 副会長の選任及び任期

副会長は,毎年3月に開かれる代議員会で選任され,任期は1年である(会則第62条及び第64条第1項)。

会長の任期が2年であるのに対し,副会長の任期は1年であるため,一人の会長の任期中に副会長の構成が年度ごとに変わる。

第4 女性副会長の特別措置

1 少なくとも2人を女性とする会則

会則第56条第2項は,15人の副会長のうち少なくとも2人は女性でなければならないと定めている。

したがって,女性副会長が「2人に固定されている」わけではない。制度開始年度の平成30年度には,女性副会長は合計3人であった。

2 特別措置による選任手続

女性副会長の特別措置は,平成29年12月8日の臨時総会における会則改正を受け,平成30年度から実施された。

特別措置の対象となる2人については,男女共同参画推進特別措置実施のための副会長候補者推薦委員会規則に基づく推薦委員会が候補者を推薦し,代議員会が選任する。

この制度は,日弁連の意思決定過程へ女性会員が継続して参加できるようにするものであり,令和9年度の候補者選任に向けても運用が続いている。詳しくは,日弁連の女性副会長に関する別記事に記載している。

第5 会長及び副会長の報酬等

1 会長の給与,賞与等

会長報酬規則によれば,会長の給与は月額105万円である。

会長については,給与のほか,賞与,退職手当及び必要がある場合の住宅手当も定められている。住宅手当は月額8万円を上限とし,賞与の年額は月額給与の6.8か月分を上限とする。

2 副会長の給与

副会長報酬規則によれば,副会長の給与は月額50万円である。

会長及び副会長の役員就任と社会保険の関係については,弁護士会の役員の社会保険加入義務に関する別記事を参照されたい。

3 特別措置対象副会長への経済的支援

男女共同参画推進特別措置によって選任された副会長には,男女共同参画推進特別措置実施のための副会長に対する経済的支援に関する規則に基づき,月額20万円が支給される。

この金員は,副会長報酬規則上の給与を増額するものではなく,別規則に基づく経済的支援である。

第6 法律上の位置付け及び公示

1 罰則の適用に限られるみなし公務員

弁護士法第50条は,同法第35条を日弁連に準用している。

このため,日弁連の会長及び副会長は,刑法その他の罰則の適用について,法令により公務に従事する職員とみなされる(同法第35条第3項)。

この規定は,収賄罪等の罰則を適用する場面に限ったみなし規定であり,会長又は副会長が一般的な意味で公務員になることを定めたものではない。

2 法人登記及び官報公告

弁護士法第50条により同法第34条第2項第4号が準用されるため,会長及び副会長の氏名及び住所は日弁連の法人登記事項となる。

これとは別に,役員選任規程第14条は,役員選任後に役員の氏名及び所属弁護士会を官報に公告すると定めている。

日弁連の役員選任規程に関する別記事も参照されたい。

第7 正副会長会

1 会則上の議決機関との違い

日弁連が公開する機構・財政の説明は,総会,代議員会,理事会及び常務理事会を会則上の意思決定機関として掲げている。

これに対し,正副会長会は,会則上の独立した議決機関として列挙されていない。そのため,個々の事項の最終決定権がどこにあるかは,会則,規程及び当該事項の性質に従って判断する必要がある。

2 実務上の役割

正副会長会は,会長及び副会長が会務執行上の案件を協議し,委員会等からの報告を受け,理事会への付議前に案件を審査・調整する場として長年運用されている。

例えば,日弁連人権擁護委員会編『21世紀の再審―えん罪被害者の速やかな救済のために』253頁~254頁は,再審支援案件について,委員会の判断後に正副会長会の審査を経て理事会へ付議する手続を説明している。

また,『日弁連五十年史』PDF実頁392頁(冊子369頁)は,各種委員会で検討した案件について,正副会長会の審議を経て理事会へ付議し,重要議案は複数回審議していた当時の運営を記録している。

したがって,正副会長会は単なる懇談の場ではないが,日弁連の包括的な最高意思決定機関と位置付けることもできない。

3 開催頻度

平成15年度会務報告書は,正副会長会を「原則として毎週」開催すると説明している。

平成13年度から令和7年度までの会務報告書を通覧すると,年間開催回数は46回から64回であり,平均56回,中央値58回であった。令和7年度は46回開催された。

平成14年の司法制度改革推進本部資料は,当時の正副会長会を,会長,副会長,事務総長,事務次長及び関係職員による執行部の打合せ会と説明し,月3回から4回開催としていた。正副会長会に関する別記事では,年度別の資料も掲げている。

第8 会長制度の沿革

1 直接選挙制の導入

日弁連の設立当初,会長は代議員会で選任されていた。

昭和49年2月23日の臨時総会で会長直接選挙制に関する会則改正が可決され,昭和50年度から直接選挙制が実施された。

『日弁連五十年史』は,制度導入の趣旨について,執行部の責任体制を明確にし,会長の民主的基盤を強めることにあったと説明している。

2 2年任期制の変遷

日弁連設立時の会長任期は2年であったが,会長職の負担が大きいことを理由として,昭和25年4月9日の会則改正で1年に短縮された。

その後,直接選挙制の下で会務の継続性を確保し,会長の執行力を強化する観点から,昭和55年度に2年任期制が実施された。

したがって,現行の直接選挙制と2年任期制は同時に始まったものではなく,直接選挙制が5年先行している。

第9 叙勲例及び歴代副会長資料

1 会長・副会長経験者の叙勲例

近年の春秋叙勲では,日弁連会長経験者が旭日重光章を,日弁連副会長経験者が旭日中綬章を受章する例が見られる。

もっとも,叙勲は,功績等についての個別審査及び閣議決定を経て行われる。役職歴だけで受章の有無又は勲章の種類が当然に決まるものではない。制度の概要は,内閣府の勲章と褒章の制度概要及び裁判所関係者と弁護士の叙勲に関する別記事を参照されたい。

2 歴代副会長の資料

昭和24年9月1日の日弁連設立以降の歴代副会長については,次の記事に整理している。

弁護士会連合会別の日弁連歴代副会長(平成15年度以降)

関東弁護士会連合会管内の単位弁護士会別の日弁連歴代副会長

近畿弁護士会連合会管内の単位弁護士会別の日弁連歴代副会長

中部弁護士会連合会管内の単位弁護士会別の日弁連歴代副会長

中国地方弁護士会連合会管内の単位弁護士会別の日弁連歴代副会長

九州弁護士会連合会管内の単位弁護士会別の日弁連歴代副会長

東北弁護士会連合会管内の単位弁護士会別の日弁連歴代副会長

北海道弁護士会連合会管内の単位弁護士会別の日弁連歴代副会長

四国弁護士会連合会管内の単位弁護士会別の日弁連歴代副会長

日弁連の歴代正副会長(昭和57年度以降)及び日弁連役員に関する記事一覧も参照されたい。

第10 出典・参考資料

1 法令,会則及び規程

e-Gov法令検索・弁護士法

日本弁護士連合会会則

会長選挙規程

役員選任規程

会長報酬規則

副会長報酬規則

男女共同参画推進特別措置実施のための副会長候補者推薦委員会規則

男女共同参画推進特別措置実施のための副会長に対する経済的支援に関する規則

2 日弁連の公開資料

日弁連の機構・財政

会長からのメッセージ

令和8年度役員一覧

④ 日本弁護士連合会『令和7年度会務報告書』PDF実頁19頁~20頁,39頁~42頁及び58頁~59頁

3 制度史及び実務の参考資料

① 日本弁護士連合会『日弁連五十年史』PDF実頁49頁,207頁,378頁,389頁~392頁

② 日本弁護士連合会『日弁連七十年』PDF実頁21頁~22頁及び31頁~32頁

③ 日本弁護士連合会人権擁護委員会編『21世紀の再審―えん罪被害者の速やかな救済のために』日本評論社,令和3年,253頁~254頁

④ 犬伏由子ほか編『レクチャージェンダー法 第2版』法律文化社,令和3年,237頁

⑤ 城祐一郎『知能犯捜査全書―理論と実務の詳解』立花書房,令和8年,9頁