自動車運送事業者に法令違反が認められた場合、違反内容に応じて文書警告、自動車の使用停止、事業停止又は許可取消し等の対象となる。処分の重さは、個々の違反の処分日車数だけでなく、営業所・事業者の累積違反点数や、重大事故、悪質性、再違反等によって変わる。本記事では、監査から行政処分までの基本構造を整理する。
第1 監査と行政処分の全体像
国土交通省及び地方運輸局は、事業者への監査等によって法令遵守状況を確認する。監査の端緒には、重大事故、公安委員会等からの通知、利用者等からの情報、過去の処分歴その他の事情がある。
監査で違反事実が認定されると、所定の処分基準に従って処分案が検討される。違反内容や処分の程度によっては、聴聞又は弁明の機会が設けられる。監査当日の受け答えだけでなく、平時から作成・保存している記録の内容が重要となる。
第2 監査で確認される資料
確認対象は業態と監査理由によって異なるが、一般には次のような帳票・記録が問題となる。
- 運転者台帳、選任届、資格者証及び講習関係書類
- 点呼記録、アルコール検知器の使用記録及び乗務記録
- 運行指示書、運行記録計の記録及び事故記録
- 健康診断、適性診断、指導監督及び教育の記録
- 労働時間、拘束時間、休息期間及び休日労働に関する資料
- 車両台帳、日常点検及び定期点検整備の記録
- 運送約款、運賃・料金、契約書及び請求関係資料
形式上書類があるだけでは足りず、他の記録との日時・車両・運転者の整合性、訂正方法、保存期間及び実際の運用が確認される。
第3 処分日車数と違反点数
自動車の使用停止処分は、「何台の車両を何日間使用できないか」を示す処分日車数で表される。例えば、1台を10日間停止する場合も、2台を5日間停止する場合も、合計は10日車である。
国土交通省の処分基準では、原則として処分日車数10日車ごとに違反点数1点へ換算し、一定期間累積する。貨物自動車運送事業の現行基準では、違反点数は原則として3年間累積される。違反点数は会社全体と営業所の双方の処分判断に関係するため、一つの営業所の違反として閉じない場合がある。
日車数の算定には、初違反か再違反か、違反の件数・期間、事故との関係、命令違反、虚偽報告等が影響する。したがって、違反条項だけを見て最終的な停止日数を断定することはできない。
第4 自動車の使用停止、事業停止及び許可取消し
行政上の対応は、概ね次の段階に分かれる。
- 文書警告:違反の程度等に応じ、是正を求める行政指導である。
- 自動車の使用停止:指定された事業用自動車を所定期間使用できなくする処分である。
- 事業停止:営業所における運送事業そのものを所定期間停止する処分である。
- 許可取消し:事業許可を失わせる最も重い処分である。
貨物自動車運送事業の現行基準では、事業者の累積違反点数が51点以上80点以下となった場合などに事業停止、81点以上となった場合などに許可取消しの基準が置かれている。ただし、即時の事業停止・許可取消しが定められた悪質な違反や、事業規模、再違反、命令違反等による別の基準もあるため、点数だけで結論を出してはならない。
第5 業態別の処分基準
乗合バス、貸切バス、タクシー、トラック等では、根拠法令、監査項目及び行政処分基準が異なる。特に貸切バスは、重大事故を受けた制度改正を経て、安全管理に関する処分基準が強化されている。
具体的な処分見込みを検討するときは、国土交通省の総合ページだけでなく、違反時点と処分時点に対応する業態別の通達・処分基準及び地方運輸局の公示を確認する必要がある。
第6 行政処分情報の公表
国土交通省は、過去5年間の自動車運送事業者に対する行政処分等の情報を検索できるシステムを公開している。
事業者名、都道府県、処分年月日、業態等から検索でき、違反概要や処分内容の確認に利用できる。
都道府県の指定は営業所の所在地に基づき、掲載は原則として処分の翌月末を目処とするため、処分直後の情報が必ず表示されるわけではない。
検索結果に表示されないことは、過去に監査や指導がなかったことを当然に意味しない。公表対象、収録期間及び検索条件を確認して利用する必要がある。
近畿運輸局では、バス・タクシー・トラックの行政処分のページから、旅客・貨物の月別個表、貨物の事業停止・許可取消し等の一覧及び全国の行政処分情報へ進むことができる。
本局の公表ページと全国検索の双方で、業態、処分日、対象事業者・営業所及び違反概要を確認するのが有用である。
全国検索の収録期間と、地方運輸局の個々の公表資料の掲載期間を同一視してはならない。
例えば、近畿運輸局は、貸切バスの輸送の安全確保命令の公表について、処分日から5年経過後に削除すると明示している。
これは同ページにあるすべての処分資料の掲載期間を一律に5年とする説明ではない。
兵庫県の自動車運送事業について監査の担当を確認する場合は、神戸運輸監理部「組織・業務のご案内」の兵庫陸運部・監査部門を参照できる。
電話番号は078-453-1105であり、自動車関係の窓口は魚崎庁舎に置かれている。
監査通知や資料提出依頼が届いている場合は、まずその書面の担当、対象営業所、対象期間、求められた資料及び期限を確認し、照会・提出の履歴を残すのが適切である。
行政処分情報を調べる際は、前記の国土交通省の検索システムで兵庫県、事業者名、業態及び処分年月日を組み合わせて対象を絞る。
神戸運輸監理部は海事関係の業務も扱うため、同部の発表というだけで、船舶・旅客船等の処分を自動車運送事業の処分基準へ当てはめてはならない。
監査通知に記載された根拠と第5の業態別基準を照合し、公表された処分の概要と、自社の具体的な違反事実を分けて確認する必要がある。
第7 監査対応の実務
監査対応では、対象期間、対象営業所、求められた資料及び提出期限を最初に整理する。原本を保全し、提出した写しと提出経過を残した上で、事実関係と法的評価を分けて説明する。
違反が疑われる場合には、原因、影響範囲、是正済みの事項、未了の是正措置及び再発防止策を時系列で整理する。記録を後から整えるための不適切な追記や、相互に矛盾する説明は、違反そのものとは別の問題を生じさせるため避けるべきである。
1 運輸局の担当部門と連絡事項
近畿運輸局の組織と主な業務では、運送事業の許認可を扱う自動車交通部と、バス・タクシー・トラック事業者の監査・指導を扱う自動車監査指導部が区別されている。
監査通知や資料提出の求めを受けた場合は、その書面に記載された担当者・担当部門を確認し、車両の登録窓口への問い合わせと混同しないことが大切である。
連絡前には、①事業者名・業態・対象営業所、②通知を受けた日と指定された期限、③求められた資料と対象期間、④提出済み資料・追加提出が必要な資料を整理する。
担当者への確認事項と回答、資料を提出した日時及び提出方法を記録し、提出した資料の控えを保存しておくとよい。
これらは対応の準備事項であり、監査担当が求める個別の資料を置き換えるものではない。
2 指摘事項と是正措置を分けて記録する
監査で問題となった事実、事業者の認識、既に実施した是正、継続して実施する再発防止策を分けて整理する。
改善報告等の提出を求められた場合は、提出先・期限・様式を担当部門に確認し、相談の電話をしただけで正式な報告が済んだと考えないようにする必要がある。
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