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国税の不服申立てと訴訟で主張が通る割合―再調査8.0%・審査請求7.2%・訴訟4.0%の読み方(AI作成)

第1 この記事で扱う数字

1 対象と基準日

本記事は,令和8年10月30日に財務省が公表した「令和7事務年度 国税庁実績評価書」の業績目標1-4-3及び国税不服審判所「令和7年度における審査請求の概要」を基に,税務署等の処分を争う三つの段階の数字を並べて説明する。
確認日は令和8年11月2日である。
実績評価書は,国税庁が達成すべき目標に対する実績を財務大臣が評価したものであり,作成に当たり有識者から成る財務省政策評価懇談会の意見を聴いている。
令和7年度の割合は,処理件数に占める認容の割合が再調査の請求で8.0%,審査請求で7.2%,訴訟の終結件数に占める原告勝訴の割合が4.0%であった。

2 結論

①いずれの数字も,納税者の主張が「何らかの形で」受け入れられた件数の割合であり,全部認容の割合ではない。
②分母には,審査請求の場合,取下げ及び却下も含まれる。
③審査請求の認容割合は,令和6年度の17.9%から令和7年度の7.2%へ大きく動いた。
実績評価書及び国税不服審判所の概要はこの理由を説明しておらず,単年度の数字だけで「勝ちやすさ」を判断できない。
④数字は,個別事件の見通しを示すものではない。

第2 三つの段階の5年間の数字

国税に関する処分への不服は,再調査の請求を経るか否かを選択した上で,審査請求,訴訟へと進むことになる。
処分の取消しを求める訴えは,原則として審査請求についての裁決を経た後でなければ提起することができない(国税通則法115条1項)。
国税庁実績評価書の参考指標によれば,令和3年度から令和7年度までの数字は次のとおりである。
再調査の請求の令和3年度から令和6年度までの件数等は,令和6事務年度実績評価書から修正された値である。

年度再調査の請求:処理/認容(割合)審査請求:処理/認容(割合)訴訟:終結/原告勝訴(割合)
令和3年度1200件/83件(6.9%)2282件/297件(13.0%)199件/13件(6.5%)
令和4年度1370件/63件(4.6%)3159件/225件(7.1%)186件/10件(5.4%)
令和5年度2266件/149件(6.6%)2873件/279件(9.7%)172件/13件(7.6%)
令和6年度1722件/104件(6.0%)3872件/693件(17.9%)168件/8件(4.8%)
令和7年度1448件/116件(8.0%)3128件/226件(7.2%)201件/8件(4.0%)

5年間を単純に合計すると,再調査の請求は8006件中515件(6.4%),審査請求は1万5314件中1720件(11.2%),訴訟は926件中52件(5.6%)となる。
これは本記事で単純に合計した数字であり,年度ごとの事件の構成の違いは調整していない。

第3 数字を読むときの注意

1 「認容」は全部勝訴を意味しない

実績評価書は,請求認容件数を,処理件数のうち請求が何らかの形で受け入れられたものと説明し,訴訟の原告勝訴件数も,終結件数のうち原告である納税者の主張が何らかの形で受け入れられたものとしている。
国税不服審判所の概要によれば,令和7年度の審査請求の認容226件の内訳は,一部認容146件,全部認容80件である。
全部認容だけを処理件数3128件と比べると2.6%となる。

2 分母に取下げと却下が含まれる

国税不服審判所の概要によれば,令和7年度の審査請求の処理3128件の内訳は,取下げ348件,却下379件,棄却2175件,認容226件である。
却下は,法定の期間経過後にされた審査請求その他不適法な審査請求について,国税不服審判所長が裁決で行うものである(国税通則法98条1項)。
本案の判断に至った棄却と認容の合計2401件を分母にすると,認容の割合は9.4%となる。
どの分母を用いるかで印象が変わるので,割合だけでなく内訳を見る必要がある。

3 令和6年度の17.9%

令和6年度の審査請求の認容は693件(一部認容522件,全部認容171件)であり,令和7年度の226件(一部認容146件,全部認容80件)の約3倍である。
国税不服審判所の令和6年度及び令和7年度の概要は,認容割合が変動した理由を説明していない。
これらの資料からは,同種の事件がまとまって処理された影響があるかどうかも確認できない。
したがって,「審査請求は令和6年度に通りやすくなり,令和7年度に通りにくくなった」と評価することはできない。

4 年度が同じでも対象が異なる

再調査の請求,審査請求及び訴訟は,同じ事件を同じ年度で追跡した数字ではない。
実績評価書によれば,再調査の請求の令和7年度末の繰越は603件,審査請求の未済は3036件,訴訟の係属は218件である。
「再調査で8.0%,審査請求で7.2%だから,順に勝ち抜く確率は掛け算できる」という読み方はできない。

第4 手続の速さ

実績評価書によれば,再調査の請求の3か月以内の処理件数割合は,令和7年度に99.8%であった。
審査請求の1年以内の処理件数割合は,令和7年度に98.8%であった。
再調査の請求の数字は,相互協議事案,公訴関連事案,国際課税事案及び災害等による調査の中断や納税者の都合によって3か月以内に処理できなかった事案を除いて算出したものである。
審査請求の数字は,相互協議事案や公訴関連事案など審理を留保すべき事由が生じた事案の留保期間及び災害等又は審査請求人の都合によって調査・審理が中断等した期間を除いて算出したものである。
実績評価書は,再調査の請求については3か月以内,審査請求については1年以内の処理件数割合を指標としている。

国税不服審判所の概要によれば,令和7年度の審査請求の新規発生3159件のうち,直接審査請求は2522件(79.8%)であった。
再調査の請求を経るかどうかは,処分庁に見直しを求める実益と,それに要する時間を比べて判断することになると考えられる。
手続の選択と不服申立期間は,国税不服審判所――組織,審査請求手続,裁決の効力及び裁判例を参照されたい。

第5 税目別の動き

国税不服審判所の概要によれば,令和7年度の審査請求の発生件数は,申告所得税等841件,源泉所得税等77件,法人税等611件,相続税・贈与税133件,消費税等1346件,その他15件,徴収関係136件である。
消費税等が最も多い。
もっとも,前年度の消費税等は1483件,徴収関係は251件であり,年度による増減がある。

第6 数字をどう使うか

これらの数字は,事件の見通しではなく,手続全体の傾向を示すものである。
本記事の整理としては,個別事件では,事実関係,証拠,税目及び争点によって結論が異なる。
争うかどうかを判断するときは,割合ではなく,不服申立期間,争点が事実認定か法解釈か,証拠の有無及び費用を確認することになる。
税務調査の段階から資料を整理しておくことが,後の手続でも意味を持つ。

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第8 出典

財務省「『令和7事務年度 国税庁実績評価書』を公表します」(令和8年10月30日。https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2025/evaluation/20261021143526.html )
財務省「令和7事務年度 国税庁実績評価書」業績目標1-4-3(https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2025/evaluation/202610ntahyoka_mokuhyo13.pdf )
国税不服審判所「令和7年度における審査請求の概要」(https://www.kfs.go.jp/introduction/demand_r07.html )
国税不服審判所「令和6年度における審査請求の概要」(https://www.kfs.go.jp/introduction/demand_r06.html )
国税通則法98条1項,115条1項(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066 )