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SSBJ基準とは―サステナビリティ開示の対象企業・適用時期・3つの基準と対応手順(AI作成)

第1 SSBJ基準とサステナビリティ開示の全体像

SSBJ基準は,サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が公表した日本のサステナビリティ開示基準である。
投資者等が企業への資源提供に関する意思決定をするために,企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会について,重要性がある情報を開示するための基準である。

金融庁は,企業内容等の開示に関する内閣府令を改正し,東京証券取引所プライム市場の上場会社のうち,平均時価総額が1兆円以上の会社に対し,有価証券報告書等でSSBJ基準に従ったサステナビリティ情報を記載する制度を設けた。
SSBJ基準そのものと,どの会社にいつ法定適用するかを定める開示制度は区別して読む必要がある。

第2 SSBJの3つの基準

SSBJ基準の中核は,サステナビリティ開示ユニバーサル基準である「サステナビリティ開示基準の適用」と,テーマ別基準である「一般開示基準」及び「気候関連開示基準」の3つの基準である。

基準主な役割
サステナビリティ開示基準の適用報告企業,重要性,リスク及び機会の識別,準拠表明,報告時期等の共通事項を定める。
一般開示基準サステナビリティ関連のリスク及び機会について,ガバナンス,戦略,リスク管理,指標及び目標の開示を定める。
気候関連開示基準気候関連のリスク及び機会について,ガバナンス,戦略,リスク管理,指標及び目標の開示を定める。

3基準は2025年3月5日に公表され,2026年3月13日に改正された。
このほか,2026年6月11日にはサステナビリティ開示実務対応基準第1号(温対法のSHK制度による温室効果ガス排出を用いる場合の開示)が公表され,2026年9月15日の告示改正により,開示府令上のサステナビリティ開示基準に指定された。
適用時には,SSBJのサステナビリティ開示基準一覧で現行版を確認する必要がある。

第3 適用対象企業と適用時期

SSBJ基準は,自ら強制適用対象を定めるものではない。
任意でSSBJ基準に従った開示を行う場合,2025年3月5日以後に終了する年次報告期間から2025年公表基準を適用できる。
2026年改正基準は,2027年1月1日以後開始する年次報告期間から適用され,2025年12月11日以後に終了する年次報告期間から早期適用できる。
これに対し,法令に基づく義務適用と早期適用は,金融庁の開示制度が定める対象会社と事業年度に従う。

1 平均時価総額が3兆円以上の会社

東京証券取引所プライム市場の上場会社のうち,2026年3月31日以後に終了する事業年度の末日を基準として算定した平均時価総額が3兆円以上の会社は,2027年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書等から適用対象となる。
3月決算会社では,2027年3月期からの適用である。

2 平均時価総額が1兆円以上3兆円未満の会社

平均時価総額が1兆円以上3兆円未満のプライム市場上場会社は,2028年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書等から適用対象となる。
3月決算会社では,2028年3月期からの適用である。

3 平均時価総額が1兆円未満の会社

2026年2月20日に公布・施行された開示府令の義務対象は,平均時価総額が1兆円以上のプライム市場上場会社である。
もっとも,金融審議会のワーキング・グループ報告(2026年1月8日)は,時価総額1兆円未満5,000億円以上の会社について2029年3月期からの適用と翌年からの第三者保証の導入を適当とし,5,000億円未満の会社については引き続き検討するとしている。
これらは現行の開示府令の義務対象とは区別して読む必要があり,最新の府令及び金融庁発表を確認する必要がある。
義務対象外の会社も,開示府令19条の9第2項により,SSBJ基準に従って記載することができる。

区分3月決算会社の適用開始現行制度上の位置付け
3兆円以上2027年3月期開示府令附則2条1項の括弧書きにより1年前倒し
1兆円以上3兆円未満2028年3月期開示府令附則2条1項の原則的な適用時期
1兆円未満5,000億円以上2029年3月期(予定)金融審議会のワーキング・グループ報告が示す方針。現行の開示府令の義務対象には含まれない。
5,000億円未満未定同報告は引き続き検討するとしている。現行の義務対象外。

第4 5年平均時価総額の判定方法

平均時価総額は,有価証券報告書等の対象事業年度の前事業年度末日と,その前4事業年度末日における時価総額の平均値で判定する。
有価証券報告書等の記載対象となる事業年度の末日時点でプライム市場に上場している必要があるが,過去の算定期間中の市場区分は,時価総額を算定できればプライム市場に限られない。
判定は事業年度ごとに行うため,平均時価総額が1兆円を下回ると,その事業年度について適用義務はなくなる。

上場日以後,直前事業年度を除いて5事業年度の末日を経過していない会社は,前事業年度末日までに経過した事業年度の各末日における時価総額の平均値を用いる。
単年度末の時価総額だけで適用の有無を判断せず,算定対象日,株価,発行済株式数及び市場区分を記録して検算することが重要である。

第5 何を開示するか

一般開示基準と気候関連開示基準は,次の4つのコア・コンテンツを軸に開示を求める。

① ガバナンス―取締役会等の監督と経営者の役割・統制を説明する。
② 戦略―リスク及び機会がビジネス・モデル,バリュー・チェーン,意思決定,財務状態等へ与える影響を説明する。
③ リスク管理―リスク及び機会を識別,評価,優先順位付けし,モニタリングするプロセスを説明する。
④ 指標及び目標―企業が用いる指標,目標,実績及び進捗を説明する。

4項目を独立した作文として作るのではなく,取締役会資料,リスク管理台帳,事業計画,財務情報及び算定データが相互に整合するように作成する必要がある。

第6 重要性とリスク・機会の識別

SSBJ基準は,すべての環境・社会課題を一律に開示する基準ではない。
まず,短期,中期又は長期にわたり,企業のキャッシュ・フロー,ファイナンスへのアクセス又は資本コストに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別する。

次に,情報を省略,誤表示又は不明瞭にした場合に,主要な利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込み得るかという観点から,情報の重要性を判断する。
基準に項目があるという理由だけで機械的に全文を記載することも,定量化できないという理由だけで除外することも適切でない。

人権,人的資本,生物多様性,サプライチェーン等の論点も,企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るリスク又は機会に該当し,かつ情報に重要性がある場合には,検討対象となり得る。
企業の人権デュー・ディリジェンスとは―人権方針,リスク特定,サプライチェーン調査,救済及び情報開示も参照されたい。

第7 二段階開示と初年度対応

SSBJ基準の適用開始年度とその翌年度については,対象となるサステナビリティ情報を有価証券報告書に記載せず,翌期の半期報告書の提出期限までに,その情報を記載した訂正報告書を提出する二段階開示が認められる。

二段階開示を使う場合,1段階目の有価証券報告書には,適用する開示府令の条項の別,二段階開示によること及び訂正報告書を提出する旨等を記載する。
SSBJ基準への準拠表明は,すべての定めに準拠している場合にのみ可能であり,1段階目で全事項を開示しないときは,2段階目の訂正報告書で行うことになると考えられる。
単なる提出延期ではなく,初回提出,追加情報の作成,内部確認(第三者保証の導入方針を踏まえた準備を含む。)及び訂正報告書の提出までを一つの工程として管理する。

第8 企業の対応手順

1 適用対象と初年度を判定する

市場区分,決算期,5年平均時価総額及び経過措置を確認し,適用初年度を取締役会,経理,IR,サステナビリティ,法務及び内部監査で共有する。

2 現状との差を調べる

有価証券報告書,統合報告書,コーポレート・ガバナンス報告書,ウェブサイト及び社内資料を4つのコア・コンテンツに対応付ける。
既存の任意開示があることと,SSBJ基準に準拠していることは同じではない。

3 責任者・証拠・統制を決める

開示項目ごとに,データの所有部署,算定方法,証拠,レビュー担当,承認者及び更新時期を定める。
将来情報及びスコープ3温室効果ガス排出に関する定量情報は,推論過程と社内の開示手続も説明できるようにする。

4 予行作成と整合確認をする

本番年度の前に試作し,財務諸表,事業計画,リスク管理資料及び他の対外開示との整合を確認する。
株主総会で質問を受けることもあるため,株主総会の想定問答の作り方―質問例・回答例と根拠資料のそろえ方も参照されたい。

第9 コーポレートガバナンス・コード等との関係

コーポレート・ガバナンス報告書のコンプライ・オア・エクスプレインと,有価証券報告書におけるSSBJ基準に従ったサステナビリティ情報の記載は,根拠,対象会社及び提出書類が異なる。
片方の記載をそのまま転記するのではなく,内容の整合と役割の違いを確認する。

2026年改訂コードと報告書対応については,2026年改訂コーポレートガバナンス・コード-変更点・適用日・2027年7月末までの報告書対応を参照されたい。

第10 SSBJ基準についてよくある質問

1 SSBJの3つの基準は何ですか

「サステナビリティ開示基準の適用」,「一般開示基準」及び「気候関連開示基準」である。
これらを共通事項,一般的なサステナビリティ開示,気候開示という役割に分けて適用する。

2 SSBJ基準はいつから適用されますか

任意適用と法定適用を分けて確認する。
任意に2025年公表基準を用いる場合は2025年3月5日以後に終了する年次報告期間から適用できる。
法定適用は,3月決算のプライム市場上場会社では,5年平均時価総額が3兆円以上なら2027年3月期,1兆円以上3兆円未満なら2028年3月期からである。

3 SSBJ基準への対応は何から始めますか

市場区分,決算期及び5年平均時価総額から適用初年度を確定し,既存開示と4つのコア・コンテンツとの差を調べる。
その上で,データの所有者,算定方法,証拠,内部統制,承認及び提出日程を定める。

4 SSBJ基準はいつから義務化されますか

一律の日から全上場会社に義務化される制度ではない。
現行制度では,プライム市場上場会社のうち平均時価総額が1兆円以上の会社が段階的に対象となる。
1兆円未満5,000億円以上の会社については2029年3月期からの適用が予定されているが,現行の開示府令の義務対象とは区別して確認する必要がある。

第11 出典・参考資料

① サステナビリティ基準委員会「サステナビリティ開示基準」
② サステナビリティ基準委員会「SSBJハンドブック総覧」
③ 金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について」(2026年2月20日)
④ 金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令第十九条の九第五項に規定するサステナビリティ開示基準を指定する件の一部を改正する件」の公布及びパブリックコメントの結果について」(2026年5月19日)
⑤ 金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令第十九条の九第五項に規定するサステナビリティ開示基準を指定する件の一部を改正する件」の公布及びパブリックコメントの結果について」(2026年9月15日)
⑥ 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ報告」(2026年1月8日)