その他裁判所関係

最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿

目次
1 最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿
2 裁判官以外の裁判所職員が就任している最高裁判所事務総局の局課長ポスト
3 法令上は原則として,裁判所事務官又は裁判所技官が司法行政を担当することになっているポスト
4 最高裁判所事務総局のポストに裁判官が就任している理由
5 最高裁判所事務総局の局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと
6 関連記事その他

1 最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿
・ 令和 6年 9月11日現在の名簿
・ 令和 5年 9月 1日現在の名簿
・ 令和 4年 9月 2日現在の名簿
・ 令和 3年 9月 3日現在の名簿
・ 令和 2年 9月 1日現在の名簿
・ 令和 元年10月 2日現在の名簿
 平成31年 1月 1日現在の名簿
・ 平成30年 1月17日現在の名簿
 平成29年 1月 1日現在の名簿
・ 平成28年 1月 1日現在の名簿


2 裁判官以外の裁判所職員が就任している最高裁判所事務総局の局課長ポスト
・ 平成31年1月1日現在,裁判官以外の裁判所職員が就任している最高裁判所事務総局の局課長ポストは以下のとおりです。
(1) 審議官1人
→ 平成30年7月1日に増設されたポストです。
(2) 秘書課
→ 参事官2人
(3) 情報政策課
→ 参事官1人
(4) 総務局
→ 参事官1人(人事局及び経理局兼任)
(5) 人事局
→ 能率課長兼公平課長,職員管理官兼参事官1人,参事官1人
(6) 経理局
→ 営繕課長,用度課長,監査課長,管理課長,厚生管理官,参事官1人
(7) 民事局
→ 参事官1人
(8) 刑事局
→ (なし。)
(9) 行政局
→ (なし。)
(10) 家庭局
→  家庭審議官,第三課長


3 法令上は原則として,裁判所事務官又は裁判所技官が司法行政を担当することになっているポスト
(1) 以下のポストの場合,法令上は原則として,裁判所事務官又は裁判所技官が司法行政を担当することになっています。
① 最高裁判所事務総長:裁判所法53条
→ 「第四編 裁判所の職員及び司法修習生」の「第二章 裁判官以外の裁判所の職員」で定められています。
② 最高裁判所事務次長:最高裁判所事務総局規則3条1項
③ 最高裁判所事務総局審議官:最高裁判所事務総局規則3条の2第1項
④ 最高裁判所事務局家庭審議官:最高裁判所事務総局規則3条の3第1項
⑤ 最高裁判所事務総局の局長及び課長:最高裁判所事務総局規則4条1項
⑥ 最高裁判所事務総局の局の課長:最高裁判所事務総局規則5条1項
⑦ 最高裁判所事務総局参事官:最高裁判所事務総局規則6条の2第2項
⑧ 最高裁判所事務総局の局付及び課付:最高裁判所事務総局規則7条2項
⑨ 最高裁判所図書館長:裁判所法56条の4
(2)ア 最高裁判所事務総長は常に裁判所事務官です(平成30年度(最情)答申第83号(平成31年3月15日答申)参照)。
イ 司法行政上の職務に関する規則(昭和25年1月17日最高裁判所規則第3号)1項に基づき,最高裁判所事務次長(ただし,非常置ポストです。)及び最高裁判所審議官2人のうちの1人,最高裁判所事務総局の局長,最高裁判所事務総局の課長(秘書課長,広報課長及び情報政策課長のことです。)は判事を以て充てられていますし,最高裁判所事務総局の局の課長及び最高裁判所事務総局参事官は判事を以て充てられているポストがありますし,最高裁判所事務総局の局付及び課付は判事補を以て充てられています。


4 最高裁判所事務総局のポストに裁判官が就任している理由
・ 12期の金谷利廣最高裁判所総務局長は,平成3年6月12日の参議院決算委員会において以下の答弁をしています。
① 現在、最高裁判所の事務総局で司法行政事務に携わっております裁判官の数は四十四名でございます。
② 法律の根拠ではございませんが、最高裁判所の規則といたしまして、司法行政上の職務に関する規則というのがございまして、これに基づきまして裁判官会議で裁判官に充て得る司法行政関係の職を指定しておる、そういうことが根拠でございます。
③ 最高裁判所の事務総局でやっております仕事は司法行政事務でございますので、その意味では、裁判官の資格がなければできないというものではないわけでございます。
 しかし、実質的に見ますと、事務総局の方では、例えば民事、刑事あるいは私どもが属しております総務局におきましても、一般規則というそういう規則制定に関しましてたたき台的な案をつくるという仕事がございます。こういう規則立案のような仕事につきましては法律知識を要しますし、そのほか下級裁判所の裁判官ができるだけ仕事のしやすいようにというような配慮から、例えば執務に参考になる手引をつくる、あるいは執務資料をつくる、そういったもろもろの裁判官が使いやすい資料をつくるというような観点からまいりますと、やはり実地に裁判実務を経験した者、そういう者の方がよりいい資料をつくれる、あるいは少し言葉が言い過ぎになるかもしれませんが、やはり裁判官でなければなかなかつくりがたいという資料もございます。
 そのほか予算にいたしましても、建物にいたしましても、それぞれ裁判事務に関係しますものでございますので、全員が裁判官資格である必要はないんですが、ごく少数、やはり裁判官をもって充てなきゃならないという必要性は非常に高うございます。

5 最高裁判所事務総局の局課長は襲撃の対象となるおそれが高いこと
・ 令和元年6月13日付の理由説明書には以下の記載があります。
    最高裁判所は,我が国唯一の最上級裁判所として裁判手続及び司法行政を行う機関であり,最高裁判所判事や事務総局の各局課館長は,裁判所の重大な職務を担う要人として,襲撃の対象となるおそれが高く,その重大な職務が全うされるように,最高裁判所の庁舎全体に極めて高度なセキュリティを確保する必要がある。そのため,最高裁判所では,各門扉に警備員を配し,一般的に公開されている法廷等の部分を除き,許可のない者の入構を禁止している。
    この点,本件対象文書中,原判断において不開示とした部分は,各門における入構方法に関する具体的な運用が記載されており, この情報を公にすると警備レベルの低下を招くことになり,警備事務の適正な遂行に支障を及ぼすことになるから, 当該部分は,行政機関情報公開法第5条第6号に定める不開示情報に相当する。
   よって,原判断は相当である。


6 関連記事その他
(1) 「裁判官とは何者か?-その実像と虚像との間から見えるもの-」(講演者は24期の千葉勝美 元最高裁判所判事)には以下の記載があります(リンク先のPDF17頁)。
    最高裁事務総局での経験も得がたい。対国会・法務委員会、対行政府庁との対応、法制度の制定(法務省と協力して仕上げる法律改正等、最高裁規則、通達等)の苦労と喜びを味うことができる。アイデアマンは歓迎される。自由な上下関係。従事する期間は限定されており、裁判とは異なる頭の使い方も楽しい。
(2) 現代新書HPの「『絶望の裁判所』著:瀬木比呂志—『絶望の裁判所』の裏側」(2014年3月9日付)には以下の記載があります。
    そういう人物(山中注:最高裁判所事務総局系の司法行政エリートと呼ばれる人々のこと。)が裁判長を務める裁判部における日常的な話題の最たるものは人事であり、「自分の人事ならいざ知らず、明けても暮れても、よくも飽きないで、裁判所トップを始めとする他人の人事について、うわさ話や予想ばかりしていられるものだ」と、そうした空気になじめない陪席裁判官から愚痴を聞いた経験は何回もある。『司法大観』という名称の、七、八年に一度くらい出る、裁判官や検察官の写真に添えて正確かつ詳細なその職歴を記した書物が彼らのバイブルであり、私は、それを眺めるのが何よりの趣味だという裁判官にさえ会ったことがある。

(3)ア 最高裁判所刑事局長は常に最高裁判所図書館長を兼務していますところ,日本図書館協会HPに載ってある「図書館の自由に関する宣言」の前文には以下の記載があります。
③ 図書館は、権力の介入または社会的圧力に左右されることなく、自らの責任にもとづき、図書館間の相互協力をふくむ図書館の総力をあげて、収集した資料と整備された施設を国民の利用に供するものである。
⑤ すべての国民は、図書館利用に公平な権利をもっており、人種、信条、性別、年齢やそのおかれている条件等によっていかなる差別もあってはならない。
 外国人も、その権利は保障される。
イ 法律関係図書館連絡懇談会は昭和30年に発足し,同年に法律関係資料連絡会に,昭和52年に現在の法律図書館連絡会に改称しましたところ,発足時の会員は,国立国会図書館調査及び立法調査局法律政治図書館,法務図書館,最高裁判所図書館及び内閣法制局図書館の4館でした(法律図書館連絡会法図連通信第52号6頁)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所第一小法廷の裁判官(着任順)
・ 最高裁判所第二小法廷の裁判官(着任順)
・ 最高裁判所第三小法廷の裁判官(着任順)
・ 高裁長官人事のスケジュール
 幹部裁判官の定年予定日
・ 最高裁判所裁判官会議の議事録
・ 最高裁判所事務総局会議の議事録
・ 最高裁判所事務総局の組織に関する法令・通達
・ 司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長
・ 親任式及び認証官任命式
・ 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
・ 最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿
・ 裁判所の指定職職員
・ 裁判所の指定職職員の名簿(一般職)

裁判所職員の再就職

目次
1 総論
2 裁判所職員の再就職状況が書いてある文書
3 裁判官の場合,在職中の求職は規制されていないと思われること
4 関連記事その他

1 総論
・ 裁判所職員臨時措置法1項に基づき,裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員については,国家公務員法が準用されています。
   そのため,裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の再就職については,退職管理(離職後の就職に関する規制,再就職等監視委員会及び雑則)について定める国家公務員法106条の2ないし106条の27が適用されます。

2 裁判所職員の再就職状況が書いてある文書
(1) 最高裁判所は,平成23年度以降,裁判官以外の裁判所職員の再就職状況を,裁判所HPの「退職管理・再就職等規制」において公表しています(裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の退職管理に関する規則30条参照)ところ,再就職状況を基準としているため,年度が1年早くなっています。
(2)ア 裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員の再就職状況が書いてある文書を以下のとおり掲載しています(ファイル名は「裁判所職員の再就職状況が書いてある文書(令和3年度分)」といったものです。)。
・ 令和 5年度の再就職状況
→ 裁判所職員の再就職状況の公表管理職職員であった者が再就職した場合の届出及び在職中に再就職の約束をした場合の届出があります。
・ 令和 4年度の再就職状況
→ 裁判所職員の再就職状況の公表管理職職員であった者が再就職した場合の届出及び在職中に再就職の約束をした場合の届出があります。
・ 令和 3年度の再就職状況
→ 裁判所職員の再就職状況の公表管理職職員であった者が再就職した場合の届出及び在職中に再就職の約束をした場合の届出があります。
・ 令和 2年度の再就職状況
→ 裁判所職員の再就職状況の公表管理職職員であった者が再就職した場合の届出及び在職中に再就職の約束をした場合の届出があります。
・ 令和 元年度の再就職状況
→ 裁判所職員の再就職状況の公表管理職職員であった者が再就職した場合の届出及び在職中に再就職の約束をした場合の届出があります。
・ 平成30年度の再就職状況
→ 裁判所職員の再就職状況の公表管理職職員であった者が再就職した場合の届出及び在職中に再就職の約束をした場合の届出があります。
・ 平成29年度の再就職状況
→ 裁判所職員の再就職状況の公表管理職職員であった者が再就職した場合の届出及び在職中に再就職の約束をした場合の届出があります。
・ 平成28年度の再就職状況
→ 裁判所職員の再就職状況の公表管理職職員であった者が再就職した場合の届出及び在職中に再就職の約束をした場合の届出があります。
・ 平成27年度の再就職状況
→ 裁判所職員の再就職状況の公表管理職職員であった者が再就職した場合の届出及び在職中に再就職の約束をした場合の届出があります。
イ 裁判官及び裁判官の秘書官の再就職状況については公表されていません。

3 裁判官の場合,在職中の求職は規制されていないと思われること
(1) 平成29年5月19日付の司法行政文書不開示通知書によれば,裁判官の場合,在職中の求職がどのように規制されているかが分かる文書は存在しません。
   なぜなら,裁判官については,国家公務員法の在職中の求職の規制(同法106条の3)が適用されない平成29年6月2日付の,最高裁判所事務総長の理由説明書参照)からです。
(2) 平成29年5月19日付の司法行政文書不開示通知書によれば,最高裁判所事務総局が,裁判官の再就職依頼及び情報提供(国家公務員法106条の2参照)をすることが禁止されているかどうかが分かる文書は存在しません。

4 関連記事その他
(1) 国家公務員法に基づく退職管理については,内閣官房HPの「国家公務員の退職管理・再就職等規制について」が分かりやすいです。
(2) 平成29年6月15日,再就職規制に関する全省庁調査の結果が発表されました(内閣官房内閣人事局HPの「再就職規制に関する全省庁調査について(報告書)」参照)。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官の退官情報
 裁判官の早期退職
・ 50歳以上の裁判官の依願退官の情報
 公証人の任命状況(2019年5月1日以降)

判事補海外留学研究員選考要領(平成28年11月現在のもの)

判事補海外留学研究員の選考について(平成28年11月22日付の最高裁判所人事局長の通知)によれば,判事補海外留学研究員選考要領は以下のとおりです。

第1 募集人員,研究内容等
1 募集人員 
   40人程度
2 派遣先及び研究内容
(1)最高裁判所が直接実施する留学制度(以下「裁判所の留学制度」という。)
ア 大学等への派遣 
(ア) 近年の主な派遣先 
イリノイ大学(米国・イリノイ州シャンペーン)
ヴァンダービルト大学(米国・テネシー州ナッシュビル)
カリフォルニア大学デービス校(米国・カリフォルニア州デービス)
サザンメソジスト大学(米国・テキサス州ダラス)
ジョージタウン大学(米国・ワシントンD.C.)
ジョージワシントン大学(米国・ワシントンD.C.)
スタンフォード大学(米国・カリフォルニア州スタンフォード)
デューク大学(米国・ノースカロライナ州ダーラム)
ノートルデイム大学(米国・インディアナ州サウスベンド)
ワシントン大学(米国・ワシントン州シアトル)
ワシントン大学セントルイス校(米国・ミズーリ州セントルイス)
ウォリック大学(英国(イングランド)・ウォリックシャー州コヴェントリー)
カーディフ大学(英国(ウエールズ)・カーディフ)
レスター大学(英国(イングランド)・レスターシャー州レスター)
トロント大学(カナダ・オンタリオ州トロント)
ブリティッシュコロンビア大学(カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)
メルボルン大学(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン)
シドニー大学(オーストラリア・ニューサウスウェールズ州シドニー)
ミュンヘン知的財産法センター(ドイツ・バイェルン州ミュンヘン(ただし,英語による受験者を派遣))
ルーヴェン大学(ベルギー・フレミッシュ=ブラバント州ルーヴェン(ただし,英語による受験者を派遣))
(イ) 派遣期間
   平成30年7月頃から平成31年6月頃までの1年間(ミュンヘン知的財産法センターの場合は,平成30年9月頃から平成31年8月頃までの1年間)
(ウ) 研究内容 
   研究員は, 1年間の派遣期間中,特定の研究テーマにつき大学等において大学院修士課程に相当する研究を行うとともに(ミュンヘン知的財産法センターにおいては修士号を取得することも可能である。),裁判所等において司法運営の実際の調査及び研究をする。
イ 裁判所への派遣 
(ア) 近年の主な派遣先 
米国の次の裁判所等
ニュージャージー州トレントン
ミシガン州デトロイト
ジョージア州アトランタ
アリゾナ州フェニックス
ヴァージニア州ウィリアムズバーグ
英国の裁判所
ドイツの裁判所
フランスの裁判所
(イ) 派遣期間 
   平成30年7月頃から平成31年6月頃までの1年間
(ウ) 研究内容 
   研究員は, 1年間の派遣期間中,裁判所等において司法運営の実際の調査及び研究をする(派遣先によっては,大学における研究も併せて行うことが可能である。)。
(2) 人事院の行政官長期在外研究員制度による留学制度(以下「人事院の留学制度」という。)
ア 派遣先 
   派遣予定者各人が希望する,米国,英国,カナダ,オーストラリア, ドイツ及びフランスの大学院等のうち,受入れの通知があった大学院等
イ 派遣期間
   平成31年7月頃から平成33年6月頃までの2年間(英国及びドイツの場合は,平成31年8月頃から平成33年7月頃までの2年間)
ウ 研究内容
   研究員は,2年間の派遣期間中,特定の研究テーマにつき大学院等において研究を行い,修士号を取得するとともに,裁判所等において司法運営の実際の調査及び研究をする。
エ 本選考に合格したのち,人事院の行う選抜審査に合格する必要がある。
3 研究の費用等 
   渡航のための往復旅費,相当額の滞在費及び授業料等は,最高裁判所から支給される(本留学制度には,国家公務員の留学費用の償還に関する法律(平成18年法律第70号)2条2項に規定する留学に該当するものが含まれる。)。
4 留学帰国後の異動方針等 
   留学からの帰国後は,従前の異動条件にかかわらず, 「最高裁指定庁」の異動条件が付されたものとして扱われる。また,できる限り全ての判事補が2年程度の外部経験をすることが望ましいことから,留学をした場合であっても, 別コースの外部経験に積極的に取り組むことが期待される。特に,語学力を必要とする行政官庁や在外公館等での外部経験が推奨される。
第2 応募資格
1 裁判所の留学制度による派遣
   平成21年9月から平成26年12月までの間に司法修習生の修習を終了した判事補。ただし,任官後に海外留学の経験を有する者及び派遣により事務に支障の生ずる者を除く。
2 人事院の留学制度による派遣 
   平成27年12月に司法修習生の修習を終了した判事補。ただし,派遣により事務に支障の生ずる者を除く。
第3 応募方法 
   応募しようとする者は,別紙様式による応募者調書を平成28年12月13日(火)までに所属庁の長に提出する。
   なお,既に受験済みの後記第4の2の(1)の語学試験の試験結果成績表があれば,あわせて提出する。
第4 選考方法
1 選考基準 
   本留学制度の趣旨等にかんがみ,語学力を始め,平素の執務状況並びに応募者から提出された研究テーマ及び小論文の内容を選考の資料とした上,海外での生活経験を有しない判事補にできるだけその機会を付与するなどの観点も総合的に考慮して,選考する。
   選考は,書面による第1次選考を行って,これに合格した者の中から面接を行い,留学後の勤務継続意思の確認等を経た上で最終的な合格判定をする。
2 選考資料の提出
(1) 語学試験の試験結果成績表
   応募者は,派遣を希望する国(複数選択可)の公用語(英語,仏語及び独語に限る。)について,次の外部機関が実施した語学試験(平成23年3月1日以降に実施されたものに限る。)の試験結果成績表原本を,平成29年2月17日(金)までに所属庁の長に提出する(受付事務担当者は,提出された試験結果成績表の写しを作成し,試験結果成績表原本は応募者に返還する。)。ただし,外部機関の試験日程等の関係でやむを得ない場合には,平成29年3月23日(木)まで追完を認めるほか,語学力向上の観点から,先に提出したものに加えて,同日まで追加提出することも差し支えない。なお,応募者調書に試験結果成績表を添付した者は,改めて試験結果成績表を提出する必要はないが,複数の試験結果成績表の提出を妨げるものではない。
   おって,英語圏(ミュンヘン知的財産法センターを含む。)への派遣の場合,本選考に合格した後,人事院又は各派遣先に対し,TOEFL又はIELTSの一定点数以上の成績を提出することが必要となることがあるので,語学試験の選択に当たり参考とされたい。
ア 英語
TOEFL
TOE IC
IELTS
イ 独語
欧州語学力評価基準がB1以上のゲーテ・インスティトゥートの検定試験
独検(ドイツ語技能検定試験)4級以上
ウ  仏語
仏検(実用フランス語技能検定)3級以上
TEF(パリ商工会議所フランス語能力認定試験)
(2) 応募者は,小論文(日本語)を作成し,平成29年2月22日(水)までに提出する(テーマ,様式等については応募者に対して別途通知する。)。
3 選考結果の通知 
   第1次選考に合格した者に対しては,平成29年9月上旬頃までに,その旨を通知する予定である。
   なお,その後の事情により,若干名の追加合格が通知される場合がある。
4 その他
(1) 昨年度募集の裁判所の留学制度の派遣に応募し,その合否が未確定の者も,第2の応募資格を有していれば応募可能であるので,応募を希望する場合は,改めて第3の応募方法に従って応募者調書等を提出する。
   なお,昨年度募集の人事院の留学制度の派遣に応募し,選考の結果,平成29年に行われる人事院の選抜審査の受験指名を受けた者は,今年度募集の裁判所の留学制度の派遣にも応募したものと取り扱うので,応募者調書,選考資料の提出は不要である(今年度の応募を希望しない場合は,その旨を所属庁の長に申し出る。)。
(2) 応募者調書を提出した後に応募を取りやめる場合は,その旨を速やかに所属庁の長に申し出る。

* 平成29年以降の分については,「判事補の海外留学状況」に掲載しています。

判事補の海外留学状況

目次
1 総論
2 昭和時代の判事補の海外留学に関する説明
3 平成31年3月22日の国会答弁
4 令和3年当時の最高裁判所の説明
5 個別の体験談
6 海外転出者に対するマイナンバーカードの交付(令和6年5月27日開始)
7 留学費用の償還
8 公用文等における日本人の姓名のローマ字表記
9 VPN接続に関するメモ書き
10 関連記事その他

1 総論
(1) 判事補の海外留学状況
ア 以下のとおり,判事補の海外留学状況が分かる文書を掲載しています。
(令和時代)
(令和2年度はなし。)
令和3年度分令和4年度分令和5年度分令和6年度分
(平成時代)
平成 元年度から平成17年度までの分
平成18年度から平成26年度までの分
平成27年度分平成28年度分
→ 平成28年度につき,行政官長期在外研究員の名簿及び判事補海外留学研究員の名簿も掲載しています。
平成29年度分平成30年度分平成31年度分
* 「裁判官海外出張者名簿(令和5年度)」といったファイル名です。
イ 元データは,最高裁判所裁判官会議における配布資料と思います。
(2) 「判事補海外留学研究員の選考について」(最高裁判所人事局長の通知)を以下のとおり掲載しています。
・ 令和 6年 1月25日付のもの
・ 令和 5年 1月27日付のもの
・ 令和 4年 1月 7日付のもの
→ 令和 4年 6月17日付の追加募集もあります。
・ 令和 2年12月11日付のもの
・ 令和 元年11月19日付のもの
・ 平成30年11月20日付のもの
・ 平成29年11月21日付のもの
・ 平成28年11月22日付のもの
* 「判事補海外留学研究員の選考について(令和6年1月25日付の最高裁判所人事局長通知)」といったファイル名です。
(3) 最高裁判所が運営している判事補在外研究に基づく留学の場合,派遣期間は1年であり,派遣人数は毎年30人ぐらいであり,人事院が運営している行政官長期在外研究に基づく留学の場合,派遣期間は2年であり,派遣人数は毎年10名ぐらいです(東京大学法科大学院ローレビュー12号(2017年12月号)の「特集 海外ロースクール事情」における56期の内田哲也裁判官の発言参照)。
(4) Lawyer’s lifeブログ「渉外弁護士の留学-裁判官や検察官との比較-」及び「裁判官の留学と検察官の留学」がある程度は参考になります。細かいことは全く分からないみたいですが。


2 昭和時代の判事補の海外留学に関する説明
・ 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)89頁には以下の記載があります。
    これ(山中注:昭和57年開始の新聞社における研修のほか,民間企業,行政官庁及び在外公館における部外研修)と合わせて充実を期したものに、裁判官の海外留学制度がある。裁判官の海外留学の道は司法研修所の試験合格者による一年間のアメリカ留学と人事院の実施する二年間の政府留学があったが、枠は二、三人と極めて少なかった。
    裁判官は昔から、横文字と活字に弱いなどと冷やかされてきた。多数の裁判官が欧米を実地に見分する機会ができれば、という思いがかねてから胸の内にあった。人事局長になって真っ先に「同期の半数は海外を経験させること」を提案したことがあるが、「留学は勲章」といった古い考え方がまだ一部にあった。昭和四七年から判事補の英、米、独、仏特別留学制度が発足し、現在では年間十数人の枠に拡大された。短期間の視察者を含めれば、年間五〇人を大きく上回る人たちが海外に出向くことになる。「外部の空気に触れる」という点で、成果を生んでいるはずだ。
     留学したり民間企業で研修を受けて、裁判所の外の活気になじんだため弁護士に転職してしまったという例もないではない。残念ではあるが、これも時代の空気を吸収しながら新しい裁判官像を摸索する過程での、試行錯誤の一つではないかと思っている。


3 平成31年3月22日の国会答弁
・ 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成31年3月22日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
    判事補の外部経験のプログラムの一環といたしまして海外留学の制度を設けておりますところ、毎年三十五名ないし四十名程度が、一年又は二年間、海外のロースクールや裁判所等におきまして各国の司法制度等の研究を行っているところでございます。
   ここ十年間の判事補の採用数は平均して約九十人でございますので、毎年、平均いたしますと、約四割の判事補が海外留学しているということになります。


4 令和3年当時の最高裁判所の説明
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)26頁には,「(3) 判事補海外留学研究【要望】」以下の記載があります。
<要求要旨>
    諸外国の制度と比較した上での司法制度改革の必要性が各界から指摘され,我が国の司法制度の全般にわたって幅広い議論が行われてきたが,国際的な経済取引の進展等に伴い,国際的な法律問題を含む事件や外国法が適用される事件を適正・迅速に処理する必要性が高まっており,国際裁判管轄,外国判決・仲裁の執行など,性質上,国際法や外国法の理解が必要となる事件や,国際的な法整備が進んでいる特許権や著作権等の知的財産権に関する事件においては,諸外国の司法事情に通じていることが極めて有効である。
    このように,我が国の司法の在り方を考察し,また我が国における訴訟事件を適正に処理するため,裁判官が外国司法制度及びその運用について実践的かつ高度の知識を身につける必要性と重要性は飛躍的に高まってきている。そのためには,外国の大学において外国法の研究を行ったり,また,外国の裁判所等の司法関係機関において訴訟運営の実情に直接接し,実務的な研究を重ねたりして,外国の司法制度及びその運用に関する正確な知識・理解を修得することが最も有益であり,裁判所にとって緊急の重要課題となっている。
    社会経済活動の複雑化,国際化,価値観の多様化などに伴って,裁判官においては高度な法的知識はもとより,従前にも増して,高い識見,広い視野,柔軟な思考力を備えることが不可欠になってきている。かかる状況を受けて,裁判所としては,重要課題の一つとして,判事補に対する研修の充実,強化に取り組み,原則として,すべての判事補に弁護士職務経験,行政機関,在外公館等での勤務,民間企業等への派遣又は海外留学等の多様な経験を積む機会を与えるべく努めている。
    その中でも,判事補海外留学研究は,外国の法制度・裁判実務に直に触れ,裁判官等をはじめとする法曹実務家や法学者と情報交換・意見交換をする機会等を通じて,判事補が異なる文化や生きた社会事象に接し,幅広い社会経験を得ることができる機会として極めて有意義であることから,判事補の経験多様化方策の重要な柱となっている。
    令和4年度は新規24人,継続25人の派遣に必要な経費を要求する。



5 個別の体験談
(1) 20期判事補であった江田五月の海外留学の体験談(昭和44年7月から昭和45年6月まで,イギリスのオックスフォード大学に留学)が江田五月HPの「出発のためのメモランダム」に載っています。
(2) 現行60期の勝又来未子裁判官の海外留学(1年間,ドイツ・ミュンヘンの知的財産法センターに留学)の体験談が横浜地裁HPの「判事補の研鑽について」(リレーエッセイ「ハマの判事補の1日」(第3回))に載っています。


(3) 新63期の福岡涼裁判官の海外留学の体験談(平成26年7月からの2年間,行政官長期在外研究員として2年間,アメリカに留学)が慶応義塾大学法科大学院HPの「『グローバルに活躍する』第6回 福岡涼君(千葉地方・家庭裁判所)」(平成27年9月17日の記事)に載っています。
(4) アゴスHPの「2011年度合格者からのメッセージ」(筆者は新60期の関洋太 裁判官)には以下の記載があります。
1.留学を志したきっかけ
上司に強く留学を勧められたためです。
その上司からは,「もし希望するとの書面を出さないなら私が勝手に書いて出してしまうぞ」とまでいわれたので,留学を考えるようになりました。
(中略)
3.留学先や志望校はどのように絞っていったか
ロースクールとして著名な業績を残しているか否か,
先輩裁判官を受け入れたことがあるか等を考慮しました。
(5) 裁判所HPの「外部経験制度の利用(その2)」には, 在アメリカ合衆国日本国大使館における66期の関口恒裁判官の経験が書いてあります。
(6) 東北大学HPの「裁判官の学びと職務」(令和5年11月22日に東北大学法科大学院で行われた、法科大学院学生を対象とした47期の井上泰士の講演原稿に大幅に加筆したもの)には以下の記載があります。
明治・大正の世ならいざ知らず、令和時代の現代において、留学によってしか獲得できない知識などほとんど何もないからです。また、渉外法律事務所の弁護士さんと違い、裁判官は、留学によって外国法曹資格の取得が絶対に求められるということもありませんから、留学先で何を勉強するのかは、完全に本人次第です。その意味で、留学によって得た法律知識や資格が裁判官としての職務即ち事件処理に有用であったという記憶はありません。
(7) 「100ヶ月後に退職するキャリア官僚(まとめ)」と題するnoteの記事には以下の記載があります。
100ヶ月後に退職するキャリア官僚(22ヶ月目)
留学選考について人事から電話があった。
「君の留学先はイギリスになりました。撤回・相談は受け付けません。」(ガチャ)
留学に行けることになったのは嬉しい。全員が行けるわけではない留学に自分が選ばれたことについてはありがたいとは思う。
しかし、元々の希望では米国としていて、最終意思確認もなく、背景事情の説明もないまま「決まったら一切の文句は受け付けない」という一方的な宣告には正直がっかりした。辞退すらも受け付けないというのだから。
米国ロースクールを出てNY司法試験を受ける目標はこの時点で潰えた。
退職まで78ヶ月


6 海外転出者に対するマイナンバーカードの交付(令和6年5月27日開始)
(1) 総務省の,住民生活のグローバル化や家族形態の変化に対応する住民基本台帳制度等のあり方に関する研究会最終報告(平成30年8月)には結論として,「マイナンバーカード・電子証明書の海外継続利用については、今後、法務省などの関係省庁と合意が得られることを前提に法制的検討を進めるとともに、具体的な制度設計に着手すべきである。」と記載されていました。
(2)ア デジタル手続法(令和元年5月31日法律第16号)により,国外転出者に対しては令和6年5月30日までに,本籍地市町村を通じてマイナンバーカードを交付することが決定されました。
イ デジタル手続法は,①行政手続オンライン化法,②住民基本台帳法,③公的個人認証法及び④マイナンバー法の改正を柱とするものでした(参議院HPに載ってある「社会全体のデジタル化に向けて― 「デジタル手続法」の成立 ―」参照)。
(3) 令和5年6月9日法律第48号によるマイナンバー法の改正に基づき,令和6年5月30日までに,在外公館でマイナンバーカードの申請や受取等を可能とすることが決定されました。
(4)ア 令和6年5月27日に国外転出者に対するマイナンバーカードの継続利用を開始することが決定されました(デジタル庁HPの「マイナンバー法改正法等の施行日を定める政令が閣議決定されました」参照)。
イ Impress Watchの「マイナンバーカード、海外転出後も継続利用可能に」(2024年4月9日付)には以下の記載があります。
    マイナンバーカードや公的個人認証は、住民票を基礎とする制度だが、住民票は国外提出時に消除される。そのため、これまではマイナンバーカードも利用不可となっていたが、国外に滞在する日本人も約135万人(2017年)と多く、官民手続きのオンライン化により国外転出者においても、確実な本人確認手段のニーズが高まってきた。
(5)ア みんなのデジタル社会HPの「マイナンバーを使って海外送金する際の注意点を解説」には「海外送金サービスを利用する際は、必ずマイナンバーと身分証明書を提示しなければなりません。」と書いてあります。
イ 海外居住後も日本の銀行口座を使いたい場合,①各銀行の非居住者向けサービスを利用する,②代理人を立てる,③住民票を残したままにする(居住者のままにする)といった手段があります(WISE「海外赴任しても使える銀行口座6選!非居住者向けサービス・手数料解説」参照)。


7 留学費用の償還
(1) 裁判官が留学中又はその終了後5年以内に離職した場合,国家公務員の留学費用の償還に関する法律10条・3条に基づき,留学費用相当額の全部又は一部を償還しなければならないこととされています。
(2) 人事院HPの「国家公務員の留学費用の償還等に関する状況」(令和3年8月31日付)には以下の記載があります。
    令和2年度に新たに在外研修又は国内研修に係る費用の償還義務が発生した件数は59件(在外研修が38件、国内研修が21件)であり、令和3年8月1日までに55件が償還を終えています。
    また、留学費用償還制度が創設された平成18年6月19日以降、令和2年度末までに留学を開始した件数の総数は5,920件であり、留学費用の償還義務が発生した件数の総数は416件となっています。


8 公用文等における日本人の姓名のローマ字表記
・ 令和2年1月1日以降,政府の作成する公用文等において日本人の姓名をローマ字により表記する場合,原則として「姓―名」の順で表記されています(首相官邸HPの「公用文等における日本人の姓名のローマ字表記に関する関係府省庁連絡会議」に載ってある「公用文等における日本人の姓名のローマ字表記について 」(令和元年10月25日付の関係府省申合せ)参照)。


9 VPN接続に関するメモ書き
(1) VPN接続には,インターネットVPN,エントリーVPN,IP-VPN及び広域イーサネットがあります(ドコミビジネスHPの「VPN接続とは?仕組みや方法をわかりやすく解説」参照)。
(2) ExpressVPN「2024年駐在や留学の海外在住者にVPNが必要な理由」には海外在住者がVPNを導入すべき6つの理由として以下のものが挙げられています。
① 日本とのつながりを保つ。
② プライバシーの保護
③ バンキングサービスへのアクセス
④ 驚異的な速度
⑤ より安い航空券やお得情報探し
⑥ エンタメやスポーツを楽しむ


10 関連記事その他
(1) 社会保障協定は,①二重加入の防止及び②年金加入期間の通算を目的としており,平成29年8月時点で20か国と協定を署名済みであり,うち17か国分は発効しています(日本年金機構HPの「社会保障協定」参照)。
(2)ア 出入国在留管理庁HPに「出入(帰)国記録に係る開示請求について」が載っています。
イ 同志社大学HPに「ビザ(査証)と在留資格認定証明書(COE)について」が載っています。
(3) 裁判所の中の人ブログ「裁判所職員の海外出張」が載っています。
(4)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 公用旅券及び外交旅券の発給手続きが書いてある文書(令和2年7月27日付の外務省の開示文書)
・ 在外公館の証明事務のマニュアル
・ 外務省研修所の令和2年度第5部研修要綱(令和2年9月の文書)
・ 新/国際捜査共助要請・海外出張マニュアル→検察月報680号(平成25年11月)からの抜粋
イ 以下の記事も参照してください。
・ 諸外国の司法制度
・ 判事補の外部経験の概要
・ 渉外レポート(最高裁判所秘書課渉外連絡室が作成したもの)
・ 裁判官の民間企業長期研修等の名簿






平成17年度から平成30年度までの長官所長会同の資料等

毎年6月開催の長官所長会同の正式名称は「高等裁判所長官・地方裁判所長・家庭裁判所長会同」でありますところ,以下のとおり長官所長会同の資料等を載せています。
「令和元年度以降の長官所長会同の資料及び議事概要」も参照してください。

1 平成17年度ないし平成19年度の長官所長会同の資料(裁判所時報からの抜粋)
(1) 17年度のテーマは以下のとおりでした。
① 司法制度改革を踏まえ,中長期的視野から,裁判所の事務処理体制の整備等司法行政上考慮すべき事項
② 裁判官に相応しい人材を確保するために執るべき方策
③ 裁判員法成立後1年間の準備状況を踏まえ,裁判員制度の円滑な導入に向けて,重点的に取り組むべき事項
(2) 18年度のテーマは以下のとおりでした。
① 新しい司法修習制度の下における修習の在り方
② 裁判員法施行まで3年を切った現段階において,制度の円滑な導入に向け,重点定期に取り組むべき事項
③ 司法制度改革の実施状況・事件動向等を踏まえ,裁判部の事務処理体制整備について司法行政上考慮すべき事項
④ 社会の変化に対応した家庭裁判所の事件処理の在り方
(3) 19年度のテーマは以下のとおりでした。
① 裁判員法施行を約2年度に控え,制度の円滑な導入に向けて重点的に取り組むべき事項
② 判事補の主体的・自立的な成長を支援するために,所長が果たすべき役割について
③ 社会の変化を踏まえ家庭裁判所がその機能を十全に発揮するために司法行政上考慮すべき事項
2 平成20年度長官所長会同の資料及び協議結果概要
・ テーマは以下のとおりでした。
① 裁判員法施行まで1年を切った現段階において,制度の円滑な導入に向けて重点的に取り組むべき事項(長崎地裁,福島地裁)
② 今後事件数が増加するとともに,専門化・複雑化が進んでいくことが予想される民事事件に適切に対処していくために考慮すべき事項(京都地裁)
③ これからの若手裁判官の育成について考慮すべき事項(長野地家裁)
3 平成21年度長官所長会同の資料及び協議結果概要
・ テーマは以下のとおりでした。
① 裁判員制度を適切に運営し,国民の間に着実に定着させていくために,今後重点的に取り組むべき事項(福岡地裁)
② 法曹人口の増加等の構造的要因に基づく将来の民事訴訟の量的・質的変化を見据えて,その適切な処理を図るために,今から検討を始めるべき事項(金沢地裁)
→ 国民の権利意識の鋭敏化,行政等による調整機能の減退といった要因に加え,急速な法曹人口の拡大に伴う積極的な事件の掘り起こしの結果,今後,民事訴訟が量的に拡大することが確実と思われるとのことでした(PDF18頁)。
③ 裁判の第一線を担う職員の職業意識を高め,職場の活性化を図るための方策(宇都宮地裁)
④ 創設60周年を迎えた家庭裁判所の家事事件処理の在り方について検討すべき課題(大阪家裁)
4 平成22年度長官所長会同の資料及び協議結果概要
・ テーマは以下のとおりでした。
① 裁判員法施行後1年が経過した現段階において,裁判員制度の安定的運用を早期に確立し,国民の理解と信頼をより確かなものにするために取り組むべき課題(京都地裁)
② 予測される民事訴訟の将来動向に即して,合理的な訴訟運営を考える上で検討すべき事項(水戸地裁)
→ 平成21年度の長官所長会同において,民事訴訟の今後の動向については,法曹人口の増加,社会・経済情勢の変化等により,民事訴訟は量的に拡大するであろうとの予測が,共通の認識として確認されたそうです(PDF20頁)。
③ 法曹養成制度及び裁判官制度の改革を踏まえた判事補の成長支援の在り方(青森地家裁)
④ 社会の要請に応え得る家事事件の処理に向けて家庭裁判所が克服すべき課題と今後の方策(名古屋家裁)
5 平成23年度長官所長会同の資料及び協議結果概要
・ テーマは以下のとおりでした。
① 非常災害時における司法行政上の対応について(東日本大震災の経験と教訓)
② 裁判員法施行後2年が経過した現段階において,裁判員と裁判官とのより実質的な協働の実現などその適切な運用に向けて取り組むべき課題(千葉地裁)
6 平成24年度長官所長会同の資料及び協議結果概要
・ テーマは以下のとおりでした。
① 3年間の運用の実態を踏まえ,裁判員制度の導入の趣旨に照らし,制度,運用等の面において考慮すべき事項(前橋地裁)
② 裁判の運営を支える官職としての書記官の現状と課題(高松地裁)
③ 家事事件手続法施行の節目に当たり,家庭裁判所が,国民の信頼を強固にし,高まる社会の要請に応えるために取り組むべき課題(福岡家裁)
④ 新任判事補の成長支援について考慮すべき事項(札幌地裁)
7 平成25年度長官所長会同の資料及び議事概要
・   テーマは以下のとおりでした。
① 裁判員法施行後4年間の運用の実態を踏まえ,裁判員制度の導入の趣旨に照らし,より適切な運用に向けて取り組むべき課題について(福岡地裁)
② 裁判の運営を支える官職としての書記官の現状と課題(岡山地裁)
③ 家事事件手続法の下での調停運営における裁判官関与の在り方と今後取り組むべき課題について(名古屋家裁)
④ 民事訴訟の複雑困難化に対応した質の高い判断を実現するとともに,継続的な訴訟運営化以前の要請に応えるために,民事部の機能の活性化及び司法行政上の支援について検討すべき事項(水戸地裁)
8 平成26年度長官所長会同の資料及び議事概要
・   テーマは以下のとおりでした。
① 民事裁判の紛争解決機能を全体として高めるために取り組むべき課題について(札幌地裁)
② 家庭裁判所の機能強化に向けて裁判官がその役割を適切に果たしていくために取り組むべき課題について(千葉家裁)
③ 裁判員法施行後5年を経て裁判運営の経験が蓄積されつつある中で,裁判官と裁判員とのより実質的な協働を実現するために取り組むべき課題について(京都地裁)
④ 若手・中堅裁判官の成長支援について考慮すべき事項(名古屋地裁)
9 平成27年度長官所長会同の資料務総局からの説明及び議事概要
・   テーマは以下のとおりでした。
①   裁判所の紛争解決機能を全体として高めていくための司法行政上の方策について(金沢地裁,広島地裁,横浜家裁,千葉家裁及び松山地裁)
→ サブテーマは,「事件処理の実情及び課題」,「本庁支部間の連携の現状と課題」,及び「裁判所全体として紛争解決機能を高めていくためにどのような司法行政上の方策を講じていくべきか」でした。
② 組織的に対応すべき事項に対する所長の役割(大阪地裁及び熊本地裁)
→ サブテーマは,「日常的な情報伝達,共有について」及び「非常事態の見極めと所長の役割」でした。
10 平成28年度長官所長会同の資料及び議事概要
・   テーマは以下のとおりでした。
① 裁判所の紛争解決機能を全体として高めていくための司法行政上の方策について(新潟地裁,福岡地裁,津地家裁,徳島地家裁,神戸家裁,那覇家裁及び広島地裁)
→ サブテーマは,「事件処理の実情及び課題」,及び「今後,事件処理上の課題について,どのような司法行政上の方策を講じていくべきか。また,裁判所全体として紛争解決機能を高めていくために,どのような司法行政上の方策を講じていくべきか。」でした。
② 組織的に対応すべき事項に対する所長の役割
→ サブテーマは,「非常事態への対応」及び「司法行政事務における日常的な取組~職員の指導等における所長の役割」でした。
11 平成29年度長官所長会同の資料及び議事概要
・ テーマは以下のとおりでした。
① 裁判所の紛争解決機能を全体として高めていくための司法行政上の方策について(横浜地裁,高松地裁,熊本地裁,函館地家裁,大阪家裁及び秋田地家裁)
→ サブテーマは,「事件処理の実情及び課題」,及び「各庁の実情や裁判官の認識に対応して,今後,各分野の課題について,具体的にどのような司法行政上の方策を講じ,所長としてどのような関与をしていくべきか。とりわけ,裁判官の力量向上のために,どのような方策を講じ,所長としてどのような取組をしていくべきか。」でした。
② 組織的に対応すべき事項に対する所長の役割
→ サブテーマは,「情報流通上の課題」及び「日常事務における事務処理の適正化」でした。
12 平成30年度長官所長会同の資料及び議事概要
・ テーマは以下のとおりでした。
① 裁判所の紛争解決機能を全体として高めていくための司法行政上の方策について(千葉地裁,奈良地家裁,鳥取地家裁,仙台地裁,名古屋家裁,宮崎地家裁)
→ サブテーマは以下のとおりです。
(1)   各事件分野(民事・刑事・家裁)における裁判部門の現状と課題をどのように認識しているか。
この1年間で実情は変化しているのか,変化していないのか,今後の施策や取組を考えていくうえで, まず,民事・刑事・家裁の各分野で,各庁の実情にはどのような変化・改善が見られているのか。率直に各庁の実情を伺いたい。
(2)   上記課題の検討の中心となるべき部総括裁判官(部のない家庭裁判所においては上席裁判官)に対する働きかけは , どうあるべきか。
(3)   (1)で議論した各分野の問題意識や課題について, まず,部の内部で共有し, さらに,部や庁を超えて,その解決に当たっていくために, どのような方策を講じていくべきか。
② 組織的に対応すべき事項に対する所長の役割
→ サブテーマは,「(1)裁判手続のIT化について」及び「(2)本庁による支部(出張所)の実情把握と本庁からの支援について」でした。

法曹一元

目次
第1 首相官邸HPの「法曹一元について(参考説明)」(平成12年4月25日付)
第2 昭和39年の臨時司法制度調査会意見書の記載
第3 平成に入ってからの弁護士会の決議
第4 国会答弁資料の記載
第5 関連記事その他

第1 首相官邸HPの「法曹一元について(参考説明)」(平成12年4月25日付)
・ 首相官邸HPの「法曹一元について(参考説明)」(平成12年4月25日付)には以下の記載があります。
1 明治期から臨時司法制度調査会前まで(資料6-1~6-4)
(1)   明治31年、弁護士植村俊平が国家学会において「将来ハ判事ノ数ヲ減シ新任ノ判事ハ必ラス弁護士ヨリ採用スルコトニ改メタキナリ」との演説がわが国において最初に「法曹一元」を論じたものとされている。

    その後、明治37年には、日本弁護士協会評議員会が、裁判所構成法を改正して、3年以上帝国大学法科の教授をした者及び3年以上弁護士をした者に限り司法官の資格を与えるとする提案をし、明治40年には、日本弁護士協会臨時総会において「司法官ハ総テ弁護士中ヨリ採用スルコト」との決議を行った。当時、弁護士試験と判事及び検事登用試験とは区別されており、判事又は検事となる資格のある者には弁護士資格が認められたが、その逆は認められておらず、判事又は検事に任用されるためには司法官試補としての修習が必要であったが、弁護士にはこれに対応する制度はなかった。さらに、帝国大学の法学部法律学科卒業者に弁護士資格が付与されていた。
(2)   大正12年になり、判事及び検事の登用試験と弁護士試験とは、高等試験司法科の試験に統一されるとともに、官学の特権も廃止された。その後、昭和11年には、司法官試補に対応する弁護士試補の制度が導入され、弁護士となる者についても、修習過程が要求されるようになった。
   その後、法曹一元論に関しては、「裁判というものは、社会の実相について豊富な知識を有する者にして始めて行いうるものであって、英国におけるように、裁判官は弁護士としての豊富な経験を有する者から選任することが理想的な姿である」という趣旨が強く押し出されるようになった。
   昭和13年、弁護士出身の議員提出にかかる法律案として、判事はすべて弁護士として実務に従事した者から任用することを内容とする裁判所構成法改正法律案が第73回帝国議会に提出され、衆議院で可決されて貴族院に送付されたものもあったが、成立に至らなかった。翌年の第74回帝国議会に、再度提出されたが、前年と同様に、衆議院で可決されたものもあったが、成立に至らなかった。
(3)   戦後、昭和20年11月に、司法省に司法制度改正審議会が設置され、判事、検事の任用資格について審議がなされたが、判事、検事の任用資格に付いては概ね現行の制度を維持する旨の案が可決され、判事又は検事に任ぜられるには一定年限弁護士として実務に従事したることを要するものとする旨の案は否決された。その後、昭和21年6月に司法省に設置された臨時司法制度改正準備協議会が設置され、翌7月には内閣に臨時法制調査会、司法省に司法法制審議会が設置され、昭和22年の裁判所法等の成立へとつながっていくが、裁判所法によって司法修習制度が新設され、従来の司法官試補と弁護士試補とは合体した形となって、養成段階である出発点における法曹一元が実現された。また、先にみたとおり、弁護士から裁判官及び検察官の任用も戦後の一時期において、ある程度積極的に推進された。
   ところで、前記のとおり、判事任命資格について法曹として10年以上の経歴を有することを必要とする裁判所法の規定ではあるが、その運用の実際においては、判事補が判事の主要な給源となるに至って事実上キャリアシステムがとられるようになり、そこで、このようないわゆるキャリアシステムに対するものとして、裁判官の給源を在野法曹に求めるべきであるという意義における法曹一元が、特に弁護士会から強い念願として叫ばれることになった。

第2 昭和39年の臨時司法制度調査会意見書の記載
1(1) 昭和39年8月28日付の臨時司法制度調査会意見書には以下の記載があります(首相官邸HPの「臨時司法制度調査会について」参照)
    法曹一元の制度は,それが円滑に実現されるならば,わが国においても一つの望ましい制度である。しかし,この制度が実現されるための基盤となる諸条件は,いまだ整備されていない。したがって,現段階においては,法曹一元の制度の長所を念頭に置きながら現行制度の改善を図るとともに,基盤の培養についても十分の考慮を払うべきである。
(2) 首相官邸HPに,司法制度改革審議会の配布資料としての「臨時司法制度調査会の意見の実施状況」(特に裁判所に関わるものを中心に)「法曹一元について(参考説明)」(平成12年4月25日付)が載っています。
2 昭和40年5月29日の日弁連定期総会決議には以下の記載があるみたいです(昭和42年5月27日の日弁連定期総会決議「司法制度の確立に関する宣言」参照)。
    司法の民主化は、在野法曹年来の主張である。そのために、われわれは強く法曹一元制度の実現を提唱してきた。
    しかるに、臨時司法制度調査会の意見書は、法曹一元が望ましい制度であることを認めながら、その具体的施策は、かえって法曹一元制度への道を阻む方向にある。われわれは、これを甚だ遺憾とする。よって、われわれは、司法の民主化を目指し、決意を新たにして、法曹一元制度の実現に邁進する。

第3 平成に入ってからの弁護士会の決議
1 関東弁護士会連合会は,平成11年9月17日,「法曹一元制度の実現に向け,行動する」という決議を出し,平成12年9月22日,「法曹一元制度と陪審制度の実現を-司法制度改革審議会に望む-」という決議を出しました。
2 日弁連は,平成12年2月18日,法曹一元の実現に向けての提言を出しました。

第4 国会答弁資料の記載
・ 平成28年11月24日の山口和之参議院議員(無所属)の質問に対する国会答弁資料に以下の記載があります。
(法曹一元とは)
・ 「法曹一元」とは,多義的であるものの,一般的には,裁判官及び検察官を主として弁護士の中から任命する制度をいうものと認識。
(法曹一元をめぐる議論)
・ 裁判官及び検察官の任用制度については,国民の求める質の高い裁判官及び検察考えられるようにすることが重要。
・ 司法制度改革審議会において,法曹一元について議論がされたものの,同審議会は,司法を担う高い質の裁判官を安定的に確保する観点から
① 判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませる制度の整備
② 弁護士任官の推進
等,給源の多様化・多元化のための措置等を提言するとともに,検察官についても,検察の厳正・公平性に対する国民の信頼を確保する等の観点から,同様の措置を提言したところ。
・ その後の司法制度改革推進計画においても,①判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませる制度や,検事が一定期間,国民の意識・感覚を学ぶことのできる場所で執務する制度を整備すること,②弁護士任官等を推進すること等が内容とされた。
(制度の整備状況)
・ これを受けて,平成16年には,判事補及び検事の能力及び資質の一層の向上等を図るため,判事補及び検事が一定期間その官を離れ,弁護士となってその職務をする弁護士職務経験制度(注)を創設したところ。
(注)平成16年通常国会(第159回国会)において成立した「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」(平成16年法律第121号)による。平成17年4月1日施行。
(所見)
・ 最高裁判所においては,裁判官についてこれら弁護士職務経験制度や弁護士任官制度を適切に運用されているものと承知。
・ 法務省としても,検察官に関するこれらの制度を適切に運用するとともに,司法制度を所管する省庁として,今後も,国民の期待する広くかつ高い識見を備えた裁判官及び検察官を確保する等の観点から,必要とされる方策を講じてまいりたい。

第5 関連記事その他
1 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)56頁には以下の記載があります。
    臨司では司法試験改革や裁判所の適正配置問題など、今日法曹界で論議されている司法制度の問題点があらかた取り上げられた。ただ、結果的に日の目を見たものはごく一部だったところから、「裁判所がいいところだけをつまみ食いした」などとの批判もあったが、毎回ほとんど全委員の出席を得て会議の議論は終始真剣そのものだったと思う。

2 東京弁護士会の,法曹一元制度の早期実現を期する決議(1999年12月20日付)には,「民主国家における司法は、主権者たる国民の叡智と良識を反映し、国民から信頼され、国民が納得する制度でなければならない。そして、そのような信頼と納得は、裁判官が権力におもねることなく常に国民の視点と常識を持ち、裁判官の独立が実質的に保障されてこそ、得られるものである。」と書いてあります。
3 東弁リブラ2022年1月・2月号「元最高裁判所判事 木澤克之」には以下の記載があります。
    弁護士は,依頼者と向き合い,いかに主張立証するかを考えたり,一件一件の事件に深く関わってはいますが,キャリア裁判官と比べれば,圧倒的に扱った事件の数は少ない。たとえ事件への関わり方が浅くても数の重みは大きくて,キャリア裁判官には及びません。キャリア裁判官は,ありとあらゆる事案を取り扱ってますからね。
4 以下の記事も参照してください。
 弁護士任官者研究会の資料
 弁護士任官候補者に関する下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申状況
・ 弁護士任官希望者に関する情報収集の実情
 弁護士任官に対する賛成論及び反対論

調停委員

目次
1 総論
2 調停委員の職業等
3 家事調停委員の選任に関する国会答弁
4 調停委員に関する資料等
5 調停申立てを相当とする場合
6 調停委員に対する苦情の伝え方
7 調停委員の就任には日本国籍を必要とすることに関する国会答弁等
8 電話調停
9 調停に
代わる決定及び調停に代わる審判
10 関連記事その他

1 総論
(1) 調停手続を担当する調停委員会(民事調停法5条,家事事件手続法247条)は,裁判官1名と調停委員2名の合計3名によって構成されており(民事調停法6条,家事事件手続法248条1項参照),裁判官が指揮します(民事調停規則17条,家事事件手続法259条)。
(2) 実際の調停手続は,男女各1名の調停委員(民間の人です。)が担当し,裁判官は通常,調停が終了する段階で出てくるだけです。
 なぜなら,裁判官は同じ時間帯に数件から10件近くの調停事件を担当しているからです。
(3) 
民事調停における裁判官は調停主任といわれる(民事調停法6条)のに対し,家事調停における裁判官は単に裁判官といわれます(家事事件手続法248条参照)。


2 調停委員の職業等
(1) 調停委員の職業の内訳は,弁護士が1割余り,弁護士を除く士業が2割余り(会計士,税理士,司法書士等),会社・団体の役員・理事が1割余り,無職者(前職は教師,金融機関,元公務員,専業主婦等)が3割余りです。
(2) 
民事調停委員及び家事調停委員は,民事調停委員及び家事調停委員規則(昭和49年7月13日最高裁判所規則第5号)に基づき,原則として40歳以上の人が任命され(規則1条),その任期は2年です(規則3条)。


3 家事調停委員の選任及び苦情に関する国会答弁
・ 43期の手嶋あさみ最高裁判所家庭局長は,令和2年4月16日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
 まず、家事調停委員を前提にお話しさせていただきたいと思いますが、家事調停委員の選任関係でございますが、家事調停委員は、家事紛争の解決に有用な専門的知識経験や社会生活上の豊富な知識経験を有し、人格識見の高い方の中から最高裁判所によって任命されます。
 候補者の選考に当たりましては、公正を旨とすること、豊富な社会常識と広い視野を有し、柔軟な思考力と的確な判断力を有すること、人間関係を調整できる素養があることなどに特に留意しなければならないものとされておりまして、これらを踏まえまして適切な人材が任命されるように努めてきているものと承知しているところでございます。
 次に、研修関係でございますけれども、実践的かつ効果的な研修を継続的に行っていくことが重要であるというふうに考えております。
 具体的には、新任の家事調停委員に対しましては、調停委員として必要な心構え、例えば当事者の話を中立公正な立場から丁寧に聞くことなどや基礎的知識を習得させる研修を行っておりまして、また、ある程度実務経験を積んだ後には事例研究などを通じて実践的な知識や技法を習得させる研修等を行っております。
 このように、調停委員の経験に応じた研修を行うなどしまして、適切な調停運営を行うことができるように支援しているものと承知しております。
 また、調停委員に対する苦情があった場合の対応等でございますが、当事者の方から裁判所職員に対して調停委員に対する不満の申出等があった場合には、その内容に応じまして、速やかに裁判所内で情報共有を図った上で、裁判所として調停委員に対する必要な指導をするなど、適切な対応、措置をとっているものと承知しております。
 さらに、質の確保、調停委員の質の確保についてでございますが、委員御指摘のとおり、当事者の方が調停手続において納得感のある解決を得られるようにするためにも調停委員の質の確保は重要と考えております。
 そのための取組といたしまして、多様な分野の人材を確保すべく、各裁判所におきまして、法律専門職を含む様々な専門職団体や地方公共団体に調停委員の採用について周知するなどのリクルート活動を行っているものと承知しております。また、任命された調停委員につきましては、先ほど申し上げましたとおり、経験年数に応じた効果的、実践的な研修を行うことで調停委員の質の向上に努めているものと承知しております。
 最高裁判所としても、今後も、任命、研修の両面において必要な取組支援を行ってまいりたいと存じます。


4 調停委員に関する資料等
(1) 以下の資料を掲載しています。
 民事調停委員及び家事調停委員の任免等について(平成16年7月22日付けの最高裁判所事務総長通達)
 民事調停委員及び家事調停委員の任免手続等について(平成16年7月22日付の最高裁判所人事局長通達)
・ 民事調停委員の再任等について(平成30年1月24日付の最高裁判所民事局長の事務連絡)
(2) はじめての調停HP「調停委員の選考と任命」が載っています。
(3)ア 東弁リブラ2018年7月号「民事調停のすすめ」が載っています。
イ 東弁リブラ2020年6月号「続・民事調停のすすめ」が載っています。
(4) 二弁フロンティア2021年12月号「家庭裁判所から見た離婚や面会交流等の調停実務」が載っています。
 


5 調停申立てを相当とする場合
・ クロスレファレンス民事実務講義(第3版)32頁には,調停申立てを相当とする場合として,以下のような場合が記載されています。
① 依頼者の相手方が親族や友人など親密な関係にある場合
② 証拠が十分でない場合
③ 判決では実現しない事柄を求めている場合
④ 新しい法律的権利が問題となる場合
⑤ 相手方が信用のある会社・団体などである場合
⑥ 円満に解決される見込みのある場合


6 調停委員に対する苦情の伝え方
(1) 二弁フロンティア2021年12月号の「家庭裁判所から見た 離婚や面会交流等の調停実務」に以下の記載があります。
 当事者本人から調停委員に対する苦情で多いのは、話を十分聴いてくれなかった、偉そうにしていてお説教された、強引に決め付けられたなどが挙げられると思います。また、調停委員の働き掛け・調整に対する批判として多いのは、説得しやすい側、弱い側に対してばかり強引に説得しているのではないかというものがあります。また、片方だけ時間を掛けて聴いていて、自分の方は少ししか聴いてもらえなかったなどの不満もあるかと思います。
 調停委員側からすると、いやそんなことはないという言い分もあるかもしれませんが、調停をより良くするためには、このような不満が出ている、当事者はこのようにしてほしいと考えているという実情を知っておかなければいけないと思います。したがって、上申書でも、書記官に対して口頭ででも結構ですので、お伝えいただければと思います。
(2) 上大岡法律事務所による離婚相談HP「調停委員の説明に納得いかない!という場合」が載っています。


7 調停委員の就任には日本国籍を必要とすることに関する国会答弁等
(1) 最高裁人事局長の国会答弁
・ 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,令和2年4月7日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 調停委員も非常勤の裁判所職員として公務員に当たるわけでございますが、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とするのが公務員全般に関する当然の法理であると解されておりまして、公務員の国籍要件の規定の在り方については、公務員に関する法体系全体のバランス等を踏まえた公務員全般の問題として検討される必要があると考えているところでございます。
 民事調停委員、家事調停委員の法令上の権限、職務内容等といたしましては、裁判官とともに調停委員会を構成いたしまして、通常、裁判官一人、調停委員二人というものが多いわけでございますが、そういった形で調停委員会を構成いたしまして、調停の成立に向けて活動を行い、調停委員会の決議はその過半数の意見によるとされておりますこと、調停が成立した場合の調停調書の記載は確定判決と同一の効力を有すること、調停委員会の呼出し、命令、措置には過料、過ち料の制裁があること、調停委員会は事実の調査及び必要と認める証拠調べを行う権限を有していること等がございまして、これらによりますと、調停委員は公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員に該当し、その就任には日本国籍を必要とすると考えているところでございます。

② 調停委員の任用に当たりましては、法律の専門家ばかりでなく、豊富な社会経験、人生経験を持つ良識豊かな方や、法律以外の分野での専門的な知識、経験を備えた方を迎える必要があると認識しておりまして、現在も社会の多様な分野で活躍されている方々、例えば弁護士、医師、大学教授、農林水産業、商業、製造業、宗教家等、多様な分野の方が調停委員として任命されているところでございます。
 今後も、国際化の進展等の社会の変化に応じまして、当事者が様々なバックグラウンドを持っていることも踏まえて、そのニーズに応えることができるよう多様な人材を確保していく必要があると考えているところでございますが、先ほど御説明申し上げたような理由から日本国籍を有しない方を調停委員に任命することは難しいと考えているところでございます。
(2) 最高裁判例
・ 国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条,15条1項参照)に照らし,原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり,我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではありません(最高裁大法廷平成17年1月26日判決)。
(3) 弁護士会の文書
ア 外国人の調停委員採用拒否に関する弁護士会の意見書に関して最高裁判所が作成し,又は取得した文書(令和4年6月の開示文書)を掲載しています。
 調停委員任命に際し外国籍の者を排除しないことを求める理事長声明(平成30年10月3日付の関東弁護士会連合会の文書)には以下の記載があります。
 実際,過去には,1974(昭和49)年から1988(昭和63)年まで,中国(台湾)籍の大阪弁護士会会員(張有忠弁護士)が,外国籍のままで民事調停委員に任命され,14年余りにわたり何らの支障なく調停委員としての職務を行っていた。上記弁護士が大阪地方裁判所所長から表彰を受けていることからしても,外国籍の調停委員の必要性は大きく,調停委員の職務を行うことに何ら不都合がないことは明らかになったといえる。
(4) 人種差別撤廃委員会の総括所見
ア 人種差別撤廃委員会の総括所見(2010年4月6日付)15項には以下の記載があります。
 家庭裁判所調停委員はいかなる公的決定権を持っていないことに留意するとともに、委員会は、日本国籍を持たない者は資質があるにもかかわらず調停委員として調停処理に参加できないという事実に懸念を表明する。また、公職への日本国籍を持たない者の参画に関してデータが提供されていないことに留意する(第5条)。
 委員会は、調停処理を行う候補者として推薦された能力のある日本国籍を持たない者が家庭裁判所で活動できるように、締約国の立場を見直すことを勧告する。また、次回報告において日本国籍を持たない者の公職への参画の権利に関して情報を提供することを勧告する。
イ 人種差別撤廃委員会の総括所見(2014年9月26日付)13項には以下の記載があります。
委員会は,締約国の代表団によって提供された説明に留意するものの,国家権力の行使を要さないいくつかの公的サービスの仕事に対するアクセスにおいて,日本国籍でない者が直面する制限及び困難について懸念する。委員会はとりわけ,家庭裁判所における調停委員として行動する能力を有する日本国籍でない者を排除するとの締約国の立場及び継続する実務について懸念する(第5条)。
ウ 人種差別撤廃委員会の総括所見(2018年8月30日付)21項には以下の記載があります。
委員会は,数世代にわたり日本に在留し,外国籍を保持する韓国・朝鮮人が,地方参政権を有さず,公権力の行使又は公の意思の形成への参画に携わる国家公務員として勤務することができないことを懸念する。委員会は,「朝鮮学校」が未だ高等学校等就学支援金の対象外とされているとの報告をさらに懸念する。また,委員会は,多くの韓国・朝鮮人女性が,国籍及び性別による複合的及び交差的形態の差別に苦しんでおり,彼女たちの子供に対するヘイトスピーチにより不安を抱いているとの報告を懸念する。

 


8 電話調停
(1) 平成25年1月1日,電話又はテレビ会議の方法によって調停手続ができるようになりました(①民事調停につき民事調停法22条,非訟事件手続法47条,非訟事件手続規則42条,②家事調停につき家事事件手続法258条1項・54条1項)。
(2) 千葉の弁護士による離婚相談HP「電話調停とは? 遠方の裁判所と法律事務所を電話でつないで調停ができます。」が載っています。

9 調停に代わる決定及び調停に代わる審判
(1)ア 民事調停は調停に代わる決定(民事調停法17条)により終了し,家事調停は調停に代わる審判(家事事件手続法284条1項)により終了することがあるものの,2週間以内に異議申立てがされれば,決定又は審判の効力が失われます。
イ 仮に調停に代わる決定について異議申立てが認められないとした場合,憲法82条及び32条に違反することになります(最高裁大法廷昭和35年7月6日決定)。
(2) 弁護士濱門俊也HP「地裁でもあり得る「17条決定」」が載っていて,葛葉法律事務所HP「調停に代わる審判とは」が載っています。

10 関連記事その他
(1) 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)63頁には以下の記載があります。
 昭和四六年度には、最高裁に臨時調停制度審議会を設けるための最初の予算が認められた。
 同年六月審議会が発足し、その答申を受けて、昭和四九年一〇月から、それまで事件ごとに指定されるに過ぎなかった調停委員を裁判所の非常勤職員とし、日当に代わって非常勤職員手当を支給する調停委員制度の抜本的改革が実現するが、その第一歩がここに踏み出されたのである。

(2) 東北弁護士会連合会HPに「日本国籍を有しない者の調停委員任命を求める決議」(平成23年7月8日付)が載っています。
(3)ア 二弁フロンティア2021年12月号「家庭裁判所から見た 離婚や面会交流等の調停実務」には「部総括は常時、調停が300~350件(陪席は400~500件)、審判が30~50件(陪席は30~80件)程度の件数となります。民事事件と比べると圧倒的に多く、調停以外にも別表第1事件も多数担当しています。」と書いてあります。
イ 二弁フロンティア2022年12月号「東京家事調停協会と 弁護士会との意見交換会」には以下のテーマについて出た意見が箇条書きされています。
① 各人が調停で気を付けていること、感じていること
② 調停委員から弁護士に対し、又は弁護士から調停委員に対し、日頃感じていること、聞いてみたいこと
③ 調停運営について(工夫や課題、ウェブ調停実施の感想、調停全般について思うこと)
(4)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 民事調停委員の手引(平成31年3月)
・ 家事調停の手引(令和5年2月)
・ 家事調停手続におけるウェブ会議の試行について(令和3年4月22日付の最高裁判所家庭局第一課長の事務連絡)
・ 専門委員参考資料(改訂版・平成26年2月)
→ 専門委員は,非常勤の裁判所職員であり(民事訴訟法92条の5第3項,非訟事件手続法33条5項),特別職の国家公務員であって,建築関係訴訟,医事関係訴訟,知的財産権関係訴訟等に関与しています。
イ 以下の記事も参照してください。
・ 調停委員協議会の資料
・ 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
・ 勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)
・ 民事調停委員及び家事調停委員に対する表彰制度

民事調停委員の技能向上に係る取組(令和元年度調停委員協議会)

下級裁判所裁判官指名諮問委員会委員名簿

目次
1 下級裁判所裁判官指名諮問委員会委員名簿
2 下級裁判所裁判官に任命されるべき者として最高裁判所が指名すべき人数
3 関連記事その他

1 下級裁判所裁判官指名諮問委員会委員名簿
(令和6年)
5月9日6月1日8月1日11月3日
(令和5年)
1月17日4月28日
(令和4年)
4月1日5月1日5月23日
(令和3年)
6月1日7月16日8月5日11月13日
(令和2年)
4月1日5月29日7月22日8月16日
(平成31年→令和元年)
2月8日6月21日7月16日
(平成30年)
1月22日6月1日8月17日
(平成29年)
5月22日
(平成28年)
5月1日6月21日8月8日9月5日
(平成27年)
4月1日6月1日7月11日8月6日
(平成26年)
8月16日
(平成25年)
4月18日8月8日
(平成24年)
4月10日6月1日
(平成23年)
4月1日7月31日8月11日8月16日10月19日
(平成22年)
2月5日4月5日6月1日6月17日
(平成21年)
2月10日6月1日
(平成20年)
1月16日4月1日8月26日12月8日
(平成19年)
1月25日5月1日8月17日
(平成18年)
1月20日6月1日
(平成17年)
1月1日2月11日4月12日9月2日10月1日
(平成16年)
4月1日12月16日
(平成15年)
5月1日10月2日

2 下級裁判所裁判官に任命されるべき者として最高裁判所が指名すべき人数
・ 平成29年度(最情)答申第48号(平成29年12月1日答申)には以下の記載があります。
    下級裁判所裁判官に任命されるべき者として最高裁判所が指名すべき人数については,法令上,特段の定めはない。また,最高裁判所の職員の口頭説明によれば,以前は任命されるべき人数より1名多く指名するのが通例であったが,下級裁判所裁判官指名諮問委員会が設置された現在では任命されるべき人数と等しい人数を指名しており,これらの事務は慣例によって運用しているものであるから,文書を作成する必要はないとのことである。このような説明の内容は,不合理とはいえない。

3 関連記事その他
(1) 下級裁判所裁判官指名諮問委員会委員の人数は,制度発足当初から11人です。
(2) 令和3年3月までに,日弁連の「自由と正義」には以下の特集が掲載されました。
・ 下級裁判所裁判官指名諮問委員会発足後の三年間を振り返って(2006年10月号)
・ あるべき下級裁判所裁判官指名諮問委員会制度への展望(2009年10月号)
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 平成20年度以降,任期終了により退官した裁判官の一覧
・ 弁護士任官候補者に関する下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申状況
・ 下級裁判所裁判官指名諮問委員会で再任不適当とされた裁判官の数の推移
・ 裁判官再任評価情報の提供
・ 裁判官人事評価情報の提供

我が国の裁判官制度に関する,平成12年4月当時の説明

目次
1 我が国の裁判官制度に関する,平成12年4月当時の説明
2 関連記事

1 我が国の裁判官制度に関する,平成12年4月当時の説明
・ 司法制度改革審議会HPに載ってある「法曹一元について(参考説明)」(平成12年4月25日付)には以下の記載があります。

第2 わが国の裁判官制度
    法曹一元の制度は、一般的に、簡易裁判所の裁判官を除いた下級裁判所の裁判官を対象として議論されていることから、以下では、そのような下級裁判所の裁判官を中心にわが国の裁判官制度の概要を論じる。
(1) 任命手続(資料1~2-2) 
    判事の資格としては、10年以上法曹又は法律学者としての経験が必要とされており(裁判所法42条1項)、判事補となるためには、司法修習を修了した者、すなわち司法試験に合格して司法修習生に採用され、少なくとも1年6月の修習後に二回試験に合格した者であることを要する(同法43条、66条1項、67条1項)。
    いずれも最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命することになっている(憲法80条1項、裁判所法40条1項)。これは、内閣が恣意的に情実によりまたは党派的な人事を行うことによって、司法の独立公正を害する危険を防止するため最高裁判所に推薦権を認めることとし、他方、裁判所内部だけで任命することによる司法の独善化を避けるために、内閣に拒否権を留保する趣旨とされている。具体的な手続としては、最高裁判所が人選を行い、任命すべき裁判官の官ごとに名簿を作成して、内閣に送付する。名簿に掲げる者の指名は、司法行政事務であるから、裁判官会議の議による。内閣は、閣議によって任命を決定する(内閣法4条1項)。
    なお、判事補は、原則として一人で裁判をすることができないなどの職権に関する制限があるが(裁判所法27条)、5年以上の法曹としての経験のある者について、判事と同等の権限を有するものとする、いわゆる特例判事補の制度がある(判事補の職権の特例に関する法律 昭和23年)。
(2) 裁判官の地位(報酬、昇給、任期、転勤、服務、身分保障等) 
    裁判官が、法以外の勢力や権力の影響を受けずに独立の立場で裁判が行えるように、裁判官の独立が保障されている(憲法76条3項、78条、79条6項、80条2項、裁判所法48条参照)。
    報酬について、定期に相当額が保障され、減額されないとの保障が定められている(憲法79条6項、80条)。任期については、10年とされているが、再任は妨げないとされている(憲法80条1項、裁判所法40条3項)。転勤については、裁判官は、その意思に反して転所されることはない(裁判所法48条)。裁判官の服務規律としては、「職務専念義務」(裁判所法52条2号、3号等)、「守秘義務」(同法75条2項等)、「積極的政治運動の禁止」(同法52条1号)、「信用失墜行為の禁止」(裁判所法49条等)などがある。その他の身分保障として、憲法上一定の手続で罷免される場合を除いては、その意に反して、免官、転官、転所、停職または報酬の減額を受けないものとされており(裁判所法48条)、罷免される場合としては「心身の故障のために職務を執ることができない」場合及び「公の弾劾によ」る場合に限られる。
(3) 弁護士からの任官(資料4-1、4-2) 
ア 昭和63年以前の状況
    戦前の昭和13年から15年にかけて、約200人の弁護士が判事、検事に任官した。また、戦後施行された裁判所法では、わが国の判事任命資格について、10年間判事補の職にあった者のみならず、10年以上弁護士、検察官、法律学者としての経験を有する者にも認めているが、現行制度発足当時の昭和23から24年にかけて約100人の弁護士が裁判官に任官した。
    しかし、昭和30年代を境に、弁護士からの任官者が減少し、判事は、司法研修所終了後直ちに判事補に採用され、判事補として10年在職した者から任命されるのが通例であり、10年の任期を終えた判事補は、大部分が判事に任命されるのが現実となり、わが国の裁判官任用制度は、その運用の実際においてキャリア・システムであった。
イ いわゆる「弁護士任官制度」の導入
    昭和63年3月、最高裁判所は、裁判所として社会の高度化、それに伴う紛争の複雑・多様化に対応するためには、裁判官に多様な経験を有する者がいることが望ましいとして、「判事選考要領」(旧要領)を定めて、経験年数15年以上、年齢55歳未満の弁護士から毎年20名程度の判事を採用する、との方針を打ち出し、平成3年9月には、従来の「判事選考要領」を改正して新しく「裁判官選考要領」(新要領)を定め、「5年以上弁護士の職にあり、裁判官として少なくとも5年程度は勤務しうる者であって、年齢55歳位までのもの」を選考対象とし、日弁連を通じて任官希望者を募ることとなった。初任地は、本人の希望、家族状況、充員状況等を考慮して決定し、その後は、同期の裁判官の例に準じて異動を行う。ただし、15年以上弁護士の職にあった者については、本人の希望により、住居地又はその周辺の裁判所を任地とするものとされている。
    なお、これまで、このいわゆる弁護士任官制度で裁判官に任官したのは、平成11年11月1日現在で46人である。

2 関連記事
・ 平成11年11月までの弁護士任官の状況
・ 平成13年2月当時の,弁護士任官に対する最高裁判所の考え方
・ 弁護士任官等に関する協議の取りまとめ(平成13年12月7日付)

昭和44年開始の,裁判所におけるブルーパージ

目次
第1 総論
第2 21期二回試験当時の状況(昭和44年3月及び同年4月),及び二回試験の不合格者数の推移等
1 21期二回試験当時の状況(昭和44年3月及び同年4月)
2 二回試験の不合格者数の推移等
3 59期までの二回試験不合格者の取扱い
第3 東大安田講堂事件の刑事裁判に関する国会答弁(昭和44年6月)等
第4 平賀書簡事件(昭和44年8月開始)
第5 飯守重任鹿児島地裁所長の,国民協会機関紙への投稿問題(昭和44年10月)
第6 最高裁判所による,青法協会員裁判官の脱会勧告(昭和44年11月頃開始)
1 事案の概要
2 昭和45年1月に青法協を脱会した局付判事補のその後
3 「法の番人として生きる」の記載
4 「守柔 現代の護民官を志して」の記載
5 最高裁物語(下巻)の記載
6 昭和45年3月20日の国会答弁
第7 最高裁判所事務総長談話(昭和45年4月)及び最高裁判所長官の訓示(昭和45年6月),並びに関連する国会答弁
1 最高裁判所事務総長談話(昭和45年4月)
2 最高裁判所長官の訓示(昭和45年6月)
3 関連する国会答弁
4 矢口洪一 元最高裁判所長官の回想
第8 飯守重任鹿児島地裁所長の思想調査及び依願退官(昭和45年12月)
第9 宮本再任拒否事件(昭和46年3月から同年5月まで)
1 昭和46年当時の状況
2 宮本再任拒否事件
3 矢口洪一 元最高裁判所長官の回想
第10 23期司法修習生の任官拒否(昭和46年3月),及び23期の司法修習終了式の中止(昭和46年4月)
1 23期司法修習生の任官拒否(昭和46年3月)
2 23期の司法修習終了式の中止(昭和46年4月)
3 阪口徳雄は25期の弁護士になったこと
第11 「司法の危機」は存在しないとする,村上朝一最高裁判所長官の「就任のことば」
第12 22期ないし31期の判事補志望の司法修習生に対する任官拒否の人数の推移
第13 官公庁労働者の争議行為禁止規定の合憲性についての最高裁判例の流れ
1 第一段階の最高裁判決
2 第二段階の最高裁判決
3 第三段階の最高裁判決
4 その後の最高裁判決
第14 平賀書簡事件につながった長沼ナイキ基地訴訟の結末
第15 青年法律家協会裁判官部会の消滅
第16 全国裁判官懇話会
1 総論
2 全国裁判官懇話会参加者の振り返り
3 全国裁判官懇話会に関する国会答弁
第17 日本裁判官ネットワーク
第18 主要参考書籍(順不同)
第19 関連記事その他
1 田中耕太郎最高裁判所長官のことば
2 昭和42年5月当時,地家裁所長の裁判所広報での投稿につき,裁判官の表現の自由として懲戒まではされなかった事例(令和3年3月13日追加)
3 裁判批判に関する国会答弁
4 「恐るべき裁判 付表・左翼裁判官、弁護士、法学者一覧」で批判されている判決
5 関連記事

第1 総論
1 ブルーパージとは,昭和44年に開始した,青年法律家協会(略称は「青法協」です。)所属の裁判官に対する差別人事のことであり,レッドパージと「青」法協をかけて「ブルーパージ」といわれます
2(1) 第4代最高裁判所長官である横田正俊裁判官は,青法協問題について,「少なくとも裁判官については,そう神経質になる必要はない。」と話していました(日本の裁判史を読む事典46頁)。
    しかし,昭和44年1月11日に石田和外裁判官が第5代最高裁判所長官に就任してからは,青法協に対する裁判所内の風当たりが厳しくなりました。
(2) 青法協は,昭和46年には裁判官部会約200人,司法修習生各期会約300人などを含む約2200人の組織に膨張し,最高裁事務総局の3分の2が青法協会員になっていたそうです(裁判官の独立-『司法権・憲法訴訟論』補遺(2)-(横浜国際社会科学研究第23巻第1号に含まれているもの)(リンク先のPDF6頁))。
3(1) 最高裁物語(上巻)320頁には以下の記載があります。
    では、裁判所の問題とは何だったのであろうか。
    それは自民党司法グループが攻撃してやまない裁判官の偏向問題。具体的には二二五人もの裁判官が加入している青年法律家協会の問題であった。裁判官総数は二千五百人だから、その約一割にあたる。「憲法を守る」「戦争には絶対反対」などのスローガンを掲げている協会を自民党司法グループは、「容共団体である。そんな会に裁判官が入っているから無罪判決が出るのだ」と決めつけ、予想される攻撃は一層、不気味さを増しそうな予感があった。
(2) 昭和42年1月29日の第31回衆議院議員総選挙(定数486人)では,自民党が277議席を獲得し,日本社会党が140議席を獲得し,日本共産党が5議席を獲得しました。
    昭和44年12月27日の第32回衆議院議員総選挙(定数は486人)では,自民党が288議席を獲得し,日本社会党が90議席を獲得し,日本共産党が14議席を獲得しました。
4 最高裁大法廷平成元年3月8日判決(レペタ訴訟判決)は以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
    過去においていわゆる公安関係の事件が裁判所に多数係属し、荒れる法廷が日常であつた当時には、これらの裁判の円滑な進行を図るため、各法廷において一般的にメモを取ることを禁止する措置を執らざるを得なかつたことがあり、全国における相当数の裁判所において、今日でもそのような措置を必要とするとの見解の下に、本件措置と同様の措置が執られてきていることは、当裁判所に顕著な事実である。
    しかし、本件措置が執られた当時においては、既に大多数の国民の裁判所に対する理解は深まり、法廷において傍聴人が裁判所による訴訟の運営を妨害するという事態は、ほとんど影をひそめるに至つていたこともまた、当裁判所に顕著な事実である。


第2 21期二回試験当時の状況(昭和44年3月及び同年4月),及び二回試験の不合格者数の推移等
1 21期二回試験当時の状況(昭和44年3月及び同年4月)
(1) 「恐るべき裁判 付表・左翼裁判官、弁護士、法学者一覧」52頁及び53頁には以下の記載があります。
     司法研修所にも、大学紛争が波及している。各大学で紛争のため卒業が遅れ、合格者が入所できないというような問題も発生したが、ここで「波及」というのは、今日の大学紛争に共通な紛争が研修所にも起きていることを指すのである。封鎖というような事態にはなってないが「修習制度の改悪反対」「二回試験落第反対」「寮規則反対」「カリキュラム編成への参加」「研修所の運営への参加」等々の要求が”大衆団交”の名の下に行われているのである。いわば”民青路線”の紛争が発生しているわけである。
     二回試験とは修習終了の際の試験のことであるが、成績不良者も落第させずに資格を与えろと要求しているわけであり、寮規則反対、運営への参加等は紛争大学に見られるのと同じ類のものである。
     二十一期生では、二回試験で五百余名中の中二名の落第がでたが、この”白紙撤回”闘争が行われた。混乱がたかまって、終了式において行われていた修習生代表の”答辞”もはずさざるを得なくなったのである。彼等が「二十一期司法修習生一同」の名で四十四年四月十七日に配布した「答辞に代えて」という印刷物には、次のような要求が書かれている。
   ○カリキュラム編成について研修所と協議すること。
   ○研修所の運営に参加する。その中で、積極的に修習のあり方を考え、創造していく必要がある。そのため、制度上、クラス委員会が公認され、クラス討論の時間が充分に保障される必要がある。
   ○落第の白紙撤回-修習終了後も修習制度改善連絡協議会を設けて闘う。
     民青路線の紛争が研修所にまで持ち込まれていることが、はっきりわかるであろう。大方の国民は、最高裁の管理下にある研修所でこんな騒ぎが起きているとは思わない。まだまだ、司法部、すなわち最高裁に対する信頼感は存在しているのだ。最高裁はもちろん、研修所長や教官達は、一体何を考えているのであろうか。
(2) 民青というのは,日本共産党の活動と連携している,日本民主青年同盟のことです。
2 二回試験の不合格者数の推移等
(1) 二回試験等の推移表(1期から70期まで)によれば,当時の二回試験の不合格者数は以下のとおりです。
7期ないし16期:0人
17期:1人,18期:2人,19期:4人,20期:5人
21期:2人,22期:4人,23期:0人,24期:1人
25期:0人,26期:1人,27期:2人
(2) 「造反-司法研修所改革の誘因-」(昭和45年6月10日発行)78頁によれば,21期司法修習生クラス委員会と司法研修所との懇談会(昭和44年1月20日開催)において以下のやり取りがあったみたいです。
4 一八期以降落第を出すようになった理由は。
<萩原教官>私は一五期から一七期迄研修所教官として考試委員をしていた。その間毎年及落判定会議に出ていた。その頃修習生の下の方が成績が悪い為毎年のように下の方は落とすべきだという意見が考試委員会で強かったが教官が弁護した為、落第が出なかった。ところが、一七期ではどうしても落すというところ迄行ったが、何年間も落ちていないのに突然落とすのは堪えられないので何とかとおした。そこで考試委員会では一八期以降こういう事では困るから予め落第の警告をしてくれという事になったので一八期前期に予告した(落第は一八期より出た)。もともと落第適格者は一六期、一七期にもいた。しかし落しては困るという事で合格させてあげていた。昔の考試委員会のそうした落さないやり方は間違っていたと思う。
5 五期以降落とさなかったのに、一八期から何故落すようになったのか。
<教官>落すべきものは落さなければいけない。今迄のやり方ではいけないという反省があったからだ。
◯ 一二、三年間も落さなかったのに急に落す必要があったのか。臨司意見書は一七期後期に出たが、これと関連があるのではないか。
<萩原教官>臨司との関係は自分としては感じなかった。考試委員の間では臨司があるかろいう事を議論してはいなかった。
◯ それではどういう事情があるのか。
<教官>・・・・
<所長>僕は臨司委員を途中からやったが、あの臨司の結論を見て欲しい。あれに反対するのは、在野も含めて誰もいないはずだ。今の萩原教官のいった事は、僕の罪をそそぐには非常によい事だ。僕も今の事は初めて聞いた。私が最高裁の人事局ににいた頃、教官が修習生を弁護していた事は事実だ。
そういう時が長く続いた。諸君は臨司と鈴木を結びつけたがるが、教官さえも考試委員会の意見をふせぎ切れなくなったのが事実だ。教官が可下も幾つもあるような者を普段はよくできる、生活は真面目なんですという事で弁解して防ぎきれなくなったのだ。
6 今迄卒業した修習生の中に法曹不適格者がいるか。
<教官>こんなのをどうして通したのかと思うような人がいる。これは落第すべきものを通したからだ。恐らく、それが考試委員会で、こんなものは困る、という事になった原動力だろう。

(3) 研修時報26号(昭和40年7月発行)38頁には,17期二回試験に関する記載として,「応試者一名を除く全員が合格と決定された。」と書いてあります。
3 59期までの二回試験不合格者の取扱い
(1) 27期二回試験までは,病気・出産等の理由で二回試験を受けられなかった修習生だけが追試を受けることができたのであって,一科目でも不合格となった場合,不合格となりました。
    ただし,この場合,司法修習生の身分を引き続き有し,かつ,給料をもらった上で次の二回試験を受験していたようです。
(2) 28期ないし59期の二回試験については,合格留保制度(原則として1科目だけ不合格になった場合,追試に合格すれば司法修習を終えられるとする制度)が実施されていました。
(3) 「思い出すまま」(著者は,昭和46年8月から昭和50年7月まで司法研修所民事裁判教官をしていた2期の石川義夫裁判官)200頁には以下の記載があります。
     二回試験の前になると修習生たちはもしかすると落第するのではないかと非常に敏感になる。私は今まで二回試験では殆ど落第者がいなかった実績を説明し、「二回試験に落第することは、駱駝が針の穴を通るよりも難しい」とバイブルの文句を引いて彼らを励ましたが、試験終了直後K修習生が私のところへ来て「先生、失敗しました。落第に違いありません。どうしたらいいでしょうか?」と動顛し、真顔である。私は「失敗したという人は大抵大丈夫、とにかく出来た、出来た、と言ってるのが出来てないことが多いのだよ」と慰めた。勿論彼は合格し、恙無く郷里で弁護士を開業した。


第3 東大安田講堂事件の刑事裁判に関する国会答弁(昭和44年6月)等
1 東大安田講堂事件(事件当時の略称は「東大事件」とか「東大関係事件」です。)は,全学共闘会議(全共闘)及び新左翼の学生が東京大学本郷キャンパス安田講堂を占拠していた事件,及び東京大学から依頼を受けた警視庁が昭和44年1月18日から翌日にかけて封鎖解除を行った事件のことです。
2 日弁連三十年233頁には以下の記載があります。
     昭和四四年一月の東大安田講堂等占拠学生の強制排除および神田解放区事件にともない建造物侵入・公務執行妨害等被告事件で起訴された、いわゆる東大関係事件被告人に対する公判は、その審理方式、すなわち「統一公判」か「分離公判」かをめぐって、裁判所と被告人らとの間に意見が激しく対立した。
    まず昭和四四年三月、東大闘争弁護団によって統一公判を要求する意見書が東京地方裁判所あてに提出され、これに対して同地裁は、適正規模の被告人を併合したグループ別審理方式(いわゆる分離公判)を示し、これを強行したために、統一公判か分離公判かをめぐり公判は当初から紛糾した。
(中略)
     裁判所側は、予断排除の原則が適用されるのは、事件の実体についてであり、事件配点上必要な事項などについての裁判所の事前調査を否定するものではない、グループ別審理は弁護権の行使を制限するものではないとの見解を示し、東京地裁の各刑事部においてそれぞれグループ別審理を開始した。
3 佐藤千速最高裁判所刑事局長は,昭和44年6月27日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① いわゆる東大事件と申しましても、どれを言うのかというのが必ずしも明確ではございません。
    本年の一月九日の安田講堂前の事件、翌十日の秩父宮ラグビー場事件、それから一月十八、十九のいわゆる東大事件、こういうものをかりに広い意味で東大事件、このように考えてみますると、係属している人員は六百七名でございます。当初係属した人員は六百七名でございます。
    そのうち、すでに裁判が済んだ者が百三十九名、まだ裁判が済まない者が四百六十八、かようになっております。
    まだ裁判が済んでいない四百六十八のうち、四百三十五という数の人が、いわゆる合議事件の被告となっておるわけでございますが、この四百六十八のいわゆる未済でございますね、このうち、勾留されております者が現在三百八人ぐらいでございます。六月二十三日現在で三百八人と聞いております。
    その余の人が保釈ないし在宅、かようになっておるわけでございます。厳密な数字はなかなか正確に私どもも把握できないので、概数申し上げますと、そういう傾向でございます。
② ところで、先ほど二番目の、勾留されておる者が出廷を拒んでおるかどうかという点でございますが、新聞等でもよく報道されておりますように、勾留されている人たちが、お話にもございましたように、衣類を脱いで裸になって抵抗して出廷を拒むというのが、全部が全部そうかといいますと、それも厳密には私ども把握いたしておりませんが、やはり相当あるように聞いておるわけでございます。
    それから保釈になっている人は、出てきているという事実もあるように思います。多少例外はあるかもしれませんが、大体の傾向はそういうことでございます。
4 東大安田講堂事件に関する刑事裁判は,刑事訴訟法289条の必要的弁護事件(長期3年を超える懲役又は禁錮に当たる事件のこと。)ではなかったため,出廷を拒否した被告人に対しては,刑事訴訟法286条の2に基づき欠席裁判が強行されました。
5 「恐るべき裁判 付表・左翼裁判官、弁護士、法学者一覧」207頁及び208頁には,「裁判の公正を害する脅迫、圧迫、嫌がらせの数々」として以下の記載があります。
    戦後の裁判は全く喧騒そのものである。裁判所構内におけるデモと林立する赤旗、法廷内外で行われたアジ演説、インターナショナルの歌の合唱、法廷内における検察官、裁判官に対する罵倒、果ては暴行等々、松川事件、平事件、メーデー事件、砂川事件などの訴訟状況を回想されたい。公正な裁判が行われるのかという危惧の念を持った人が多かったに違いない。
     許されるべき状況でないものを”左翼に弱い”裁判所が放置しておいた結果が、今日の東大事件の混乱裁判につながっているのである。裸戦術をとったり、柱にしがみついたりして被告人が出廷を拒否し、弁護人までが裁判長の訴訟指揮を蹴飛ばし、法廷では野次と怒号、暴力沙汰という東大裁判の状況は、周知のことなので、繰返すことを止め、より具体的な裁判官に対する圧迫の数々に筆を進めよう。
     次のような事実は、殆んどの裁判官が知っている事実だと思われるが、何故に徹底的に追求し、裁判の公正を害するものとして排除しないのか。
△ 学生デモに限らず、社党、総評系のデモも、裁判所前を通過するとき、あるいは公安・労働事件の開廷にあたっても「○○裁判長は反動分子である。○○裁判長弾劾!、○○辞めろ」というようなことを拡声器で叫ぶ。
△ 裁判所や裁判官官舎の塀に、夜間、脅迫と侮辱のビラを貼る。例えば「命が惜しければ自重しろ!」の類である。
△ 公安・労組事件では、担当裁判長や裁判官に「労働者側を勝たせろ!」という葉書や手紙が全国の労組員から寄せられる。組織的であり、元凶をつきとめる必要があろう。
     これらの事実は、裁判官に精神的圧迫を加え、裁判を歪める危惧のあることは明らかである。ことに手紙による要請、脅迫などは、効果があると考えられるからこそ組織的に行われているのである。


第4 平賀書簡事件(昭和44年8月開始)
1(1) 自衛隊の合憲性が争われた長沼ナイキ訴訟に関して,当時の平賀健太札幌地裁所長は,事件担当裁判長である福島重雄裁判官(11期)に対し,昭和44年8月14日,長沼町の住民の申立てを却下するよう示唆した“一先輩のアドバイス”と題する詳細なメモを差し入れた事件(いわゆる「平賀書簡事件」です。)が発生しました。
(2) 福島重雄裁判官は,昭和44年8月22日,平賀札幌地裁所長の書簡を無視して,国有林の保安林指定の解除について執行停止の決定を出しました。
2(1) 昭和44年9月13日(土)午後1時頃から14日午前0時頃までの間,平賀書簡事件に関して議論をした結果,平賀札幌地裁所長への非難を決議しました。
(2) 同月午後9時のNHKニュースで平賀札幌地裁所長の記者会見の模様が放送され,翌日の朝刊各紙の一面には,平賀書簡の全文が掲載されました。
(3) 最高裁判所は,昭和44年9月20日(土)の裁判官会議に基づき,平賀裁判官を口頭で注意するとともに,東京高裁判事に異動させました。
3(1) 裁判官訴追委員会は,昭和45年10月19日,平賀書簡事件に関して訴追請求されていた平賀裁判官に不訴追,福島裁判官に訴追猶予の決定を下しました(裁判官訴追委員会HP「(2) 罷免の訴追を猶予した事案の概要」参照)。
(2) 札幌高裁は,昭和45年10月26日付の裁判官会議の決定に基づき,同月28日,福島裁判官に対して口頭で注意しました。
4 日弁連は,昭和45年12月19日の臨時総会において,「平賀・福島裁判官に対する訴追委員会決定に関する決議」と題して以下の事項を決議しました。
① 裁判官訴追委員会が昭和45年10月19日、平賀・福島両裁判官に対してなした決定は裁判官の独立の理念に照して事案の本質をあやまった不当なものである。また、同委員会が青年法律家協会会員であることなどを理由とする訴追請求に関し、裁判官213名に対して発した照会状は、裁判官の思想、良心の自由ひいては司法権の独立をあやうくするおそれがあり、同委員会はすみやかに右照会を白紙にもどすべきである。
② 札幌高等裁判所が昭和45年10月28日福島裁判官に対してなした司法行政上の注意処分及びこれを支持する最高裁判所の態度は、訴追委員会の不当な決定に追随して自ら司法権の独立を放棄したものとの印象を与え、国民の裁判所に対する信頼をあやうくするものであって、誠に遺憾である。よって裁判所は司法権の独立を保持するためすみやかにその姿勢を正すべきである。
5 「裁判官も人である 良心と組織の間で」161頁には以下の記載があります。
   この時、石田長官(山中注:石田和外最高裁判所長官のこと。)は、書簡(山中注:平賀書簡のこと。)流出の犯人を捜しだし、青法協を裁判所から排除しなければならないと肚を固めたと、当時、最高裁事務総局に勤務していた元裁判官は私の取材に述べた。実際、長期的な人事政策として、青法協会員の裁判官だけでなくシンパと目された裁判官への「差別人事」を断行したのである。
   「平賀書簡をマスコミにリークしたのは、青法協の裁判官以外考えられないわけですから、青法協を中央から徹底して遠ざける必要があった。なぜって、外部と結託して裁判所を批判するような裁判官は危なくて置いておけないからです」(前出の元裁判官)
6 「恐るべき裁判 付表・左翼裁判官、弁護士、法学者一覧」200頁ないし205頁に以下の資料が載っています。
・ 平賀書簡の全文(昭和44年8月14日付)
・ 平賀健太札幌地裁所長の弁明の要旨(昭和44年9月15日発表)
・ 札幌地裁の裁判官会議の発表文(昭和44年9月15日発表)
7(1)  「司法権独立の歴史的考察」(昭和37年7月30日出版)123頁には,1891年5月11日発生の大津事件における,大審院院長による事件担当判事への個別の働きかけについて以下の記載があります。
(9)宮沢俊義氏もまた昭和十九年発表の論文「大津事件の法哲学的意味」(前引)において、「司法権独立の原理は単に行政府の裁判官に対する干渉を排斥するにとどまらず、司法部内においても担当の判事に対して干渉を為すことを禁ずる趣旨でなくてはならぬ」としていた。しかし、それにもかかわらず、氏は、「司法権独立の原理は裁判官に対する他からの干渉を禁ずる趣旨であることは勿論であるが、それは決してさうした形式的な原理にとどまるものではない」とし、「裁判官以外の者の裁判官に対する干渉が違法であるかどうかは、そこで干渉の目的とせられる判決の内容如何によって定まる」、したがって「正しい判決を為さしむべく行はれる干渉」は違法でない、としているのであって、この見解が司法権の独立の保障のためにはなはだ問題であることは、第二章註(3)に論じたとおりである。
(2) 露国皇太子御遭難之始末(1892年に滋賀県庁が作成した,1891年5月11日発生の大津事件に関する報告書)(大津地裁の開示文書)を掲載しています。


第5 飯守重任鹿児島地裁所長の,国民協会機関紙への投稿問題(昭和44年10月)
1 飯守重任(いいもりしげとう)鹿児島地家裁所長は,シベリア抑留を経験した後,昭和31年8月23日に東京簡裁判事として復職した裁判官でありますところ,同人は,昭和44年10月1日,「平賀書簡事件の背景」と題する一文を,自民党の政治献金受け入れ団体である国民協会(昭和50年4月26日,国民政治協会に改称)の機関紙の第一面に投稿しましたところ,その内容として以下のものがありました。
① 裁判所の歴史始まって以来,このような(山中注:平賀書簡のような)善意の助言を裁判の独立に対する干渉,裁判の独立を侵すおそれがある,などとして問題にした者は絶えてなかった。
② 戦後,治安維持法など強力な体制防衛立法がなくなると,反体制集団はわがもの顔に横行し始め,裁判官のなかに反体制的影響を強く受けたグループができた。
③ 「造反」裁判官らは,最高裁の判例が確定しているのに,その判例を破り,政治外交を自己の政治思想のとおりに是正しようとする,これは不敵な裁判革命である。
④ 福島重雄裁判長は,反体制的法律家団体の青年法律家協会加入の裁判官グループ約250人のリーダーである。
⑤ 平賀書簡を問題化した札幌地裁の裁判官会議のメンバーと,その中核である福島重雄君の方が問題だと思う。青年法律家協会加入の裁判官がいることは,裁判官の独立,中立性を犯すことではないか。
⑥ この際最高裁当局は,青法協加入の裁判官に対し,名実ともに青法協の組織から離脱するよう勧告して裁判官の独立をまっとうせしめ国民の疑惑を一掃しなければならないのではなかろうか。
2 飯守所長は,昭和44年10月7日の会見において,以下のとおり語ったと報道されました。
① 体制と裁判官
   憲法に反する思想を持つ裁判官は,裁判官たる資格がない。憲法でいう体制とは,天皇制,階級闘争のない階級協調路線に基づく議会制民主主義,修正資本主義の三点に反しない体制をいう。憲法15条2項で,公務員は国民全体の奉仕者であると規定しており,憲法の番人だ。この体制に反する階級闘争を容認する共産党員などは,公務員の資格も裁判官の資格もないというべきだ。また,階級闘争を容認する裁判をしてもらっては困る。
② 寄稿の経緯と,国民協会紙発表についての見解
   平賀事件の直後に協会から要請があり,平賀書簡について世間が誤解し,最高裁の平賀所長に対する処分も間違っていると思ったからだ。現職裁判官が政治色のある機関紙に寄稿しても,特定の政党を支持する内容でなければよい。雑誌や新聞から求められ,裁判官が自分の意見発表の場として寄稿するのは,憲法の公務員規定に反しない。言論の自由の検知からも,かまわない。
3(1) 最高裁判所は,昭和44年10月8日に裁判官会議を開いて,以下の趣旨の岸盛一最高裁判所事務総長の談話を発表しました。
① 飯守所長が,平賀所長の場合のように書簡による助言が今まで例がなかったとはとうてい考えられないとしているのは事実に反する。
② 最高裁の平賀所長に対する処分は必要かつ十分なものであり,談話が事実とすれば現職所長として穏当を欠く発言である。
(2) 福岡高裁は,昭和44年10月13日に臨時裁判官会議を開き,岸盛一最高裁判所事務総長の談話と同じ内容で,飯守所長に対して注意しました。
4 横山利秋衆議院議員(日本社会党所属)は,昭和42年5月11日の衆議院法務委員会において,「飯守裁判官は、くどく言いますように、ソビエトへ行けばソビエトで赤に染まり、日本へ帰ってくれば、あれは早く帰らんがための偽りであったという声明書を出す。」と発言しています。

第6 最高裁判所による,青法協会員裁判官の脱会勧告(昭和44年11月頃開始)
1 事案の概要
   最高裁は,昭和44年11月頃から,青法協会員裁判官の脱会勧告を行うようになりました(日弁連三十年289頁参照)。
   そして,昭和45年1月に最高裁判所事務総局の局付判事補10人を全員脱会させたのを皮切りに,全国各地の裁判所でブルーパージが実施されるようになりました。
2 昭和45年1月に青法協を脱会した局付判事補のその後
(1) 昭和45年1月に青法協を脱会した最高裁判所の局付判事補は10人でありますところ,そのうちの9人( 「恐るべき裁判 付表・左翼裁判官、弁護士、法学者一覧」63頁記載の人物)についていえば,3人(13期の町田顕裁判官のほか,15期及び16期)が最高裁判所裁判官まで昇進し,3人(13期,14期,15期)が高裁長官まで昇進し,1人(14期)が内閣法制局長官まで昇進し,1人(16期)が高裁部総括まで昇進し,1人(12期)は地裁部総括で依願退官しました。
(2) 第15代最高裁判所長官となった13期の町田顕裁判官は,昭和45年1月に青法協を脱会しました。
3 「法の番人として生きる」の記載
   14期の大森政輔裁判官が著した「法の番人として生きる 大森政輔 元内閣法制局長官回顧録」38頁には以下の記載があります。
   現最高裁長官の町田顕さんが一三期で、民事局付として私より一年早く民事局に入っていました。当時の局付の中では、もう一期先輩の一二期の人ぐらいを頂点として、私たち一四期が真ん中ぐらいで、もう少し若い一五期、一六期の人もいました。だから一二期から一六期ぐらいのあいだの人が局付として、いたわけです。年齢も近いし、小異はあるにしてもだいたい同じ立場でしたから、局付会なんていう飲み会をやったりもしていました。特に一連の青法協問題が起こってからはそうです。局付はほとんどが青法協の会員で、会員率が一番高い集団ではなかったでしょうか。当時の青法協の会員というのはそういう位置づけだったのですね。
4 「守柔 現代の護民官を志して」の記載
   13期の守屋克彦裁判官が著した「守柔 現代の護民官を志して」(日本評論社)150及び151頁には以下の記載があります。
(山中注:青法協からの)脱会勧告は公然と行われたわけですが、今振り返ってみると、いくつかの段階で特色があるように思われます。最初は、平賀書簡問題の後の飯守発言に関する朝日新聞などの公正らしさ論を口実にした最高裁判所の脱会勧告で、その頂点が局付判事補の集団脱会になると思います。この時期までに、地方にいてJ・J会などに参加する機会がなかったなど、会に対する帰属意識が少なかった会員で辞めたような人もいますが、局付脱会の影響は大きかったですね。町田さんをはじめとして、局付判事補の人たちのなかには、それまでJ・J会に積極的に参加しており、しかも実力があって、会員からの信望が篤かった人が少なからず含まれていたのです。そもそもの沿革として、青法協には、東京大学のセツルメント出身の人が多く、花田さん、高山さん(一〇期)など、セツルメント出身で、青法協に入り、裁判官を目指したという人が中心にいて始まったことであり、町田さんもその一人でした。また、もう一つの流れは京大グループでした。当時京都大学の現役組が裁判官の中に多くいて、一二期の金谷利廣さんや一四期の荒井史男さん、大森政輔さん、小田健司さんなど優秀な人たちが、会に活気をもたらしていたといえます。会を辞めた人たちが、その後、町田さんが最高裁判所長官になったのをはじめとして、最高裁判事や高裁長官などの要職に就いているのも当然といえば当然と言えます。

5 最高裁物語(下巻)の記載
(1) 最高裁物語(下巻)86頁及び87頁には以下の記載があります。
   石田の意向を受けた事務総局幹部による切り崩し工作が、赤レンガの最高裁(山中注:現在の最高裁判所庁舎が竣工したのは昭和49年3月です。)の奥深くでひそかに行われた。最高裁の空気は冷えびえとしたものに変わって、局付判事補の集団脱会事件はこんな空気のなかで起きたのである。局付判事補たち自身の会員裁判官への証言がある。
   「課長は『君が青法協をやめないならポストを替える』と毎日毎日攻めたてた。『彼が青法協をやめるまで書類をまわすな』といって仕事の上でも村八分にした」
   「局長は最初はレストランや自宅に招いてごちそう攻め、最後は『理屈じゃない。業務命令だ』と叱り飛ばした。青法協の脱会届を内容証明郵便にしたのも局長の指示です」
「『せっかくエリートコースにのっているのに青法協と心中してもいいのか。よく考えろ』と言われた」
   昭和四五年一月一四日、最高裁事務総局にいた青法協会員の局付判事補一〇人全員が青法協脱会の内容証明郵便を出して、最高裁事務総局内の青法協組織は壊滅した。このなかにはリーダーといわれた人もいた。青法協が脱会した判事補からとったアンケートのほとんどには「先輩裁判官である局長や課長に強く脱会を迫られ、悲しいがやむを得なかった」という悩みがにじんでいた。任官して五、六年、同期生約七〇人のなかから東大、京大などの国立大卒で成績抜群の二、三人が選ばれるという超エリートの脱会工作、それと同時に各地裁でしぶきをあげ始めた青法協会員裁判官の切り崩し工作は、東京で行われる全国高裁長官事務打ち合わせ会などが情報交換の場となっていた。
(2) 「恐るべき裁判 付表・左翼裁判官、弁護士、法学者一覧」63頁には9人の局付判事補しか記載されていませんから,残り1人の局付判事補が誰であるかは不明です。
   ただし,最高裁物語(上巻)320頁には「青法協はそれなりに若い裁判官の支持があり、たとえば最高裁事務総局という”エリートの城”には各局に総計二九人の判事補が「局付」として配属されているが、そのうち九人までが青法協会員裁判官なのである。」と書いてあります。
6 昭和45年3月20日の国会答弁
   矢崎憲正最高裁判所人事局長は,昭和45年3月20日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 今日のところ、青年法律家協会に属するということだけを理由に、採用しないとかどうとか、そういうようなことは方針として何らいたしていないというように考えております。
② (山中注:最高裁判所として司法研修所の教官を通じて青年法律家協会の会員に任官を断念させるというような働きかけは)ありません。
③ (山中注:最高裁判所は任官者の思想、信条によって任地その他について不利益な取扱いをするということは)ございません。

④ (山中注:昭和44年11月頃から,最高裁の局付判事補の青法協会員に対し,最高裁から強く退会を)勧告したというようなことは全くございません。
⑤ 先ほどお話がありました、最高裁におります裁判官が(山中注:青法協を)脱会したということについては、裁判官同士で十分に論議を尽くした上で、そこにいるのが妥当でないというように考えて脱会したように私は聞いておるわけでございます。
⑥ 裁判官であっても、政治的に活動をするということになればこれはやはり好ましくない、これは当然のことであろうと存ずるわけでございます。
   したがいまして、それはそういう事柄についてのケース・バイ・ケースという問題だろうと存じます。
⑦ それ(山中注:青法協に所属していること)は裁判官によって、これは非常に困ったことだと思って脱会する者もございましょうし、そうでない者もあるかもしれませんが、この問題につきましてはいろいろ朝日新聞、毎日新聞等が論ぜられているところでございますので、この席上ではこの程度にいたしたいと思います。
⑧ そのような方針(山中注:青法協所属の裁判官を脱会させるという方針)はございませんけれども、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞に出ている論説は、これはもっともなことだというように私どもは読んでいるわけでございます。


第7 最高裁判所事務総長談話(昭和45年4月)及び最高裁判所長官の訓示(昭和45年6月),並びに関連する国会答弁
1 最高裁判所事務総長談話(昭和45年4月)

 「裁判官の政治的中立性について」(昭和45年4月8日付の岸盛一最高裁判所事務総長談話)は,同月9日の新聞朝刊に掲載されたほか,裁判所時報544号(昭和45年5月1日付)2頁にも掲載されていますところ,その内容は以下のとおりです。
  裁判官の任用について、差別待遇があると二十二期司法修習修了者の代表が主張しているそうであるが、裁判官志望の某君らが不採用となった理由は、人事の機密に属することなので、一切公表することはできない。ただ、同君らが青法協会員であるという理由からではない。
  なお、一般的問題としてであるが、裁判官は、その職責上からして、特に政治的中立性が強く要請されているのは、当然のことである。そしてこの中立性は、裁判官の法廷における適正な訴訟指揮権や法廷警察官の行使を通じ、窮極においては、裁判によって貫かれるべきことである。しかしこれと同時に、裁判は、国民の信頼の基礎の上に成り立っているものであり、したがって裁判官は、常に政治的に厳正中立であると国民全般からうけとられるような姿勢を堅持していることが肝要である。裁判官が政治的色彩を帯びた団体に加入していると、その裁判官の裁判がいかに公正なものであっても、その団体の構成員であるがゆえに、その団体の活動方針にそった裁判がなされたとうけとられるおそれがある。かくては、裁判が特定の政治的色彩に動かされていないかとの疑惑を招くことになる。裁判は、その内容自体において公正でなければならぬばかりでなく、国民一般から公正であると信頼される姿勢が必要である。裁判官は、各自、深く自戒し、いずれの団体にもせよ、政治的色彩を帯びる団体に加入することは、慎しむべきである。
 以上は最高裁判所の公式見解である。
2 最高裁判所長官の訓示(昭和45年6月)
  昭和45年6月29日・30日開催の長官所長会同における,当時の石田和外最高裁判所長官の訓示(裁判所時報548号(昭和45年7月1日付)1頁に掲載されています。)には,以下のとおりブルーパージを正当化する記載が含まれていました(原文の該当箇所には改行が全くありませんが,改行を追加しています。)。
  裁判が公正であるというについては,裁判の内容自体が公正であるばかりではなく、その公正が国民一般から信頼され,いささかも疑惑を持たれない姿勢を堅持することも、きわめて重要であります。裁判官の地位を保障し,外部からの圧力をうけないよう配慮されているのも、そのためでありますが,裁判官自身もまた、その言動において細心の心づかいをしなければなりません。
  この点において,当面、最も留意されるべき重要な課題の一つは,政治的色彩を帯びた団体への裁判官の加入に関する問題であります。裁判官が、学殖を積み視野を広めるため,平素、先輩、同僚等と相互に知識を交換し,あるいは、日進月歩の社会に対応した各種の研究を行うことは,好ましいことであります。
  しかしながら、その限界を越えて,政治的色彩を帯びた団体に加入することは、裁判官の心構えとして、慎しむべきことといわなければなりません。政治的色彩を帯びた団体の構成員としてその傘下にある以上、その裁判官の裁判がいかに公正なものであっても、政治的色彩をもったものと国民からうけとられるおそれがあるのであります。
  また,表現の自由が尊重されるべきことはいうまでもありませんが,裁判官としての地位に基づく職業的倫理として、おのずから制約のあることを自覚し,裁判の公正について国民の疑惑を招かないための心構えとして、裁判官は,偏執に陥ることなく、中立の態度を堅持するよう不断の自戒と内省を重ねることが肝要であります。
 今日ほど、政治的中立性に対する配慮が強く裁判官に要請されるときはなく,ことがらの重要性に思いをいたしますならば、裁判の公正に対する国民の信頼を保持することにいかに配慮を加えても過ぎることはないといえましょう。裁判官各位におかれては,憲法により付託された崇高な氏名と重大な責務に深く思いをいたされ、裁判の公正に対しいささかの疑惑をもうけることのないよう戒心し,もって国民の期待にこたえられることを切望するしだいであります。
3 関連する国会答弁
(1) 昭和47年3月25日の国会答弁
  高輪1期の矢口洪一最高裁判所人事局長は,昭和47年3月25日の衆議院予算委員会第一分科会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 裁判官と申しますか、広く申しますれば裁判所でございますが、裁判所はあくまで公正中立でなければいけない、これは当然でございますし、また、公正中立であるというふうに国民からの信頼を受けなければ、その職責というものは一日といえども果たしていけないものであろうかと思います。
 その信頼を受けるということを私どもは「らしさ論」ということで、公正らしさが必要であるということを申しておるわけでございます。
② そういう観点から談話が出ておるものであることは当然でございますが、ただ一言申し上げておきたいと思いますのは、青年法律家協会ということが当面の問題でございましたので、岸事務総長談話の中に、いわゆる政治的色彩の強い団体ということで最高裁の見解の表明がございましたが、私どもといたしましては、何もそういった政治的色彩の団体のみにその問題は限るべきではなくて、その他の一般的な団体でございましょうとも、それに裁判官が加わることによりまして、一般の国民から公正である、中正であるということを疑われるようなものであるならば、それはやはり裁判官の心がまえとして加入を避けるべきである、裁判官がそれに加入することは好ましくないという考えを持っておるわけでございます。
 そういうことであの談話が出ておるものであることを御承知いただきたいと思います。
(2) 昭和48年4月11日の国会答弁
 高輪1期の矢口洪一最高裁判所人事局長は,昭和48年4月11日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 端的に申し上げますと、青年法律家協会に所属する方を採らないのではないかというようなことが言われました。これはお断わり申し上げますが、私どもは青年法律家協会に所属しておられるから採るとか採らないというようなことは一切考えていないわけでございますが、結果的に今回も不採用の中に青年法律家協会の方が何名おるというようなことがいわれたりいたしますと、若い方々なんか、そういうことが関連があるのじゃないかというふうに考えられがちのようでございます。
  そういうことじゃないということはもう繰り返し申しておりますし、いろいろな情勢から、稲葉委員等もごらんいただきますれば、そうでないということがおわかりいただけると確信いたしますけれども、若い方はなかなかそうもいかない面があるようでございます。
② 裁判所法五十二条は、積極的な政治活動というものは禁止いたしておりますけれども、特定の政党に加入するとか、あるいは政治的な団体に加入するということ自体を禁止しておるわけではないわけでございます。
  ただ、これは昭和四十五年の四月でございますが、事務総長が最高裁判所の一応の公式な見解ということで打ち出しておりますが、政治的な団体に裁判官が加入するということは、法律的にはいけないわけではないといたしましても、裁判の公正らしさというものに対する、国民から疑惑の目で見られるおそれがあるという観点から、いわゆるモラルの問題として、そういった政党あるいは政治的な団体というものに加入することは好ましくないということを申しております。
  これは最高裁判所としての現在も変わらない一般的な見解でございます。

③ 二、三年前までは青年法律家協会にだれが属しておるかということにつきましては、青年法律家協会の側で名簿を発行いたしておりまして、裁判官会員はだれとだれだというふうな名簿がございました。そういうことでございますので、私どももその限度ではわかっておるわけでございます。
  しかし、ここ二、三年、一切そういう名簿も発行されませんし、また御本人からのそういったお申し出もございませんし、私どものほうも、どういう団体に裁判官のどなたが加入しておられるかというようなことを伺うということもいたしておりませんので、現在、ここ二、三年の状況としては、どなたが会員になっておられるかということは、私どもには一切わかっていないという状況でございます。
4 矢口洪一 元最高裁判所長官の回想
 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)70頁には以下の記載があります。
   青法協が当時機関紙で「安保反対」や「核兵器廃絶」など、政治的スローガンを掲げて活動していたことは確かである。裁判官がそうした政治的な決議に加わったり、具体的行動に出れば、裁判の公正さを疑わせることになる、という危倶もあった。
  人事局長だった私はしばしば国会の法務委員会に「最高裁長官代理者」として出席を求められ、この問題をめぐる議員の方々の質疑への応対に忙殺された。質疑の中心は、判事補希望者の不採用や「再任拒否」が青法協会員であることを理由とするのではないかという点に集約される。
  ことが人事に関する以上、「ここではその理由は一切公表できない。全人格的評価の結果であるとしか言えない」という答弁に徹したが、この対応はいまでも正しかったと思う

第8 飯守重任鹿児島地家裁所長の思想調査及び依願退官(昭和45年12月)
1 飯守重任(いいもりしげとう)鹿児島地家裁所長は,昭和45年12月23日,部下の9人の裁判官に対し,以下の事項について公開質問を行いました(同日の最高裁判所裁判官会議の開催中にこのことが最高裁判所秘書課長から報告されて最高裁裁判官に衝撃を与えたみたいですが,議事録への記載はないです。)。
① 裁判官が教科書訴訟、長沼ナイキ訴訟など政治上の重要問題を論議している裁判で当事者の一方を支持し、かつ安保条約廃棄などを主張する政治団体・青年法律家協会に加入していることの是非と見解を承りたい。
② 全司法労組の体質が憲法に反する革命的体質であるか、合憲的体質であるか。
③ 現行憲法上の天皇制度と修正資本主義制度の是非についての見解をお聞かせ願いたい。
④ 階級闘争は合憲か違憲か。
2 最高裁は,川井立夫福岡高裁長官宛に,昭和45年12月24日,以下の緊急指示を出しました(最高裁物語(下巻)96頁のほか,最高裁判所裁判官会議議事録(昭和45年12月24日開催分)参照)。
    「飯守所長が、裁判官に対して公開質問状の形式で回答を求めたことは、あきらかに地・家裁所長としての職務範囲を逸脱した行為である。よって貴官は同所長に対し公開質問状を撤回するように伝達されたく、また質問を受けた裁判官にも質問に応ずる限りでない旨を伝達することとされたい」
3(1) 飯守重任裁判官は,東京高裁判事への異動を拒否したため,昭和45年12月25日付で鹿児島地家裁所長から鹿児島地家裁判事となり,同月31日,依願退官しました。
(2) 朝日新聞HPに「解任を前に福岡高裁の川井立夫長官と面談する鹿児島地裁の飯守重任所長(左)=1970年12月25日、福岡高裁」が載っています。

第9 宮本再任拒否事件(昭和46年3月から同年5月まで)
1 昭和46年当時の状況
・ 最高裁物語(下巻)98頁には以下の記載があります。
    (山中注:昭和46年当時)あい変わらず「青法協」にきびしい風が吹いていた。脱会工作は執勘だが巧妙に、会員裁判官を「思想」とあまり関係のない交通事件、少年事件担当に配置換えする異動も目立ってきた。東京、横浜家裁に異動となった三人の青法協裁判官はそろって交通、少年事件係であった。これまで例外なくついていた「兼地裁判事補」の肩書が消えて家裁判事補だけになった。
2 宮本再任拒否事件
(1) 昭和46年3月31日,青法協会員であった13期の宮本康昭熊本地家裁判事補の再任が拒否されるという宮本再任拒否事件が発生し,同年4月13日限りで兼官たる判事補の任期が満了しました。
(2)ア 熊本簡易裁判所判事としての宮本康昭裁判官は,昭和48年4月5日に依願退官しました。
イ 最高裁物語(下巻)132頁には以下の記載があります。
    宮本は熊本地・家裁判事補のとき、最高裁に再任希望を提出して拒否されたが、簡裁判事(熊本簡裁)としての任期が三年残っており、その職にとどまって地裁判事への再任を要求し続けてきた。
    しかしその要求も、二年目になって青法協会員八人をふくむ七四人の判事補全員が再任を認められた環境の変化をあげて、宮本は「私の目的は一応達成できた」と三月一四日には簡裁判事も辞める田中首相あての退官願を提出した。
(3) 日弁連は,昭和46年5月8日の臨時総会において,「裁判官の再任拒否に関する決議」と題して以下の事項を決議しました。
    最高裁判所は、本年度の裁判官の再任にあたり、10年の任期を終えた13期裁判官の宮本康昭判事補を再任名簿から除外し、また23期司法修習生で裁判官を志望するもののうち7名の不採用を決めた。
    右の宮本判事補と新任を拒否された7人のうち6人は青年法律家協会の会員であり、1名は任官拒否を許さぬ会の発起人であるということである。右事実と最近の司法をめぐる一連の経過を見るとき、また、本人及び国民の理由明示の強い要望にもかかわらず最高裁判所がこれを明らかにしないことから見て、この処分は裁判官の思想・信条・団体加入を理由に再任を拒否したものと考えざるを得ない。
    このことは、裁判官の基本的人権をおかすばかりか、裁判官の身分保障ひいては司法権の独立をおびやかすことになるとともに、民主主義の基本にかかわる重大事である。
   よって最高裁判所に対し直ちに再任ならびに新任をするよう強く要望するものである。
3 矢口洪一 元最高裁判所長官の回想
(1) 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)70頁には以下の記載があります。
    判事補への採用や判事への再任が認められなかった事例は最高裁発足直後からあったし、その後も出ている。要は裁判官個人の思想・信条をめぐる「適格性」が問われたのではなく、国民が求める裁判官としての「ふさわしさ」が文字通り全人格的に評価された結果なのである。
    それが、たまたま社会の各層で広がっていたイデオロギー的な対立を背景に増幅され、本来の議論とはかけはなれたところにまで波及したのは不幸だったというべきだろう。
     ともあれ一連の「司法の危機」では、「政党加入の自由」を当然の前提としたといわれている裁判所法成立当時の考え方と、公正らしさが必要とする日本の社会の現実とのギャップが表面化した。ここでもモデルとした制度と社会の実態との落差が浮かび上がったともいえる。
    マスコミや国会質疑など世論の渦の中で、国民が裁判官に求める「公正らしさ」とは何かについて、思い悩む日々ではあった。
(2) 平成11年11月27日に東京九段の専修大学で開催された,第17回全国裁判官懇話会全体会において,「司法改革の背景と課題-法と日常生活-」と題する講演を行いました(判例時報1698号3頁ないし20頁)ところ,同号12頁には以下の発言が載っています。
    判事補というのは、判事からするとこれは読んで字のとおり半人前なんですね。だから、先輩は判事補を指導しなければいけないはずです。にもかかわらず、指導すると干渉だとなる。そういった矛盾を抱えているわけです。それから今の制度では一〇年で任期がくることになった。他方判事補は一〇年で判事の資格を取得する。その上、当時の世情もあったと思います。大学の騒ぎ等もありましたから。今から考えてみると、どうしてあんなに騒いだのだろうと思うようなこともありました。以上のトータルでああいう結論になったと申し上げるよりほかないと思います。今となってみると、問題のあの方(山中注:13期の宮本康昭裁判官)が今日の司法行政のことを一番理解されているようにも思われます。

第10 23期司法修習生の任官拒否(昭和46年3月),及び司法修習終了式の中止(昭和46年4月)
1 23期司法修習生の任官拒否(昭和46年3月)

(1) 23期司法修習生の裁判官任官希望者に対しては,昭和46年3月30日,最高裁判所人事局長から,4月6日付で判事補の採用内定通知が電報で届いたものの,7人については不採用の通知がされ,そのうちの6人が青法協会員だったそうです。
(2) 7人の任官拒否等に関しては,日弁連会長は,昭和46年4月3日,「13期裁判官の再任拒否問題に関する談話」を出しました。
    なお,13期裁判官は,宮本康昭熊本地家裁判事補のことです。
(3) 23期の裁判官志望者7人に対する任官拒否については,昭和46年4月5日午後1時半頃,23期の裁判官内定者55人のうちの40人が有志で,「青法協会員ら7人の任官拒否は思想・信条,団体加入による差別の疑いが強い。このまま裁判官として職務につくことは耐えがたい不安を感じる。不採用の理由を明らかにせよ」などとする要望書(署名者は23期裁判官内定者45人)を高輪1期の矢口洪一最高裁判所人事局長に提出するため,最高裁判所に赴きました。
     しかし,最高裁判所は彼らが構内に入ることを拒否し,要望書を受け取りませんでした。
(4)ア 二三期司法修習生の任官拒否問題に関する調査報告書(昭和46年5月付の,東京弁護士会司法制度臨時措置委員会の文書)2頁には「第二、任官拒否に至るまでの二三修習生の事情」として以下の記載があります。
     任官差別に対して強い危惧の念をいだきつつ後期修習を迎えた二三期修習生は、いちはやく任官差別阻止のための運動を展開した。
     即ち一一月には「分離修習、任官差別を許さぬ会(以下「許さぬ会」と略称する)」を結成する一方、四三五名の連署をもって最高裁宛の任官差別反対の要望書を研修書に提出したのをかわきりに、以後本年三月までに、数回にわたる修習生大会や、いっせいクラス討論を行って結束を固めるとともに内外の署名活動を推進して来た。
    このような運動が行われる中で、任官志望者六二名に対する採用面接は、三月二五、二六の両日にわけて行われた。彼等は面接が終わった直後、その結果をもちよって互いに比較検討したが、その結果、きわだって特異な面接方法がとられた七名がクローズアップされるに至った。それが前記の七名(山中注:任官拒否された7人の司法修習生)であった。なお面接の内容については多くの任官志望者が、帰宅後直ちに詳細なメモをとったといわれている。
     さて、七名について面接内容が特異だったというのは、第一にほかの任官志望者に対しては、志望任地や家族関係などについて、かなり詳しく尋ねられているのに、七名については、その点殆ど実質的な質問を受けていないことであり、第二に二回試験の内容や法律問題について、執拗な追及により成績の悪いこと、または不勉強であることの自認をせまるような形での質問がされていることである。この第二の点について七名以外の者に対しては、質問はされても、そのような形での追及はされていないし、二回試験で殺人未遂か保護責任者遺棄かが論点になっている問題で道交法違反しか認定しなかったなど、誰が考えても重大なミスをおかしているのに、その点を全く追求されなかった例も指摘されている。
    ここに至り、彼等の間では、この七名が任官を拒否されるのは必至と予想された。
    そして、その予想は数日後に、まさに的中したのである。
イ 前述した調査報告書15頁には以下の記載があります。
     任官拒否の理由について、最高裁判所は人事の機密をたてに一切公表していない。しかし最高裁が昭和四五年一二月、二三修習生の要望に対して「任官について、宗教、信条、性別その他法の認めない差別をする筈はないが、成績が考慮されるのは当然である。」旨の回答をしていることと、今回の採用面接で七名についてだけは他の任官志望者と比べ、極めて特異な面接方法によって、ことさら「成績が悪かった」ということが強調されていること、とくに◯◯君(山中注:原文では実名)については、面接の際「成績が悪かった。こんな成績ではとても裁判官は無理だ。」といわれていることなどからして、最高裁は、拒否理由が成績の点にあることを暗に示しているものと判断することができよう。
(5) 「思い出すまま」(著者は2期の石川義夫裁判官)199頁及び200頁には以下の記載があります。
    (山中注:25期司法修習の)後期の終わりが近づいたある日、田宮上席教官と次席の私(山中注:石川義夫民事裁判教官)が矢口人事局長に呼び出された。問題は青法協に所属する修習生が判事補任官を志望した場合、これを如何に処置するかということだった。矢口氏は田宮氏に「研修所教官の方で、疑わしい連中の試験の成績を悪くしておいてくれれば、問題は解決するじゃないか、なんとか考えてくれ」と言った。要するに、青法協所属の修習生の任官を人事局の責任で拒否することをしたくないので、研修所教官の責任で拒否しようというのである。田宮氏は「教官にはそんなことは出来ません」と言下に断った。私はこの件について、矢口氏の名誉を慮って、今日まで他言しなかったが、目的のためには手段を選ばない矢口氏の手法を思うと、こんなことがあったと、もっと早い時期に公にすべきであったかと後悔している。
2 司法修習終了式の中止(昭和46年4月)
(1)ア 阪口徳雄修習生は,昭和46年4月5日(月)の午前中に司法研修所講堂で行われた司法修習終了式において,23期の裁判官志望者7人に対する任官拒否に抗議するため,司法研修所長のマイクを手にとって,「裁判官への任官を拒否された修習生7人に発言させる機会を与えて欲しい」などと発言を始めたため,約1分後に司法研修所事務局長が修習終了式の終了を宣言したという事件を発生させました。
    最高裁判所は,同日午後6時から臨時の裁判官会議を開催し,「品位を辱める行状」があったということで,阪口徳雄修習生に弁明の機会を与えることなく,同人を罷免しました。
イ 平成29年3月15日付の司法行政文書不開示通知書及び平成29年度(最情)答申第47号(平成29年12月1日答申)によれば,昭和46年4月に司法修習生を罷免した際の最高裁判所裁判官会議議事録は保存されていません。
(2)ア 阪口徳雄修習生に対する罷免通知の時刻につき,昭和46年4月6日の毎日新聞朝刊では,午後7時40分頃に司法研修所事務局長から罷免通告が伝えられたと書いてあります。
イ 昭和46年5月8日の日弁連臨時総会決議では,午後8時26分に罷免処分が言い渡されたと書いてあります。
ウ 自由と正義2018年7月号5頁には,阪口徳雄弁護士が自分で,「1971年4月5日午後8時過ぎ司法研修所の所長室で守田所長(当時)から「司法修習生の品位を汚した」ので罷免するという最高裁裁判官会議の決定書を交付された。」と書いてあります。
(3) 高輪1期の矢口洪一最高裁判所人事局長は,昭和46年5月20日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
   わしづかみというふうに、私が、衆議院の法務委員会で申し上げましたところが、問題にされたようでございますが、そのときの状況を正確に申し上げさせていただきますと、当日研修所長から最高裁にあてまして、こういうトラブルがあったということの正式の文書による報告がございました。で、その文書による報告の内容を私自身といたしましてはかいつまんで申し上げたつもりであったわけでございますが、その文書を朗読したわけではございませんので、その間少しやや妥当を欠く面もあったかと思います。お尋ねでございますので、短いものでございますので、そのところを朗読さしていただきましてお答えにかえさせていただきたいと思います。
   「(別紙)」でございますが、「予定よりやや遅れて十時三十分ごろ事務局長が開式を宣し、司法研修所長が式辞を述べるため登壇した。ところがその発言前に、前から七、八列目の中央に座っていた阪口徳雄が立ち上り、所長に向い、「任官拒否された修習生に十分ぐらい発言の機会を与えてもらいたい云々」と言い、周囲の者もこれに和し「そうだ、そうだ」という発言、拍手などで式場は騒然となったので、所長は手をあげておだやかに阪口を制し、事務局長は進行係用マイクで「まず、式辞を聞きなさい。」と二度か三度注意した。しかし、彼等はこれを聞かず、中には阪口に対し「マイクでやれ」「前に出てやれ」と声援する者あるいは「止めろ」と叫ぶ者もあった。阪口は自席を離れ、演壇の下に進み出て、演壇用マイクを無断で抜き取り、演壇を背にして修習生に向い、マイクをもつて演説を開始し、式場はますます騒然となった。
   所長は、一言の式辞も述べないままこの事態では到底終了式を続行する可能性がないものと判断して自席に戻ったので、事務局長は進行係用のマイクを持って所長席の近くに行き、所長の指示を仰ぎ「終了式はこれで終了する。」と宣した。しかし、数名の修習生はこれを不満とし、自席を離れて事務局長を取り囲み、「どうして止めるのか」と抗議し、さらに所長、教官の退席を阻止しようとする修習生も若干名あったが、事務局職員が数名でスクラムを組み通路を確保したので、所長、教官も次第に退席し、その後は修習生だけで抗議集会を行なった。」というのが研修所の報告でございます。
  事実は、正確にはこのとおりであるというふうに御承知おきをいただきたいと思います。
(4) 阪口徳雄修習生の罷免事件では,日弁連が昭和46年5月8日に臨時総会を開催して抗議決議を出しました(日弁連HPの「臨時総会・司法修習生の罷免に関する決議」参照)。
   また,同決議によれば,この事件に関する矢口洪一最高裁判所人事局長の国会答弁は,阪口徳雄修習生の実際の行動とは異なるとのことです。
(5)ア 24期ないし27期については,クラス別の終了式が実施されたものの,28期については,裁判官志望者に対しては最高裁で,検察官志望者に対しては法務省で,それぞれ終了証書が手渡され,弁護士志望者のみが,終了式当日,各自,任意の時刻に研修所事務室で修了証書を受け取りました(昭和52年7月発行の「最近の司法研修所の実態と問題点」(大阪弁護士会)34頁)。
イ 全体の終了式が再開したのは,昭和58年4月6日実施の35期司法修習生の終了式からでした(研修時報69号(1983年7月発行)参照)。
ウ 59期司法修習生をしていた私の記憶によれば,58期司法修習生までは全体の終了式があったものの,59期司法修習生はクラス別終了式でした(大講堂の容量不足のためと修習当時に聞きました。)。
3 阪口徳雄は25期の弁護士になったこと
   阪口徳雄は,2年後の昭和48年4月16日,司法修習を終え(昭和48年4月18日の官報参照),25期の弁護士になっていますところ,自由と正義2018年7月号6頁に以下の記載があります。
   1973年1月末に,終了式を「混乱」させたことを謝り,再採用となった。2回試験を合格しているので研修所に通わず修習終了となり,25期の卒業式と同時ではまた騒がれると思ったのか(笑),終了式の1週間後に,守田所長,教官に囲まれ「たった1人の終了式」で罷免事件は終わった。


第11 「司法の危機」は存在しないとする,村上朝一最高裁判所長官の「就任のことば」
1 昭和48年5月21日就任の,村上朝一(むらかみともかず)最高裁判所長官の「就任のことば」(昭和48年6月1日発行の裁判所時報618号1頁)には以下の記載があります。
    最近一部では、「司法の危機」ということが叫ばれたり、あるいはそういった意識を裁判所の内外にあおるような言動がみられますことはまことに遺憾なことであります。最高裁判所をはじめすべての裁判所は、裁判権の行使においても司法行政事務を処理するうえでも、厳正公平な態度で望んでおり、世上いわゆる「司法の危機」というようなことが存在しないことはいうまでもありません。司法に関する諸問題について、建設的な意見を内部で交えることは必要ではありますが、仮りにも、裁判所職員がこのような一部の働きかけに動じるようなことがあってはならないと思います。裁判所が国民の信頼をますます確保する道は、各人がそれぞれの職分に応じて、職務を全うし、一致協力して裁判所の指名をはたすことにあると考えます。
2 法学館憲法研究所HP「書籍『検証・司法の危機1969-72』」に以下の記載があります。
    「司法の危機」といわれる60年代の後半から70年代前半、憲法に忠実であろうとした若手裁判官ら、及びこれを支えた民衆と、憲法を敵視する政治勢力及びこれに「迎合」した最高裁側とが、司法・裁判の独立をめぐって熾烈な攻防を展開しました。

第12 22期ないし31期の判事補志望の司法修習生に対する任官拒否の人数の推移
1 「私たちはこれから何をすべきなのか 未来の弁護士像」(平成26年7月25日発行)86頁によれば,判事補志望の司法修習生に対する任官拒否の人数の推移は以下のとおりです(括弧内は青法協会員です。)。
22期:3人(2人)
23期:7人(6人)
24期:3人(2人)
25期:2人(2人)
26期:2人(0人)
27期:4人(2人)
28期:3人(3人)
29期:3人(1人)
30期:2人(1人)
31期:5人(5人)
期間中の合計:34人(24人)
2(1) 「思い出すまま」(著者は,昭和46年8月から昭和50年7月まで司法研修所民事裁判教官をしていた2期の石川義夫裁判官)200頁及び201頁には以下の記載があります。
     この期(山中注:25期)でも、私のクラスで裁判官志望のUが成績不良のため判事補に採用されなかった。二回試験の結果は何人中何番という形で公表されることがなく、成績不良が客観的に説明されないので、青法協の連中はやはり彼が青法協のメンバーであったために、任官拒否にあったのだと騒いだが、私としてはそれ以上どうすることもできず、彼は出身地へ帰って弁護士となった。
(2) 東弁リブラ2018年1月号の「忘れることのできない私の修習生時代」(筆者は31期の弁護士)には以下の記載があります。
     裁判教官から青年法律家協会の会員で任官を志望していた修習生に対して同協会からの脱退勧告があった。同協会はリベラルな傾向があり,当時の公害裁判や労働裁判では市民側や労働者側に理解を示す人が多かった。結局,友人の青法協会員任官志望者5人が採用拒否され,心が痛む思いがした。

第13 官公庁労働者の争議行為禁止規定の合憲性についての最高裁判決の流れ
1 第一段階の最高裁判決
    公共の福祉論又は全体の奉仕者論から比較的簡単に争議行為禁止規定合憲の結論を導きました。
(1) 現業国家公務員の争議行為禁止規定を定めた公共企業体等労働関係法(昭和23年法律第257号。略称は「公労法」であり,現在の「行政執行法人の労働関係に関する法律」です。)17条1項につき最高裁大法廷昭和30年6月22日判決(三鷹事件上告審判決)及び最高裁昭和38年3月15日判決(檜丸事件上告審判決)
(2) 非現業国家公務員の争議行為禁止規定を定めた昭和23年7月31日政令第201号につき最高裁大法廷昭和28年4月8日判決(弘前機関区事件上告審判決)
2 第二段階の最高裁判決
    労働基本権の保障の重要性から、争議行為禁止規定の解釈適用につき限定を付した上で合憲の結論を導きました。
(1) 現業国家公務員の争議行為禁止規定を定めた公労法17条1項につき最高裁大法廷昭和41年10月26日判決(東京中郵事件上告審判決)
(2) 非現業国家公務員の争議行為禁止規定を定めた国家公務員法98条5項(現在の98条2項)につき最高裁大法廷昭和44年4月2日判決(全司法仙台事件上告審判決)
(3) 非現業地方公務員の争議行為禁止規定を定めた地方公務員法37条1項につき最高裁大法廷昭和44年4月2日判決(都教組事件上告審判決)
3 第三段階の最高裁判決

    争議行為禁止規定の解釈適用につき限定を付さないで合憲の結論を導きました。
(1) 現業国家公務員の争議行為禁止規定を定めた公労法17条1項につき最高裁大法廷昭和52年5月4日判決(名古屋中郵事件上告審判決)
(2) 非現業国家公務員の争議行為禁止規定を定めた国家公務員法98条5項(現在の国家公務員法98条2項)につき最高裁大法廷昭和48年4月25日判決(全農林警職法事件上告審判決)
(3) 現業地方公務員の争議行為禁止規定を定めた地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和27年7月31日法律第289号(略称は「地公労法」です。)11条1項につき最高裁昭和63年12月8日判決
(4) 非現業地方公務員の争議行為禁止規定を定めた地方公務員法37条1項につき最高裁大法廷昭和51年5月21日判決(岩手教組学テ事件上告審判決)
(5) 単純労務職員の争議行為禁止規定を定めた地公労法付則4項・同法11条1項につき最高裁昭和63年12月9日判決
4 その後の最高裁判決
    昭和56年度の人事院勧告の一部が凍結され,昭和57年度の人事院勧告は完全に凍結されたといった事実関係があったとしても,国家公務員の労働基本権の制約に対する代償措置がその本来の機能を果たしていないとはいえません(最高裁平成12年3月17日判決(全農林人勧スト事件上告審判決))。

第14 平賀書簡事件につながった長沼ナイキ基地訴訟の結末
1(1) 長沼ナイキ訴訟自体は,最高裁昭和57年9月9日判決において,ナイキ基地の建設に対する反対住民(「自衛隊は違憲,保安林解除は違法」等と主張していました。)が代替施設の設置によって保安林解除処分取消訴訟の原告適格を失ったと判断されたため,自衛隊の合憲性については判断されませんでした。
(2)   控訴審である札幌高裁昭和51年8月5日判決は,「結局自衛隊の存在等が憲法第九条に適反するか否かの問題は、統治行為に関する判断であり、国会及び内閣の政治行為として窮極的には国民全体の政治的批判に委ねらるべきものであり、これを裁判所が判断すべきものではないと解すべきである。」と判断しました(判決書PDF23頁)。
2 ナイキは,1953年にアメリカのウエスタン・エレクトリック・カンパニー等で開発された高々度迎撃用地対空ミサイルのことであり,ナイキ基地訴訟では,地対空誘導弾ナイキJの導入の是非が争われました。


第15 青年法律家協会裁判官部会の消滅
1 「キャリア裁判官を考える」判例時報1707号(平成12年6月11日号)8頁には以下の記載があります(報告者は25期の小林克美裁判官)。
     特に私が関与していた青年法律家協会(青法協)裁判官部会と裁判官懇話会について少しお話します。青法協裁判官部会は、青法協司法修習生部会のメンバーが新任判事補として裁判官になってくることによって新人が補給されていたのですが、青法協に加入したままでは裁判官に任官させないという当局の方針が貫徹されたものですから、結局、青法協裁判官部会は新人の供給源を絶たれて会員数が漸減し、昭和五八年にはその幕を下ろさざるを得なくなったのです。
2 13期の守屋克彦裁判官が著した「守柔 現代の護民官を志して」(日本評論社)155頁には以下の記載があります。
     最高裁が長年、「公正らしさ」論を口実に、青法協の会員と目される裁判官志望者の新任拒否を繰り返したために、新しい会員の増加が見込めなくなり、しかも、会員にとどまっている者については、任地・補職の上で、支部勤務や家裁勤務など本人の希望に反した人事と思われる事態が常態化するようになっていき、裁判官を辞めていく会員も出てきました。そして、そのような現象にたまりかねた若手の会員裁判官から、なんとかまともに裁判に取り組める場がほしいという希望が出て、青法協裁判官部会は、昭和五九年(一九八四)年一月二三日に青法協本部に分離独立の通知を出して、如月会という名称で再編するということになりました。全国裁判官懇話会という別の形の運動が定着してきていて、そちらにエネルギーをさきたいという面もありましたが、やはり、青法協裁判官部会に関しては、長い間のボディブローで、ついに力尽きたという感じでしたね。裁判官部会が多数決で態度決定したのは、このときだけです。この手続については、私が「青年法律家協会裁判官部会の消滅」(東京経済大学「現代法学」第九号一三一頁以下、二〇〇五年)という形でまとめています。それが、全体の意思決定を多数決で行った最初で最後になりました。

第16 全国裁判官懇話会
1 総論
(1) 宮本判事補再任拒否事件を契機として,昭和46年10月2日,東京で,全国の現職裁判官約210名による全国裁判官懇話会が開催されました。
(2) 全国裁判官懇話会は,最高裁判所事務総局から,お前らは徒党を組み外部と結託して事を構えるのだろうという批判を加えられることがないように,裁判官だけが自分らで考える会だということで運営されました。
(3) 昭和53年に開催された第7回全国裁判官懇話会「司法の使命と裁判官」からは,全体会のほか,民事・刑事・家事・少年の各分科会が開催され,それぞれの分野についての実務上の諸問題について意見交換などが行われており,その内容は,判例時報に発表されていました。
(4) 最後の世話人を務めていた21期の石塚章夫新潟家裁所長が平成21年3月に依願退官し,運営を引き継ぐ若手がいなくなったために活動を終了しました(日本裁判官ネットワークブログの「司法改革の先駆け、全国裁判官懇話会が35年の歴史に幕 」(2007年4月8日付)参照)。
2 全国裁判官懇話会参加者の振り返り
(1) 「キャリア裁判官を考える」判例時報1707号(平成12年6月11日号)8頁及び9頁には以下の記載があります(報告者は25期の小林克美裁判官)。
    特に私が関与していた青年法律家協会(青法協)裁判官部会と裁判官懇話会について少しお話します。
(中略)
それから、裁判官懇話会は、その世話人になったり、レポーターになったり、あるいは各地での研究会を主催すると、裁判所内部では冷たい処遇に遭うというか、平均的な処遇をしてもらえない状況になりました。それが多くの裁判官に肌で感じられる状態であったのです。もちろん最高裁の行う人事は、そのような差別的扱いが明瞭に分かるようなやり方はしません。世話人であってもそれなりの処遇をされる方があり、報告者になってもそれなりの処遇をされる方があるというように、必ずイレギュラーを作ってあるんですけれども、全体としての方向を見ると、不利な処遇が行われていると誰しもが感じるわけですし、先輩裁判官から新人に対して、公然とそれが語られる状態になったのです。懇話会なんかに行ってるとろくなことはない。ああいう集会には行かないほうがいい。そういった秩序が裁判所の中にできてまいりました。裁判官懇話会は、最も多いときでは三〇〇人の裁判官が参加しました。裁判官は簡裁判事を含めて三〇〇〇人に届きませんから、三〇〇人といいますと全体の一割の裁判官が参加して集会をした時期もあるのですが、それが今では一〇〇人を切るという状態になって、だんだんと後退してきております。

(2) 14期の安倍晴彦裁判官が著した犬になれなかった裁判官には以下の記載があります。
(208頁の記載)
     案の定、青法協がなくなれば、裁判官懇話会の番である。この会の中心的な活動家に対するさまざまな攻撃は厳しく、この会の世話人級で、「新たに(こういう事態になった後に)」地・家裁の所長になった裁判官は皆無である。途中で「沈黙し」、転向した裁判官と比べてみても、その処遇の上での違いは歴然としている。もちろん、任地、給与、職務の上での明らかな差別がある。裁判所の中では、何もしないでいてもソコソコやっていけばいけるし、その方が「無難で安全」という意識が徹底されていく。
(224頁の記載)
    どういう風の吹き回しかそのようなこと(山中注:平成5年8月1日に弁護士任官した,14期の田川和幸 元日弁連副会長について任官時から判事1号棒が適用されたことにかんがみ,現職のまま,国を相手として,バックペイと慰謝料請求の訴訟を提起しようかということ)を外部へ向けて言いだした「直後」、私は二号に昇給したのである。
(中略)
    私が一号になったのは一九九八年二月一五日、定年退職の当日で、一日限りの一号であった。それなりの恩恵か、嫌がらせの処置か知らないが、この一日だけの一号昇給という措置を受けている裁判官は、全国裁判官懇話会の世話人その他にも何人かいるようである。
3 全国裁判官懇話会に関する国会答弁
・ 11期の櫻井文夫最高裁判所人事局長は,昭和62年3月24日の衆議院法務委員会において,全国裁判官懇話会の世話人及び青法協元会員の裁判官の場合,地裁支部又は家裁勤務者が判事3号に昇給する在職23年目の4月になっても判事3号に昇給できていないというアンケート結果に基づく質問に対し,以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① ただいま御指摘ありましたように、環元大阪高裁判事が「法と民主主義」(山中注:民主法律家協会が出している雑誌です。)にお書きになったといいますか、講演されたものの記録でございますが、が載っておりまして、そして今読み上げられました毎日新聞の記事は、大体それに基づいて記載されているわけでございます。
    「法と民主主義」の記事は、大体正確に毎日新聞にも載っているものと理解いたしております。
    この毎日新聞には最高裁人事局長としてのコメントも載せてもらっておりますけれども、要するに私たちとしては、結論といたしまして、裁判の内容や思想、信条などによる差別というものは全くないと考えております。

② 三号(山中注;判事3号のこと。)以上への昇給は一律に行われるものではなくて、各人ごとに決まっていくということになりますと、数年の昇給の開きというものは、これは当然出てまいるわけであります。
    それに応じまして、例えば三号から一号までの差と申しますのは、これは相当額の差になりますので、それはあるわけでございます。
③ ただ、先ほど申しましたように、結局それは各人の今までの仕事の実績というもの、あるいは各人の負担している責任の度合いというもの、そういったものを考慮して決められているものでありまして、それはここにありますように、青法協の元会員であった、あるいは全国裁判官懇話会に出席していた、そんなふうなことが原因でなっているものではないわけであります。
    私どもでは、そういう裁判官懇話会の出席者であるとか、青法協の元会員であるとか、そういうものが、一体どなたがそうであるのかというのは、これはごく一部の、例えば雑誌などにその名前を出している方を除いてはわからないわけでありますし、そういう方たちでも上がっている方が当然あるはずでございます。
    それからまた逆に、そういう全国裁判官懇話会には出席していない方、あるいは元青法協会員ではない方でも、やはり上がっていない方があるわけでございます。
    だから、そういう意味で、そのような要素というものが原因になって、そして昇給等の面で開きが出てきているというものではないということを御理解いただきたいと思うわけでございます。

第17 日本裁判官ネットワーク
1 平成10年9月5日に第1回準備会を開催し,平成11年9月18日に設立総会を開催した日本裁判官ネットワークは現在でも活動を続けています。
2 日本裁判官ネットワークの設立趣旨(1999年9月18日付)には以下の記載があります。
    本ネットワークは、開かれた司法の推進と司法機能の充実強化に寄与することを目的とする、現職の裁判官の団体です。
    本ネットワークの性格を一言でいいますと、「司法改革を目指す緩やかで開放的な裁判官団体」、ということができます。ここには、3つの基本要素が入っています。
    第1は、司法改革を指向することです。つまり、本ネットワークは、目的や存在意義を司法改革に置いています。規約では、改革の中身を「開かれた司法」「司法機能の充実強化」としています。これは、司法制度改革審議会の設置に代表される国民的要求に対し、裁判官の側から応えたいというものです。
    第2に、裁判官の自主性、自律性に基礎を置く、結びつきの緩やかな団体であることです。本ネットワークは、独立が保障された裁判官によるグループであり、個々の裁判官の知恵や活力を最大の存立基盤としています。そのため、規約は簡単なもので、メンバー裁判官の意思を拘束する決議・決定を一切行わず、活動への参加、本ネットワークからの脱退を自由とし、義務は会費納入の点だけにしています。もちろん、政治的、労働組合的性格は持ちません。イメージとしては、学会や市民団体に近い存在であります。
    第3に、今後開放的な活動を心がけることです。旧来の裁判官は、とかく裁判所部内に閉じこもりがちであったと考えられます。本ネットワークは、裁判官としての節度と控えめな姿勢は堅持しながらも、司法改革に関する意見の発表、関係機関等との意見交換、国際的裁判官団体との交流等、対外的な活動にも取り組んでいきます。対外的な活動により、様々な反応があろうかと思いますが、それにより私たち自身学ぶことが多いのではないかと考えています。

第18 主要参考書籍(順不同)
1 「恐るべき裁判 付表・左翼裁判官、弁護士、法学者一覧」(昭和44年11月5日発行)
・ 50頁には以下の記載があります。
(山中注:青法協の)修習生に対する活動の始まったのは十二期(昭和三十二年採用)頃からであるが、当時は修習生の数も少く、それほど目立った動きはなかった。ところが十八期(昭和三十八年採用)頃からかなりのものが青法協に参加するようになり、二十一期(昭和四十二年採用)では約五二〇名の中二三〇名が参加するまでになったのである。
・ 62頁ないし93頁に「青年法律家協会主要会員名簿」が載っています。
2 「裁判官も人である 良心と組織の間で」
・ 152頁ないし164頁に平賀書簡事件のことが書いてあります。
3 最高裁物語(上巻)及び最高裁物語(下巻)
・ 下巻92頁ないし97頁に飯守重任鹿児島地家裁所長の思想調査のことが書いてあります。
4 日本の裁判所-司法行政の歴史的研究-
・ 142頁及び143頁に全国裁判官懇話会のことが書いてあります。
5 「守柔 現代の護民官を志して」
・ 102頁ないし104頁に飯守重任鹿児島地家裁所長の機関紙への寄稿のことが書いてあります。

第19 関連記事その他
1 田中耕太郎最高裁判所長官のことば
(1) 法曹時報5巻1号(昭和28年1月発行)に掲載されている「法廷秩序維持問題」(筆者は田中耕太郎最高裁判所長官)には以下の記載があります。
(4頁及び5頁の記載)
    共産主義がある個人について単に思想や良心の問題に止まるか、又は言論出版等によって外部に表現される場合においても、国家社会の危険を将来しない平穏な仕方においてなされ、破壊的様相を呈しないとするならば、それ等は保障の範囲内に置かれるのである。
(中略)
    共産主義者が現在の国家権力に対して向ける組織的な攻撃がとくに裁判所に集中されることは、上述のところからして明白である。共産主義者関係の事件を担当する裁判官は勿論のことその家族と雖も彼等の脅迫にさらされている。我々裁判所関係者は単に国内からばかりでなく、彼等が同志を有する世界の隅々からして脅迫の書面や電報を受け取っている。この種の事件を処理する任を負わされている第一線の裁判官の言語に絶する労苦に対し、部内の同僚は勿論のこと、全法曹及び国民一般も理解と同情と支援と激励とを惜しんではならない。
    私が本稿においてとくに法廷の秩序維持の問題を取り上げた所以のものは、法廷における共産主義者及びその同調者の言動に彼等の本来の立場が最も明白に表現されていること、彼等は現行制度の認めているあらゆる権利や自由を手段として用い、「法廷闘争」を遂行し、以て憲法政治の基礎を破壊しようと努力していることに鑑み、局に当たる裁判官は周到な研究と断固たる決意を以て事態に対処しなければならぬと信ずるからである。
(6頁の記載)
    我が国における法廷の状態は、とくに特定の思想的傾向を帯びた事件又はかかる思想的傾向の者に関する事件の審理について、特別の立法的措置を必要とするにいたった。かような事件についての公開の法廷の情況は誠に遺憾なものがあった。傍聴人や被告人被疑者等の拍手喝采、喧騒、怒号、罵り等は往々裁判長の訴訟指揮を不可能ならしめる程度に達したこと新聞の報道や、もっと具体的には情況の録音によって明瞭である。さらに裁判官の命令や係員の制止を無視して暴力を振い、係員を傷害し建物や施設を破壊するがごとき事態も再三ならず発生するにいたった。しかも法廷のかような状態は、多くの場合に「法廷闘争」として指導され、計画的組織的に準備し遂行されているところから来ているものと推定しても誤りないのである。
(23頁及び24頁の記載)
    (山中注:法廷等の秩序維持のために)採るべき措置の第二は刑法第九十五条の公務執行妨害罪や職務強要罪の規程を活用することである。私はこれ等の規定が従来裁判官、検察官等裁判関係者の職務執行に関しどの位の程度において適用されてきたかを知らないのであるが、恐らくこれ等の規定が眠っているのではないかを疑わしめるのである。しかるに法廷の内外における情況は痛切にこれ等の規定の発動を要求するような状態にある。法廷の内外における計画的な暴行主義を以てする、裁判所の職務執行に対する妨害行為は、正に第一項の構成要件を充足するものと認められる。暴行については疑問の余地は存しない。裁判官やその家族に対し日夜を分たず書面や電報によって繰り返される脅迫ことに「人民政府成立の暁には裁判官自らが絞首刑に処せられるだろう」というごとき脅迫を以て被告人や被害者の無罪や釈放を強要するがごときことは、第一項又は第二項の罪に該当する行為ではなかろうか。
(2) 昭和35年5月25日・26日開催の全国長官・所長会同における田中耕太郎最高裁判所長官訓示(昭和35年6月1日発行の裁判所時報306号1頁及び2頁)には以下の記載があります。
   裁判官に要求されるのは、裁判官倫理の基礎をなす世界観であります。これは裁判官が民主憲法の擁護者としてもつべき世界観であります。もちろん国民は思想、良心、信仰の自由を有しており、したがって無政府主義、ファシズム、共産主義等を信奉することも自由であります。しかし、これらの諸主義が日本国憲法の基本原理である民主主義と相容れないものである以上、もしこれらの諸主義を信奉する裁判官があるとすれば、その裁判官は良心に矛盾を感じないでは使命職責を果たし得ないのであります。裁判官の政治的中立は、憲法に対する絶対的忠誠を当然に前提にして、党派的な行動をしないということであり、憲法政治を破壊しようとする主義や対立に対する中立、寛容を意味するものではないのであります。司法においては、「二つの世界」の対立をゆるしません。そこには憲法という一つの超党派的立場があるのみであります。この点は若い世代の法曹の間に充分に理解していない者もあり得るかと考えてとくに一言した次第であります。
2 昭和42年5月当時,地家裁所長の裁判所広報での投稿につき,裁判官の表現の自由として懲戒まではされなかった事例
(1) 飯守重任鹿児島地家裁所長が,昭和42年4月20日付の鹿児島地家裁の裁判所広報に投稿した記事に関して,横山利秋衆議院議員(日本社会党所属)は,昭和42年5月11日の衆議院法務委員会において以下の発言をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① これを見ますと、「公務員は国民全体の奉仕者である、特定階級の奉仕者であってはならない」、このタイトルはまあまあとしましょう。
② たとえば二の、「公務員に任用されるときの宣誓の意義」「この宣誓書の文言の内容は、公務員の根本的心構えを規定したもので、通り一辺の訓示規定(任意規定)ではない。当然強行規定であることは疑いを容れない。従ってこの心構えがないにも拘らず偽わって宣誓をした場合は、その任命行為には当然無効などの法律問題が生ずるだろう。
    任命当時は宣誓書の要求するところと同じ心構えであった公務員でも、任命後この心構えが変り、一部の奉仕者即ち特定階級だけの排他的奉仕者としての心構えをもつようになった場合には、そのときから公務員としての適格性を欠くに至ったものと認めなければならない。
    このことは行為ないし状況により外部的に判断できるようになった場合に実際上の問題となる。」
③ そうして三に、「階級闘争政党と公務員の地位」、まん中ごろから、「もっとも、国家公務員法第百二条第三項は、公務員が単なる政党員となることを一応原則的に認めてはいるが、その加入政党が特定階級にだけ排他的に奉仕する政綱をもっているものであれば、公務員たる地位とその政党員たる資格とは到底両立しえないだろう。
    ここに排他的と言ったのは、自己の奉仕、支持する階級に対立する階級を敵として、これと平和共存する余地を認めず、その敵階級を暴力をもって掃滅することを政綱とする場合である。つまりこのような意味の階級政党であって、国民政党でありえない場合のことである。
    もしこのような政党に加入した場合、例えば法律に、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党に加入した場合は、公務員としては当然失格として扱われることが規定されていることは注目に値する。」
④ 「四、公務員の適格性の調査と指導監督」、途中省略しまして、「それは、階級的独裁政治と異り、自由な民主主義政治を確保するために公務員には政治的中立性を要求するのである。
    公務員はその心構えをもっていることを任命されたとき宣誓しなければならない。従って任命時に、公務員がそのような心構えをもっていることを調査することは、任命者としての重要な義務であり、見そこなってはならない。任命後も、この心構えをもち続けているか否かを調査することも、管理者としての監督責任の重要な部分である。」
    「日本は世界一の、言論の自由がある国と言われているが、自由国家の民主主義的寛容性によるこの言論の自由を利用して、非自由国家的な各種の破壊活動が常時侵入してきていることを見逃すことはできない。」
⑤ 一番最後に、「終りに一言するが、すべての公務員は、もし別に団体に所属するならば、その所属団体の性格が上記の国民全体の奉仕者たるにふさわしく、一部の奉仕者ではないことを確認したうえ、自覚的に所属関係を継続するものでなければならない。」こうあるのであります。
(2) 岸盛一最高裁判所事務総長は,昭和42年5月11日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 決してその後野放しにしておるわけではございません。これはもう前にも詳しく御説明いたしましたとおりで、よほど慎重な態度をもって臨んでもらいたいということを福岡の高裁長官を通じて十分注意しております。福岡の高裁長官はこのたびかわりましたけれども、前長官からも、また私からも新長官に、こういうことが国会で問題になっておるから、よほど気をつけてもらいたいということを言っております。
     この五月六日に福岡管内の裁判所長会同がありましたとき、その席でもやはりそういうものの執筆はよほど慎重に、あらぬ疑惑を持たせないようにしなければならないというふうに各所長にもいろいろお話し、また本人も十分その点は考えておる、そういうことを言っておりました。
しばらく成り行きを見ることが現在としては適当だろうと思います。

② それは裁判官としてふさわしくないようなものを書くようなことになれば、そういうことはしちゃいけない。これは条文なんかございませんけれど、監督作用に入ると思います。
③ まあ、監督といいますか、命令といいますか、監督作用としてそういうものを書くなということは当然言えると思います。しかし、それは書くなということはできますが、非常にデリケートな問題であります。どこまで一体裁判官の口を封じていいかという問題になりますと……。
④ 裁判官といえども、自由かつてなことを書いていいというわけのものではない。非常に社会に害毒を流すようなものをかりに書いたときには、もちろん禁止どころか、懲戒とか、そういう問題になりますけれども、やはり裁判官といえども、表現の自由は持っております。ただ裁判官の地位にふさわしくないようなことをやってはいかぬという……。
(3) ちなみに,岡口基一裁判官に対する懲戒申立書(平成30年7月24日付)の「申立ての理由」は以下のとおりであり(「懲戒申立書謄本です」参照),最高裁大法廷平成30年10月17日決定により同裁判官は戒告されました。
     被申立人は,裁判官であることを他者から認識できる状態で,ツイッターのアカウントを利用し,平成30年5月17日頃,東京高等裁判所で控訴審判決がされた犬の返還請求に関する民事訴訟についてのインターネット記事及びそのURLを引用しながら,「公園に放置されていた犬を保護し育てていたら,3か月くらい経って,もとの飼い主が名乗り出てきて,「返して下さい。」,「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?3か月も放置しておきながら・・」,「裁判の結果は・・」との投稿をインターネット上に公開して,上記訴訟において犬の所有権が認められた当事者(もとの飼い主)の感情を傷付けたものである。
3 裁判批判に関する国会答弁
・ 3期の勝見嘉美最高裁判所事務総長は,昭和58年3月4日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています。
     一 般の裁判批判の問題でございますが、この点につきましては、国会の司法に対する国政調査とやや質を異にするのではなかろうかというふうに考えます。もちろん言論の自由という問題もございますので、果たして裁判批判というものがどこまで許されてしかるべきか、司法のあり方としてどこまで国民の言論の自由と調整されるべきものか、一概にはお答えできないと思いますが、この点につきましても、国会と裁判所との関係と同様に、あくまでも裁判の独立を害しないというのが基本的理念であろうというふうに私は考えます。
4 「恐るべき裁判 付表・左翼裁判官、弁護士、法学者一覧」で批判されている判決
     「歪められた裁判(奇怪な判決の数々)」(219頁ないし242頁)によれば,以下の判決が列挙されています。
① 経歴詐称は管理職に不適格とするほどの不誠実を示すものではない,という判決(東京地裁昭和42年7月17日判決)
② 思想,心情にかかわることなら人をだましても良い。だまされた方が悪いのだ,という判決(東京高裁昭和43年6月12日判決(控訴審)
③ 戸別訪問を禁止する規定は憲法21条に違反し,無効である,とする判決(妙寺簡裁昭和43年3月12日判決,長野地裁佐久支部昭和44年4月18日判決)
→ 最高裁大法廷昭和44年4月23日判決は戸別訪問は憲法に違反しないと判示しています。
④ デモ行進に歩道を行進せよとの条件をつけることは許されない,とする決定(大阪地裁昭和43年6月14日決定)
→ 大阪市の御堂筋におけるデモ行進に関するものです。
⑤ 外国人(朝鮮総連幹部)の再入国不許可処分を違法とした判決(東京地裁昭和43年10月11日判決。なお,当該判決は東京高裁でも支持されました。)
→ 憲法22条1項の外国移住の自由の中には,海外旅行と帰国のための入国の自由が含まれるし,同項は日本に在留する外国人にも適用されるとのことです。
⑥ 住居侵入罪は従業員の懲戒理由にならない,という判決(東京地裁昭和42年7月17日判決)
⑦ 刑事事件で起訴された公務員に対する休職処分を違法として取り消した判決(東京地裁昭和43年7月20日判決)
5 関連記事

・ 昭和44年7月1日付で特別採用された,東大卒業の23期司法修習生
・ 二回試験不合格時の一般的な取扱い
・ 「品位を辱める行状」があったことを理由とする司法修習生の罷免事例及び再採用
・ 昭和51年の30期前期修習で発生した,女性司法修習生に対する司法研修所裁判教官等の差別発言問題(教官等の弁明が正しいことを前提として厳重注意で終了した事件)

女性判事及び女性判事補の人数及び割合の推移

目次
1 総論
2 女性裁判官の割合等に関する国会答弁
3 女性裁判官の名前が全部書いてある文書等は存在しないこと
4 関連記事その他

1 総論
(1) 内閣府男女共同参画局HP「女性の政策・方針決定参画状況調べ」に掲載されている,毎年度の「女性の政策・方針決定参画状況調べ」の「d.司法 (1)裁判官」によれば,以下のとおりです。
① 女性判事の人数及び割合の推移
令和 4年12月:690人(21.6%)
令和 3年12月:568人(20.8%)
令和 2年12月:537人(19.8%)
令和 元年12月:518人(19.1%)
平成30年12月:502人(18.5%)
平成29年12月:472人(17.4%)
平成28年12月:466人(16.9%)
平成27年12月:442人(16.2%)
平成26年12月:414人(15.5%)
平成26年 4月:384人(14.0%)
平成25年 4月:359人(13.4%)
平成24年 4月:336人(11.8%)
平成23年 4月:313人(11.8%)
平成22年 4月:292人(11.2%)
平成21年 4月:280人(11.0%)
平成20年 4月:271人(10.8%)
平成19年 4月:269人(10.9%)
平成18年 4月:251人(10.3%)
平成17年 4月:234人( 9.8%)
② 女性判事補の人数及び割合の推移
令和 4年12月:239人(35.1%)
令和 3年12月:248人(34.7%)
令和 2年12月:258人(34.5%)
令和 元年12月:269人(34.5%)
平成30年12月:271人(34.8%)
平成29年12月:293人(36.0%)
平成28年12月:289人(36.4%)
平成27年12月:291人(35.6%)
平成26年12月:289人(34.7%)
平成26年 4月:319人(31.9%)
平成25年 4月:311人(31.1%)
平成24年 4月:312人(31.2%)
平成23年 4月:307人(30.7%)
平成22年 4月:304人(30.4%)
平成21年 4月:290人(28.4%)
平成20年 4月:266人(27.0%)
平成19年 4月:230人(24.2%)
平成18年 4月:223人(24.4%)
平成17年 4月:215人(24.4%)
(2) 「d.司法 (1)裁判官」がいうところの「指定職相当以上の判事」は,簡易裁判所判事を除く判事(つまり,判事補等を10年してから就任する判事)と同じ意味です。


2 女性裁判官の割合等に関する国会答弁
(1) 昭和47年5月12日の国会答弁
・ 高輪1期の矢口洪一最高裁判所人事局長は,昭和47年5月12日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 裁判官(山中注:女性の裁判官)といたしましては、現在、本年度四月の採用の方もひっくるめまして五十八名ほどでございます。
② いま申しました五十八名の裁判官の中で、夫婦が裁判官というのが十九組でございます。
    女性だけで申しますと十九人の方が御主人も裁判官であるということになっております。
    現在、御夫婦でお勤めになっております方で、任地の関係で別居せざるを得ないという方は一人もございません。
    現在のところできるだけ、まあ多少御主人に通勤の不便をかける、時間をかけるというようなことはあるようでございますが、一つのところに住んでいただいて別な役所にお勤めをいただくというふうにいたしております。
    ただ、これは佐々木委員もいま御指摘ございましたが、まだまだまあ全般的に全体の裁判官の数の中から見ますと、少ない女性裁判官であり、比較的若いところに裁判官が集まっておりますので、そういった御主人と同居しながら勤務していただくということは可能であるという状況でございます。
    これがある程度たってまいって、それぞれ御主人もまた御夫人の方も一応裁判長でございますとか、高等裁判所の裁判官でございますとかそういうポストにおつきになりますと、いまのようにいつまでも同居可能にできるかどうか、これはそれでまた別途、問題がございますが、現在のところはそういう状況でございます。


(2) 平成27年5月14日の国会答弁
・ 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成27年5月14日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(改行を追加しています。)。
① まず、裁判官でございます。直近の平成二十六年度におきます裁判官に占める女性の比率は二〇・〇%でございます。裁判官の給源として大きい司法修習生からの判事補の採用でございますけれども、それに占める女性の割合は近時約三割で推移しているところでございまして、そういったこともありまして、裁判官の女性比率は高まってきているところでございます。
  それから、裁判官以外の一般職員に占める女性比率は、二十六年度においては三八・九%でございます。手元にございます数字が過去五年間でございますけれども、この五年間三〇%台後半を推移しておりまして、徐々に増えてきておりまして、直近は三八・九%という状況でございます。
② 政府から、第三次男女共同参画基本計画におきまして、裁判官における女性のこれは採用というふうに私どもは理解してございますけれども、について、二〇二〇年には三〇%の目標達成に向けた取組を要請されてきているところでございます。
  採用に関しましては、先ほども申し上げましたとおり、既に約三割で推移してきているところでございまして、この目標の達成についてはおおむね果たしているというところでございます。
  裁判官全体数につきましては現在二割でございますが、若い裁判官の採用数が約三割で推移していることを考えますと、今後、裁判官全体の女性比率は更に高まっていくものというふうに考えているところでございます。
③ 裁判官の採用につきましては、それにふさわしい資質、能力を備えた者を採用するということが何より重要というふうに考えてきておりまして、現在の採用の率が約三割になっているということ、他方で修習生の女性割合がそれを下回る二五%前後にとどまるということを考えますと、クオータ制の採用についてはそういった事情を慎重に検討していく必要があろうかというふうに考えております。


(3) 令和2年4月16日の国会答弁
・ 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,令和2年4月16日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(改行を追加しています。)。
    令和元年十二月一日現在におきます裁判官に占める女性の割合は二二・六%でございます。
    裁判官以外の裁判所職員につきましては、令和元年七月一日現在の数字ということになりますが、裁判所書記官が三五・九%、家庭裁判所調査官、これは家庭裁判所調査官補も含んだ数字でございますが、が五四・四%、裁判所事務官が四三・二%というふうになっております。
    裁判官以外の裁判所職員の令和元年七月一日現在におきます最高裁課長相当職以上に占める女性の割合は一四・三%、下級裁の課長と最高裁の課長補佐相当職に占める女性割合は二八・三%、係長相当職に占める女性割合は四五・五%となっております。


3 女性裁判官の名前が全部書いてある文書等は存在しないこと
(1) 最高裁判所及び下級裁判所ごとの女性裁判官の人数が分かる文書は存在しません(平成28年度(最情)答申第23号(平成28年7月15日答申))。
(2) 71期新任判事補の一人一人の性別が分かる文書として最高裁判所が保有する文書は戸籍謄本だけです(令和元年9月25日付の理由説明書)。
(3) 現職の女性判事及び女性判事補の名前が全部書いてある文書は存在しません(令和元年度(最情)答申第55号(令和元年10月18日答申))。


4 関連記事その他
(1) 愛知県弁護士会HPに「『女性法曹に聞く法曹の魅力』~綿引万里子名古屋高等裁判所長官・赤根智子国際刑事裁判所裁判官・鬼丸かおる元最高裁判所裁判官~」(2019年10月17日付)が載っています。
(2) 裁判所構成法107条は「裁判長ハ婦女児童及相當ナル衣服ヲ着セサル者ヲ法廷ヨリ退カシムルコトヲ得其ノ理由ハ之ヲ訴訟ノ記録ニ記入ス」と定めていました。
(3) 「女性法曹に期待すること」(執筆者は22期の田中由子さいたま家裁所長。平成20年の文書)には,「女性裁判官の集まりに「かすみ会」というのがあります。野田愛子先生(元札幌高裁長官)や故三淵嘉子さん(元横浜家裁所長)といった蒼蒼たる先輩女性裁判官の方々が現役時代に作られた親睦会で、今でも年に一、二回開催されています。」と書いてあります(「日本女性法律家協会70周年のあゆみ~誕生から現在,そして未来へ~」(令和2年6月10日出版)186頁)。
(4)  女性が,男性に妻のあることを知りながら情交関係を結んだとしても,情交の動機が主として男性の詐言を信じたことに原因している場合で,男性側の情交関係を結んだ動機,詐言の内容程度およびその内容についての女性の認識等諸般の事情を斟酌し,女性側における動機に内在する不法の程度に比し,男性側における違法性が著しく大きいものと評価できるときには,貞操等の侵害を理由とする女性の男性に対する慰籍料請求は,許されます(最高裁昭和44年9月26日判決)。
(5) 仙台高裁平成4年9月3日決定(判例秘書に掲載)は,忌避の申立てをされた裁判官の配偶者であってもその忌避の裁判に裁判体の一構成員として関与することが許されるとされた事例です。
(6) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所判事の旧姓使用
・ 裁判所職員の旧姓使用
・ 歴代の女性最高裁判所判事一覧
・ 歴代の女性高裁長官一覧
・ 裁判官の育児休業に関する国会答弁
・ 裁判官の配偶者同行休業,育児休業等に関する国会答弁
・ 日弁連の女性副会長
・ 日弁連の女性理事
・ 昭和51年の30期前期修習で発生した,女性司法修習生に対する司法研修所裁判教官等の差別発言問題(教官等の弁明が正しいことを前提として厳重注意で終了した事件)
・ 53期司法修習まで存在していたかもしれない,新任検事の採用における女性枠

裁判官ハンドブック(令和3年3月の最高裁判所事務総局の文書)
からの抜粋です。



裁判所時報マニュアル(平成31年4月に開示されたもの)

目次
第1 裁判所時報マニュアル
第2 令和4年1月1日以降の裁判所時報
第3 関連記事その他

第1 裁判所時報マニュアル

・ 平成31年4月に開示された裁判所時報マニュアルは以下のとおりです(「裁判所時報編集マニュアル(平成27年9月9日)」の更新版と思います。)。

(裁判所時報)
1 体裁: 2段横組,題字も横書き
編集は偶数頁で,空白部分が生じないようにし,製本は中綴じとする。
行間調整をしたうえで空白が生じる場合には,「裁判所だより」を掲載して調整する。

2 活字等
① 書体:「リュウミン」体
② 文字の大きさ等;基本文字は12. 5級原則として27字57行2段組
1頁目は題字部分が7行分使用する。
空白部分を作らず,偶数頁とするため,原稿の量によって行数を調節する。

3 柱,頁数等
① 柱には「裁判所時報」「平成○年○月○日」「第○号(ゴシック体)」「頁(ゴシック体) 」を入れる。
② ノンブルには,当該年度の通し頁(ゴシック体)を入れる。
③ 最終頁下余白に発行元の住所・連絡先を表示する。
④ ゲラには,法務省分の裁判所時報に載る文言が印刷されている(1頁余白及び最終頁余白)が,裁判所納品分には載らない。

4 横組み・縦組み
原則は横組み
法律,政令,告示,規則,規程は縦組みで,後方頁からの編集となる。
縦組み頁が複数頁になる場合には,縦組み頁の頁数を(1) (2)として下部余白中央に付ける。

5 使用用紙
再生クリーム上質紙A版36.5kg

6 掲載の順序
① 新年のことば
② 裁判例
③ 最高裁判所判例要旨
④ 最高裁判所裁判例要旨
⑤ 最高裁判所通達・通知
⑥ 資料
(ア)法律等 (イ)予算(案)の概要・予算(案)施設主要案件 ウ)統計関係(裁判統計速報・事件の概況)
⑦ 記事
(ア)最高裁判所判事就任・退官記事 (イ)長官所長会同協議結果概要 (ウ)外国法曹人来日 (エ)外国研修員手記 (オ)広報テーマ (カ)叙勲受章者 (キ) 藍綬褒章受章者 (ク)調停委員・補導受託者に対する最高裁判所長官表彰 (ケ)死亡者叙位・叙勲 (コ)人事異動 (サ)各種試験問題 (シ)庁舎の落成・移転 (ス)司法修習生の修習開始・終了 (セ)裁判所だより (ソ)訂正記事(更正決定記事を含む)
(後方ページから(縦組) )
⑧ 規則
⑨ 規程
⑩ 告示
⑪ 記事
(ア)法律案 (イ) 政令
⑫ 幹部職員一覧(横書)
(ア) 長官・所長・事務局長・事務局次長一覧
(イ) 首席書記官・次席書記官一覧
(ウ) 首席家庭裁判所調査官・次席家庭裁判所調査官一覧

7 「裁判例」
(1) 掲載順序
① 民事,刑事の順(それぞれ裁判年月日の古い順)
② 裁判年月日が同一の場合は事件の種類順
民事 上告事件(オ,行ツ)  刑事 上告事件(あ)
上告受理事件(受,行上)   非常上告事件(さ)
特別上告事件(テ,行テ)   再審請求事件(き)
特別抗告事件(ク,行卜)   上告受理申立事件(ゆ)
許可抗告事件(許,行う)   移送許可申立事件(め)
再審事件(ヤ,行ナ)     判決訂正申立事件(み)
民事雑事件(ヤ,行二)    特別抗告事件(し)
費用補償請求事件(ひ)
刑事補償請求事件(も)
訴訟費用免除申立事件(せ)
雑事件(す)
③ 同種の事件にあっては,事件番号の年度の古い順。年度も同じ場合は,事,行政の順で事件番号順
④ 大法廷判決があった場合(裁判例のみ) (決定も含む)
・民事の大法廷判決があった場合
大法廷判決・民事の小法廷判決・刑事の小法廷判決の順
・刑事の大法廷判決があった場合
大法廷判決・刑事の小法廷判決・民事の小法廷判決の順
(2) 編集の留意事項
民口事(ゴシック体)
。××(判示事項) ×(平成○年法律第○号による改正前のもの)×××
口口×××××× (ゴシック体,改正文言等は1ポイント小さい明朝体)
口口件口口名□○○請求事件
最高裁判所平成○年○第○○号
平成○年○月○日
第○小法廷判決, 棄却
口口上ロ告0人□○○
口口被上告人□○
口口原口口審□○高等裁判所
口口口主口口文(ゴシック体)
口本件上告を棄却する。
口上告費用は上告人の負担とする。
口口口理口口由(ゴシック体)
口×××××××××××××××××××××××××××××××
×××
口裁判官○○の補足意見は,次のとおりである。(表示部分のみゴシック体)
口口×××××××××××××××××××××××××××
(裁判長裁判官口○○○○口裁判官口○○口○口裁判官口○○○○口口裁判官口○○○○)
(注意事項)
(ア) 判示事項に1,2の項番号がある場合は,数字の後に1字あける。
(イ) 事件名下の( )の欄で,事件番号が同一年度で2つ以上の場合,判決(決定)の結果が2つ以上の場合は,上下並行に表記する。
(ウ) 「上告人」等の表示のうち,氏名等の表記は,裁判部の指示のとおり氏名が5文字以下の場合は6文字幅(6文字以上はくタ)とする。
※外国人の表記は裁判書どおりとする。
「上告人」または「申立人」が検察官の場合は, 4文字幅とする。
(エ) 上告人等が「X1ほか1名」「Y1外2名」となっている場合は,「X1□ほか1名」「Y1□ほか2名」と表記する。
(オ) 件名・上告人・被上告人等の欄の行末は,1文字あける。
(カ) 主文の前は1文字あき,折り返される場合は,後ろに1文字あける。

8 「最高裁判所判例要旨」「最高裁判所裁判例要旨」
(1) 掲載順序
民事,刑事の順(それぞれ裁判年月日の古い順)
(2) 編集の留意事項(判例要旨の例)
民 事 (ゴシック体)
□□□□□□□□ (1行あき)
○1□××(判示事項)×(平成○年法律第○号による改正前のもの)×××
□□×××××× (ゴシック体,改正文言等は1ポイント小さい明朝体)
平成○年○第○○号
平○・○・○○小判,棄却
民集○巻○号本誌○○号
□1□×××(判例要旨)×(平成○年法律第○号による改正前のもの)××
□□×××××××××××××××××××××××××××× .
□(1, 2につき補足意見がある6 )
刑 事(ゴシック体)
□□□□□□□□ (1行あき)
○××(判示事項)××××××××××××××××××××××××
□×××××× (ゴシック体)
平成○年○第○○号
平○・○・○○小判,棄却
刑集○巻○号本誌○○号
□□×××(判例要旨)××××××××××××××××××××××
□××××××××××××××××××××××××××××
(注意事項)
(ア) 判示事項及び判例要旨に,項番号がある場合は,数字の後に1字あけ,改正前文言がある場合は, 1ポイント小さい明朝体にする。
(イ) 判示事項下の( )部分の欄で,事件番号が同一年度で2つ以上の場合,判決(決定)の結果が2つ以上の場合は,上下並行に表記する。
(ウ)  判例要旨後に用語の解説が入る場合は,本文より1ポイント小さい明朝体にする。
(エ) 裁判例要旨も同様に編集する。ただし, 「民集○巻○号」が「裁判集民○号」となる。

9 「人事異動」
(1) 掲載順序
① 発令日の早い順
② 同じ発令日の場合
裁判官の異動・異動(一般職) ・定年退官・任期終了退官・依願退官・定年退職(一般職) ・辞職(一般職)の順
(2) 掲載範囲
裁判官は,同一庁での異動は省略する。一般職については次長,次席の異動以上を掲載する。

(裁判所時報総目次)

1 体裁
平成13年分から2段横組,題字も横書き(創刊号から平成12年分までは,3段縦組)
編集は偶数頁で,空白部分が生じないようにし,製本は中綴じとする。

2 活字等
① 書体: 「リュウミン」体
② 文字の大きさ等;基本文字は12. 5級原則として27字57行2段組
空白部分を作らず,偶数頁とするため,原稿の量によって行数を調節する。

3 柱,頁数等
① 柱には「裁判所時報」
「第○○○○号から
第○○○○号まで」「頁(ゴシック体) 」を入れ
る。
② 最終頁下余白に発行元の住所・連絡先を表示する。
③ ゲラには,法務省分の裁判所時報に載る文言が印刷されている(1頁余白及び最終頁余白)が,裁判所納品分には載らない。

4 「裁判例」
(1) 掲載順序
(ア) 裁判例〔判例要旨〕(民事・刑事に分けて掲載)
(イ) 裁判例〔裁判例要旨〕(民事のみ)
(ウ) 裁判例
*掲載順は,毎号と同じ(大法廷判例も日付順組み込む。)
*(ウ)は,時報例の要旨を記載する。
(2) 編集の留意事項(判例要旨の例)
毎号の各要旨と同じ
民 事
◎1□××(判示事項)×(平成○年法律第○号による改正前のもの)×××
□□×××××× (ゴシック体,改正文言等は1ポイント小さい明朝体)
(平成○年(○)第○○号平○・○・○○小判,破棄自判民集○巻○号) (数字は半角)
・ ・・・16○○○○→判例掲載号・頁
〔1-6○○○○〕→要旨掲載号・頁

5①「最高裁判所規則」「最高裁判所規程」
発出年・号,規則・規程名を記載して()に公布日(発出日) ・施行日を記載する。
平○○ ○号××××××××××××××××規則等の一部を改正
する規則
(平成○○・○・○○公布同年○・○施行) ・・16○○○○
②「最高裁判所通達・通知」
通達・通知別に発出局課別に記載する。
通達
(総務局)
。「×××××××××××」の一部改正について
(平成○○・○・○総一第○○号)   ・ ・・・16○○○○

6 「資料」
① 法律関係
法律及び政令等
② その他
予算(案)及び統計関係記事

7 「記事」
① 広報テーマ
② 表彰関係
(あ) 叙勲・褒章 (い)最高裁長官表彰 (う) 高齢者叙勲 (え)叙位・叙勲(死亡者) (お) 遺族追賞
③ 最高裁判所判事の退官・就任,人事異動
④ 幹部職員一覧
(ア) 長官2所長・事務局長.事務局次長=覧一一一
(イ) 首席書記官・次席書記官一覧
(ウ) 首席家庭裁判所調査官・次席家庭裁判所調査官一覧
⑤ その他
(ア) 司法修習生の修習開始・修習終了
(イ) 司法修習修了者の裁判官任命
(ウ) 各種試験問題
(エ) 国外の司法関係者来日等
⑥ 裁判所だより


第2 令和4年1月1日以降の裁判所時報

(令和4年)
1月1日1月15日2月1日2月15日

第3 関連記事その他

1 (「裁判所時報編集マニュアル(平成27年9月9日)」19頁には以下の記載があります。
※ 裁判所時報は法曹会から一般販売されているが,著作権料は徴収していない。これは,「裁判所時報の内容は,広く,あまねくこれを知らしめる必要がある」との発刊の趣旨からのことと思われる。
2 平成31年4月1日現在,裁判所時報の編集及び刊行に関する事項は,最高裁判所総務局第二課判例法令係が担当しています(最高裁判所事務総局総務局事務分掌(平成31年4月1日現在)参照)。
3 高輪2期の長井澄最高裁判所総務局長は,昭和46年7月24日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 裁判所時報の所管局は、最高裁判所事務総局総務局でございます。
② 裁判所時報の本旨は、御承知のように、裁判例通知、通達——裁判所の日常の動静等を記載いたしまして、部内に一種の官報的な役割りを果たす資料として配付しているものでございます。
    これは私が——最高裁判所事務総局の総務局長が責任者となって発行いたしておるものでございます。
③ 号外につきましては、部内の広報の必要上、それぞれ所管の局から申し出がございました場合に、その所管の局におきまして必要に応じて編集いたしておりますが、この発行につきましては、もちろん官庁の印刷物でございますから、事務総局において責任を負うべきものでございまして、特に発行の責任者、編集の責任者等を掲げますまでもなく、全体として事務総長が責任を負われることは申し上げるまでもないことでございます。
   で、号外の発行はその必要に応じてなされておりますので、たとえば職員組合との団体交渉等の経過等については、所管の、職員組合関係を処理しております人事局において編集いたしまして、発行の申し出があれば、総務局におきましてその印刷、発送、予算的手続等をいたしておるわけでございます。
   このたびの御指摘の六月二十五日付の号外につきましては、事務総局の広報課が担当いたしまして発行いたしたものでございます。
   その最終責任は時報の本紙といささかも変わるところはないわけでございますが、いろいろ御指摘をいただいておりますので、部内の広報、いわゆる広報と従来の裁判所時報そのものの性格の分け方につきましてはなお検討を要するものがあろうかと存じておる次第でございます。
4(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判所時報の組版,校正及び製本等(単価契約)に関する,令和3年8月20日付の請負契約書(受注者は星野製版印刷株式会社)
・ 裁判所時報マニュアル(令和3年11月の開示文書)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 令和4年1月1日以降の裁判所時報
・ 歴代の最高裁判所総務局長
 最高裁判所事務総局総務局の事務分掌

裁判所の所持品検査に関する記事の一覧

裁判所の所持品検査に関する記事として以下のものがあります。

① 裁判所の所持品検査

② 全国の下級裁判所における所持品検査の実施状況

③ 所持品検査の必要性に関する,最高裁判所の財務省に対する説明内容

④ 裁判所の所持品検査に関する国会答弁

⑤ 平成31年3月20日発生の,東京家裁前の殺人事件に関する国会答弁

⑥ 裁判所の庁舎等の管理に関する規程及びその運用

裁判所の所持品検査に関する国会答弁

0 ナンバリング及び改行を追加して,国会答弁を掲載しています。

 平成30年11月22日の参議院法務委員会における答弁
(1) 42期の村田斉志最高裁判所総務局長の答弁
① 入庁時のゲート式による所持品検査につきましては今委員から御指摘のあったとおりでございますけれども、それ以外にも法廷警備という形での警備にも努めておるところでございまして、これは事案に応じて裁判体が適切な判断をしているものと承知をしております。
一般的には、具体的な警備の方策を検討する際には、裁判の公平ということについても意識をしながら検討されるものと考えられます。
② なお、御指摘の中で、警備を行うことが裁判の公開の関係からも問題があり得るかという点ですけれども、傍聴席にいる方に危害が加えられるようなことになりますと、これは裁判の公開という理念を脅かすということにもなりかねませんので、裁判の公開を確保するためにも法廷の安全確保が必要であると考えております。
③ また、法曹三者あるいは関係者との合意形成といった点についての御指摘ございましたけれども、裁判所での安全を確保するというのは、これは裁判所の責任で行うべきものでございますので、事案に応じて裁判体が判断するということになりますので、法曹三者等と合意をしなければ実施ができないというものではないと考えておりますけれども、裁判所がこの責任を果たすためには、関係者の御意見をちゃんと踏まえて、その上で実施するか否かを検討しているということになろうかと思います。
④ それからまた、
最初に御指摘のあった入庁時の一般的な所持品検査については、弁護士会あるいは検察庁に対しても事前に丁寧な説明を行った上で実施に至っているものというふうに承知をしております。
(2) 42期の笠井之彦最高裁判所経理局長の答弁
① 裁判所を安全、安心な形で利用していただくということ、そのために庁舎内の安全を確保すること、これは裁判所の重要な責務の一つであるというふうに考えているところでございます。
先ほど委員から御指摘がありました金属探知機を用いた所持品検査、それにつきまして、入庁時に行うというものもございますし、それ以外に、各庁の実情に応じて法廷入廷時の所持品検査、こういったものにつきましても、外注警備員によるスポット的な対応を行うなどして体制を整えているところでございます。
② 今後でございますけれども、このような予算を確保していくということ、これ自体は非常に重要なことであるというふうに考えておりますので、裁判所としても、引き続き必要な予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
(3) 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長の答弁
① 法廷警備員の警備業務に関する研修につきましては、各裁判所の実情に応じて行われているところでございます。
例えば、東京地裁におきましては、法廷警備員の採用時に約半年間にわたって警備技術の教育を行っておりますほか、所持品検査の基本的動作等をまとめたDVDを整備しておりまして、このDVDについては、研修等での利用を希望する他の裁判所にも送付をして、警備に関する知識、技能の共有を図っているところでございます。
② また、警備に関するマニュアルを整備したり、あるいは県警の職員を講師に招いて警備に関する講義を実施している裁判所もございまして、こうした取組により、法廷警備員に必要な知識、技能の習得が図られているものと認識しております。
③ 今後とも、昨今の裁判所における加害行為の状況を踏まえつつ、各裁判所の実情に応じて、法廷警備員が必要な法廷警備に関する知識、技能の習得を図れるように取り組んでまいりたいと考えております。

2 平成31年4月9日の参議院法務委員会における答弁
(1) 42期の笠井之彦最高裁判所経理局長の答弁
① 常時入庁時の所持品検査を実施するか否かにつきましては、一般的に、取扱事件数、来庁者の状況など、各庁の実情に応じてその要否を判断しているものと認識しております。
 また、常時入庁時の所持品検査を実施しているか否かにかかわらず、ゲート式金属探知機につきましては、検査対象者数が多く、ハンド式金属探知機を用いて検査を実施していたのでは時間を要する場合に整備しておりまして、現在、地裁本庁五十庁舎、独立庁舎を持つ家庭裁判所本庁十七庁舎及び裁判員裁判を実施している支部十庁舎の合計七十七庁に整備しております。
② なお、その他の庁につきましては、ハンド式金属探知機を各庁の実情に応じて整備しておりまして、各庁においては、これらの機器を活用して、その必要に応じて庁舎出入口あるいは法廷出入口で金属探知機による検査を行ったりするなど、その危険の態様、度合いに応じた警備体制を取っております。
 最高裁判所といたしましては、庁の規模や検査対象者の状況等を踏まえつつ整備の必要性を検討していくことが必要だと考えておりまして、各庁の警備の実情を踏まえながら、必要な体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
(2) 42期の村田斉志最高裁判所総務局長の答弁
① 当事者間で加害行為が行われるおそれがあるような事案につきまして、裁判所内での安全を確保するということは極めて重要というふうに認識をしております。
 裁判所では、一般的には、当事者の申告等により加害行為のおそれがあると把握している事案につきましては、その内容に応じて、当事者にそれぞれお越しいただく時間ですとか、あるいは調停を行う部屋、これらを別々にするといったことをいたしまして、当事者同士が対面しないようにするなどの措置を講じていると承知をしております。
② 最高裁判所といたしましては、このような対策を確実に行っていくことが重要と考えておりまして、今後とも、必要な情報提供を行うなど、各地の裁判所の運用を支援してまいりたいと考えております。

3(1) 平成31年3月20日付の司法行政文書不開示通知書によれば,平成30年11月22日の参議院法務委員会における国会答弁資料のうち,裁判所の所持品検査に関するものは存在しません。
(2) 平成31年4月18日付の理由説明書には,「最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 本件開示申出に係る「国会答弁資料」とは,最高裁判所長官又はその代理者が,国会法72条2項の規定に基づき国会(委員会)に対して出席説明をする際の説明案を記載した書面と解される。
イ 苦情申出人は,平成30年11月22日の参議院法務委員会における国会答弁の内容からすれば,開示対象文書(国会答弁資料)が存在するはずである旨主張しているが,本件においては,司法行政文書として説明案を作成していない。
   したがって,原判断は相当である。
(3) 令和元年10月18日付の答申書には,「委員会の判断の理由」として以下の記載があります(改行を追加しました。)。
   苦情申出人は,特定日の参議院法務委員会における国会答弁の内容及び参議院インターネット審議中継の動画からすれば,最高裁判所において本件開示申出文書を保有している旨主張する。
   しかし, 当委員会において上記法務委員会の会議録を閲読し, 出席者である長官代理者がした説明の内容を確認したところ,その内容を踏まえて検討すれば,議員の質問事項について,裁判所の基本的な見解を概括的に述べたものであり,上記法務委員会に係る国会答弁においては司法行政文書として長官代理者の説明案を作成していないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。
   そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。

所持品検査の必要性に関する,最高裁判所の財務省に対する説明内容

1 最高裁判所が財務省に提出した,平成30年度新しい日本のための優先課題推進枠説明資料1/2及び2/2には以下の記載があります。
① 49頁の記載
(4) ゲート式金属探知機
<要望要旨>
裁判所では,あらゆる事件の審理が行われ,多種多様な事件関係者が自由に出入りすることができるので,当事者や傍聴人等が,法廷内に凶器を持ち込み,事件関係者や傍聴人に危害を加えるという事件が現実に発生している。
こうした事件を未然に防ぐためには,庁舎入口で所持品検査を実施して,刃物や銃器等の凶器を庁舎内に持ち込ませないことが最も効果的であり,効率良く,迅速にセキュリティチェックを実施するために,ゲート式金属探知機を整備する必要がある。
そこで,以下の各庁にゲート式金属探知機を整備する経費を要望する。
(表部分は省略)
② 50頁の記載
(5) エックス線検査装置
<要望要旨>
当事者や傍聴人等により刃物や銃器等の凶器が庁舎内に持ち込まれることを未然に防ぐため,上記(4)のゲート式金属探知機と併せて,手荷物をまとめて迅速に検査できるエックス線検査装置を整備することにより,裁判所のセキュリティチェックが十全化される。
そこで,以下の各庁にエックス線検査装置を整備するための経費を要望する。
(表部分は省略)

③ 106頁の記載
裁判運営のための司法基盤の充実
(1) ゲート式金属探知機
<要望要旨> 
裁判所では,あらゆる事件の審理が行われ,多種多様な事件関係人が自由に出入りすることができるので,当事者や傍聴人等が法廷内に凶器を持ち込み,事件関係者や傍聴人に危害を加えるという事件が現実に発生している。
こうした事件を防ぐためには,入廷前に所持品検査を行い,刃物や銃器等の凶器を持ち込ませないことが効果的であることから,ゲート式金属探知機を使用する必要がある。
とりわけ裁判員裁判においては,一般人である裁判員等が裁判所構内でこうした事件に遭うことがないように必要な機器を整備することは,裁判員制度を実施する裁判所の責務である。
そこで,整備済みのこれらの機器を更新するとともに新規整備に要する経費を要望する。
<整備内訳>
26台(更新6台,新規20台)を地裁本庁及び支部に整備する。
(2) 棒状金属探知機
<要望要旨>
裁判所は,凶器等の持込みが予想される場合に所持品検査を厳格に行う必要があり,ゲート式金属探知機を設置する庁においても,傍聴人等来庁者自身が金属探知機に反応した場合,直ちに触手による身体検査を行うことはトラブルを招くおそれが高く,困難であることから,改めて棒状金属探知機を使用して,それらの発見に努め,警備に万全を期する必要がある。
また,手荷物等の所持品については,所持品の内容物すべてについて開披を求めるのはプライバシー保護の観点から問題であり,時間も要するので,迅速に検査を行うためには棒状金属探知機を使用する必要がある。さらに,短時間かつ少人数を対象とした警備を効率的に行うため,傍聴人等の検査においても,機動性を有する棒状金属探知機を使用する必要がある。
そこで,整備済みの機器を更新するとともに新規整備に要する経費を要望する。
<整備内訳>
80式(1式2本,更新8式,新規72式)を地裁本庁及び支部に整備する。

2 49頁及び50頁では庁舎入口で所持品検査を実施すると書いてあるのに対し,106頁では入廷前に所持品検査を実施すると書いてあります。

3 財務省の理由説明書には以下の記載があります。
諮問庁としての考え方
本件については、財務省(以下「処分庁」という。)に対し、平成31年2月27日付(受付同年3月1日)で「裁判所における所持品検査の必要性について、財務省が作成し、又は取得した文書(平成30年度予算に関するもの)」を開示請求内容とする行政文書開示請求書が提出されたもの。
処分庁において文書探索を行った結果、開示請求内容に該当する文書として、本件対象文書を特定し、平成31年3月27日付で原処分を行ったものである。
この原処分に対して審査請求人より、「裁判所の庁舎入口で一律に所持品検査を行う場合、1箇所当たり年間で数千万円が必要となるところである。そのため、裁判所の庁舎入口で一律に所持品検査を行う必要性を説明する資料として、本件対象文書以外にも対象となる文書が存在する。」旨主張された審査請求があった。
これに対し、「裁判所の庁舎入口で一律に所持品検査を行う必要性を説明」する行政文書があるとすれば、平成30年度分の「概算要求書(裁判所・警察庁・法務省)」及び「概算要求資料(裁判所・警察庁・法務省)」に本件請求に係る文書が編綴されている可能性があると考えられたことから、平成30年度分の「概算要求書(裁判所・警察庁・法務省)」及び「概算要求資料(裁判所・警察庁・法務省)」を対象として実際にその中身を確認する作業を行ったが、請求内容に該当する行政文書の保有は、本件対象文書の他に確認できなかった。
なお、審査請求人からは「裁判所の庁舎入口で一律に所持品検査を行う場合、1箇所当たり年間で数千万円が必要」、「大阪高等。地方・簡易裁判所合同庁舎の場合、所持品検査の費用として平成30年度で1億2199万1038円となっている」とする旨の主張があり、所持品検査は庁舎の管理業務に含まれている可能性があるため、再度の確認作業にあたっては、所持品検査を包含する庁舎の管理業務全体に係る文書についても請求内容に該当する文書の存在がないかという観点から、裁判所の庁舎の維持管理に必要な経費に係る文書も含めて改めて確認作業を実施したが、請求内容に該当する文書は本件対象文書の他に確認できなかった。
上記のことから、原処分は、必要な文書探索を行ったうえで、保有が確認できた本件対象文書の開示決定を行ったものと考える。

4 「裁判所の所持品検査」も参照してください