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民事裁判の宣誓書と宣誓拒絶――証人尋問・当事者尋問の宣誓の仕組み(AIリライト)

民事裁判の証人尋問・当事者尋問では,尋問に先立ち,証人や当事者本人に「宣誓」をさせます。宣誓は,良心に従って真実を述べることを誓わせる手続で,宣誓した者が虚偽を述べれば,証人は偽証罪,当事者本人は過料の対象になります。本記事は,宣誓書の文言と手続,宣誓を拒むことができる場合とその手続(宣誓拒絶),宣誓した後に虚偽を述べた場合の効果を,民事訴訟法・民事訴訟規則・刑法の条文に即して整理します(2026年7月時点の法令によります。)。

第1 民事裁判の宣誓書とは

宣誓書は,証人尋問・当事者尋問の冒頭で,証人や当事者本人が「良心に従って真実を述べる」ことを誓う書面です。宣誓を経ることで,虚偽の供述に対する制裁(証人は偽証罪,当事者本人は過料)の前提が整います。まず,宣誓書の文言と手続を確認し,次に,証人と当事者本人とで宣誓の根拠規定が異なることを整理します。

1 宣誓書の文言と読み上げの手続

実務で用いられる宣誓書には,たとえば次のような平易な文言が記載されています。

良心に従って本当のことを申し上げます。知っていることを隠したり,ないことを申し上げたりなど,決していたしません。以上のとおり誓います。

この文言は,民事訴訟規則112条5項が定める「良心に従って真実を述べ,何事も隠さず,また,何事も付け加えないことを誓う旨」という法定の記載事項を,平易に言い換えたものです。

手続としては,証人・当事者本人が宣誓書に署名押印し,法廷で起立して読み上げます(民事訴訟規則112条2項〜4項)。宣誓は尋問の前にさせるのが原則です(同条1項)。裁判長は,宣誓の前に,宣誓の趣旨を説明し,かつ,偽証の罰を告げます(同条6項)。

宣誓書に押す印は,認め印で足ります。印を忘れた場合は,指印(親指又は人差し指の先に朱肉を付けて押す印)でも差し支えありません。なお,令和4年の民事訴訟規則改正(令和4年最高裁判所規則第17号)により,ウェブ会議の方法による尋問などで裁判長が相当と認めるときは,署名押印に代えて,宣誓書に宣誓の趣旨を理解した旨の記載をさせることができるようになりました(同条4項)。

宣誓の後は,尋問を申し出た側の代理人による主尋問,相手方代理人による反対尋問,裁判所からの尋問という順序で質問に答えます(民事訴訟法202条,民事訴訟規則113条・127条)。

2 証人の宣誓と当事者本人の宣誓――根拠規定の違い

同じ「宣誓」でも,証人の宣誓と当事者本人の宣誓とでは,根拠となる条文が異なります。

証人の宣誓は,民事訴訟法201条1項が「証人には,特別の定めがある場合を除き,宣誓をさせなければならない。」と定めており,原則として必要的です。方式は民事訴訟規則112条によります。

これに対し,当事者本人の宣誓は,民事訴訟法207条1項後段が「その当事者に宣誓をさせることができる。」と定めており,裁判所の裁量に委ねられています。方式は,証人尋問の規定を準用する民事訴訟規則127条(同条により112条を準用)によります。

区分宣誓の要否根拠(民事訴訟法)方式(民事訴訟規則)
証人原則として必要的201条1項112条
当事者本人裁判所の裁量207条1項後段127条・112条

この必要的・裁量的の違いは,宣誓した後に虚偽を述べた場合の効果(証人は偽証罪,当事者本人は過料)の違いにもつながります(第4参照)。

第2 宣誓をさせる場合とさせない場合

証人の宣誓は原則として必要的ですが,例外的に宣誓をさせられない場合や,させないことができる場合があります。

1 宣誓が必要的な証人と,宣誓させられない証人

証人には,原則として宣誓をさせなければなりません(民事訴訟法201条1項)。もっとも,次の場合は宣誓に関する扱いが異なります。

  • 16歳未満の者,又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合は,宣誓をさせることができません(民事訴訟法201条2項)。
  • 証言拒絶権をもつ証人(民事訴訟法196条に該当する証人)で,その証言拒絶権を行使せずに証言する者を尋問する場合は,宣誓をさせないことができます(民事訴訟法201条3項)。

2 尋問の順序と宣誓の位置

宣誓は尋問の前にさせるのが原則です(民事訴訟規則112条1項ただし書により,特別の事由があるときは尋問の後にさせることもできます。)。

宣誓の後の尋問は,主尋問(尋問の申出をした当事者による尋問),反対尋問(相手方による尋問),再主尋問(申出をした当事者による再度の尋問)の順序で行われ(民事訴訟規則113条1項),その後に裁判長や陪席裁判官が尋問します(民事訴訟法202条1項)。当事者本人の尋問も,証人尋問の規定が準用されるため,同じ順序によります(民事訴訟法210条,民事訴訟規則127条)。

第3 宣誓拒絶――拒むことができる場合と手続

証人が宣誓を拒むことができる場合があります。これを宣誓拒絶といいます。宣誓せずに証言した場合は「法律により宣誓した証人」(刑法169条)に当たらないため,偽証罪には問われません。

1 宣誓を拒むことができる場合

証人は,自己又は自己と民事訴訟法196条各号に掲げる関係(配偶者・四親等内の血族・三親等内の姻族の関係,後見人と被後見人の関係)にある者に,著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは,宣誓を拒むことができます(民事訴訟法201条4項)。

また,証言拒絶権をもつ証人(民事訴訟法196条に該当する証人)については,そもそも裁判所が宣誓を求めないことがあります(民事訴訟法201条3項)。

2 拒絶の疎明・裁判・不服申立て

宣誓を拒む場合の手続は,証言拒絶の規定を準用します(民事訴訟法201条5項)。具体的には次のとおりです。

  • 宣誓を拒む理由は,疎明しなければなりません(民事訴訟法201条5項前段による198条の準用)。
  • 宣誓拒絶の当否については,受訴裁判所が当事者を審尋して,決定で裁判をします(民事訴訟法201条5項前段による199条1項の準用)。
  • この裁判に対しては,当事者及び証人が即時抗告をすることができます(民事訴訟法201条5項前段による199条2項の準用)。
  • 宣誓拒絶を理由がないとする裁判が確定した後,正当な理由なく宣誓を拒む場合には,過料等の制裁が準用されます(民事訴訟法201条5項後段による192条・193条の準用)。宣誓拒絶が認められなければ,宣誓をしなければなりません。

3 宣誓拒絶の実務上の位置づけ

証言拒絶権(民事訴訟法196条)を行使する場面自体が限られており,宣誓拒絶はさらに例外的です。筆者の職務経験上,宣誓拒絶をした証人を見たことはありません。もっとも,近親者に著しい利害関係のある事項が尋問対象となる事件では,制度として宣誓拒絶があり得ることを念頭に置く意味はあります。

第4 宣誓した後に虚偽の陳述をした場合

宣誓の実質的な担保は,虚偽の供述に対する制裁にあります。証人と当事者本人とで,制裁の性質が異なります。

1 証人――偽証罪

法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは,偽証罪として3月以上10年以下の拘禁刑に処せられます(刑法169条)。「法律により宣誓した」ことが要件ですから,適法に宣誓をしないで証言した場合には,偽証罪には問われません。

もっとも,偽証をした者でも,その証言をした事件の裁判が確定する前,又は懲戒処分が行われる前に自白したときは,刑が減軽され,又は免除されることがあります(刑法170条)。なお,令和7年6月1日施行の刑法改正により,法定刑は「懲役・禁錮」から「拘禁刑」に一本化されています。

2 当事者本人――過料

当事者本人は「証人」ではないため,宣誓の上で虚偽を述べても偽証罪の対象にはなりません。この場合は,宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたものとして,裁判所が決定で10万円以下の過料に処します(民事訴訟法209条1項)。過料の決定に対しては即時抗告をすることができます(同条2項)。また,虚偽の陳述をした当事者が,訴訟の係属中にその陳述が虚偽であることを認めたときは,裁判所は,事情により過料の決定を取り消すことができます(同条3項)。

つまり,宣誓の担保は,証人については偽証罪という刑事罰,当事者本人については10万円以下の過料という違いがあります。

第5 証言拒絶・宣誓に関する条文早見表

本記事で取り上げた条文を,証言拒絶と宣誓を中心に一覧にします。条文の全文は,第7の出典に掲げた各リンクから確認できます。

条文見出し要点
民事訴訟法196条証言拒絶権証人や近親者が刑事訴追・有罪判決を受けるおそれ,又は名誉を害する事項について証言を拒める。
民事訴訟法197条(証言拒絶)公務員の職務上の秘密,医師・弁護士等が職務上知り得た秘密,技術・職業の秘密について証言を拒める。
民事訴訟法198条証言拒絶の理由の疎明証言拒絶の理由は疎明しなければならない。
民事訴訟法199条証言拒絶についての裁判当否は受訴裁判所が審尋して決定で裁判し(1項),これに対し即時抗告できる(2項)。
民事訴訟法200条証言拒絶に対する制裁拒絶を理由がないとする裁判の確定後,正当な理由なく拒むと制裁(192条・193条の準用)。
民事訴訟法201条宣誓証人は原則必要的宣誓(1項)。16歳未満等は不宣誓(2項)。証言拒絶権者は不宣誓可(3項)。近親者の著しい利害関係は宣誓拒絶可(4項)。拒絶手続は198条・199条等を準用(5項)。
民事訴訟法202条尋問の順序申出当事者,相手方,裁判長の順で尋問する。
民事訴訟法207条当事者本人の尋問当事者本人を尋問でき,その当事者に宣誓をさせることができる(1項後段,裁量的)。
民事訴訟法209条虚偽の陳述に対する過料宣誓した当事者が虚偽の陳述をすると10万円以下の過料(1項)。即時抗告可(2項)。係属中の自認で取消し可(3項)。
民事訴訟法210条証人尋問の規定の準用当事者本人の尋問に,尋問の順序等の証人尋問の規定を準用する。
民事訴訟規則112条宣誓証人の宣誓の方式(尋問前・起立・宣誓書の署名押印と朗読・法定の記載事項・偽証の罰の告知)。
民事訴訟規則113条尋問の順序主尋問・反対尋問・再主尋問の順序による。
民事訴訟規則127条証人尋問の規定の準用当事者本人の尋問に証人尋問の規定を準用(勾引等を除く。宣誓の112条・順序の113条は準用)。
刑法169条偽証法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をすると3月以上10年以下の拘禁刑。
刑法170条自白による刑の減免裁判確定・懲戒処分前の自白で刑の減軽・免除がある。

第6 関連記事

第7 出典

本記事で根拠として用いた法令は,いずれも次のとおりです。