第1 この記事の対象と結論
平成18年司法試験の論文式試験・公法系科目第1問(憲法)は,製造たばこの包装容器に警告文の表示を義務付ける仮想の法律(警告表示法)によって損害を受けたたばこ会社T社について,損害を回復するための二つの訴えを挙げさせ,原告側と国側の憲法上の主張と解答者自身の見解を問う問題である。
出題の趣旨によれば,本問の核心的な問題は,他者の意見を記載することを強制されること(消極的表現の自由)と,その強制が自社の経費負担の下で義務付けられること(憲法29条3項の損失補償における特別の犠牲の可能性)に関わる憲法上の問題である。
この記事は,法務省の出題の趣旨と,考査委員が採点後の所見を述べた公法系科目のヒアリングの概要を基に23の評価項目を設け,そのうち5項目を重み5とした。
評価項目と重みは本記事独自の整理であり,法務省の採点基準や配点を示すものではない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 平成18年新司法試験論文式試験・公法系科目第1問(憲法) |
| 問題文 | 論文式試験問題集[公法系科目](2~8頁の第1問・資料1~4) |
| 試験日・答案の基準 | 平成18年5月20日(公法系科目の論文式試験)。警告表示法は問題文の資料1に掲げられた仮想の法律である。 |
| 出題の趣旨 | 平成18年新司法試験論文式試験問題出題趣旨(1~2頁の公法系科目〔第1問〕) |
| 採点実感 | 新司法試験考査委員(公法系科目)に対するヒアリングの概要(1~2頁,4頁及び6~7頁の憲法の部分) |
| 評価項目 | 23項目。重み5は5項目,重みの合計は86。 |
| 主な裁判例 | 河川附近地制限令事件(最高裁昭和43年11月27日大法廷判決) |
| 答案の分量 | 4882字(答案部分の見出しを含み,空白及び改行を除く。) |
| 資料確認日 | 令和8年11月7日 |
本稿の答案は,主要二面への特別警告と成分の表示は合憲としつつ,両側面に同じ一般警告を各50%で重ねて表示させる限度と,施行前に適法に包装した自社在庫に猶予なく新たな表示を求める限度を違憲と評価する。
国家賠償請求については,違憲の判断を前提としても,当時の事情に照らして職務上の義務違反と過失が当然に認められるとはいえないとし,旧在庫への即時適用を合憲とする場合には損失補償の要否を論じる。
重み5の5項目は,憲法29条3項に基づく損失補償請求(番号2),消極的表現の自由の制約(番号3),業者の包装と経費を公的な警告に用いることの「公共のために用ひる」への該当性(番号9),特別の犠牲の有無(番号11),設問3の自説の論証(番号19)である。
第3に事実関係と設問の要求,第4に評価項目と重み,第5に答案と解説,第7に出典を置く。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
評価項目は,出題の趣旨と採点実感の指摘を,答案の記載から判定できる単位に言い換えた本記事独自の基準である。
表の番号は記事全体で通している。
出題の趣旨欄・採点実感欄は,法務省が公表したPDFの頁と,関連する記載の要旨である。
平成18年の論文式試験については,法務省の論文式試験結果の公表ページに出題の趣旨が掲載されているが,採点実感等に関する意見は掲載されていない。
公法系科目の考査委員が採点後に述べた所見は,司法試験委員会第29回会議(平成18年9月20日)の議事要旨とともに「新司法試験考査委員(公法系科目)に対するヒアリングの概要」として公表されているので,採点実感欄はその憲法の部分の頁と要旨を示す。
このヒアリングには,憲法担当の考査委員の個人的な印象と,他の憲法の考査委員の意見の紹介とが含まれる。
一方の資料に対応する記載がない場合は「記載なし」,一般的な指摘や関連する記述から導く場合は「間接」と表示する。
「〔注意〕」は誤りを避けるための項目を,「〔条件〕」は特定の構成を採る場合に限り適用する項目を示し,その構成を採らない答案に重ねて求めるものではない。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | その設問の判断を大きく分ける核心 |
| 4 | 結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ |
| 3 | 通常押さえる法的処理・事情の評価 |
| 2 | 論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意 |
| 1 | 補充的な引用・記述範囲の確認 |
重みとその合計は本記事独自の整理であり,法務省の配点,採点基準又は得点の目安を示すものではない。
条件付きの項目も重みの分布と合計に含める。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
問題文によれば,2003年11月のたばこ事業法施行規則の改正により,従前より具体的な内容の注意表示文を,たばこ製品の容器包装の主要な面の面積の30%以上の大きさで記載することが義務付けられていた。
その後の実態調査では,喫煙と肺がんの関係を認識していた回答者は84.5%であったが,心臓病との関係は40.5%,脳卒中との関係は35.1%にとどまり,たばこに依存性があることを知っていた人は51.8%であった。
こうした経緯と調査結果を踏まえて,製造たばこの警告表示に関する法律(警告表示法)が制定されたという想定である。
警告表示法は,製造たばこの最小容器包装の側面の相対する両面に一般警告文を,最大面積の面とこれに相対する面に異なる2種の特別警告文を,いずれも太い黒枠を含めて表示面の50%の面積で表示させ,相対する両面の上部にタール量・ニコチン量を表示面の15%の面積で表示させる(資料1の4条~6条)。
特別警告文は,「喫煙者は,早死にする。」,「喫煙は,非常に依存性が高い。吸い始めてはいけない。」など5種の中から選ぶ。
警告表示法は公布の日から施行され,施行前に製造されたたばこ製品に関する経過措置は設けられていない。
施行後1年間で国内のたばこ製品の販売量は直近3年間の平均に比べて約30%減少し,その主たる原因は新たな警告文にあることが明らかになっている。
T社は,アメリカ系のたばこ会社の日本法人で,たばこ事業法による登録を受けてたばこの輸入・販売をする特定販売業者である。
T社は,経過措置がなかったため,包装済みの自社在庫だけでなく,卸売業者・小売業者の営業所,店舗及び自動販売機内に残っていた在庫も回収して包装を作り変えなければならず,億単位の損害を被ったとし,施行後に売上げが35%減少したと述べている(資料3)。
T社は,警告表示法1条の立法目的には異論がないが,規制手段に憲法上の問題があり,自社の見解と異なる警告文の掲載を義務付けられることは耐えられないとしている。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | T社の訴訟代理人 | 損害を回復するための二つの訴えを挙げる。法律関係の確認訴訟は解答として不十分である(出題の趣旨)。 | 訴えを挙げ,警告表示法に対する憲法上の主張を述べる。 |
| 2 | 国側の代理人 | 設問1の主張に対応して請求の棄却を求める。 | 憲法に基づく国側の主張を述べる。 |
| 3 | 解答者自身 | 異なる考え方を批判しつつ論じる。設問1・2と異なる「第3の道」もあり得る(出題の趣旨)。 | 憲法上の争点についての自己の結論と論拠を示す。 |
第4 評価項目と重み
1 設問1の訴えとT社の主張
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 国に対する国家賠償請求訴訟を挙げ,警告表示法の違憲性を金銭請求の前提として主張する。 | 4 | 1頁。損害を回復する訴えとしての国家賠償請求 | 6頁。依頼者の希望に応じた訴訟を問う設問はかなりの人が書けていた |
| 2 | 国に対して憲法29条3項による損失補償を求め,補償規定がない場合の直接請求を論じる。 | 5 | 1頁。損失補償請求と直接請求の可否・補償の要否 | 間接(6頁。訴訟の選択に関する所見) |
| 3 | 自社包装に国が決めた他者の意見を掲載させられる強制を,憲法21条1項の消極的表現の自由の問題として説明する。 | 5 | 1頁。核心的な問題,「強制されない自由」 | 1頁・4頁・6頁。強制からの自由の問題であることを捉え,その内容を説明した答案が少ない |
| 4 | 警告文の発信者名が表示されないため,消費者がT社の見解と受け取る可能性を具体的に指摘する。 | 4 | 1頁。「発信者」名の不表示と特定販売業者の意見と思われる可能性 | 記載なし |
| 5 | 警告の面積・配置により自社の包装デザインや商品情報に使用できる空間が縮小することを別に評価する。 | 3 | 1頁。自己のスペースの包装デザイン等を自分で決められない点 | 記載なし |
| 6 | 表示が販売条件となる法的制約と,消費者の反応による販売への影響を踏まえ,営業の自由の制約を論じる。 | 4 | 1頁。販売活動の実質的な制約と販売へのマイナスの影響 | 6~7頁。営業の自由の問題とする答案にパターン的答案が目立った |
| 7 | 警告表示義務自体が包装・商品の財産的利用に及ぼす負担を,財産権の制約として検討する。 | 4 | 1頁。財産権の制約の観点 | 記載なし |
| 8 | 公布即日施行と経過措置の不存在により旧包装在庫に生じた負担を,新たに包装する製品の負担と分けて評価する。 | 4 | 1頁。経過措置の定めがない点 | 記載なし |
| 9 | 業者が自社の包装と費用を公的な警告の伝達に使うこと自体が,公共のために財産を用いることに当たるかを論じる。 | 5 | 1~2頁。他者の経費で警告表示をさせることと「公共のために用ひる」 | 記載なし |
| 10 | 経過措置の欠如で流通在庫の回収・包装変更を余儀なくされたとのT社の主張を,公共のための利用と損失との関係で評価する。 | 4 | 1~2頁。経過措置がないことによる流通在庫の回収 | 記載なし |
| 11 | 負担の集中と強度を検討し,危険な製品の販売に通常伴う受忍限度を超える特別の犠牲かを論じる。 | 5 | 1頁。核心的な問題,特別の犠牲の可能性と補償の要否 | 記載なし |
| 12 | T社が立法目的を争っていないことを踏まえ,目的と手段の関連性及び具体的手段の相当性を争う。 | 4 | 1頁。規制目的の正当性は原告も争っていないこと | 6~7頁。目的の問題性は問わないとしているのに消極目的・積極目的二分論で書く傾向 |
2 設問2の国の反論
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 13 | 健康への危害を警告することが国の任務に属するという観点から,警告の公益上の根拠を示す。 | 3 | 2頁。国側の主張① | 記載なし |
| 14 | 購入・使用時に健康危険を明確に認識させるため包装上の警告を用いる必要性を,資料の数値や旧表示の限界と結び付ける。 | 4 | 2頁。国側の主張② | 7頁。手段の合憲性に関係する資料が十分に活かされていない |
| 15 | 警告は医学的な危険の情報提供を目的とし,表示をした商品の販売や喫煙それ自体を禁止する仕組みとは異なると説明する。 | 3 | 2頁。国側の主張③ | 記載なし |
| 16 | 広告禁止や税率引上げなどの別手段と比較し,警告表示がどの利益への制約を抑えながら目的を達成するかを説明する。 | 3 | 2頁。国側の主張④ | 間接(7頁。たばこの値段を上げる方が有効な手段であるとの主張の例) |
| 17 | T社が主張した権利と制約に対応し,事実を挙げて国側から反論する。 | 4 | 2頁。対抗的関係にある主張の対応と事例に依拠した主張 | 4頁・6頁。複眼的な立場からの当てはめ,三つの立場から論じる多面的思考 |
| 18 | 〔条件〕国家賠償法固有の要件を争う構成を採る場合に,規制の憲法適合性と立法についての職務上の違法・過失を分ける。 | 2 | 2頁。国家賠償法の下で請求を退けるための主張 | 記載なし |
3 設問3と事実・審査方法
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 19 | 当事者双方の主張を比較し,異なる考え方への批判を通じて,自説の筋の通った結論とその理由を述べる。 | 5 | 2頁。多面的・複眼的な検討による一つの筋の通った帰結,「第3の道」 | 1~2頁・7頁。問題を自ら発見して考えること,特定の答えを想定していないこと |
| 20 | 配付資料から問題に関係する事実を取り出し,手段の合理性や必要性のどの部分を支えるかを示す。 | 4 | 1頁。当該事案に関する事実や立法事実のとらえ方 | 4頁・7頁。事実の分析・抽出の不足,手段の検討での資料の活用不足 |
| 21 | 〔注意〕営業の自由について,積極目的・消極目的の分類だけから審査基準を選ばない。 | 3 | 間接(1頁。目的と手段の関連性・手段の相当性が主たる争点) | 6~7頁。単純に消極目的・積極目的二分論で書く傾向 |
| 22 | 〔条件〕値上げ等を自説で代替手段として採る場合に,消費行動と情報提供への効果及び負担の違いを示す。 | 2 | 間接(2頁。「第3の道」) | 7頁。値上げの方が有効な手段であるとの主張を期待していた |
4 訴えの選択の注意
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 23 | 〔注意〕法律関係の確認訴訟を,既に生じた損害を回復する二つの訴えの一つに数えない。 | 2 | 1頁。法律関係の確認訴訟は解答として不十分 | 記載なし |
5 重みの分布
23項目の内訳は,重み5が5項目,重み4が10項目,重み3が5項目,重み2が3項目,重み1が0項目であり,重みの合計は86点である。
表の区分ごとには,設問1の訴えとT社の主張が12項目・51点,設問2の国の反論が6項目・19点,設問3と事実・審査方法が4項目・14点,訴えの選択の注意が1項目・2点である。
問題文の配点は第1問全体で100点であり,設問ごとの配点は示されていない。
重み5の5項目は,次のとおりである。
①番号2は,規制が適法であっても損失の填補を求め得る,国家賠償請求とは別の経路である。
②番号3は,出題の趣旨が核心的な問題とする消極的表現の自由の制約であり,採点実感も,警告表示を義務付けることがどういう意味で消極的表現の自由の問題になるのかを説明しないまま次の段階に進む答案が多かったとしている(4頁)。
③番号9は,業者の包装と経費を公的な警告に用いることが「公共のために用ひる」に当たるかという,表示義務と損失補償を結ぶ論証である。
④番号11は,その負担が補償を要する特別の犠牲に当たるかを分ける基準であり,出題の趣旨が核心的な問題として挙げている。
⑤番号19は,双方の主張を踏まえ,自ら理由を示して一つの筋の通った結論を導くという設問3の直接の要求である。
主要な理由付けと当てはめは重み4に,包装のスペース(番号5),国側の主張のうち国の任務・医学的情報・他の手段との比較(番号13・15・16)及び目的二分論の注意(番号21)は重み3に整理した。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
答案は,平成18年5月20日の試験当時を基準とし,問題文の製造たばこの警告表示に関する法律を「警告表示法」又は「本法」と略す。
警告表示法は問題文の資料1に掲げられた仮想の法律であり,健康に関する数値は問題文と資料の値を用いる。
判例は試験日までのものを用い,判例と本問の比較や違憲と判断する範囲は本答案の見解である。
2 答案
第1 設問1
1 提起する訴え
T社は,国に対し,第一に国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求訴訟を提起する。
警告表示法の制定により,憲法上保障されたT社の自由及び財産を違法に侵害し,再包装費用及び逸失利益等を生じさせたと主張する。
警告表示法の違憲性は,この具体的な賠償請求の前提として争う。
立法内容が違憲であるというだけで足りず,国会議員がT社に対して負う職務上の法的義務に違反したこと,故意又は過失及び損害との相当因果関係を主張立証する。
第二に,規制が適法であっても,憲法29条3項に基づき,特別の犠牲について損失補償請求訴訟を提起する。
最大判昭和43年11月27日は,補償規定を欠く財産権規制について,現実の損失を具体的に主張立証し,同項に基づき別途補償を請求する余地を認めた。
本件でも同項を直接の根拠とし,以下の表示費用や旧在庫の回収・再包装費用を請求する。
両請求で同じ損失の二重回復は求めない。
2 警告文の強制と表現の自由
T社は米国系企業の日本法人である。
権利の性質上可能な限り,法人の表現の自由,営業の自由及び財産権も保障される。
包装の図柄や商品説明は,利潤を目的とするものであっても,消費者に情報を伝え,選択を可能にする表現であり,憲法21条1項の保障を受ける。
表現の自由は何を誰の見解として伝えるかを自ら選ぶ自由でもある。
したがって,同項は,他者が選んだ見解を自己の媒体を使って伝えるよう強制されない自由も保障する。
警告表示法3条1項,4条及び5条は,T社の意に反する内容の掲載を販売条件とする。
包装の両側面に一般警告,相対する主要二面に特別警告を各面50%の黒枠付きで表示し,特別警告は異なる2種を選び,年間でおおむね均等になるよう変更する。
6条の成分表示も別に課される。
したがって,自社の表示に使える面が大きく減る上,本法は発信者が国であることの表示を求めていないから,消費者は商品を販売するT社が自ら警告内容を表明したと受け取り得る。
とりわけ,特別警告には,危険が高まるという知見を一律に結果が生じるかのように伝えかねない文言と,吸い始めるなという行動勧奨が含まれる。
成分量の客観的表示とは制約の性格が違う。
健康保護の重要性と本法の立法目的はT社も争わない。
しかし,内容を指定した表現強制が正当化されるには,その目的に照らし十分な根拠があり,表現への負担が必要な限度にとどまることが求められる。
心臓病等への認識の低さは危険情報の追加を根拠付けても,全面的な訴求の強化を直ちには根拠付けない。
危険の程度を正確に述べ,国が求める表示であると明記し,主要面での視認性を維持しつつ側面の重複や面積を減らす方法がある。
条約は主たる表示面の50%以上を望ましいとする一方,最低限度は30%であり,側面への同一文の反復や本法の断定的文言を求めてはいない。
3 営業の自由及び財産権
表示を欠けばT社は販売できず,違反品の流通も制限される。
一定の場合には回収・廃棄や営業停止を命じ得る。
表示して販売を続けても,包装の訴求力低下や警告文の効果により,T社の申告では売上げが35%減り,事業存続にも影響する。
これは22条1項の営業の自由の実質的制約である。
健康危険防止のためとはいえ,従前より具体的な警告を掲げていた段階から強い文言と四面の大幅な占有へ進むには,より緩やかな手段で目的を十分達成できない理由が要る。
国内販売量の減少は警告が行動を変えることを示すが,四面すべてが不可欠であったことまでは示さない。
特に公布日施行で経過措置がなく,T社は従前の規制に適合する大量の在庫につき,直ちに再包装等の費用を負担した。
平時の表示義務も,所有する包装の使用を制限し,販売可能な状態を作る費用を生じさせる。
加えて,すでに形成された財産の利用を突然制約する負担は,今後の生産に伴う通常の負担と分けて検討すべきである。
期限を区切った猶予又は簡易な追貼りで危険の告知を継続しながら損害を抑えられたのであり,少なくとも旧在庫に対する即時適用は22条1項及び29条1,2項に反する。
4 損失補償
仮に規制が適法でも,公衆への警告という国の施策を実現するため,業者の包装を伝達の媒体として確保し,その費用も業者に負担させている。
財産の所有権が国に移らなくても,実質的に財産を公共のために用いる場合に当たる。
また,即時施行によって流通在庫まで回収・包装変更を余儀なくされたとするT社にとって,この費用は,単なる将来の販売機会の減少と異なる。
社会全体が利益を受ける施策に通常の受忍限度を超える負担をさせる限度で,29条3項による正当な補償が必要である。
第2 設問2
1 表現の自由について
健康に対する危険を警告することは,生命・健康の保護を担う国の任務に属する。
警告は法律が統一的に指定し,包装上は黒枠で商品名等と区別されるため,事業者自身の見解と理解される程度は小さい。
医学上の危険を伝える制度であり,喫煙自体は禁止せず,禁煙への賛同の表示も求めない。
21条の制約があるとしても,取引時の商品情報に関する限定的な義務であって,政治的・思想的な表現に介入する場合と同じ基準にはよらない。
残る包装面や他の媒体で自社の見解を述べることもできる。
資料4では,喫煙と肺がん死亡との関連に加え,心筋梗塞,脳卒中,胎児及び受動喫煙者への危険,依存性,若年での開始による危険の増大が示される。
多因子であることは,喫煙が原因の一つであることを否定しない。
従来の制度があっても,心臓病及び脳卒中との関係を認識する者は半数に満たず,依存性の認識も約半数にとどまった。
商品の購入・使用時に広く届く包装に平易な警告を載せ,向きにかかわらず目立たせ,文言を交替させることには合理性がある。
一般広報だけでは同じ時点に確実に届きにくい。
条約の定めも,大きく読みやすい警告の合理性を補強する。
広告禁止は自社の表現機会そのものを奪い,増税は価格面で購入を抑えるが,包装上の表示は購入時に危険を伝えながら取引や選択を残す。
特に知識の不足に対しては,これらの手段よりも目的に直接適合する。
2 営業・財産の制約と請求
本法は,参入を制限せず,表示を施せば販売できる。
健康被害の重大性と,多数の者に危険が及ぶことを考慮すれば,販売方法を定める立法判断には相応の裁量がある。
売上減は,危険情報を受けた消費者の選択の結果でもあり,営業停止と同視できない。
従前から表示規制があり,強化の方向も知られ得た。
猶予期間を設ければ旧包装品が引き続き流通し,購入者への周知に空白が生ずる。
ラベルの貼付も法が認めている。
包装は引き続き業者が販売に使用し,危険を生む商品について取引に必要な情報を付ける。
国が無関係な商品の包装を公共広報に供用する場合と異なり,危険をもたらす事業者一般に付随費用を負担させる社会的制約であり,通常の警告表示費用は特別の犠牲ではない。
旧在庫の負担も,健康情報を速やかに統一する必要性と,追貼りで費用を抑え得ることに照らし,補償を要しない。
また,3条4項のうち表示を欠く製品に関する部分は,同条1項に違反して販売された製品が対象である。
施行前に適法に販売された流通在庫まで,直ちに法がT社に回収を命じたとはいえない。
実際の命令も示されていない。
任意の回収費と法の相当因果関係,減収と利益の減少,他の需要変動要因は個別に立証を要する。
仮に一部が違憲でも,以上の公益上の根拠や条約の存在からすれば,立法時にT社に対する職務上の義務への違反が明白であったとはいえず,国家賠償請求は棄却すべきである。
損失補償請求も,特別の犠牲が認められず,棄却すべきである。
第3 設問3
1 警告表示の合憲性
私は,21条1項を中心に審査する。
勧奨を含む表示の強制は,内心の告白の有無に尽きず,他者の見解を伝える者にさせられる問題である。
商業的表現だから21条上問題にならないとの見方には賛成できない。
包装はT社が買い手に情報を伝える媒体であり,残余の面があることは制約の存在を否定しない。
内容を国が決めるため,単に包装の体裁を規格化する場合より慎重に,情報の正確さ,発信主体の認識,表示の到達と負担の均衡を審査する。
疾病・死亡及び第三者被害の低減等は重要である。
調査で残った知識の偏り,依存性による選択の困難,若年での開始の危険に照らし,危険を明瞭に伝え,異なる警告を交替させることは目的に結び付く。
早死に等の文言は単独で読むと一律の結果を印象付けるものの,包装上の一般的な健康警告としては危険性の指摘と理解でき,資料4との実質的な対応もある。
主要面の両側を大きく用いるのは,手に取る際の表裏の違いにかかわらず注意を喚起するためである。
国の名義を付す方が誤認を減らし,内容の到達も妨げにくい。
黒枠だけでは発信者が誰かまでは分からないが,強制の程度は,商品の危険と直結した定型表示であること,T社の賛同の表示までは求めないことも踏まえて判断する。
主要面の警告は,発信者名の欠如を考慮しても,必要な情報を購入の際に届ける利益が優越する。
従前の30%表示に戻すことや国の広報だけでは同程度の到達は期待し難い。
もっとも,主要二面にそれぞれ50%の特別警告を出した上で,残る両側面にも同じ一般警告を各50%重ねることは,別に検討すべきである。
向きによる見落としは警告面を増やす理由となるが,一側面だけの警告又は側面のより小さな警告では足りないことを示す具体的な理由は乏しい。
主要二面の警告に加え側面の視認性を高めるとしても,同じ一般警告を大きく反復する増分に対し,包装を使うT社の負担が大きい。
国内販売量の減少は制度全体についての指標であり,四面すべてを同じ比率で用いる効果を識別できない。
そこで4条2,3項の組合せが側面の双方に一律50%を強いる限度は,21条1項に違反すると考える。
主要面の特別警告及び成分の客観的表示はその限度と区別でき,制度全体を違憲とすべきではない。
2 営業の自由・財産権及び救済
22条については,取引の態様の規制であることから,許可制と同じ必要性の証明を常に求めない。
健康に直接関係する商品の危険情報を消費者へ届ける必要と,法令に従えば販売を継続できることを考えると,今後包装する製品への表示条件は,前記表現上の限界を除き,営業の規制として合理的である。
売上げ減少の大きさだけで,従前どおりの需要や利益が22条又は29条によって保障されることにはならない。
これに対し,施行前に適法に包装した自社在庫については,用意の時間を全く与えないことで,既存資産の利用に急激な追加費用を生じさせる。
旧表示が既に危険情報を提供し,ラベル方式も使えるのであるから,合理的な短期間に限り旧品を区別して移行させても制度目的が失われるとは考えにくい。
したがって,旧在庫に猶予を設けず直ちに同じ基準を課す限度は,既存の財産利用と公益との均衡を欠き,29条2項の限界を超える。
施行前の販売が適法だった下流在庫まで法が一律に回収させたとは評価できず,その費用は必要性と発生原因を別途検討すべきである。
以上の違憲判断を前提としても,警告の効果や緊急性に関する当時の事情に照らして,T社に対する職務上の義務違反及び過失まで当然に成立するわけではなく,国賠請求が成立するとまではいえない。
適法な規制についても,業者の包装が公共目的の警告に使われている。
しかし,商品固有の危険を表示する平時の費用は取引に付随し,表示後も商品を販売できるから,通常受忍すべき範囲にある。
仮に旧在庫への即時適用も合憲とするなら,販売時に適法な包装をし,回避可能性の乏しい費用を急激に負担した点は別である。
その費用が公共のための特別の犠牲となったときは,現実に必要であった追加費用の補償を認める。
流通分の回収費は,義務の発生又は取引上の合理的な必要性と支出の立証がある範囲に限る。
一般的な減収はこの補償に含めない。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案の第1の1は二つの請求とそれぞれの根拠を,第1の2~4は表示の強制,営業・財産への負担及び損失補償を順に論じる。
第2は国側から表示方法と負担の双方に応答し,第3は両側面の一般警告と旧在庫を分けて判断する。
次の表のほか,第1の2が番号5に,第2の1が番号13・15・16に,第1の1が番号23に対応し,第3の2は目的二分論によらずに規制の態様と商品の危険から営業の規制を審査している(番号21)。
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 1 | 4 | 国に対する国家賠償請求訴訟を挙げ,警告表示法の違憲性を金銭請求の前提として主張する。 | 第1の1 |
| 2 | 5 | 国に対して憲法29条3項による損失補償を求め,補償規定がない場合の直接請求を論じる。 | 第1の1・4 |
| 3 | 5 | 自社包装に国が決めた他者の意見を掲載させられる強制を,憲法21条1項の消極的表現の自由の問題として説明する。 | 第1の2・第3の1 |
| 4 | 4 | 警告文の発信者名が表示されないため,消費者がT社の見解と受け取る可能性を具体的に指摘する。 | 第1の2・第3の1 |
| 6 | 4 | 表示が販売条件となる法的制約と,消費者の反応による販売への影響を踏まえ,営業の自由の制約を論じる。 | 第1の3・第2の2 |
| 7 | 4 | 警告表示義務自体が包装・商品の財産的利用に及ぼす負担を,財産権の制約として検討する。 | 第1の3・第3の2 |
| 8 | 4 | 公布即日施行と経過措置の不存在により旧包装在庫に生じた負担を,新たに包装する製品の負担と分けて評価する。 | 第1の3・第3の2 |
| 9 | 5 | 業者が自社の包装と費用を公的な警告の伝達に使うこと自体が,公共のために財産を用いることに当たるかを論じる。 | 第1の4・第2の2・第3の2 |
| 10 | 4 | 経過措置の欠如で流通在庫の回収・包装変更を余儀なくされたとのT社の主張を,公共のための利用と損失との関係で評価する。 | 第1の4・第2の2・第3の2 |
| 11 | 5 | 負担の集中と強度を検討し,危険な製品の販売に通常伴う受忍限度を超える特別の犠牲かを論じる。 | 第1の4・第2の2・第3の2 |
| 12 | 4 | T社が立法目的を争っていないことを踏まえ,目的と手段の関連性及び具体的手段の相当性を争う。 | 第1の2・第3の1 |
| 14 | 4 | 購入・使用時に健康危険を明確に認識させるため包装上の警告を用いる必要性を,資料の数値や旧表示の限界と結び付ける。 | 第2の1・第3の1 |
| 17 | 4 | T社が主張した権利と制約に対応し,事実を挙げて国側から反論する。 | 第2全体 |
| 18 | 2 | 〔条件〕国家賠償法固有の要件を争う構成を採る場合に,規制の憲法適合性と立法についての職務上の違法・過失を分ける。 | 第2の2末尾・第3の2 |
| 19 | 5 | 当事者双方の主張を比較し,異なる考え方への批判を通じて,自説の筋の通った結論とその理由を述べる。 | 第3全体 |
| 20 | 4 | 配付資料から問題に関係する事実を取り出し,手段の合理性や必要性のどの部分を支えるかを示す。 | 第2の1・第3の1・2 |
| 22 | 2 | 〔条件〕値上げ等を自説で代替手段として採る場合に,消費行動と情報提供への効果及び負担の違いを示す。 | 自説では値上げ等を代替手段とする構成を採っていない(第2の1で国側の比較として増税に触れる。)。 |
(2) 設問1
出題の趣旨は,設問1では損害を回復するための訴えとして国家賠償法に基づく国家賠償請求と憲法29条3項に基づく損失補償請求とを挙げることになり,法律関係の確認訴訟は解答として不十分であるとしている(1頁)。
答案は,既に発生した損害について国への金銭請求を立て,法律の違憲性を国家賠償請求の前提問題として扱った(番号1・2・23)。
河川附近地制限令事件は,損失補償に関する規定がない場合でも,損失を具体的に主張立証して直接憲法29条3項を根拠に補償請求をする余地が全くないわけではないとしており,答案はこれを補償請求の入口に用い,補償の成否は警告表示に伴う負担を別に評価した。
出題の趣旨は,消極的表現の自由とは他者の意見を記載することを「強制されない自由」であり,警告文の「発信者」名が表示されず,記載内容が特定販売業者の意見であると思われる可能性があることから,その制約の是非が問題になるとしている(1頁)。
採点実感では,憲法担当の考査委員が,自分の意見でない他者の意見を自分のパッケージに記載することを義務付けられる問題性は強制からの自由をめぐる問題であるのに,受験生はこの基本的問題に気付かなかったと述べている(6頁)。
答案は,業者自身の見解と誤解される問題と,業者が使える包装面が減る問題を分けた(番号3~5)。
財産権では,通常の表示費用と,施行前の在庫に生じる回収・再包装費用を分けた(番号7~11)。
(3) 設問2
出題の趣旨は,国側の主張として,①健康の危害への警告は国家の任務に属すること,②警告表示は喫煙者に健康被害を明確に認識させるため必要不可欠な措置であること,③医学上の知識を伝えるもので喫煙自体を禁止するものではないこと,④広告の禁止や税率の引上げ等の他の措置に比べて警告表示義務はより緩やかな手段であることなどを想定し,国家賠償法の下で請求を退けるための主張も考えられるとしている(2頁)。
答案は,購入時の注意喚起と,広告禁止・増税による制約の違いを論じ,警告表示が知識の不足という問題にどう応えるかを示した(番号13~17)。
採点実感は,手段の合憲性を論じる際に関係する資料を出しておいたが十分に活かされていない印象があるとしており(7頁),答案は資料4の健康被害のデータと問題文の実態調査の数値を国側の主張に結び付けた(番号14・20)。
(4) 設問3
出題の趣旨は,設問3では判例に基づく結論を示すことではなく,多面的・複眼的な検討・考察の上で一つの筋の通った帰結を導くことが必要であり,設問1・2とは異なる「第3の道」もあり得るとしている(2頁)。
採点実感では,立法目的が複合的であることを依頼者も認め,目的の問題性は問わないとしているのに,営業の自由を単純に消極目的・積極目的二分論で論じる答案が目立ったとされている(6~7頁)。
答案は,主要二面への特別警告と両側面への一般警告を分け,後者の追加的な効果と包装への負担の釣合いを独自に評価した(番号19~21)。
どの面積・文言を合憲とみるかは,出題の趣旨が指定した結論ではなく,本答案の判断である。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
側面の表示に関する答案の結論は,与えられた資料からは四面それぞれの警告の効果を識別できないことを踏まえた評価であり,表示面の追加による効果を示す事実があれば,評価が変わり得る。
回収・再包装の全費用を法律が直接に生じさせたかは,施行前の販売状況や回収の必要性による。
価格を代替策とする自説(番号22)や,実際に発令されたとはされていない回収・営業停止命令の争いは,答案で独立の構成にしていない。
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②平成18年司法試験民事系科目第1問(商法)の模範解答と評価項目
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④平成18年司法試験刑事系科目第1問(刑法)の模範解答と評価項目
⑤平成18年司法試験刑事系科目第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目
⑥平成18年度旧司法試験論文式試験の模範答案
同年度の他の問題は,平成18年新司法試験試験問題で,出題の趣旨は,平成18年新司法試験論文式試験結果で確認できる。
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②平成20年司法試験公法系科目第1問(憲法)の模範解答と評価項目
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①司法試験の出題法令の基準日―平成18年以降の年度別六法リンク(AI作成)
第7 出典
1 公式資料
①法務省「論文式試験問題集[公法系科目]」(平成18年新司法試験)(2~8頁の第1問・資料1~4)
②法務省「平成18年新司法試験論文式試験問題出題趣旨」(1~2頁の公法系科目〔第1問〕)
③法務省「新司法試験考査委員(公法系科目)に対するヒアリングの概要」(1~2頁,4頁及び6~7頁の憲法の部分。司法試験委員会第29回会議(平成18年9月20日)の議事要旨とともに掲載)
④法務省「平成18年新司法試験実施予定表」(平成17年11月8日司法試験委員会決定の試験日程。論文式試験の公法系科目の実施日)
2 法令
①日本国憲法(e-Gov法令検索)(21条1項,22条1項及び29条)
②国家賠償法(e-Gov法令検索)(1条1項)
③製造たばこの警告表示に関する法律(警告表示法)は,問題文の資料1に掲げられた仮想の法律である。
3 裁判例
①最高裁昭和43年11月27日大法廷判決(昭和37年(あ)第2922号,刑集22巻12号1402頁,河川附近地制限令事件):財産上の犠牲が一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超え,特別の犠牲を課したものである場合には,損失補償に関する規定がなくても,直接憲法29条3項を根拠にして補償請求をする余地がないではないとした。
4 留意事項
出題の趣旨は1~2頁の公法系科目〔第1問〕の部分を,採点実感は考査委員に対するヒアリングの概要の1~2頁,4頁及び6~7頁の憲法の部分を,評価項目の根拠とした。
平成18年の論文式試験については,法務省の論文式試験結果の公表ページに採点実感等に関する意見が掲載されておらず,採点実感欄に示した答案の傾向は,司法試験委員会のヒアリングにおける考査委員の所感である。
警告表示法は仮想の法律であり,答案はこれと試験当時までの判例を前提にしている。
評価項目,重み,答案の結論及び出題の趣旨の具体化は本記事独自の分析であり,法務省が一つの結論を指定したものではない。