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尋問における留意点――証人・当事者が尋問で気をつけること(AIリライト)

証人尋問や当事者尋問を控えた証人・当事者に向けて,尋問の場での供述のしかたを整理します。主尋問と反対尋問に共通する留意点,反対尋問で特に注意すべき点,証人の態度と供述の信用性の関係,反対尋問をする側の視点までを順に説明します。根拠となる民事訴訟規則の条文は,裁判所ウェブサイトが公開する公式PDFで確認しています。(2019年5月1日公開,2026年7月更新)

第1 尋問に臨む前の心構え

尋問は,記憶していることを自分の言葉で語る場です。陳述書を暗記して,そのとおりに読み上げなければならないということは全くありません。文言を思い出そうとするより,出来事を記憶のとおりに述べることを心がけてください。

ただし,陳述書と食い違う事実を供述すると,その食い違い自体が反対尋問の攻撃材料になります。尋問の直前に自分の陳述書を読み直し,記憶を整理しておくと,供述が安定します。

第2 主尋問と反対尋問に共通する留意点

1 質問に対してははっきり答える

証人尋問・当事者尋問は,一問一答で進むのが原則です。民事訴訟規則115条1項は「質問は,できる限り,個別的かつ具体的にしなければならない。」と定めており,尋問する側は問いを一つずつ具体的に発します。ですから,聞かれたことには正面から答えてください。もっとも,記憶が曖昧なときは,曖昧であることをそのまま率直に述べて構いません。曖昧なのに断定すると,後で矛盾を突かれます。

2 質問されていないことまで答えない

聞かれてもいない理由や根拠まで先回りして長く話すと,予期しない反対尋問を誘発する危険があります。理由や背景は,必要があれば重ねて質問されますから,まずは質問された範囲で答えれば足ります。

3 質問の趣旨が分からないときは聞き直す

質問の趣旨がよく理解できなかったときや,聞き逃したときは,分からないまま答えないでください。「質問の趣旨をもう一度お願いします」と述べて確認し,理解してから答えます。

4 図面の作成・記入を求められることがある

民事訴訟規則119条は「裁判長は,必要があると認めるときは,証人に文字の筆記その他の必要な行為をさせることができる。」と定めています。不動産の占有状況や現況,交通事故での車両の動きなどは,言葉で説明するより図で示すほうが正確なため,その場で図を書いたり,示された図に書き込んだりを求められることがあります。落ち着いて,分かる範囲で図示すれば結構です。

第3 反対尋問で特に気をつけること

1 答えられないことは率直に述べてよい

質問されたからといって,必ず何かを答えなければならないわけではありません。覚えていないこと,知らないことは,その旨を率直に答えれば足ります。日時などの細部を思い出せないときは「細かい点は思い出せませんが,おおむね○○だったと思います」,資料を確認しないと分からないときは「資料を見ないと分かりません」と答えれば構いません。

2 想像で答えない

何か答えないと格好がつかない,少しでも多く語って協力したい,という気持ちから,想像を交えて答える人がいます。しかし,記憶にないことを推測で埋めると,かえって供述全体の信用性を損ないます。分からないことは分からないと述べ,想像で補わないでください。

3 挑発に乗らず,同じ質問には同じ答えを繰り返す

あえて証人を怒らせるのも,反対尋問の常套手段の一つです。挑発に乗って冷静を失うと,述べるべき事実を述べ落としたり,余計なことを口にしたり,事実と違うことを言ってしまう危険が高まります。落ち着いて対応してください。

また,聞き方を変えて同じことを何度も質問されても,同じ答えを繰り返せば足ります。民事訴訟規則115条2項3号は「既にした質問と重複する質問」を原則として禁じ(同項ただし書は正当な理由がある場合を除きます),裁判長は違反する質問を制限できます(同条3項)。ですから「先ほどお答えしたとおりです」と述べても差し支えありません。

4 文書を示されたら,読んでから答える

文書を示して質問されたときは,すぐに答える必要はありません。文書をじっくり読んで理解したうえで,質問に対する回答をしてください。

5 当事者との利害関係を問われることがある

訴訟代理人と事前に打ち合わせたか,当事者本人とどのような経済的関係にあるか,といった点を,相手方の代理人や裁判官から尋ねられることがあります。隠す必要はなく,率直に答えれば結構です。民事訴訟規則85条が「当事者は,主張及び立証を尽くすため,あらかじめ,証人その他の証拠について事実関係を詳細に調査しなければならない。」と定めているとおり,当事者が証人と事前に事実関係を確認すること自体は,手続上むしろ当然に予定されているからです。

6 主尋問と反対尋問で態度を変えない

主尋問では穏やかなのに,反対尋問になると身構えて口が重くなる,というように態度を変えないでください。どちらの尋問でも真摯かつ誠実に対応するほうが,裁判所の受ける印象はよくなります。

第4 証人の態度と供述の信用性

反対尋問を前にした証人が最も気にするのは「うまく話せなかったら,嘘だと思われないか」という点です。しかし,声が震える,冷や汗をかく,目を逸らす,言葉に詰まる――そうした態度は,供述の信用性とはほとんど関係がありません。証人の多くは一生に一度法廷に立つかどうかであり,厳かな法廷で裁判官に見下ろされれば緊張するのが当たり前だからです。

この点は実務家も同様に指摘しています。中村直人『訴訟の心得』(中央経済社,2015年)94頁は,「態度が堂々としていたかどうかで証人の信用性など測れない」とし,態度を理由に信用性を判断しても控訴審の裁判官には理解されない,と述べています。ですから,態度で評価されるのではないかと過度に身構える必要はありません。落ち着いて,記憶のとおりに述べれば足ります。

第5 反対尋問をする側から見た一般的な注意点

証人・当事者の側でも,反対尋問がどのような狙いで組み立てられるかを知っておくと,落ち着いて対応しやすくなります。反対尋問の技術としては,一般に次のような点が挙げられます。

  1. テンポを速くし,証人に考える時間を与えず,矛盾する証言を引き出そうとする。
  2. 友好的な態度で油断させる場合と,威圧的に問う場合とを,相手に応じて使い分ける。
  3. 「はい・いいえ」で答えられる形に質問を絞る。
  4. 証言の理由・根拠は,原則として尋ねない。
  5. 行き当たりばったりにせず,準備した筋道に沿って進める。
  6. 予定した時間内で切り上げる。
  7. 全体を薄く突くのではなく,疑わしい一点に集中する(総花的にしない)。
  8. 相手方に異議を出させず,証人に息をつく間を与えない。
  9. 深追いをしない。
  10. うまくいかないときは早めに切り上げて次の質問に移る(「趣旨が伝わりにくかったので次の質問に移ります」といった言い回しを用意しておく)。

その狙いをより端的に整理する見方として,反対尋問の目的は,客観証拠との矛盾を示すこと,供述の変遷を浮かび上がらせること,供述の不自然さ・不合理さを際立たせることの三点にあり,自分に有利な供述を無理に引き出す必要はない,という指摘があります。

もっとも,反対尋問だからといって敵性証人に敵対的に振る舞えばよいわけではなく,むしろ受容と共感を示すほうが証人は語ってくれる,という見方もあります。

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出典

法令

  • 民事訴訟規則(平成8年最高裁判所規則第5号)85条,115条1項・2項3号・3項,119条。条文は裁判所ウェブサイト掲載の民事訴訟規則(PDF)で確認した。

文献

ウェブ資料