目次
1 第1号法定受託事務
2 選挙無効訴訟の位置づけ
3 一票の格差訴訟における被告等
4 大阪法務局訟務部
1 第1号法定受託事務
(1) ①国政選挙,②旅券の交付,③国の指定統計,④国道の管理,⑤戸籍事務,⑥生活保護及び⑦マイナンバー事務は,第1号法定受託事務です(地方自治法2条10項及び別表第一参照)。
第1号法定受託事務とは,法律又はこれに基づく政令により都道府県,市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち,国が本来果たすべき役割に係るものであって,国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるものをいいます(地方自治法2条9項1号)。
(2) 地方自治体が有するところの,第1号法定受託事務に関する行政訴訟における法務局等(法務局訟務部及び地方法務局訟務部門のことです。)との接点としては以下のものがあります。
① 法務局等に対して報告すること(法務大臣権限法6条の2第1項)。
② 法務局等から助言,勧告,資料提出の要求及び指示を受けること(法務大臣権限法6条の2第3項)。
③ 法務局等に対して訴訟の実施請求をすること(法務大臣権限法7条1項)。
(3) 第1号法定受託事務において当事者となる例は以下のとおりです。
① 自治体が当事者となる例としては,生活保護受給申請を拒否した市町村長の処分に係る取消訴訟があります。
② 自治体の行政庁が当事者となる例としては,衆議院(小選挙区選出)議員又は参議院(選挙区選出)議員の選挙に関して,都道府県選挙管理委員会を被告として提起された選挙無効請求訴訟があります。
(4) 法務省HPに「法定受託事務に関する訴訟の報告制度」が載っています。
2 選挙無効訴訟の位置づけ
(1) 公職選挙法204条は,選挙人又は公職の候補者のみがこれを提起し得るものと定め,同法205条1項は,上記訴訟において主張し得る選挙無効の原因を「選挙の規定に違反することがあるとき」と定めており,この無効原因は,主として選挙管理の任にある機関が選挙の管理執行の手続に関する明文の規定に違反することがあるとき又は直接そのような明文の規定は存在しないが選挙の基本理念である選挙の自由公正の原則が著しく阻害されるときを指します(最高裁平成29年10月31日判決。なお,先例として,最高裁昭和27年12月4日判決,最高裁昭和51年9月30日判決,最高裁平成26年7月9日判決参照)。
(2)ア 公職選挙法204条の選挙無効訴訟において,選挙人は,同法205条1項所定の選挙無効の原因として同法9条1項並びに11条1項2号及び3号の規定(受刑者の選挙権及び被選挙権の制限)の違憲を主張することができません(最高裁平成26年7月9日決定)。
イ 公職選挙法204条の選挙無効訴訟において,選挙人は,同法205条1項所定の選挙無効の原因として同法10条1項2号の規定(参議院議員の被選挙権は年齢満30歳以上の者だけが有すること)の違憲を主張することができません(最高裁平成29年10月31日判決)。
ウ 公職選挙法204条の選挙無効訴訟において,選挙人は,同法205条1項所定の選挙無効の原因として,年齢満18歳及び満19歳の日本国民につき衆議院議員の選挙権を有するとしている同法9条1項の規定の違憲を主張することはできません(最高裁平成31年2月28日決定)。
(3) 一票の格差に関する無効訴訟(公職選挙法204条)の対象となっている選挙区については,当該訴訟が係属している限り,補欠選挙ができません(公職選挙法33条の2第7項)。
(4) 平成6年4月11日に設置された衆議院選挙区画定審議会は,衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関して調査審議をし,必要があると認めるときは,その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告を行っています(総務省HPの「衆議院小選挙区画定審議会」参照)。
3 一票の格差訴訟における被告等
(1) 衆議院(小選挙区選出)議員又は参議院(選挙区選出)議員の選挙の効力に関する訴訟は,当該都道府県の選挙管理委員会を被告とし,当該選挙の日から30日以内に,高等裁判所に提起することとなります(公職選挙法204条)。
そのため,一票の格差訴訟における被告は都道府県管理委員会となります。
(2) 総務省自治行政局選挙部管理課訟務専門官は,選挙訴訟等に関する事務を行っています(総務省組織規則27条3項)。
4 大阪法務局訟務部
(1) 大阪法務局訟務部には訟務部長1人(裁判官からの出向者です。),訟務部副部長5人(うち2人は裁判官からの出向者です。),訟務部付検事(裁判官からの出向者もいます。),訟務管理官,総括上席訟務官,上席訟務官,訟務官及び事務官がいます。
(2) 地方法務局訟務部門には総括上席訟務官,上席訟務官,訟務官及び事務官がいます(大阪法務局管内の地方法務局の場合,総括上席訟務官がいるのは京都地方法務局及び神戸地方法務局だけです。)。
5 関連記事その他
(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 訟務事務入門(平成18年3月)・書式編
・ 訟務事務心得集(平成22年9月改訂)
・ 逐条解説 法務大臣権限法(第2版・平成19年3月)
・ 法務大臣権限法の解説(平成24年度の文書)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 歴代の法務省訟務局長