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令和7年度司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した43項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は,令和7年司法試験の論文式試験のうち,選択科目の租税法第2問を対象として,法務省が公表した「出題の趣旨」及び「採点実感」から答案の評価項目を抽出し,5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答を示すものである。

本問は,ホテルを経営する上場会社が行った懸賞キャンペーン(旅行ギフト券),早期予約販売及び株主優待を素材として,法人税法上の損金・益金の帰属年度と寄附金該当性,所得税法上の所得区分と年度帰属,及び給与所得者の確定申告の要否を問うものである。

公式資料から抽出できた評価項目は43項目であり,重み5(答案の骨格又は採点実感が評価の分かれ目とした事項)に当たるのは,債務確定の3要件による判断(番号4),金額の合理的な算定可能性による損金算入の否定(番号5),法人税法22条の2第1項による益金算入時期の判断(番号15),返還されない1500万円部分への着目(番号19),ギフト券の利益の年度帰属(番号27),非対価性・非継続性による一時所得の判定(番号31),一時所得の検討を経た雑所得の判定(番号40),設問3との条件の違いを踏まえた宿泊券の年度帰属(番号42)及び所得税法121条1項1号による確定申告の要否の判断(番号43)の9項目である。

模範解答の結論は,設問1は1000万円を令和5事業年度の損金に算入できず寄附金にも当たらない,設問2は返還されない1500万円を令和6事業年度の益金とし残りの6000万円を宿泊のあった令和7事業年度の益金とする,設問3は令和6年分の一時所得であり社外取締役の場合も変わらない,設問4は令和7年分の雑所得であり確定申告は要しない,というものである。

第5の模範解答は,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で示し,その後に出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説を付けている。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価項目は,本問の出題の趣旨(租税法第2問の部分)又は採点実感(租税法の採点方針のうち第2問の部分及び「3 採点実感等」の〔第2問〕の部分)の記述から抜き出したものに限り,一つの項目に一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形に言い換えた。

各項目には,出題の趣旨と採点実感のどこに根拠があるかを,PDFの頁と見出し(採点実感の「<設問1>」等)で示し,一方の資料に記載がない場合は「記載なし」,一般的な記述から導いたものは「間接」と表示した。
「〜しない」の形の項目は,採点実感が誤りとして指摘した答案の型であり,答案でその誤りをしないことによって満たすものである。
「(許容分岐)」と付けた項目は,公式資料が許容する複数の構成のうちの一つであり,全ての答案に求められるものではない。

公式資料の文章は,評価の強さを示す短い語句を除いて引用せず,根拠となる記述の趣旨を要約して示している。

2 5段階の重み付けの基準

重みは,公式資料の書きぶりの強さから本記事が付けたものであり,法務省の配点ではない。

①重み5:採点実感が「一応の水準」「良好」「優秀」等の評価の段階と結び付けた事項,又は答案の骨格そのもの
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け(採点実感が「不良」につながるとした誤りを含む。)
④重み2:一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項
⑤重み1:一方が控えめに触れるだけの事項

第3 本問の概要

本問の上場会社A社(事業年度は暦年)は,ホテルの売上を増やすため,第一に,ホームページのアンケートの回答者から抽選で10組に海外旅行のギフト券(旅行会社B社から1組100万円で購入)を贈呈するキャンペーンを行い,令和5事業年度の決算で1000万円を販売促進費に計上したが,ギフト券の最終価格は実費や為替レートに応じて増減し,対象期間満了時に精算され,未使用分の対価は全額A社に返還される約定であった。
第二に,宿泊予定日の半年前から1か月前までにネット予約とカード払を済ませると通常料金を25%値引きし,キャンセル時は支払額の20%をキャンセル料として差し引いて返還する早期予約販売を設け,令和7年中の宿泊分として令和6事業年度末までに7500万円を受領したが,同年度の決算で収益に計上しなかった。
第三に,株主に持株数に応じた段階ごとに譲渡自由な宿泊券を付与する株主優待を導入し,給与所得者である株主Dは令和7年中に時価20万円の宿泊券を受け取った(宿泊は令和8年の予定)。

設問は,1000万円の令和5事業年度の損金算入の可否(寄附金該当性を含む。),7500万円の令和6・令和7事業年度の扱い,当選者Cがギフト券から受けた利益(価額100万円)の年分と所得の種類(Cが社外取締役であった場合を含む。),Dの宿泊券の利益の年分と所得の種類(配当所得該当性を含む。)及び令和7年分の確定申告の要否を問うものである。

解答に当たっては,租税特別措置法の適用は考慮せず,令和7年1月1日現在において施行されている法令によるものとされ,設問2では消費者契約法を考慮する必要はないとされている。

第4 評価項目と重み

1 設問1(販売促進費の損金算入時期と寄附金該当性)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1販売促進費(1000万円)が法人税法22条3項各号の原価・費用・損失のうち「費用」(同項2号)に当たることをまず示す(基準が異なるため)328頁(設問1は法人税法上の費用に係る損金算入時期を問う)9頁(<設問1>:原価・費用・損失のいずれに当たるかをまず示す必要)
2原価(22条3項1号)との区別を掘り下げて論じない1記載なし9頁(<設問1>:原価との区別を掘り下げることまでは求めていない)
3費用の損金算入時期は,公正処理基準(22条4項)に従いつつ,事業年度末までに債務の確定しないものを除く(債務確定基準,22条3項2号括弧書)ことを押さえる428頁(債務確定基準の解釈と適用,企業会計と法人税法の関係)9頁(<設問1>:公正処理基準に従いつつ債務確定基準をまず押さえる)
4債務確定の3要件(債務の成立・給付原因事実の発生・金額の合理的算定可能性。法人税基本通達2-2-12参照)を示し,これに照らして結論を導く528頁(債務確定基準の解釈と適用)9頁(<設問1>:3要件に照らして結論を導けば概して「一応の水準」)
5中心論点として,最終価格が実費・為替で増減し対象期間満了時に精算され未使用分は全額返還されることから,令和5事業年度末に金額を合理的に算定できず債務が確定しないとして,同年度の損金算入を否定する(この論点を見落とすと「不良」)528頁(金額の合理的な算定可能性の欠如により損金算入を否定する筋を念頭に置く)9頁(<設問1>:中心的な問い。否定する答案はおおむね「良好」以上,見落としは「不良」)
6(許容分岐)令和5事業年度での金額の合理的算定可能性(債務の確定)を肯定する構成も,問題文の事実に適切に当てはめれば説得力に応じて評価される228頁(ベースの裁判例は厳格に過ぎるとの批判も可能)9頁(<設問1>:肯定する答案も説得力に応じて評価)
7(許容分岐)支出済みの対価には債務確定は元来問題とならないとした上で,公正処理基準(22条4項)に従い同様の結論を導く構成も評価される228頁(支出済みの費用に債務確定基準は適合しないとの批判も可能)9頁(<設問1>:公正処理基準で同じ結論を導く答案は思慮深い検討)
8益金の算入時期に関する問いと誤解・混乱しない3記載なし9頁(<設問1>:益金の問いとの誤解・混乱は「不良」につながりがち)
9当選者へのギフト券の贈与が,法人税法37条7項の「資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」として寄附金に当たるかを問題とする428頁(ギフト券の贈与という側面から寄附金該当性も問題となる)9頁(<設問1>:ほとんどの答案が出題意図を踏まえて検討)
10寄附金該当性の判断基準として,対価性の有無や,通常の経済的取引として是認できる合理的理由(経済的合理性)の有無を示して検討する428頁(経済的合理性や対価性に鑑みる)9頁(<設問1>:対価性,経済取引として是認できる合理的理由)
1137条7項括弧書が明示的に除外する「広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用」に当たるかを検討する3間接(28頁:条文に問題文の条件を当てはめる)9頁(<設問1>:括弧書の明示的な除外費目への該当性)
12問題文の事情(売上増加の方針,HPアクセス・ネット予約の促進,顧客情報の収集,不特定多数・抽選)を当てはめ,寄附金に該当しない旨を説明する428頁(寄附金に該当しない旨を説明できるか)9頁(<設問1>:大半の答案が非該当を説明できた)
13旅行会社に支払った対価(旅行代金・手数料)の寄附金該当性を検討しない(取引対価の正常性を問う事情はない)2記載なし9頁(<設問1>:旅行会社への対価の検討は的を射ない)
14債務の確定がないことを理由に経済的合理性を欠く(寄附金に該当する)としない(両者は直接関係しない)2記載なし9頁(<設問1>:債務の確定と経済的合理性は直接関係しない)

2 設問2(早期予約販売に係る益金算入時期)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
15役務の提供に係る収益は,22条2項・4項の「別段の定め」である22条の2第1項により,役務の提供の日の属する事業年度の益金に算入することを根拠条文として示す(公正処理基準だけで決めない)528頁(法人税法22条2項・4項,22条の2第1項の関係)10頁(<設問2>:22条の2第1項を挙げた答案は「一応の水準」が多いが,半数に満たない)
1622条の2第1項の「役務の提供」という要件に言及し,宿泊サービスの提供時期に当てはめる(権利確定主義の判例・理論や管理支配基準だけで説明しない)3間接(28頁:22条の2第1項の文言から考える)10頁(<設問2>:「役務の提供」要件に触れず判例・理論や管理支配基準だけで説明する答案が多い)
1722条の2第1項の文言(及び平成30年度改正の立法経緯)から,伝統的な権利確定主義・公正処理基準との関係を整理する428頁(文言と立法経緯から権利確定主義・公正処理基準との関わりを整理)10頁(<設問2>:平成30年度改正の経緯を含む理解を「優秀」に結び付ける)
18主たる役務の提供は宿泊サービスの実施であり,令和7事業年度中にもキャンセルが生じ得ることを考慮する(7500万円全額をストレートに令和7年度の益金としない)3記載なし10頁(<設問2>:主たる役務は宿泊の実施であり,キャンセルも生じ得ることの考慮が評価に影響)
19原則としてキャンセルがあっても返還されない1500万円部分(20%)の益金算入時期が問題となることに気付き,論じる528頁(返還不要となる1500万円部分に「特に」着目)10頁(<設問2>:気付いた答案はおおむね「良好」以上)
20(許容分岐)1500万円部分を令和6事業年度における「宿泊の確保」という役務の提供の対価と解し,22条の2第1項の文理と権利確定主義に整合させて令和6年度の益金に算入する428頁(「宿泊の確保」という役務の対価として令和6年度益金とする見解)10頁(<設問2>:この立論は「優秀」の評価が多い)
21(許容分岐)7500万円全額を「宿泊」の対価と捉え,令和7年度中に現に宿泊があって初めて益金に算入する(1500万円部分を意識した上で)328〜29頁(宿泊のあった部分を令和7年度益金とする見解もあり得る)10頁(<設問2>:成り立ち得る。「良好」以上の場合が多い)
22宿泊サービスが未提供であることを無視し,収入実現の蓋然性や管理支配基準だけを根拠に7500万円全額を令和6事業年度の益金としない3記載なし10頁(<設問2>:管理支配基準等だけで全額を令和6年度とする答案は説得力を欠く)
23キャンセル料相当額(1500万円)をキャンセル時に返金される額と誤解しない3記載なし10頁(<設問2>:キャンセル料相当額の誤解は「不良」となりがち)
24災害等の偶発事象による僅かな不確実性を,益金算入時期を決定付ける理由にしない2記載なし10〜11頁(<設問2>:偶発事象の僅かな不確実性で年度帰属を左右するのは説得的でない)
25宿泊予定日の到来だけで7500万円(又は6000万円)全額が益金になるとは説明しない(キャンセル料の負担以外にキャンセルの制限はない)2記載なし11頁(<設問2>:宿泊予定日の到来だけで全額とするのは十分に正確でない)
26早期予約の25%値引を低額取引(「通常得べき対価の額」,22条の2第4項)の問題として論じない(問われていない)1記載なし11頁(<設問2>:値引の低額取引の点は問われていない)

3 設問3(ギフト券の利益の所得区分と年度帰属)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
27当選の通知を受けた令和5年分か,ギフト券を受領し現に旅行して利益を享受した令和6年分かという年度帰属の論点を意識して検討し,令和6年分の収入金額(所得税法36条1項)とする529頁(令和5年分か令和6年分かという論点を意識してもらいたい)11頁(<設問3>:令和6年に実現した収入金額と評価するのが自然)
28考慮要素として,令和5年時点の権利の処分可能性(譲渡不可)と利用期間の制限(令和6年4月以降でなければ行使できない)を挙げ,経済的利益の実現時期を判断する429頁(処分可能性と利用期間の制限に留意)11頁(<設問3>:令和5年はいまだ行使し得ない処分不能な権利。考慮要素の検討は加点)
29令和5年に生じたのは権利にすぎず「贈呈されたギフト券に基因する…経済的利益」とも言い難いことを,設問の文言に即して指摘する2記載なし11頁(<設問3>:「贈呈されたギフト券に基因する」利益とも言い難い)
30令和5年の事象と令和6年の事象を取り違えない3記載なし11頁(<設問3>:令和5年と令和6年の取り違えは「不良」)
31他の8種類の所得に当たらない一時の偶発的な収入について,雑所得と区別する基準(非対価性・非継続性)を正確に指摘し,条文(34条1項)に当てはめて一時所得とする529頁((非)対価性と(非)継続性の2点で雑所得と一時所得を区別)11頁(<設問3>:基準を正確に指摘し当てはめた答案は「一応の水準」以上)
32アンケートへの回答との対価関係を認めて雑所得としない(数千人から偶然当選した利益と回答との間に対価性はない)2記載なし11頁(<設問3>:アンケート回答との対価性の議論は説得的でない)
33当選者が社外取締役であっても,給与所得に当たらず一時所得の評価は変わらない旨を説明する429頁(問題文の条件の下では給与所得に該当しない旨の説明を期待)11頁(<設問3>:一時所得のままとする答案がほとんどで,結論として正答)
34役員が法人から受ける臨時的な経済的利益は広く職務執行の対価とされ給与所得該当性が広く捉えられる傾向(名古屋地判平成4年4月6日)を踏まえ,給与所得の意義・要件に照らし,本件利益は役員の立場と無関係に純然たる第三者との取引ともいうべき態様で付与されたから職務の対価でないと説明する429頁(給与所得該当性が広く捉えられる傾向を踏まえて検討)11頁(<設問3>:純然たる第三者との取引ともいうべき態様を示唆する答案に高い評価)

4 設問4(株主優待の所得区分,年度帰属及び確定申告の要否)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
35配当所得該当性を否定するとき,「剰余金の配当」に当たらないことだけを理由にせず,「剰余金の配当」を会社法453条からの借用概念と捉えてその意義を説明する429頁(配当所得の意義に関し一般に通用する解釈)11頁(<設問4>:「剰余金の配当」に当たらないことのみでは完全な解答と評価し難い)
36所得税法24条1項が剰余金の配当から資本剰余金の額の減少に伴うものを除いていることから,資本と利益の区別を維持し,損益計算上の利益の株主への分配を配当所得と捉えていることを示す429頁(資本剰余金を原資とするものの除外を踏まえると説得力が高まる)11〜12頁(<設問4>:資本と利益の区別の維持)
37本件の株主優待は持株数に応じて段階的に付与されるもので,損益計算上の利益の分配に当たらないとして配当所得該当性を否定する429頁(事案への当てはめ)12頁(<設問4>:段階的付与で損益計算上の利益の分配に当たらないと指摘できれば基本的に足りる)
38判例(最判昭和35年10月7日民集14巻12号2420頁)に触れる329頁(できれば最判昭和35年10月7日等に触れる)12頁(<設問4>:同判決も参照)
39(許容分岐)株主たる地位に基づいて会社から受けた利益として配当所得とする構成(最判昭和43年11月13日,東京高判平成24年4月10日,所得税基本通達24-1の一般論に依拠)も,一貫性・説得性に応じて評価される1記載なし12頁(<設問4>:配当所得とする答案も一貫性・説得性に応じて評価)
40一時所得該当性を検討し,毎年10月末時点の株主に付与される継続性から「一時の所得」(34条1項)に当たらないとして,雑所得(35条1項)とする(端的に一時所得としない)529頁(一時所得該当性の検討を経て雑所得に至ることを期待)12頁(<設問4>:継続性があり雑所得とする方が説得的。配当否定・雑所得肯定で「一応の水準」)
41宿泊券は直ちに換金・処分が可能で金銭的評価も可能であるから,宿泊が翌年以降でも令和7年に実現したものとして令和7年分の総収入金額に算入する(36条1項)。理由を「受け取った」「利用期間に制限がない」「権利が確定した」だけで済ませない429頁(収入金額の算入時期)12頁(<設問4>:直ちに換金・処分可能で令和7年に実現。理由の粗い答案は相応の評価)
42設問3のギフト券(処分不能・利用期間の制限)との条件の違いを踏まえて算入時期を説明する5記載なし12頁(<設問4>:設問3との条件の違いを踏まえれば「良好」以上につながりやすい)
43所得税法121条1項1号を根拠条文として正確に挙げ,給与等2000万円以下・一の支払者・源泉徴収及び年末調整・給与所得及び退職所得以外の所得金額20万円以下に過不足なく当てはめ,確定申告を要しないとする529頁(確定申告が必要となる場合を条文に基づいて答えられるか)12頁(<設問4>:121条1項1号を正確に挙げ過不足なく説明した答案の多くが「優秀」)

5 重みの分布

43項目の内訳は,重み5が9項目,重み4が13項目,重み3が10項目,重み2が8項目,重み1が3項目であり,重みの合計は146点である。

設問別には,設問1が14項目・44点,設問2が12項目・38点,設問3が8項目・29点,設問4が9項目・35点である(第2問の配点は50点であるが,設問ごとの配点は公表されていない。)。

重み5の9項目は,設問1の債務確定の3要件と金額の合理的な算定可能性(番号4・5),設問2の法人税法22条の2第1項と1500万円部分(番号15・19),設問3の年度帰属と一時所得の判定(番号27・31),設問4の雑所得の判定,設問3との対比及び所得税法121条1項1号(番号40・42・43)であり,いずれも採点実感が「一応の水準」「良好」「優秀」の段階と結び付けた事項である。

許容分岐の5項目(番号6・7・20・21・39)は,公式資料が許容する構成の一つであり,全ての答案に求められるものではない。

なお,採点実感は,問題文の精読,時間配分,条文と「別段の定め」の関係の理解,判例・裁判例の事案に即した学習等の一般的な指摘もしているが,特定の答案内容を判定するものではないため,評価項目には含めていない。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

以下の答案は,第4の評価項目をできる限り満たすように作成したものであり,問題文の指示に従い,令和7年1月1日現在において施行されている法令(租税特別措置法を除く。)と,試験の実施時(令和7年7月16日)までに言い渡された判例・裁判例を前提にしている。

答案は,旧司法試験の時代から論文式答案で広く使われてきた型によっている。
見出しを「1」「(1)」の順に下げ,論点ごとに,問題提起,規範の定立(「思うに,〜。よって,〜と解する。」),当てはめ(「本問では,〜」)及び結論(「よって」「したがって」)の順に書き,反対の立場は「確かに,〜。しかし,〜。」の形で取り上げ,最後に「以上」と書く型である。

設問2は,出題の趣旨と採点実感が二つの構成を許容しているところ,返還されない1500万円を客室の確保という役務の対価とみて令和6事業年度の益金とする構成(第4の番号20)を主位とし,7500万円全体を宿泊の対価とみる構成(番号21)の帰結も付記した。

答案の括弧書きで示した判例・裁判例は,裁判所ウェブサイトの判決全文で判示を確認したものに限り,「参照」は判示の考え方を参考にしたことを示す。
通達は,国税庁ウェブサイトの本文で確認した。

字数は見出しを含めて約3,700字であり,選択科目の1問の答案としては多めである。
実際の答案で分量を減らす場合は,重み5の評価項目(番号4・5・15・19・27・31・40・42・43)に対応する部分を残し,その他の部分を短くすることになる。

2 答案

1 設問1について
(1) 損金算入の時期
 販売促進費1000万円は,売上と個別に対応しない販売費であるから,法人税法22条3項2号の「費用」に当たる。費用は公正処理基準(同条4項)に従って計算されるが,償却費以外の費用で事業年度終了の日までに債務の確定しないものは除かれる(同条3項2号括弧書)。そこで,令和5事業年度末に債務が確定していたかが問題となる。
 思うに,債務確定基準は,費用の見越計上による恣意的な所得操作を防ぎ,課税の公平を図る趣旨である。よって,①年度末までに債務が成立し,②具体的な給付をすべき原因事実が発生し,③金額を合理的に算定できることを要すると解する(法人税基本通達2-2-12参照)。
 本問では確かに,A社は令和5年12月に1000万円を支払っており,債務は成立している(①)。
 しかし,ギフト券は令和6年1月の贈呈に向けてB社に保管され,旅行は令和6年4月以降に行われるから,年度末に給付の原因事実は生じていない(②)。
 また,ギフト券の最終価格は,現に要した航空運賃・宿泊料や為替レートに応じて増減し,対象期間満了時に精算され,未使用で失効した分は全額A社に返還される。そうすると,A社が最終的に負担する額は旅行の実施まで定まらず,年度末に金額を合理的に算定できない(③)。
 なお,支出済みの対価には債務確定基準は適合しないと考えても,返還・精算が予定された支出は前払金として資産に計上するのが公正処理基準に適合し,結論は同じである。
 したがって,1000万円は令和5事業年度の損金に算入できず,旅行の実施・精算により負担額が確定する令和6事業年度以後に損金に算入される。
(2) 寄附金該当性
 ギフト券の贈呈は「経済的な利益の贈与又は無償の供与」(37条7項)に当たり,寄附金として損金算入が制限されないか。
 寄附金は名義を問わないが,広告宣伝の費用その他これに類する費用は除かれる(同項括弧書)。そして,対価性がなく,かつ,経済取引として是認できる合理的理由のない利益の移転が寄附金に当たると解する(東京高判平成4年9月24日参照)。
 本問では確かに,当選者は対価なくギフト券を受け取る。しかし,本件キャンペーンは,取締役会の方針に基づき,HPへのアクセス増加,ネット予約の促進及び顧客の属性・好みの情報収集を目的とし,HPで公表して数千人の回答を得た不特定多数向けの懸賞である。当選者も抽選で偶然に決まる。そうすると,支出には売上増加という経済的合理性があり,広告宣伝に類する費用といえる。
 よって,寄附金に当たらず,37条1項の損金算入限度額の制約は受けない。
2 設問2について
 役務の提供に係る収益の額は,22条2項・4項の「別段の定め」である22条の2第1項により,公正処理基準ではなく,役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入される。平成30年度改正で新設された同項は,収益は収入すべき権利が確定した時の属する年度に計上するという権利確定主義(最判平成5年11月25日参照)を,役務の提供という要件で明文化したものと解される。そこで,7500万円の対価がいかなる役務の対価かが問題となる。
 思うに,早期予約販売の顧客は,予約・支払により客室を確保し,キャンセルしても支払額の20%(本問では1500万円)は返還されない。この1500万円は,宿泊の有無にかかわらずA社に帰属するから,宿泊そのものではなく,予約時に客室を確保するという役務の対価と解するのが合理的である。
 本問では,確保の役務は令和6年中の予約・支払の時点で提供され,1500万円は返還を要しないことが確定している。確かに,災害等の特別な事情があれば全額返還されるが,通常生じない偶発事象であり,年度帰属を左右しない。
 よって,1500万円は令和6事業年度の益金に算入すべきであり,これを収益計上しなかったA社の処理は誤りであるから,申告調整を要する。
 他方,残りの6000万円は宿泊の対価であり,キャンセルされれば返還されるから,令和6事業年度には前受金にすぎず益金に算入されない。令和7事業年度に宿泊が実施された日に,その分が益金に算入され,キャンセル分は返還により益金とならない。
 なお,7500万円全体を宿泊の対価とみる立場でも,1500万円部分の帰属が問題となることは同じであり,その立場では,令和7事業年度に,宿泊が実施された分の支払額が宿泊の日に,キャンセル分は20%のキャンセル料がキャンセルの日に,それぞれ益金となる。
3 設問3について
(1) 所得の種類
 一時所得(所得税法34条1項)は,利子所得から譲渡所得まで以外の所得のうち,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で,役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであり,非継続性と非対価性の2点で雑所得(35条1項)と区別される。
 本問では,Cの利益は一回限りの懸賞による偶発的なものであり,継続性がない。確かに,アンケートへの回答は役務の提供ともいえる。しかし,数千人の回答者から偶然当選した10組だけが受ける利益であるから,回答の対価とはいえない。
 よって,一時所得に当たる。
(2) 年分
 総収入金額は「その年において収入すべき金額」であり,経済的利益はそれを享受する時の価額による(36条1項・2項)。所得税法は権利確定主義を採るが(最判昭和49年3月8日参照),経済的利益は,処分可能性や利用期間の制限に照らし,現実に享受し得る状態になった時に実現すると解する。
 本問では確かに,当選は令和5年12月に通知されている。しかし,その時点でCが得たのは,翌年4月以降でなければ行使できず,譲渡もできず,死蔵されれば対価がA社に返還される権利にすぎず,「贈呈されたギフト券に基因する」利益ともいえない。他方,Cは令和6年1月にギフト券を受領し,同年夏に旅行して利益を享受した。
 したがって,令和6年分の一時所得に係る総収入金額100万円として扱われる。
(3) Cが社外取締役であった場合
 給与所得(28条1項)は,雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供した非独立的な労務の対価をいう(最判平成17年1月25日参照)。そして,役員が法人から受ける経済的利益は,役員の立場と全く無関係に,法人からみて純然たる第三者との間の取引ともいうべき態様によりなされるものでない限り,原則として職務執行の対価の性質を有するとされる(名古屋地判平成4年4月6日参照)。
 本問では,Cは就任前に一般の顧客と同じ立場でアンケートに回答し,数千人の中から抽選で偶然当選した。よって,利益は役員の立場と全く無関係に,純然たる第三者との取引と同じ態様で供与されたものであり,職務執行の対価ではない。
 したがって,結論は変わらず,令和6年分の一時所得である。
4 設問4について
(1) 所得の種類
 宿泊券は株主の地位に基づき持株数に応じて付与されるから,配当所得(24条1項)に当たらないか。
 「剰余金の配当」は会社法453条からの借用概念である。そして,24条1項は剰余金の配当から資本剰余金の額の減少に伴うものを除いており,資本と利益を区別して,損益計算上の利益を出資に対して株主に分配するものを配当所得としている。よって,会社法上違法な配当も含まれるが,利益の有無にかかわらず支払われる給付は配当に当たらないと解する(最判昭和35年10月7日参照)。
 本問では確かに,株主たる地位に基づく給付である以上配当とみる余地もある。しかし,宿泊券は,Aホテルの認知度向上と個人株主の維持という事業目的で,利益の有無にかかわらず持株数に応じて段階的に付与されるものであり,損益計算上の利益の分配に当たらない。よって,配当所得ではない。
 次に,宿泊券は毎年10月末時点の株主に付与され,継続性があるから,「一時の所得」(34条1項)に当たらない。
 したがって,雑所得(35条1項)に当たる。
(2) 年分
 本問の宿泊券は,設問3のギフト券と異なり,譲渡や利用期間に制限がなく,金券ショップで20万円で売却できるから,受領時に直ちに換金・処分でき,金銭的評価も可能である。宿泊が令和8年であっても,利益は受領時に実現している。
 よって,令和7年分の雑所得に係る総収入金額20万円として扱われる(36条1項・2項)。
(3) 確定申告の要否
 居住者は,所得税額が配当控除の額を超えるときは確定申告を要する(120条1項)。もっとも,給与等の金額が2000万円以下で,一の支払者から給与等の支払を受け,その全部につき源泉徴収(183条)又は年末調整(190条)をされた場合において,給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるときは,申告を要しない(121条1項1号)。
 本問では,Dの給与等はE社からの500万円のみであり,E社は源泉徴収と年末調整を行っている。そして,Dは負担や支出をしていないから,雑所得の金額は20万円であり(35条2項2号),20万円以下に当たる。
 したがって,Dは令和7年分の所得税につき確定申告を要しない。
以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の1は第4の番号1〜14(設問1),2は番号15〜26(設問2),3は番号27〜34(設問3),4は番号35〜43(設問4)に対応する。

重み5の9項目は,1(1)の債務確定の3要件(番号4)と金額の合理的な算定可能性(番号5),2の冒頭の法人税法22条の2第1項(番号15)と1500万円部分の検討(番号19),3(2)の年度帰属(番号27),3(1)の非継続性・非対価性(番号31),4(1)の一時所得の否定と雑所得の判定(番号40),4(2)の設問3との対比(番号42)並びに4(3)の所得税法121条1項1号(番号43)に当たる。

「〜しない」の形の項目(番号2・8・13・14・22〜26・30・32)は,答案でその誤りをしていないことによって満たしている。

(2) 設問1(販売促進費の損金算入時期と寄附金該当性)

出題の趣旨によれば,本問は,自動車販売会社が増販コンテストの優秀な従業員を海外旅行に招待するため旅行会社から購入したギフト券の購入費用の損金算入の可否が争われた裁判例をベースにしており,年度末に支出済みの販売促進費でも,金額の合理的な算定可能性を欠くとして債務の確定を否定し,当該年度の損金算入を否定するという筋の答案が念頭に置かれている。
採点実感も,金額の合理的な算定可能性の要件を令和5事業年度で満たし得るかが中心的な問いであるとし,これを否定する答案はおおむね「良好」以上であったとする(番号5)。

その前提として,販売促進費が法人税法22条3項各号の原価・費用・損失のいずれに当たるかをまず示すこと(番号1),公正処理基準に従いつつ債務確定基準を押さえること(番号3)及び法人税基本通達2-2-12の3要件に照らして結論を導くこと(番号4)が求められている。
答案は,1(1)の冒頭で「費用」に当たることを示した上で,3要件を規範とし,ギフト券の贈呈が翌年であること,旅行が対象期間(令和6年4月以降)に行われること,及び最終価格の増減・精算・未使用分の全額返還という約定を,それぞれ②③の要件に当てはめた。

もっとも,出題の趣旨は,ベースとした裁判例について,金額の合理的算定可能性に関して厳格に過ぎる,あるいは支出済みの費用に債務確定基準は適合しないという批判も可能であるとし,採点実感も,金額の合理的な算定可能性を肯定する答案(番号6)や,支出済みの対価には債務の確定は元来問題とならないとした上で公正処理基準に従い同様の結論を導く答案(番号7)を,説得力に応じて評価している。
答案は,後者の構成を採った場合でも,返還・精算が予定された支出は前払金として資産に計上することが公正処理基準に適合し,結論が変わらないことを1文で示した。

寄附金該当性については,出題の趣旨が「経済的合理性や対価性に鑑みつつ」条文に問題文の条件を当てはめて寄附金に該当しない旨を説明できるかを確認するとし,採点実感も,対価性の有無,通常の経済的取引として是認できる合理的理由の有無,及び法人税法37条7項の括弧書の除外費目への該当性の検討を挙げている(番号10・11)。
答案は,関連会社に対する売上値引きが寄付金に当たるかが争われた東京高裁平成4年9月24日判決(第一審判決の理由を引用・補正したもの)が示した,経済取引として十分首肯し得る合理的理由がある場合には寄附金として扱うことは相当でないという考え方を参照し,不特定多数向けの懸賞であることと売上増加という目的から,寄附金に当たらないとした。

採点実感は,旅行会社に支払った対価(旅行代金)の寄附金該当性を検討した答案(番号13)と,債務が確定していないから経済的合理性を欠き寄附金に当たるとした答案(番号14)を,誤りとして指摘している。
また,益金の算入時期の問いと誤解した答案や,金額の不確定性に伴う損金算入時期の論点に全く気付かなかった答案は「不良」につながりがちであったとされる(番号8・5)。

(3) 設問2(早期予約販売に係る益金算入時期)

役務の提供に係る収益の額は,平成30年度改正で新設された法人税法22条の2第1項により,役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入される。
同項は法人税法22条2項・4項の「別段の定め」に当たり,同項自身も,除かれる「別段の定め」から22条4項(公正処理基準)を除いているから,現行法の下では,公正処理基準や管理支配基準だけで益金算入時期を決めることはできない。
採点実感は,本設問で同項を根拠条文として挙げた答案が全体の半数にも満たなかったこと,同項を挙げても「役務の提供」という要件に言及せずに権利確定主義の判例や理論だけで説明する答案や,管理支配基準に安易に依拠する答案が多かったことを指摘している(番号15・16・22)。

出題の趣旨は,返還不要となる1500万円部分に「特に」着目するよう求めており,採点実感も,この部分の益金算入時期が問題となることに気付いた答案はおおむね「良好」以上であったとする(番号19)。
その上で,1500万円部分を令和6事業年度における「宿泊の確保」という役務の提供の対価と解し,同項の文理に則しつつ権利確定主義とも整合的に立論する答案は「優秀」の評価を得ていることが多いとされ(番号20),7500万円の全額を宿泊の対価とみて,現に令和7年度中に宿泊があって初めて益金に算入するという考え方も成り立ち得るとされている(番号21)。
答案は前者を主位とし,残りの6000万円は宿泊の対価としてキャンセルされれば返還されるから令和6事業年度には前受金にとどまるとした上で,後者の構成の帰結を「なお」書きで示した。

採点実感は,災害等の通常生じない事象による僅かな不確実性を益金算入時期の決定的な理由とすることは,所得計算に過度の確実性を要求するもので説得的とは言い難いとしている(番号24)。
答案は,災害等による全額返還の可能性が1500万円部分の帰属を左右しないことを明示した。
また,キャンセル料相当額をキャンセル時に返金される額と誤解した答案(番号23),宿泊予定日の到来だけで全額が益金になると説明した答案(番号25)も,十分ではないとされている。
早期予約の25%の値引を低額取引として論じる答案もあったが,値引後の対価が「通常得べき対価の額」(法人税法22条の2第4項)と異なる事情は問題文に見当たらず,この点は問われていないとされている(番号26)。

(4) 設問3(ギフト券の利益の所得区分と年度帰属)

年度帰属について,出題の趣旨は,当選時の令和5年分とするか,ギフト券の贈呈を受けて実際に旅行をした令和6年分とするかという論点を意識し,処分可能性と利用期間の制限に留意して経済的利益の実現の時期を判断するよう求めている(番号27・28)。
採点実感は,令和5年には,翌年に始まる期間内でなければ行使し得ない処分不能な権利が生じたことを通知されたにすぎないから,令和6年に実現した収入金額(所得税法36条1項)と評価するのが自然であるとし,令和5年の権利は「贈呈されたギフト券に基因する」利益とも言い難いとする(番号29)。
なお,所得税基本通達36-13は,一時所得の総収入金額の収入すべき時期を支払を受けた日とし,その日前に支払を受けるべき金額が通知されているものは通知を受けた日によるとしているが,本問で令和5年12月に通知されたのは当選の事実であり,ギフト券の価額も旅行の実費に応じて変動するから,通知日によるべき場合には当たらないと考えられる。

所得区分については,他の所得のいずれにも当たらない一時の偶発的な収入を雑所得と区別する基準として,非対価性と非継続性を正確に指摘し,条文に当てはめることが求められている(番号31)。
アンケートへの回答との対価関係を認めて雑所得とする答案は,数千人から偶然当選した10組の利益と回答との間に対価性を見いだす議論として説得的でないとされている(番号32)。

Cが社外取締役であった場合について,出題の趣旨は,法人の役員が当該法人から受ける経済的利益は,役員の立場と全く無関係に,法人からみて純然たる第三者との間の取引ともいうべき態様によりなされるものでない限り,原則としてその職務執行の対価の性質を有するとする名古屋地裁平成4年4月6日判決を挙げ,給与所得該当性が広く捉えられる傾向を踏まえて検討するよう期待している(番号34)。
同判決は,同族会社が取締役に土地を時価より低い価額で譲渡した事案で,時価との差額を役員賞与と認めたものであり,判決は「金銭又は経済的利益」について述べ,「原則としてその職務執行の対価の性質を有するものとみることができる」としている。
答案は,この一般論と,給与所得の意義に関する最高裁平成17年1月25日判決を示した上で,Cが就任前に一般の顧客と同じ立場で回答し偶然当選したことから,純然たる第三者との取引と同じ態様であるとして,結論は変わらないとした(番号33)。

(5) 設問4(株主優待の所得区分,年度帰属及び確定申告の要否)

配当所得該当性について,採点実感は,「剰余金の配当」に当たらないことだけを理由とする答案は,問題文にこの点が明記されていない以上,更なる説明なしには完全な解答とは評価し難いとする(番号35)。
そして,「剰余金の配当」を会社法453条からの借用概念と捉えつつ,所得税法24条1項が剰余金の配当から資本剰余金の額の減少に伴うものを除いていることから,資本と利益の区別を維持し,損益計算上の利益の株主に対する分配を配当所得と捉えていると説明する(番号36)。
最高裁昭和35年10月7日判決は,株主相互金融会社の株主優待金について,所得税法上の利益配当には商法上不適法な配当(いわゆる蛸配当や株主平等の原則に反する配当等)も含まれるとしつつ,損益計算上利益の有無にかかわらず支払われる株主優待金は利益配当に当たらないとした(番号37・38)。
答案は,この判示に従い,株主総会の決議を経ていないことではなく,利益の有無にかかわらず事業目的で段階的に付与されることを理由に配当所得を否定した。

他方,採点実感は,株主が株主たる地位に基づいて会社から受けた利益である以上配当所得だとする答案も,法人税法に関する最高裁昭和43年11月13日大法廷判決(株主相互金融会社の株主優待金を,株主たる地位に基づく給付として,法人税法上その性質は配当以外のものではあり得ないとして損金算入を否定したもの),東京高裁平成24年4月10日判決及び所得税基本通達24-1(株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益を剰余金の配当等に含めるもの)の一般論に依拠するものであれば,主張としてはあり得なくはないとして,一貫性と説得性に応じて評価している(番号39)。
答案は,この立場を「確かに」で受けて退けた。

なお,出題の趣旨と採点実感は触れていないが,所得税基本通達24-2は,法人が株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益であっても,法人の利益の有無にかかわらず供与することとしているホテル,旅館業等を営む法人の株主優待施設利用券等は,法人が剰余金又は利益の処分として取り扱わない限り配当等に含まれないとし,その注で,個人の株主等が受けるものは雑所得に該当し配当控除の対象とならないとしている。
本問の宿泊券はこの例に当たり,答案の結論と一致する。

配当所得を否定した答案の多くは端的に一時所得としていたが,宿泊券は毎年10月末時点の株主に付与されるもので継続性があり,「一時の所得」に当たらないから,雑所得とする方が説得的であるとされている(番号40)。
年度帰属については,宿泊券は設問3のギフト券と異なり直ちに換金・処分が可能で金銭的評価も可能であるから,宿泊が翌年以降でも令和7年に実現したものとして総収入金額に算入すべきであり,設問3との条件の違いを踏まえた答案は「良好」以上につながりやすいとされている(番号41・42)。

確定申告の要否は,給与等が2000万円以下で,一の支払者から給与等の支払を受けて源泉徴収・年末調整を受け,給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であれば申告を要しないという所得税法121条1項1号を根拠条文として挙げ,過不足なく当てはめることが求められている(番号43)。
採点実感は,この根拠条文を正確に挙げて説明できた答案の多くが「優秀」であったとしている。
Dの雑所得の金額は20万円であり,「二十万円以下」に当たる。
なお,配当所得とする立場でも所得金額は20万円(所得税法24条2項)であり,一時所得とする立場では特別控除(同法34条2項・3項)により所得金額は0円となるから,いずれの立場でも確定申告を要しないという結論は変わらない。

(6) 答案の弱点と扱わなかった事項

答案は,評価項目をできる限り満たすために約3,700字となっており,試験時間内に書き切れる分量を超えている可能性がある。

設問1のベースとされた裁判例は,裁判所ウェブサイトに掲載がなく,国税庁ウェブサイトの税務訴訟資料の掲載範囲(平成19年判決分以降)にも含まれないため,本記事では判決本文を確認しておらず,答案でも解説でも判示を引用していない。

設問2の主位の構成(1500万円を確保の役務の対価とみるもの)は,公式資料が許容する二つの構成の一つであり,7500万円全体を宿泊の対価とみる構成も「良好」以上の評価を得られるとされている。
答案は,前受金とした6000万円について,キャンセルされた場合に返還される部分が益金とならないことを示したが,キャンセルが令和6年中に生じた場合の処理には触れていない。

設問3の年度帰属について,ギフト券の受領時(令和6年1月)と旅行の時(令和6年夏)のいずれが実現時期かは,いずれも令和6年であって結論に影響しないため,答案では区別していない。

A社の源泉徴収義務,A社の法人税法上の役員給与の扱い(設問3の仮定の場合),消費税,交際費等の損金不算入(租税特別措置法),一時所得の金額の計算は,設問が問うていないため扱っていない。

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㉑令和7年度司法試験国際関係法(私法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した30項目と5段階の重み付け(AI作成)
㉒令和7年度司法試験国際関係法(私法系)第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した29項目と5段階の重み付け(AI作成)
㉓令和7年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
㉔令和7年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答(AI作成)

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②令和8年度司法試験・租税法第2問の参考答案と予想される評価項目――暗号資産による役員退職給与、廃業後の貸倒れ、青色申告承認の承継(AI作成)
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④税務調査への回答書と税務意見書の作り方―税目・年分・事実・証拠・法令・計算及び留保の整理(AI作成)
⑤株主優待・懸賞の賞品は何所得か―配当所得・一時所得・雑所得の区別,収入の時期,会社員の確定申告及び賞品を出す会社の源泉徴収(AI作成)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省「令和7年司法試験の実施について」
②法務省「令和7年司法試験問題」
③令和7年司法試験論文式試験問題集(選択科目)
④法務省「令和7年司法試験の結果について」
⑤令和7年司法試験論文式試験出題の趣旨
⑥法務省「令和7年司法試験の採点実感」
⑦令和7年司法試験の採点実感(選択科目)

2 法令

①法人税法(e-Gov法令検索)
②所得税法(e-Gov法令検索)
③会社法(e-Gov法令検索)
④法人税基本通達2-2-12(国税庁)
⑤所得税基本通達24-1・24-2(国税庁)
⑥所得税基本通達36-13(国税庁)

3 裁判例

①最高裁判所第二小法廷昭和35年10月7日判決(昭和35年(オ)第54号,民集14巻12号2420頁)
②最高裁判所大法廷昭和43年11月13日判決(昭和36年(オ)第944号,民集22巻12号2449頁)
③最高裁判所第二小法廷昭和49年3月8日判決(昭和43年(オ)第314号,民集28巻2号186頁)
④名古屋地方裁判所平成4年4月6日判決(昭和61年(行ウ)第30号)
⑤東京高等裁判所平成4年9月24日判決(平成3年(行コ)第134号)
⑥東京地方裁判所平成3年11月7日判決(昭和63年(行ウ)第213号。⑤の第一審)
⑦最高裁判所第一小法廷平成5年11月25日判決(平成4年(行ツ)第45号,民集47巻9号5278頁)
⑧最高裁判所第三小法廷平成17年1月25日判決(平成16年(行ヒ)第141号,民集59巻1号64頁)
⑨東京高等裁判所平成24年4月10日判決(税務訴訟資料262号順号11927)

4 確認状態

出題の趣旨は,全科目を収めたPDFのうち租税法第2問の部分(28頁〜29頁)を全て読んだ。
採点実感は,選択科目を収めたPDFのうち,租税法の「1 出題の趣旨・狙い等」,「2 採点方針」の第2問の部分,「3 採点実感等」の〔第2問〕の部分(8頁〜12頁),「4 今後の出題について」,「5 今後の法科大学院教育に求めるもの」及び「6 その他参考事項」(12頁〜13頁)を読んだ。
第4の頁は,いずれもこれらのPDFの頁であり,評価項目の根拠とした記述の頁を機械的に照合した。

法令は,e-Gov法令APIで令和7年1月1日時点の版(法人税法・所得税法は同日施行の版)を取得して条文を確認した。
通達は,国税庁ウェブサイトの本文で確認したが,令和7年1月1日時点の本文と同じであることまでは確認していない。

裁判例は,裁判所ウェブサイトの判決全文(⑨は国税庁ウェブサイトの税務訴訟資料の判決本文)で,本記事で述べた判示の文言を確認した。
①の判決の民集の頁は,出題の趣旨及び採点実感の表記(2420頁)によったが,裁判所ウェブサイトの書誌では2421頁と表示されている。
④の判決の掲載誌(出題の趣旨によれば行政事件裁判例集43巻4号589頁)と,⑤の判決の掲載誌は,裁判所ウェブサイトの書誌に表示がなく,照合していない。
⑨の判決の配当所得の意義に関する一般論は,同判決が引用する第一審判決(東京地方裁判所平成23年5月31日判決,税務訴訟資料261号順号11693)の判示である。