その他裁判所関係

裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する衆議院法務委員会の附帯決議

目次
第1 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する衆議院法務委員会の附帯決議
7 令和 5年3月10日の衆議院法務委員会の付帯決議(第211回国会)
6 令和 4年3月 9日の衆議院法務委員会の付帯決議(第208回国会)
5 令和 3年3月12日の衆議院法務委員会の付帯決議(第204回国会)
4 令和 2年4月 3日の衆議院法務委員会の付帯決議(第201回国会)
3 平成29年3月31日の衆議院法務委員会の付帯決議(第193回国会)
2 平成28年3月18日の衆議院法務委員会の付帯決議(第190回国会)
1 平成25年3月26日の衆議院法務委員会の付帯決議(第183回国会)
第2 69期以降の司法修習生組別志望等調査表は存在しないこと
第3 法曹の質の検証
第4 関連記事その他

第1 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する衆議院法務委員会の附帯決議
7 令和5年3月10日の衆議院法務委員会の付帯決議(第211回国会)
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
    政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 民事訴訟手続の審理期間及び合議率の目標を達成するため、審理期間が長期化している近年の状況を検証し、審理の運用手法、制度の改善等に取り組むとともに、産業の高度化や国際化に対応できるよう裁判官の能力及び職責の重さの自覚の一層の向上に努めること。
二 裁判所職員定員法の改正を行う場合には、引き続き、判事補から判事に任命されることが見込まれる者の概数と判事の欠員見込みの概数を明らかにし、その定員が適正であることを明確にすること。
三 平成二十五年三月二十六日、平成二十八年三月十八日、平成二十九年三月三十一日、令和二年四月三日、令和三年三月十二日及び令和四年三月九日の当委員会における各附帯決議等を踏まえ、最高裁判所において、引き続き、判事補の定員の充足に努めるとともに、判事補の定員の在り方について、現実的な実員の増減見通しも踏まえて更なる削減等も含め検討していくこと。
四 現在の法曹養成制度の下で法曹志望者の数について顕著な改善傾向が見られないことを踏まえ、そのことが法曹の質や判事補任官者数に及ぼす影響につき引き続き必要な分析を行い、その結果を国会に示すとともに、同制度や法改正の趣旨を踏まえた更なる法曹養成機能の向上、法曹志望者の増加等に向けた取組をより一層進めること。
五 裁判手続等のデジタル化の進捗状況を踏まえ、合理化・効率化が可能な事務と注力すべき事務をそれぞれ考慮した上で適切な人員配置を行うよう努めるとともに、裁判官以外の裁判所職員の労働時間を把握し、適切な労働環境を整えること。

6 令和4年3月9日の衆議院法務委員会の付帯決議(第208回国会)
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 民事訴訟手続の審理期間及び合議率の目標を達成するため、審理期間が長期化している近年の状況を検証し、審理の運用手法、制度の改善等に取り組むとともに、産業の高度化や国際化に対応できるよう裁判官の能力及び職責の重さの自覚の一層の向上に努めること。
二 裁判所職員定員法の改正を行う場合には、引き続き、判事補から判事に任命されることが見込まれる者の概数と判事の欠員見込みの概数を明らかにし、その定員が適正であることを明確にすること。
三 平成二十五年三月二十六日、平成二十八年三月十八日、平成二十九年三月三十一日、令和二年四月三日及び令和三年三月十二日の当委員会における各附帯決議等を踏まえ、最高裁判所において、引き続き、判事補の定員の充足に努めるとともに、判事補の定員の在り方について、現実的な実員の増減見通しも踏まえて更なる削減等も含め検討していくこと。
四 現在の法曹養成制度の下で法曹志望者の数について顕著な改善傾向が見られないことを踏まえ、そのことが法曹の質や判事補任官者数に及ぼす影響につき引き続き必要な分析を行い、その結果を国会に示すとともに、同制度や法改正の趣旨を踏まえた更なる法曹養成機能の向上、法曹志望者の増加等に向けた取組をより一層進めること。
五 司法制度に対する信頼確保のため、訟務分野において国の指定代理人として活動する裁判官出身の検事の数の縮小を含む必要な取組を進めること。
六 裁判手続等のデジタル化の進捗状況を踏まえ、合理化・効率化が可能な事務と注力すべき事務をそれぞれ考慮した上で適切な人員配置を行うよう努めるとともに、裁判官以外の裁判所職員の労働時間を把握し、適切な労働環境を整えること。

5 令和3年3月12日の衆議院法務委員会付帯決議(第204回国会)
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 民事訴訟手続の審理期間及び合議率の目標を達成するため、審理期間が長期化している近年の状況を検証し、審理の運用手法、制度の改善等に取り組み、その上で、目標達成に必要な範囲で削減を含め裁判官の定員管理を行うこと。
二 裁判所職員定員法の改正を行う場合には、引き続き、判事補から判事に任命されることが見込まれる者の概数と判事の欠員見込みの概数を明らかにし、その定員が適正であることを明確にすること。
三 平成二十五年三月二十六日、平成二十八年三月十八日、平成二十九年三月三十一日及び令和二年四月三日の当委員会における各附帯決議等を踏まえ、最高裁判所において、引き続き、判事補の定員の充足に努めるとともに、判事補の定員の在り方について、更なる削減等も含め検討していくこと。
四 現在の法曹養成制度の下で法曹志望者の減少について顕著な改善傾向が見られないことを踏まえ、そのことが法曹の質や判事補任官者数に及ぼす影響につき必要な分析を行い、その結果を国会に示すとともに、法改正を踏まえた更なる法曹養成機能の向上、法曹志望者の増加等に向けた取組をより一層進めること。
五 司法制度に対する信頼確保のため、訟務分野において国の指定代理人として活動する裁判官出身の検事の数の縮小を含む必要な取組を進めること。
以上であります。

4 令和 2年4月 3日の衆議院法務委員会の付帯決議(第201回国会)
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
    政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 民事訴訟事件の内容の複雑困難化及び専門化について、引き続き、その実情を把握し、必要な対応を行うとともに、訴訟手続の審理期間及び合議率の目標を達成するため、審理期間が長期化している近年の状況を検証し、審理の運用手法、制度の改善等に取り組み、その上で、目標達成に必要な範囲で裁判官の定員管理を行うこと。
二 裁判所職員定員法の改正を行う場合には、引き続き、判事補から判事に任命されることが見込まれる者の概数と判事の欠員見込みの概数を明らかにし、その定員が適正であることを明確にすること。
三 平成二十五年三月二十六日、平成二十八年三月十八日及び平成二十九年三月三十一日の当委員会における各附帯決議等を踏まえ、最高裁判所において、引き続き、判事補の定員の充足に努めるとともに、判事補の定員の在り方について、更なる削減等も含め検討していくこと。
四 現在の法曹養成制度の下で法曹志望者が減少していることを踏まえ、そのことが法曹の質や判事補任官者数に及ぼす影響につき必要な分析を行い、その結果を国会に示すとともに、法曹養成機能の向上、法曹志望者の増加等に向けた取組をより一層進めること。
五 司法制度に対する信頼確保のため、訟務分野において国の指定代理人として活動する裁判官出身の検事の数の縮小に関する政府答弁を遵守し、必要な取組を進めること。

3 平成29年3月31日の衆議院法務委員会付帯決議(第193回国会)
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
    政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 民事訴訟事件の内容の複雑困難化及び専門化について、その実情を把握し、必要な対応を行うとともに、訴訟手続の審理期間及び合議率の目標を達成するため、審理の運用手法、制度の改善等を検討し、その上で、目標達成に必要な範囲で裁判官の定員管理を行うこと。
二 裁判所職員定員法の改正を行う場合には、引き続き、判事補から判事に任命されることが見込まれる者の概数と判事の欠員見込みの概数を明らかにすること。
三 平成二十五年三月二十六日の当委員会の附帯決議等を踏まえ、最高裁判所において、引き続き、判事補の定員の充足に努めるとともに、判事補の定員の在り方について、その削減等も含め検討していくこと。
四 技能労務職員の定員削減に当たっては、業務の円滑、適切な運営に配慮しつつ、業務の外部委託等の代替措置の状況を踏まえて適切に行うこと。

五 複雑・多様化している令状事件については、引き続き、実態を把握し、適切な処理が図れるよう体制整備に努めること。
六 司法制度に対する信頼確保のため、訟務分野において国の指定代理人として活動する裁判官出身の検事の数の縮小に関する政府答弁を引き続き遵守すること。

2 平成28年3月18日の衆議院法務委員会付帯決議(第190回国会)
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
    政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 民事訴訟事件の内容の複雑困難化及び専門化について、その実情の把握に努め、必要な対応を行うこと。
二 司法制度に対する信頼確保のため、訟務分野において国の指定代理人として活動する裁判官出身の検事の数の縮小に関する政府答弁を遵守すること。
三 今後も、裁判所職員定員法の改正を行う場合には、判事補から判事に任命されることが見込まれる者の概数と判事の欠員見込みの概数を明らかにすること。
四 裁判の迅速化に関する法律第二条第一項に定められた第一審の訴訟手続の審理期間の目標を踏まえ、最高裁判所において、審理期間及び合議率の目標について合理的な時期に遅滞なく達成できるよう努めること。

五 前項の目標を達成するため、審理の運用手法、制度の改善等について、不断の検討を行うとともに、目標達成に必要な範囲で裁判官の定員管理を行うこと。
六 平成二十五年三月二十六日の当委員会の附帯決議を踏まえ、最高裁判所において、判事補の定員の充足に努めるとともに、判事補の定員の在り方について、その削減等も含め検討すること。
七 裁判官以外の裁判所職員の員数を減少する場合には、裁判員裁判等による国民に開かれた司法制度の実現が損なわれることとならないよう、裁判所への来庁者等の安全確保に必要な警備態勢の維持に配慮すること。

1 平成25年3月26日の衆議院法務委員会付帯決議(第183回国会)
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
    政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、下級裁判所の判事補の欠員が増加傾向にあることを踏まえ、法曹養成制度の在り方に関する検討結果に基づき適切に対処することに加え、下級裁判所における適正迅速な裁判を可能とするため、判事及び判事補の定員の充員に努めること。


第2 69期以降の司法修習生組別志望等調査表は存在しないこと
・ 令和元年度(最情)答申第20号(令和元年6月21日答申)における「最高裁判所事務総長の説明の要旨」には以下の記載があります。
    司法研修所では,集合修習の各開始時に,修習終了後の志望を記載した書面(裁判官,検察官,弁護士,その他の職業,未定のいずれかを選択させるなどしたもの)を司法修習生に提出させている。
    第68期までの司法修習生については,これらの書面を基に,集合修習期間中に志望の状況等を一覧表にした司法修習生組別志望等調査表(以下「調査表」という。)を作成して司法研修所教官に提供しており,その作成目的は,司法研修所事務局として司法修習生の志望状況の概要を把握するほか,この情報を司法研修所教官に提供して,指導の参考にしてもらうことにあった。
    しかし,集合修習期間中,各教官は,各修習生の志望を個別に把握すれば足り,調査表を用いる必要は高くない上,調査表を作成する事務負担は大きいことから,文書作成事務の合理化の観点から当該事務を見直して,第69期からは調査表を作成しないこととした。
    なお,司法研修所教官は,集合修習期間中,担当する組の各修習生の志望状況を直接確認できる上,定期的に他の教官と情報交換をする場を有しているので,個々の司法修習生の志望状況に加え,他の組や全体の志望状況を必要に応じて把握することが可能である。
    以上のとおり,司法研修所においては,司法修習生の志望の状況等を一覧表にした調査表を作成する必要がなく,本件開示申出文書は作成し,又は取得していない。

第3 法曹の質の検証
1 第204回国会衆議院法務委員会において、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対し、「現在の法曹養成制度の下で法曹志望者の減少について顕著な改善傾向が見られないことを踏まえ、そのことが法曹の質や判事補任官者数に及ぼす影響につき必要な分析を行い、その結果を国会に示すとともに、法改正を踏まえた更なる法曹養成機能の向上、法曹志望者の増加等に向けた取組をより一層進めること」との附帯決議がされ、同国会参議院法務委員会においても、同法律案に対し,上記同様の附帯決議がされました。
2 法務省HPの「法曹の質に関する検証結果報告」に,令和4年3月に作成された法曹の質に関する検証結果報告書・概要,及び法曹の質に関する検証結果報告書が載っています。

第4 関連記事その他
1 平成13年4月当時の最高裁判所事務総局の考えが,首相官邸HPの「裁判所の人的体制の充実について(司法制度改革審議会からの照会に対する回答)」(平成13年4月16日付)に書いてあります。
    5頁には「現在の事件数を前提に,迅速化と専門化への対応,裁判官制度改革への対応を図るために,約500人の裁判官の増員が必要である。」と書いてあります。
2 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 下級裁判所の裁判官の定員配置
・ 判事補の採用に関する国会答弁
・ 全司法本部の中央執行委員長が裁判所職員の定員に関して国会で述べた意見
・ 集合修習時志望者数(A班及びB班の合計数)と現実の判事補採用人数の推移
・ 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 級別定数の改定に関する文書
・ 平成28年度概算要求(増員関係)に関する最高裁の説明
・ 裁判官の号別在職状況
・ 新任判事補を採用する際の内部手続
・ 検事採用願を提出した検事志望の司法修習生は二回試験に落ちない限り採用されると思われること
・ 国会制定法律の一覧へのリンク

全司法本部の中央執行委員長が裁判所職員の定員に関して国会で述べた意見

目次
第1 全司法本部の中央執行委員長が裁判所職員の定員に関して国会で述べた意見
第2 関連記事

第1 全司法本部の中央執行委員長が裁判所職員の定員に関して国会で述べた意見
○全司法本部の中矢正晴中央執行委員長は,参考人として招致された平成29年3月24日の衆議院法務委員会において以下の意見を述べています(ナンバリングを追加しました。)(全司法新聞2017年4月号(2262号)の「中矢委員長 衆議院参考人招致 裁判所の職場実態を国会で述べる」参照)。

1 おはようございます。私は、裁判所職員でつくっております全司法の中央執行委員長をやっております中矢と申します。
  最初に、このような機会を与えていただいたことに対して、皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。
  私は、裁判所職員の職員団体ということでありますし、私自身、昭和六十三年から、全司法の委員長に就任しますまで二十七年間、裁判所書記官として仕事をしてまいりましたので、その裁判所職員の立場から、今般提出されております裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、私なりの考え方をお話ししたいと思っております。
2(1)  最初に結論を申し上げますと、大変失礼な言い方になって恐縮ではありますが、あえて申し上げるなら、十分なものではないと言わざるを得ないと思っております。その理由は、次に述べる三点であります。
  第一点目でありますが、裁判官、裁判所書記官について、今年度の増員を下回る増員数となっている点であります。
  定員振りかえを除く実質的な増員数で見ますと、今年度の増員数は、裁判官三十二人、書記官三十九人でしたが、平成二十九年度の増員数として示されているものは、裁判官が二十七人、書記官が二十四人となっております。職場実態からしますと、本来はもっと多くの増員が必要だと考えておりますが、少なくとも、今年度と比較してその増員数を下回る理由はないのではないかと思っております。
  裁判官の増員も重要ですが、私のきょうの立場でありますので、職員のことを中心にお話をさせていただきたいと思います。
(2)ア  現在、裁判所の中でとりわけ増員の必要性が高いのが家庭裁判所であります。事件数も増加傾向にあることに加えて、三点申し上げます。
  一つ目として、離婚や子供をめぐる問題など家庭を取り巻く社会環境が複雑になっているもとで、裁判所に求められる役割も大きくなっております。
  また、二つ目ですが、平成二十五年から家事事件手続法が施行され、これまで以上にきめ細かな事件の処理が求められるようになっている点であります。
  第三点目に、成年後見制度でありますが、認知症などの方に裁判所が後見人や保佐人をつけるシステムでありますので、高齢化社会が進むもとで、今後ますます重要になります。昨年四月には成年後見利用促進法が成立をし、今月中にも政府における基本計画が策定されて、これに従った取り組みが実施されていくというふうに承知をしておりますので、これを踏まえた人的体制の整備が必要であります。
  この成年後見のように、家庭裁判所の手続には、民事や刑事の訴訟、いわゆる争いとは違って、申し立てに基づいて裁判所が事実を調査し決定をする、いわゆる非訟事件と呼ばれる手続が多く存在します。こういう手続では、裁判官の指示を受けて実際の実務を担当する書記官が、当事者との調整を行ったり判断に必要な資料をそろえたりと、大きな役割を果たします。また、家庭裁判所においては、弁護士を頼まずに当事者御本人が申し立てをする事件も多いことから、手続を進めていく上で、書記官が時間をかけて丁寧に説明するという必要性も大きくなっております。
イ  家裁の体制が実際に必要だということで、この数年間、全国の家庭裁判所に一定数の書記官が増配置をされてきました。しかし、毎年の増員数が家庭裁判所に増配置するだけの人数に足りないために、その大部分は地方裁判所や簡易裁判所からの配置がえ、私どもは人員シフトと呼んでおりますが、この人員シフトによって行われております。
(3)  それでは、人員が減らされている地方裁判所の方はどうかというふうに見ますと、民事事件では、昨今の社会経済情勢を受けて、ますます複雑困難化する事件について適正迅速に処理することが必要であります。
  刑事事件でありますが、このところ、準抗告といいまして、勾留など、被告人などの身柄の決定に対する不服申し立ての手続ですとか、医療観察といいまして、心神喪失等の状態で重要な行為を行った者に対して入院を決定するような手続が増加をしております。また、国対被告人の関係で、犯罪を犯した者を処罰するというのが刑事手続の基本的な構造でありますが、近年は、被害者保護のためのさまざまな手続が導入をされ、事件関係者の情報の秘匿ということも求められるということであります。
  敷衍しておきますと、裁判の公開という基本的な考え方がありますので、かつては、裁判所に出されたものは公開されるものだという考え方が主流でありましたが、現在では、個人情報の秘匿については、刑事事件だけではなく、民事や家事の事件においても厳格になってきておりまして、その分、慎重さが求められ、事務量もふえているという問題もございます。
  このように、従来の刑事裁判という枠におさまり切らない事務もふえてきており、それに従って、事件数にあらわれない現場の負担も増加をしているところであります。とりわけ、昨年五月に刑事訴訟法が改正をされ、順次施行されておりますことから、今後これに対する対応も必要になります。
  地方裁判所についていいましても、これまでにお話ししてきましたとおり、家裁へのシフトの受け皿ということではなくて、むしろ、それぞれの分野について人的体制の整備を図る必要があると考えております。
  また、人員シフトという問題では、地方から都市への人員シフトという問題もあります。家裁を中心に大都市の人員が必要であることから、この間、毎年地方の庁の職員が減員をされており、今年度でいえば、札幌高裁管内で七名、広島高裁管内で十一名、高松高裁管内で七名、福岡高裁管内で十五名が削減をされました。決して地方の職場に余裕があるわけではありませんし、人数の少ない小規模庁において人員を削減するということの影響は、大規模庁と比較しても大きいものがあります。また、地方における国民の司法アクセスという観点からも、地方へのしわ寄せは限界があります。
  以上のことから、法案の数にとどまらない、大幅増員が必要であると考えております。この点が一点目であります。
3(1)  第二点目として、家庭裁判所調査官の増員がない点であります。
  家裁調査官は、心理学、社会学、社会福祉学、教育学などの専門的知識を活用し、調査、調整活動を行う専門職であります。本日お配りをしてあります資料の最初がレジュメになっておりますが、開いていただきますと、三ページ、四ページあたりのところに、現場の家裁調査官からの聞き取りをもとに作成をしました家裁調査官の役割と昨今の職場実態について記載してありますので、ごらんをいただければ幸いに思います。
  ここでは、家裁調査官の仕事について簡単に説明をさせていただきますと、少年事件でいいますと、未成年者が引き起こした事件は、まず、原則として全件家庭裁判所にやってきます。その中で、家庭裁判所調査官が最初に面談を行って、非行の原因や背景、少年の状況などを調査し、それを踏まえて処分に対する意見を述べています。調査官の取り組みは、単なる事実の調査ではなく、少年の立ち直りや再犯防止のために大きな役割を果たしております。家事事件について申しますと、夫婦関係を調整する事件における子供の意思を調査したり、子供と離れて暮らしている親との面会交流をコーディネートしたりする。あるいは、成年後見において、成年後見を受ける本人の調査や、複雑困難な事件の調査をするといった役割を担っております。
  このように、家庭裁判所における調査官の役割は極めて大きく、かつ、調査官の調査の対象になっております少年や子供、家庭をめぐる状況がどんどん複雑になっているわけですから、その仕事も年を追うごとに複雑になり繁忙になっております。人と向き合う仕事でありますので、時間で区切ることも難しく、きちんと行おうとすればするほど非常に時間と労力を要する仕事であることを御理解いただきたい、こういうふうに考えております。
  そして、家裁の充実を図ろうとすれば、家裁調査官の人員体制の整備なしには考えられません。しかし、家庭裁判所調査官は平成二十一年度に五人の増員を行ったのを最後に増員が行われておらず、今般提出されております法案でも増員がありません。
(2)  私どもに対する最高裁の説明では、近年のピークであった昭和五十九年と比較して、近年で三十余年前の五十九年だそうでありますが、五十九年と比較をして少年事件が著しく減少していることが増員を要求しない理由とされていますが、平成十一年以降、司法制度改革が行われ、及び先ほどから述べています近年の社会状況によりますと、家庭裁判所が扱う事件の領域は格段に広くなっておりますし、求められる役割も大きくなっております。また、減少したとされる少年事件についても、少年をめぐる社会状況が複雑になっていることに加えて、被害者保護のための取り組みなどもあって、三十年以上前の昭和の時代とは比較できない事務処理状況にあるというふうに考えております。
  現場の調査官からは、近年の少年の特徴として、自分の世界にこもりがちで非社会的な少年がふえており、少年がどのようなメカニズムから非行を起こしてしまったのかを解明するために少年の話を聞き出すのも非常に時間や手間がかかっているということの声も聞かれます。
  以上のことから、家裁調査官の増員が必要不可欠であるという点が二点目であります。
4(1)  第三点目でありますが、協力義務のない政府の定員合理化計画に協力をしている点であります。
  法案では、裁判所裁判官、裁判所書記官の合計で六十三人の増員がある一方、政府の定員合理化計画に協力をして七十一人を削減するために、差し引きで八人の減員となっております。
  きょうお配りをしてあります資料の中に、こういう二十年ほどの裁判所予算と定員、定員振りかえを除いておりますので、少し、その点はありますが、増員分などを記載した一覧表を入れております。
  政府は、平成二十六年七月に、定員合理化計画を閣議決定いたしました。裁判所はこの計画の対象ではありません。ところが、政府が定員合理化に対する協力を要請し、最高裁がこれに協力をする形で、毎年必ず定員削減が行われています。私たちの理解では、裁判所はこの定員合理化については協力する義務がないというふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。
(2)  削減される定員は、技能労務職員が対象になっております。具体的に言いますと、庁舎清掃などを担当する庁務員、庁舎管理などのための守衛、裁判所の声の窓口となってきた電話交換手、庁外の尋問や検証、少年事件における身柄押送などを担ってきた自動車運転手などの職種であります。裁判所は、従来、これらの職員を自前で配置することによって、きめ細かく行き届いた運営がされてきたものであります。この定員削減が行われることは、職員の立場としてはじくじたる思いがあります。
  仮に、政府の政策によってこれらの職種が担ってきた業務をアウトソーシングせざるを得ないのであれば、せめてこの定員を削減するのではなくて、定員振りかえなどの措置も使いながら、裁判所の定員として活用していただきたいと考えています。さきに述べた裁判部門の充実に充てるということはもとより、職員の目から見ますと、事務局部門であっても、情報セキュリティーは非常に大切な問題になっておりますが、情報セキュリティーの対策であったり、情報公開や裁判制度を広く国民に伝えるための広報活動、あるいは、国民が安心して利用できる庁舎にするためにかかわる業務など、人的体制を整備する部門はたくさんあるというふうに考えております。さらに視野を広げれば、裁判官不在庁の解消を初めとした国民の司法アクセスの拡充のための人員配置など、司法の容量拡大の観点から必要な人員配置もあるものと考えます。
  さらには、社会情勢が大きく動いておりますもとで、昨今、原発訴訟でありますとか基地訴訟を初め、国民的な議論や社会的な論点を含んだ事件も多く係属するようになりました。こうした傾向は今後ますます強まるのではないかと考えています。私は、こうした事件について適正迅速に対応する上でも、裁判官や裁判所職員の人員配置の整備が重要だと思います。
  裁判所の予算は、かつては国家予算の約〇・四%と言われておりましたが、現在は〇・三%台を推移しております。ある意味、マンパワーが全ての役所であります。そのほとんどが人件費でありますので、必要な人的体制を整備することを正面に据えて、予算の面でも三権分立にふさわしい拡充が図られることを願っております。
  以上のことを訴えまして、私からの陳述といたします。

  御清聴ありがとうございました。(拍手


第2 関連記事その他
1 「「法の番人」内閣法制局の矜持」(著者は阪田雅裕 元内閣法制局長官)22頁及び23頁には,筆者が北海道の苫小牧税務署長をしていた当時の体験として,以下の記載があります。
    組織というのはどうしても、上部組織の嫌がるようなことを耳に入れないようにする習性があるのです。だから不祥事などはできるだけ末端でもみ消して上に伝えない。たとえば、こんな施策をやってみたらどうかと企画立案をして現場で試行してもらう。後で「どうだった?」と聞くとたいてい「うまくいっています」という話になるのですが、本当はそうではない。そういう声は、組合交渉のような場を通じてしか上がってこないのです。だから組合というのは-御用組合ではない本当の組合が-とても大事だということを学ばせてもらいました。
2 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
・ 最高裁判所の国会答弁資料
・ 最高裁及び法務省から国会への情報提供文書
・ 裁判所をめぐる諸情勢について
・ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 裁判所職員の予算定員の推移
・ 級別定数の改定に関する文書
・ 下級裁判所の裁判官の定員配置
・ 平成28年度概算要求(増員関係)に関する最高裁の説明
・ 国会制定法律の一覧へのリンク
・ 裁判官の号別在職状況
・ 判事補の採用に関する国会答弁

平成28年度概算要求(増員関係)に関する最高裁の説明

目次
1 平成28年度概算要求(増員関係)に関する最高裁の説明
2 関連記事その他

1 平成28年度概算要求(増員関係)に関する最高裁の説明
・ 最高裁が作成した平成27年8月31日付の「全司法本部との応答メモ」にある記載を,以下のとおり抜粋します(全司法とは,全司法労働組合のことです。)。

(1) 平成28年度概算要求(増員関係)について
    国家公務員の定員について,政府は,平成26年7月25日,業務改革を推進して定員の合理化に強力に取り組むこと等を内容とする「国家公務員の総人件費に関する基本方針」を閣議決定し,同日,毎年2%(5年10%)以上を合理化すること等を内容とする「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」を閣議決定しており,国の財政状況が逼迫している中,既存業務の増大への対応は定員の再配置により対処する方針を明確にするなど,増員を取り巻く情勢は非常に厳しい状況になっている。
    他方,司法制度改革については,法制度の枠組みが完成し,裁判員制度をはじめとして実施・運用の段階に入っているところ,裁判所としては,これらの制度改革をより実効性のあるものとするため,引き続き種々の見直しを行うとともに,裁判所の人的態勢についても国民の負託に応えていく裁判を実現するための充実強化を図っていく必要がある。具体的には,社会経済情勢の変化等を背景として個々の事件がより一層複雑困難化している民事訴訟事件の審理を充実させるとともに,家事事件について,平成25年1月に施行された家事事件手続法の趣旨に沿った適正な手続を実現するとともに,引き続き増加する成年後見関係事件に適切に対応するためには,裁判部門の処理態勢を更に強化する必要がある。
    そこで,平成28年度は,極めて厳しい財政状況の下ではあるが,裁判官(判事)32人,書記官39人,合計71人の増員要求を行うとともに,速記官から書記官へ5人の振替要求を行った。
   なお,平成28年度については,先に述べた閣議決定を踏まえた協力要請を受けて,裁判所では,定員合理化計画に協力するため,71人の定員削減を予定している。

(2) 質疑応答部分
(増員要求数)
① 裁判官の増員要求数を昨年と同じ判事32人としたのはなぜか。
→ 現在の事件動向を踏まえた上で,より一層複雑困難化する事件に適切に対処するとともに,今後の裁判部門の充実強化という観点から検討した結果,判事32人の増員を要求することとしたものである。

② 裁判官の増員要求数は昨年と同じであるのに,書記官の振替を含めた増員要求数は昨年よりも1人減ったのはなぜか。
→ 書記官は,裁判所の基幹官職として,適正迅速な裁判を実現していく中で重要な役割を果たしていると認識しており,これまでも事件動向等を踏まえながら,必要な人員の確保に努めてきたものである。具体的には,平成9年からの15年間で振替を含めて2600人を超える大幅な増員を行ったほか,平成24年度に80人,平成25年度に48人,平成26年度に44人,平成27年度に39人の増員をして,繁忙庁を中心に配置し,必要な体制整備を行ってきたところであり,平成28年度については,書記官44人を増員すれば,現有人員の有効活用と併せて,より適正かつ迅速な事件処理を行っていけると判断したものである。

③ 司法制度改革審議会で大幅に増員すべきである旨意見されたのであるから,更に大幅な増員要求を行うべきである。
→ 司法制度改革審議会において,裁判官については大幅な増員,裁判所書記官等の裁判所職員については,その質,能力の向上を一層推し進めるとともに,その適正な増加を図っていく必要があると意見されたことはそのとおりであるが,これまでも繰り返し説明しているとおり,国家財政は極めて厳しく,行政省庁は既存業務の増大への対応を定員の再配置により対処するよう求められている状況にある。国家公務員の定員を巡る情勢は,これまでにない極めて厳しいものであり,人員増に対する風当たりはますます強くなっている。
    さらに,書記官については,財政当局から,ここ数年にわたる定員振替による増員効果を指摘されており,事件数の動向の上でも,成年後見関係事件を除いて各種事件で減少又は横ばいとなっているものの,司法制度改革審議会において意見を述べた裁判部門の充実強化に向けた必要な人員の確保という観点を踏まえた要求を行うこととしたものである。

④ 東日本大震災からの復興においては法的紛争が増加すると思われるが,これに対応するための増員要求はしないのか。
→ 復興に関連して様々な法的紛争が提起されることを想定し,これらの紛争を適切に解決できるよう人的態勢を整備しておく必要があると考えており,平成24年4月に,被害の大きかった沿岸部に所在する庁を中心に書記官等の増配置を行ったところである。一方,阪神淡路大震災の経験を踏まえると,震災に伴う法的紛争の増加は一時期に集中し,一定期間経過後には収束に向かうと予想されることから,今回の増員を含めて,現有人員を有効活用することにより,震災による法的紛争の増加に対応することとし,震災を理由とした増員要求を行わないこととしたものである。

⑤ 成年後見関係事件の増加が著しいにもかかわらず,なぜ,家裁調査官の増員を要求しないのか。
→   家事事件は,後見関係事件が引き続き増加傾向にあるものの,少年事件については長期的に見た場合,減少傾向が続いており,平成26年の新受事件数は,近年のピークであった昭和58年に比べて約6分の1程度まで減少しており,家事,少年の事件全体を通じても,平成26年の新受件数の合計は,近年のピークであった昭和59年のそれを約7万件下回っている状況にある。これだけの減少は,財政当局との折衝に当たってかなり大きなインパクトを持つものと言わざるを得ない。その上,家裁調査官については,平成12年度から平成16年度まで毎年5人ずつ増員するとともに,平成15年度から平成18年度まで合計43人の事務官からの振替を行い,平成21年度については,5人の増員を行っており,平成28年度においては,現有人員の有効活用をすることによって,家事事件の適正迅速な処理を図ることができると判断したものである。

⑥ 増員の理由として家庭事件の処理の充実強化を挙げているが,なぜ,家裁調査官ではなく,書記官の増員を要求することになるのか。
→ 大幅な事件増加が続いている成年後見関係事件の処理については,本人の意向聴取等,家裁調査官が担うべき分野については,これまで家裁調査官の増員等によって態勢を整備し,併せて,効率的な事務処理を工夫することにより,事件数が増加する中でも適正な調査が行われるよう努めてきたところである。他方,成年後見関係事件の適正な処理のためには,家裁調査官が行う調査のみならず,書記官による法的な要件の審査,所定の手続の履践,事件関係者に制度を理解させるための説明が必要不可欠である。また,後見等監督事件の適正な処理のためには,後見人等から提出された財産目録,後見監督人から提出された報告書の精査等の事務をはじめ,後見人等や関係職種との連絡・調整などの役割を書記官が担っていくことが求められている。そのため,成年後見関係事件を中心として,家庭事件を適正迅速に処理するためには,書記官の増員が必要であると判断したものである。

⑦ 後見等監督事件は,性質上,長期的に係属することが予想される事件であり,事務量は将来に向けて増加する一方であるが,将来の事務処理態勢についてどう考えているのか。
→ 後見等監督事件については,これまでも,事務処理の合理化や各庁における運用の改善が図られてきたところであるが,後見等監督事件の性質上,長期的に係属し,その事務量が将来に向けて増加することが予想される状況を考えると,今後も事務処理の在り方について,引き続き検討するとともに,家事事件全体の事件動向や事件処理状況等を踏まえながら,適正な人員配置に努めていきたい。

(速記官の振替)
⑧ 速記官の書記官への振替要求を5人にしたのはなぜか。
→ これまで緩やかに録音反訳方式に移行し,速記官として働き続けることを希望する職員の任用等に支障を生じない範囲内で,速記官から書記官への振替要求をしてきたところであるが,平成28年度期首における速記官の現在院見込みを踏まえた上で,振替要求数を検討した結果である。

⑨ 今後も速記官から書記官への振替を要求していくのか。
→ これまで説明してきているとおり,緩やかに録音反訳方式に移行していくという当局の方針に変更はないが,次年度以降の振替要求数についても,期首における速記官の現在院見込み等を踏まえて検討していくことになる。

⑩ 書記官任用研修が終了したのになぜ振替を続けるのか。
→ 速記官から書記官への転官数のみが振替数の要因となるものではなく,振替数については,期首における速記官の現在員見込み等を踏まえて検討していくため,書記官任用研修が終了したからといって,振替が終わることにはならない。

⑪ 書記官任用研修終了後の対応について検討状況を明らかにしてもらいたい。
→ 平成21年度の書記官任用研修の意向調査で同研修の参加を希望しながら,家庭の事情等で平成21年度の研修に参加できなかった者に対して,同人らの事情を踏まえて何らかの対応がとれないか検討しているところであるが,書記官資格付与といった重要な問題であることから,検討のためにはある程度まとまった時間が必要と考えており,まだ検討状況を示せる段階にはない。

(事務官の振替)
⑫ 事務官から書記官への振替要求を行わなかったのはなぜか。
→ 平成24年4月の資料課組織の見直しに伴い,資料課に配置されていた定員については,その一部を書記官に振り替えたほか,事務局を含む繁忙庁の繁忙部署に行こうさせたところであるが,移行後においても,事務処理の簡素化,効率化という観点から更なる事務処理態勢の見直しを図りつつ,裁判部の充実強化という観点から,平成24年から3年にわたって30人を書記官に振り替えてきており,現在の事務官の職場状況等も踏まえ,今年度も振替要求を行わないこととしたものである。

⑬ 今後も事務官から書記官への振替は行わないのか。
→ 今後の事務官から書記官への振替については,事務処理の簡素化,効率化という観点から事務処理態勢の見直しを不断に図りながら,事務官の職場状況等を踏まえて検討していくことになる。

(その他)
⑭   なぜ政府の協力要請に裁判所が応じるのか。
→ 裁判所は行政機関ではないので,政府の定員合理化計画に直ちに拘束されるものではない。しかし,国家公務員の定員を巡る情勢が厳しさを増す中で,引き続き裁判部の充実・強化を図っていくためには,政府からの協力要請を踏まえて,国家の一機関として,他の行政官庁と同様に,事務の効率化等必要な内部努力を行い,定員合理化に協力することは必要と考えている。こうした考えに基づき,事務局部門に限って,従前から削減計画に協力しているものである。
今後も,司法行政部門について,裁判部門に影響を及ぼすことなく,事務の簡素化,合理化を行うことができる範囲に限って協力していくことになる。

⑮   合理化対象を事務局部門に限定し,裁判部門を除外しているのはなぜか。
→ 裁判所の使命は,適正迅速な裁判を実現することにある。その責務を直接担っている裁判部門については,事件数の動向や事件の難易等を踏まえた上で,上記の使命を果たすために必要な人員の確保を図っていく必要があり,本来的に計画的な人員削減になじまない。

⑯ 政府からの協力要請については,いつどのような形でなされたのか。
→ 平成26年7月25日に内閣官房長官から最高裁判所事務総長に宛てて,書面で協力要請がされた。内容は同日「国家公務員の総人件費に関する基本方針」及び「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」が閣議決定されたので,協力してもらいたいというものである。

⑰ 裁判所の合理化数はどのようにして決めたのか。
→ 内閣からの協力要請を受け,行政府省における削減合理化目標数,合理化率などを見ながら,国家公務員の定員を巡る情勢が厳しさを増す中で,引き続き裁判部の充実・強化を図っていくことについて国民の理解を得るという観点に立ちつつ,事務の効率化等による削減可能数を考慮して,自主的に決めたものである。

⑱ 合理化数がここ数年の65人程度から昨年度と同様の71人としているのはなぜか。
→ 閣議決定においては,業務改革を推進して定員の合理化に強力に取り組むことや毎年2%(5年10%)以上を合理化すること,また,既存業務の増大への対応は定員の再配置により対処する方針を明確にしているところであり,先に述べたような事情を総合考慮すると,昨年同様の合理化協力は不可避と判断したものである。

⑲ 仕事と生活の調和を図り,子育てや介護をしながら活躍できる職場造りをするために,本省を対象として試行的に産前産後休暇や育児時間等の取得実態に応じた定員上の措置(以下「別枠定員」という。)を行うために,今年度,要求を行わなかったのはなぜか。
→ 行政府省においては,別枠定員の措置について,前年度に配置した定員の使用状況や各府省における産前・産後休暇等の取得実態等を踏まえて取組の推進を図ることとし,必要な措置の内容について,予算編成過程における具体化を図るとされている。裁判所において別枠定員の増員要求を行うかどうかについても,本年度,最高裁に配置した別枠定員の活用状況や,行政府省において,今後予算編成の過程で具体化される必要な措置の内容を踏まえつつ,検討を行う必要があると考えており,今回の概算要求においては,別枠定員の要求を行うことを見送ることとしたが,今後,行政府省の動向や最高裁における取組の実績等を踏まえて,検討していくことになる。


2 関連記事その他
(1) 司法制度改革審議会意見書は,平成13年6月12日に発表されました。
(2) 内閣官房の内閣人事局HPにある「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」(平成26年7月25日閣議決定)によれば,毎年2%(5年で10%)以上,定員を合理化することになっています。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 全司法本部の中央執行委員長が裁判所職員の定員に関して国会で述べた意見
・ 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
・ 最高裁判所の国会答弁資料
・ 最高裁及び法務省から国会への情報提供文書
・ 裁判所をめぐる諸情勢について
・ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 裁判所職員の予算定員の推移
・ 級別定数の改定に関する文書
・ 下級裁判所の裁判官の定員配置

最高裁判所事務総局勤務の裁判官に関する国会答弁

1 21期の金築誠志最高裁判所人事局長は,平成12年3月28日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 裁判所の司法行政事務の中には、裁判に密接に関係する事務がございます。裁判官人事もそうでございますし、裁判所の施設等もやはり裁判事務と非常に密接な関係がございます。それから、最高裁判所規則の立案等、非常に法律知識を必要とするという仕事も最高裁の事務総局の中には少なくないわけでございます。
 こういう事務につきまして裁判官の資格、経験を有する人が企画立案等の事務に当たるということで初めて司法行政事務が円滑にいく、そういう根拠から、司法行政の重要事項の企画立案等をつかさどる職には裁判官を充てる、こういうことになっているわけでございます。
② 高等裁判所の事務局は、やはりそれはそれで裁判に関係する事務を取り扱っております。
特に、事務局長の場合、裁判官の人事につきましても、高等裁判所長官の命を受けまして、いろいろ管内の実情を調査したり最高裁判所や管内の所長との連絡調整に当たったり管内裁判官の配置の調整に当たるというふうなことがございまして、やはり裁判官の経験がある人でないと困るという面があるわけでございます。

2 21期の金築誠志最高裁判所人事局長は,平成13年3月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 現在、最高裁事務総局におります裁判官の資格を有する者は五十七名でございます。
   御指摘ありました年の数をちょっと今持ち合わせておりませんが、そういうふうな数になりましたのは、その後、司法制度改革審議会の対応部署を設置いたしましたり、それから、少年法改正に伴う事務などが増加いたしましたために、若干ふえているという現状でございますが、今申しましたような事項は司法にとりまして極めて重要な課題でございまして、これに取り組むためのものであるという御事情を理解していただきたいと存じます。
② 最初に申し上げましたように、司法行政に携わる裁判官の数はできるだけ抑えたいという方針でやっておりますが、今御指摘ありましたように、いわゆる官房事務といいますか、人事とか経理とか総務とかいうところにも裁判官がおるわけでございます。
   この点、人事ですと、それは裁判官の人事でございますので、やはりそういう裁判官人事に携わるところの部局には裁判官の資格者がいないと困るということがございます。
   総務局の場合は、これは、司法制度、裁判所の制度関係を所管しておりまして、現在、司法制度改革審議会に対応するような仕事も担当しております。これは、裁判制度、裁判手続の全般にわたる問題を取り扱っておりますので、やはり裁判や法律に通じた方がいないと困る。
   経理の方も、営繕課長は裁判官ではございませんが、局長とか総務課長、主計課長は裁判官資格を持っておりますけれども、裁判所の予算というのは結局裁判をやるための予算でございますので、裁判の手続、あり方というものに非常に裁判所の予算というのは深くかかわってきております。そういうことで、やはり裁判の現場、裁判のあり方、仕方というものについて通じていないといけない。一つ施設面なんかをとらえましても、これは法廷のあり方とかそういうところにかかわってくるということがあるわけでございまして、その辺のところを御理解いただければと思っております。

3 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿
 幹部裁判官の定年予定日
・ 最高裁判所裁判官会議の議事録
・ 親任式及び認証官任命式
・ 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
・ 最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿
・ 最高裁判所事務総局人事局の任用課長及び参事官
・ 裁判所の指定職職員
・ 裁判所の指定職職員の名簿(一般職)

最高裁判所判例解説

目次
1 総論
2 昭和時代の説明
3 最高裁判所裁判官経験者の説明
4 最高裁判所調査官経験者の説明
5 情報公開手続における最高裁判所の説明
6 一般財団法人法曹会
7 関連記事その他

1 総論
(1) 最高裁判所判例解説は最高裁判所調査官が作成しているものであり,最高裁判所の判例集に登載された判例について,その要旨と参考条文を掲げ,事案の概要,一審及び二審の要旨,上告理由の概要並びに判決についての論点ごとの解説をしたものです。
(2) 最高裁判例のうち,最高裁判所判例集(民集・刑集)に掲載されたものについては,「法曹時報」に「最高裁判所判例解説」として掲載され,その後,その解説は,年度ごとに民事篇と刑事篇に分けて「最高裁判所判例解説 民事篇(刑事篇)」というタイトルの本にまとめられます(同志社大学司法研究科図書室の「図書室だより」第11号(2007年8月)参照)。
(3) 京都大学法学部図書室HP「判例をさがす」には以下の記載があります。
◯『最高裁判所判例解説 民事篇・刑事篇』[法曹会](判解・調査官解説)
判例解説資料の中でも、事件を担当した最高裁判所調査官が執筆した『最高裁判所判例解説』を「判例解説」もしくは「調査官解説」と呼び、最も重要な資料とされています。『法曹時報』掲載の判例解説を単行本化したものであるため、まだ単行本化されていない年度の事件についての判例解説については『法曹時報』の掲載記事から確認できます。法学部図書室内の所定のPCで、記事の検索・全文閲覧が可能です。
(4) 最高裁判所判例解説は,単に「調査官解説」とか「判例解説」ともいわれますところ,一般財団法人法曹会で販売されています(法曹会HP「最高裁判所判例解説」参照)。
(5) 日本の最高裁判所(日本評論社)245頁には「1967年度から「最高裁判所調査官室編」が消えて、単に「最高裁判所判例解説」と表記されるようになったが、その後は、むしろ調査官解説の制度的権威が高まる過程をたどった。」と書いてあります。


2 昭和時代の説明
(1) 法曹時報における連載開始当初の説明
    法曹時報第6巻第2号(昭和29年2月1日発行)55頁には,最高裁判所調査官室名義で作成された「最高裁判所判例」の「まえがき」として以下の記載があります。
    このたび、多数読者の御要望にこたえて、最高裁判所判例欄を新設し、昭和二十八年十二月以降の最高裁判所判例のうち重要と思われるものを紹介することとした。
    収載については、読者の理解、利用等の便宜を考えて、裁判書の全文をそのまま掲載する方式を採らず、とくに当該事件についての調査を担当された最高裁判所調査官をわずらわして、判示事項、裁判の要旨等を摘示し、かつ当該裁判についての解説を掲げることとした。愛読を希望する。
(2) 昭和40年発行の書籍の説明
    刑事の最高裁判所調査官が著した「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)183頁には以下の記載があります。
(山中注:判示事項及び判決(決定)要旨の案が最高裁判所の判例委員会をパスして)最高裁判例が出るとなると、その事件の調査を担当した調査官が、その判例の解説を書く。これが毎月、法曹時報に載っている最高裁判例解説であるこというまでもないが、この解説は判例委員会の日から大体二週間位のうちに書き上げなければならない。これは最高裁調査官の公務の傍らにやる仕事であるが、最高裁判例の意味内容を誤りなく解説することは責任の重い仕事である。


3 最高裁判所裁判官経験者の説明
(1) 古賀克重法律事務所ブログ「最高裁裁判官から見た弁護活動のポイントとは、大橋正春元最高裁判事講演会」によれば,最高裁判所調査官の職務は,①調査報告書の作成,②最高裁判所裁判官の審議への陪席及び③最高裁判所判例解説の作成みたいです。
(2) 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)93頁には以下の記載があります。
    最高裁の判決は、その事件で下級審を拘束するほか、判例としてどこまで下級審の指針となるかが、大きな問題である。各小法廷からの委員で構成する判例委員会が、いわゆる判決の「判示事項」「判決要旨」を決めて最高裁判例集を作るが、さらにその事件の調査を担当した調査官が個人の資格で「判例解説」を発表し、判決の〃射程〃を知るための資料を提供する。下級審の判断上のポイントとして注目されるものだ。
(3) 滝井繁男 元最高裁判所判事が執筆した「最高裁判所判事の任を終えて-調査官の仕事について思うこと」(法の支配147号(2007年10月発行))には以下の記載があります。
    当初,調査官は最高裁におかれている判例委員会で,前月の判例のうち判例集への登載(原文ママ)するものとその判断事項,要旨を決めてから二週間以内に解説を書いて提出するということになっていたらしい。既に事件の報告書ができており,近時は審議にも調査官が立ち上がっているのだから,このような短期間に解説を書き上げることが不可能とは思えない。現に昭和46年頃までは,この解説はほぼ判決の順に公表され,各年度ごとに合本された判例解説もその翌年には出されていたのである。それが昭和47年度には合本の発刊が翌々年になり始め,その後は遅れた年度には4年から5年後になるということもあった。その原因の多くは,発足当初のものに比べてその解説が詳細にわたるものが多くなって,解説が全て揃うのに時間がかかるようになってきたことにある。
(4) 
「憲法裁判における調査官の役割」(藤田宙靖 元最高裁判所判事へのインタビュー)7頁及び8頁(リンク先の末尾301頁及び302頁)には,最高裁判所調査官解説に関して以下の記載があります。
・ 一般論としては、よくできている。
・ 自分が関与した事案について、重点の置き所が、自分が考えていた点とややずれていると感じる例も無いではない。また、他の小法廷が判断した事案については、読んでも、それが小法廷でなされた審議の正確な解説かどうかはわからない。
・ (多数意見等を正確に説明し,その背景も正確にしているものが多いかどうかは)調査官による。客観的な説明が多いが(上記一般論)、中には、私見を出すものもある。
・ 調査官解説を頭から信じてはいけない。
・ 判決文で書くべきと考えられることが多くなっているから、最近の最高裁判決は、長文化している。
・ 審議の際、どこまで判決で書くべきかを審議することがある。例えば、多数意見では○○まで書く、補足意見では△△まで書き、調査官解説では××まで書かせる、というような配分を考えることがある。
・ 裁判官は調査官解説を事前に見ていない。
・ 首席調査官が事前に見ているかどうかはわからない。
・ 調査官室が関与しているかどうかはわからない。
・ 調査官解説は、調査官から転任後に公表されるケースもあることからわかるように、基本的にはあくまで個人的見解である。
(5) 《講演録》最高裁生活を振り返って(講演者は前最高裁判所判事・弁護士の田原睦夫)には以下の記載があります(金融法務事情1978号26頁及び27頁)。
① 調査官解説には、裁判官は一切関与しません。調査官が在官中に書くときは、場合によっては上席に相談することもあるようですが、最高裁から転出した後はそれもありません。
② 調査官解説はあくまで調査官の個人的意見でしかないし、私など、意見を書いた立場の者が読むと、「ん?」というのがそこそこあるというのが実情です。
(6) 27期の鬼丸かおる 元最高裁判所判事が寄稿した「最高裁判所裁判官を終えて考えたこと 」(比較法雑誌第55巻第4号27頁)には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
    期日審議の際に裁判官から「この点は,判決には詳しく書くことができないから, 『判例解説』にきちんと書いておいて」と注文がついて調査官が判例解説に書く場合が,結構あります。
    「判例解説」に書くと決まればよいのですが, 判決等のランクが少し下の場合には,「 『判例解説』には載らないと思います」となり, 「では, 『判例時報』や『判例タイムズ』 にもっと詳しく書いて」 と調査官に頼むのです。
    あの「解説」はどちらかというと,裁判官が「期日審議の議論の中で判決には書けないことを,書くように」と調査官にお願いして,書かれていることが多いのです。
    ただ,その区別は見ただけではなかなかわからないと思います。私が経験した中では,それがほとんどでした。


4 最高裁判所調査官経験者の説明
・ 15期の木谷明 元最高裁判所調査官に対するインタビューをベースとした「最高裁判所調査官制度の内容-オーラル・ヒストリーを手がかりに」には,「調査官解説」として以下の記載があります(法学セミナー2017年5月号64頁)。
    最高裁の判例が出ると、その事件を担当した調査官が雑誌『法曹時報』(法曹会発行)に最高裁判所判例解説(「調査官解説」)を書くことになっている。調査官解説は本来の公務でないから裁判所では書けず、帰宅後あるいは土曜・日曜に書く。木谷は勤務時間が終わったらすぐ帰宅するように心がけていた。調査官解説には、かなり文献が引用されているが、これらは報告書を作る段階で集めたコピー、資料を利用する。大体、報告書に出ており、主要な文献も添付している。自宅に関連する文献を置いておく必要はなく、報告書を持ち帰ればよい。
    調査官解説では、「~と思われる」という表現が多用される。それは解説の書き方の常道みたいなものであり、判決は裁判官によるもので、調査官解説であるのに断定する訳にいかないからである。
    調査官解説の執筆は職務ではないからチェックされない。木谷は、上司の首席・上席調査官から何か言われたことは一切なかった。


5 情報公開手続における最高裁判所の説明
(1) 平成31年3月4日付の理由説明書には以下の記載があります。
    最高裁判所内において,本件開示申出に係る文書を探索したが,該当文書は存在しなかった。なお,最高裁判所判例解説は,各最高裁判所調査官が個人として執筆・投稿しているものである。よって,最高裁判所として,最高裁判所調査官が最高裁判所判例解説に記事を投稿する際の注意事項を記載した文書を作成し,交付する必要はない。
(2) 本件開示申出に係る文書は,「最高裁判所調査官が最高裁判所判例解説に記事を投稿する際の注意事項が書いてある文書」です。


6 一般財団法人法曹会
(1) 一般財団法人法曹会の住所は,「東京都千代田区霞が関1丁目1番1号 法曹会館」です。
(2) 平成20年頃までは,法曹会の会長は最高裁判所長官であり,副会長は検事総長でしたが,その後は,法曹会の会長は元最高裁判所長官であり,副会長は元検事総長となっています(Wikipediaの「法曹会」参照)。
(3) 法曹会館は結婚式場としても利用されています(法曹会HPの「The HOSO Weddings」参照)。


7 関連記事その他
(1) 「最高裁判所に対する民事上訴制度の運用」には以下の記載があります(判例タイムズ1520号9頁)。
    受理決定(山中注:上告審として事件を受理する決定)がされた事件の7割から8割は破棄判決がされており,2 割から3 割は,原審の判断を維持して上告棄却判決をする場合であっても受理決定がされている(受理された事件の7割近くは,最高裁の判例集〔最高裁民事判例集又は最高裁裁判集民事〕に登載されている。)が,この数値からも,総合的な判断がされていることがうかがわれる。
(2) 「判例とその読み方(三訂版)」108頁には以下の記載があります。
     注意しておく必要があるのは、この解説(山中注:最高裁判所判例解説のこと。)はあくまで調査官の個人としての立場で書かれたものだということである。それゆえ、判旨の解釈、その判例としての適用範囲などについて述べられたところも、あくまで執筆者である調査官の私見であって、その裁判をした大法廷または小法廷の見解ではない。かつて、最高裁判所から差し戻された事件の差戻審において、調査官の差戻判決の解説中の破棄理由に関する部分があたかも裁判所の見解であるかのように誤解されて若干のトラブルを生んだことがあるが、これは判例解説に対する理解不足に起因するものである。そのことは十分承知してこれを読まれる必要があるが、しかし、その点にさえ留意すれば、この解説が判例理解の有力な手がかりであることはたしかである。
(3) 判例秘書HPに「最高裁判所判例解説INTERNET」が,ウエストローHPに「日本法総合オンラインサービス〈Westlaw Japan〉に最高裁判所判例解説 絶賛発売中」が載っています。
(4) 最高裁判所調査官の解説は以下の順番で発行されます。
① ジュリスト(月刊誌)の「時の最高裁判例」
② 法曹時報(月刊誌)の「最高裁判所判例解説」
③ 最高裁判所判例解説(単行本)
(5) 44期の三木素子裁判官は,成23年11月13日開催の「座談会 民事訴訟のプラクティス(上)」において以下の発言をしています(判例タイムズ1368号(2012年6月1日号)9頁)。
     判例の検索については,今は裁判所のパソコンでも判例秘書が利用できるようになったので,判例は大分検索しやすくなりました。そのほか,裁判所内ですと,Jネットで最高裁判例の検索をすることもよくあります。自分が担当している事件に法律上の論点があったときに,手持ち時間との兼ね合いで何をどこまで調べるべきかいつも悩むのですが,その論点に関係のある最高裁判決が見つかれば,判例解説や評釈からいろいろたどっていって,関係があるようなものを探し出すことはわりにしやすいかなと思っています。
(6) 法人税青色申告承認 取消処分取消請求事件に関する最高裁令和6年5月7日判決の補足意見及び反対意見では,判例集に掲載されていない最高裁判例の変更の可否について言及されています。
(7)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 法令・判例等検索システムの利用に関する請負契約書(令和2年4月1日付。受注者は第一法規株式会社)
イ 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所調査官
・ 歴代の最高裁判所首席調査官
 歴代の最高裁判所民事上席調査官
 歴代の最高裁判所刑事上席調査官
・ 歴代の最高裁判所行政上席調査官
 最高裁判所調査官室が購入した書籍のタイトル
・ 上告審に関するメモ書き
 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)

最高裁判所調査官

目次
1 総論
2 最高裁判所調査官の配置
3 最高裁判所の首席調査官,上席調査官,上席調査官補佐及び裁判所調査官の職務
4 最高裁判所調査官の能力に関する最高裁判所判事の感想
5 家庭裁判所調査官とは異なること
6 東京高裁判事の身分を有する最高裁判所調査官であっても,東京高裁の裁判官会議構成員とはされていないこと
7 関連記事その他

1 総論
(1) 最高裁判所調査官は,最高裁判所に所属する裁判所調査官であって,最高裁判所の事件の審理及び裁判に関して必要な調査その他法律において定める事項をつかさどります(裁判所法57条2項)。
(2) 最高裁判所調査官に充てられる判事は,東京高等裁判所判事又は東京地方裁判所判事です。
(3)ア 最高裁判所調査官は本来,裁判官以外の職員であるものの,昭和24年6月1日法律第177号によって追加された裁判所法付則3項に基づき,常に裁判官をもって充てられています。
イ 「最高裁判所とともに」(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)180頁及び181頁には以下の記載があります。
    たとえば裁判所の中でも、司法行政に従事する有資格事務官と判事、判事補の格差の問題があったのです。裁判をするかどうか、で形式的に区分することとして発足したのですが、事務総局等司法行政事務部門で有資格者が不可欠である以上、事務官への任命により昨日までの判事の待遇を下回る給与とすることは実務上不可能で、昭和二四年六月には、最高裁判所調査官、研修所教官や司法行政上の職に、判事、判事補を、そのままの身分で充てることができるようにされています。
(4) 現代ビジネスHPの「最高裁判所という「黒い巨塔」〜元エリート裁判官が明かす闇の実態」(2016年9月29日付)には以下の記載があります。
    最高裁長官は、裁判部門の補助官、スタッフであり、やはりエリートコースとされている30名ほどの最高裁判所調査官についても、そのトップに位置する首席調査官を通じて影響を及ぼすことが可能である。
    つまり、最高裁長官は、大法廷事件の裁判長となるのみならず、支配や統治の根幹に関わる裁判を含む重要な裁判全般についても、首席、上席という調査官のヒエラルキー、決裁制度を通じて、コントロールしようと思えばすることができるのだ。


2 最高裁判所調査官の配置
(1)ア 最高裁判所の各調査官室の裁判所調査官の配置を以下のとおり掲載しています。
・ 令和7年4月1日実施
・ 令和6年4月1日実施
・ 令和5年4月28日現在
・ 令和4年4月1日実施
・ 令和3年4月8日実施
・ 令和2年4月1日実施
・ 平成31年4月1日実施
・ 平成30年4月1日実施
・ 平成29年4月1日実施
・ 平成28年4月1日実施
・ 平成27年9月10日実施
・ 平成27年4月1日実施
イ 民事調査官室が三つ,行政調査官室が一つ,刑事調査官室が二つあります。
(2) 最高裁判所調査官事務取扱要領(平成27年3月31日最高裁判所首席調査官事務取扱要領)2項によれば,民事調査官,刑事調査官及び行政調査官の担当事務は以下のとおりです。
① 民事調査官
・ 行政事件,労働事件等を除く民事事件(知財事件を含む。)の調査に係る事務
② 刑事調査官
・ 刑事事件の調査に係る事務
③ 行政調査官
・ 行政事件(知財事件は除く。),労働事件,行政処分の違法を理由とする国家賠償請求事件及び裁判官分限事件
(3)ア 昭和25年5月,行政調査官室が民事調査官室が分離し,昭和35年12月に民事調査官室が二つになり,昭和36年9月に三つになりました。
イ 刑事調査官室は昭和23年頃に三つになったものの,二つになった時期は不明です。
ウ 「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)214頁が参考になります。


3 最高裁判所の首席調査官,上席調査官,上席調査官補佐及び裁判所調査官の職務
(1) 最高裁判所首席調査官の職務
・ 最高裁判所首席調査官の職務は,最高裁判所上席調査官を補佐する者の指名のほか,最高裁判所調査官の事務の総括として以下のものがあります(最高裁判所調査官事務取扱要領(平成27年3月31日最高裁判所首席調査官事務取扱要領)1項)。
① 調査官及び上席調査官の事務の指定
② 調査官及び上席調査官の調査にかかる事務に関する相談及び調整
③ 判例集及び裁判集に係る案件の整理
④ 最高裁判所の裁判所調査官の事務の補助を行う裁判所書記官及び裁判所事務官に対する指導
⑤ 最高裁判所の訟廷事務の運用に関する助言及び協力
⑥ その他最高裁判所の裁判所調査官の事務の総括に係る事務
(2) 最高裁判所上席調査官の職務

ア 最高裁判所上席調査官の職務は以下のとおりです(最高裁判所調査官事務取扱要領(平成27年3月31日最高裁判所首席調査官事務取扱要領)3項)。
① 首席調査官の事務の一般的補佐
② 調査官の調査にかかる事務に関する相談及び調整
③ 判例集及び裁判集に係る案件の整理
④ 各上席調査官及び調査官の事務の補助を行う裁判所書記官及び裁判所事務官に対する指導
⑤ 最高裁判所の訟廷事務の運用に関する助言及び協力
⑥ その他最高裁判所の裁判所調査官の事務の整理に係る事務
イ 27期の鬼丸かおる 元最高裁判所判事が寄稿した「最高裁判所裁判官を終えて考えたこと 」(比較法雑誌第55巻第4号13頁)には以下の記載があります。
    三十何人の調査官のトップである首席調査官(最高裁裁判官になることが非常に多いのですが)と民事上席調査官と行政上席調査官との 3人には事件配てんはなく,刑事上席調査官は事件数が少ないので平の調査官と同じく機械的に配てんされます。
    したがって,刑事上席調査官も,平の調査官と同様に報告書を作成したり裁判官と打ち合わせをしたりしています。
民事上席調査官・行政上席調査官は,平の調査官が作成した報告書に目を通して,その事件を把握し,また,報告書に問題があると書き直しを命じたり修正を入れたりしています。
そこで上席調査官が「これは,ちょっと」と思うと,首席調査官に回ります。
    首席調査官は,報告書を全部読んでいるかどうかはわかりませんが,問題点の大きい全部の事件を把握していたように思います。


(3) 最高裁判所上席調査官補佐の職務
・ 最高裁判所上席調査官補佐の職務は,「首席調査官等規則3条の規定に基づき,民事上席調査官及び民事調査官の事務,刑事上席調査官及び刑事調査官の事務若しくは行政上席調査官及び行政調査官の事務又はこれらのいずれにも関係する事務の円滑な遂行に資するため,民事上席調査官,刑事上席調査官若しくは行政上席調査官又は各上席調査官の事務を補佐する」ことです(最高裁判所調査官事務取扱要領(平成27年3月31日最高裁判所首席調査官事務取扱要領)5項)。
(4) 最高裁判所調査官の職務

ア 最高裁判所調査官の職務は,①調査報告書の作成,②最高裁判所裁判官の審議への陪席及び③最高裁判所判例解説の作成であり,典型的な調査報告書は,事案の説明,争点,1審判決と原審,上告の趣旨,論旨の検討,処理方針という構成をとり,必要な文献・判例も添付され,数十ページになるものもあれば,2~3枚のものもあるそうです(古賀克重法律事務所ブログ「最高裁裁判官から見た弁護活動のポイントとは、大橋正春元最高裁判事講演会」参照)。
イ 最高裁判所調査官の職務につき,北海道大学HPに載ってある「憲法裁判における調査官の役割」(藤田宙靖 元最高裁判所判事へのインタビュー)には以下の記載があります。
① 調査官室で審議案件の調査報告書を作成するやり方について(リンク先2頁・末尾296頁)
通常の審議事件:担当調査官が作成して,上席調査官がチェックする。
憲法事件:担当調査官が作成して,上席調査官のチェックを経た上,首席調査官が最終チェックする。
行政事件:行政調査官全員の検討会を行ってから報告書を作成する。
② 最高裁判所裁判官の個別意見について(リンク先4頁・末尾298頁)
・ 通常は裁判官が自ら書く。
・ 裁判官から調査官に頼むこともある。例えば、「この部分○○を書きたいが、調べて補足してくれ」と依頼することもある。また、「××について文章にしてくれ」と依頼することがある。
・ 理系の研究室で、教授が、准教授、講師、助教や院生をアシスタントとして使うことに似ているのかもしれない。
ウ 最高裁判所調査官は,最高裁判所の判例委員会の幹事を命じられることがあります(判例委員会規程6条2項)。
エ 自由と正義2013年6月号に「特集1 元判事・調査官が語る最高裁判所」が載っていますところ,その中の「昭和末期の最高裁判所調査官室のある情景」(筆者は塚原朋一 元最高裁判所調査官)には,最高裁昭和59年5月29日判決に関する審理経過が非常に詳しく書いてあります。


4 最高裁判所調査官の能力に関する最高裁判所判事の感想
・ 「最高裁判所調査官制度の内容-オーラル・ヒストリーを手がかりに」には以下の記載があります(法学セミナー2017年5月号56頁)。
    最高裁調査官の能力について、元最高裁裁判官の福田博は、あくまで最高裁の在職期間に限っての話として、「調査官のうち、5%から1割は私よりも能力がある。それを含めて3割が調査官として非常に優秀」と評価する。「あとの5割くらいはまあ普通」とし、残りの2割については「ずっと法律屋をやっていなかった私でもやっていけるかなと思い」、そのうちの5%くらいについては「明らかに私の方がよくできるだろう……。この人たちが調査官になっているのは間違いじゃないか」とした。


5 家庭裁判所調査官とは異なること
(1) 家庭裁判所調査官(裁判所法61条の2)の場合,離婚,親権者の指定・変更等の紛争当事者や事件送致された少年及びその保護者を調査し,紛争の原因や少年が非行に至った動機,生育歴,生活環境等を調査しますところ,最高裁判所調査官はこのような調査をしません。
(2) 単に「裁判所調査官」という場合,特許庁又は国税庁からの出向者から任命されている,高等裁判所及び地方裁判所の裁判所調査官をいうことが多いです(「裁判所調査官」参照)。

6 東京高裁判事の身分を有する最高裁判所調査官であっても,東京高裁の裁判官会議構成員とはされていないこと
(1) 裁判所法20条2項は「各高等裁判所の裁判官会議は、その全員の裁判官でこれを組織し、各高等裁判所長官が、その議長となる。」と定めています。
   また,下級裁判所事務処理規則12条ないし20条の2に裁判官会議に関する規定がありますところ,最高裁判所調査官に充てられた判事を招集する必要はないという趣旨の規定はありませんし,そもそも最高裁判所規則で裁判所法の規定と異なる規定を定められるわけでもありません。
    しかし,東京高裁判事の身分を有する最高裁判所調査官であっても,東京高裁の裁判官会議構成員とはされていません。
(2)ア 医師が医薬品を使用するに当たって医薬品の添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項に従わず,それによって医療事故が発生した場合には,これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り,当該医師の過失が推定されます(最高裁平成8年1月23日判決)。
イ 株主総会開催に当たり株主に招集の通知を行うことが必要とされるのは,会社の最高の意思決定機関である株主総会における公正な意思形成を保障するとの目的に出るものであるから,特定の株主に対する右通知の欠如は,すべての株主に対する関係において取締役の職務上の義務違反を構成します(最高裁平成9年9月9日判決。なお,先例として,最高裁昭和42年9月28日判決参照)。


7 関連記事その他
(1) 最高裁判所調査官の人事評価は最高裁判所首席調査官が行います(裁判所HPの「裁判官の新しい人事評価制度の概要について」参照)。
(2)ア 刑事の最高裁判所調査官が著した書籍として,「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)があります。
イ 「裁判官とは何者か?-その実像と虚像との間から見えるもの-」(講演者は24期の千葉勝美 元最高裁判所判事)には以下の記載があります(リンク先のPDF18頁)。
(1) 調査官の喜び
    最高裁の判例形成に直接関与することの喜び、充実感。人の意見を聞かない最高裁判事の頑固さ、説得の工夫や楽しみ、脳髄を絞って徹底して考え抜くことの大変さと楽しさ(法律家として一度は経験すべし!)を体験できる。
    民事、行政、刑事の3分野に分かれて、合計で40名程度が調査を務める。私は、行政事件関係部門の調査官を3年8か月経験し、大法廷3件に関与し、判例解説を執筆し、その原稿料で犬を買った。多くの裁判官が苦手意識の強い行政事件の処理に自信がつく。有斐閣の六法全書が手垢で真っ黒になる。
(3) ヤフーニュースの「『イチケイのカラス』モデルの元裁判官が語る"絶望の司法"「弁護士出身判事、現実でも増員を」」(2021年5月5日付)(木谷明裁判官を取材したもの)には以下の記載があります。
――その当時(山中注:故平野龍一・元東大総長が論文で「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である」と述べた昭和60年当時)と今ではどう変わったのでしょうか。
    「裁判官が官僚的になりましたね。いい例が、裁判官や最高裁調査官が弁護人の面談申し出に応じなくなったことです。私が裁判官や調査官だった当時、弁護人が会いたいと言えば、当たり前のように会っていました。
    ところが、最近は、裁判官に面談を求めても、たいてい、『言いたいことがあれば書面で出せ』と言われて面談を断られます。調査官は今では弁護人に絶対に会いません。口頭で説明されないとわからないことがたくさんあるのにねえ」
(4) 福岡県弁護士会HP「幹部裁判官はどのように昇進するか」には最高裁判所裁判官に到達する出世コースとして以下の記載があります。
①事務総長ルート
(中略)
②司法研修所長ルート
(中略)
③首席調査官ルート
 「東大・京大卒→最高裁の局付および/あるいは課長→最高裁の調査官あるいは上席調査官→東京高裁管内の地家裁所長→最高裁の首席調査官→高裁長官→最高裁裁判官という出世ルートがある。
 特筆すべきは2008年11月に最高裁判事となった千葉勝美(24期)に至るまで、7人連続で最高裁判事を輩出している」
(5)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 最高裁判所首席調査官等に関する規則(昭和43年12月2日最高裁判所規則第8号)
→ 最高裁判所の調査官室には,首席調査官,上席調査官及び上席調査官補佐が設置されることが分かります。
・ 最高裁判所調査官事務取扱要領(平成27年3月31日最高裁判所首席調査官事務取扱要領)に,
→ 首席調査官,上席調査官及び上席調査官補佐の職務内容が書いてあります。
・ 最高裁判所民事・行政調査官室作成の「判例集・裁判集登載事項等に関する事務処理要領(平成27年7月)」
イ 以下の記事も参照してください。
・ 歴代の最高裁判所首席調査官
・ 歴代の最高裁判所民事上席調査官
・ 歴代の最高裁判所刑事上席調査官
・ 歴代の最高裁判所行政上席調査官
・ 最高裁判所判例解説
・ 最高裁判所調査官室が購入した書籍のタイトル
・ 裁判所調査官
・ 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携
・ 上告審に関するメモ書き
 最高裁の既済事件一覧表(民事)
 最高裁判所事件月表(令和元年5月以降)
・ 最高裁の破棄判決等一覧表(平成25年4月以降の分),及び最高裁民事破棄判決等の実情
・ 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情
・ 最高裁判所の口頭弁論期日で配布された,傍聴人の皆様へ
・ 司法研修所の教官組別表,教官担当表及び教官名簿
・ 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)
・ 法務総合研究所

後見人等不正事例についての実情調査結果(平成23年分以降)

目次
1 後見人等不正事例についての実情調査結果
2 被害があった事件数及び被害総額
3 全弁協の弁護士成年後見人信用保証事業
4 大阪弁護士会所属の弁護士の横領事例
5 成年後見人の解任(令和5年3月21日更新)
6 成年後見人の欠格事由としての,成年被後見人との間の訴訟
7 成年後見と任意後見の関係
8 成年後見人に対する損害賠償請求の事例
9 親族後見人による業務上横領に刑法244条1項は準用されないこと
10 関連記事その他

1 後見人等不正事例についての実情調査結果
(令和時代)
令和 元年分令和2年分令和3年分令和4年分
令和 5年分
(平成時代)
平成23年分ないし平成27年分
平成28年分平成29年分平成30年分
* 「後見人等による不正事例についての実情調査結果(令和5年分)」といったファイル名です。

2 被害があった事件数及び被害総額
(1) 被害があった事件数及び被害総額は以下のとおりです。
令和 5年:176件・約 7億円
令和 4年:191件・約 7億5000万円
令和 3年:169件・約 5億3000万円
令和 2年:186件・約 7億9000万円
2019年:201件・約11億2000万円
平成30年:243件・約11億3000万円
平成29年:294件・約14億4000万円
平成28年:502件・約26億円
平成27年:521件・約29億7000万円
平成26年:831件・約56億7000万円
平成25年:662件・約44億9000万円
平成24年:624件・約48億1000万円
平成23年:311件・約33億4000万円
(2) 上記のうち,専門職による不正事例の事件数及び被害総額は以下のとおりです。
令和 5年:29件:約2億7000万円
令和 4年:20件・約2億1000万円
令和 3年: 9件・約  7000万円
令和 2年:30件・約1億5000万円
2019年:32件・約2億円
平成30年:18件・約  5000万円
平成29年:11件・約  5000万円
平成28年:29件・約  9000万円
平成27年:35件・約1億1000万円
平成26年:22件・約5億6000万円
平成25年:14件・約  9000万円
平成24年:18件・約3億1000万円
平成23年: 6件・約1億3000万円

3 全弁協の弁護士成年後見人信用保証事業
・ 全国弁護士協同組合HPの「弁護士成年後見人信用保証事業」には以下の記載があります。
    「弁護士成年後見人信用保証制度」は、被害者救済を目的として日本弁護士連合会が考案し、推奨する制度です。全弁協が保証人となり、弁護士成年後見人等の不正による損害賠償債務を保証し、弁護士成年後見人等による横領事件が発生した場合、全弁協が、保証債務の履行として被害者(被後見 人等)の被害を弁償し、その被害の回復を図る制度です。
    保証額は、弁護士後見人等1人あたり3,000万円を上限とし、複数被害者がいる場合は、上限枠内で按分となります。保証期間は、10月1日から1年間(途中加入随時受付)で、弁護士個人単位での加入となり、年間保証料は9,900円です(途中加入の場合は、加入期間により保証料が異なります。)。


4 大阪弁護士会所属の弁護士の横領事例
(1) 大阪弁護士会に所属していた弁護士に対する,業務上横領罪の判決事例
ア 平成20年の判決事例
・ 依頼者7人から預かった遺産や保険金計3億7200万円を着服し、脅迫相手に渡す金に宛てた富田康正弁護士(37期)の場合,大阪地裁平成20年3月7日判決により懲役9年に処せられました(逮捕時に報道された着服額は約5900万円であったことにつき,弁護士法人かごしま上山法律事務所ブログの「「顧客」弁護士逮捕に関連して」(2006年12月21日付)参照)。
イ 平成25年の判決事例
・ 裁判所が作った書類を偽造したほか、成年後見人を務めた女性の預貯金を着服したなどとして、有印公文書偽造・同行使や業務上横領罪などに問われた家木祥文弁護士(58期)の場合,大阪地裁平成25年2月20日判決により懲役3年・執行猶予5年(求刑:懲役3年)(被害弁償あり)に処せられました(「横領弁護士に執行猶予判決・(大阪)家木祥文被告」参照)。
ウ 平成27年の判決事例

・ 依頼人から預かった現金計約5200万円を着服した梁英哲弁護士(53期)の場合,大阪地裁平成27年3月19日判決により懲役4年6月(求刑:懲役6年)に処せられました(弁護士自治を考える会ブログの「業務上横領罪:5200万円着服の元弁護士に実刑判決」参照)。
エ 平成28年の判決事例
・ 代理人としての立場を悪用し、顧客からの預かり金など計約5億400万円を着服、詐取したとして、業務上横領や詐欺などの罪に問われた久保田昇弁護士(35期)の場合,大阪地裁平成28年3月28日判決により懲役11年(求刑:懲役13年)に処せられました(産経新聞HPの「5億円着服・詐欺で弁護士に懲役11年判決 大阪地裁」参照)。
オ 令和元年の判決事例
・ 平成25年から平成26年にかけて19回にわたり土地建物の管理会社から預かっていたビルの「賃料相当損害金」を,自身の口座に振り込むなどの手口であわせて1億8200万円以上を着服した洪性模弁護士(36期)の場合,大阪地裁令和元年5月9日判決によって懲役5年に処せられました(弁護士自治を考える会ブログの「洪性模弁護士(大阪)懲戒処分の要旨 2019年7月号」参照)。
カ 令和3年の判決事例
① 依頼人から預かっていた遺産の相続金4200万円ぐらいを使い込んだとして業務上横領罪に問われた川窪仁帥弁護士(26期)の場合,大阪地裁令和3年2月3日判決によって懲役5年に処せられました(弁護士自治を考える会ブログの「依頼人から預かった遺産”約4200万円”を横領 川窪仁帥弁護士(大阪)に懲役5年の判決」参照)。
② 依頼された民事訴訟の和解金など約2100万円を使い込んだとして業務上横領罪に問われた鈴木敬一弁護士(37期)の場合,大阪地裁令和3年3月10日判決によって懲役3年に処せられました(弁護士自治を考える会ブログの「和解金など2100万円横領した鈴木敬一元弁護士に実刑判決「信頼踏みにじる悪質性高い犯行」大阪弁護タヒ会」参照)。
③ 詐欺事件の被告から被害者に弁済するための資金として預かっていた現金約500万円を着服したり,別の依頼人からの預り金およそ800万円を着服したり,所属していた会派の口座からおよそ2000万円を着服したりして業務上横領罪に問われた吉村卓輝弁護士(61期)の場合,大阪地裁令和3年5月12日判決によって懲役3年・執行猶予5年(求刑:懲役4年)に処せられました(弁護士自治を考える会ブログの「依頼人から預かった金など着服 元弁護士に執行猶予付きの有罪判決 大阪地裁」参照)。
④ 管理していた遺産2800万円ぐらいを使い込んだとして業務上横領罪に問われた黒川勉弁護士(29期)の場合,大阪地裁令和3年8月25日判決によって懲役4年(求刑:懲役6年)に処せられました(弁護士を考える旧(雑記)ブログの「大阪地裁 遺産着服の黒川勉弁護士(大阪)に懲役4年の実刑」参照)。


(2) 直近の逮捕事例
ア 未成年後見人の業務上横領については全弁協の弁護士成年後見人信用保証事業の適用はないところ,大阪弁護士会HPに載っている令和3年9月17日付の「綱紀調査請求した旨の公表」には,同日に天満警察署に逮捕された古賀大樹弁護士(57期)の業務上横領に関して以下の記載があります(文中の対象会員は古賀大樹弁護士のことです。)。
(1)令和3年1月15日付調査請求事案
    対象会員は、大阪弁護士会に所属する弁護士であり、上記の事務所所在地にて弁護士業を行っている者であるが、大阪家庭裁判所から選任された成年後見事件及び未成年後見事件において、平成30年9月から令和2年3月までの間、預かり管理していた成年被後見人及び未成年被後見人の銀行口座から、複数回にわたり合計7800万円あまりの金員を出金し、これを自らの遊興費や事務所運営経費等に充てて費消し、その発覚を免れるため、家庭裁判所への事務報告において改ざんした通帳の写し及びこれに基づく財産目録を提出して虚偽の事務報告を行ったものである。
(2)令和3年9月13日付調査請求事案
    対象会員は、刑事弁護の依頼を受けていた依頼者に対し、被害者への被害弁償名目で送金を指示し、令和3年5月31日から同年8月2日にかけて預かり金口座に合計660万円の送金を受けたが、これを被害弁償に使用することなくその大半を出金し、また保釈保証金300万円についても還付を受けているにもかかわらず、いずれの金員も依頼者に返還していないこと、さらには依頼者が対象会員と連絡がとれない状況に至っていること等から、依頼者からの預り金合計960万円について詐取ないし横領が疑われるものである。
イ トリちゃんのお見通し報告書「古賀大樹Facebook顔画像・経歴特定「バカは金づる!キャバクラ三昧」独立すぐ横領開始」が載っています。
(3) その他
ア 弁護士自治を考える会ブログに「弁護士の詐欺・横領事件・刑期の相場」が載っています。
イ 松井良太弁護士(56期)は,遺産の分割に関する依頼を受けて預かっていた現金約1860万円を着服した疑いで令和2年7月7日までに逮捕され,令和3年7月9日付で弁護士法17条1号(例:禁錮以上の刑に処せられたこと)により大阪弁護士会を退会しました(令和3年8月24日付の官報号外第193号)が,令和3年9月20日現在,刑事事件に関する判決情報はインターネット上に見当たりません。


5 成年後見人の解任
(1) 家事事件手続法下における書記官事務の運用に関する実証的研究-別表第一事件を中心に-(司法協会)174頁には,「5 成年後見人の解任(別表第一5の項,民法846条)」として以下の記載があります。
【どんな事件?】
    成年後見人に不正な行為,著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは,家庭裁判所は,その成年後見人を解任できる。
    ※ 「不正な行為」とは,違法な行為又は社会的に見て非難されるべき行為をいい,財産に関する不正な行為(横領など)を行う場合が考えられる。また,「著しい不行跡」とは,品行ないし操行が甚だしく悪いことをいい,財産管理について成年被後見人に危険を生じさせるものも含まれるとするのが多数説である。「その他後見の任務に適しない事由」なり得るものとしては,成年後見人の職務の怠慢,家庭裁判所の後見監督の指示に従わないことなどが考えられる。
(2)ア 成年後見人の解任を認めた名古屋高裁平成29年3月28日決定に対する許可抗告は許可されませんでしたし,成年後見人を解任された司法書士が提起した国家賠償請求訴訟は東京地裁平成30年1月22日判決(判例体系に掲載),東京高裁平成30年6月27日判決及び最高裁平成31年1月29日決定(上告不受理決定)によって棄却されました(一般社団法人比較後見法制研究所HP「研究成果」に載ってある季刊比較後見法制16号70頁ないし75頁参照)。
イ 以下の裁判例を掲載しています。
・ 名古屋高裁平成29年3月28日決定(東京法務局の情報公開文書)
・ 東京高裁平成30年6月27日判決(東京法務局の情報公開文書)
(3) 二弁フロンティア2023年10月号に載ってある「成年後見実務の運用と諸課題 後編」には以下の記載があります。
    令和3年1月から12月までの1年間の東京家裁本庁及び立川支部での解任の申立ては15件、職権で解任を立件したものが7件となっている。これらの事件の終局事由としては、認容が7件、却下が12件、取下げが3件となっており、認容の7件はすべて職権立件によるものである。
    また、令和4年1月から10月末までで解任申立てがされたのは28件、職権で解任を立件したものが8件となっている。これらの事件の終局事由は、認容が7件、却下が12件、取下げが6件、それ以外は継続中となっており、認容の7件はすべて職権立件によるものである。
(4) 令和6年3月7日に公表された成年後見制度の在り方に関する研究会報告書(令和6年2月)74頁及び75頁には「現行法の規律」として以下の記載があります。
    現行の成年後見制度には、成年後見人等の交代に関する独自の規律は設けられておらず、成年後見人の辞任(民法第844条)、成年後見人の解任(同法第846条)及び成年後見人の選任(同法第843条)を組み合わせることにより成年後見人の交代が実現する(保佐人について同法第876条の2第2項により、補助人について同法第876条の7第2項によりこれらの規定が準用されている。)。
    まず、成年後見人の辞任(民法第844条)については、成年後見人は「正当な事由」があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができるとされており、辞任に正当な事由を求めている。これは、成年後見人は、家庭裁判所によって後見等の事務の適任者と認められ、本人の保護のために選任された者であるから、自由に辞任することを認めると、本人の利益を害するおそれがあることが背景にある。そして、正当な事由としては、例えば、①成年後見人が職業上の必要等から遠隔地に住居を移転し、後見等の事務の遂行に支障が生じた場合、②成年後見人が老齢・疾病等により後見等の事務の遂行に支障が生じた場合、③本人又はその親族との間に不和が生じた場合等が想定されている。
    また、成年後見人の解任(民法第846条)については、成年後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、本人若しくはその親族若しくは検察官の請求又は職権により、これを解任することができるとされており、一定の解任事由を求めている。そして、不正な行為とは、違法な行為又は社会的に非難されるべき行為を意味するとされ、また著しい不行跡とは、品行や操行が甚だしく悪いことを意味するとされている。これらが解任事由とされているのは判断能力の不十分な本人の保護という成年後見人の職責の重要性及び権限濫用による被害の重大性に鑑みたものとの指摘がされている。また、裁判所から解任された成年後見人等は後見人となることができないこととされている(解任されたことが成年後見人等の欠格事由とされている。同法第847条第2号)。
    そして、成年後見人が欠けた場合の選任(民法第843条第2項)については、家庭裁判所は、本人若しくはその親族その他の利害関係人の請求又は職権で、成年後見人を選任するとされている。なお、成年後見人が辞任することによって新たに成年後見人を選任する必要が生じたときは、その成年後見人は、遅滞なく新たな成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならないとされている(同法第845条)。

6 成年後見人の欠格事由としての,成年被後見人との間の訴訟
(1)ア 後見人の欠格事由を定めた民法847条4号は以下のとおりです。
    次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者
イ 新基本法コンメンタール親族法280頁には以下の記載があります。
    「訴訟」とは、民事訴訟を意味し、調停や審判は含まれない。もっとも、審判であっても、家事事件手続法別表第二事件は、紛争性を有し当事者の利害が対立するので、本条にいう「訴訟」に含まれると解される(新井誠=赤沼康弘=大貫正男編・成年後見制度一法の理論と実務(第2版)[2014,有斐閣)42頁〔赤沼康弘〕)。これに対して、調停はすべて「訴訟」には含まれない。したがって、例えば、遺産分割(家事手続別表第二12)の調停が行われている段階では欠格事由は発生しないが、調停から審判に移行したときに欠格事由が発生する(犬伏・前掲335頁)。
(2)ア 和歌山地裁昭和48年8月1日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています(改行を追加しました。)。
    被後見人に対して訴訟を為し、又は為したる者」とは、その訴訟係属が後見人選任の前後を問わず,また当該訴訟における原・被告たるの地位を問わないが、ただ単に被後見人との間に形式的に訴訟が係属したというだけでは足りず、その内容において、実質上被後見人との間で利害が相反する関係にあることを要すると解すべきである。
    しかし,その請求原因たる事実が存せず、訴の提起維持を事実上支配する者において、請求が理由のないことを知っているか、知らないとしても知らないことにつき過失がある場合等特別の事情が存する場合には、後見人が右訴訟に応訴することはやむを得ない措置として合理性があるのみならず,被後見人の利益を害することにならないので、実質上利害相反しないものというべきである。
イ 大阪高裁昭和52年2月8日決定は以下の判示をしています。
    民法第八四六条第五号(平成11年12月8日法律第149号による改正後の民法847条4号)には、「被後見人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族」は後見人となることができない旨規定しており、右は、旧民法(明治三一年六月二一日公布法第九号)第九〇八条第六号と全く同旨の規定であり、民法が被後見人と訴訟関係に立ち、または立つた者を後見人の欠格者とした趣旨が、被後見人の利益保護に出発し、かかる訴訟関係者は、感情の上でも被後見人との間に融和を欠くおそれがあり、被後見人として適当でないことが考慮されたものであることを考えると、右法条にいわゆる「訴訟をし、」 とは実体上被後見人の利益に反するにもかかわらず、これに対して訴訟をするという意味であつて、形式上被後見人を訴訟当事者とする場合でも、両者の実質的な利益相反関係という具体的基準に照らし、これに反しない場合には、前記法条の「訴訟」には包含しない法意であると解するのが相当である(大判明治四三年一一月二九日、民録一六輯八五五頁参照)。
ウ 大審院明治43年11月29日判決は判例秘書に載っています。
(3) 任意後見人の欠格事由を定める任意後見契約に関する法律4条1項3号ロは,民法847条4号と同趣旨の定めをしています。


7 成年後見と任意後見の関係
(1) 任意後見契約に基づき任意後見監督人を選任する場合において,本人が成年被後見人等である場合,家庭裁判所は,当該本人に係る後見開始の審判等を取り消さなければなりません(任意後見契約に関する法律4条2項)。
(2) 任意後見契約が登記されている場合,家庭裁判所は,本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り,後見開始の審判等をすることができます(任意後見契約に関する法律10条1項)。
(3) 大阪家裁後見センターだよりは,第9回で「任意後見監督人選任の申立てに関して,裁判官の立場から見た留意点」について記載し,第10回で「任意後見と法定後見の関係」について記載しています。

8 成年後見人に対する損害賠償請求の事例
(1) 広島高裁平成24年2月20日判決(担当裁判官は,29期の宇田川基32期の近下秀明及び47期の松葉佐隆之))は,成年後見人らが被後見人の預金から金員を払い戻してこれを着服するという横領を行っていたにもかかわらず,これを認識した家事審判官が更なる横領を防止する適切な監督処分をしなかったことが,家事審判官に与えられた権限を逸脱して著しく合理性を欠くと認められる場合に当たるとされた事例です(日経新聞HPの「国に230万円賠償命令 後見人横領、広島高裁が一審判決変更」参照)。
(2) 松江地裁平成29年1月16日判決(判例体系に掲載)(担当裁判官は44期の杉山順一新60期の大和隆之及び68期の本村理絵)は,成年後見人が,成年被後見人について,①不必要な食事サービスの提供契約及び車椅子の賃貸借契約を解除しなかったこと,並びに②障害年金の受給申請手続をしなかった結果として同受給権を時効により一部消滅させたことは,成年後見人としての善管注意義務に違反したものと認められるから,成年後見人は,成年被後見人に対し,債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償責任(元金だけで1076万円余り)を負うとされた事例です。


9 親族後見人による業務上横領に刑法244条1項は準用されないこと
(1) 未成年後見人の場合
・ 最高裁平成20年2月18日決定は以下の判示をしています。
    刑法255条が準用する同法244条1項は,親族間の一定の財産犯罪については,国家が刑罰権の行使を差し控え,親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づき,その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず,その犯罪の成立を否定したものではない(最高裁昭和25年(れ)第1284号同年12月12日第三小法廷判決・刑集4巻12号2543頁参照)。
    一方,家庭裁判所から選任された未成年後見人は,未成年被後見人の財産を管理し,その財産に関する法律行為について未成年被後見人を代表するが(民法859条1項),その権限の行使に当たっては,未成年被後見人と親族関係にあるか否かを問わず,善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負い(同法869条,644条),家庭裁判所の監督を受ける(同法863条)。また,家庭裁判所は,未成年後見人に不正な行為等後見の任務に適しない事由があるときは,職権でもこれを解任することができる(同法846条)。このように,民法上,未成年後見人は,未成年被後見人と親族関係にあるか否かの区別なく,等しく未成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っていることは明らかである。
    そうすると,未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって,家庭裁判所から選任された未成年後見人が,業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に,上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。
(2) 成年後見人の場合
・ 最高裁平成24年10月9日決定は以下の判示をしています。
    家庭裁判所から選任された成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって,成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているのであるから,成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができないことはもとより,その量刑に当たりこの関係を酌むべき事情として考慮するのも相当ではないというべきである(最高裁平成19年(あ)第1230号同20年2月18日第一小法廷決定・刑集62巻2号37頁参照)。

10 関連記事その他
(1)ア 裁判所HPに「後見人等による不正事例」が載っています。
イ DQトピックスの「人が不正をするのはなぜか? 要素をモデル化した「不正のトライアングル」の紹介」には「この「不正のトライアングル」では、不正行為は①「機会」②「動機 (プレッシャー/インセンティブ)」③「正当化」の3つの不正リスク (不正リスクの3要素) が揃ったときに発生すると考えられています。」と書いてあります。
(2)ア 二弁フロンティア2021年8・9月号及び10月号に,成年後見実務の運用と諸問題[前編]及び[後編]が載っています。
イ 二弁フロンティア2022年8・9月合併号「【講演録】東京三会合同研修会 成年後見実務の運用と諸問題[前編]」が載っていて,二弁フロンティア2022年10月号「【講演録】東京三会合同研修会 成年後見実務の運用と諸問題[後編]」が載っています(講師は48期の村主幸子裁判官59期の日野進司裁判官及び65期の島田旭裁判官)。
(3) 高齢者の認知症を専門とする医師が,紛争が生じる前に本人を診察し,医学的知見に基づく検査方法に則った検査を行った上,その結果に基づいて作成した診断書については,その信用性を疑わせる特段の事情がない限り,信用性は高いものといえます(最高裁平成23年11月17日判決(判例時報2161号20頁及び21頁)参照)。
(4)ア  家庭裁判所から選任された未成年後見人が業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合,未成年後見人と未成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,その後見事務は公的性格を有するものであり,同条項は準用されません(最高裁平成20年2月18日決定)。
イ  他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効は5年です(最高裁令和4年6月9日判決)。
(5) たとえ被相続人が所有財産を他に仮装売買したとしても,単にその推定相続人であるというだけでは,右売買の無効(売買契約より生じた法律関係の不存在)の確認を求めることはできませんし,被相続人の権利を代位行使することはできません(最高裁昭和30年12月26日判決)。
(6)  保佐開始の審判事件を本案とする保全処分の事件において選任された財産の管理者が家庭裁判所に提出した財産目録及び財産の状況についての報告書は、上記保全処分の事件の記録には当たりません(最高裁令和4年6月20日決定)。
(7) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所関係国賠事件
・ 平成17年以降の,成年後見関係事件の概況(家裁管内別件数)
→ 管理継続中の本人数一覧表(家裁本庁,支部別/事件類型別内訳)も掲載しています。
・ 大阪家裁後見センターだより

裁判所法第82条に基づき裁判所の事務の取扱方法に対して最高裁判所に申し出がなされた不服の処理状況

目次
1 不服の処理状況に関する文書
2 裁判所法の関係条文
3 詳細な取扱いが書いてある文書
4 関連記事その他

1 不服の処理状況に関する文書
   「裁判所法第82条に基づき裁判所の事務の取扱方法に対して最高裁判所に申出がなされた不服の処理状況(令和5年4月1日から令和6年3月31日までの分)」といったファイル名で以下のとおり掲載していますであって(不服の内容等は真っ黒です。)。
    なお,少なくとも平成27年6月9日以降に監督権が行使された事例は1件もありません。
◯ 令和6年4月1日から令和7年3月31日までの分
・ 不服の総処理件数は224件であり,長官決裁による処理件数は2件であり,局長等による専決処理件数は219件であり,課長等による専決処理件数は0件であり,その全部が監督権不行使でした。
・ 局長等による専決処理件数219件のうち,裁判事務関係が延べ172件であり,司法行政事務関係が延べ61件でした。
◯ 令和5年4月1日から令和6年3月31日までの分
・ 不服の総処理件数は147件であり,長官決裁による処理件数は5件であり,局長等による専決処理件数は141件であり,課長等による専決処理件数は1件であり,その全部が監督権不行使でした。
・ 局長等による専決処理件数のうち,裁判事務関係が106件であり,司法行政事務関係が35件でした。
◯ 令和4年4月1日から令和5年3月31日までの分
・ 不服の総処理件数は108件であり,長官決裁による処理件数は0件であり,局長等による専決処理件数は108件であり,その全部が監督権不行使でした。
・ 局長等による専決処理件数のうち,裁判事務関係が91件であり,司法行政事務関係が17件でした。
◯ 令和3年4月1日から令和4年3月31日までの分
・ 不服の総処理件数は124件であり,長官決裁による処理件数は0件であり,局長等による専決処理件数は124件であり,その全部が監督権不行使でした。
・ 局長等による専決処理件数のうち,裁判事務関係が107件であり,司法行政事務関係が17件でした。
・ 申出人の類型としては,事件当事者からのものが約94%を占めていました。
◯ 令和2年4月1日から令和3年3月31日までの分
・ 不服の総処理件数は146件であり,長官決裁による処理件数は1件であり,局長等による専決処理件数は145件であり,その全部が監督権不行使でした。
・ 局長等による専決処理件数のうち,裁判事務関係が122件であり,司法行政事務関係が23件でした。
・ 申出人の類型としては,事件当事者からのものが約94%を占めていました。
◯ 平成31年4月1日から令和2年3月31日までの分

・ 不服の総処理件数は103件であり,長官決裁による処理件数は3件であり,局長等による専決処理件数は100件であり,その全部が監督権不行使でした。
・ 局長等による専決処理件数のうち,裁判事務関係が71件であり,司法行政事務関係が29件でした。
・ 申出人の類型としては,事件当事者からのものが約95%を占めていました。
◯ 平成30年4月1日から平成31年3月31日までの分
・ 不服の総処理件数は120件であり,長官決裁による処理件数は0件であり,局長等による専決処理件数は120件であり,その全部が監督権不行使でした。
・ 局長等による専決処理件数のうち,裁判事務関係が91件であり,司法行政事務関係が29件でした。
・ 態様の内訳としては,裁判事務関係の不服が全体の約76%を占めていました。
・ 申出人の類型としては,事件当事者からのものが約93%を占めていました。
◯ 平成29年4月1日から平成30年3月末日までの分
・ 不服の総処理件数は103件であり,長官決裁による処理件数は1件であり,局長等による専決処理件数は102件であり,その全部が監督権不行使でした。
・ 局長等による専決処理件数のうち,裁判事務関係が92件であり,司法行政事務関係が10件でした。
・ 態様の内訳としては,裁判事務関係の不服が全体の約90%を占めていました。
・ 申出人の類型としては,事件当事者からのものが約93%を占めていました。
◯ 平成28年4月1日から平成29年3月末日までの分
・ 不服の総処理件数は87件であり,長官決裁による処理件数は2件であり,局長等による専決処理件数は84件であり,その全部が監督権不行使でした。
・ 局長等による専決処理件数のうち,裁判事務関係が72件であり,司法行政事務関係が12件でした。
・ 態様の内訳としては,裁判事務関係の不服が全体の約86%を占めていました。
・ 申出人の類型としては,判断,判決への不服や訴訟進行への不服等事件当事者からのものが約88%を占めていました。
◯ 平成27年6月9日から平成28年3月末日までの分
・ 不服の総処理件数は43件であり,長官決裁による処理件数は0件であり,局長等による専決処理件数は43件であり,その全部が監督権不行使でした。
・ 裁判事務関係が42件であり,司法行政事務関係が1件でした。
・ 態様の内訳としては,裁判事務関係の不服が全体の約98%を占めていました。
・ 申出人の類型としては,判断,判決への不服や訴訟進行への不服等事件当事者からのものが約77%を占めていました。

2 裁判所法の関係条文
・ 80条(司法行政の監督)
    司法行政の監督権は、左の各号の定めるところによりこれを行う。
一 最高裁判所は、最高裁判所の職員並びに下級裁判所及びその職員を監督する。
二 各高等裁判所は、その高等裁判所の職員並びに管轄区域内の下級裁判所及びその職員を監督する。
三 各地方裁判所は、その地方裁判所の職員並びに管轄区域内の簡易裁判所及びその職員を監督する。
四 各家庭裁判所は、その家庭裁判所の職員を監督する。
五 第三十七条に規定する簡易裁判所の裁判官は、その簡易裁判所の裁判官以外の職員を監督する。
・ 82条(事務の取扱方法に対する不服)
    裁判所の事務の取扱方法に対して申し立てられた不服は、第八十条の監督権によりこれを処分する。


3 詳細な取扱いが書いてある文書
・ 裁判所法第82条に基づき裁判所の事務の取扱方法に対して最高裁判所に申出がされた不服の処理要領(平成27年6月9日最高裁判所事務総局会議了承)
→ 司法研修所は裁判所法80条に基づく監督権の主体ではない気がします。
   そのため,司法研修所の事務について不服を申し立てる場合,「主として不服等の対象となっている事務がどの局課にも属しない事項」として,最高裁判所総務局が主管局になるのかも知れません。
・ 裁判所法第82条に基づき裁判所の事務の取扱方法に対して最高裁判所に申出がなされた不服の専決処理について(平成27年6月9日最高裁判所事務総局会議了承)
→ 「裁判事務に対する不服が主張されているが,当該裁判事務が明らかに法令に違反し,又は裁判官に与えられた自由裁量や書記官等に与えられた判断権を逸脱するとはいえないことが明白である場合」,主管局課の局長(ただし,秘書課,広報課及び情報政策課においては,課長)の専決となります。


4 関連記事その他
(1) 全司法新聞2319号(2019年10月発行)には「不当要求、居座り、脅迫、ネットでの誹謗中傷…裁判所でも」として以下の記載があります。
    裁判所においても、当事者の不当要求や居座り、長時間の電話拘束に苦労しているケースが多く見られます。
    大声で怒鳴りつけられた、「バカ」など罵倒する言葉を投げかけられた、開き直って「警察を呼べ」と叫ばれた、意に沿わないと感じるや急に床に伏せて詐病を演じ、救急車の派遣を強要されたといった事例も報告されています。その影響は、罵声を気にして外部(当事者)に電話がかけられない、受付手続案内に支障があるといった執務遂行に及んだり、自分に対してのものであればもちろん、同僚への暴言であってもストレスが大きく、仕事に集中できない、イライラする、仕事が嫌になるなど精神的な負担も大きくなっています。
    また、対応の間に当事者の言動がエスカレートし、誹謗中傷や暴言に及んだり、脅迫まがいの行為を受けることもあります。実際、勤務時間中に「今、裁判所に来ている。今から外に出てこい」と電話があったり、インターネット動画サイトで庁名や実名を晒して誹謗中傷されたというケースもあります。その動画においては、家族に危害を加えるような発言もありました。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所関係国賠事件
・ 裁判官人事評価情報の提供
・ 裁判官再任評価情報の提供
・ 裁判官の職務に対する苦情申告方法
・ 偶発債務集計表等(平成20年度以降)

最高裁判所長官任命の閣議書

目次
第1 最高裁判所長官任命の閣議書
第2 関連記事その他

第1 最高裁判所長官任命の閣議書

第21代:今崎幸彦最高裁判所長官任命の閣議書(令和6年7月9日付)令和6年8月16日付の裁可書

第20代:戸倉三郎最高裁判所長官任命の閣議書(令和4年5月20日付)令和4年6月24日付の裁可書

第19代:大谷直人最高裁判所長官任命の閣議書(平成29年12月8日付)平成30年1月9日付の裁可書

第18代:寺田逸郎最高裁判所長官任命の閣議書(平成26年3月7日付)平成26年4月1日付の裁可書

第17代:竹崎博允最高裁判所長官任命の閣議書(平成20年10月31日付)平成20年11月25日付の裁可書

第16代:島田仁郎最高裁判所長官任命の閣議書(平成18年10月3日付)平成18年10月16日付の裁可書

第15代:町田顕最高裁判所長官任命の閣議書(平成14年10月16日付)平成14年11月6日付の裁可書

第14代:山口繁最高裁判所長官任命の閣議書(平成9年10月24日付)平成9年10月31日付の裁可書

第13代:三好達最高裁判所長官任命の閣議書(平成7年10月31日付)平成7年11月7日付の裁可書

第12代:草場良八最高裁判所長官任命の閣議書(平成2年2月14日付)


第2 関連記事その他
1 最高裁判所事務総局総務局が昭和42年12月に出版した裁判所法逐条解説・上巻には,以下の趣旨の説明があります。
① 最高裁判所の場合,長官が他の裁判官の任免権を持つものではないから,形式的にも,実質上も,その権限は合議体としての最高裁判所裁判官会議に存する(102頁)。
② 司法行政権を最高裁判所の長官に与えた場合,程度の差こそあれ,他の裁判官の長官への従属の可能性を持つところ,裁判官はあくまでもその権限と地位において同等であることが望ましいことにかんがみ,憲法は,司法行政権を最高裁判所の長官に与えず,最高裁判所そのものに与えた(103頁)。
③ 最高裁判所長官は,最高裁判所の構成員たる首席者であるというだけであって,他の裁判官と異なることのない地位にあるものであるから,司法行政事務についても,他の裁判官と同様の地位において裁判官会議の一構成員たる地位を有するにすぎない(106頁)。
2 以下の資料を掲載しています。
・ 最高裁判所裁判官任命に関する裁可書(令和元年9月2日から令和4年7月5日までの分)
・ 高等裁判所長官任命に関する裁可書(令和元年5月1日から令和4年9月2日までの分)
・ 最高裁判所裁判官任命に関する裁可書(平成5年4月1日から平成31年3月20日まで)
→ 最高裁判所長官の任命に関する裁可書,及び最高裁判所裁判官等の任命に関する裁可書が含まれています。
・ 検事総長任命に関する閣議書(平成5年12月13日から令和6年7月9日まで)


3 以下の記事も参照してください。
・ 歴代の最高裁判所長官
・ 最高裁判所長官の祝辞(平成26年度以降)
・ 最高裁判所判事任命の閣議書
・ 親任式及び認証官任命式
・ 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
・ 最高裁判所裁判官等の公用車
・ 最高裁判所第一小法廷(着任順)
・ 最高裁判所第二小法廷(長官以外は着任順)
・ 最高裁判所第三小法廷(着任順)
・ 高等裁判所長官任命の閣議書

 検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書
・ 内閣法制局長官任命の閣議書
・ 衆参両院の議院運営委員会に提示した国会同意人事案
・ 各府省幹部職員の任免に関する閣議承認の閣議書
・ 閣議

裁判所における一般職の職員

目次
第1 裁判所における一般職の職員
第2 関連記事その他

第1 裁判所における一般職の職員
・ 最高裁判所が作成した「裁判所における一般職の職員」では,裁判官以外の裁判所職員の主な官職に関する記載として以下のものがあります。

1 裁判所書記官
   最高裁から簡裁まで, どの裁判所にも配置されて.おり,裁判所書記官が立ち会わなければ法廷を開くことはできない。その職務は,弁論等に立ち会い,調書を作成したり,裁判記録を保管することのほか,争点の整理を踏まえて書面や証拠の提出を促す等の訴訟進行管理を行うことがその主たるものである。
   裁判所書記官になるためには,裁判所職員総合研修所入所試験に合格した上,その研修課程を修了するか,裁判所書記官任用試験に合格することが必要である。

2 裁判所事務官
   各裁判所に配置され, 司法行政上の各種事務や裁判所書記官の事務補助を担当する。裁判所事務官は,原則として,裁判所職員採用総合職試験(裁判所事務官)・同一般職試験(裁判所事務官)のような正規の採用試験に合格して名簿に登載された者の中から採用される。

3 裁判所速記官
   各地方裁判所に配置され,裁判官の命令に従って法廷に立ち会い,証人等の供述を速記する事務を担当する。
   なお,速記官の新規の養成は,平成10年4月以降停止された。

4 家庭裁判所調査官(補)
   各家庭裁判所及び各高等裁判所に配置され,家事事件や少年事件の審判等に必要な調査事務を担当する。
   家庭裁判所調査官になるためには,裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)に合格して採用され,裁判所職員総合研修所に入所し,その研修課程を修了することが必要である。

5 裁判所調査官
(1) 最高裁の裁判所調査官
   下級裁判所の裁判官等が任命され,最高裁判所の裁判官の命を受けて,上告事件等を解決するのに参考となる判例,学説等の調査事務を担当する。
(2) 高,地裁の裁判所調査官
   一部の高,地裁にも配置されており,知的財産等に関する専門知識を有する者が任命され,知的財産に関する争訟等について調査事務を担当する。

6 裁判所技官
   各裁判所に配置されており,営繕技官, 医師,看護師等がいる。

7 秘書官
   最高裁判所長官秘書官,最高裁判所判事秘書官,高等裁判所長官秘書官があり,それぞれの秘書事務に従事する。

8 その他
   研修所教官,法廷警備員のほか,電話交換手, 自動車運転手,守衛,庁務員等がいる。

9 執行官
   各地方裁判所に配置され,民事執行関係の事務を担当するが,事件の当事者から手数料を受ける等,他の裁判所職員とは異なる面がある。

第2 関連記事
1 40期の中村慎最高裁判所総務局長は,平成28年3月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 個別の事例についての答弁は差し控えさせていただきたいと存じますけれども、一般的なこととして申し上げます。
 裁判所職員の人事異動に当たりましては、介護等といった個別具体的な家庭事情にも可能な限り配慮をした異動の実施に努めてきているところでございますが、他方で、人事異動は、適材適所の任用原則にのっとりまして、均質な司法サービスの提供、人材育成、異動負担の公平等の観点からも考慮する必要があるところでございまして、転居を伴うなど必ずしも本人の希望どおりにならない場合も一定程度生じざるを得ないところではございます。
 介護等の事情のある家裁調査官の異動におきましては、一般的に申し上げますけれども、その介護の具体的な事情のほか、転居せずに現住所から通勤した場合の経済的な負担、身体的な負担といったものもつぶさに見て検討の上、適切に異動を実施しているものと認識しております。
2 以下の記事も参照してください。
 平成3年度以降の裁判所職員採用試験の採用案内パンフレット
 裁判所職員採用試験に関する各種データ
・ 裁判所職員に関する記事の一覧

修習終了後3年未満の判事補への任官

目次
1 1年後輩の司法修習生と一緒に判事補になった裁判官
2 平成31年1月の修習終了後3年未満の判事補への任官候補者に関する説明
3 関連記事

1 1年後輩の司法修習生と一緒に判事補になった裁判官
(1) 以下の裁判官は弁護士を1年間ぐらいした後,1年後輩の司法修習生と一緒に判事補になりました。
① 56期の渡辺美紀子裁判官(平成29年4月1日以降,司法研修所刑裁教官)
② 57期の浅海俊介裁判官
③ 57期の市原志都裁判官
④ 58期の高田美紗子裁判官
⑤ 現行60期の平山俊輔裁判官
・ 任官のタイミングは新61期と一緒です。
⑥ 70期の塚原明日香裁判官
・ 令和2年4月1日現在の氏名は山田明日香です。
(2) ①ないし⑤の裁判官につき,任官前の弁護士経験がある関係で判事就任資格については他の同期の判事補と同じです(裁判所法42条1項1号及び4号参照)から,他の同期と一緒に判事になりました。

2 平成31年1月の修習終了後3年未満の判事補への任官候補者に関する説明
(1) 平成30年12月21日開催の第87回下級裁判所裁判官指名諮問委員会の議事要旨2頁及び3頁に以下の記載があります。
・ 平成31年1月の修習終了後3年未満の判事補への任官候補者について
   庶務から,修習終了後3年未満の者の判事補への指名の適否の審査及び情報収集は,司法修習生から判事補への任命のパターンに準じて行うこととされていること,具体的には,最高裁判所から提出された資料に基づいて審議することとし,地域委員会に対しては,特に情報収集の依頼はせず,実務修習地及び所属弁護士会所在地を管轄する地域委員会に指名候補者の名簿及び履歴書を送付することとされている旨の説明がされた。
   さらに,今回の修習終了後3年未満の判事補への任官候補者1人については,9月の委員会後に任官希望が出され,これを受けて諮問がされた関係で,本日の委員会より前に情報収集に関する審議を行う機会がなかったため,委員長の了解を得て,実務修習地及び所属弁護士会所在地を管轄する地域委員会に対し,名簿及び履歴書を送付したこと,本日までに地域委員会から特段の情報は寄せられていないことが報告された。
   作業部会における検討結果を踏まえ,指名候補者1人について,判事補に任命されるべき者として指名することの適否について審議され,審議の結果,指名することが適当であると最高裁判所に答申することとされた。
(2) 平成31年1月16日,70期の塚原明日香裁判官が判事補に採用されました。

3 関連記事
・ 弁護士任官候補者に関する下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申状況
・ 判事補の採用に関する国会答弁
・ 判事補採用願等の書類,並びに採用面接及び採用内定通知の日程
・ 新任判事補研修の資料

裁判官の再任の予定年月日,及び一斉採用年月日

目次
1 裁判官の再任の予定年月日
2 高輪1期以降の裁判官の一斉採用年月日
3 毎年4月の任期終了退官の官報掲載時期
4 関連記事その他

1 裁判官の再任の予定年月日
・ 弁護士から判事に任官した人,及び判事新任後の出向経験のある人を除き,裁判官の再任の予定日は以下のとおりです(翌日ぐらいまでにウエストロージャパンHP「法曹界人事」に掲載されますし,内閣人事としてインターネット版官報にも掲載されます)。
令和  8年(2026年)
1月16日:68期
4月11日:38期,48期
10月16日:59期
令和  9年(2027年)
1月16日:69期
4月10日:39期,49期
9月20日:旧60期
令和10年(2028年)
1月16日:新60期,70期
4月12日:40期,50期
9月20日:旧61期
令和11年(2029年)
1月16日:新61期,71期
4月11日:41期,51期
9月20日:旧62期
令和12年(2030年)
1月16日:新62期,72期
4月10日:42期,52期
9月20日:旧63期
10月18日:53期
令和13年(2031年)
1月16日:新63期,73期
4月 9日:43期
9月20日:旧64期
10月17日:54期
令和14年(2032年)
1月16日:新64期
4月 7日:44期
5月17日:74期
10月16日:55期
令和15年(2033年)
1月16日:65期,75期
4月 9日:45期
10月16日:56期
令和16年(2034年)
1月16日:66期,76期
4月13日:46期
10月16日:57期
令和17年(2035年)
1月16日:67期
4月12日:47期
10月16日:58期


2 高輪1期以降の裁判官の一斉採用年月日
高輪1期:昭和23年1月28日 高輪2期:昭和23年6月23日
1期: 昭和24年 6月 4日 2期: 昭和25年 4月17日
3期: 昭和26年 4月14日 4期: 昭和27年 4月 8日
5期: 昭和28年 4月 8日 6期: 昭和29年 4月10日
7期: 昭和30年 4月 9日 8期: 昭和31年 4月 7日
9期: 昭和32年 4月 6日 10期:昭和33年 4月 5日
11期:昭和34年 4月 8日 12期:昭和35年 4月 8日
13期:昭和36年 4月14日 14期:昭和37年 4月10日
15期:昭和38年 4月 9日 16期:昭和39年 4月10日
17期:昭和40年 4月 9日 18期:昭和41年 4月 8日
19期:昭和42年 4月 7日 20期:昭和43年 4月 5日
21期:昭和44年 4月 8日 22期:昭和45年 4月 8日
23期:昭和46年 4月 6日 24期:昭和47年 4月11日
25期:昭和48年 4月10日 26期:昭和49年 4月12日
27期:昭和50年 4月11日 28期:昭和51年 4月 9日
29期:昭和52年 4月 8日 30期:昭和53年 4月 7日
31期:昭和54年 4月 9日 32期:昭和55年 4月 8日
33期:昭和56年 4月 7日 34期:昭和57年 4月13日
35期:昭和58年 4月12日 36期:昭和59年 4月13日
37期:昭和60年 4月12日 38期:昭和61年 4月11日
39期:昭和62年 4月10日 40期:昭和63年 4月12日
41期:平成 元年 4月11日 42期:平成 2年 4月10日
43期:平成 3年 4月 9日 44期:平成 4年 4月 7日
45期:平成 5年 4月 9日 46期:平成 6年 4月13日
47期:平成 7年 4月12日 48期:平成 8年 4月11日
49期:平成 9年 4月10日 50期:平成10年 4月12日
51期:平成11年 4月11日 52期:平成12年 4月10日
53期:平成12年10月18日 54期:平成13年10月17日
55期:平成14年10月16日 56期:平成15年10月16日
57期:平成16年10月16日 58期:平成17年10月16日
59期:平成18年10月16日
旧60期:平成19年9月20日 新60期:平成20年1月16日
旧61期:平成20年9月20日 新61期:平成21年1月16日
旧62期:平成21年9月20日 新62期:平成22年1月16日
旧63期:平成22年9月20日 新63期:平成23年1月16日
旧64期:平成23年9月20日 新64期:平成24年1月16日
65期:平成25年 1月16日 66期:平成26年 1月16日
67期:平成27年 1月16日 68期:平成28年 1月16日
69期:平成29年 1月16日 70期:平成30年 1月16日
71期:平成31年 1月16日 72期:令和 2年 1月16日
73期:令和 3年 1月16日 74期:令和 4年 5月17日
75期:令和 5年 1月16日 76期:令和 6年 1月16日
* 46期以降については,53期及び54期を除き,判事新任日及び判事再任日が同じ日になるように採用日を調整していると思います。


3 毎年4月の任期終了退官の官報掲載時期
・ 令和 6年4月の任期終了退官は4月1日以降の人事と一緒に,5月14日に掲載されました。
・ 令和 5年4月の任期終了退官は4月1日以降の人事と一緒に,5月24日に掲載されました。
・ 令和 4年4月の任期終了退官は4月1日以降の人事と一緒に,5月11日に掲載されました。
・ 令和 3年4月の任期終了退官は4月1日以降の人事と一緒に,5月18日に掲載されました。
・ 令和 2年4月の任期終了退官は4月5日以降の人事と一緒に,5月27日に掲載されました。
・ 平成31年4月の任期終了退官は4月1日以降の人事と一緒に,5月23日に掲載されました。
・ 平成30年4月の任期終了退官は4月1日以降の人事と一緒に,5月11日に掲載されました。

4 関連記事その他
(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判官の人事評価に関する規則(平成16年1月7日最高裁判所規則第1号)
・ 裁判官の人事評価に関する規則の運用について(平成16年3月26日付の最高裁判所事務総長の依命通達)

・ 裁判官の人事評価の実施等について(平成16年3月26日付の最高裁判所人事局長通達)
・ 裁判官に関する人事事務の資料の作成等について(平成16年5月31日付の最高裁判所人事局長の依命通達)
・ 裁判官の再任等に関する事務について(平成16年6月17日付の最高裁判所人事局長通達)

(2) 以下の記事も参照してください。
・ 新任判事補任命の閣議決定及び官報掲載の日付
・ 下級裁判所裁判官指名諮問委員会で再任不適当とされた裁判官の数の推移
・ 平成20年度以降,任期終了により退官した裁判官の一覧
・ 任期終了直前の依願退官及び任期終了退官における退職手当の支給月数(推定)

最高裁判所の事件記録符号規程

目次
1 最高裁判所の事件記録符号規程(平成31年3月現在)
2 関連記事その他

1 最高裁判所の事件記録符号規程(平成31年3月現在)① 民事事件記録符号規程(平成13年1月31日最高裁判所規程第1号)
② 行政事件記録符号規程(昭和38年10月1日最高裁判所規程第3号)
③ 刑事事件記録符号規程(平成13年2月7日最高裁判所規程第2号)
④ 没収の裁判の取消事件記録符号規程(昭和38年7月23日最高裁判所規程第2号)
⑤ 家庭事件記録符号規程(昭和26年9月15日最高裁判所規程第8号)
⑥ 医療観察事件記録符号規程(平成17年6月29日最高裁判所規程第6号)
⑦ 法廷等の秩序維持に関する法律違反事件記録符号規程(昭和27年10月20日最高裁判所規程第15号)
⑧ 裁判官の分限事件記録符号規程(昭和24年2月1日最高裁判所規程第3号)


2 関連記事その他
(1) 令和5年度(最情)答申第3号(令和5年10月3日答申)には以下の記載があります。
    事件番号は、各裁判所において、事件を受理した日の属する年、当該事件の種類ごとに付される符号及び事件を受理するたびに同符号ごとに付される一連の番号によって構成されるものであり、同一の裁判所において、同一の事件番号が重複して付されることはないことが認められる。このような事件番号の性質に照らすと、当該事件が係属する裁判所名とその事件番号という情報から、対象となる事件を確実に特定することが可能となる。
(2) 以下の記事も参照してください。
 裁判所における主なシステム
 裁判所の情報化の流れ
・ 裁判統計報告
・ 最高裁判所が作成している事件数データ

最高裁判所調査官室が購入した書籍のタイトル

目次
1 最高裁判所調査官室が購入した書籍のタイトルが分かる文書
2 平成29年中に最高裁判所調査官室が購入した書籍
3 関連記事

1 最高裁判所調査官室が購入した書籍のタイトルが分かる文書
(令和時代)
令和元年分令和2年分令和3年分令和4年分
令和5年分令和6年分
(平成時代)
平成29年分平成30年分
* 「最高裁判所調査官室が購入した書籍のタイトルが分かる文書(令和5年分)」といったファイル名です。

2 平成29年中に最高裁判所調査官室が購入した書籍
・ 平成29年中に最高裁判所調査官室が購入した書籍のタイトルが分かる文書によれば,平成29年中に最高裁判所調査官室が購入した書籍は以下のとおりです。

1 A.I . P. P. I
2 NBL
3 季刊 刑事弁護
4 季刊 労働法
5 季報 情報公開・個人情報保護
6 警察学論集
7 刑事法ジャーナル
8 刑法雑誌
9 月刊 税務事例
10 検察統計年報
11 現代消費者法
12 国会制定法律集(国会制定法審議録)
13 国会便覧
14 国家学会雑誌
15 自治研究
16 ジュリスト
17 旬刊 商事法務
18 政経研究
19 税務弘報
20 税理
21 選挙時報
22 捜査研究
23 時の法令
24 日本弁護士連合会会員名簿
25 日本労働法学会誌
26 判例時報
27 判例タイムズ
28 比較法雑誌
29 法学セミナー
30 法曹時報
31 法律時報
32 法律のひろば
33 法令解説資料総覧
34 法令全書
35 パテント
36 民事訴訟雑誌
37 民商法雑誌
38 労働法学研究会報
39 労働法律旬報
40 現行日本法規
41 地方自治法質疑応答集
42 注釈地方自治法
43 判例不動産法[仮差押・仮処分]
44 判例不動産法[売買]
45 判例不動産法[譲渡担保・仮登記担保・質権・先取特権・留置権・所有権留保]
46 公害関係法規総覧
47 現行法規総覧
48 河川関係法令例規集
49 DHCコンメンタール 国税通則法
50 DHCコンメンタール 法人税法
51 DHCコンメンタール 会社税務釈義
52 DHCコンメンタール 所得税法
53 DHCコンメンタール 相続税法
54 DHCコンメンタール 消費税法
55 労働法規総覧
56 新判例体系 公法編
57 新判例体系 民事法編
58 新判例体系 刑事法編
59 戸籍先例全集

3 関連記事
・ 最高裁判所調査官
・ 歴代の最高裁判所首席調査官
・ 歴代の最高裁判所民事上席調査官
・ 歴代の最高裁判所刑事上席調査官
・ 歴代の最高裁判所行政上席調査官
・ 最高裁判所判例解説
・ 裁判所調査官
・ 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携
・ 最高裁の既済事件一覧表(民事)
・ 最高裁判所事件月表(令和元年5月以降)
・ 最高裁の破棄判決等一覧表(平成25年4月以降の分),及び最高裁民事破棄判決等の実情
・ 最高裁判所に係属した許可抗告事件一覧表(平成25年分以降),及び許可抗告事件の実情
・ 最高裁判所の口頭弁論期日で配布された,傍聴人の皆様へ
・ 司法研修所の教官組別表,教官担当表及び教官名簿
 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)
・ 法務総合研究所

平成の代替わりに伴う大嘗祭等に関する裁判例

目次
1 平成の代替わりに伴う大嘗祭等に関する最高裁判例
2 大分県主基斎田抜穂の儀参列違憲訴訟
3 鹿児島県大嘗祭参列違憲訴訟
4 神奈川県即位儀式・大嘗祭参列違憲訴訟
5 平成の代替わりに伴う儀式に関する下級裁判所の裁判例(裁判所HPの「裁判例情報」に最高裁判決が掲載されていないもの)
6 政教分離原則に関する最高裁判決の裁判要旨(大嘗祭等の合憲性に関係すると思われるもの)
7 大嘗祭等
8 天皇の行為に関する内閣法制局長官の答弁等
9 下級審裁判官が既存の最高裁判例に反する裁判をなす場合
10 大嘗祭の合憲性に関する内閣答弁書及び内閣法制局の資料
11 大嘗祭及び即位の礼に関する中坊公平日弁連会長の所信表明
12 名古屋家裁裁判官に関する,平成31年3月13日付の産経新聞の報道
13 関連記事その他

1 平成の代替わりに伴う大嘗祭等に関する最高裁判例
   裁判所HPの「裁判例情報」に掲載されている,平成の代替わりに伴う大嘗祭等に関する最高裁判例は以下の三つです(首相官邸HPの「第2回 天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会 議事次第」「資料6 平成の御代替わりに伴う儀式に関する最高裁判決(PDF/398KB)参照)。
① 大分県主基斎田抜穂の儀参列違憲訴訟(H14.7.9第3小法廷
② 鹿児島県大嘗祭参列違憲訴訟(H14.7.11第1小法廷
③ 神奈川県即位儀式・大嘗祭参列違憲訴訟(H16.6.28第2小法廷

2 ①大分県主基斎田抜穂の儀参列違憲訴訟
(1) 最高裁平成14年7月9日判決の裁判要旨は以下のとおりです。
   知事,副知事及び県農政部長が県内で行われた主基斎田抜穂の儀に参列した行為は,主基斎田抜穂の儀が皇位継承の際に通常行われてきた皇室の伝統儀式である大嘗祭の一部を構成する一連の儀式の一つであること,他の参列者と共に参列して拝礼したにとどまること,参列が公職にある者の社会的儀礼として天皇の即位に祝意,敬意を表する目的で行われたことなど判示の事情の下においては,憲法20条3項に違反しない。
(2)ア 第一審判決は大分地裁平成6年6月30日判決(担当裁判官は24期の丸山昌一,36期の金光健二及び42期の大崎良信)です。
イ 控訴審判決は福岡高裁平成10年9月25日判決(担当裁判官は17期の小長光馨一25期の小山邦和及び36期の長久保尚善)でした。
(3) 弁護士法人おおいた市民総合法律事務所HP「4.大嘗祭,抜穂の儀違憲訴訟」に,大分県主基斎田抜穂の儀参列違憲訴訟のことが書いてあります。

3 ②鹿児島県大嘗祭参列違憲訴訟
(1) 最高裁平成14年7月11日判決の裁判要旨は以下のとおりです。
   知事が大嘗祭に参列した行為は,大嘗祭が皇位継承の際に通常行われてきた皇室の伝統儀式であること,他の参列者と共に参列して拝礼したにとどまること,参列が公職にある者の社会的儀礼として天皇の即位に祝意を表する目的で行われたことなど判示の事情の下においては,憲法20条3項に違反しない。
(2)ア 第一審判決は鹿児島地裁平成4年10月2日判決(担当裁判官は19期の宮良允通30期の原田保孝及び40期の宮武康)です。
イ 控訴審判決は福岡高裁宮崎支部平成10年12月1日判決(担当裁判官は18期の海保寛36期の多見谷寿郎及び40期の水野有子)です。
(3) 鹿児島大学リポジトリの以下の資料(なぜか<資料>大嘗祭違憲訴訟(1)ないし(4)が見当たりません。)に,鹿児島県大嘗祭参列違憲訴訟のことが非常に詳しく書いてあります。
① <資料>大嘗祭違憲訴訟 (5) 〔控訴審編その 3〕 : 鹿児島県知事の大嘗祭出席についての住民訴訟の記録 
②  <資料>大嘗祭違憲訴訟 (6) 〔控訴審編その 4〕 : 鹿児島県知事の大嘗祭出席についての住民訴訟の記録 
③  <資料>大嘗祭違憲訴訟 (7) 〔控訴審編その 5〕 : 鹿児島県知事の大嘗祭出席についての住民訴訟の記録 
④ <資料>大嘗祭違憲訴訟 (8) 〔上告審編その 1〕 : 鹿児島県知事の大嘗祭出席についての住民訴訟の記録 
⑤ 大嘗祭違憲訴訟(九・完)〔上告審編その2〕 : 鹿児島県知事の大嘗祭出席についての住民訴訟の記録

4 ③神奈川県即位儀式・大嘗祭参列違憲訴訟
(1) 最高裁平成16年6月28日判決の裁判要旨は以下のとおりです。
① 県知事及び県議会議長が即位礼正殿の儀に参列した行為は,即位礼正殿の儀が皇室典範24条の規定する即位の礼の一部を構成する伝統的な皇位継承儀式であること,参列が公職にある者の社会的儀礼として他の参列者と共に天皇の即位に祝意を表する目的で行われたことなど判示の事情の下においては,憲法20条3項に違反しない。
② 県議会議長が大嘗祭に参列した行為は,大嘗祭が即位の礼に際しての皇室の伝統儀式であること,参列が公職にある者の社会的儀礼として他の参列者と共に天皇の即位に祝意を表する目的で行われたことなど判示の事情の下においては,憲法20条3項に違反しない。
(2)ア 第一審判決は横浜地裁平成11年9月27日判決(担当裁判官は26期の岡光民雄28期の近藤壽邦及び51期の平山馨)です。
イ 控訴審判決は東京高裁平成14年9月19日判決(担当裁判官は20期の森脇勝28期の中野信也及び35期の藤下健)です。

5 平成の代替わりに伴う大嘗祭等に関する下級裁判所の裁判例(裁判所HPの「裁判例情報」に最高裁判決が掲載されていないもの)
(1) 大阪高裁平成7年3月9日判決(担当裁判官は10期の山中紀行16期の武田多喜子及び31期の井戸謙一)
ア 事件名は,即位の礼・大嘗祭国費支出差止等請求控訴事件でした。
イ 傍論として,「現実に実施された本件即位礼正殿の儀(即位の礼の諸儀式・行事のうち、本件諸儀式・行事に含まれるのは、即位礼正殿の儀のみである)は、旧登極令及び同附式を概ね踏襲しており、剣、璽とともに御璽、国璽が置かれたこと、海部首相が正殿上で万歳三唱をしたこと等、旧登極令及び同附式よりも宗教的な要素を薄め、憲法の国民主権原則の趣旨に沿わせるための工夫が一部なされたが、なお、神道儀式である大嘗祭諸儀式・行事と関連づけて行われたこと、天孫降臨の神話を具象化したものといわれる高御座や剣、璽を使用したこと等、宗教的な要素を払拭しておらず、大嘗祭と同様の趣旨で政教分離規定に違反するのではないかとの疑いを一概に否定できないし、天皇が主権者の代表である海部首相を見下ろす位置で「お言葉」を発したこと、同首相が天皇を仰ぎ見る位置で「寿詞」を読み上げたこと等、国民を主権者とする現憲法の趣旨に相応しくないと思われる点がなお存在することも否定できない。」などと判示したものの,結論としては,個人の思想等の形成,維持に具体的かつ直接的に影響を与えたとはいえないということで,請求棄却判決でした。
ウ 多面体Fブログの「スタートした即位大嘗祭違憲訴訟の会」には,大阪高裁平成7年3月9日判決に関して,「かつてない裁判所の判断だし、しかも高裁判決として温存したほうがよいと考え、全国の控訴人とも相談のうえ最高裁への上告は行わなかった。」と書いてあります。
エ 東京新聞HPの「<代替わり考 皇位継承のかたち>(4) 大嘗祭に国費 違憲可能性」(平成31年1月11日付)には以下の記載があります。
   一九九五年三月、大阪高裁は一審と同様、原告の慰謝料請求などを退けた。ただし、判決の結論に影響しない「傍論」で、大嘗祭と即位礼正殿の儀への国費支出を「ともに憲法の政教分離規定に違反する疑いは否定できない」と指摘した。
 判決原案を書いたのは、主任裁判官の井戸だった。あえて傍論で憲法判断に踏み込んだ理由を「結論に関係がなくとも、できる範囲で答えるべきだと考えた」と明かす。裁判長ら三人の合議でも異論は出なかったという。
 国を相手に儀式への国費支出の合憲性を争う集団訴訟は他になく、全国の千人以上が原告として参加した。原告側は「実質勝訴」として上告せず、判決を確定させた。このため国費支出の合憲性について最高裁の判断は出されていない。
オ 未来政治塾HPの「井戸謙一」には,「退官後は、滋賀県弁護士会でいわゆる「マチ弁護士」として、「自分が正しいと信じることを貫くこと」を理念に、憲法9条問題や原発問題に取り組み、大飯原発の運転差し止め訴訟等の画期的判決を勝ち取る。 」などと紹介されています。
カ 第一審判決は大阪地裁平成4年11月24日判決(担当裁判官は16期の福富昌昭,36期の小林元二及び43期の大藪和男)です。
(2) 東京高裁平成16年4月16日判決(担当裁判官は21期の相良朋紀,31期の三代川俊一郎及び33期の野山宏
ア 事件名は,即位の礼・大嘗祭違憲住民訴訟請求控訴事件でした。
イ 第一審判決は東京地裁平成11年3月24日判決(担当裁判官は26期の青柳馨39期の増田稔及び49期の篠田賢治)です。
ウ 上告審判決は最高裁平成17年12月8日判決であるかもしれません(レファレンス協同データベースHP「平成17年(2005年)12月8日に最高裁判所第一小法廷で判決が下された、「都知事が大嘗祭に参列したことを合憲」とした判例を探している。」で始まる記事参照)。

6 政教分離原則に関する最高裁判決の裁判要旨(大嘗祭等の合憲性に関係すると思われるもの)
(1) 津地鎮祭訴訟に関する最高裁大法廷昭和52年7月13日判決(破棄自判・合憲判決)の裁判要旨(抜粋)
   市が主催し神式に則り挙行された市体育館の起工式は、宗教とかかわり合いをもつものであることを否定することはできないが、その目的が建築着工に際し土地の平安堅固、工事の無事安全を願い、社会の一般的慣習に従つた儀礼を行うという専ら世俗的なものと認められ、その効果が神道を援助、助長、促進し又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められない判示の事情のもとにおいては、憲法二〇条三項にいう宗教的活動にあたらない。
(2) 愛媛玉串訴訟に関する最高裁大法廷平成9年4月2日判決(上告棄却・違憲判決)の裁判要旨(抜粋)
   愛媛県が、宗教法人靖国神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である例大祭に際し玉串料として九回にわたり各五〇〇〇円(合計四万五〇〇〇円)を、同みたま祭に際し献灯料として四回にわたり各七〇〇〇円又は八〇〇〇円(合計三万一〇〇〇円)を、宗教法人愛媛県護国神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である慰霊大祭に際し供物料として九回にわたり各一万円(合計九万円)を、それぞれ県の公金から支出して奉納したことは、一般人がこれを社会的儀礼にすぎないものと評価しているとは考え難く、その奉納者においてもこれが宗教的意義を有する者であるという意識を持たざるを得ず、これにより県が特定の宗教団体との間にのみ意識的に特別のかかわり合いを持ったことを否定することができないのであり、これが、一般人に対して、県が当該特定の宗教団体を特別に支援しており右宗教団体が他の宗教団体とは異なる特別のものであるとの印象を与え、特定の宗教への関心を呼び起こすものといわざるを得ないなど判示の事情の下においては、憲法二〇条三項、八九条に違反する。
(3) 靖国参拝違憲訴訟に関する最高裁平成18年6月23日判決(上告棄却・合憲判決)の裁判要旨
   内閣総理大臣の地位にある者が靖國神社に参拝した行為によって個人の心情ないし宗教上の感情が害されたとしても,損害賠償の対象となり得るような法的利益の侵害があったとはいえない。
(補足意見がある。)
(4) 白山ひめ神社訴訟に関する最高裁平成22年7月22日判決(破棄自判・合憲判決)の裁判要旨
   神社の鎮座2100年を記念する大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体の発会式に地元の市長が出席して祝辞を述べた行為は,地元にとって,上記神社が重要な観光資源としての側面を有し,上記大祭が観光上重要な行事であったこと,上記団体はこのような性質を有する行事としての大祭に係る諸事業の奉賛を目的とするもので,その事業自体が観光振興的な意義を相応に有していたこと,上記発会式は,市内の一般の施設で行われ,その式次第は一般的な団体設立の式典等におけるものと変わらず,宗教的儀式を伴うものではなかったこと,上記市長は上記発会式に来賓として招かれて出席したもので,その祝辞の内容が一般の儀礼的な祝辞の範囲を超えて宗教的な意味合いを有するものであったともうかがわれないことなど判示の事情の下においては,憲法20条3項に違反しない。

7 大嘗祭等
(1) 平成2年11月に挙行された大嘗祭についての政府の説明
   第8回皇室典範に関する有識者会議(平成17年8月30日開催)「資料3 皇位の継承に係わる儀式等(大嘗祭を中心に)について」によれば,平成2年11月に挙行された大嘗祭についての政府の説明は以下のとおりです。
① 皇室典範に即位(践祚)と即位の礼を規定し、大嘗祭を規定しなかった理由

・ 即位の礼に関しましては、今回制定せられまする典範の中にやはり規定が設けてありまして、実質において異なるところはございませんので、大嘗祭等のことを細かに書くことが一面の理がないわけではありませんが、これはやはり信仰に関する点を多分に含んでおりまするが故に、皇室典範の中に姿を現わすことは、或は不適当であろうと考えておるのであります。……
(昭和21年12月5日 衆議院本会議皇室典範案第一読会 金森徳次郎国務大臣)
・ 現行の皇室典範の二十四条というものは、天皇の即位に伴いまして国事行為たる儀式として即位の礼を行うことを予定したものと解されますが、大嘗祭には宗教的な面があるということも考えまして、これに関する規定は制定当時設けなかった、将来の慎重な検討にゆだねる、こういうことのように考えております。
(平成2年5月24日 参議院内閣委員会 工藤敦夫内閣法制局長官)
② 大嘗祭の意義
・ 大嘗祭は、稲作農業を中心とした我が国の社会に古くから伝承されてきた収穫儀礼に根ざしたものであり、天皇が即位の後、初めて、大嘗宮において、新穀を皇祖及び天神地祇にお供えになって、みずからお召し上がりになり、皇祖及び天神地祇に対し安寧と五穀豊穣などを感謝されるとともに、国家・国民のために安寧と五穀豊穣などを祈念される儀式である。それは、皇位の継承があったときは、必ず挙行すべきものとされ、皇室の長い伝統を受け継いだ、皇位継承に伴う一世に一度の重要な儀式である。
(平成元年12月21日 閣議口頭了解(「即位の礼」・大嘗祭の挙行等について)の別紙より)
③ 大嘗祭の儀式の位置付け
・ 大嘗祭は、前記のとおり、収穫儀礼に根ざしたものであり、伝統的皇位継承儀式という性格を持つものであるが、その中核は、天皇が皇祖及び天神地祇に対し、安寧と五穀豊穣などを感謝されるとともに、国家・国民のために安寧と五穀豊穣などを祈念される儀式であり、この趣旨・形式等からして、宗教上の儀式としての性格を有すると見られることは否定することができず、また、その態様においても、国がその内容に立ち入ることにはなじまない性格の儀式であるから、大嘗祭を国事行為として行うことは困難であると考える。……
(平成元年12月21日 閣議口頭了解(「即位の礼」・大嘗祭の挙行等について)の別紙より)
④ 大嘗祭の費用
・ 大嘗祭を皇室の行事として行う場合、大嘗祭は、前記のとおり、皇位が世襲であることに伴う、一世に一度の極めて重要な伝統的皇位継承儀式であるから、皇位の世襲制をとる我が国の憲法の下においては、その儀式について国としても深い関心を持ち、その挙行を可能にする手だてを講ずることは当然と考えられる。その意味において、大嘗祭は、公的性格があり、大嘗祭の費用を宮廷費から支出することが相当であると考える。
(平成元年12月21日 閣議口頭了解(「即位の礼」・大嘗祭の挙行等について)の別紙より)
(2) 大嘗祭の沿革
   平成2年に宮内庁が報道機関等に配布した資料には,「大嘗祭の沿革」として以下の記載があったみたいです(第8回皇室典範に関する有識者会議(平成17年8月30日開催)「資料3 皇位の継承に係わる儀式等(大嘗祭を中心に)について」参照)。
   大嘗祭の沿革をたどると、その起源は、新嘗の祭に由来する。新嘗の祭については、我が国最古の歴史書である古事記(712年に撰進)や日本書紀(720年に撰進)において、皇祖天照大神が新嘗の祭を行われたことや上古の天皇が新嘗の祭を行われたことの記述が見られるように、その起源は、それらの歴史書が編纂された奈良時代以前にまで遡ることができる。
   なお、新嘗の祭が、我が国の社会に古くから伝承されたものであることは、常陸国風土記(720年ごろに完成)に引く説話や万葉集(8世紀半ば過ぎに編纂)の歌によっても明らかである。
   7世紀中頃までは、一代に一度行われる大嘗祭と毎年行われる新嘗祭との区別はなかったが、第40代天武天皇の時(御在位673年~686年)に、初めて、大嘗祭と新嘗祭とが区別された。爾来、大嘗祭は一世に一度行われる極めて重要な皇位継承儀式とされ、歴代天皇は、即位後必ずそれを行われることが皇室の伝統となった。
   なお、歴代天皇のうち大嘗祭を行われなかった若干の例があるが、それは、大嘗祭を行われる前に退位されたり、或いは相次ぐ兵乱などのために経費の調達が困難であったことにより、大嘗祭を挙行することができなかったという特殊事情があったからである。
(3) 訴訟で知事等の参列が問題となった,主基斎田抜穂の儀及び大嘗宮の儀
ア ①大分県主基斎田抜穂の儀参列違憲訴訟で参列が問題となった主基斎田抜穂の儀は,斎田で新穀の収穫を行うための儀式であり,平成2年10月10日に大分県で行われた儀式です。
イ ②鹿児島県大嘗祭参列違憲訴訟及び③神奈川県即位儀式・大嘗祭参列違憲訴訟で参列が問題となった,大嘗祭の一部である「大嘗宮の儀」は,天皇が即位した後,大嘗宮の悠紀殿及び主基殿において初めて新穀を皇祖及び天神地祇に供えられ,自らも召し上がり,国家・国民のためにその安寧と五穀豊穣などを感謝し,祈念される儀式です。
ウ それぞれの儀式の内容については,宮内庁HPの「ご即位・大礼の主な儀式・行事」が参考になります。
エ 東京地裁平成11年3月24日判決63頁には,「本件諸儀式(注:即位の礼及び大嘗祭の関連諸儀式のこと。)のうち「即位礼正殿の儀」、「祝賀御列の儀」及び「饗宴の儀」は、国により国事行為として挙行され、一方、それ以外の諸儀式については、その儀式の宗教性及び態様から、皇室による私的な代替わりの儀式として挙行されたものであり、後者の儀式の挙行については、国が費用を負担するなど一定の事務的な援助の措置を講じている」と書いてあります。
オ 公益財団法人協和協会HP「大嘗祭が合憲・合法であることの法的論拠」(平成2年11月提出)には,大嘗祭を国事行為として行っても違憲ではないという主張が書いてあります。
(4) 即位礼正殿の儀及び大嘗祭の日程
ア 平成の代替わりでは,即位礼正殿の儀は平成2年11月12日に実施され,大嘗祭は同年11月22日及び同月23日に実施されました。
イ 令和の代替わりでは,即位礼正殿の儀は同年10月22日に実施され,大嘗祭は同年11月14日及び同月15日に実施されました(宮内庁大礼委員会「議事次第」「資料2 大嘗祭関係資料」参照)。
(5) 平成の即位の礼関連の閣議決定及び閣議口頭了解
   第2回 天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会(平成30年2月20日開催)「平成の御代替わり時における式典の挙行内容に関する閣議決定等(PDF/459KB)」に以下の閣議決定及び閣議口頭了解等が載っています。
① 剣璽等承継の儀を国の儀式として行うことについて(昭和64年1月7日閣議決定)
② 即位後朝見の儀を国の儀式として行うことについて(昭和64年1月7日閣議決定)
③ 「即位の礼」・大嘗祭の挙行等について(平成元年12月21日閣議口頭了解)
④ 「即位の礼」の挙行について〔大綱〕(平成2年1月19日即位の礼委員会決定・閣議口頭了解)
⑤ 即位礼正殿の儀を国の儀式として行うことについて(平成2年1月19日閣議決定)
⑥ 祝賀御列の儀を国の儀式として行うことについて(平成2年1月19日閣議決定)
⑦ 饗宴の儀を国の儀式として行うことについて(平成2年1月19日閣議決定)
(6) 過去の代替わりに関する宮内庁作成の資料
   第2回 天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会(平成30年2月20日開催)に以下の資料が載っています。
① 資料1(歴史上の実例)
→ 文化14年(1817年)3月22日,光格天皇(47歳)が仁孝天皇(18歳)に譲位した事例が書いてあります。
② 資料2(天皇皇后両陛下の平成御大礼時の御日程について)
(7) その他
   平成31年4月30日放送のNHKスペシャル「日本人と天皇」では,NHKが再現したところの大嘗祭が放送されました。

8 天皇の行為に関する内閣法制局長官の答弁等
(1) 横畠裕介内閣法制局長官は,平成31年3月13日の参議院予算委員会において以下の答弁をしています。
   天皇の行為は、①国家機関としての行為である国事行為、②象徴としての地位に基づいて公的な立場で行われる公的行為、③その他の行為の三つに分類されます。
 まず、国事行為は、国家機関としての天皇の行為であり、その内容は、憲法第四条第二項、第六条及び第七条に規定されているとおりでございます。
 また、憲法第四条第一項におきまして「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを」行うと定められており、憲法第三条において「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」と定められているところでございます。
 もっとも、言うまでもなく、天皇は、国家機関としての国事行為を行う以外にも、自然人として様々な事実行為を行うことがございます。
 ②の天皇の公的行為は、このような事実行為のうち、憲法第一条に規定する「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」としての地位に基づいて公的な立場で行われるものであり、憲法上の明文の根拠はありませんが、象徴としての地位にある天皇の行為として当然に認められるものと解されます。
 天皇の公的行為は、国事行為ではないので、憲法に言う内閣の助言と承認は必要ではなく、あくまでも天皇の御意思を基として行われるべきものでありますが、象徴としての地位に基づいて公的な立場で行われるものであることから、当然、内閣は、これが憲法の趣旨に沿って行われるよう配慮すべき責任を負っております。
 具体的に申し上げますと、天皇の公的行為については、①国事行為におけるのと同様に、国政に関する権能が含まれてはならない、すなわち、政治的な意味を持つとか、あるいは政治的な影響を持つものが含まれてはならない、②象徴たる性格に反するものであってはならない、③内閣が責任を負うものでなければならないという制約があると考えられ、直接には宮内庁が、最終的には内閣がその責任において配慮しているところでございます。
 ③のその他の行為でございますけれども、天皇の自然人としての事実行為のうち公的行為以外のものでございますけれども、そのような行為である限りは基本的に内閣が関与するということではございませんが、政治的な意味を持つものが含まれてはならないといった制約はあると考えられているところでございます。
(2) 「法の番人として生きる――大森政輔 元内閣法制局長官回顧録」164頁には以下の記載があります。
 宮内庁は(山中注:大嘗祭を)宮廷費で賄えるという面では公的性格があるんだという部分を捉えまして、大嘗祭以後は、宮内庁は天皇の行為を三分類ではなくて四分類にしてしまいました。国事行為、公的行為、そしてその他の行為に二種類あって、その経費を宮廷費で賄う公的性格を有するものと、全くそういう色彩のないまさに内廷費で賄うものです。前閣議口頭了解は、法制局としては、決して天皇の行為を四分類にしたつもりはなかったのですね。「その意味において」というところは、四分類ではなくて、金の出し方だけ、ということだったのですが、勝手読みをされて、少なくとも宮内庁においては四分類説がもう成立してしまっているのです。
(3) 参議院議員浜田聡君提出国葬、国葬儀、合同葬儀の違い等に関する質問に対する答弁書(令和4年8月15日付)には以下の記載があります。
① 日本国憲法第七条第十号に規定する儀式は、いずれも国の儀式として行われている。また、宮内庁法第二条第八号に規定する儀式については、そのうち日本国憲法第七条第十号に規定する儀式に該当するものが国の儀式として行われている。
② お尋ねの「内閣儀式等において、天皇が国事行為、公的行為又はその他の行為を行った事例」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、直近の内閣の行う行事である令和四年四月十八日に行われた第十六回みどりの式典への天皇陛下の御臨席等は、天皇の自然人としての事実行為のうち象徴としての地位に基づいて公的な立場で行われる公的行為に該当するものと考えている。

9 下級審裁判官が既存の最高裁判例に反する裁判をなす場合
(1) 「刑事実務と下級審判例」(著者は11期の小林充裁判官)が載ってある判例タイムズ588号の12頁及び13頁には以下の記載があります。
 次に、特殊な場合として下級審裁判官が既存の最高裁判例(または大審院判例-裁判所法施行令5条参照)に反する裁判をなす場合につき若干考察しておく。
 まず、それがまったく容認され得ないものでないことはいうまでもない。最高裁判所の拘束力の根拠は、当該事件に関する国の裁判所としてのあるべき法解釈の推測資料として、最高裁が同種事件についてなした法解釈が重要な意味をもつということにあった。すなわち、そこで重要なのは、最高裁判例それ自体ではなく、国家機関としてのあるべき法解釈ということにあるといわなければならない。ところで、法解釈は社会情勢の変化等に対応して不断に生成発展すべき性質をも有するものであり、最高裁判例も、常にあるべき法解釈を示すとは限らない。このことは、刑訴法410条2項において最高裁自体によって既存の最高裁判例が変更されることが予定されていることから明らかであろう。そして、下級審裁判官としては、あるべき法解釈が既存の最高裁判例と異なると信ずるときには、既存の最高裁判例と異なる裁判をなすことが容認されるといい得るのである。
 ただ、あるべき法解釈というのが、既に述べたように、当該裁判官が個人的に正当であると信ずる法解釈ではなく、国の裁判所全体としてのあるべき法解釈、換言すれば、当該事件が最高裁判所に係属した場合に最高裁が下すであろう法解釈を意味するものであるとすれば、下級裁判所裁判官が右のように信じ得るのは、当該事件が最高裁に係属した場合に最高裁が従前の判例を変更し自己の採った法解釈を是認することが見込まれる場合ということにほかならない。そして、最高裁判例の変更が見込まれるということの判断がしかく容易にされるものではないことは明らかである。その意味では、下級審裁判官が最高裁の判例に従わないことは例外的にのみ許容されるといってよいであろう。下級審裁判官としてただ単に最高裁判例に納得できないということが直ちにこの判断と結びつくものではないことはもとより、最高裁判例に従わない所以を十分の説得力をもって論証できると考えるときも、そのことから直ちに右判例の変更が見込まれるということはできないであろう。下級審裁判官として、最高裁判例の変更が見込まれるかどうかの判断に当たっては、当該判例につき、最近に至るまで何回も同趣旨の判例が反復して出されているか古い時期に一度しか出ていないものであるか、大法廷の判例であるか小法廷の判例であるか、少数意見の有無およびその数の多少、同種の問題につき他の判例と調和を欠くものでないか、それが出された後これに反する下級審判決が現われているか等を、慎重に勘案すべきであろう。
(2) 35期の元裁判官である弁護士森脇淳一HP「裁判官の身分保障について(3)」(平成31年2月21日付)には,「刑事実務と下級審判例」(著者は11期の小林充裁判官)は,裁判官国家機関説(一審の裁判官たるものは,高裁や最高裁がするであろう判断と異なる判断をしてはならないとする説)を裁判官全体に浸透させるのに大いに力があったという趣旨のことが書いてあります。

10 大嘗祭の合憲性に関する内閣答弁書及び内閣法制局の資料
(1) 衆議院議員小森龍邦君提出即位の礼、大嘗祭に関する質問に対する答弁書(平成2年11月20日付)は以下のとおりです。
一について
 高御座は、歴史上、伝統的皇位継承儀式の中核であるいわゆる即位礼において用いられるのが常とされ、皇位と密接に結びついた、古式ゆかしい調度品として伝承されてきたという、文化的・伝統的な面を有しており、今回の即位礼正殿の儀に際し、高御座のこのような面に着目してこれを用いたものであるから、高御座の使用は、憲法上の天皇の地位をゆがめるものではないと考える。
二について
 大嘗祭は、天皇陛下が、御即位の後、初めて、大嘗宮において、新穀を皇祖及び天神地祇にお供えになって、みずからもお召し上がりになり、皇祖及び天神地祇に対し、安寧と五穀豊穰などを感謝されるとともに、国家・国民のために安寧と五穀豊穰などを祈念される儀式であると認識している。なお、御指摘のような記述のあることは承知しているが、それは当時の特殊事情によるものと考える。
三について
 御指摘のいわゆる寝座は、皇祖がお休みになられるために見立てられた神座であると承知している。
四について
 御指摘の采女は、天皇陛下が神饌を御親供になる際にお手伝いをすると承知している。
五について
 大嘗祭の中核である大嘗宮の儀は、深夜、厳粛かつ静寂な中で、悠紀殿及び主基殿において、天皇陛下が皇祖及び天神地祇に安寧と五穀豊穰などを感謝し、祈念される儀式であり、儀式の性格上、その公開にはおのずから制約があるものと承知している。
(2) 内閣法制局の資料を以下のとおり掲載しています。
① 大嘗祭の合憲性に関する内閣法制局の国会用資料等
② 大嘗祭の合憲性に関する内閣法制局の国会答弁の抜粋

11 大嘗祭及び即位の礼に関する中坊公平日弁連会長の所信表明
 中坊公平日弁連会長は,平成2年10月24日,「大嘗祭と即位の礼について」と題して,以下の所信を表明しました。
   来る11月に挙行される「大嘗祭」と「即位の礼」について、日本弁護士連合会会長として、次のとおり所信を表明する。
   現行憲法は、国民主権を基本原則とし、象徴天皇制と政教分離の原則を採用している。これは、大日本帝国憲法下の天皇主権、神格天皇の原理とは、基本的に異なることを意味している。
   まず「大嘗祭」は、極めて宗教性の強い儀式であるので、国が関与し宮廷費を支出することは、その目的及び効果から見ても、現行憲法の政教分離の原則に抵触するものと言わざるを得ない。
   そこで「大嘗祭」に国が関与し、宮廷費を支出することがないよう、政府に強く要望する。
   また、「即位の礼」は、既に廃止された大日本帝国憲法下の「登極令」を踏襲することなく、国民主権、政教分離の原則に基づき、象徴天皇制にふさわしい儀式として挙行するよう期待する。

12 名古屋家裁裁判官に関する,平成31年3月13日付の産経新聞の報道
(1) 産経新聞HPの「昭和の日を「無責任の日」と批判 判事、過激派参加団体で活動も」(平成31年3月13日付)には以下の記載があります(ナンバリング及び改行を追加しました。)。
① 4月末の天皇陛下の譲位を前に、名古屋家裁の男性判事(55)が「反天皇制」をうたう団体の集会に参加していたことが12日、明らかになった。
   判事は平成21年以降、少なくとも3つの団体で活動。反皇室、反国家、反権力などを掲げ、中には過激派活動家が参加する団体もあった。
② 「反天皇制運動連絡会」(反天連、東京)などが呼びかけた「代替わり」反対集会では、皇室を批判する激しい発言が繰り返される。
判事は昨年、こうした反天連による別の集会に複数回にわたって参加し、自らも「批判的に考察していきたい」などと発言していた。
③ 関係者によると、判事は津地家裁四日市支部勤務だった21年、広島県呉市で行われた反戦団体「ピースリンク広島・呉・岩国」(呉市)の集会に参加。実名でスピーチした。
   その後、広島地家裁呉支部に異動し、同団体の活動に参加した。
④ 名古屋家裁に異動すると、反戦団体「不戦へのネットワーク」(名古屋市)に参加。会報に「夏祭起太郎」の名前で論考を寄稿した。
⑤ 産経新聞は今年2月、判事に複数回、直接取材を申し込んだが、いずれも無言で足早に立ち去った。
⑥ 名古屋家裁には昨年11月に判事の政治運動疑惑を伝え、見解を質問した結果、書面で「承知していない」「仮定の質問にはお答えできない」との回答があった。
    今年2月に再度取材したが、家裁は判事に事情を聴くなどの調査をしたかについても明らかにせず、「お答えすることはない」とした。
(2) その余の詳細については,「柳本つとむ裁判官に関する情報,及び過去の分限裁判における最高裁判所大法廷決定の判示内容」を参照してください。

13 関連記事その他
(1) 天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ,天皇には民事裁判権が及びませんから,天皇を被告とする訴えは,訴状却下命令(民訴法137条2項)の対象となります(最高裁平成元年11月20日判決。ただし,第一審は訴え却下判決(民訴法140条)を出し,原審はこれを維持していました。)。
(2) 瓜生順良宮内庁次長は,昭和38年3月29日の衆議院内閣委員会において以下の答弁をしています。
    こういう問題(山中注:名誉毀損の問題)は、親告罪でございまするから、(山中注:皇太子妃)御本人のお気持できまることでございまするが、われわれがまあ推察いたしますると、皇族という御身分の方が一般の国民を相手どって原告・被告で法廷で争われるというようなことは、これは事実問題としては考えさせられる点が非常に多いですから、まああまりないと思います。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 国葬儀