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令和7年度司法試験国際関係法(公法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した19項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は,令和7年司法試験の論文式試験のうち,選択科目の国際関係法(公法系)第1問を対象として,法務省が公表した「出題の趣旨」及び「採点実感」から答案の評価項目を抽出し,5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答を示すものである。

本問は,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)と市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)を素材として,条約への署名の意義,留保と解釈宣言の区別及び脱退規定のない条約からの脱退という,条約法の基本問題を問うものである。

公式資料から抽出できた評価項目は19項目であり,重み5(答案の骨格又は採点実感が評価の分かれ目とした事項)に当たるのは,署名国が条約法条約18条の義務を負うこと,大統領の通告がその義務を終了させる効果を持つこと,B国の声明を条約法条約2条1項(d)の留保の定義に照らして性質決定すること,19条(c)の趣旨及び目的との両立性が基準となること,C国の異議が両立しないとの主張に基づくこと,脱退は条約又は条約法条約の適用によってのみ行えること(42条2項)及び56条1項の二つの例外が基準となることの7項目である。

模範解答の結論は,設問1ではA国の通告が署名国としての義務を終了させるもの,設問2ではC国が声明を自由権規約の趣旨及び目的と両立しない留保と主張したもの,設問3ではD国の一方的な脱退は認められないというものである。

第5の模範解答は,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で,2,500字以下にまとめて示し,その後に出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説を付けている。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価項目は,本問の出題の趣旨(国際関係法(公法系)第1問の部分)又は採点実感(同科目の部分)の記述から抜き出したものに限り,一つの項目に一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形に言い換えた。

各項目には,出題の趣旨と採点実感のどこに根拠があるかを,PDFの頁と設問の別(採点実感の「3⑴」は「3 採点実感等」の「⑴ 第1問」を指す。)で示し,一方の資料に記載がない場合は「記載なし」と表示した。

公式資料の文章は,評価の強さを示す短い語句を除いて引用せず,根拠となる記述の趣旨を要約して示している。

採点実感が不十分とした答案(大統領の通告が18条にいう「条約の当事国とならない意図を明らかにする」ものであると述べるにとどまる答案)は,番号5の正しい書き方の裏返しであるため,独立の項目にせず番号5にまとめた。

これらの評価項目は,法務省の公式の採点基準や配点ではなく,公表された資料から本記事が独自に抽出したものである。

2 5段階の重み付けの基準

重みは,公式資料の書きぶりの強さから本記事が付けたものであり,法務省の配点ではない。

①重み5:採点実感が「評価に差がつく」「評価に差が付く」と明言した事項,又は答案の骨格そのもの
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も「確認する必要」「求められる」「優れた答案」等として取り上げた事項
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け
④重み2:一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項
⑤重み1:一方が控えめに触れるだけの事項

第3 本問の概要

本問では,A国が両規約に署名したものの,国内法の整備を行わず批准もしないまま,憲法上の条約締結権者である大統領が「もはや…当事国となる意図はない」と国際連合事務総長に通告した。

B国は,公務員に結社の自由や団結権を認めない国内法制度を有していることから,両規約の批准の際に,社会権規約8条2項を想起し,自由権規約22条2項の「軍隊及び警察の構成員」を「軍隊若しくは警察の構成員又は公務員」と解釈する旨の声明を付し,C国がこれに異議を申し立てた。

D国及びE国は自由権規約41条の宣言を行っており,E国がD国の義務不履行を人権委員会に通報したところ,D国の野党の党首が,宣言の撤回と自由権規約からの脱退を主張するようになった。

A国〜E国はいずれも条約法に関するウィーン条約(条約法条約)の当事国であり,B国〜E国は,自国について同条約が効力を生じた後に両規約を批准している。

設問は,A国の大統領の通告の国際法上の意義(設問1),C国の異議が基づく国際法上の主張(設問2)及びD国の自由権規約からの脱退の可否(設問3)を問うものであり,配点は第1問全体で50点である(設問ごとの配点は示されていない)。

第4 評価項目と重み

1 設問1(A国の署名と大統領の通告)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1両規約は批准を要し(社会権規約26条2項,自由権規約48条2項),批准していないA国について効力を生じていないことを,関連規定を示して確認する438頁〔第1問〕設問1の段落(両規約はA国について効力を生じていない)3⑴設問1(37頁。前提として確認する必要がある。社会権規約27条・自由権規約49条も参照)
2「合意は守られなければならない」の原則(条約法条約26条)から導入し,効力を有する条約だけが当事国を拘束することを示す238頁〔第1問〕設問1の段落冒頭記載なし
3効力を生じていないことは法的効果が皆無であることを意味せず,署名国は条約法条約18条により,当事国とならない意図を明らかにする時まで,条約の趣旨及び目的を失わせる行為を行わない義務を負うことを示す538頁〔第1問〕設問1の段落(署名していることから18条の義務がある)3⑴設問1(37頁。18条に言及した上で適切に当てはめたか否かで「評価に差がつく」)
4大統領の通告が,18条にいう「条約の当事国とならない意図を明らかにする」ものに当たると当てはめる438頁〔第1問〕設問1の段落末尾3⑴設問1(37頁。当てはめの内容として取り上げる)
5通告が,18条の義務を終了させる効果を持つことを指摘する(意図を明らかにするものと述べるにとどめない)538頁〔第1問〕設問1の段落末尾(義務を終了させることを目的としたもの)3⑴設問1(37〜38頁。述べるにとどまる答案は「十分ではない」,効果を指摘した答案が「優れた答案」)

2 設問2(B国の声明とC国の異議)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
6批准の際の声明には留保と区別される解釈宣言があり,解釈宣言は条約法条約に規定がないことを前提にする438頁〔第1問〕設問2の段落(条約法条約には規定のない「解釈宣言」)3⑴設問2(38頁。そのことを前提として当てはめが求められる)
7B国の声明を,条約法条約2条1項(d)の留保の定義(特定の規定の自国への適用上の法的効果を排除・変更する意図の単独声明,名称を問わない)に照らして性質決定する538頁〔第1問〕設問2の段落(定義に照らした評価が求められる)3⑴設問2(38頁。定義に照らして捉えているかどうかで「評価に差が付く」)
8声明の表現から解釈宣言と捉える余地もあることを踏まえ,留保か解釈宣言かを理由を付して示す(いずれの性質決定も許容)338頁〔第1問〕設問2の段落(解釈宣言と捉えることも可能)3⑴設問2(38頁。「留保」(又は「解釈宣言」)と捉えているか)
9留保と捉える場合,自由権規約は留保に関する規定を含まないから,条約法条約19条(a)(留保の禁止)にも(b)(特定の留保のみ許容)にも当たらないことを確認する438頁〔第1問〕設問2の段落((a)(b)に該当しない)3⑴設問2(38頁。確認することが求められる)
10留保を付することができるかの基準は,自由権規約の趣旨及び目的と両立するかどうか(19条(c))であることを示す538頁〔第1問〕設問2の段落(判断するための基準となる)3⑴設問2(38頁。関連規定を適切に当てはめたか否かで「評価に差が付く」)
11留保に対しては他の締約国が異議を申し立てることができること(20条4項(b)参照)を示す238頁〔第1問〕設問2の段落(20条4項(b)参照)記載なし
12C国の異議は,B国の声明が自由権規約の趣旨及び目的と両立しないという主張に基づくと結論する539頁〔第1問〕設問2の段落末尾3⑴設問2(38頁。基準を満たさないという主張に基づくと考えられる)
13両立しない根拠として,自由権規約は世界人権宣言を基礎に社会権規約と同時に採択された二つの規約の一つであり,関連規定にあえて異なる表現が用いられていることを指摘する339頁〔第1問〕設問2の段落記載なし
14B国の声明は,一方の規約の規定を他方の規約の規定に置き換え,22条1項の権利の行使について軍隊・警察以外の公務員にも合法的な制限を課すことができるよう,法的効果を変更するものだと評価する339頁〔第1問〕設問2の段落記載なし
15両立しないとの主張を導くに当たり,両規約の前文を手掛かりにするなどして説得的に根拠付ける3記載なし3⑴設問2(38頁。「優れた答案」の特徴)

3 設問3(D国の自由権規約からの脱退)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
16条約からの脱退は,条約又は条約法条約の適用によってのみ行うことができること(条約法条約42条2項)を前提にする5記載なし3⑴設問3(38頁。これを前提として当てはめたか否かで「評価に差が付く」)
17条約法条約54条(条約に基づく脱退又は全当事国の同意による脱退)を当てはめる339頁〔第1問〕設問3の段落(54条及び56条の当てはめを求める)記載なし
18自由権規約は終了・廃棄・脱退の規定を含まない条約であるから,56条1項の「廃棄又は脱退の可能性を許容する意図」又は「条約の性質上廃棄又は脱退の権利」に当たるかが基準となることを示す539頁〔第1問〕設問3の段落3⑴設問3(38頁。脱退できるかを判断するための基準)
19自由権規約41条2項第3文が宣言の撤回を明示的に認めているのに規約自体の廃棄・脱退の規定がないことを手掛かりに,脱退を許容する意図は認められないと当てはめる439頁〔第1問〕設問3の段落(例として挙げる)3⑴設問3(38頁。「優れた答案」の当てはめ)

4 重みの分布

19項目の内訳は,重み5が7項目,重み4が5項目,重み3が5項目,重み2が2項目,重み1が0項目であり,重みの合計は74点である。

設問別では,設問1が5項目・20点,設問2が10項目・37点,設問3が4項目・17点であり,設問2(留保)に最も多くの重みが集まっている。

重み5の7項目は,設問1の18条の義務とその終了(番号3・5),設問2の留保の定義による性質決定,19条(c)の基準及びC国の主張の結論(番号7・10・12)並びに設問3の42条2項の前提と56条1項の基準(番号16・18)であり,いずれも採点実感が評価の差がついた事項として挙げたもの又は各設問の答案の骨格に当たるものである。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

以下の答案は,第4の評価項目をすべて満たすように作成したものであり,試験の実施時(令和7年7月16日)の条約と,それまでに公表された国際機関の文書を前提にしている。

答案は,旧司法試験の時代から論文式答案で広く使われてきた型によっている。
見出しを「1」「(1)」の順に下げ,論点ごとに,問題提起(「〜が問題となる。」),規範の定立(「〜と解する。」),当てはめ(「本問では,〜といえる。」)及び結論(「よって」「したがって」「以上より」)の順に書き,反対の立場は「確かに,〜とも思える。しかし,〜。」の形で取り上げ,最後に「以上」と書く型である。

条文は,特に断らない限り条約法条約の条文を指し,両規約の条文は「自由権規約」「社会権規約」を付けて示した。

字数は見出しを含めて約2,400字であり,選択科目の1問の答案として2,500字以下に収めた。
そのため,留保に対する異議の効果(21条3項)や,無効な留保の帰結等,公式資料が求めていない事項は答案から省いた。

2 答案

1 設問1について

(1) A国大統領の通告(以下「本問通告」という。)の意義が問題となる。

 効力を有する条約は当事国を拘束するが(条約法条約26条),両規約は批准されなければならず(社会権規約26条2項,自由権規約48条2項),批准していないA国について効力を生じていない(社会権規約27条,自由権規約49条参照)。

 もっとも,これは両規約がA国に何の法的効果も持たないことを意味しない。批准を条件として署名した国は,署名の時から当事国とならない意図を明らかにする時までの間,条約の趣旨及び目的を失わせることとなるような行為を行わない義務を負う(18条(a))。署名国に他の締約国の信頼を損なわないよう求める趣旨である。

 A国の署名時期は明らかでないが,この規則は条約法条約との関係を離れても国際法上妥当すると解される(4条ただし書)。

(2) 本問では,本問通告は「もはや…当事国となる意図はない」とするもので,18条(a)の「当事国とならない意図を明らかにする」行為に当たるといえる。大統領は元首として条約の締結に関する行為について国を代表し(7条2項(a)),憲法上も条約締結権者である。また,通告先の国際連合事務総長は寄託者であり,通告は関係国に通知される(77条1項(e),78条)。

(3) したがって,本問通告は,A国が署名により負っていた18条の義務を将来に向かって終了させる効果を持つ。

 もっとも,本問通告は脱退(54条,56条)ではなく,通告前の行為の責任や慣習国際法上の人権義務(43条参照)は影響を受けない。

2 設問2について

(1) B国の声明(以下「本問声明」という。)は「解釈」の「宣言」の形式をとる。解釈宣言は条約法条約に規定がなく,条約の意味を明確にするにとどまる。

 これに対し,異議は留保に対する反応である(20条4項(b))。そこで,本問声明が留保に当たるかが問題となる。

(2) 留保とは,条約の特定の規定の自国への適用上その法的効果を排除し又は変更することを意図して批准等の際に単独に行う声明をいい,文言及び名称のいかんを問わない(2条1項(d))。

 よって,名称ではなく,声明を誠実に解釈して特定される作成国の意図が,規定の法的効果の変更にあるかで判断すると解する。

(3) 本問では,自由権規約22条2項第2文が合法的な制限を許すのは「軍隊及び警察の構成員」に限られ,社会権規約8条2項が「公務員」を加えるのとは表現が異なる。それにもかかわらず,本問声明は一方の規約の規定を他方の規定に置き換え,22条1項の権利の行使について軍隊・警察以外の公務員にも制限を課すことを可能にする。

 しかも,B国は公務員に結社の自由や団結権を認めない国内法制度に「鑑みて」本問声明を付しており,22条の法的効果を変更する意図があるといえる。

 したがって,本問声明は名称にかかわらず留保に当たる。

(4) 自由権規約は留保に関する規定を含まないから,本問留保は19条(a)にも(b)にも当たらず,規約の趣旨及び目的と両立するかが基準となる(同条(c))。

 本問では,両規約の前文は,市民的及び政治的権利と経済的,社会的及び文化的権利をともに享有できる条件が作られて初めて世界人権宣言の理想が達成されるとし,同宣言を基礎に同時に採択された二つの規約がそれぞれの権利を別個に保障する構造を示す。そうすると,両規約があえて異なる表現を用いた規定について,社会権規約の基準で自由権規約上の権利を狭めることは,市民的及び政治的権利を保障する自由権規約の趣旨及び目的を損なう。社会権規約自体も,同規約の認める範囲が狭いことを理由に他の条約上の権利を制限することを許さない(同規約5条2項)。

 確かに,22条は逸脱できない権利(自由権規約4条2項)ではなく,両立性には争いの余地もある。しかし,C国は,以上の点から本問留保は自由権規約の趣旨及び目的と両立しないと主張し,異議を申し立てたと考えられる。

(5) なお,本問声明を解釈宣言とみる場合も,C国の異議は,B国の解釈が用語の通常の意味(31条1項)に反するとの反対の表明と位置付けられる。

3 設問3について

(1) 条約からの脱退は,条約又は条約法条約の適用によってのみ行うことができる(42条2項)。自由権規約には終了・廃棄・脱退の規定がないから(54条(a)不該当),すべての当事国の同意(同条(b))がない限り,D国が脱退できるかは56条により判断される。

(2) 終了規定を含まず廃棄・脱退も規定していない条約からは,当事国が脱退の可能性を許容する意図を有していたと認められる場合(56条1項(a))か,条約の性質上脱退の権利があると考えられる場合(同項(b))を除き,脱退できない。この規則は慣習国際法を反映し,条約法条約の発効後に規約を批准したD国には同条約が適用される(4条)。

(3) 本問では,まず,自由権規約41条2項第3文は41条の宣言を「いつでも撤回することができる」と明示しながら,規約自体の廃棄・脱退は規定していない。同時期の人種差別撤廃条約が廃棄を明文で認める(同条約21条)のと対比しても,当事国が脱退を許容する意図を有していたとは認められない。

 次に,規約は世界人権宣言の権利を条約化したもので一時的な性格の条約ではなく,権利は締約国の管轄下の個人に帰属するから,性質上脱退の権利があるとはいえない。

 確かに,国家は同意によってのみ拘束されるのが原則とも思える。しかし,56条1項は脱退規定のない条約からの脱退を原則として否定している。

(4) したがって,D国の自由権規約からの一方的な脱退は国際法上認められない。

 なお,41条の宣言の撤回は可能だが,既に送付された通報の検討を妨げない(41条2項)から,E国の通報の検討は継続する。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の1は第4の番号1〜5(設問1),2は番号6〜15(設問2),3は番号16〜19(設問3)に対応する。

重み5の7項目は,1(1)の18条の義務(番号3),1(3)の義務の終了(番号5),2(2)(3)の留保の定義による性質決定(番号7),2(4)の19条(c)の基準(番号10)と両立しないとの主張(番号12),3(1)の42条2項(番号16)及び3(2)の56条1項(番号18)に当たる。

(2) 設問1

採点実感によれば,多くの答案は両規約がA国について効力を生じていないことを確認できていたが,18条に言及した上で適切に当てはめたか否かで評価に差がつき,通告が「当事国とならない意図を明らかにする」ものと述べるにとどまる答案は十分ではないとされた。
そこで,答案では,通告が18条(a)の終期に当たることを示した上で,その効果が署名国の義務の終了であることを結論として明示した(番号5)。

大統領の権限(7条2項(a))と寄託者への通告(77条,78条)は公式資料に記載のない補足であるが,問題文が「憲法上,条約を締結する権能を有している」こと及び「国際連合事務総長に通告した」ことを書いているため,その事実の用途として短く触れた。
A国の署名の時期は問題文から明らかでないため,18条の規則が条約法条約との関係を離れても国際法上妥当する(4条ただし書)という理解を前提に置いたが,これは本記事の理解であり,公式資料が述べるものではない。

(3) 設問2

出題の趣旨は,B国の声明を2条1項(d)の留保の定義に照らして評価し,留保と捉える場合には19条(a)(b)に当たらないことを確認した上で,(c)の趣旨及び目的との両立性を基準とする流れを示している。
採点実感も,定義に照らした性質決定と19条の当てはめで評価に差が付いたとし,優れた答案は両規約の前文を手掛かりに説得的な根拠付けをしていたとする。

答案は,両規約の前文が,市民的及び政治的権利と経済的,社会的及び文化的権利をともに享有できる条件が作られて初めて世界人権宣言の理想が達成されるとしていることを手掛かりに,二つの規約が同時に採択され,あえて異なる表現を用いたことから,社会権規約の基準で自由権規約上の権利を狭めることは自由権規約の趣旨及び目的を損なうと構成した(番号13〜15)。
社会権規約5条2項(同規約の認める範囲が狭いことを理由に他の条約上の権利を制限することを許さない)は公式資料に記載がないが,B国が社会権規約8条2項を「想起」した点への反論として加えた。

出題の趣旨は声明を解釈宣言と捉える余地も認めているため(番号8),答案の2(5)で解釈宣言とみる場合の位置付けを1文で示した。

(4) 設問3

採点実感は,脱退が条約又は条約法条約の適用によってのみ行えること(42条2項)を前提として関連規定を当てはめたか否かで評価に差が付いたとし,優れた答案は41条2項第3文を手掛かりにしていたとする。
答案は,42条2項から入り,54条(a)(b)を確認した上で,56条1項の二つの例外を順に否定した(番号16〜19)。

自由権規約委員会の一般的意見第26号(1997年)は,41条2項との対比,同時に採択された第一選択議定書が廃棄を認めていること,及び1年前に採択された人種差別撤廃条約が廃棄を明示的に認めていることを挙げて,規約からの廃棄・脱退は認められないとしている。
国際連合事務総長も,1997年に北朝鮮から脱退の通告を受けた際,全締約国が同意しない限り脱退はできないとの見解を示した(国連条約集の自由権規約の注記)。
答案では,人種差別撤廃条約21条(廃棄の規定)との対比と,一般的意見・事務総長の見解を補強として用いた。

設問は脱退の可否だけを問うが,D国の野党の党首が41条の宣言の撤回にも触れているため,撤回は可能でも既に送付された通報の検討は妨げられないこと(41条2項)を末尾に1文で加えた。

(5) 答案の弱点と扱わなかった事項

設問2で,自由権規約22条は緊急時にも逸脱できない権利(自由権規約4条2項)に含まれないため,B国の留保が趣旨及び目的と両立しないかには争いの余地がある。
設問は,C国の異議が「国際法上どのような主張に基づいていると考えられるか」を問うものであるため,答案はC国の主張としての構成を示すにとどめ,両立性についての最終的な判断はしていない。

留保に対する異議の効果(21条3項),許容されない留保の帰結(自由権規約委員会の一般的意見第24号18項,国際法委員会の条約の留保に関する実行の手引(Guide to Practice on Reservations to Treaties)4.5.1〜4.5.3),脱退の通告期間(56条2項)及び終了の効果(70条)は,公式資料が求めていない事項であり,字数の制約から答案では扱っていない。

一般的意見や国際法委員会の手引は,それ自体として法的拘束力を持つものではなく,答案では条約法条約の条文による論証を主とし,補強としてだけ用いた。

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2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①令和8年度司法試験・国際関係法(公法系)第1問の参考答案と予想される評価項目――外交的保護、犯罪人引渡し、外交官の民事裁判権免除(AI作成)
②令和8年度司法試験国際関係法(公法系)第2問の参考答案と予想される評価項目―難民該当性・反政府勢力への武器供与・ICJの管轄権(AI作成)
③令和8年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の参考答案(AI作成)
④法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧(AI作成)
⑤司法試験論文式の予想評価項目の作り方と読み方―公式資料公表前の問題文・法令・判例による5段階評価(AI作成)
⑥租税条約を適用する前に確かめる5つのこと―署名と発効,適用開始日,BEPS防止措置実施条約,終了通告及び届出書(AI作成)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省「令和7年司法試験の実施について」
②法務省「令和7年司法試験問題」
③令和7年司法試験論文式試験問題(選択科目)
④法務省「令和7年司法試験の結果について」
⑤令和7年司法試験論文式試験出題の趣旨
⑥法務省「令和7年司法試験の採点実感」
⑦令和7年司法試験の採点実感(選択科目)

2 条約

①条約法に関するウィーン条約(外務省)
②市民的及び政治的権利に関する国際規約(外務省)
③経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(外務省)
④あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(外務省)

3 国際機関の文書

①自由権規約委員会「一般的意見第26号」(CCPR/C/21/Rev.1/Add.8/Rev.1,1997年)
②自由権規約委員会「一般的意見第24号」(CCPR/C/21/Rev.1/Add.6,1994年)
③国際法委員会 Guide to Practice on Reservations to Treaties(2011年)
④国連条約集「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の寄託状況

4 確認状態

出題の趣旨は,国際関係法(公法系)第1問の部分(PDFの38頁〜39頁)を全て読み,採点実感は,国際関係法(公法系)の部分(PDFの37頁〜40頁)を読んだ。
いずれも法務省のページのリンクから取得したPDFによる。

条約の条文は,外務省のウェブサイトに掲載された日本語の公定訳で確認した。
条約法条約は,日本語訳と英語の正文を対照した外務省の掲載によった。

一般的意見第24号・第26号,国際法委員会の手引及び国連条約集の注記は,国際連合のウェブサイトから取得した原文(英語)で確認した。
第一選択議定書の廃棄の規定は,一般的意見第26号の記載によるものであり,議定書の条文そのものは確認していない。

ジェノサイド条約の留保に関する国際司法裁判所の勧告的意見(1951年)は,国際司法裁判所のウェブサイトから原文を取得できなかったため,答案及び解説では用いていない。

答案は,公式資料を読む前に問題文と上記の一次資料だけから作成した答案を,公式資料を踏まえて改めたものである。