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死亡事故の損害賠償額は「命の値段」ではない―慰謝料,逸失利益,葬儀費用及び過失相殺の読み方(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 本記事の対象

交通事故,介護事故,医療事故その他の不法行為により人が死亡したとき,判決や報道には「賠償額」という数字が現れる。しかし,その数字は人の命に市場価格を付けたものではない。民事損害賠償の制度が,事故と相当因果関係のある損害を項目ごとに金銭に評価し,責任割合,過失相殺及び既払金等を反映した結果である。

2 結論

死亡事故の賠償額は,原則として,①被害者本人の逸失利益,②被害者本人の死亡慰謝料,③葬儀関係費,④遺族固有の慰謝料,⑤治療費等の事故から死亡までの損害,⑥弁護士費用相当額等を積み上げて算定する。その後,過失相殺,損益相殺又は既払金による控除を行うため,「判決で命がいくらと評価されたか」という読み方は法的に正確ではない。

第2 賠償額を構成する損害項目

1 逸失利益

逸失利益は,事故がなければ将来得られたであろう収入等を現在の金額に換算したものである。収入,年齢,就労可能期間,生活費控除率及び中間利息控除が計算に影響する。就労収入だけでなく,年金の種類や家事労働についても個別の検討が必要である。

この計算は将来の経済的損失の估計であり,生命そのものの価値を収入で序列化する趣旨ではない。収入の差によって逸失利益が異なるのは,失われた収入という財産的損害の大きさが異なるためである。

2 死亡慰謝料

死亡慰謝料は,被害者本人が生命を失ったことによる精神的損害を金銭に評価したものである。実務では基準額を手掛かりとするが,被害者の家庭内での立場,事故の態様,加害者の事故後の対応その他の事情により個別に判断される。

3 遺族固有の慰謝料

民法711条は,他人の生命を侵害した者が,被害者の父母,配偶者及び子に対しても損害賠償責任を負うことを定めている。これは,被害者本人の損害賠償請求権を相続することとは別の,遺族自身の損害である。

契約上の債務不履行責任だけが認められ,不法行為責任が否定された場合には,契約当事者でない遺族の固有の慰謝料が認められないことがある。デイサービス送迎時の転倒死亡事故を扱った福岡地裁平成28年9月12日判決は,その一例である。

4 葬儀関係費その他の損害

葬儀関係費は,実際の支出がすべてそのまま認められるのではなく,事故と相当因果関係のある範囲が問題となる。事故後に治療が続いてから死亡した場合には,治療費,入院雑費,付添看護費,休業損害及び入通院慰謝料等も検討対象となる。

第3 判決の認容額がそのまま「被害の大きさ」ではない理由

1 責任の成否が先にある

裁判所は,まず故意又は過失,契約上の義務違反,因果関係等から責任の成否を判断する。責任が否定されれば,被害が重大であっても賠償命令は出ない。責任が認められても,その義務違反と相当因果関係のある損害の範囲が次に問われる。

2 過失相殺と既払金の控除

被害者側にも事故又は損害の発生・拡大に関係する事情があれば,民法722条2項又は418条により賠償額が減額されることがある。保険金,社会保険給付,使用者からの補償又は先行した支払がある場合には,給付の性質と対応する損害項目に応じて控除が問題となる。

したがって,「請求額」,「裁判所が認定した過失相殺前の損害額」及び「最終的な認容額」は区別しなければならない。

3 証拠と請求範囲による限界

民事裁判は,当事者が請求し,主張し,立証した範囲を前提に判断する。支出の資料がない,収入資料が不十分である,請求自体がされていないといった理由で,判決に現れる金額が実生活での損失の全部を表さないことがある。

第4 報道や判決要旨を読む順序

1 確認すべき九項目

死亡事故の賠償額を読むときは,①誰が誰に請求したか,②債務不履行か不法行為か,③責任が認められた被告は誰か,④死亡との因果関係が認められたか,⑤損害項目ごとの認定額,⑥過失相殺の割合と理由,⑦既払金等の控除,⑧遺族固有の慰謝料の有無,⑨利息と弁護士費用を順に確認する。

2 請求額と認容額の差

請求額は原告が裁判所に判断を求めた金額であり,裁判所の評価額ではない。認容額は,裁判所が責任と損害を認定し,減額要素を反映した後の金額である。二つの数字の差だけから,裁判所が被害を軽く見たとはいえない。

第5 事故当事者と実務家の確認事項

1 被害者・遺族側

戸籍,収入・年金資料,葬儀費用の領収書,診療録,介護記録,事故報告書及び保険・給付の明細を早めに確保する。どの遺族が本人の請求権をどの相続分で取得するかと,誰に固有の慰謝料が発生し得るかを分けて整理する。

2 加害者・事業者側

責任の有無と損害の評価を混同せず,事故状況,事前に把握していた危険,回避可能性,事故後の対応及び保険の対応範囲を記録に基づいて検討する。賠償額の説明で「命の価格」という表現を用いると,制度の構造と当事者の受け止めの両方を誤るおそれがある。

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第7 出典・参考資料

1 法令

e-Gov法令検索・民法(415条,418条,709条,710条,711条,722条等)

2 裁判例と裁判所の検索範囲

福岡地方裁判所平成28年9月12日判決(平成27年(ワ)第2717号)
裁判所・裁判例検索はすべての判決等を掲載するものではない。判決の有無又は判決内容を確定するためには,事件番号や判決書本文の確認が必要である。