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1 我が国の裁判官制度に関する,平成12年4月当時の説明
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1 我が国の裁判官制度に関する,平成12年4月当時の説明
・ 司法制度改革審議会HPに載ってある「法曹一元について(参考説明)」(平成12年4月25日付)には以下の記載があります。
第2 わが国の裁判官制度
法曹一元の制度は、一般的に、簡易裁判所の裁判官を除いた下級裁判所の裁判官を対象として議論されていることから、以下では、そのような下級裁判所の裁判官を中心にわが国の裁判官制度の概要を論じる。
(1) 任命手続(資料1~2-2)
判事の資格としては、10年以上法曹又は法律学者としての経験が必要とされており(裁判所法42条1項)、判事補となるためには、司法修習を修了した者、すなわち司法試験に合格して司法修習生に採用され、少なくとも1年6月の修習後に二回試験に合格した者であることを要する(同法43条、66条1項、67条1項)。
いずれも最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命することになっている(憲法80条1項、裁判所法40条1項)。これは、内閣が恣意的に情実によりまたは党派的な人事を行うことによって、司法の独立公正を害する危険を防止するため最高裁判所に推薦権を認めることとし、他方、裁判所内部だけで任命することによる司法の独善化を避けるために、内閣に拒否権を留保する趣旨とされている。具体的な手続としては、最高裁判所が人選を行い、任命すべき裁判官の官ごとに名簿を作成して、内閣に送付する。名簿に掲げる者の指名は、司法行政事務であるから、裁判官会議の議による。内閣は、閣議によって任命を決定する(内閣法4条1項)。
なお、判事補は、原則として一人で裁判をすることができないなどの職権に関する制限があるが(裁判所法27条)、5年以上の法曹としての経験のある者について、判事と同等の権限を有するものとする、いわゆる特例判事補の制度がある(判事補の職権の特例に関する法律 昭和23年)。
(2) 裁判官の地位(報酬、昇給、任期、転勤、服務、身分保障等)
裁判官が、法以外の勢力や権力の影響を受けずに独立の立場で裁判が行えるように、裁判官の独立が保障されている(憲法76条3項、78条、79条6項、80条2項、裁判所法48条参照)。
報酬について、定期に相当額が保障され、減額されないとの保障が定められている(憲法79条6項、80条)。任期については、10年とされているが、再任は妨げないとされている(憲法80条1項、裁判所法40条3項)。転勤については、裁判官は、その意思に反して転所されることはない(裁判所法48条)。裁判官の服務規律としては、「職務専念義務」(裁判所法52条2号、3号等)、「守秘義務」(同法75条2項等)、「積極的政治運動の禁止」(同法52条1号)、「信用失墜行為の禁止」(裁判所法49条等)などがある。その他の身分保障として、憲法上一定の手続で罷免される場合を除いては、その意に反して、免官、転官、転所、停職または報酬の減額を受けないものとされており(裁判所法48条)、罷免される場合としては「心身の故障のために職務を執ることができない」場合及び「公の弾劾によ」る場合に限られる。
(3) 弁護士からの任官(資料4-1、4-2)
ア 昭和63年以前の状況
戦前の昭和13年から15年にかけて、約200人の弁護士が判事、検事に任官した。また、戦後施行された裁判所法では、わが国の判事任命資格について、10年間判事補の職にあった者のみならず、10年以上弁護士、検察官、法律学者としての経験を有する者にも認めているが、現行制度発足当時の昭和23から24年にかけて約100人の弁護士が裁判官に任官した。
しかし、昭和30年代を境に、弁護士からの任官者が減少し、判事は、司法研修所終了後直ちに判事補に採用され、判事補として10年在職した者から任命されるのが通例であり、10年の任期を終えた判事補は、大部分が判事に任命されるのが現実となり、わが国の裁判官任用制度は、その運用の実際においてキャリア・システムであった。
イ いわゆる「弁護士任官制度」の導入
昭和63年3月、最高裁判所は、裁判所として社会の高度化、それに伴う紛争の複雑・多様化に対応するためには、裁判官に多様な経験を有する者がいることが望ましいとして、「判事選考要領」(旧要領)を定めて、経験年数15年以上、年齢55歳未満の弁護士から毎年20名程度の判事を採用する、との方針を打ち出し、平成3年9月には、従来の「判事選考要領」を改正して新しく「裁判官選考要領」(新要領)を定め、「5年以上弁護士の職にあり、裁判官として少なくとも5年程度は勤務しうる者であって、年齢55歳位までのもの」を選考対象とし、日弁連を通じて任官希望者を募ることとなった。初任地は、本人の希望、家族状況、充員状況等を考慮して決定し、その後は、同期の裁判官の例に準じて異動を行う。ただし、15年以上弁護士の職にあった者については、本人の希望により、住居地又はその周辺の裁判所を任地とするものとされている。
なお、これまで、このいわゆる弁護士任官制度で裁判官に任官したのは、平成11年11月1日現在で46人である。
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・ 平成11年11月までの弁護士任官の状況
・ 平成13年2月当時の,弁護士任官に対する最高裁判所の考え方
・ 弁護士任官等に関する協議の取りまとめ(平成13年12月7日付)
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