後見人等不正事例についての実情調査結果(平成23年分以降)

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目次
1 後見人等不正事例についての実情調査結果
2 被害があった事件数及び被害総額
3 全弁協の弁護士成年後見人信用保証事業
4 大阪弁護士会所属の弁護士の横領事例(令和3年9月20日追加)
5 成年後見人の解任
6 成年後見人の欠格事由としての,成年被後見人との間の訴訟(令和4年4月14日追加)
7 成年後見と任意後見の関係(令和4年4月14日追加)
8 関連記事その他

1 後見人等不正事例についての実情調査結果
(令和時代)
令和 元年分令和 2年分令和 3年分
(平成時代)
平成23年分ないし平成27年分
平成28年分平成29年分平成30年分

2 被害があった事件数及び被害総額
(1) 被害があった事件数及び被害総額は以下のとおりです。
平成23年:311件・約33億4000万円
平成24年:624件・約48億1000万円
平成25年:662件・約44億9000万円
平成26年:831件・約56億7000万円
平成27年:521件・約29億7000万円
平成28年:502件・約26億円
平成29年:294件・約14億4000万円
平成30年:243件・約11億3000万円
2019年:201件・約11億2000万円
令和2年:186件・約7億9000万円
(2) 上記のうち,専門職による不正事例の事件数及び被害総額は以下のとおりです。
平成23年: 6件・約1億3000万円
平成24年:18件・約3億1000万円
平成25年:14件・約  9000万円
平成26年:22件・約5億6000万円
平成27年:35件・約1億1000万円
平成28年:29件・約  9000万円
平成29年:11件・約  5000万円
平成30年:18件・約  5000万円
2019年:32件・約2億円
令和2年:30件・約1億5000万円


3 全弁協の弁護士成年後見人信用保証事業
・ 全国弁護士協同組合HPの「弁護士成年後見人信用保証事業」には以下の記載があります。
    「弁護士成年後見人信用保証制度」は、被害者救済を目的として日本弁護士連合会が考案し、推奨する制度です。全弁協が保証人となり、弁護士成年後見人等の不正による損害賠償債務を保証し、弁護士成年後見人等による横領事件が発生した場合、全弁協が、保証債務の履行として被害者(被後見 人等)の被害を弁償し、その被害の回復を図る制度です。
    保証額は、弁護士後見人等1人あたり3,000万円を上限とし、複数被害者がいる場合は、上限枠内で按分となります。保証期間は、10月1日から1年間(途中加入随時受付)で、弁護士個人単位での加入となり、年間保証料は9,900円です(途中加入の場合は、加入期間により保証料が異なります。)。


4 大阪弁護士会所属の弁護士の横領事例
(1) 大阪弁護士会に所属していた弁護士に対する,業務上横領罪の判決事例
ア 平成20年の判決事例
・ 依頼者7人から預かった遺産や保険金計3億7200万円を着服し、脅迫相手に渡す金に宛てた富田康正弁護士(37期)の場合,大阪地裁平成20年3月7日判決により懲役9年に処せられました(逮捕時に報道された着服額は約5900万円であったことにつき,弁護士法人かごしま上山法律事務所ブログの「「顧客」弁護士逮捕に関連して」(2006年12月21日付)参照)。
イ 平成25年の判決事例
・ 裁判所が作った書類を偽造したほか、成年後見人を務めた女性の預貯金を着服したなどとして、有印公文書偽造・同行使や業務上横領罪などに問われた家木祥文弁護士(58期)の場合,大阪地裁平成25年2月20日判決により懲役3年・執行猶予5年(求刑:懲役3年)(被害弁償あり)に処せられました(「横領弁護士に執行猶予判決・(大阪)家木祥文被告」参照)。
ウ 平成27年の判決事例

・ 依頼人から預かった現金計約5200万円を着服した梁英哲弁護士(53期)の場合,大阪地裁平成27年3月19日判決により懲役4年6月(求刑:懲役6年)に処せられました(弁護士自治を考える会ブログの「業務上横領罪:5200万円着服の元弁護士に実刑判決」参照)。
エ 平成28年の判決事例
・ 代理人としての立場を悪用し、顧客からの預かり金など計約5億400万円を着服、詐取したとして、業務上横領や詐欺などの罪に問われた久保田昇弁護士(35期)の場合,大阪地裁平成28年3月28日判決により懲役11年(求刑:懲役13年)に処せられました(産経新聞HPの「5億円着服・詐欺で弁護士に懲役11年判決 大阪地裁」参照)。
オ 令和元年の判決事例
・ 平成25年から平成26年にかけて19回にわたり土地建物の管理会社から預かっていたビルの「賃料相当損害金」を,自身の口座に振り込むなどの手口であわせて1億8200万円以上を着服した洪性模弁護士(36期)の場合,大阪地裁令和元年5月9日判決によって懲役5年に処せられました(弁護士自治を考える会ブログの「洪性模弁護士(大阪)懲戒処分の要旨 2019年7月号」参照)。
カ 令和3年の判決事例
① 依頼人から預かっていた遺産の相続金4200万円ぐらいを使い込んだとして業務上横領罪に問われた川窪仁帥弁護士(26期)の場合,大阪地裁令和3年2月3日判決によって懲役5年に処せられました(弁護士自治を考える会ブログの「依頼人から預かった遺産”約4200万円”を横領 川窪仁帥弁護士(大阪)に懲役5年の判決」参照)。
② 依頼された民事訴訟の和解金など約2100万円を使い込んだとして業務上横領罪に問われた鈴木敬一弁護士(37期)の場合,大阪地裁令和3年3月10日判決によって懲役3年に処せられました(弁護士自治を考える会ブログの「和解金など2100万円横領した鈴木敬一元弁護士に実刑判決「信頼踏みにじる悪質性高い犯行」大阪弁護タヒ会」参照)。
③ 詐欺事件の被告から被害者に弁済するための資金として預かっていた現金約500万円を着服したり,別の依頼人からの預り金およそ800万円を着服したり,所属していた会派の口座からおよそ2000万円を着服したりして業務上横領罪に問われた吉村卓輝弁護士(61期)の場合,大阪地裁令和3年5月12日判決によって懲役3年・執行猶予5年(求刑:懲役4年)に処せられました(弁護士自治を考える会ブログの「依頼人から預かった金など着服 元弁護士に執行猶予付きの有罪判決 大阪地裁」参照)。
④ 管理していた遺産2800万円ぐらいを使い込んだとして業務上横領罪に問われた黒川勉弁護士(29期)の場合,大阪地裁令和3年8月25日判決によって懲役4年(求刑:懲役6年)に処せられました(弁護士を考える旧(雑記)ブログの「大阪地裁 遺産着服の黒川勉弁護士(大阪)に懲役4年の実刑」参照)。


(2) 直近の逮捕事例
ア 未成年後見人の業務上横領については全弁協の弁護士成年後見人信用保証事業の適用はないところ,大阪弁護士会HPに載っている令和3年9月17日付の「綱紀調査請求した旨の公表」には,同日に天満警察署に逮捕された古賀大樹弁護士(57期)の業務上横領に関して以下の記載があります(文中の対象会員は古賀大樹弁護士のことです。)。
(1)令和3年1月15日付調査請求事案
    対象会員は、大阪弁護士会に所属する弁護士であり、上記の事務所所在地にて弁護士業を行っている者であるが、大阪家庭裁判所から選任された成年後見事件及び未成年後見事件において、平成30年9月から令和2年3月までの間、預かり管理していた成年被後見人及び未成年被後見人の銀行口座から、複数回にわたり合計7800万円あまりの金員を出金し、これを自らの遊興費や事務所運営経費等に充てて費消し、その発覚を免れるため、家庭裁判所への事務報告において改ざんした通帳の写し及びこれに基づく財産目録を提出して虚偽の事務報告を行ったものである。
(2)令和3年9月13日付調査請求事案
    対象会員は、刑事弁護の依頼を受けていた依頼者に対し、被害者への被害弁償名目で送金を指示し、令和3年5月31日から同年8月2日にかけて預かり金口座に合計660万円の送金を受けたが、これを被害弁償に使用することなくその大半を出金し、また保釈保証金300万円についても還付を受けているにもかかわらず、いずれの金員も依頼者に返還していないこと、さらには依頼者が対象会員と連絡がとれない状況に至っていること等から、依頼者からの預り金合計960万円について詐取ないし横領が疑われるものである。
イ トリちゃんのお見通し報告書「古賀大樹Facebook顔画像・経歴特定「バカは金づる!キャバクラ三昧」独立すぐ横領開始」が載っています。
(3) その他
ア 弁護士自治を考える会ブログに「弁護士の詐欺・横領事件・刑期の相場」が載っています。
イ 松井良太弁護士(56期)は,遺産の分割に関する依頼を受けて預かっていた現金約1860万円を着服した疑いで令和2年7月7日までに逮捕され,令和3年7月9日付で弁護士法17条1号(例:禁錮以上の刑に処せられたこと)により大阪弁護士会を退会しました(令和3年8月24日付の官報号外第193号)が,令和3年9月20日現在,刑事事件に関する判決情報はインターネット上に見当たりません。


5 成年後見人の解任
・ 家事事件手続法下における書記官事務の運用に関する実証的研究-別表第一事件を中心に-(司法協会)174頁には,「5 成年後見人の解任(別表第一5の項,民法846条)」として以下の記載があります。
【どんな事件?】
    成年後見人に不正な行為,著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは,家庭裁判所は,その成年後見人を解任できる。
    ※ 「不正な行為」とは,違法な行為又は社会的に見て非難されるべき行為をいい,財産に関する不正な行為(横領など)を行う場合が考えられる。また,「著しい不行跡」とは,品行ないし操行が甚だしく悪いことをいい,財産管理について成年被後見人に危険を生じさせるものも含まれるとするのが多数説である。「その他後見の任務に適しない事由」なり得るものとしては,成年後見人の職務の怠慢,家庭裁判所の後見監督の指示に従わないことなどが考えられる。


6 成年後見人の欠格事由としての,成年被後見人との間の訴訟
(1)ア 後見人の欠格事由を定めた民法847条4号は以下のとおりです。
    次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者
イ 新基本法コンメンタール親族法280頁には以下の記載があります。
    「訴訟」とは、民事訴訟を意味し、調停や審判は含まれない。もっとも、審判であっても、家事事件手続法別表第二事件は、紛争性を有し当事者の利害が対立するので、本条にいう「訴訟」に含まれると解される(新井誠=赤沼康弘=大貫正男編・成年後見制度一法の理論と実務(第2版)[2014,有斐閣)42頁〔赤沼康弘〕)。これに対して、調停はすべて「訴訟」には含まれない。したがって、例えば、遺産分割(家事手続別表第二12)の調停が行われている段階では欠格事由は発生しないが、調停から審判に移行したときに欠格事由が発生する(犬伏・前掲335頁)。
(2)ア 和歌山地裁昭和48年8月1日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています(改行を追加しました。)。
    被後見人に対して訴訟を為し、又は為したる者」とは、その訴訟係属が後見人選任の前後を問わず,また当該訴訟における原・被告たるの地位を問わないが、ただ単に被後見人との間に形式的に訴訟が係属したというだけでは足りず、その内容において、実質上被後見人との間で利害が相反する関係にあることを要すると解すべきである。
    しかし,その請求原因たる事実が存せず、訴の提起維持を事実上支配する者において、請求が理由のないことを知っているか、知らないとしても知らないことにつき過失がある場合等特別の事情が存する場合には、後見人が右訴訟に応訴することはやむを得ない措置として合理性があるのみならず,被後見人の利益を害することにならないので、実質上利害相反しないものというべきである。
イ 判例秘書で調べる限り,民法847条4号に関する裁判例は他に見当たりません。
(3) 任意後見人の欠格事由を定める任意後見契約に関する法律4条1項3号ロは,民法847条4号と同趣旨の定めをしています。



7 成年後見と任意後見の関係
(1) 任意後見契約に基づき任意後見監督人を選任する場合において,本人が成年被後見人等である場合,家庭裁判所は,当該本人に係る後見開始の審判等を取り消さなければなりません(任意後見契約に関する法律4条2項)。
(2) 任意後見契約が登記されている場合,家庭裁判所は,本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り,後見開始の審判等をすることができます(任意後見契約に関する法律10条1項)。
(3) 大阪家裁後見センターだよりは,第9回で「任意後見監督人選任の申立てに関して,裁判官の立場から見た留意点」について記載し,第10回で「任意後見と法定後見の関係」について記載しています。

8 関連記事その他

(1) 裁判所HPに「後見人等による不正事例」が載っています。
(2)ア 二弁フロンティア2021年8・9月号及び10月号に,成年後見実務の運用と諸問題[前編]及び[後編]が載っています。
イ 二弁フロンティア2022年8・9月合併号「【講演録】東京三会合同研修会 成年後見実務の運用と諸問題[前編]」が載っていて,二弁フロンティア2022年10月号「【講演録】東京三会合同研修会 成年後見実務の運用と諸問題[後編]」が載っています(講師は48期の村主幸子裁判官,59期の日野進司裁判官及び65期の島田旭裁判官)。
(3) 高齢者の認知症を専門とする医師が,紛争が生じる前に本人を診察し,医学的知見に基づく検査方法に則った検査を行った上,その結果に基づいて作成した診断書については,その信用性を疑わせる特段の事情がない限り,信用性は高いものといえます(最高裁平成23年11月17日判決(判例時報2161号20頁及び21頁)参照)。
(4)ア  家庭裁判所から選任された未成年後見人が業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合,未成年後見人と未成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,その後見事務は公的性格を有するものであり,同条項は準用されません(最高裁平成20年2月18日決定)。
イ  他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効は5年です(最高裁令和4年6月9日判決)。
(5) たとえ被相続人が所有財産を他に仮装売買したとしても,単にその推定相続人であるというだけでは,右売買の無効(売買契約より生じた法律関係の不存在)の確認を求めることはできませんし,被相続人の権利を代位行使することはできません(最高裁昭和30年12月26日判決)。
(6)  保佐開始の審判事件を本案とする保全処分の事件において選任された財産の管理者が家庭裁判所に提出した財産目録及び財産の状況についての報告書は、上記保全処分の事件の記録には当たりません(最高裁令和4年6月20日決定)。
(7) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所関係国賠事件
・ 平成17年以降の,成年後見関係事件の概況(家裁管内別件数)
・ 大阪家裁後見センターだより

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