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受刑者の選挙権・国民審査権と最高裁大法廷―争点と原審判断(AI作成)

第1 受刑者の選挙権をめぐり何が争われているか

受刑者選挙権確認等請求事件では,刑の執行を受けていた者について,国政選挙の選挙権及び最高裁判所裁判官の国民審査権を制限する規定の憲法適合性と,立法不作為に関する国家賠償責任が争われている。
最高裁判所広報課の公式事件概要は,この二つを上告審の主要な争点として掲げている。

弁護士ドットコムニュースの令和8年10月14日付報道によれば,同日,最高裁大法廷で弁論が開かれた。
本記事は,令和8年10月17日に確認した公式事件概要,第一審判決及び法令を基に,請求の内容と原審判断を整理する。

第2 本件が対象とする規定と現行法

1 改正前の公職選挙法11条1項2号

最高裁の公式事件概要が対象としているのは,令和4年法律第68号による改正前の公職選挙法11条1項2号である。
同号は,禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまでの者は選挙権及び被選挙権を有しないと定めていた。

本件上告人は,改正前の刑法に基づく懲役7年の刑の執行を受けていた者であり,国を被上告人として争っている。
本件の事実関係を記す際の「懲役刑」と,現行法の条文に用いられている「拘禁刑」を区別する必要がある。

2 国民審査権とのつながり

最高裁判所裁判官国民審査法4条は,衆議院議員の選挙権を有する者は審査権を有すると定めている。
そのため,本件では国政選挙に投票する権利とともに,最高裁判所裁判官の国民審査に投票する権利も問題となっている。

令和8年10月17日に確認した現行の公職選挙法11条1項2号は,拘禁刑以上の刑に処せられ,その執行を終わるまでの者を対象とする。
これは本件で判断対象とされている改正前の規定と時点が異なるため,現在の条文だけを引用して当時の請求を説明しないよう注意が必要である。

第3 地位確認・違法確認・国家賠償の三つの請求

最高裁の公式事件概要によれば,上告人の請求は,次のように整理できる。
将来の投票についての確認と,過去に投票できなかったことに対する損害賠償は,対象とする救済が異なる。

請求求めている判断対象となる救済
地位確認(主位的請求)次回の衆院選・参院選及び国民審査で投票できる地位にあること将来の投票資格の確認
違法確認(予備的請求)懲役刑を受けていることを理由に,次回の各選挙等で投票させないことが違法であること将来の取扱いの違法確認
国家賠償請求規定を改廃する立法措置がとられず,選挙権等を行使できなかったことについての賠償過去の損害に対する金銭的救済

第一審の東京地裁令和5年7月20日判決(令和4年(行ウ)第369号)の1頁~2頁には,地位確認を主位的請求,違法確認を予備的請求とする構成と,3万円の損害賠償請求が記載されている。
主位的請求と予備的請求という関係を維持して読むことが,主文の「却下」と「棄却」を理解する前提となる。

第4 東京高裁の判断はどう整理されているか

1 規定の憲法適合性と国家賠償

最高裁の公式事件概要は,原判決である東京高裁判決について,規定が憲法15条1項・3項,43条1項,44条ただし書及び79条2項・3項に反するものではなく,立法不作為も国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえないとしたものと説明している。
原審は,主位的な地位確認請求及び国家賠償請求を棄却した。

規定の憲法適合性と,国会が規定を改廃しなかったことについての国家賠償責任は,別の判断事項である。
判決を読む際には,一方の結論から他方の結論を自動的に導かず,各請求についての判断と理由を確認する必要がある。

2 予備的な違法確認請求の却下

公式事件概要によれば,原審は,予備的な違法確認請求について,主位的な地位確認請求の方がより適切であるとして,確認の利益を欠き,訴えを却下すべきであるとした。
この部分は,規定を合憲と判断したことだけを意味するものではなく,確認訴訟の適法性に関する判断である。

第一審判決の主文も,違法確認請求に係る訴えを却下し,その余の請求を棄却するという形で書かれている。
「請求が認められなかった」という説明だけでは,実体判断と訴訟要件の判断の違いが伝わらない。

第5 第一審判決から分かる憲法上の対立点

東京地裁判決3頁~5頁は,選挙権を国民主権に基づく国民固有の権利と位置付ける一方,選挙人団の一員として公務を行う性格もあるとし,選挙人の資格を定める立法について一定の合理的裁量を認めた。
同判決は,立法目的の合理性と,その目的を達成する手段としての必要性・合理性という観点から審査している。

同判決5頁~6頁には,在外国民の選挙権を扱った従前の最高裁判決の厳格な基準によるべきであるとの原告の主張と,選挙人の資格を定める本件とは事案の性質が異なるとする裁判所の判断が記載されている。
ここには,選挙権の行使を制限する問題と,選挙人の資格を定める問題とをどのように捉えるかという対立がある。

以上は第一審判決の判断枠組みの説明である。
最高裁の公式事件概要は,原審の結論と上告審の争点を示しており,第一審の理由付けをそのまま最高裁の判断として読むことはできない。

第6 大法廷の裁判を読むときの確認点

1 憲法判断の対象と審査の基準

裁判書では,どの時点の規定を対象に,選挙権と国民審査権について,どの憲法上の根拠と審査基準を示しているかを確認する。
制限の目的だけでなく,対象者の範囲や制限される期間についての説明も,判断の内容を把握するための手掛かりとなる。

2 各請求についての主文と理由

地位確認,予備的な違法確認及び国家賠償について,それぞれ訴えが適法とされたか,請求が認められたかを分けて読む。
個別意見が付されている場合には,裁判所の意見と,各裁判官の補足意見・意見・反対意見を区別する。

大法廷への回付や口頭弁論の開催は,それ自体が違憲という結論を示すものではない。
法廷の役割と回付の条件は,最高裁判所とはに,評議・採決と個別意見の仕組みは,最高裁判所は判決をどう決めるかにまとめている。

第7 よくある質問

1 受刑者の国民審査権も争われているのか

争われている。
国民審査法4条が衆議院議員の選挙権と審査権を結び付けているため,公式事件概要は国政選挙の選挙権と国民審査の審査権の双方を争点に挙げている。

2 選挙無効訴訟と同じ事件なのか

本件では,国に対して投票できる地位等の確認と損害賠償が求められている。
特定の選挙の効力を争う選挙無効訴訟とは,請求の内容を分けて理解する必要がある。
選挙無効訴訟の仕組みは,選挙無効訴訟の記事を参照されたい。

3 現行法の「拘禁刑」と本件の「懲役刑」は同じ表記に直すべきか

本件上告人の刑は,改正前の刑法に基づく懲役刑である。
その事実を記す箇所は「懲役刑」とし,現行の公職選挙法の条文を説明する箇所では「拘禁刑」として,それぞれの時点と対象を示す必要がある。

第8 出典

最高裁判所広報課「受刑者選挙権確認等請求事件について」(PDF実頁1頁)。
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/jiangaiyou_06_193.pdf

東京地裁令和5年7月20日判決(令和4年(行ウ)第369号)。
請求・主文はPDF実頁1頁~3頁,第一審の憲法判断の枠組みは3頁~6頁を参照した。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-92509.pdf

e-Gov法令検索「公職選挙法」11条1項2号及び「最高裁判所裁判官国民審査法」4条。
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000100
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC1000000136

弁護士ドットコムニュース(令和8年10月14日付)。大法廷弁論の実施に関する報道。
https://www.bengo4.com/c_18/n_21052/

第9 関連記事

大法廷の言渡し済みの裁判を調べる際は,最高裁判所大法廷の判決及び決定の一覧を参照されたい。
個別事件の争点,原審判断及び裁判の結論は,各裁判書とその公表時点を確認して読む必要がある。