第1 この記事の対象と読み方
1 対象とした試験と資料
本記事は,平成14年度の旧司法試験第二次試験論文式試験の全12問(憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法の各2問)について,問題ごとに,問題文,法務省が公表した出題趣旨,模範答案及び出題趣旨を踏まえた解説を示すものである。
模範答案と解説は生成AIを用いて作成し,判例と条文は一次資料で確認した。
問題文と出題趣旨は,法務省の「論文式試験問題・出題趣旨」のページにある「平成14年度 問題[PDF]」及び「平成14年度 出題趣旨[PDF]」から引用した。
出題趣旨のPDF(全6頁)は問題文と出題趣旨を並べた形式であり,本記事では頁画像で句読点の位置まで確認した上で引用している。
法務省の「法務省ウェブサイトのコンテンツの利用について」によれば,同省のウェブサイトのコンテンツには,権利表記がない限り「公共データ利用規約(第1.0版)」(PDL1.0)が適用される。
同ページで別のルールを適用するコンテンツとして挙げられているものの中に,司法試験の問題と出題趣旨は含まれていない(令和8年9月28日確認)。
本記事の問題文と出題趣旨は,この利用規約に従い,法務省ウェブサイトの上記各PDFを出典として掲載するものであり,改行位置など表示上の体裁は本記事に合わせている。
試験問題を利用するときの著作権の考え方は,過去問・入試問題の解説を販売・配信してよいかで整理している。
旧司法試験については,同じページに年度ごとの問題と出題趣旨のPDFが掲載されているだけで,現行の司法試験のような採点実感は公表されていない。
そのため,本記事の解説は,出題趣旨の文言と,判例・条文の原文との照合を手掛かりにしている。
法務省のウェブサイトにある司法試験・予備試験の資料の所在は,法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在で一覧にしている。
調査の基準日は令和8年9月27日である。
現行法令は同日時点でe-Gov法令検索に収録された条文を確認し,最高裁判所の判例は裁判所ウェブサイトの個別ページで裁判年月日,事件番号及び掲載誌を確認した。
2 模範答案の前提と表記
模範答案は,出題当時(平成14年)の法令と,それまでに言い渡された判例を前提にしている。
そのため,民法は平成29年改正前の規定,商法は会社法(平成17年法律第86号)の制定前の規定,刑事訴訟法はその後の改正で項番号が動く前の規定によっている。
現行法で結論や条番号が変わる点は,各問の「現行法とその後の裁判例」で説明する。
答案は,旧司法試験の論文式答案で広く使われた型によっている。
見出しを「1」「(1)」「ア」の順に下げ,問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型であり,字数は1問おおむね1,700字から1,900字である。
答案の括弧書きで示した判例は,裁判所ウェブサイト又は判例データベースで判示を確認したものに限った。
「判例同旨」は判例と同じ規範・理由付けによるもの,「判例に結論同旨」は結論が同じものの理由付けが答案独自のもの,「参照」は事案が異なるが判示の考え方を参考にしたものを示す。
出題後に言い渡された判例は答案に入れず,解説の中で「その後の裁判例」として紹介している。
3 全12問の主な論点
| 科目・問 | 主な論点 |
|---|---|
| 憲法第1問 | 公立図書館で雑誌を閲覧する権利の保障と位置付け,閲覧禁止を正当化する事情,合憲限定解釈による解決 |
| 憲法第2問 | 法律上の争訟,事件性,法律案・宗教の教義・納税者の返還請求と司法権の範囲,統治行為論 |
| 民法第1問 | 親権者の利益相反行為と代理権の濫用,無効な売買の買主の不当利得返還請求,騙取金による弁済と不当利得・詐害行為取消し |
| 民法第2問 | 第三者の弁済と債務者の意思,更改・債務引受・保証・債権譲渡・免除,債務者の意思を尊重することの合理性 |
| 刑法第1問 | 共犯者間で異なる正当防衛の成否,方法の錯誤,誤想防衛の一種 |
| 刑法第2問 | 盗品等に関する罪の知情の時期,買主に対する詐欺罪,不法原因給付と横領罪,2項詐欺罪,罪数 |
| 商法第1問 | 合併比率が不当なときの少数株主の手段(情報収集,株式買取請求,決議取消し,合併無効の訴え) |
| 商法第2問 | 交付欠缺と裏書人の責任,手形の変造と署名者の責任,遡求権の保全,手形行為独立の原則 |
| 民事訴訟法第1問 | 公開主義の意義と根拠,公開停止,口頭弁論以外の非公開の手続 |
| 民事訴訟法第2問 | 当事者の確定,訴訟係属,氏名冒用訴訟の判決の効力と救済,中断を看過した判決 |
| 刑事訴訟法第1問 | 体内に嚥下された証拠物の取得と強制処分,身体検査令状・鑑定処分許可状・捜索差押令状 |
| 刑事訴訟法第2問 | 訴因の特定,幅のある訴因への変更,最終の1回の使用,公訴事実の同一性 |
第2 憲法
1 第1問 公立図書館での雑誌の閲覧禁止と知る権利
(1) 問題文(問題PDF1頁)
A市の市民であるBは,A市立図書館で雑誌を借り出そうとした。ところが,図書館長Cは,「閲覧用の雑誌,新聞等の定期刊行物について,少年法第61条に違反すると判断したとき,図書館長は,閲覧禁止にすることができる。」と定めるA市の図書館運営規則に基づき,同雑誌の閲覧を認めなかった。これに対し,Bは,その措置が憲法に違反するとして提訴した。
この事例に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF1頁)
本問は,市民が,公立図書館において,その所蔵する雑誌を閲覧する権利は,憲法上保障されているか,保障されるとして,それを憲法上どのように位置付けるか,また,その市民の権利を制約することが正当化される事情はどのようなものかを問うとともに,設例の状況において,具体的にどのような方法によって解決が図られるべきかを問うものである。
(3) 模範答案
1 雑誌閲覧権の保障について
(1) Cは,A市の図書館運営規則(以下「本問規則」という。)に基づき,Bの雑誌の閲覧を認めなかった(以下「本問措置」という。)。そこで,本問規則及び本問措置は,市民が公立図書館においてその所蔵する雑誌を閲覧する権利(以下「雑誌閲覧権」という。)を侵害し,違憲ではないか。まず,雑誌閲覧権が憲法上保障されるかが明文なく問題となる。
思うに,現代においてはマスメディアの発達独占によって情報の送り手と受け手が分離し,大多数の国民は情報の受け手に固定化しているところ,かかる状況の下で表現の自由の保障の趣旨である自己実現の価値及び自己統治の価値を実現するためには,受け手の側から21条1項を再構成する必要がある。
よって,知る権利は21条1項により保障されると解する(閲読の自由につき,よど号ハイジャック記事抹消事件判決に同旨・最大判昭和58年6月22日)。
(2)ア もっとも,知る権利のうち公権力に対して積極的に情報の提供を求める請求権的側面は,具体的立法を待って初めて司法的救済が可能な抽象的権利にすぎないと解する。
イ しかし,公立図書館は公の施設であり,A市は正当な理由がない限り住民の利用を拒んではならない(地方自治法244条2項)。そして,A市が既に収集し閲覧用として住民の利用に供している雑誌について,その内容を理由に閲覧を禁止することは,公権力が情報の自由な受領を妨げるものといえる。
よって,雑誌閲覧権は,知る権利の自由権的側面として21条1項により保障されると解する。
2 雑誌閲覧権の制約の正当化について
(1) もっとも,雑誌閲覧権も,人権相互の矛盾衝突の調整原理たる「公共の福祉」(12条後段,13条後段)による制約を受ける。では,どの程度の制約であれば許されるであろうか。
思うに,雑誌閲覧権は,自己実現の価値及び自己統治の価値を有する点で人権体系上優越的地位を占める。また,その侵害は民主政の過程そのものの瑕疵であって,民主政の過程による回復は困難である。
よって,規制目的が正当で,目的達成手段としてより制限的でない他の選びうる手段の有無を具体的・実質的に審査するLRAの基準によるべきと解する。
特に,定期刊行物は流通期間が短く後からの入手が困難であり,無料で閲覧できる(図書館法17条)公立図書館は代替し難い入手経路であるから,本問では同基準を厳格に適用すべきである。
(2)ア まず,本問規則の目的は,少年法61条の趣旨にのっとり,少年のプライバシーを保護してその更生及び健全な育成(少年法1条)に資する点にあると思われ,かかる目的は正当である。
イ では,その手段についてはどうか。
確かに,図書館は同じ雑誌を長期間閲覧に供するから,推知情報が繰り返し閲覧されるおそれがあり,閲覧を禁止する必要性は高いとも思える。
しかし,推知報道に当たる記事は通常雑誌の一部にすぎないから,目的達成のためには,当該記事の頁に限って閲覧を制限し,又は少年の氏名・写真等を覆えば足り,雑誌全体の閲覧まで禁止する必要はない。
しかも,本問規則は,少年法61条違反という法的評価を図書館長の主観的判断に委ねており,恣意的な運用によって雑誌閲覧権が不当に制約されるおそれがある(公の施設の利用拒否事由の判断につき,泉佐野市民会館事件判決参照・最判平成7年3月7日)。
よって,前述した目的達成のためのより制限的でない他の選びうる手段があるといえる。
ウ したがって,本問規則は,その文言どおりに適用される限り,21条1項に反しうる。
3 具体的な解決の方法について
(1) もっとも,本問規則を直ちに無効とすれば少年を保護する手段が失われるから,限定解釈の可否が問題となる。
思うに,本問規則の文言及び目的から合理的に導かれる限定により,雑誌閲覧権と少年の利益を調和させることができる。
よって,本問規則は,推知性が明白で,少年の更生等を害する具体的な危険が客観的に認められる記事について,必要な期間に限り,その記事部分の閲覧を制限できる趣旨と解する。そう解する限り,本問規則は21条1項に反しない。
(2) これを本問について見ると,仮に同雑誌の記事が推知報道に当たるとしても,Cは同雑誌の閲覧自体を認めなかった点で,限定して解釈された本問規則の範囲を超えるといえる。
(3) したがって,本問措置はBの雑誌閲覧権を侵害し,21条1項に反し違憲である。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,①雑誌を閲覧する権利が憲法上保障されるか,②保障されるとして憲法上どう位置付けるか,③その制約を正当化する事情は何か,④設例の状況で具体的にどう解決すべきか,の4点を問うている。
答案は,1で①と②を,2で③を,3で④を扱い,見出しをこの順序に合わせた。
①について,よど号ハイジャック記事抹消事件の最高裁昭和58年6月22日大法廷判決は,新聞紙,図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは,憲法19条や21条の規定の趣旨,目的から「いわばその派生原理として当然に導かれる」としている。
答案は,この閲読の自由を足掛かりに,知る権利を21条1項で基礎付けた。
②が本問の中心である。
図書館に資料をそろえるよう求める権利(請求権的側面)として構成すると,具体的な立法がないことが障害になる。
答案は,既に閲覧用に供されている雑誌から内容を理由に締め出すことを,情報の受領を妨げる自由権的側面への制約と構成し,地方自治法244条2項の「正当な理由がない限り」利用を拒めないという規定をその橋渡しに使った。
③について,答案は,精神的自由の優越的地位を理由に,より制限的でない他の選び得る手段の有無を審査する基準を採り,記事の頁に限った閲覧制限や氏名・写真の被覆で目的を達し得ることから,雑誌全体の閲覧禁止を過剰とした。
公の施設の利用拒否について,泉佐野市民会館事件の最高裁平成7年3月7日判決は,集会の用に供する施設の利用を拒否するには「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要である」とした。
もっとも,同判決は集会施設の事案であり,県立美術館の図録の閲覧拒否をめぐる名古屋高裁金沢支部平成12年2月16日判決は,この基準は美術品・図録の閲覧には「厳格に過ぎて相当でない」としている。
答案が泉佐野市民会館事件判決を「参照」にとどめたのはこのためであり,審査の基準の選び方は答案によって分かれ得る。
④について,答案は,規則を直ちに無効とせず,推知性が明白で具体的な危険がある記事に限り,必要な期間,その記事部分の閲覧を制限できる趣旨に限定して解釈し,雑誌全体の閲覧禁止をその範囲を超える措置とした。
出題趣旨の「具体的にどのような方法によって解決が図られるべきか」は,頁単位の制限等の実務的な措置と,合憲限定解釈等の法的な解決のいずれとも読めるため,答案は両方を入れている。
答案に入れなかった論点として,住民の権利を制限する事項を条例でなく図書館の運営規則で定めてよいかという点(地方自治法14条2項)と,「少年法第61条に違反すると判断したとき」という基準の明確性がある。
出題趣旨はこれらに触れていないため答案では扱わなかったが,字数に余裕があれば短く触れる余地がある。
(5) 現行法とその後の裁判例
推知報道に当たるかどうかについて,出題後の最高裁平成15年3月14日判決(長良川事件報道訴訟)は,不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断すべきとした。
現在の答案であれば,規則の「少年法第61条に違反する」かどうかの判断基準として,この判示を使うことになる。
公立図書館の閲覧制限をめぐる裁判例と日本図書館協会の見解は,公立図書館は少年の推知報道を載せた雑誌の閲覧を制限できるかで詳しく整理している。
2 第2問 司法権の範囲と限界
(1) 問題文(問題PDF1頁)
以下の各訴えについて,裁判所は司法権を行使することができるか。
1 国会で今制定されようとしているA法律は明らかに違憲であるとして,成立前に無効の宣言をするよう求める訴え。
2 B宗教の教義は明らかに憲法第13条の個人の尊重に反しているとして,その違憲確認を求めてC宗教の信徒らが提起した訴え。
3 自衛隊は憲法第9条に違反する無効な存在であるとして,国に対して,自己の納税分中自衛隊に支出した額の返還を請求する訴え。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF1頁)
日本国憲法上の司法権とは,具体的事件に法律を適用して紛争を解決する作用であるといわれているが,本問は,司法権の範囲及び限界に関し,三つの具体例に関連させながら,司法判断適合性,事件性の要件,裁判所法第3条の「法律上の争訟」,統治行為論(政治問題の法理)等の意義と機能について,その理解を問うものである。
(3) 模範答案
1 司法権の範囲と限界について
本問各訴えについて,裁判所は司法権(76条1項)を行使できるか。司法権の範囲と限界が問題となる。
思うに,司法権とは,具体的な争訟について,法を適用し宣言することによってこれを裁定する国家作用をいう。よって,司法権の範囲は「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に限られ,これは①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,②法令の適用により終局的に解決することができるものをいうと解する(判例同旨・最判昭和56年4月7日)。
そして,違憲審査権(81条)も,この司法権の行使に付随して行使されるにすぎない(付随的審査制。判例に結論同旨・最大判昭和27年10月8日)。
もっとも,法律上の争訟に当たる場合でも,事柄の性質上司法判断に適さないものについては,なお司法権の限界があると解する。
2 小問1について
本小問では,A法律は未だ成立しておらず,原告の権利義務には何らの変動も生じていない(最判昭和29年2月11日参照)。そうすると,本小問の訴えは,法律案の合憲性について抽象的な判断を求めるものにすぎず,具体的な紛争とはいえない(①)。また,81条が審査の対象とするのも既に成立した「法律」であって,法律案ではない。
確かに,裁判所法3条1項は「その他法律において特に定める権限」を認めている。しかし,かかる訴えを認める法律はなく,また,審議中の法律案に対する事前の無効宣言は,国会の立法権(41条)への介入として権力分立に反する。
よって,本小問の訴えは却下され,裁判所は司法権を行使することができない。
3 小問2について
本小問では,B宗教の教義は,C宗教の信徒らの権利義務に何ら影響を及ぼさないから,具体的な紛争とはいえない(①)。
また,国家を名宛人とする13条は私人である宗教団体の教義に直接適用されず,教義が「個人の尊重」に反するか否かは信仰の内容に立ち入らなければ判断できないから,法令の適用により終局的に解決できない(②)。しかも,裁判所が教義の当否を判断すること自体,信教の自由(20条1項前段)及び国家の宗教的中立性(20条1項後段・3項)に反する。
よって,本小問の訴えは却下され,裁判所は司法権を行使することができない。
4 小問3について
(1) 確かに,本小問の訴えは,納税者の資格で国の支出の是正を求める点で,法律の定めのない民衆訴訟(行政事件訴訟法5条,42条)とも思える。しかし,国に対し一定額の金銭の返還を求める不当利得返還請求(民法703条)である以上,具体的な紛争であり(①),前提となる9条の解釈も法的判断である(②)。
よって,本小問の訴えは法律上の争訟に当たる。
(2) では,自衛隊の9条適合性に司法判断は及ぶか。統治行為論の当否が問題となる。
確かに,法の支配(81条)の下では,あらゆる国家行為が司法審査に服するとも思える。しかし,直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為の当否は,国民に対して政治的責任を負う国会・内閣が判断し,最終的には国民の政治的判断に委ねるのが民主政に適う。
よって,かかる国家行為は,一見極めて明白に違憲無効と認められない限り,司法審査の対象外と解する(最大判昭和34年12月16日,最大判昭和35年6月8日参照)。
本小問では,自衛隊の設置・保持は,わが国の存立の基礎に関わる防衛政策の根幹であり,国会・内閣の高度の政治的判断と表裏をなすから,高度の政治性を有する。また,9条は主権国として持つ固有の自衛権を否定するものではない(前掲最大判昭和34年12月16日)から,自衛隊が一見極めて明白に違憲無効であるとはいえない。
(3) さらに,租税は法律に基づいて賦課・徴収され(30条,84条),一般財源として特定の支出と結び付かないから,仮に自衛隊への支出が違憲でも,納税の法律上の原因は失われない。したがって,本小問の請求は9条適合性を判断するまでもなく棄却され,付随的審査制の下では,裁判所は憲法判断をすべきでない。
以上より,裁判所は本小問の訴えについて司法権を行使し,請求を棄却することができるが,自衛隊の9条適合性については判断すべきでない。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,司法判断適合性,事件性の要件,裁判所法3条の「法律上の争訟」及び統治行為論の意義と機能を,三つの具体例に即して問うている。
答案は,冒頭で司法権の「範囲」(法律上の争訟に当たるか)と「限界」(法律上の争訟に当たっても司法判断に適さないもの)を分け,小問1と小問2を範囲の問題,小問3を範囲を満たした上での限界の問題として整理した。
法律上の争訟の定義は,板まんだら事件の最高裁昭和56年4月7日判決が示した「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であつて、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるもの」による。
警察予備隊違憲訴訟の最高裁昭和27年10月8日大法廷判決は,司法権が発動するためには具体的な争訟事件が提起されることを必要とするとしており,小問1の法律案の無効宣言を求める訴えは,この意味で事件性を欠く。
小問2は,C宗教の信徒がB宗教の教義を争う訴えであり,板まんだら事件のような宗教団体の内部の紛争ではない。
そのため答案は,信徒らの権利義務に影響がないこと(事件性の欠如)を主な理由とし,教義の当否に立ち入らなければ判断できないことを補強の理由とした。
小問3について,砂川事件の最高裁昭和34年12月16日大法廷判決は,日米安全保障条約について,一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは「裁判所の司法審査権の範囲外のもの」とし,苫米地事件の最高裁昭和35年6月8日大法廷判決は,衆議院の解散について,直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は裁判所の審査権の外にあるとした。
いずれも自衛隊の合憲性を判断したものではなく,答案の統治行為論の規範は,両判決を組み合わせた整理である。
答案は,租税が一般財源であって特定の支出と結び付かないことから,自衛隊への支出の合憲性にかかわらず請求は棄却されるとし,付随的審査制の下では憲法判断をすべきでないとした。
同じ型の請求について,名古屋地裁昭和55年11月19日判決は,納付済みの税金のうち自衛隊費相当額の不当利得返還等の請求を本案で棄却している。
答案は統治行為論と「判断するまでもなく棄却」の両方を書いており,理由が二重になっている。
出題趣旨が統治行為論を名指ししているための配分であり,請求棄却で完結させて統治行為論を「なお」書きで扱う構成も考えられる。
(5) 現行法とその後の裁判例
民衆訴訟について,出題後の最高裁平成26年7月9日決定は,民衆訴訟は「法律上の争訟」ではなく,裁判所法3条1項の「その他法律において特に定める権限」に含まれるとした。
小問1の訴えを認める法律がないことを指摘した答案の論理は,この整理と整合する。
法律上の争訟と司法権の限界をめぐる判例は,「法律上の争訟」と司法権の限界―裁判所が判断できる事件・判断しない事件と主要判例で詳しく整理している。
第3 民法
1 第1問 親権者の代理権の濫用と売却代金の行方
(1) 問題文(問題PDF2頁)
Aは,妻とともに,子B(当時18歳)の法定代理人として,Cに対し,Bが祖父からの贈与により取得した甲土地を,時価の500万円で売却して引き渡し,所有権移転の登記をした。Aは,妻の了解の下に,その売却代金を,AのDに対する500万円の債務の弁済に充てた。Aは,Dに弁済する際,甲土地の売却代金により弁済することを秘していたが,Dは,そのことを知っていた。AがDに弁済した時,A夫婦は無資力であった。その後,Bは,成人した。
1 A夫婦が売却代金をAのDに対する債務の弁済に充てるために甲土地を売却したものであり,Cは,甲土地を買い受ける際,そのことを知っていた場合において,次の各問について論ぜよ。
(1) Bは,Cに対し,甲土地の返還を請求することができるか。
(2) CがBに対して甲土地を返還したとき,Cは,Bに対し,500万円の支払を請求することができるか。
2 A夫婦が売却代金をBの教育資金に用いるつもりで甲土地を売却したが,売却後に考えが変わり,売却代金をAのDに対する債務の弁済に充てた場合において,Bは,Dに対し,500万円の支払を請求することができるかについて論ぜよ。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF2頁)
本問は,代理権と侵害回復方法に関する。1(1)では,利益相反行為,代理権濫用といういわば定型的な問題についての基礎的な見解を,1(2)と2では,議論が残されている問題を与えて,基礎的な知識に依拠しつつ事案を分析し解決する能力を,見ようとした。2では,不当利得返還請求権,債権者取消権などが考えられるが,どれによる場合にも,財貨の移転・帰属を整理した上で要件を検討することが期待された。
(3) 模範答案
1 小問1(1)について
(1) Bは,Cに対し,甲土地の所有権に基づき,その返還を請求することが考えられる。
これに対してCは,A夫婦がBの法定代理人として甲土地を売却した(818条3項,824条本文。以下「本問売買」という。)と反論することが考えられる。
(2) まず,本問売買は利益相反行為(826条1項)として無権代理とならないか。
思うに,相手方は親権者の内心の動機を知り得ない。
よって,取引の安全のため,利益相反性は行為の外形から客観的に判断すべきと解する(判例同旨・最判昭和42年4月18日)。
本小問では,本問売買は甲土地を第三者Cに時価で売却するものであり,外形上利益は相反しない。
(3) もっとも,代理権の濫用として効果がBに及ばないのではないか。
思うに,親権者は子の財産に関する法律行為について広範な裁量を有する(824条本文)。
よって,子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的とするなど,法の趣旨に著しく反する特段の事情がある場合に限り濫用となり,相手方がこれを知り又は知ることができたときは,93条ただし書の類推適用により効果は子に及ばないと解する(判例同旨・最判平成4年12月10日)。
本小問では確かに,甲土地は時価で売却されている。
しかし,A夫婦は当初から代金をAのDに対する債務の弁済に充てる目的で売却しており,Bは甲土地を失うのみで何も得ないから,特段の事情があるといえる。
そして,Cはそのことを知っていた。
(4) したがって,成人したBが追認しない限り,BはCに対し甲土地の返還を請求できる。
2 小問1(2)について
(1) Cは,代金500万円を支払ったという損失を理由に,Bに対し不当利得の返還(703条)を請求することが考えられる。
しかし,本問売買の効果がBに及ばない以上,代金の受領もBに帰属せず,しかも代金はAの債務の弁済に費消されたから,Bの財産は何ら増加していない。
よって,Bに受益はない。
また,Cは既に甲土地を返還しており,その返還を拒んで代金の回収を図る余地もない。
(2) したがって,CはBに対し500万円の支払を請求できず,A夫婦に対する不当利得返還請求のほか,代金の出所を知って弁済を受けたDに対し,小問2と同様の要件の下で返還を求めうるにとどまる。
3 小問2について
(1) 代理権の濫用の有無は代理行為の時点で判断されるから,売却時に教育資金に用いる目的であった本小問では,本問売買は有効である。
もっとも,金銭は占有と所有が一致するから,代金は実質的にはBに帰属すべき価値であっても,その所有権は受領したA夫婦に帰属し,Bは,A夫婦に対し代金相当額の引渡しを求める債権を有するにとどまる。
(2) そこで,Bは,Dに対し,不当利得の返還(703条,704条)を請求することが考えられる。
ここで,A夫婦は無資力であるから,Bは代金相当額の回収ができないという損失を受け,Dは債権の満足という受益を得ている。
もっとも,Dは自己の債権の弁済として受領しているから,因果関係及び法律上の原因の有無が問題となる。
思うに,不当利得制度は,財産の移動を公平の観点から調整する制度である。
よって,①社会通念上Bの金銭でDの利益を図ったと認められる連結があれば因果関係があり,②Dが受領につき悪意又は重大な過失があるときは,Bとの関係で法律上の原因を欠くと解する(判例同旨・最判昭和49年9月26日)。
本小問では,A夫婦はBのために管理すべき代金をそのままAの債務の弁済に充てたから,連結がある(①)。
また,Dは,Aが秘していたにもかかわらず弁済金が甲土地の売却代金であることを知っていたから,Bの財産による弁済であることにつき悪意又は少なくとも重大な過失があるといえる(②)。
よって,BはDに対し,500万円に利息を付して(704条)返還を請求できる。
(3) なお,Bは,前述したA夫婦に対する債権を被保全債権として,AのDに対する弁済の取消し(424条1項)を求めることも考えられる。
確かに,弁済時にA夫婦は無資力であり,Dは代金の出所を知っていた。
しかし,弁済は債務者が義務を履行するものにすぎないから,債務者が一債権者と通謀し他の債権者を害する意思でした場合に限り詐害行為となると解される(判例同旨・最判昭和33年9月26日)。
本小問では,AD間の通謀をうかがわせる事実はないから,取消しは認められない。
(4) 以上より,BはDに対し,不当利得として500万円の支払を請求できる。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,小問1(1)を利益相反行為と代理権濫用という「定型的な問題」とし,小問1(2)と小問2を「議論が残されている問題」としている。
答案もこの区別に合わせ,小問1(1)は判例の規範で簡潔に処理し,残りの字数を小問2に回した。
小問1(1)について,利益相反行為に当たるかは,親権者の動機・意図ではなく行為自体を外形的客観的に考察して判定する。
最高裁昭和42年4月18日判決は,この考え方による原判決の判断を正当としている。
その上で,最高裁平成4年12月10日判決は,利益相反行為に当たらない行為について,子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど,親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情がない限り,代理権の濫用には当たらないとし,濫用に当たる場合は,相手方が濫用の事実を知り又は知り得べかりしときに民法93条ただし書の類推適用により効果が子に及ばないとした。
答案は,時価での売却であることを認めつつ,代金を親の債務の弁済に充てる目的と買主の知情から,特段の事情を肯定した。
小問2では,出題趣旨のいう「財貨の移転・帰属の整理」が中心になる。
甲土地は売買によってCに移り,代金はA夫婦が受領し,金銭は占有者に所有権が帰属するため,Bに残るのはA夫婦に対する代金相当額の債権である。
その金銭がAの債務の弁済としてDに渡り,A夫婦が無資力であるため,Bはその債権を回収できない。
答案は,この流れを確定した上で,BのDに対する請求を不当利得(民法703条・704条)と詐害行為取消し(同法424条)の二つの構成で検討した。
不当利得の構成について,騙取金・横領金による弁済に関する最高裁昭和49年9月26日判決は,社会通念上被騙取者の金銭で弁済を受けた者の利益を図ったと認められるだけの連結があれば因果関係があり,弁済を受けた者が悪意又は重大な過失のあるときは法律上の原因がないとした。
答案はこの規範を,親権者が子のために管理すべき代金を自己の債務の弁済に充てた場面に及ぼしている。
一方,詐害行為取消しについて,最高裁昭和33年9月26日判決は,弁済は債務者が一債権者と通謀し他の債権者を害する意思をもってした場合にのみ詐害行為となるとしており,問題文に通謀をうかがわせる事実がないことから,答案は取消しを否定した。
答案の弱点は小問1(2)が短いことである。
出題趣旨はここも「議論が残されている問題」としており,買主の同時履行の抗弁の帰趨や,制限行為能力者の返還義務の範囲に関する考え方(民法121条ただし書)を類推する余地など,論じる余地が残っている。
また,民法704条の「悪意の受益者」は法律上の原因がないことを知りながら利得した者をいうため,Dが重大な過失にとどまる場合に利息まで付くかは別に検討を要する。
(5) 現行法とその後の裁判例
平成29年の民法改正で,代理権の濫用は明文化された。
現行民法107条は,代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合に,相手方がその目的を知り,又は知ることができたときは,その行為を代理権を有しない者がした行為とみなしている。
債務の消滅に関する行為の詐害行為取消しも明文化され,現行民法424条の3第1項は,債務者が支払不能の時に行われたこと及び債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたことを要件としている。
成年年齢は,現行民法4条により18歳である。
騙取金・横領金による弁済と不当利得については使い込まれたお金で借金を返してもらった債権者から取り戻せるか―騙取金・横領金による弁済と不当利得,最高裁昭和49年9月26日判決及び詐害行為取消しで,親と子の利益相反については親と未成年の子の利益相反と特別代理人で扱っている。
2 第2問 債務者の意思に反して債務を消滅させる方法
(1) 問題文(問題PDF2頁)
Aは,20歳の息子Bが資産もないのに無職でいることに日ごろから小言を言っていたところ,BがCから500万円の借金をしていることを知り,その借金を返済してやりたいと考えた。しかし,Bは,「親の世話になりたくない。」と言って,これを拒否している。AがBの上記債務を消滅させてやるためには,いかなる法律的方法があるか。AC間に新たな合意を必要としない場合と必要とする場合とに分けて論ぜよ。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF2頁)
本問は,債権の消滅に関する民法の横断的な知識・理解を問うものであり,民法第474条以下の債権消滅原因及び保証・債権譲渡など債務者の意思に反する債務消滅を可能とするための法律行為についての基本的な理解を見るとともに,債権の消滅につき債務者の意思を尊重することの合理性についての問題意識を問うものである。
(3) 模範答案
1 AC間に新たな合意を必要としない場合について
(1) Aは,BのCに対する500万円の債務(以下「本問債務」という。)を,Bに代わって弁済することが考えられる(474条1項本文)。
もっとも,Bは「親の世話になりたくない」と拒否しているから,Aの弁済はBの意思に反する。
そこで,Aが474条2項の利害関係を有する第三者に当たるかが問題となる。
思うに,同項の趣旨は,他人の恩恵を受けることを潔しとしない債務者の意思を尊重し,意に反する弁済者からの苛酷な求償から債務者を保護する点にある。
とすれば,債務者の意思を排除してよいのは,弁済しなければ自己が法律上の不利益を受ける者に限られる。
よって,利害関係とは法律上の利害関係をいい,親族関係という事実上の利害関係はこれに当たらないと解する(判例に結論同旨・最判昭和39年4月21日)。
本問では,AはBの父にすぎず,Bは20歳で成年に達しているから法定代理人として弁済する余地もなく,Aが法律上の利害関係を有するとはいえない。
よって,Aの弁済は無効であり,Aは有効に弁済をすることができる者ではないから,弁済供託(494条)もできない。
(2) また,AはCに対して債権を有しないから相殺(505条1項)はできず,履行引受はAB間の契約を要するところBが拒否しているから,これもできない。
(3) したがって,Bが反対の意思を維持する限り,AC間の合意なしに本問債務を消滅させる方法はない。
2 AC間に新たな合意を必要とする場合について
(1) Aのみが債務者となる方法
債務者の交替による更改は,旧債務者の意思に反してすることができない(514条ただし書)。
免責的債務引受も,債務者が交替する点で更改と共通するから,同条ただし書を類推し,Bの意思に反してはできないと解する。
(2) AがBと共に債務を負う方法
Aは,Cと保証契約を締結し,保証債務を弁済することができる。
保証は主たる債務者の意思に反してもすることができるからである(462条2項参照)。
また,併存的債務引受はBに不利益を与えないから,Bの意思に反してもAC間の契約ですることができると解される(判例同旨・大判大正15年3月25日)。
この場合,AB間には連帯債務関係が生じるから(判例同旨・最判昭和41年12月20日),Aの弁済により本問債務も消滅する。
もっとも,これらの方法では,AはBに対する求償権を取得しうる(462条2項,442条1項)。
Bは資産がなく,求償を受ければ実質的な負担が残るから,Aは求償権を放棄する必要がある。
(3) Aが債権を取得する方法
Aは,Cから本問債務に係る債権(以下「本問債権」という。)を譲り受け(466条1項本文),Bに対して債務を免除することができる(519条)。
本問債権は金銭債権であり譲渡禁止特約の事情もないから譲渡可能であり,CからBへの通知により対抗要件も備わる(467条1項)。
また,Aが対価を支払い,Cが本問債務を免除する旨の合意をすることもできる。
免除は債権者の単独行為であり,債務者の意思に反しても効力を生じるからである。
(4) 債務者の意思を尊重することの合理性
このように,民法は,第三者弁済や更改では債務者の意思を尊重する一方,保証,債権譲渡及び免除では債務者の意思を問わない。
では,474条2項の制約は合理的であろうか。
確かに,恩恵を拒む債務者の意思を尊重することにも一定の意義がある。
しかし,免除によって債務者の意思に関係なく同じ結果を実現できる以上,弁済だけを制限する実益は乏しく,求償からの保護も462条2項のように求償範囲を限定すれば足りる。
よって,474条2項の合理性には疑問があり,同項の適用は,債務者の意思が明確な場合に限るなど慎重であるべきと解する。
本問では,Bの拒否は明確であるから,前述のとおり474条2項の制約が及ぶといえる。
3 以上より,合意を要しない場合,Bが反対の意思を維持する限りAはBの債務を消滅させることができないのに対し,合意を要する場合,保証若しくは併存的債務引受をして弁済し求償権を放棄する方法,又は債権譲受け若しくは免除の合意による方法によって,Bの債務を消滅させることができる。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,①民法474条以下の債権消滅原因についての横断的な理解,②保証・債権譲渡など債務者の意思に反する債務消滅を可能とする法律行為,③債権の消滅について債務者の意思を尊重することの合理性,の3点を見るとしている。
答案は,問題文の指示に従って「AC間の合意を要しない方法」と「要する方法」に分け,後者を,Aだけが債務者となる型,AがBと共に債務を負う型,Aが債権を取得する型の三つに整理した。
合意を要しない方法の中心は第三者の弁済である。
最高裁昭和39年4月21日判決は,改正前民法474条2項の利害関係を有する者とは,物上保証人,担保不動産の第三取得者などのように弁済をすることに法律上の利害関係を有する第三者をいうとした。
同判決は会社間の事案で,親族について判断したものではないため,答案は「判例に結論同旨」と表示し,父という事実上の関係では足りないとした。
合意を要する方法について,併存的債務引受が債務者の意思に反してもできることは,大審院大正15年3月25日判決が,併存的債務引受は債権の効力を確保する点で保証と異ならず,保証は債務者の意思に反してもできることを理由に認めている。
これに対し,免責的債務引受について,答案は更改の規定(改正前民法514条ただし書)の類推によりBの意思に反してはできないとした。
保証や併存的債務引受によって弁済した場合にAがBに対する求償権を取得する点を捉えて,求償権の放棄まで書いたのは,資産のないBの負担を実際に消すための配慮である。
出題趣旨③について,答案は,免除(民法519条)が債務者の意思を問わない単独行為であるのに,第三者の弁済や更改では債務者の意思が尊重されるという不均衡を軸に,第三者の弁済の制限の合理性に疑問を示した。
この評価は答案独自のものであり,特定の判例に依拠したものではない。
答案の弱点として,出題趣旨①の横断的な検討のうち,代物弁済と混同に触れていないことがある。
混同については,Aが債権を譲り受けても債権者と債務者が同一人に帰属しないため生じない,と一言で処理できる。
(5) 現行法とその後の裁判例
本問は,平成29年の民法改正で結論が大きく変わる問題である。
現行民法472条2項は,免責的債務引受を債権者と引受人となる者との契約によってすることができるとし,債権者が債務者に通知した時に効力を生ずるとしており,債務者の意思は要件になっていない。
現行民法514条1項も,債務者の交替による更改を債権者と新債務者との契約によってすることができるとし,改正前のただし書(旧債務者の意思に反するときはできない)を置いていない。
さらに,現行民法472条の3は免責的債務引受の引受人は債務者に対して求償権を取得しないとし,現行民法514条2項も更改後の債務者は更改前の債務者に対して求償権を取得しないとしている。
そのため,現行法の下では,AはCとの契約だけで,Bの意思に反してもBの債務を消滅させることができ,Bが求償を受けることもない。
第三者の弁済についても,現行民法474条2項は「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」は債務者の意思に反して弁済できないとしつつ,債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは弁済を有効としている。
また,同条3項により,同じ第三者は原則として債権者の意思に反しても弁済できない。
併存的債務引受は,現行民法470条2項で債権者と引受人となる者との契約によってすることができると明文化された。
第三者の弁済と債務引受・免除による方法は,他人の借金を代わりに返せるか―第三者弁済(民法474条)の要件,本人や債権者が拒む場合,求償と代位及び保証・債務引受・免除による方法で詳しく扱っている。
第4 刑法
1 第1問 共犯者間で異なる正当防衛の成否と方法の錯誤
(1) 問題文(問題PDF4頁)
甲は,Aに電話で罵倒されたため憤激し,A方に赴けば必ずけんかになるだろうと思いながら,この機会にAを痛めつけようと考え,こん棒を用意するとともに,友人の乙に,こん棒を持っていることは隠し,これからA方に話合いに行くが,けんかになったら加勢してほしいと依頼した。乙は,気が進まなかったが,けんかの加勢くらいはしてやろうと考えてこれを承諾し,一緒にA方に行った。甲は,Aを呼んでも出てこないので裏口に回り,乙は,玄関先で待っていたところ,出てきたAが乙を甲と取り違え,いきなり乙に鉄棒で殴り掛かってきた。そこで,乙は,Aの攻撃を防ぐため,玄関先にあったコンクリート片をAに向かって投げたところ,コンクリート片はAの顔に当たり,顔面擦過傷を負わせ,さらに,Aの背後にいたBの頭にも当たり,頭部打撲傷を負わせた。なお,コンクリート片を投げたとき,乙はBがいることを認識していなかった。
甲及び乙の罪責を論ぜよ(ただし,特別法違反の点は除く。)。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF4頁)
本問は,共犯者相互間において正当防衛の成否に関する事情が異なる点が問題となり,事実の錯誤に関する論点をも伴う事案を題材にして,これらに関する各論点についての理解度を問うのみならず,各論点相互の関連性を踏まえて,整合的に論述し得る論理的思考力を問うことを意図したものである。
(3) 模範答案
1 乙の罪責について
(1) Aに対する行為について
乙がコンクリート片をAに投げ,顔面擦過傷を負わせた行為は,傷害罪(204条)の構成要件に該当する。もっとも,正当防衛(36条1項)として違法性が阻却されないか。
ア 乙はけんかになれば加勢すると承諾しており,侵害を予期していたことから,急迫性が否定されないかが問題となる。
思うに,正当防衛は,公的救済を求める余裕のない緊急状況で私人に防衛を許す制度である。よって,侵害を予期しただけでは急迫性は失われず,その機会を利用し積極的に相手に加害行為をする意思で侵害に臨んだときに限り,急迫性が失われると解する(判例同旨・最決昭和52年7月21日)。
本問では,乙は「気が進まなかった」がけんかの加勢くらいはと承諾したにすぎず,自ら凶器も用意していない。しかも,Aは乙を甲と取り違え,いきなり鉄棒で殴り掛かってきたのであるから,乙に積極的加害意思はなく,急迫不正の侵害があったといえる。
イ また,乙は「Aの攻撃を防ぐため」に投げており,防衛の意思も認められる。さらに,鉄棒の攻撃に対し手近なコンクリート片を投げたにとどまるから,防衛手段として相当であり,「やむを得ずにした行為」といえる。
よって,正当防衛が成立し,Aに対する傷害罪は成立しない。
(2) Bに対する行為について
ア 乙はBの存在を認識していなかったことから,Bに対する故意(38条1項)が認められないのではないか。方法の錯誤の処理が問題となる。
思うに,故意責任の本質は,規範に直面し反対動機の形成が可能であったのにあえて行為に出た点に対する非難にあり,規範は構成要件の形で与えられている。よって,認識事実と発生事実が構成要件の範囲で符合すれば故意は阻却されないと解する(法定的符合説)。そして,複数の故意犯が成立しても観念的競合(54条1項前段)として処断されれば科刑上の不合理はないから,発生した客体の数だけ故意犯が成立すると解する(判例に結論同旨・最判昭和53年7月28日)。
本問では,乙は「人」を傷害する認識で「人」であるBを傷害しているから,Bに対する傷害罪の構成要件に該当する。
イ では,違法性は阻却されるか。Bは不正の侵害者でないから,正当防衛は成立しない。また,乙はBを認識しておらず,危難をBに転嫁して避ける行為とはいえないから,緊急避難(37条1項本文)も成立しない。
ウ もっとも,前述のとおり故意を構成要件の範囲で抽象化する以上,正当化事情の認識も同様に抽象化して評価すべきである。そして,乙は「人」の不正な攻撃に対する防衛行為として投げていると認識しており,主観的には正当防衛の事実を認識していた。
よって,規範に直面しているとはいえず,誤想防衛の一種として責任故意が阻却されると解する。また,鉄棒でいきなり襲われた状況でAの背後に注意を払うことは期待し難く,過失傷害罪(209条)も成立しない。
(3) 以上より,乙は何ら罪責を負わない。
2 甲の罪責について
(1) 甲は実行行為をしていないが,乙との間でけんかになれば加勢するという暴行(208条)の共謀があり,乙がこれに基づき暴行を加えている。よって,暴行罪の共謀共同正犯が成立する(判例同旨・最大判昭和33年5月28日)。
そして,傷害罪は暴行罪の結果的加重犯であり,基本犯には重い結果発生の危険が内在するから,A及びBの傷害についても傷害罪の共同正犯(204条・60条)の構成要件に該当する。Bについては前述した法定的符合説による。
(2) もっとも,実行者乙に正当防衛が成立する以上,甲の違法性も阻却されるのではないか。共同正犯者間で正当防衛の成否が異なり得るかが問題となる。
思うに,共同正犯は各人が他人の行為を利用して自己の犯罪を実現するものであり,急迫性は侵害に臨む各人の意思によって左右される。よって,正当防衛の成否は各共同正犯者につき個別に判断すべきと解する(最決平成4年6月5日〔過剰防衛の事案〕の趣旨)。
本問では,甲は「必ずけんかになるだろう」と予期しながら,「この機会にAを痛めつけよう」とこん棒まで用意して臨んでいる。乙への攻撃もAが乙を甲と取り違えたためであり,甲の予期した侵害にほかならない。よって,甲については急迫性が欠け,正当防衛は成立しない。
(3) 以上より,甲はA及びBに対する傷害罪の共同正犯の罪責を負い,両者は乙の一個の行為によるから観念的競合(54条1項前段)となる。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,共犯者相互間で正当防衛の成否に関する事情が異なる点と,事実の錯誤を挙げた上で,各論点相互の関連性を踏まえた「整合的」な論述を求めている。
答案は,乙→甲の順に検討し,乙の正当防衛が甲に及ぶかという形で両者をつないだ。
乙のAに対する行為について,最高裁昭和52年7月21日決定は,侵害の急迫性は,当然又はほとんど確実に侵害が予期されただけで失われるものではないが,その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは失われるとした。
「気が進まなかった」乙には積極的加害意思がなく,急迫性は失われない。
乙のBに対する行為が本問の錯誤の論点である。
答案は,法定的符合説と数故意犯説(最高裁昭和53年7月28日判決と結論同旨)でBに対する傷害罪の構成要件該当性を認めた上で,正当防衛・緊急避難を否定し,誤想防衛の一種として責任故意を阻却した。
故意を構成要件の範囲で抽象化するなら,正当化事情の認識も同じ範囲で抽象化して評価すべきである,という接続が,出題趣旨のいう「各論点相互の関連性」に当たる。
Bとの関係を緊急避難とする構成や正当防衛とする構成もあり,いずれを採るかで結論が分かれ得る。
甲について,練馬事件の最高裁昭和33年5月28日大法廷判決により暴行の共謀共同正犯を認め,傷害の結果について傷害罪の共同正犯とした。
正当防衛の成否を共同正犯者ごとに判断する点については,最高裁平成4年6月5日決定が,共同正犯が成立する場合における過剰防衛の成否は共同正犯者の各人につきそれぞれの要件を満たすかどうかによって判断すべきとし,侵害を予期してその機会を利用し反撃を加えさせようとして侵害に臨んだ被告人については急迫性を欠くとした。
過剰防衛の事案であるため,答案は「趣旨」として正当防衛に及ぼした。
甲は「この機会にAを痛めつけよう」とこん棒まで用意しており,急迫性を欠く典型である。
(5) 現行法とその後の裁判例
出題と同じ年の大阪高裁平成14年9月4日判決は,防衛行為が侵害者以外の者に当たった事案で,いわゆる誤想防衛の一種として,過失責任を問い得ることは格別,故意責任を肯定することはできないとした。
答案の乙とBの関係の処理は,この判決と同じ方向である。
防衛行為が第三者に当たった場合の刑事・民事の責任は正当防衛の反撃が近くにいた人に当たったら―大阪高裁平成14年9月4日判決,誤想防衛の一種,過失犯及び民事上の責任で,共犯と正当防衛は共同正犯・幇助犯と正当防衛―急迫性・防衛意思を関与者ごとに判断する方法で扱っている。
2 第2問 詐取された宝石の売却と盗品等関与罪・横領罪・詐欺罪
(1) 問題文(問題PDF4頁)
Aは,宝石(時価100万円)を詐欺によりBから取得したが,その事情を秘して,宝石を100万円で売却することを甲に依頼した。甲は,宝石を受領した当初は,それがだまし取られたものであることを知らなかったところ,その後,偶然その事情を知るに至ったが,そのことを秘してCに売却し,代金100万円を受け取った。甲は,その代金のうち30万円を自己の借金の返済のために使ってしまい,Aには,「70万円でしか売れなかった。」と言って納得させ,残りの70万円を渡した。
甲の罪責を論ぜよ。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF4頁)
本問は,詐欺により取得した宝石の売却の依頼に始まる事例を素材として,財産犯,殊に盗品等に関する罪,横領罪,詐欺罪の成立要件の理解を問うものであるが,あわせて,成立する犯罪の相互関係の把握も重視している。解答に当たっては,事例の的確な法的把握・分析を前提として,論理的に首尾一貫した論述を行うことが要求される。
(3) 模範答案
1 宝石をCに売却し代金を受領した行為について
(1) 甲は,Aの依頼に基づき,宝石がBからだまし取られた物と知った後に,これをCに売却している。そこで,盗品等有償処分あっせん罪(256条2項)が成立しないか。
本問宝石は,Aが詐欺によりBから取得した物であるから,「財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」(以下「盗品等」という。)に当たる。また,本犯者Aのために売却という有償の処分を媒介周旋する行為は,「あっせん」に当たる。
もっとも,甲は受領時には事情を知らなかった。しかし,故意はあっせん行為の時に存すれば足りるところ,甲は売却時には盗品等であることを認識していた。
よって,甲には盗品等有償処分あっせん罪が成立する。
なお,知情後売却までの間,Aのために宝石を保管し続けた点は保管罪に当たる(判例同旨・最決昭和50年6月12日)。もっとも,同一の盗品等への同一の本犯者のための一連の関与であるから,有償処分あっせん罪に包括して評価される。
(2) 次に,甲は,事情を秘してCに宝石を売却し,100万円の交付を受けている。そこで,Cに対する詐欺罪(246条1項)が成立しないか。
ア 確かに,事情を秘した売却はあっせんに伴う行為として同罪に吸収されるとも思える。しかし,同罪はBの追求権を,詐欺罪は買主Cの財産を保護するものであり,被害者及び法益を異にするから,詐欺罪の成否は別途検討すべきである。
イ また,Cは時価相当の100万円を支払っており,財産的損害がないとも思える。しかし,詐欺罪は個別財産に対する罪であるから,交付の判断の基礎となる重要な事項を偽り,真実を告げれば交付しなかった相手方に財物を交付させれば,相当対価を提供しても本罪が成立すると解する(判例同旨・最決昭和34年9月28日)。
本問では,宝石が詐取物であれば,Cは,Bから取消し(民法96条1項)に基づく返還を求められ,即時取得(民法192条)の成否をめぐる紛争に巻き込まれるおそれがある。そうすると,盗品等でないことは売買の基礎となる重要な事項であり,事情を知れば,Cは買い受けなかったといえる。そのため,甲には信義則上これを告知する義務があり,これを秘した売却は欺罔行為に当たる。そして,Cは錯誤に陥って100万円を交付している。
よって,詐欺罪が成立する。
(3) 両罪は,Cへの一個の売却行為によるから,観念的競合(54条1項前段)となる。
2 代金のうち30万円を借金の返済に使った行為について
(1) 甲は,Aのために受領した代金のうち30万円を自己の借金の返済に費消している。そこで,横領罪(252条1項)が成立しないか。
甲はAの委託に基づき代金を受領し保管していたから,代金は甲の占有する委託者Aの物である。そして,これを自己の借金の返済に費消した行為は,不法領得の意思の発現たる「横領」に当たる。
(2) もっとも,代金は盗品等の売却という公序良俗(民法90条)に反する取引により得られたものであり,Aは民法708条により返還を請求できないから,「他人の物」に当たらないのではないか。
確かに,民法上保護されない利益を刑法で保護するのは法秩序の統一に反するとも思える。しかし,刑法は,民法と目的を異にし,所有権とともに委託信任関係を保護するものである。よって,横領罪の成立には,委託者が民法上返還を請求し得ることを要しないと解する(判例同旨・最判昭和23年6月5日,最判昭和36年10月10日)。
しかも,本問代金はCから受領したもので,Aから甲への「給付」でもない。
したがって,横領罪が成立する。
3 Aを納得させて70万円のみを渡した行為について
甲は,Aに「70万円でしか売れなかった」と言って納得させている。そこで,30万円の返還を免れたとして,2項詐欺罪(246条2項)が成立しないか。
思うに,債務の支払を免れたといえるには,債権者を欺いて債務免除の意思表示をさせることを要すると解する(判例同旨・最決昭和30年7月7日)。
本問では,Aは代金が70万円であったと誤信したにとどまり,30万円の請求権の存在自体を知らないから,免除の意思表示をしたとはいえない。
仮に処分行為を認めても,同一の30万円について同一の被害者Aへの返還を免れるにすぎず,横領罪で評価済みである(共罰的事後行為)。
よって,2項詐欺罪は成立しない。
4 以上より,甲は,盗品等有償処分あっせん罪と詐欺罪の観念的競合,及び横領罪の罪責を負い,両者は別個の行為によるから併合罪(45条前段)となる。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,盗品等に関する罪,横領罪及び詐欺罪の成立要件に加えて,成立する犯罪の相互関係の把握を「重視」するとしている。
答案は,甲の行為を,Cへの売却と代金の受領,30万円の費消,Aへの虚偽の報告の三つに分け,最後に罪数をまとめた。
売却の段階では,甲が事情を知ったのが宝石の受領後である点が問題になる。
最高裁昭和50年6月12日決定は,盗品であることを知らずに保管を開始した後,盗品であることを知るに至ったのに,なおも本犯のために保管を継続するときは,盗品の保管(当時の条文では寄蔵)に当たるとした。
答案は,あっせんの故意は行為の時にあれば足りるとして有償処分あっせん罪を認め,知情後の保管をこれに包括して評価した。
Cに対する詐欺罪は,答案の中で最も結論が分かれ得る部分である。
答案は,最高裁昭和34年9月28日決定の,真実を告知すれば相手方が金員を交付しない場合に,価格相当の商品を提供しても詐欺罪が成立するという判断によって詐欺罪を認めた。
もっとも,同決定は商品の効能等について誇大な事実を告げた作為の事案であり,本問は事情を秘した事案である。
また,Cが民法上の保護(即時取得や詐欺による取消しの第三者保護)によって権利を取得し得ることを重視すれば,財産的損害や告知義務を否定して詐欺罪を不成立とする構成も十分に成り立つ。
横領罪について,最高裁昭和23年6月5日判決は,横領罪の目的物は犯人の占有する他人の物であることを要件とし,必ずしも物の給付者において民法上返還を請求し得べきものであることを要件としないとした。
最高裁昭和36年10月10日判決は,窃盗犯人から盗品の売却のあっせんを依頼されて交付を受けた者が売却代金を着服した事案で横領罪の成立を認めており,本問に最も近い判例である。
Aへの虚偽の報告について,最高裁昭和30年7月7日決定は,刑法246条2項により債務の支払を免れたとするには,債権者を欺いて債務免除の意思表示をさせることを要するとした。
答案はこれにより2項詐欺罪を否定したが,「納得させ」たことを請求の断念という処分行為とみて2項詐欺罪を認め,横領罪との包括一罪とする構成もあり得る。
(5) 現行法とその後の裁判例
刑法256条は現行法でも同じ構成であり,令和7年6月1日施行の改正で,法定刑の「懲役」が「拘禁刑」に改められている。
委託の経緯に法令違反が絡む場合の横領罪について,出題後の最高裁令和4年4月18日判決は,農地の売買で譲受人の委託に基づき第三者の名義を用いて農地法所定の許可が取得され,その第三者に所有権移転登記がされた場合に,その第三者が土地を不法に領得したときは横領罪が成立するとした。
不法原因給付と横領罪・詐欺罪の判例は違法な目的で預かったお金を使い込むと横領罪になるか―不法原因給付(民法708条)と横領罪・詐欺罪の判例で,盗品であることを後から知った場合の罪は盗品だと後から知ったとき―盗品等に関する罪の成立時期と,中古品の買取り・委託販売の注意点で扱っている。
第5 商法
1 第1問 合併比率が不当なときの少数株主の手段
(1) 問題文(問題PDF3頁)
株式会社A社は,株式会社B社の総株主の議決権の60パーセントを有する株主であるが,A社及びB社は,A社を存続会社,B社を消滅会社として合併をすることとなった。
A社及びB社は,ここ10年間ほど1株当たりの純資産額も1株当たりの配当もほぼ同じであったが,合併契約書におけるB社株主に対するA社新株の割当てに関する事項(合併比率)は,B社株式3株に対してA社株式1株の割合となっている。なお,合併交付金はない。
B社の株主総会においては,総株主の議決権の70パーセントを有する株主が合併に賛成,総株主の議決権の30パーセントを有する株主が合併に反対であり,合併契約書は承認された。
B社の株主であるXは,合併比率が不当だと考えているが,株主総会における合併契約書の承認の前後を通じて,どのような手段を採ることができるか。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF3頁)
本問は,親会社が子会社を吸収合併するに当たり,合併比率を不当と考える子会社の少数株主が,自己の権利の保護を図るために商法上利用し得る手段に関するものである。具体的には,少数株主に認められる合併比率の不当性等を知るための情報の収集方法,少数株主の株式買取請求権の内容,合併比率の不当性と合併無効の訴えにおける無効事由との関係,子会社の合併承認決議における親会社の議決権行使と株主総会決議取消事由との関係等に関する理解を問うている。
(3) 模範答案
1 合併契約書の承認前に採りうる手段について
(1) 情報の収集
合併比率の当否を判断するには,その根拠を知る必要がある。
そこで,Xは,総会の2週間前から本店に備え置かれる合併契約書,株式の割当てに関する理由書面及び各社の貸借対照表等を閲覧し,謄本の交付を求めることができる(408条ノ2第1項・3項)。
また,総会では,取締役及び監査役に合併比率の算定根拠の説明を求めることができる(237条ノ3第1項)。
もっとも,これらは判断の材料を得る手段にすぎず,承認決議の効力に影響しないから,Xの保護としては不十分である。
(2) 差止め
違法行為差止請求(272条)は会社に回復すべからざる損害を要件とするところ,不利益を受けるのはB社ではなくその株主であるから,困難である。
(3) 反対の意思の通知
そこで,Xは,承認後の株式買取請求に備え,総会に先立ち書面で合併に反対する意思をB社に通知し,かつ,総会で反対しておくべきである(408条ノ3第1項)。
2 合併契約書の承認後に採りうる手段について
(1) 株式買取請求
1(3)の要件を満たしたXは,決議の日から20日以内に,承認決議がなければ有したであろう公正な価格での株式の買取りを請求でき,協議が調わなければ裁判所に価格の決定を請求できる(408条ノ3第1項,同条2項・245条ノ3第1項・4項)。
もっとも,これは会社から退出する手段にすぎず,株主の地位にとどまって不当な合併比率を是正する救済にはならない。
(2) 決議取消しの訴え
Xは,子会社B社の承認決議について,親会社A社の議決権行使による著しく不当な決議であるとして,取消しを請求できないか(247条1項3号)。
ア 特別利害関係人とは,株主としての資格を離れた個人的な利害関係を有する者をいうと解される。
本問のA社は,B社の総株主の議決権の60パーセントを有する親会社であり(211条ノ2第1項),しかも合併の相手方として,B社株主への割当てが少ないほど利益を受ける地位にあるから,特別利害関係人に当たる。
イ では,本問決議は著しく不当か。
思うに,合併比率は,消滅会社の株主が有していた株式の価値を存続会社の株式に置き換える基準であるから,両社の株式の価値に照応して定められるべきである。
もっとも,株式の価値は諸事情から種々の方法で算定され,一義的には定まらない。
よって,企業価値の測定として許される範囲を超える合併比率を定めた決議は,著しく不当であると解する(東京地判平成元年8月24日参照)。
本問では,両社は約10年間,1株当たりの純資産額も配当もほぼ同じであったから,相当な合併比率はおおむね1対1である。
それなのに,B社株式3株にA社株式1株を割り当て,合併交付金もないから,B社株主は株式の価値の約3分の2を失い,それが親会社A社側に移る。
したがって,本問決議は著しく不当といえる。
ウ また,賛成70パーセントのうち60パーセントはA社であり,A社を除けば賛成は10パーセントにとどまり特別決議(408条4項・343条)は成立しなかったから,本問決議はA社の議決権行使に「因リテ」されたといえる。
なお,裁量棄却(251条)は3号の場合には適用されない。
よって,Xは,決議の日から3か月以内に取消しの訴えを提起できる(248条1項)。
(3) 合併無効の訴え
合併の登記(416条1項・102条)の後は,A社の株主となったXは,合併の日から6か月以内に合併無効の訴えを提起できる(415条1項・2項,同条3項・105条1項)。
では,合併比率の不当それ自体が無効事由となるか。
思うに,合併の無効は多数の利害関係人に不測の損害を及ぼすから,法的安定の要請が大きい。
また,反対株主は,株式買取請求権により経済的損失を回避できる。
よって,合併比率の不当それ自体は無効事由とならないと解する(東京地判平成元年8月24日同旨)。
もっとも,承認決議(408条1項)は合併の要件であるから,その取消事由は合併無効事由となり,合併の効力発生後は,取消しの訴えは合併無効の訴えに吸収されると解する。
ただし,決議の効力を早期に確定させる248条1項の趣旨から,取消事由は決議の日から3か月以内に主張することを要する。
したがって,Xは,その期間内に,2(2)の取消事由を理由として合併無効の訴えを提起し,又は提起済みの取消しの訴えを変更して,合併の無効を主張できる。
無効判決は第三者にも効力を有するが,遡及しない(415条3項・109条1項・110条)。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,①合併比率の不当性等を知るための情報の収集方法,②株式買取請求権の内容,③合併比率の不当性と合併無効事由との関係,④親会社の議決権行使と決議取消事由との関係,の4点を挙げている。
答案は,問題文の「承認の前後を通じて」に合わせて時系列で見出しを立て,承認前に①と買取請求の準備を,承認後に②④③を配置した。
④について,答案は,親会社A社を特別利害関係人とし,決議が「著しく不当」か,A社の議決権行使によって決議が成立したか,を分けて検討した。
著しく不当かの基準として,東京地裁平成元年8月24日判決は,合併比率は微妙な企業価値の測定として許される範囲を超えない限り著しく不当とはいえないとしている。
本問では,1株当たりの純資産額も配当も10年間ほぼ同じであったのに3対1の比率とされており,この基準の下でも著しく不当と評価しやすい事案である。
また,賛成70パーセントのうち60パーセントがA社であることから,A社を除けば特別決議が成立しなかったことを示し,議決権行使と決議の成立との結び付きを数で示した。
③について,同じ東京地裁平成元年8月24日判決は,合併比率が不当であっても,承認決議に反対した株主は株式買取請求権を行使できることなどから,合併比率の不当又は不公正それ自体は合併無効事由にならないとした。
同判決は,控訴審の東京高裁平成2年1月31日判決で控訴棄却となり,上告審の最高裁平成5年10月5日判決で上告棄却となった(いずれも裁判所ウェブサイト未掲載)。
答案は,比率の不当それ自体は無効事由にならないとしつつ,承認決議の取消事由は合併無効事由になると構成して,Xの救済の道を残した。
取消事由を合併無効の訴えの中で主張する場合に決議の日から3か月の制限が及ぶとした点は,答案の整理である。
決議取消しの訴えについて,最高裁昭和51年12月24日判決は,出訴期間の経過後に新たな取消事由を追加主張することは許されないとしており,答案はこの考え方を無効の訴えにも及ぼしたものである。
(5) 現行法とその後の裁判例
現行の会社法では,答案の条文は次のように置き換わる。
消滅会社の事前開示は会社法782条,株主総会での説明義務は同法314条,承認決議は同法783条1項,反対株主の株式買取請求は同法785条(請求期間は効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで),価格の決定の申立ては同法786条2項,決議取消しの訴えは同法831条1項3号,吸収合併の無効の訴えは同法828条1項7号・2項7号である。
無効判決が将来に向かってのみ効力を失わせる点は,同法839条に定められている。
出題当時の商法には合併の差止請求の規定がなかったが,平成26年の会社法改正で吸収合併等をやめることの請求(会社法784条の2)が設けられた。
もっとも,同条2号の対価の著しい不当を理由とする差止めは略式合併の場合に限られ,議決権の60パーセントを有するにとどまる本問のA社については,同条1号の法令・定款違反を理由とする差止めを検討することになる。
株式買取請求の「公正な価格」について,出題後の最高裁平成23年4月19日決定(吸収分割の事案)は,吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生じない場合には,原則として,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいうとした。
最高裁平成24年2月29日決定(株式移転の事案)は,企業価値の増加が生じない場合以外の場合には,株式移転比率が公正なものであったならば株式買取請求がされた日においてその株式が有していると認められる価格をいうとした。
本問のように比率が不当と考える少数株主にとっては,後者の考え方が,買取請求によって比率の不当を価格の面で是正する手掛かりになる。
合併比率が不公正なときの手段は,吸収合併の合併比率が不公正なときの少数株主の手段―事前開示,差止め,株式買取請求,決議取消し及び合併無効の訴えで詳しく扱っている。
2 第2問 手形の変造・交付欠缺と遡求
(1) 問題文(問題PDF3頁)
Aは,平成14年4月1日,Bに対し,同年5月31日を満期日とする約束手形を振り出した。Bは,同年4月10日,白地式裏書の方式で,この手形に裏書人(第1裏書人)として署名した上,Cに手渡すべく,この手形をBの使用人Dに託した。ところが,Dは,無断でこの手形の満期日の記載を「平成14年6月30日」と書き換えた上,Cに手渡さないまま,同年6月10日,この手形に自ら裏書人(第2裏書人)として署名し,これをEに譲渡した。Eは,平成14年7月1日,この手形を支払のために呈示したが,Aによりその支払を拒絶された。
1 Eは,Bに対し,手形上の責任を追及することができるか。
2 Eは,Dに対し,手形上の責任を追及することができるか。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF3頁)
本問は,手形法に関する基本的知識を前提として,問題に示された事例について,どのような法的問題が生じているのかを明らかにし,事例への具体的当てはめを通じて,各当事者に対する手形責任を問い得る法律構成の検討を求めるものである。具体的には,裏書人の責任発生の要件,変造手形に係る署名者の責任,遡求権保全の要件,手形行為独立の原則等に関する理解に基づき,手形上の権利の存否及び帰属に関する具体例に対する応用力を問うものである。
(3) 模範答案
1 小問1について
(1) Eは,Bに対し,裏書人の担保責任(77条1項1号・15条1項)に基づき遡求することが考えられる。
前提として,Dは交付を託されたにすぎない無権利者であるが,Bの白地式裏書に次いでDの裏書があるから裏書は連続する(77条1項1号・16条1項)。よって,Eは,悪意又は重大な過失がない限り,手形上の権利を善意取得する(同16条2項)。
(2)ア もっとも,Bの裏書はCに交付される前に流通に置かれている。そこで,Bに裏書人としての責任が発生するか,交付欠缺が問題となる。
思うに,手形行為は手形の授受によって行われる契約であり,交付がなければ手形債務は成立しないのが原則である(交付契約説)。しかし,これを貫くと,有効な手形の外観を信頼した取得者に不測の損害を与え,手形の流通を害する。
よって,①有効な手形債務が成立したかのような外観があり,②その作出につき帰責性がある者は,③外観を善意無重過失で信頼して取得した者に対し,外観どおりの責任を負うと解する(権利外観理論。振出につき判例同旨・最判昭和46年11月16日)。
イ 本問では,Bの署名した裏書が手形上に存在し,外観があるといえる(①)。Bは「Cに手渡すべく」流通に置く意思で署名し,自己の使用人Dに託しているから,帰責性があるといえる(②)。そして,Eの悪意・重過失をうかがわせる事情はない(③)。
よって,Bは,Eに対し,裏書人としての責任を負い得る。
(3)ア では,Bはいかなる文言に従って責任を負うか。Dの無断の書換えは変造に当たるところ,変造前の署名者は原文言に従って責任を負う(77条1項7号・69条)。
確かに,Bが権利外観理論により責任を負う以上,Eが信頼した変造後の満期に従うべきとも思える。しかし,Bに帰責性があるのは自ら作出した裏書の外観についてであり,変造後の満期の外観はDが作出したものにすぎない。
よって,Bは,原文言の満期である平成14年5月31日に従って責任を負う。
イ そうすると,Eは,原文言の満期を基準に,支払をなすべき日又はこれに次ぐ2取引日内に呈示しなければ,Bに対する遡求権を保全できない(77条1項3号・38条1項,77条1項4号・53条1項。判例同旨・最判昭和50年8月29日)。
本問では,5月31日は金曜日で,6月1日(土曜日)と2日(日曜日)は休日であるから(87条及び同条に基づく政令),呈示期間は6月4日までである。ところが,Eの呈示は7月1日であり,期間を徒過している。
確かに,変造を知り得なかったEには酷とも思える。しかし,69条は変造の危険を変造前の署名者に負わせない趣旨であり,変造は不可抗力(77条1項4号・54条1項)にも当たらない。
よって,Eは,Bに対する遡求権を失う。
(4) したがって,Eは,Bに対し,手形上の責任を追及することができない。
2 小問2について
(1) Eは,Dに対し,裏書人の担保責任を追及することが考えられる。
もっとも,Dは無権利者であり,前提となるBの裏書も交付を欠く。そこで,手形行為独立の原則(77条2項・7条)が裏書にも適用されるかが問題となる。
思うに,同原則は,手形取引の安全のため,各署名者が先行行為の有効性と切り離して手形の文言どおりの債務を負うことを定めた特則である。そして,裏書の担保責任も手形の流通を確保するために法が認めたものであり,同じ要請が妥当する。
よって,同原則は裏書にも適用され,裏書人の責任は取得者の悪意によっても左右されないと解する(判例同旨・最判昭和33年3月20日)。なぜなら,責任の根拠は取得者の信頼ではなく,裏書人自身の署名にあるからである。
本問では,Dは,白地式裏書の手形を単なる引渡しで譲渡できた(77条1項1号・14条2項3号)のに,あえて自ら裏書人として署名している。よって,Dは担保責任を負う(77条1項1号・15条1項)。
(2) そして,Dは変造後の署名者であるから,変造後の満期である平成14年6月30日に従って責任を負う(77条1項7号・69条)。
本問では,6月30日は日曜日であるから,次の取引日である7月1日が支払をなすべき日となり(77条1項9号・72条1項),同日の呈示によって遡求権は保全されている。
(3) したがって,拒絶証書の作成又はその免除(77条1項4号・46条1項)があれば,Eは,Dに対し,手形上の責任を追及することができる。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,裏書人の責任発生の要件,変造手形に係る署名者の責任,遡求権保全の要件及び手形行為独立の原則を挙げている。
答案は,小問1でBについて前三者を,小問2でDについて手形行為独立の原則と変造後の署名者の責任を扱った。
Bの責任発生について,最高裁昭和46年11月16日判決は,流通に置く意思で約束手形に振出人として署名した者は,手形が盗難・紛失等によって意思によらずに流通に置かれた場合でも,連続した裏書のある手形の所持人に対しては,悪意又は重大な過失によって手形を取得したことを主張立証しない限り,振出人としての責任を免れないとした。
振出人についての判断であるため,答案は「振出につき判例同旨」と表示して裏書に及ぼした。
小問1の結論を分けるのは変造である。
手形法69条により,変造前の署名者は原文言に従って責任を負い,最高裁昭和50年8月29日判決は,満期が裏書後に裏書人の同意なく変造された場合,所持人が裏書人に遡求権を行使するには変造前の満期に従って保全手続をとらなければならないとした。
原文言の満期は平成14年5月31日(金曜日)であり,翌6月1日と2日は土曜日と日曜日であるから,支払のための呈示期間は,支払をなすべき日とこれに次ぐ2取引日である6月4日(火曜日)までとなる。
7月1日の呈示はこの期間を過ぎているため,EはBに遡求できない。
曜日を実際に確かめて期間を数えることが,出題趣旨のいう「具体的当てはめ」に当たる。
小問2について,最高裁昭和33年3月20日判決は,手形法7条による裏書人の手形上の責任は取得者の悪意によって消長を来さないとした。
Dは変造後に署名しているため変造後の文言(満期6月30日)に従って責任を負い,6月30日が日曜日であることから次の取引日である7月1日が支払をなすべき日となり,同日の呈示で遡求権は保全されている。
問題文には拒絶証書の作成又は免除の記載がないため,答案は結論をそれを条件とする形にした。
答案の弱点として,振出人に関する判例を裏書に及ぼす理由が短いこと,変造者D自身が裏書人となった点の評価が薄いことがある。
(5) 現行法とその後の裁判例
答案で使った手形法の条文は,現行法でも同じ条番号で維持されている。
一方,約束手形の利用の実務は出題当時から大きく変わっており,手形交換の廃止を含む支払呈示の現状は,約束手形の支払呈示と裏書人への遡求―呈示期間,休日,拒絶証書,満期の書換え及び手形交換の廃止で扱っている。
第6 民事訴訟法
1 第1問 民事訴訟で手続が公開されない場合
(1) 問題文(問題PDF5頁)
民事訴訟において手続が公開されない場合について説明せよ。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF5頁)
公開主義は,民事訴訟上の原則とされているが,その意味内容を深く理解しているかを問う問題である。公開主義は,憲法を受けて,民事訴訟法上,必要的口頭弁論,絶対的上告理由として現出することを踏まえた上で,公開が必要とされる根拠を論ずべきである。そして,民事訴訟法全体を鳥瞰して,弁論準備手続等の手続が公開されない場合を複数指摘し,そこではなぜ公開でなくてよいかの根拠等を検討してもらうことが出題の意図である。
(3) 模範答案
1 公開主義の意義と根拠
民事訴訟における公開主義とは,訴訟の審理及び判決を一般国民が傍聴できる状態で行う原則をいい(一般公開),当事者に審理への立会いを保障する当事者公開とは区別される。
公開主義は,憲法82条1項を受けて,民事訴訟法上,必要的口頭弁論の原則(87条1項本文)として現れ,口頭弁論の公開の規定の違反は絶対的上告理由とされる(312条2項5号)。
では,公開が必要とされる根拠は何か。
思うに,その根拠は,裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し,ひいては裁判に対する国民の信頼を確保する点にある(判例同旨・最大判平成元年3月8日)。
また,公開の要請が及ぶのは,実体的権利義務の存否を終局的に確定する純然たる訴訟事件の対審及び判決である(判例同旨・最大決昭和35年7月6日)。
よって,手続が公開されないのは,①口頭弁論の公開が停止される場合と,②口頭弁論以外の手続であって,非公開としても裁判の公正と国民の信頼が損なわれない場合であると解する。
2 口頭弁論の公開停止(①)
裁判官の全員一致で公序良俗を害するおそれがあると決した場合には,対審を公開しないことができる(憲法82条2項本文)が,判決の言渡しは公開される(裁判所法70条)。
もっとも,私生活上の秘密や営業秘密が争点となる訴訟で,かかる秘密の保護を理由に公開を停止できるかが問題となる。
思うに,公開によって当事者が主張立証を断念すれば,適正な裁判自体が損なわれ,公開の趣旨にかえって反する。
よって,かかる場合も「公の秩序」を害するおそれがあるとして,公開を停止できると解する。
確かに,私生活上の秘密は憲法13条の保障を受けるから,憲法82条2項ただし書により常に公開を要するとも思える。
しかし,ただし書の趣旨は,国家による人権の制約が問題となる事件について公開による監視を確保する点にあり,私人間の秘密を保護するための停止はこれに当たらない。
そして,公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録の閲覧は,当事者及び利害関係を疎明した第三者に限られる(91条2項)。
なお,公開停止に至らない場合でも,訴訟記録中の秘密記載部分の閲覧等を当事者に限る制度がある(92条1項)。
3 口頭弁論以外の手続(②)
(1) 争点整理手続
弁論準備手続は,当事者双方が立ち会うことができる期日に行われ,傍聴は裁判所が相当と認める者等に限られるから(169条),当事者公開にとどまる。
なぜなら,争点整理には非公開の場での率直な意見交換が有益である上,取り調べることができる証拠は文書等に限られ(170条2項),その結果は口頭弁論で陳述される(173条)から,公開の趣旨は害されないからである。
書面による準備手続(175条)も,遠隔地の当事者等の便宜のための書面による整理であり,終結後の口頭弁論で証明すべき事実が確認される(177条)から,公開を要しない。
(2) 期日外の釈明
期日外の釈明(149条1項)は口頭弁論外で行われるが,重要な変更を生じ得る事項は相手方に通知される(同条4項)から,公正は害されない。
(3) 証拠調べ
裁判所外の証拠調べ(185条1項)や受命裁判官等による証人尋問(195条)は公開されない。
なぜなら,これらは直接主義の例外として法定の場合に限って許され,その結果は口頭弁論に顕出されて判断資料となるからである。
また,文書提出義務の除外事由を判断するためのインカメラ手続(223条6項)も公開されず,何人も提示された文書の開示を求めることができない。
なぜなら,公開すれば保護すべき秘密が害され,除外事由を設けた趣旨が没却されるからである。
(4) 和解・決定手続
和解の期日(89条)は,当事者の自主的な解決の場であり,公開を要しない。
決定で完結すべき事件では,口頭弁論をするか否かは裁判所が定め,審尋も公開されない(87条1項ただし書・2項)。
なぜなら,公開が要請されるのは純然たる訴訟事件の裁判に限られるところ(破産宣告決定につき判例同旨・最大決昭和45年6月24日),決定手続は訴訟手続上の派生的事項等を対象とし,これに当たらないからである。
4 以上より,民事訴訟において手続が公開されないのは,①口頭弁論の公開が停止される場合と,②争点整理手続,期日外の釈明,裁判所外等の証拠調べ,インカメラ手続,和解及び決定手続の場合であり,いずれも公開の趣旨を害しない限度で認められている。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,公開主義が憲法を受けて必要的口頭弁論と絶対的上告理由として現れることを踏まえて公開の根拠を論じ,民事訴訟法全体を見渡して公開されない手続を複数挙げ,なぜ公開でなくてよいかを検討することを求めている。
一行問題であり,答案は,冒頭で公開主義の意義と根拠を示した上で,公開されない場合を「口頭弁論の公開停止」と「口頭弁論以外の手続」の二つに分け,後者を手続ごとに並べた。
公開の根拠について,レペタ事件の最高裁平成元年3月8日大法廷判決は,憲法82条1項の趣旨を「裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある」とした。
公開の要請が及ぶ範囲について,最高裁昭和35年7月6日大法廷決定は,純然たる訴訟事件の裁判は公開の原則の下における対審及び判決によるべきとし,最高裁昭和45年6月24日大法廷決定は,破産宣告決定等は口頭弁論を経ないでされても憲法82条に違反しないとした。
答案は,この二つの判断を,公開が要請される範囲の外側に決定手続があるという整理に使った。
口頭弁論以外の手続については,公開されない理由を手続ごとに示すことが出題趣旨の「なぜ公開でなくてよいかの根拠等」に当たる。
答案は,弁論準備手続は結果が口頭弁論で陳述されること,裁判所外の証拠調べ等は結果が口頭弁論に顕出されること,インカメラ手続は公開すれば保護すべき秘密が害されること,というように,手続ごとに理由を分けている。
答案のうち,私生活上の秘密の保護を理由とする公開停止を「公の秩序」を害するおそれとして認める部分は,出題当時には明文の手当てがなく,解釈論として書いたものである。
(5) 現行法とその後の裁判例
出題の翌年に制定された人事訴訟法(平成15年法律第109号)は,22条で当事者尋問等の公開停止を定めており,現行の特許法105条の7にも同様の規定がある。
また,令和4年の民事訴訟法改正(IT化)で訴訟記録の電子化が進み,答案の91条2項に当たる閲覧制限は,現行法では非電磁的訴訟記録について91条2項,電磁的訴訟記録について91条の2第4項(91条2項を準用)に定められている。
民事裁判で公開されない手続と公開停止は,民事裁判で公開されない手続と公開停止―弁論準備手続の傍聴,裁判所外の尋問,当事者尋問等の公開停止及び記録の閲覧制限で詳しく扱っている。
2 第2問 氏名冒用訴訟と当事者の死亡
(1) 問題文(問題PDF5頁)
甲は,A土地の所有者乙を被告と表示して,所有権移転登記を求める訴えを提起した。なお,この訴訟には,訴訟代理人はいないものとする。
1 甲と通じた丙は,乙と称して訴状等を受領して,第1回口頭弁論期日に出頭し,請求原因事実をすべて自白した。
(1) 丙が自白した後,第1回口頭弁論期日において,出頭したのは乙ではなく,丙であることが判明した。この場合,裁判所は,どのような措置を採るべきか。
(2) 第1回口頭弁論期日において弁論が終結し,乙に対する請求認容の判決が言い渡されて,控訴期間が徒過した。その後,甲は,A土地について所有権移転登記を経由した。この場合,乙は,訴訟法上どのような手段を採ることができるか。
2 乙が訴状等を受領したが,甲と通じた丙が,「口頭弁論期日には出頭しなくてもよい」と乙をだました上,自ら乙と称して,第1回口頭弁論期日に出頭し,請求原因事実をすべて自白した。同期日の後,乙は死亡したが,裁判所が乙の死亡を知らなかったため,乙に対する請求認容の判決が言い渡されて,控訴期間が徒過した。この場合,乙の相続人丁は,訴訟法上どのような手段を採ることができるか。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF5頁)
当事者の確定をめぐる手続上の諸問題に対する解決能力を試す問題である。1(1)では,当事者の確定,訴訟係属の有無に触れた上で裁判所の措置を論ずべきである。1(2)では,(1)での立場を前提として,判決まで至った場合のその効力とこれに対する救済手段を論ずべきである。2では,1との違いを踏まえ,訴訟係属の有無,手続の中断の効果とこれに違反した場合の判決の効力を論じ,これに対する救済手段を論ずべきである。
(3) 模範答案
1 設問1(1)について
(1) 甲は乙を被告と表示したのに丙が出頭しているから,被告は誰か。当事者の確定基準が問題となる。
思うに,当事者は,管轄(4条),除斥(23条1項)及び当事者能力(28条)等の判断の基準となるから,訴え提起の当初から明確に定まる必要がある。よって,当事者は訴状の記載全体を合理的に解釈して定まると解する(実質的表示説)。
本問では,訴状は乙を被告と表示し,請求も乙所有のA土地の登記を求めるものであるから,被告は乙であり,丙は乙の氏名を冒用したにすぎない。
(2) 次に,訴訟係属は生じているか。
思うに,民事訴訟は二当事者対立構造を前提とする。よって,訴訟係属は訴状が被告に送達された時に生じると解する。
本問では,訴状等を受領したのは丙であって乙ではないから,乙への有効な送達はなく,訴訟係属は生じていない。また,丙は当事者でも代理人でもないから,丙の自白は乙の自白としての効力を有しない。
(3) したがって,裁判所は,丙を手続から排除し,乙に訴状を送達した上(138条1項),期日を指定して乙を呼び出し(94条),丙の自白を判決の基礎とせずに審理すべきである。もっとも,乙が丙の行為を追認すれば,その効力は乙に生じる(34条2項類推)。
2 設問1(2)について
(1) 小問(1)の立場からは,本問判決は乙への有効な送達を欠いたまま言い渡されたことになる。では,その効力は乙に及ぶか。
確かに,判決の効力の有無を後の訴訟に委ねると法的安定を害するから,判決は当然には無効とならず,確定すれば既判力は被告乙に及ぶ(115条1項1号)とも思える。
しかし,本問では,甲が丙と通じて乙本人のように装わせ,乙が訴訟に関与する機会を故意に奪って判決を確定させている。かかる場合に甲がその判決の効力を乙に主張することは,訴訟上の信義誠実の原則(2条)に反し許されない。
よって,本問判決の効力は乙に対しては及ばないと解する(支払命令につき判例同旨・最判昭和43年2月27日)。
(2) したがって,乙は,再審を経ることなく,甲に対し,所有権に基づき所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
(3) もっとも,判決の外観が残る以上,乙は,その取消しを求めて再審の訴えを提起することもできないか。
思うに,訴状の有効な送達がないため被告とされた者が手続に関与する機会を奪われた場合は,代理権を欠く者が訴訟行為をした場合と異ならない。よって,338条1項3号の類推適用により再審の訴えを提起できると解する(判例同旨・最判平成4年9月10日)。
本問では,乙は訴状等を受領しておらず,丙が乙と称して自白したから,乙は手続関与の機会を奪われたといえる。そして,再審事由を現実に知り得なかった乙は,338条1項ただし書にも当たらない(前掲最判平成4年9月10日同旨)。
なお,判決の送達も丙が受領していたときは,控訴期間は進行していないから,乙は控訴することもできる(285条)。
3 設問2について
(1) 本小問では,小問1と異なり乙が訴状を受領しているから,訴訟係属は生じている。もっとも,丙の自白が乙に効力を有しないことは小問1と同様である。
(2) そして,訴訟代理人のいない本問では,乙の死亡により訴訟手続は中断し(124条1項1号・2項),丁が乙の地位を当然に承継する。
では,中断を看過してされた本問判決の効力はどうか。
思うに,中断の趣旨は,当事者の死亡により訴訟追行者を欠く間の手続進行を止め,承継人に手続関与の機会を保障する点にある。
本問では弁論終結の有無は明らかでないものの,終結前の死亡であれば,裁判所は中断中に審理を終えて判決をしたことになり,丁の手続関与の機会を奪った点で違法である(132条1項の反対解釈)。もっとも,当然無効とすると法的安定を害するから,上訴又は再審により取り消し得るにとどまると解する。
(3) また,中断中は期間の進行が停止し,受継の通知又は続行の時から新たに全期間が進行する(132条2項)。よって,控訴期間は進行しておらず,本問判決は確定していない。
(4) したがって,丁は,相続の放棄をすることができる間を経過した後(124条3項),受継の申立てをし(128条2項類推),控訴を提起して,中断違反及び丙の自白の無効を理由に原判決の取消しを求めることができる。
なお,仮に判決が確定したと扱われても,丁は338条1項3号の類推適用により再審の訴えを提起できる。また,丙の欺罔につき有罪判決が確定すれば,同項5号の事由も認められる(同条2項)。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,小問1(1)で当事者の確定と訴訟係属の有無,小問1(2)で判決の効力と救済手段,小問2で小問1との違いを踏まえた訴訟係属の有無,中断の効果,中断に違反した判決の効力と救済手段を論ずべきとしている。
答案は,この順序どおりに見出しを立てた。
小問1(1)では,訴状の記載から被告は乙であり,丙への送達は乙への有効な送達ではないから,訴訟係属は生じていない。
小問2では乙本人が訴状を受領しているため訴訟係属が生じており,この違いが出題趣旨のいう「1との違い」の出発点になる。
小問1(2)について,答案は,問題文が「甲と通じた丙」と原告と冒用者の通謀を明示していることを重視した。
最高裁昭和43年2月27日判決は,甲が乙と通謀の上,丙の住所を偽って丙に対する支払命令等を申し立て,乙が丙本人のように装って裁判の正本等を受領して裁判を確定させた場合には,その債務名義の効力は丙に対して及ばないとした。
本問はこれと同じ構造であるから,答案は,判決の効力は乙に及ばず,乙は再審を経ずに抹消登記手続を請求できることを主位の結論とした。
その上で,判決の外観を除くための再審について,最高裁平成4年9月10日判決は,訴状の有効な送達がないため被告とされた者が訴訟に関与する機会を与えられないまま判決がされて確定した場合には,当時の民事訴訟法420条1項3号(現行338条1項3号)の再審事由があるとした。
通謀の事実を使わず,判決の効力が乙に及ぶことを前提に再審だけを救済とする答案は,出題趣旨の「その効力」の検討が不十分になりやすい。
小問2では,乙の死亡が弁論終結の前か後かを問題文が明らかにしていないため,答案は終結前の死亡を前提に場合分けした。
訴訟代理人がいない本問では訴訟手続は中断し,中断中は期間の進行が停止するから,控訴期間は進行していない。
当事者の死亡による中断中に口頭弁論期日を開いて弁論を終結し判決をした原審の手続について,最高裁昭和52年12月23日判決は,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違背があるとして破棄差戻しをしている。
(5) 現行法とその後の裁判例
答案で使った民事訴訟法の条番号は,現行法でも同じである。
訴訟代理人がいる場合には当事者が死亡しても訴訟手続は中断しない(民事訴訟法124条2項)ため,本問の「訴訟代理人はいない」という設定は,中断の論点を問うための前提である。
当事者が死亡したときの中断・受継と控訴期間は,民事訴訟の当事者が死亡したとき―訴訟手続の中断・受継,訴訟代理人がいる場合,中断中の判決と控訴期間で扱っている。
第7 刑事訴訟法
1 第1問 体内に隠された証拠物の取得と令状
(1) 問題文(問題PDF6頁)
甲がラップに包んだ大麻樹脂の塊を飲み込んで体内に隠匿している疑いがあるため,捜査機関は,甲の腹部をレントゲン撮影の上,体内に大麻樹脂の塊らしいものが確認できた段階で,甲に下剤を用いて,大麻樹脂の塊を早期に体外に排出させ,これを押収しようと考えた。
このような捜査を行うには令状が必要か。必要であるとすれば,どのような令状によるべきか。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF6頁)
捜査機関が,人の体内に嚥下された法禁物を発見・収集・保全するための捜査活動を行おうとする場合に,令状が必要かどうか,必要であるとすればいかなる令状によるのが適切であるかを問うことにより,令状主義及び強制処分法定主義の意義,任意捜査と強制捜査の区別,各種令状の性質,本件事案において必要となる令状の種類などについて,基本的な知識の有無と具体的事案に対する応用力を試すものである。
(3) 模範答案
1 令状の要否について
(1) 捜査機関は,甲の腹部をレントゲン撮影し(以下「本問撮影」という。),塊らしいものが確認できた段階で,下剤を用いて大麻樹脂の塊を排出させ,押収しようとしている(以下「本問排出」という。)。かかる捜査に令状が必要であろうか。
(2) まず,甲が真摯に同意している場合,本問撮影及び本問排出は任意処分にとどまり,排出された塊は任意提出を受けて領置(221条)すれば足りるから,令状は不要である。
(3)ア では,甲の同意がない場合はどうか。強制処分であれば,法律の特別の定めがなければ許されず(197条1項ただし書,強制処分法定主義),令状主義(憲法35条)の規制を受けるから,強制処分の意義が問題となる。
思うに,強制処分法定主義は,重大な権利制約の要件・手続を国会が法律で定める点に,令状主義は,裁判官の事前審査により個々の処分の必要性・相当性を統制する点に,その意義がある。そして,科学技術の発達により,物理的な強制を伴わなくとも重要な権利を制約する捜査方法が現れている。
よって,強制処分とは,個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など,特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない処分をいうと解する(判例同旨・最決昭和51年3月16日)。
イ 本問撮影は,甲の意思に反して放射線を照射し,通常他人の目に触れない体内の状況を明らかにする点で,身体の不可侵及びプライバシーを制約するものといえる。
また,本問排出は,薬剤を体内に作用させて人為的な排泄を強いる点で,身体の安全を害し,屈辱感を与えるものといえる。
よって,いずれも強制処分に当たり,甲の同意がない限り令状が必要である。なお,甲が身体を拘束されていても,これらは218条2項所定の処分に当たらないから,令状を要しないことにはならない。
2 令状の種類について
(1) 本問撮影について
検証とは,五官の作用により物・場所・身体の性質・状態を認識する処分をいうと解されるところ,本問撮影は体内の異物の存在及び形状を認識する処分であるから,検証としての身体検査(218条1項後段)に当たる。
もっとも,X線の照射及び画像の判読には医学的な専門知識を要するから,本問撮影は鑑定(223条1項)の性質も併有し,鑑定処分許可状(225条1項・168条1項)によるべきとも思える。しかし,鑑定処分には直接強制を認める139条が準用されていない(225条4項・168条6項)から,甲が拒めば目的を達し得ない。
よって,本問撮影は,鑑定処分許可状と身体検査令状を併用して行い,甲が拒むときは身体検査令状に基づき直接強制(222条1項・139条)をすべきであり,身体検査令状には医師に実施させる旨の条件(218条5項)を付すべきと解する。
(2) 本問排出について
ア 思うに,大麻樹脂の塊は甲の身体の一部ではなく,体内に隠匿された証拠物である。とすれば,これを強制的に体外に排出させて占有を取得する行為は,捜索・差押えの性質を有する。
よって,本問排出は,捜索差押令状(218条1項前段)によるべきと解する。
イ もっとも,本問排出は,人権の侵害にわたるおそれがある点で,検証としての身体検査と共通の性質を有する。
よって,身体検査令状に関する218条5項を準用し,医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件を令状に記載することが不可欠と解する(強制採尿につき判例同旨・最決昭和55年10月23日)。
ウ なお,かかる身体への侵入は,被疑事件の重大性,嫌疑の存在,証拠の重要性とその取得の必要性,適当な代替手段の不存在等に照らし,捜査上真にやむを得ない場合の最終的手段としてのみ許される(前掲最決昭和55年10月23日参照)。
本問では確かに,自然排出を待てば足りるとも思える。しかし,排出物の投棄による証拠隠滅や包装の破損による健康被害のおそれがあり,早期に排出させる必要がある場合には,令状の発付が許されるといえる。
3 以上より,本問の捜査には甲の同意がない限り令状が必要であり,本問撮影は鑑定処分許可状と身体検査令状の併用により,本問排出は医師による実施の条件を付した捜索差押令状によるべきである。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,令状主義及び強制処分法定主義の意義,任意捜査と強制捜査の区別,各種令状の性質,本件で必要となる令状の種類を挙げている。
答案は,1で令状の要否(任意と強制の区別)を,2でレントゲン撮影と下剤による排出のそれぞれについて令状の種類を扱った。
強制処分の意義について,最高裁昭和51年3月16日決定は,強制手段とは,個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など,特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段をいうとした。
答案は,甲が真摯に同意する場合を任意処分として先に切り分けた上で,同意がない場合を強制処分とした。
レントゲン撮影について,答案は,検証としての身体検査の性質と,医学的な専門知識を要する鑑定の性質を併せ持つとし,身体検査令状と鑑定処分許可状の併用とした。
鑑定処分許可状だけでは足りないとした理由は,鑑定人の身体検査について準用される規定(刑事訴訟法168条6項)に直接強制を定めた139条が含まれていないことにある。
下剤による排出について,答案は,体内に隠匿された証拠物を取得する行為であるから捜索・差押えの性質を有するとし,強制採尿に関する最高裁昭和55年10月23日決定にならって,医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件を付した捜索差押令状によるとした。
同決定は,強制採尿は被疑事件の重大性,嫌疑の存在,当該証拠の重要性とその取得の必要性,適当な代替手段の不存在等の事情に照らし,犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合には最終的手段として許されるとしており,答案はこの考慮要素も下剤による排出に及ぼした。
もっとも,下剤を服用させること自体は,体内の尿を採取する強制採尿とは異なり,薬剤を人体に作用させる処分である。
この点を重視して,捜索差押令状と鑑定処分許可状を併用する構成もあり得る。
出題後の東京高裁令和3年10月29日判決は,体腔内の異物の採取が問題となった事案で,被告人の意思に反して下剤を服用させる場合には,別途,令状(鑑定処分許可状)の発付を受ける必要があると述べている。
(5) 現行法とその後の裁判例
答案の条文は出題当時の項番号による。
身体検査の条件を定める規定は,出題当時の刑事訴訟法218条5項がその後の改正で繰り下がり,現行法では218条9項である。
身体の拘束を受けている被疑者の指紋採取等に令状を要しないとする規定も,出題当時の218条2項から,現行法では同条4項に移っている。
強制採尿・強制採血等の令状の組合せは,強制採尿・強制採血・毛髪採取の令状-令状の組合せ,条件の記載及び最高裁の判断で扱っている。
2 第2問 覚せい剤使用罪の訴因変更
(1) 問題文(問題PDF6頁)
甲は,平成14年3月20日に任意提出した尿の鑑定結果,友人Aの目撃供述及び自白に基づいて,「平成14年3月18日ころ,東京都内のA方において,覚せい剤若干量を注射して使用した。」との訴因で起訴された。公判において,甲は犯行を否認し,Aは捜査段階における供述を覆す証言をしたため,検察官は,上記鑑定結果等から,「平成14年3月上旬ころから同月20日までの間,東京都内又はその周辺において,覚せい剤若干量を使用した。」との訴因に変更請求した。
裁判所は,この訴因変更請求を許すべきか。
(2) 出題趣旨(出題趣旨PDF6頁)
覚せい剤使用事犯を題材にして,公判廷における審理の経過に伴い,犯行日・犯行場所及び使用態様が特定された訴因から,これらに幅のある記載がされている訴因に変更の請求がされた場合における訴因変更の可否を問うことにより,訴因の意義・機能,訴因の特定に必要な記載の程度,訴因変更の意義及び本件における訴因変更の可否などについて,基本的な知識の有無と具体的事案に対する応用力を試すものである。
(3) 模範答案
1 裁判所は,本問の訴因変更請求を許すべきか。
裁判所は,検察官の請求があるときは,公訴事実の同一性を害しない限度において,訴因の変更を許さなければならない(312条1項)。
そこで,変更後の訴因(以下「新訴因」という。)が特定されているか,及び変更前の訴因(以下「旧訴因」という。)との間に公訴事実の同一性が認められるかが問題となる。
2(1) まず,新訴因は,日時につき「3月上旬ころから同月20日までの間」,場所につき「東京都内又はその周辺」と幅のある記載をし,使用方法も示していない。かかる記載は訴因の特定(256条3項)を欠くのではないか。どの程度の記載があれば訴因が特定されたといえるかが問題となる。
思うに,当事者主義的訴訟構造(256条6項,298条1項,312条1項)の下では,審判対象は検察官の具体的な犯罪事実の主張たる訴因である。そして,訴因の特定は,裁判所に対し審判対象を他の犯罪事実から区別して画定する識別機能と,被告人に対し防御の範囲を示す告知機能を果たすためのものである。
確かに,この機能からすれば日時・場所・方法は厳格に特定すべきとも思える。しかし,犯罪の性質上特定が困難な場合にまで厳格な特定を求めれば,自白の強要や処罰の断念を招き妥当でない。法が「できる限り」としているのもかかる趣旨による。
よって,①犯罪の種類・性質等により日時等を詳らかにできない特殊事情があり,②他の犯罪事実との識別が可能で,防御の範囲が示されている場合には,幅のある記載も許されると解する(判例同旨・最大判昭和37年11月28日,最決昭和56年4月25日)。
(2) 本問では,覚せい剤の自己使用は密行的に行われ,被害者もいない。しかも,甲は公判で否認し,目撃者Aも捜査段階の供述を覆したから,尿の鑑定結果から使用の事実は推認できても,その日時等は明らかにできない。よって,特殊事情がある(①)。
もっとも,覚せい剤使用罪は使用の都度一罪が成立するから,期間内に複数回の使用があり得る以上,新訴因がいずれの使用を審判対象とするのか識別できないのではないか。
この点,新訴因は3月20日提出の尿の鑑定結果に基づき,期間の終期をその提出日としているから,その尿中の覚せい剤を摂取した最終の1回の使用を起訴する趣旨と解するのが検察官の合理的意思に合致する。そして,訴因を設定するのは検察官であるから,裁判所は求釈明(刑事訴訟規則208条1項)によりその趣旨を明らかにさせるべきである。
かかる釈明がされれば,新訴因は他の使用行為と識別でき,甲も防御の対象を知ることができる(②)。よって,新訴因は特定に欠けるところはない。
3(1) 次に,新旧両訴因の間に「公訴事実の同一性」(312条1項)が認められるか。その判断基準が問題となる。
思うに,訴因変更制度の趣旨は,被告人の防御を害しない範囲で審判対象の変更を認め,一個の刑罰権の対象となる事実を一回の手続で解決する点にあり,この範囲には一事不再理効(憲法39条)も及ぶ。
よって,両訴因の基本的事実関係が同一であれば公訴事実の同一性が認められ,その判断は,①事実的共通性を一次的な基準とし,②両訴因の非両立性を補完的に考慮して行うと解する(判例同旨・最決昭和63年10月25日)。
(2) これを本問について見ると,旧訴因も新訴因も,3月20日提出の尿の鑑定結果を基礎とし,甲の尿中から検出された同一の覚せい剤の使用行為を対象とする。また,旧訴因の「3月18日ころ」「A方」は,新訴因の期間・地域の範囲内にある。
確かに,両訴因は日時・場所・方法の特定の程度を異にする。しかし,いずれも同一の尿中の覚せい剤をもたらした使用という点で共通する。よって,事実的共通性がある(①)。
さらに,前述した釈明によれば新訴因は最終1回の使用であり,旧訴因も同じ使用を日時等で特定したものであるから,両者が共に成立することはなく,非両立の関係にある(②)。
よって,公訴事実の同一性が認められる。
なお,変更により甲の防御に実質的な不利益が生ずるおそれがあれば,公判手続を停止して防御の準備をさせれば足りる(312条4項)。
4 以上より,裁判所は,検察官に最終1回の使用を起訴する趣旨を釈明させた上で,本問の訴因変更請求を許すべきである。
以上
(4) 出題趣旨を踏まえた解説
出題趣旨は,訴因の意義・機能,訴因の特定に必要な記載の程度,訴因変更の意義及び本件における訴因変更の可否を挙げている。
答案は,変更後の訴因が特定されているか(2),変更前の訴因との間に公訴事実の同一性があるか(3),の二段で検討し,訴因の機能(識別機能と告知機能)を特定の基準の根拠に置いた。
訴因の特定について,最高裁昭和37年11月28日大法廷判決は,犯罪の日時,場所及び方法は,犯罪を構成する要素になっている場合を除き,罪となるべき事実を特定する一手段にすぎず,犯罪の種類,性質等により詳らかにすることができない特殊事情がある場合には,幅のある表示も違法でないとした。
覚せい剤の使用について,最高裁昭和56年4月25日決定は,日時・場所に幅があり,使用量・方法に明確を欠くところがあっても,検察官において起訴当時の証拠に基づきできる限り特定したものである以上,訴因の特定に欠けるところはないとした。
使用罪は使用の都度一罪となるため,幅のある期間内の複数の使用のどれを起訴したかが識別できるかが問題になる。
答案は,尿の提出日を期間の終期としていることから「最終の1回の使用」を起訴する趣旨と解し,訴因を設定する検察官に求釈明でこれを明らかにさせるとした。
この「最終の1回」という考え方は,出題当時の最高裁判例の判文にはなく,検察官の合理的意思から導いた答案の整理である。
公訴事実の同一性について,最高裁昭和63年10月25日決定は,覚せい剤使用の日時・場所・方法に多少の差異がある二つの訴因について,いずれも被告人の尿中から検出された同一覚せい剤の使用行為に関するものであって,事実上の共通性があり,両立しない関係にあるから,基本的事実関係において同一であるとした。
本問はこれと同じ構造であり,答案は事実的共通性を一次的な基準,非両立性を補完的な基準として当てはめた。
答案の弱点として,最高裁昭和56年4月25日決定の「起訴当時の証拠に基づき」という部分を,訴因変更の時点に読み替えることを正面から論じていないことがある。
(5) 現行法とその後の裁判例
答案の公判手続の停止(刑事訴訟法312条4項)は,その後の改正で,現行法では312条7項に定められている。
法律の題名は,現在は「覚醒剤取締法」と表記されている。
出題後の東京高裁平成24年9月4日判決は,尿から検出された覚せい剤成分に対応する最終の使用が起訴されたと考える実務に言及している。
覚醒剤使用罪の訴因については覚醒剤使用罪の訴因―日時・場所に幅のある起訴,最終の1回の使用,求釈明及び公訴事実の同一性で,訴因変更と防御の機会については刑事裁判における訴因変更と不意打ち防止で扱っている。
第8 出典・参考資料
1 法令
①日本国憲法12条,13条,20条,21条,30条,35条,39条,41条,76条,81条,82条,84条(e-Gov法令検索)
②民法4条,107条,424条の3,470条,472条,472条の3,474条,514条,519条,703条,704条,826条(e-Gov法令検索。令和8年9月27日現在の条文。答案は平成29年改正前の規定による)
③刑法36条,256条(e-Gov法令検索)
④会社法314条,782条,783条,784条の2,785条,786条,828条,831条,839条(e-Gov法令検索)
⑤手形法7条,15条,16条,38条,53条,69条,72条,77条,87条(e-Gov法令検索)
⑥民事訴訟法87条,91条,91条の2,92条,124条,132条,169条,170条,185条,195条,223条,312条,338条(e-Gov法令検索)
⑦刑事訴訟法139条,168条,218条,222条,225条,256条,312条(e-Gov法令検索)
⑧裁判所法3条,70条(e-Gov法令検索)
⑨地方自治法14条,244条(e-Gov法令検索)
⑩図書館法17条(e-Gov法令検索)
⑪少年法61条(e-Gov法令検索)
⑫人事訴訟法22条,特許法105条の7(e-Gov法令検索)
⑬覚醒剤取締法(e-Gov法令検索)
⑭刑事訴訟規則208条1項(最高裁判所規則)
2 裁判例(裁判所ウェブサイト掲載)
①最高裁判所第二小法廷昭和23年6月5日判決(昭和23年(れ)第89号,刑集2巻7号641頁,裁判所ウェブサイト)
②最高裁判所大法廷昭和27年10月8日判決(昭和27年(マ)第23号,民集6巻9号783頁,裁判所ウェブサイト)
③最高裁判所第一小法廷昭和29年2月11日判決(昭和26年(オ)第584号,民集8巻2号419頁,裁判所ウェブサイト)
④最高裁判所第一小法廷昭和30年7月7日決定(昭和30年(あ)第478号,刑集9巻9号1856頁,裁判所ウェブサイト)
⑤最高裁判所第一小法廷昭和33年3月20日判決(昭和32年(オ)第926号,民集12巻4号583頁,裁判所ウェブサイト)
⑥最高裁判所大法廷昭和33年5月28日判決(昭和29年(あ)第1056号,刑集12巻8号1718頁,裁判所ウェブサイト)
⑦最高裁判所第二小法廷昭和33年9月26日判決(昭和31年(オ)第420号,民集12巻13号3022頁,裁判所ウェブサイト)
⑧最高裁判所第二小法廷昭和34年9月28日決定(昭和34年(あ)第1156号,刑集13巻11号2993頁,裁判所ウェブサイト)
⑨最高裁判所大法廷昭和34年12月16日判決(昭和34年(あ)第710号,刑集13巻13号3225頁,裁判所ウェブサイト)
⑩最高裁判所大法廷昭和35年6月8日判決(昭和30年(オ)第96号,民集14巻7号1206頁,裁判所ウェブサイト)
⑪最高裁判所大法廷昭和35年7月6日決定(昭和26年(ク)第109号,民集14巻9号1657頁,裁判所ウェブサイト)
⑫最高裁判所第三小法廷昭和36年10月10日判決(昭和33年(あ)第319号,刑集15巻9号1580頁,裁判所ウェブサイト)
⑬最高裁判所大法廷昭和37年11月28日判決(昭和34年(あ)第1678号,刑集16巻11号1633頁,裁判所ウェブサイト)
⑭最高裁判所第三小法廷昭和39年4月21日判決(昭和37年(オ)第158号,民集18巻4号566頁,裁判所ウェブサイト)
⑮最高裁判所第三小法廷昭和41年12月20日判決(昭和39年(オ)第1237号,民集20巻10号2139頁,裁判所ウェブサイト)
⑯最高裁判所第三小法廷昭和42年4月18日判決(昭和40年(オ)第1499号,民集21巻3号671頁,裁判所ウェブサイト)
⑰最高裁判所第三小法廷昭和43年2月27日判決(昭和39年(オ)第1371号,民集22巻2号316頁,裁判所ウェブサイト)
⑱最高裁判所大法廷昭和45年6月24日決定(昭和41年(ク)第402号,民集24巻6号610頁,裁判所ウェブサイト)
⑲最高裁判所第三小法廷昭和46年11月16日判決(昭和41年(オ)第568号,民集25巻8号1173頁,裁判所ウェブサイト)
⑳最高裁判所第一小法廷昭和49年9月26日判決(昭和45年(オ)第540号,民集28巻6号1243頁,裁判所ウェブサイト)
㉑最高裁判所第一小法廷昭和50年6月12日決定(昭和49年(あ)第1161号,刑集29巻6号365頁,裁判所ウェブサイト)
㉒最高裁判所第三小法廷昭和50年8月29日判決(昭和50年(オ)第439号,集民115号643頁,裁判所ウェブサイト)
㉓最高裁判所第三小法廷昭和51年3月16日決定(昭和50年(あ)第146号,刑集30巻2号187頁,裁判所ウェブサイト)
㉔最高裁判所第二小法廷昭和51年12月24日判決(昭和48年(オ)第794号,民集30巻11号1076頁,裁判所ウェブサイト)
㉕最高裁判所第一小法廷昭和52年7月21日決定(昭和51年(あ)第671号,刑集31巻4号747頁,裁判所ウェブサイト)
㉖最高裁判所第二小法廷昭和52年12月23日判決(昭和52年(オ)第588号,集民122号605頁,裁判所ウェブサイト)
㉗最高裁判所第三小法廷昭和53年7月28日判決(昭和52年(あ)第623号,刑集32巻5号1068頁,裁判所ウェブサイト)
㉘最高裁判所第一小法廷昭和55年10月23日決定(昭和54年(あ)第429号,刑集34巻5号300頁,裁判所ウェブサイト)
㉙名古屋地方裁判所昭和55年11月19日判決(昭和47年(行ウ)第29号ほか,行集31巻11号2408頁,裁判所ウェブサイト)
㉚最高裁判所第三小法廷昭和56年4月7日判決(昭和51年(オ)第749号,民集35巻3号443頁,裁判所ウェブサイト)
㉛最高裁判所第一小法廷昭和56年4月25日決定(昭和55年(あ)第1593号,刑集35巻3号116頁,裁判所ウェブサイト)
㉜最高裁判所大法廷昭和58年6月22日判決(昭和52年(オ)第927号,民集37巻5号793頁,裁判所ウェブサイト)
㉝最高裁判所第三小法廷昭和63年10月25日決定(昭和61年(あ)第916号,刑集42巻8号1100頁,裁判所ウェブサイト)
㉞最高裁判所大法廷平成元年3月8日判決(昭和63年(オ)第436号,民集43巻2号89頁,裁判所ウェブサイト)
㉟最高裁判所第二小法廷平成4年6月5日決定(平成2年(あ)第788号,刑集46巻4号245頁,裁判所ウェブサイト)
㊱最高裁判所第一小法廷平成4年9月10日判決(平成3年(オ)第589号,民集46巻6号553頁,裁判所ウェブサイト)
㊲最高裁判所第一小法廷平成4年12月10日判決(平成元年(オ)第759号,民集46巻9号2727頁,裁判所ウェブサイト)
㊳最高裁判所第三小法廷平成7年3月7日判決(平成元年(オ)第762号,民集49巻3号687頁,裁判所ウェブサイト)
㊴最高裁判所第二小法廷平成15年3月14日判決(平成12年(受)第1335号,民集57巻3号229頁,裁判所ウェブサイト)
㊵最高裁判所第三小法廷平成23年4月19日決定(平成22年(許)第30号,民集65巻3号1311頁,裁判所ウェブサイト)
㊶最高裁判所第二小法廷平成24年2月29日決定(平成23年(許)第21号,民集66巻3号1784頁,裁判所ウェブサイト)
㊷最高裁判所第二小法廷平成26年7月9日決定(平成26年(行ツ)第96号,集民247号39頁,裁判所ウェブサイト)
㊸最高裁判所第二小法廷令和4年4月18日判決(令和2年(あ)第131号,刑集76巻4号191頁,裁判所ウェブサイト)
3 裁判例(裁判所ウェブサイト未掲載)
①大審院大正15年3月25日判決(大正14年(オ)第1064号,大審院民事判例集5巻4号219頁。裁判所HP未掲載。判例秘書の大審院判例検索により確認)
②東京地方裁判所平成元年8月24日判決(昭和63年(ワ)第6541号,判例秘書の判例番号 L04430193。裁判所HP未掲載)
③東京高等裁判所平成2年1月31日判決(平成元年(ネ)第2921号,判例秘書の判例番号 L04520595。裁判所HP未掲載)
④最高裁判所第三小法廷平成5年10月5日判決(平成2年(オ)第603号,判例秘書の判例番号 L04810197。裁判所HP未掲載)
⑤名古屋高等裁判所金沢支部平成12年2月16日判決(平成11年(ネ)第17号,判例秘書の判例番号 L05520087。裁判所HP未掲載)
⑥大阪高等裁判所平成14年9月4日判決(平成13年(う)第1155号,判例秘書の判例番号 L05720159。裁判所HP未掲載)
⑦東京高等裁判所平成24年9月4日判決(平成24年(う)第1266号,判例秘書の判例番号 L06720982。裁判所HP未掲載)
⑧東京高等裁判所令和3年10月29日判決(令和2年(う)第806号,判例秘書の判例番号 L07620534。裁判所HP未掲載)
4 公文書
①法務省「論文式試験問題・出題趣旨」(旧司法試験第二次試験の平成14年度から平成22年度までの問題と出題趣旨の掲載ページ)
②法務省「平成14年度旧司法試験第二次試験論文式試験問題」(PDF全6頁。憲法1頁,民法2頁,商法3頁,刑法4頁,民事訴訟法5頁,刑事訴訟法6頁)
③法務省「平成14年度旧司法試験第二次試験論文式試験問題と出題趣旨」(PDF全6頁。頁の割当ては②と同じ)
④法務省「法務省ウェブサイトのコンテンツの利用について」(公共データ利用規約(第1.0版)の適用と出典の記載方法)