第1 地域制自然公園の特徴
日本の国立公園・国定公園は,国が区域内の土地を全面的に取得して管理する営造物型ではなく,私有地,国有林,集落,農林業地等を含む広い区域を指定し,地種区分に応じて行為を規制する地域制を基本とする。
この方式には,土地取得を待たずに広域の景観・生態系を一体として保護でき,地域の生活・産業と公園利用を併存させられる利点がある。他方,多数の所有者・権利者との調整,管理主体の分散,私権制限と憲法29条との緊張及び積極的な管理を誰が担うかという課題がある。
第2 都市公園との違い
都市公園法上の都市公園は,国又は地方公共団体が設置し,園路,広場,植栽,休養施設等を整備・管理する公園施設としての性格が強い。自然公園は,土地所有権を取得せず,既存の自然・土地利用を含む区域に公法上の規制と事業を重ねる点で異なる。
したがって,自然公園では,区域指定だけで管理が完結しない。許可・届出による消極的規制,公園事業,生態系維持回復事業,利用調整,協定及び公園管理団体を組み合わせる必要がある。
第3 人が維持してきた二次的自然を保護する理由
草原,里山,湿地等には,火入れ,採草,放牧,水管理など人の継続的な働きかけによって成立・維持されてきたものがある。管理を止めると森林化,外来種侵入又は植生遷移が進み,その環境に依存する動植物の生息・生育場所と景観が失われ得る。
「自然保護」を人為の排除だけと理解すると,二次草原の生物多様性をかえって損なう。自然公園法は,優れた自然の風景地の保護と利用だけでなく,生物多様性の確保への寄与を目的に含め,生態系維持回復事業等により能動的な管理を位置付けている。
第4 利用調整地区
自然公園法23条の利用調整地区は,特別地域又は海域公園地区について,風致・景観の維持と適正利用のため特に必要がある場合に指定される。指定期間中は,原則として認定又は許可等なしに立ち入ることができない。
利用調整地区は,過剰利用による踏圧,植生損傷,野生動物への影響等を入域者数,時期,経路又は利用方法の管理によって抑える制度である。主眼は「誰が入るか,どのように利用するか」の公法的な利用調整にある。
第5 風景地保護協定
自然公園法43条の風景地保護協定は,環境大臣,地方公共団体又は指定された公園管理団体が,土地所有者等との合意により自然の風景地を管理する制度である。協定には,区域,管理方法,必要施設,有効期間及び違反時の措置を定める。
協定区域内の土地所有者等全員の合意が必要で,内容は保護に有効・適切であり,土地・木竹の利用を不当に制限せず,省令基準に適合しなければならない。公告後に所有者等となった者にも効力が及ぶため,長期的な管理の継続性を確保できる。
二次草原では,草刈り,火入れ,樹木の伐採・調整,病害虫防除,植生の保護・復元,歩道維持等を協定内容として具体化できる。入域者を制限する利用調整地区とは,対象となる問題と手段が異なる。
第6 NPOが協定主体になるための要件
NPO法人であるだけでは風景地保護協定を締結できない。自然公園法49条により,国立公園では環境大臣,国定公園では都道府県知事から公園管理団体として指定され,風景地保護協定に基づく管理業務を行う団体であることが必要である。
公園管理団体が協定を締結するには,国立公園では環境大臣,国定公園では都道府県知事の認可を受ける。公告・縦覧,関係者の意見書提出,認可,公告及び区域の明示という手続も確認する。
第7 利用調整地区と風景地保護協定の比較
| 比較項目 | 利用調整地区 | 風景地保護協定 |
|---|---|---|
| 主な課題 | 利用集中・踏圧等 | 所有者等との協働による継続管理 |
| 法的手段 | 指定期間中の立入りを公法上制限 | 土地所有者等との協定 |
| 主体 | 環境大臣又は都道府県知事 | 環境大臣,地方公共団体又は公園管理団体 |
| 同意 | 土地所有者全員の合意を要件としない | 区域内の土地所有者等全員の合意が必要 |
| 二次草原への役割 | 利用による損傷を抑える | 草刈り・火入れ等の管理を担保する |
二つは代替関係ではない。利用圧を調整しつつ,協定に基づく管理を続けるなど,必要に応じて組み合わせる。
第8 財産権との調整
特別地域内の工作物新築等は自然公園法20条3項の許可対象であり,省令基準に適合しない行為は許可できない。しかし,基準に適合することは直ちに許可義務を意味せず,公園計画,地種区分,風致への影響,代替案及び条件付許可の可能性を個別に審査する。
不許可又は条件付許可に伴う損失補償は同法64条の「通常生ずべき損失」の問題である。財産権に内在する社会的制約の範囲か,特定人に特別の犠牲を課すかを,従前の利用,客観的に期待できた利用,規制の程度及び保護利益から検討する。
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①自然公園法の不許可・条件付許可と損失補償―取消訴訟,通常生ずべき損失及び6か月の出訴期間(AI作成)
②地域脱炭素化促進事業のワンストップ特例―温対法・森林法・自然公園法・環境影響評価法の条文連鎖(AI作成)
第10 出典
①e-Gov法令検索「自然公園法」
②e-Gov法令検索「自然公園法施行規則」
③環境省「自然公園法の改正について」
④環境省「利用調整地区」
⑤環境省「公園管理団体」
⑥環境省「生態系維持回復事業」