メインコンテンツへスキップ
       

離婚後の共同親権の国際比較-決定権・居住・DV対応の違い(AI作成)

第1 共同親権を比較するための区別

1 対象と比較の範囲

離婚後の共同親権を比較するときは,①子について誰が法的な責任・権限を持つか,②どの事項を共同で決めるか,③子がどこで,どのような日程で暮らすかを分けて読む必要がある。
父母双方が権限を持つことから,居住時間を半分ずつにすることや,日常の行為まで常に双方の同意を得ることが当然に導かれるわけではない。

本記事は,令和8年10月3日を基準日として,日本,フランス,ドイツ,イングランド・ウェールズ,オーストラリアの連邦法及び米国カリフォルニア州の条文・公的解説を比較する。
英国全体,米国全州又は西オーストラリア州の別個の法制度へ一般化するものではなく,世界の採用率,制度の実効性及び子への心理的効果は対象としない。
外国法の日本語説明は原文の要約・仮訳であり,公定訳ではない。

2 責任・決定権と居住の比較表

フランスのautorité parentale,ドイツのelterliche Sorge,英国・豪州のparental responsibilityは,各法域の法律上の概念である。
カリフォルニア州ではlegal custodyとphysical custodyを区別するため,同じ「共同親権」という日本語だけで法律効果を揃えることはできない。

法域法的責任・決定権居住・時間との区別
日本離婚時に双方又は一方を親権者に指定し,双方なら共同行使が基本で,単独行使の規定もある監護者・監護の分掌,親子交流及び費用分担は別に定める
フランス別離は親権行使の帰属規則を変えないが,子の利益のため単独行使も認められる交互居住又は一方の親の住所での居住を定め得る
ドイツ共同配慮を持つ別居父母の重要事項は合意を要し,日常事項とは扱いが異なる決定権の分担に関する規定だけでは,居住時間の割合は決まらない
イングランド・ウェールズ政府案内は,重要決定への他方の関与と,日常決定の扱いを区別して説明する法律上の父母の関与に関する推定は,特定の時間配分を意味しない
豪州連邦法各親の親責任は別離後も存続して裁判所命令に従い,重要事項の共同・単独決定命令が可能共同決定と平等な時間配分は異なり,司法長官省は平等な時間を過ごす法的権利はないと説明する
カリフォルニア州裁判所案内は,重要決定に関するlegal custodyに共同・単独の形があると説明する居住に関するphysical custodyとは別の概念であり,生活日程は別に確認する

表は各制度の対応関係を示すものであり,共同の制度の有無だけによる優劣の評価ではない。
日常事項の単独決定,父母が合意できない場合の処理及び安全への対応は,以下の各規定と併せて読む。

第2 日本の親権者指定と親権行使

1 離婚時に共同・単独のいずれを定めるか

(1) 父母双方又は一方の指定

離婚後の親権に関する改正は,令和8年4月1日に施行された。
現行の民法819条1項・2項は,協議離婚又は裁判離婚の際に,父母の双方又は一方を親権者に定めるものとしている。

(2) 裁判所が単独親権にしなければならない場合

民法819条7項は,裁判所が親権者を指定する際,子の利益のため,父母と子の関係,父母相互の関係その他一切の事情を考慮するものとしている。
父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある場合や,一方が他方から暴力等を受けるおそれの有無,協議が調わない理由その他の事情を考慮して親権の共同行使が困難と認める場合等,共同親権により子の利益を害すると認められるときは,父母の一方を親権者に定めなければならない。

したがって,共同行使の規定があることと,裁判所が親権者を指定する際に共同を一律に優先することは別の問題である。
親権者の指定は,日々の行為を誰が決めるかという次の問題とも区別される。

2 双方が親権者となった後の行使方法

(1) 共同行使と単独でできる行為

民法824条の2第1項・第2項では,双方が親権者である場合の共同行使を基本としつつ,監護・教育に関する日常の行為については単独行使を認めている。
子の利益のため急迫の事情がある場合も,一方が親権を行う。

(2) 合意できない特定事項の単独行使

共同で決めるべき特定事項について協議が調わない場合,民法824条の2第3項により,家庭裁判所は,父又は母の請求に基づき,子の利益のため必要と認めるときに一方が単独で親権を行使できる旨を定められる。
これは,その特定事項を処理する規定であり,親権者の指定全体を単独親権へ変更することとは異なる。

(3) 監護者を定めた場合の権限

民法766条は,監護者又は監護の分掌,親子交流及び監護費用の分担等を,子の利益を最も優先して定めるものとしている。
この定めにより監護者が指定されている場合には,民法824条の3により,その監護者は監護・教育や居所の指定・変更等を単独で行え,他方の親権者はその行為を妨げてはならない。

このため,共同親権という名称だけで,転居等について誰が決定権を持つかを判断することはできない。
監護者の指定とその権限を,親権者の人数とは別に確認する必要がある。

第3 外国の決定権と居住の仕組み

1 フランスの共同行使と交互居住

(1) 別離後の帰属と単独行使

フランス民法372条・373-2条は,共同の親権行使を基本とし,父母の別離が親権行使の帰属規則に影響しないものとしている。
もっとも,372条には親子関係の成立等に関する例外があり,373-2-1条は,子の利益が求める場合に裁判官が一方へ単独行使を委ねることを認めている。

(2) 通常行為における第三者の扱い

フランス民法372-2条は,一方が子について通常の親権行為を行う場合,善意の第三者に対しては他方の合意があるものと扱う。
これは第三者との関係を定める規定であり,父母間では重要事項もすべて単独で決定できるという意味ではない。

(3) 子の居住先の定め

フランス民法373-2-9条は,子の居住を父母の住所で交互に,又は一方の親の住所に定め得るものとしている。
共同行使を維持することと交互居住を選ぶことは,別の事項として規定されている。

2 ドイツの重要事項と日常事項

(1) 別居している共同配慮者の決定権

ドイツ民法典(BGB)1687条1項は,共同配慮を持つ父母が継続的に別居している場合,子にとって重要な事項には相互の合意を求める。
他方の同意又は裁判所の決定に基づいて子が通常暮らす親は,日常事項を単独で決められる。

同項の日常事項は,通常頻繁に生じ,子の発達に変更困難な影響を与えない事項とされる。
子が通常居住先の親の同意又は裁判所の決定に基づいて他方の親のもとに滞在している間は,実際の世話に関する事項をその親が単独で決められる。
同条2項は,子の福祉のため裁判所がこれらの権限を制限・排除することも認めている。

(2) 特定事項と配慮全体の移転

BGB1628条は,重要な一事項又は一定の種類の事項について合意できない場合,父又は母の申立てにより,裁判所が決定を一方に委ねる仕組みを設けている。
決定権の移転には,制限や条件を付すこともできる。

BGB1671条1項では,共同配慮を持つ別居父母の一方が,配慮の全部又は一部を自己へ移転するよう申し立てることができる。
他方の同意があり14歳以上の子が反対しない場合,又は共同配慮を解消して申立人へ移転することが子の福祉に最も適すると見込まれる場合という,異なる要件が置かれている。

3 イングランド・ウェールズの親の関与

(1) 父母の関与に関する推定の射程

Children Act 1989の1条は,子の養育等に関する所定の裁判上の判断で子の福祉を最優先とする。
父母の関与が子の福祉を促進するという推定には,適用場面及び子を害悪の危険にさらさず関与できることに関する条件がある。

同条2B項の関与には直接・間接の関与が含まれ,子の時間の特定配分を意味しないと明記されている。
この推定を,父母が子と同じ日数を過ごす権利として読むことはできない。

(2) 政府案内による重要決定と日常決定の説明

英国政府の親責任の案内は,親責任を持つこと自体が子と時間を過ごす権利を意味しないと説明する。
重要決定には他方を関与させる必要がある一方,日常決定では常に他方の同意が必要とは限らないという説明もある。

同案内は,不同意の場合に特定の問題に関する命令又は一定の行為を禁止する命令を裁判所へ求める方法を示している。
ここでの説明は政府の制度案内に基づくものであり,すべての具体的行為について同意の要否を一律に決めるものではない。

4 豪州の2024年改正と共同決定命令

(1) 削除された推定と存続する親責任

豪州司法長官省の説明によれば,2024年5月6日の主要改正により,equal shared parental responsibilityの推定が削除された。
同省は,平等な時間を過ごす法的権利はなく,個々の子の必要に適した取決めを考えるものとも説明している。

他方,現行のFamily Law Act 1975の61C条では,各親の親責任は原則として別離によって影響されず,裁判所命令に従う構造が存続する。
61D条3項は,重要な長期的事項の全部又は一部について,共同又は単独の決定を定める命令を認めており,「共同親権を廃止した」とだけ説明するのは正確でない。

(2) 相談の奨励と命令による義務

同法61CA条の重要な長期的事項についての相談は,裁判所命令に従い,安全な場合に奨励されるものとして規定されている。
これに対し,61DAA条では,共同決定命令がある場合,別段の命令がない限り,相談と共同決定への真摯な努力が求められる。

(3) 子が滞在する間の日常的な事項

同法61DAB条は,子が命令に基づいてある者のもとにいる間,重要な長期的事項以外の決定では,他の親責任者へ相談する必要はないものと解する。
ただし,裁判所が別段の内容を命じた場合は,その命令に従う。

5 カリフォルニア州の法的監護と身体的監護

カリフォルニア州裁判所の案内は,健康・教育・福祉等の重要決定に関するlegal custodyと,子が誰と暮らすかに関するphysical custodyを区別する。
それぞれに共同・単独の形があり,共同の法的監護では重要決定の権利・責任を父母が分かち持つものと説明している。

したがって,共同の法的監護という名称だけで宿泊日程まで確定したと考えることはできない。
日常事項の具体的な決定権や同意の要否については,個々の命令等を別に確認する必要がある。

第4 DV・虐待への対応の条件と効果

1 調停提案の除外と接触の安全判断

(1) フランスの暴力の主張と調停提案

フランス民法373-2-10条は,一方から他方又は子への暴力が主張される場合,又は明白な支配がある場合を,同条による調停の提案・説明面談の指示から除外する。
暴力の認定が既にある場合だけに限る規定ではなく,他方で,あらゆる調停制度を一律に禁止する規定でもない。

同法373-2-11条6号は,親権行使の方法を判断する際,他方への身体的・心理的圧力又は暴力を考慮事項としている。
調停へ誘導する段階の扱いと,親権行使の方法を決める段階の考慮を分けて規定している。

(2) イングランド・ウェールズの暫定命令と接触

Practice Direction 12Jの25項~27項は,DVの事実が未確定の段階でも,暫定命令が子又は他方親を管理不能な害悪のリスクにさらさないこと等を求める。
事実認定を終えるまで,安全の検討も待てばよいという構造ではない。

同指針35項・36項は,DVが認定され,又は認められた場合等の接触命令について,子と同居親の身体的・心理的安全を接触の前・最中・後に可能な限り確保すること等を求める。
この規律は子との接触の安全判断を扱うものであり,共同の決定権の有無だけでは説明できない。

2 子の福祉への危険と安全の考慮

(1) ドイツの危険除去措置

BGB1666条1項・3項は,子の身体的・精神的福祉又は財産への危険を父母が除去できない,又は除去しようとしない場合,裁判所が必要な措置を講じるものとしている。
措置には権限の一部又は全部の撤回等が含まれ,子への危険と父母による危険除去の可能性が発動条件となる。

(2) 豪州の子と養育者の安全

Family Law Actの60CA条・60CC条は,養育命令における子の最善の利益を最優先とし,子と養育者の安全,暴力・虐待・ネグレクトの経緯及び関連する命令等を考慮事項としている。
父母等との関係を持つ利益も,安全な場合という条件を伴って規定されている。

ただし,60CC条4項は合意命令について,同条2項・3項の各事項を考慮することを必須としない特則を置く。
同条の考慮事項を,あらゆる合意命令で一律に全項目の審査が義務付けられると説明することはできない。

3 カリフォルニア州の過去5年のDV認定

Family Code3044条a項は,監護を求める者について過去5年のDVを裁判所が認定した場合,その者への単独・共同の法的又は身体的監護の付与が子の最善の利益に反するという,反証可能な推定を設けている。
単なる申告だけで自動的にすべての監護が禁止されるものでも,反証が一切認められないものでもない。

同条b項は推定を覆す際の考慮事項を定め,父母双方との頻繁・継続的な接触を望ましいとする一般的な選好だけを使って推定を覆すことを認めていない。
過去5年という期間はこの推定の発動範囲であり,申立ての一般的な期限を意味するものではない。

第5 子の意向を考慮する仕組み

フランス民法373-2-11条2号は,388-1条の条件のもとで未成年者が表明した感情を,親権行使の方法の判断要素としている。
子の意向は,父母の従前の実践や合意等とともに,同条の考慮事項に位置付けられている。

BGB1626条2項は,父母が子の成長に応じた能力と自立の必要を考慮し,発達に応じて配慮の問題を子と話し合い,合意を目指すものとしている。
ここでの規律は父母と子の関わり方を扱うものであり,裁判所の意見聴取手続と同一ではない。

Children Actの1条3項a号は,所定の手続で子の意向・感情を,年齢と理解力に応じて考慮するものとしている。
同条4項に適用場面の定めがあるため,あらゆる裁判で同じチェック項目が当然に適用されると広げることはできない。

Family Law Actの60CC条2項b号は子が表明した意見を考慮事項とし,60CE条は子に意見表明を要求することを認めていない。
意見を判断に取り入れることと,意見表明を子に義務付けることを区別している。

第6 日本の離婚・養育費・取決め文書の関連記事

日本の離婚手続と親権,財産分与等の全体像は,離婚の手続と決めること-親権・養育費・財産分与・慰謝料(AIリライト)で説明している。
国内の具体的な取決めを検討する際の入口として参照できる。

共同親権や監護日数を養育費の計算とどう関係付けるかは,共同親権・共同監護の場合の養育費―監護日数・直接負担と算定表の限界(AI作成)で扱う。
決定権や居住時間の比較から直ちに費用分担の結論を出さず,養育費の問題を別に確認するための記事である。

取決めをどの文書にするかは,養育費の取り決め方―共同養育計画書・合意書・公正証書・調停調書の違い(AI作成)で説明している。
国境を越える事件の準拠法,裁判管轄,外国命令の承認・執行及びハーグ条約による返還は,本記事の比較とは別に検討する事項である。

第7 出典・参考資料

1 法令

①日本国,民法(明治29年法律第89号),766条・819条・824条の2・824条の3。
e-Govの令和8年6月24日現在施行版。
②フランス,Code civil,372条・372-2条・373-2条・373-2-1条・373-2-9条~373-2-11条,Légifranceの令和8年10月3日現在版(373-2-11条が参照する388-1条の個別手続は本記事の対象外)。
③ドイツ,Bürgerliches Gesetzbuch(BGB)1687条・1628条・1671条・1666条・1626条,法令提供サイトGesetze im Internetで基準日に提供された本文。
④英国,Children Act 1989,1条1項・2A項・2B項・3項・4項・6項・7項。
The National Archivesの基準日までの既知の施行改正を反映した版。
⑤オーストラリア連邦,Family Law Act 1975,60CA条・60CC条・60CE条・61C条・61CA条・61D条・61DAA条・61DAB条。
Federal Register of Legislation,Compilation 101,2025年6月10日版。
⑥米国カリフォルニア州,Family Code3044条,a項・b項。
California Legislative Information,2024年Chapter 544による改正,2026年1月1日適用の提供本文。

2 行政機関の制度解説

①法務省民事局,民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕,令和6年5月31日公表・令和8年9月最終更新。
改正法の施行日の説明を参照。
②英国政府,Parental rights and responsibilities,Parental responsibility for separated parents,基準日取得版(ページの改訂日は特定できていない)。
③豪州司法長官省,Children and family law,Decision-making on major long-term issues,Time arrangements,Changes to the Family Law Act from May 2024。
基準日取得版。

3 裁判所の制度解説・司法手続の運用資料

①カリフォルニア州裁判所,Child custody and visitation (parenting time),Child custody及びWhat is a parenting plan,基準日取得版。
法律上の監護の定義条文の引用ではなく,裁判所による制度説明として参照。
②イングランド・ウェールズの家事手続に関するPractice Direction 12J-Child Arrangements and Contact Orders: Domestic Abuse and Harm,25項~27項・35項・36項,司法省サイトの基準日提供版。
個別の裁判例ではなく,手続運用を定めるPractice Directionとして参照。