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平成21年司法試験公法系科目第2問(行政法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した34項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

平成21年司法試験の公法系科目第2問は,マンションの建築確認を争って工事を止める方法と,確認が違法となる理由を問う問題である。
本答案は,工事中の確認取消訴訟と効力停止を中心に,近接居住者・所有者の防災上の利益と,児童室利用者の交通安全上の利益を分けて検討する。

項目早見表
対象平成21年司法試験論文式・公法系科目第2問(行政法)
問題文法務省の公法系問題冊子 第2問・資料1~3
答案の基準時平成21年5月14日(公法系論文式の実施日)
公式資料の範囲問題冊子6~13頁,出題の趣旨2~3頁の公法系第2問,採点実感5~8頁の行政法
主要事項原告適格,工事完成後の訴えの利益,効力停止,接道・距離制限,説明会と公聴会,Fの主張制限
評価項目34項目。重み5は7項目。重みの合計は133。
答案の字数4917字(改行を除く)
法令の版問題冊子が掲げる当時の条文と実施日までの法令・裁判例に基づく。
資料確認日令和8年11月6日

本答案では,F・Gに原告適格を認め,児童室の類似施設性を肯定する構成ではHにも原告適格を認める。I本人の適格は認め難い。
接道義務違反を中心に,児童室と車庫の距離制限違反を条件付きで論じる。説明不足や公聴会不開催は,それだけで確認の違法にはならない。
重み5は3・11・14・19・22・27・30。評価項目は第4,答案と番号の対応及び留保は第5の3を参照されたい。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

法務省の出題の趣旨と採点実感を読み,答案で確かめられる内容を一項目ずつ整理した。
重みと項目は本記事独自の分析であり,法務省の採点基準,公式配点又は得点予測ではない。
「注意」は誤りを避けるための項目で,別枠の減点ではない。
「間接」は,資料が示す一般的な検討の方向を,問題文の事実や所載条文に即して本記事が具体化したことを示す。条件付きの項目は,対応する構成を採った場合に評価する。

2 5段階の重み付けの基準

重み基準
5その設問の判断を大きく分ける核心
4結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ
3通常押さえる法的処理・事情の評価
2論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意
1補充的な引用・記述範囲の確認

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

法務省の問題冊子6~13頁に第2問と資料1~3がある。
建設会社Aは,住戸100戸,135台の地下駐車場を備えるマンションを計画した。敷地は位置指定道路に約30メートル接するが,公道との接続部に遮断機があり,開けても車が通れる幅は3メートル弱とされる。駐車場の出入口と市立図書館児童室の専用出入口は,同じ道路に面し,約10メートル離れている。

Eは平成21年1月8日に建築確認をした。審査請求は4月8日に棄却され,工事は進んでいる。Fは敷地から10メートルのマンションの居住者,Gは非居住の所有者,Hは児童室に毎週通う小学2年生,Iはその父である。

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・除外到達点
1弁護士Kとして,Fらが工事を止める手段を検討。処分性等は問題がないとの前提。措置命令・検査済証交付を争う訴えは除外。取消訴訟,4人の原告適格,完成後の利益,仮の救済と認容見込み。
2Kとして確認自体の違法事由を検討。容積率,高さ及び建ぺい率は適法との前提。実体と手続の違法事由,及びFが各事由を主張できるか。

第4 評価項目と重み

1 設問1:訴訟と仮の救済

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1確認の取消訴訟を選び,確認が工事禁止を解除するため取消しで適法な工事続行を阻止できると説明する。42頁・取消訴訟(工事阻止の効果は法6条から整理)5頁・取消訴訟と検討範囲
2【注意】処分性・審査請求前置・出訴期間の設問上の前提を守り,措置命令や検査済証の交付を争う訴えを中心に据えない。22頁・取消訴訟と検討範囲7頁・対象外記載一般(間接)
3行訴法9条1項・2項に沿い,根拠法令の趣旨と保護利益の内容,害される態様・程度を用いて,個別に保護される法律上の利益かを判断する。52頁・原告適格と根拠法令6頁・原告適格と根拠法令
4建築基準法6条の確認の審査範囲から,建築安全条例による具体的な規制とその保護利益をたどる。42頁・原告適格と根拠法令6頁・原告適格と根拠法令
5紛争予防条例を行訴法9条2項で参酌できるか,共通する目的の有無・限界を論じ,同条例の住民定義だけで原告適格を決めない。42頁・原告適格(関連条例一般から間接)6頁・原告適格と根拠法令
6防災に関する生命・身体又は財産の利益と,車庫出入口近くの交通安全に関する利益を別々の規制から導く。42頁・利益の内容・性質一般(間接)6頁・原告適格と根拠法令
7Fの約10メートルの近接居住につき,規模・構造や救助経路を踏まえ,火災等で生命・身体に直接被害を受ける範囲かを判断する。42頁・近接居住者の事情5~6頁・Fらの個別事情一般(間接)
8Gの非居住と建物所有を区別し,近接する所有建物に延焼等が及ぶ危険から財産利益を判断する。42頁・非居住の建物所有者5~6頁・Fらの個別事情一般(間接)
9Hにつき,自宅からの距離と児童室の毎週の利用を区別し,対象施設の保護範囲と車両との近接危険から個別利益を判断する。42頁・児童室利用者の交通安全5~6頁・交通安全上の利益(毎週の利用等は問題文)
10Iにつき,父という関係だけで本人の保護利益を認めず,本人の利用等の事実の有無に即して判断する。32頁・父本人の保護利益5~6頁・Fらの個別事情一般(間接)
11工事完成で確認の工事禁止解除の効力が尽きることから,狭義の訴えの利益を判断する。52頁・完成後の訴えの利益(具体的な効果は法と判例)6頁・完成後の訴えの利益
12完成後に取消しで回復すべき利益が残るかを検査・是正措置との関係から検討し,取消し自体が除却等を生じると扱わない。42頁・完成後の問題一般(間接)6頁・消滅理由一般(間接)
13行訴法25条により,取消訴訟の提起だけでは止まらない確認の効力を停止し,工事を続ける法的前提を失わせる理由を説明する。42頁・執行停止の要件(具体的な停止類型は本記事で検討)6頁・効力停止・要件と具体的な損害
14重大な損害につき,回復の困難さ,損害と処分の性質・程度を解釈し,Fらが受ける具体的な不利益を衡量する。52頁・執行停止の要件(具体的な停止類型は本記事で検討)6頁・効力停止・要件と具体的な損害
15工事の急速な進行を緊急性に位置付け,訴えの利益を失うおそれだけを重大な損害と同一視しない。42頁・執行停止の要件(具体的な停止類型は本記事で検討)6頁・完成による利益消滅だけでは不足
16公共の福祉への重大な影響と本案理由なしの消極要件を,工事中断の不利益と本案の具体的な主張に即して検討する。32頁・執行停止の要件一般(間接)5~6頁・執行停止一般(間接)。消極要件は行訴法25条4項

2 設問2:建築確認の違法事由

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
17法43条1項の一般則と同条2項に基づく安全条例4条1・2項をつなぎ,本件では幅員6メートル以上の道路に10メートル以上接すべきことを導く。42頁・接道義務の内容(数値は法と所載条例)5頁・接道義務違反の論点(要件と通行実態は問題文等)
18位置指定道路としての法的地位と,確認時に条例の求める実効的な幅員を備えるかを区別する。42頁・接道要件の解釈(間接)6~7頁・法の解釈・適用一般(間接)
19遮断機による通行不能・開放時の狭さ・非常時連絡の限界を,避難・消防等の通行確保という接道規制の目的から評価する。52頁・接道義務と通行実態6~7頁・接道義務の趣旨と当てはめ一般(間接)
20敷地の約30メートルの接道長と,条例4条3項の安全上支障なしの例外に当たるかを検討する。32頁・接道義務一般(間接)。数値と例外は問題文・条例関連範囲に個別の記載なし
21安全条例27条4号を示し,同じ道路に面する車庫出入口と児童室の出入口が約10メートルで,対象施設なら20メートル以内に当たると説明する。42頁・出入口間の距離(数値は問題文・条例)5・7頁・距離制限一般(間接)
2227条4号の「これらに類するもの」を,列挙施設の出入口で保護すべき利用者と車両との交錯の危険から解釈する。52頁・車庫出入口の距離と施設類似性7頁・車庫出入口の距離と施設類似性
23専用出入口や児童向け設備と,館内での自由な往来・規模・閉鎖時刻の双方を類似性判断に当てはめる。42頁・規制対象の検討(具体的事情は問題文)7頁・施設該当性の当てはめ一般(間接)
24類似施設に当たる構成では,135台の車庫や出入口の配置を踏まえて交通の安全上支障がないというただし書を別に検討する。32頁・規制内容一般(間接)。例外は所載条例関連範囲に個別の記載なし
25紛争予防条例2条・6条1項により,本件建物と近隣関係住民の申出を説明義務の要件に当てはめる。32頁・説明会の義務(要件は所載条例)5・7頁・説明義務一般(間接)
26形式的な開催と計画内容の説明を分け,情報不足や質問拒否が実質的な説明義務違反となるかを検討する。42頁・義務違反の有無(具体的事情は問題文)7頁・説明義務違反一般(間接)
27委任条例の実体基準と自主条例の説明義務を区別し,後者の違反が法6条の確認の審査事項又は法定の前提手続になるかを論じる。52頁・説明義務と建築確認7頁・説明義務と建築確認
28行手法10条につき,第三者の利害を考慮すべきことが許認可等の法定要件とされる場合かを,建築確認の基準適合審査に即して判断する。42頁・行政手続法上の公聴会7頁・行政手続法上の公聴会
29建築主の説明と建築主事の意見聴取を区別し,行手法10条が適用される場合も公聴会という方法自体の一律の開催義務ではないことを示す。32頁・行政手続法上の公聴会7頁・説明会と公聴会の区別(方法は行手法10条)
30行訴法10条1項により,処分を争う原告適格とは別に,違法事由ごとにF自身の法律上の利益との関係を判断する。53頁・Fの違法事由の主張制限7頁・Fの違法事由の主張制限
31接道規制違反はFの近接居住における防災上の利益との関係を示して主張できると論じる。42~3頁・違法事由ごとの検討(間接)7頁・主張制限一般(間接)。Fへの適用は記事の分析
32車庫出入口規制違反について,Fが当該児童室の利用等で保護される交通上の危険にさらされる事実の有無を検討する。42~3頁・違法事由ごとの検討(間接)7頁・主張制限一般(間接)。Fへの適用は記事の分析
33説明義務違反につき,F自身の説明を受ける利益との関係と,その違反が確認の取消事由となるかを別に判断する。32~3頁・違法事由ごとの検討(間接)7頁・主張制限一般(間接)。Fへの適用は記事の分析
34公聴会不開催につき,Fの個別利益を保護する手続との関係と,そのような手続義務が本件で成立するかを分ける。32~3頁・違法事由ごとの検討(間接)7頁・主張制限一般(間接)。Fへの適用は記事の分析

3 重みの分布

重み1重み2重み3重み4重み5合計
0件1件8件18件7件34件/重みの合計133

重み5の7件は,3の個別保護の枠組み,11の完成による確認の効果の消滅,14の重大な損害と具体的な衡量,19の実効的な通行の確保,22の類似施設の解釈,27の自主条例違反と確認との関係,30のFの主張制限である。
それぞれ,結論を支える個別事情を評価する重み4と区別し,その事情を何の判断に使うかを決める項目を重み5とした。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

弁護士Kとして,工事を止めるための主張と,その主張が認められる条件を示す。「法」は試験当時の建築基準法,「安全条例」は設問資料のB県建築安全条例を指す。
児童室の類似施設性には反対構成があり,以下では肯定する構成を主位として,否定した場合の帰結も示す。

2 答案

設問1

1 訴訟の選択
Fらは,Eの所属するB県を被告に,本件確認の取消訴訟を提起する(行政事件訴訟法〔以下「行訴法」〕3条2項,11条1項1号)。建築確認は,建築基準法(以下「法」)6条1項による工事着手の禁止を解除する。工事中に確認を取り消せば,Aは確認に基づいて工事を続けられなくなる。処分性,審査請求前置及び出訴期間は設問の前提による。審査請求を棄却した裁決だけを取り消しても本件確認の効力は消えず,裁決取消訴訟で原処分の違法を取消理由とすることもできない(行訴法10条2項)。

2 原告適格
(1)確認の相手方でないFらについては,確認によって自己の権利又は法令が個別的に保護する利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれがあるかを検討する(行訴法9条1項・2項)。根拠法令の文言と趣旨,目的を共通にする関係法令の趣旨,違法な確認によって害される利益の性質・侵害の態様と程度を照らし合わせる。公共の安全を図る規制でも,違反で特定範囲の者に直接重大な被害が及ぶときは,その者の利益を個別に保護する趣旨を含むかを検討する(最大判平成17年12月7日参照)。

(2)確認は法6条1項・4項に基づき建築基準関係規定への適合性を判断する。法1条の生命・健康・財産の保護という目的は,個別の実体規定を通して具体化される。例えば,法43条1項・2項とその委任を受けたB県建築安全条例(以下「安全条例」)4条は,敷地と道路の関係を規律し,避難及び消防・救助のための通行を確保する。違反時に延焼等の直接かつ重大な被害を受ける近隣居住者の生命・身体と,同様の被害を受ける近隣建物所有者の財産は,個別の保護対象である。法21条の耐火規制は主要構造部等に可燃材料を用いるものを対象とし,本件で同条違反は主張しない。

(3)これに対し,安全条例27条4号は,施設の出入口と車庫出入口が近接する道路での事故を防ぐ規定であり,特定施設に反復して出入りして危険にさらされる利用者の生命・身体をも個別に保護する。紛争予防条例は日照・騒音等を含む生活環境の維持に着目する点で法令の目的を考える参考となるが,事前説明・調整を通じて良好な近隣関係を保持する自主条例である。消防車の通行や施設利用者の交通安全を確保するという具体的な保護目的と同じではない。同条例を参酌する余地があるとしても,そこにいう近隣関係住民の範囲をそのまま原告適格の基準にはできない。

(4)Fは敷地から10メートルのマンションに住む。鉄筋コンクリート造であることは延焼の危険を下げる方向の事情であるが,地上9階・100戸の建物に火災が生じ,公道から消防車が直ちに進入できなければ,至近のFには煙や延焼等による重大な被害が直接及び得る。したがってFに原告適格がある。
Gは同じマンションに居住していないので,Fと同じ身体被害のおそれを根拠にはできないが,延焼等によって自己の近接建物が直接損壊する危険がある。財産利益を根拠としてGにも原告適格がある。

(5)500メートル離れて住むH・Iには,防災上の直接の危険を基礎付ける事情がない。しかし,Hは小学2年生で,車庫出入口から約10メートルに専用出入口がある児童室を毎週利用する。設問2のようにその児童室を安全条例27条4号の類似施設と解するなら,Hは不特定の通行人と異なり,同号が防止する事故の危険に直接反復してさらされるため,原告適格がある。類似施設に当たらず,同号の個別保護も及ばないとの解釈に立てば,この根拠による適格は否定される。
Iについては,Hと同様に利用又は送迎を続けている事実は示されていない。父であることからHの交通安全上の利益がI自身に帰属するわけではなく,I本人の適格は認め難い。法定代理は別問題である。

3 工事完成後の訴えの利益
工事が完了すれば,工事着手の禁止を解除した確認の効果は目的を達して尽きる。法7条4・5項は完成した建築物と敷地が建築基準関係規定に適合するかを検査する仕組みであり,建築確認が残っていること自体を検査済証の交付要件とはしない。法9条1項による是正措置も現実の違反を対象とし,建築確認の取消しを要件とせず,取消しが直ちに除却等を生じさせるわけではない。よって,確認取消しによって回復すべき法律上の利益は認められず,係属中に完成すれば取消訴訟は不適法となる(行訴法9条1項括弧書き,最二小判昭和59年10月26日・昭和58年(行ツ)第35号参照)。

4 仮の救済
取消訴訟を提起しても確認の効力は当然には停止しない(行訴法25条1項)。提訴と同時に同条2項の効力停止を申し立てる。Aの工事は行政庁による処分の執行ではなく,停止すべき後続の行政手続も示されていない。執行や手続の続行を止めるだけでは目的を達せないので,確認の効力を止め,工事続行の法的な前提を一時的に失わせることができる。
重大な損害を避けるため緊急の必要があるかは,損害の回復の困難さを考慮し,その性質・程度及び処分の内容・性質も勘案して判断する(同条2・3項)。生命・身体の被害や住宅の焼損は容易に回復できない。他方,消防車の進入に支障があるだけで火災が直ちに起こるとはいえない。F・Gについては,道路の開閉と通行実態,代替の進入経路の有無,建物と住居との距離,工事の工程を疎明し,相当な危険を伴う建物が完成によって固定されることを示す必要がある。Hについても,車庫の供用が迫り,通室時の交通危険を避け難くなる具体的な事情の疎明を要する。
急ピッチの工事に対し早急な申立てが必要である。完成で訴えの利益を失うことは切迫性の一事情であり,それだけで重大な損害とはいえない。Aの工期・費用への影響も衡量するが,直ちに公共の福祉への重大な影響にはならない。接道義務違反には具体的根拠があり,本案について理由がないとみえるともいえない(同条4項)。以上の危険の程度と完成の切迫性を疎明できれば,特にF・Gの申立てには認容の余地がある。

設問2

1 接道義務違反
法43条1項は原則として道路に2メートル以上接することを求め,同条2項は用途・規模から1項だけでは避難又は通行の安全を十分に確保できない場合に条例で制限を加えられるとする。安全条例4条1・2項によれば,延べ面積2万1643平方メートルは3000平方メートルを超えるため接道長10メートル以上を要し,高さも30メートルで15メートルを超えるため幅員6メートル以上を要する。約30メートルの接道長は足り,B県知事による位置指定上も幅員は6メートルである(法42条1項5号)。
もっとも,指定が有効であり,敷地に沿う部分の物理的な幅が6メートルあることと,確認時に安全条例が要求する通行を確保できることは別である。指定後の障害物は道路の境界や接道長を変えないとの反論があり得る。しかし条例が大規模・高層の建物について幅員を引き上げたのは,緊急時の避難及び公道からの消防・救助の通行を確保するためである。図の公道との接続部に遮断機があり,閉じると車は通れず,開いても通行可能な幅は3メートル弱である。違法駐車防止という設置目的やインターホンでL神社に連絡できることを考慮しても,常時即応できるかは明らかでなく,開放しても幅員の問題は残る。東京地裁平成19年9月7日判決の事案とは異なり,24時間管理や別の緊急通路は示されない。指定自体の効力を否定せずに,条例の目的に照らして幅員要件を満たさないと判断できる。周囲の空地等について知事が安全上支障なしと認めた事情もなく,4条3項の例外は認め難い。よって,本件確認の取消事由として接道義務違反を主張する。

2 車庫出入口の距離制限違反
安全条例27条4号は,列挙施設又はそれに類する施設の出入口から20メートル以内の道路に車庫出入口を面して設けることを原則として禁じる。類似性は施設の名称だけでなく,交通上の配慮を要する者がその出入口を反復して利用し,車両と交錯する危険が列挙施設に準じるかで判断すべきである。
本件児童室は図書館3440平方メートルのうち約100平方メートル,閲覧席約10人分にとどまり,館内は自由に往来できる。専用出入口は午後5時に閉まり,学校等のような組織的・一斉の通行を予定する施設ではないとの反論がある。他方,列挙施設には随時利用される児童公園もある。児童室は児童用の閲覧設備・トイレ・幼児の遊び場を備え,児童が専用出入口から直接出入りする。施設の独立運営より出入口での交通危険を重視すれば,本件児童室は類似施設に当たると解する。ただし,東京高裁平成20年7月9日判決の消極例があり,Hの適格を含めこの点は争われ得る。
その場合,車庫出入口と児童室の専用出入口は同じ道路に面し約10メートルと近い。135台収容の車庫であり,児童の通行と車の出入りが交錯し得る。歩車分離等の十分な安全対策が示されない以上,交通の安全上支障がない場合のただし書は適用し難く,確認の違法を主張できる。逆に,図書館の一室としての性質を重く見て類似施設性を否定すれば,距離が近いことだけで4号違反にはならない。

3 説明義務違反
高さ30メートルの本件は紛争予防条例2条1号の中高層建築物である。敷地境界線から高さの2倍の60メートル以内に居住し又は建物に権利を有するF・Gは近隣関係住民である(同条例2条4号イ)。Aは平成20年7月23日,周辺住民の申出を受け説明会を開いた。申出者がF・G本人かは不明だが,条例上の近隣関係住民の申出なら,計画内容を実質的に説明する義務がある(6条1項)。Fらのいう情報不足・質問拒否・一方的な終了があり,その後の協議でも補われなければ,形式的開催では足りず義務違反となり得る。合意を得る義務はない。
法6条1・4項の確認は建築基準関係規定に計画が適合すれば確認済証を交付する羈束行為である。法の委任を受けた安全条例の実体規定に対し,紛争予防条例は建築主による情報提供と紛争調整のための自主条例である。その説明義務が法に基づく確認の審査事項又は法定の前提手続とされている事情はない。知事による説明内容の報告要求(同条例6条2項)とも区別される。説明不足が認められても,それだけで確認は違法とならず,協議がまとまるまで確認を留保する根拠にもならない。

4 公聴会の不開催
Eが行う確認は国の法律に根拠を置くので,県の機関の処分であることだけで行政手続法の適用が除外されるわけではない(同法3条3項)。同法10条は,第三者の利害を考慮すべきことが許認可等の法定要件とされているとき,必要に応じて,公聴会その他の方法で意見を聴く機会を設けるよう努めることを定める。確認の客観的な基準が近隣者の利益を保護することと,その者の個別の利害を処分の要件として考慮することは別である。法6条の確認は計画の法定基準適合性を判断するもので,住民の反対や意見の内容を許否の要件としていない。平成20年9月26日付けの申入書でD地域の生活環境を守る会が開催を求め,Eが確認前に開かなかったとしても,申入れで開催が法定要件になるわけではない。不開催だけで確認は違法とならない。道路の現況を看過したなら接道要件の判断を争う。

5 Fが主張できる違法事由
原告適格を有しても,自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しは求められない(行訴法10条1項)。接道義務違反はFの生命・身体に対する防災上の危険に関わるので主張できる。車庫出入口規制違反については,F自身が児童室を利用し又は同様の危険に反復してさらされる事実がないため,近隣に住むだけでは取消理由にできない。
説明会について,F自身に説明を受ける利益はある。仮にその利益との関係で主張することを妨げないとしても,説明の不備は上記のとおり確認の違法に結び付かない。公聴会についても,F自身の防災上の利益を保護する法定手続があるとの構成ならばその利益との関連性は認め得るが,実際には本件確認にそのような意見聴取義務はない。

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の設問1は第4の番号1~16,設問2は17~34に対応する。
以下では重み5・4の全項目と,構成により扱いが変わる24・34を個別に示す。2・10・16・20・25・29・33は対応する小節で扱う。

番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
14確認の取消訴訟を選び,確認が工事禁止を解除するため取消しで適法な工事続行を阻止できると説明する。設問1・1(訴訟の選択)。
35行訴法9条1項・2項に沿い,根拠法令の趣旨と保護利益の内容,害される態様・程度を用いて,個別に保護される法律上の利益かを判断する。設問1・2(原告適格の判断枠組み・規制目的)。
44建築基準法6条の確認の審査範囲から,建築安全条例による具体的な規制とその保護利益をたどる。設問1・2(原告適格の判断枠組み・規制目的)。
54紛争予防条例を行訴法9条2項で参酌できるか,共通する目的の有無・限界を論じ,同条例の住民定義だけで原告適格を決めない。設問1・2(原告適格の判断枠組み・規制目的)。同じ目的の有無と参酌の限界を区別。
64防災に関する生命・身体又は財産の利益と,車庫出入口近くの交通安全に関する利益を別々の規制から導く。設問1・2(原告適格の判断枠組み・規制目的)。
74Fの約10メートルの近接居住につき,規模・構造や救助経路を踏まえ,火災等で生命・身体に直接被害を受ける範囲かを判断する。設問1・2(4)のF。
84Gの非居住と建物所有を区別し,近接する所有建物に延焼等が及ぶ危険から財産利益を判断する。設問1・2(4)のG。
94Hにつき,自宅からの距離と児童室の毎週の利用を区別し,対象施設の保護範囲と車両との近接危険から個別利益を判断する。設問1・2(5)のH。類似施設と解する場合。
115工事完成で確認の工事禁止解除の効力が尽きることから,狭義の訴えの利益を判断する。設問1・3(工事完成後の訴えの利益)。
124完成後に取消しで回復すべき利益が残るかを検査・是正措置との関係から検討し,取消し自体が除却等を生じると扱わない。設問1・3(工事完成後の訴えの利益)。
134行訴法25条により,取消訴訟の提起だけでは止まらない確認の効力を停止し,工事を続ける法的前提を失わせる理由を説明する。設問1・4(仮の救済)。
145重大な損害につき,回復の困難さ,損害と処分の性質・程度を解釈し,Fらが受ける具体的な不利益を衡量する。設問1・4(仮の救済)。危険の具体的疎明が必要。
154工事の急速な進行を緊急性に位置付け,訴えの利益を失うおそれだけを重大な損害と同一視しない。設問1・4(仮の救済)。
174法43条1項の一般則と同条2項に基づく安全条例4条1・2項をつなぎ,本件では幅員6メートル以上の道路に10メートル以上接すべきことを導く。設問2・1(接道義務違反)。
184位置指定道路としての法的地位と,確認時に条例の求める実効的な幅員を備えるかを区別する。設問2・1(接道義務違反)。
195遮断機による通行不能・開放時の狭さ・非常時連絡の限界を,避難・消防等の通行確保という接道規制の目的から評価する。設問2・1(接道義務違反)。正式な位置指定の効力自体は争わない。
214安全条例27条4号を示し,同じ道路に面する車庫出入口と児童室の出入口が約10メートルで,対象施設なら20メートル以内に当たると説明する。設問2・2(車庫出入口の距離制限違反)。
22527条4号の「これらに類するもの」を,列挙施設の出入口で保護すべき利用者と車両との交錯の危険から解釈する。設問2・2(車庫出入口の距離制限違反)。
234専用出入口や児童向け設備と,館内での自由な往来・規模・閉鎖時刻の双方を類似性判断に当てはめる。設問2・2(車庫出入口の距離制限違反)。類似施設性を否定する反対枝あり。
243類似施設に当たる構成では,135台の車庫や出入口の配置を踏まえて交通の安全上支障がないというただし書を別に検討する。設問2・2(車庫出入口の距離制限違反)。類似施設に当たる枝だけ。
264形式的な開催と計画内容の説明を分け,情報不足や質問拒否が実質的な説明義務違反となるかを検討する。設問2・3(説明義務違反)。実質的な説明の内容とその後の補足の有無で結論が変わる。
275委任条例の実体基準と自主条例の説明義務を区別し,後者の違反が法6条の確認の審査事項又は法定の前提手続になるかを論じる。設問2・3(説明義務違反)。説明義務の成否と確認の瑕疵を分ける。
284行手法10条につき,第三者の利害を考慮すべきことが許認可等の法定要件とされる場合かを,建築確認の基準適合審査に即して判断する。設問2・4(公聴会の不開催)。
305行訴法10条1項により,処分を争う原告適格とは別に,違法事由ごとにF自身の法律上の利益との関係を判断する。設問2・5(Fが主張できる違法事由)。
314接道規制違反はFの近接居住における防災上の利益との関係を示して主張できると論じる。設問2・5(Fが主張できる違法事由)。
324車庫出入口規制違反について,Fが当該児童室の利用等で保護される交通上の危険にさらされる事実の有無を検討する。設問2・5(Fが主張できる違法事由)。
343公聴会不開催につき,Fの個別利益を保護する手続との関係と,そのような手続義務が本件で成立するかを分ける。設問2・5(Fが主張できる違法事由)。Fを保護する手続の存在を主張する場合。

(2) 設問1:訴訟と仮の救済

出題の趣旨は取消訴訟を出発点とし,原告適格,工事完成後の訴えの利益,執行停止を検討することを求めている。
採点実感は,建築確認の審査対象と個別の規制目的をつなぎ,防災と児童室の交通安全を分けて,F・G・H・Iの各事情に当てはめることを重視した(1~10)。
工事が完成すれば確認による工事禁止解除の効果が尽きる理由を述べる。仮の救済では,完成の切迫性を重大な損害そのものとせず,実体上の危険と工事中断の負担を踏まえる(11~16)。

(3) 設問2:建築確認の違法事由

出題の趣旨は,接道義務の数値を法令から導き,遮断機の事情を規制目的から評価するよう求めている。
車庫出入口では,まず列挙施設と同様の交通危険があるかを解釈し,次に距離とただし書を検討する。採点実感は,条文に続けて事実を写すだけでは不十分だと指摘した(17~24)。

説明会については,Aの説明の実質と,その不足がEによる確認に影響するかを分ける。公聴会については,Eが第三者の利害を処分要件として考慮する場合か,意見聴取はどの程度求められるかを検討する(25~29)。
Fには原告適格があっても,そのことだけで全ての違法を主張できない。各違法とF自身の利益との関係を検討した後,確認の違法が実際に成立するかを別に判断する(30~34)。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

実際の近似裁判例は児童室の類似施設性を否定している。本答案が肯定するのは,専用出入口を通じて児童が反復利用する場面での交通危険を重くみるためである。距離が近いことだけでは施設の類似性を基礎付けられない。これは本記事が採る解釈であり,公式資料が結論を指定したものではない。
また,効力停止の見込みは,実際の通行状況,代替の消防経路,工事工程などの具体的な疎明に左右される。措置命令や検査済証交付を争う訴訟は,設問の指示に従って扱っていない。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験

平成21年司法試験公法系科目第1問(憲法)の模範解答と評価項目
平成21年司法試験民事系科目第1問(民事訴訟法)の模範解答と評価項目
平成21年司法試験民事系科目第2問(民法・商法)の模範解答と評価項目
平成21年司法試験刑事系科目第1問(刑法)の模範解答と評価項目
平成21年司法試験刑事系科目第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目

同年度の他の問題は,平成21年新司法試験試験問題の一覧で確認できる。

2 同じ科目の別の年度の記事

令和7年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目

平成22年司法試験公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目

3 本問の論点に関連する記事と資料

行政処分の執行停止―重大な損害,緊急の必要,疎明資料及び裁判例

参議院掲載の平成16年行政事件訴訟法改正原文

第7 出典

1 公式資料

平成21年新司法試験論文式試験問題集[公法系科目]:6~13頁(第2問・資料1~3,説明図を含む)。
平成21年新司法試験論文式試験問題出題趣旨:2頁の公法系第2問から3頁の民事系開始直前まで。
平成21年新司法試験の採点実感等に関する意見:公法系資料の5~8頁(行政法)。

2 法令

建築基準法6・7・9・21・42・43条及びB県の2条例は,問題冊子資料3の掲載条文を用いた。
行政事件訴訟法の平成19年法律第109号反映版と平成16年法律第84号による改正で,9条・10条・25条等を確認した。
行政手続法の平成17年法律第73号反映版と改正沿革で,10条の試験当時の文言を確認した。

3 裁判例

最大判平成17年12月7日・平成16年(行ヒ)第114号・民集59巻10号2645頁:第三者の原告適格の判断枠組み。
最二小判昭和59年10月26日・昭和58年(行ツ)第35号・民集38巻10号1169頁:工事完了後の建築確認取消訴訟の利益。
東京地判平成19年9月7日・平成19年(行ウ)第161号・第301号及び東京高判平成20年7月9日・平成19年(行コ)第316号:位置指定道路,図書館児童室及び主張制限。本問に近い事実を扱う裁判例として比較した。

4 留意事項

出題の趣旨・採点実感は,公法系第2問(行政法)の上記範囲だけを根拠とし,別の問題又は科目の記載は用いていない。
実際の裁判例と本問の事実は一致せず,出題者がどの裁判例を素材としたかは明らかでない。評価項目の重みと,本問への当てはめは記事独自のものである。