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放置車両の撤去を所有権留保会社・登録名義人に請求できるか―土地所有権に基づく妨害排除と最高裁判例(AI作成)

私有地に車両が放置された場合,土地所有者が誰に撤去を請求できるかは,車検証上の名義だけでは決まらない。現実に車両を置いた者,使用者,登録名義人,所有権留保会社及び実質的所有者を分け,所有権留保契約の内容と残債務の弁済期も確認する必要がある。

本記事は,土地所有権に基づく妨害排除請求を中心に,所有権留保会社の撤去義務を判断した最高裁平成21年3月10日第三小法廷判決と,建物の登記名義人に関する最高裁平成6年2月8日第三小法廷判決の射程を整理する。

第1 最初に確認する結論の分岐

1 車両を置いた者と撤去権限を持つ者を分ける

車両を実際に駐車した者が判明する場合は,賃貸借契約,使用貸借,駐車場利用契約又は不法占有の終了を根拠に,その者への撤去請求を検討する。ただし,その者が所在不明である,車両を処分する権限を失っている,又は所有権留保会社が引揚げ・換価の権限を取得している場合には,別の相手方も検討する。

したがって,①土地の利用関係,②車両の現実の占有者,③登録名義,④売買・ローン契約上の所有権,⑤期限の利益喪失と残債務弁済期,⑥相手方が放置を知った時点を一つの時系列にする。

2 請求内容も分ける

土地所有者の請求としては,車両撤去による土地明渡し,賃料・使用料,使用料相当損害金及び撤去費用等が問題となる。撤去義務が認められる時点と,不法行為による損害賠償責任が生じる時点は同じとは限らない。

第2 土地所有権に基づく車両撤去請求

1 妨害排除請求の対象

民法206条を基礎とする土地所有権に基づく妨害排除請求では,車両による土地所有権の妨害を除去する権限と責任を有する者が相手方となる。単に過去に車両を所有していた者,登録名義を残す者又はローン会社であるという一事だけで結論を出さず,車両を占有・使用・処分できる法的地位を確認する。

土地所有者が自力で車両を公道へ移動し,又は廃棄すると,車両所有者等から損害賠償を請求される危険がある。緊急性がない限り,証拠保全,催告,訴訟,強制執行という順序を基本とする。

2 登録自動車と軽自動車等を区別する

道路運送車両法5条1項は,登録を受けた自動車の所有権の得喪について,登録を第三者対抗要件としている。他方,軽自動車等は同じ登録制度の対象ではないため,車両の区分を確認する。

登録名義は重要な出発点であるが,撤去義務者を常に名義人だけで決める規定ではない。名義が残った理由,名義人が車両を取得した経緯,譲渡の有無,現実の支配及び名義変更に必要な書類の保有状況を確認する。

第3 所有権留保会社に対する撤去請求

1 最高裁平成21年3月10日判決

最高裁平成21年3月10日第三小法廷判決(平成20年(受)第422号・民集63巻3号385頁)は,駐車場の土地所有者が,車両代金を立替払いして所有権を留保した会社に,車両撤去・土地明渡しと使用料相当損害金を求めた事案である。

同判決は,ローン債務の期限の利益喪失による残債務全額の弁済期の前後で,所有権留保会社の権能が異なることを重視した。弁済期前は,所有権留保会社は原則として車両の交換価値を把握するにとどまり,車両を占有・使用する権原を持たない。そのため,特段の事情がない限り,第三者の土地上に車両があっても撤去義務や不法行為責任を負わないとした。

これに対し,残債務弁済期の経過後は,所有権留保会社が車両を占有し,売却して残債務へ充当できる権能を有するため,留保所有権が担保権の性質を持つことを理由に撤去義務を免れることはできないとした。

2 撤去義務と損害賠償責任の時点

最高裁判決は,弁済期経過後であっても,所有権留保会社が車両による妨害を知らなければ,原則として不法行為責任を負わず,土地所有者から放置の事実を告げられるなどして知った時から責任を負うとした。

したがって,通知書では,土地の表示,車両の登録番号・車台番号,駐車位置,土地利用権原が終了した経緯,現況写真,撤去期限及び連絡先を示し,到達日を証拠化する。併せて,ローン契約,支払状況,期限の利益喪失通知及び引揚げ権限を確認する。

第4 登録名義人に対する請求と建物判例の射程

1 最高裁平成6年2月8日判決

最高裁平成6年2月8日第三小法廷判決(平成4年(オ)第602号・民集48巻2号373頁)は,他人の土地上の建物を取得し,自らの意思で所有権取得登記をした者について,その後建物を譲渡しても,登記名義を保有する限り,土地所有者に所有権喪失を主張して建物収去・土地明渡義務を免れることはできないとした。

この判決は建物についての判断であり,登録自動車の撤去義務を直接判示したものではない。建物は土地を離れて存立できないこと,土地所有者が登記を信頼して請求相手を定める必要があることなどが理由とされているため,車両への適用は類推の可否を検討する問題として扱う。

2 車両について確認する事情

車両では,登録名義人が自らの意思で名義を取得・維持したか,所有権留保のための名義か,名義人が譲渡・抹消登録に必要な権限と書類を持つか,現実の車両所在地を知っているかを確認する。最高裁平成21年判決のような所有権留保会社であれば,残債務弁済期の前後が重要になる。

したがって,「登録名義人だから常に撤去義務を負う」とも,「現実に駐車していないから一切責任を負わない」とも断定せず,名義の原因と現在の処分権限を立証する。

第5 請求前に確保する証拠

1 土地と車両の特定資料

土地の登記事項証明書,公図・測量図,賃貸借契約書,解除通知及び到達資料を用意する。車両については,登録番号,車台番号,車種,色,位置及び状態が分かる写真・動画を日付入りで保存し,運輸支局で取得できる登録事項等証明書の取得を検討する。

2 相手方の権限と認識を示す資料

売買契約書,ローン契約書,所有権留保条項,支払履歴,期限の利益喪失通知,車検証,譲渡証明書及び相手方との連絡記録を集める。通知の前後で,誰が鍵を持ち,誰が引揚げ・売却・抹消登録を決められたかを記録する。

3 損害資料

駐車区画の通常使用料,代替駐車場費用,警備費用及び撤去・保管の見積書を分ける。最高裁平成21年判決に従い,所有権留保会社への不法行為請求では,残債務弁済期だけでなく,放置の事実を知った時点も主張立証する。

第6 実務上の進め方

1 任意撤去の催告

最初の通知で相手方を一人に決め打ちせず,使用者,登録名義人,販売会社及びローン会社へ事実照会を行うことがある。相手方ごとに請求根拠を分け,撤去期限と回答期限を明記する。

2 訴訟と強制執行

任意撤去がされない場合は,車両撤去・土地明渡請求の相手方適格,車両の特定方法,執行方法及び費用負担を検討する。請求相手が複数候補となるときは,各人の権限と時点を整理し,請求の併合や予備的構成を検討する。

判決を得ても,車両の保管・売却・廃棄が自動的に完了するわけではない。執行官及び専門業者と事前に方法と費用を確認する。

第7 確認済み事項と未確認事項

1 確認済み事項

最高裁平成21年3月10日判決の本文から,所有権留保会社の撤去義務は残債務弁済期の前後で分かれ,不法行為責任には妨害を知った時点が問題となることを確認した。最高裁平成6年2月8日判決の本文から,自らの意思で建物の取得登記をした名義人は,名義を残す限り,譲渡による所有権喪失を土地所有者へ主張して収去義務を免れられないことを確認した。

2 未確認事項

最高裁平成6年判決の建物に関する法理が,登録自動車の名義人にどの範囲で類推されるかは,本記事で直接対応する最高裁判例を確認していない。裁判所ウェブサイトは全裁判例を収録するものではなく,判例秘書の網羅検索も本記事作成時には実施していないため,下級審裁判例の存否は未確認である。

第8 出典

最高裁平成21年3月10日第三小法廷判決・判決全文

最高裁平成6年2月8日第三小法廷判決・判決全文

民法(e-Gov法令検索)

道路運送車両法(e-Gov法令検索)