生年月日 S9.8.13
出身大学 北海道大
退官時の年齢 65 歳
叙勲 H16年秋・瑞宝重光章
H11.8.13 定年退官
H9.9.8 ~ H11.8.12 仙台高裁長官
H3.9.28 ~ H9.9.7 東京高裁10刑部総括
H2.4.4 ~ H3.9.27 札幌地裁所長
S62.4.1 ~ H2.4.3 司研刑裁教官
S59.4.1 ~ S62.3.31 東京高裁判事
S56.4.10 ~ S59.3.31 神戸地裁1刑部総括
S51.4.10 ~ S56.4.9 東京地裁部総括(刑事部)
S47.4.10 ~ S51.4.9 司研刑裁教官
S45.3.23 ~ S47.4.9 東京地家裁判事
S44.4.8 ~ S45.3.22 札幌地家裁判事
S42.4.16 ~ S44.4.7 札幌地家裁判事補
S39.4.1 ~ S42.4.15 最高裁刑事局付
S37.7.17 ~ S39.3.31 旭川地家裁判事補
S34.4.8 ~ S37.7.16 東京地家裁判事補
* 11期の小林充裁判官が執筆した「刑事実務と下級審判例」には以下の記載があります(判例タイムズ588号の12頁及び13頁)。
次に、特殊な場合として下級審裁判官が既存の最高裁判例(または大審院判例-裁判所法施行令5条参照)に反する裁判をなす場合につき若干考察しておく。
まず、それがまったく容認され得ないものでないことはいうまでもない。最高裁判所の拘束力の根拠は、当該事件に関する国の裁判所としてのあるべき法解釈の推測資料として、最高裁が同種事件についてなした法解釈が重要な意味をもつということにあった。すなわち、そこで重要なのは、最高裁判例それ自体ではなく、国家機関としてのあるべき法解釈ということにあるといわなければならない。ところで、法解釈は社会情勢の変化等に対応して不断に生成発展すべき性質をも有するものであり、最高裁判例も、常にあるべき法解釈を示すとは限らない。このことは、刑訴法410条2項において最高裁自体によって既存の最高裁判例が変更されることが予定されていることから明らかであろう。そして、下級審裁判官としては、あるべき法解釈が既存の最高裁判例と異なると信ずるときには、既存の最高裁判例と異なる裁判をなすことが容認されるといい得るのである。
ただ、あるべき法解釈というのが、既に述べたように、当該裁判官が個人的に正当であると信ずる法解釈ではなく、国の裁判所全体としてのあるべき法解釈、換言すれば、当該事件が最高裁判所に係属した場合に最高裁が下すであろう法解釈を意味するものであるとすれば、下級裁判所裁判官が右のように信じ得るのは、当該事件が最高裁に係属した場合に最高裁が従前の判例を変更し自己の採った法解釈を是認することが見込まれる場合ということにほかならない。そして、最高裁判例の変更が見込まれるということの判断がしかく容易にされるものではないことは明らかである。その意味では、下級審裁判官が最高裁の判例に従わないことは例外的にのみ許容されるといってよいであろう。下級審裁判官としてただ単に最高裁判例に納得できないということが直ちにこの判断と結びつくものではないことはもとより、最高裁判例に従わない所以を十分の説得力をもって論証できると考えるときも、そのことから直ちに右判例の変更が見込まれるということはできないであろう。下級審裁判官として、最高裁判例の変更が見込まれるかどうかの判断に当たっては、当該判例につき、最近に至るまで何回も同趣旨の判例が反復して出されているか古い時期に一度しか出ていないものであるか、大法廷の判例であるか小法廷の判例であるか、少数意見の有無およびその数の多少、同種の問題につき他の判例と調和を欠くものでないか、それが出された後これに反する下級審判決が現われているか等を、慎重に勘案すべきであろう。