判事補の外部経験の概要


目次
第1 判事補の外部経験の説明文書
第2 個別の外部経験先(平成26年度の文書参照)
1 訟務検事
2 法務省
3 弁護士
4 行政官庁
5 在外公館
6 法整備支援
7 民間企業研修
8 海外留学
9 その他
第3 判事補の外部経験に関する国会答弁
第4 外部経験から復帰後の異動の方針
第5 関連記事その他

第1 判事補の外部経験の説明書
・ 「判事補の外部経験の説明文書」を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
令和2年度令和3年度令和4年度令和5年度
(平成時代)
平成26年度平成27年度平成28年度
平成29年度平成30年度平成31年度
* 「判事補の外部経験の説明文書(令和4年度)」といったファイル名であり,「新任判事補研修の資料」に掲載している資料からの抜粋です。


第2 個別の外部経験先(平成26年度の文書参照)
1 訟務検事
   訟務事務を担当し,期間は原則として2年であり(本省は原則として2年又は3年),10名程度です。
   勤務場所は,高裁所在地の各法務局訟務部又は法務省訟務局(平成27年4月10日再設置)です。
   出向中の身分は検事です。

2 法務省
   法務行政事務(裁判官としての法律知識,経験を活用して行政事務を行います。)を担当し,期間は原則として2年又は3年であり,10名程度です。
   勤務場所は,法務省(司法法制部,民事局,刑事局,人権擁護局),法務総合研修所(研修部(東京),国際連合研修協力部(東京),国際協力部(大阪))です。
   出向中の身分は検事です。

3 弁護士
   弁護士職務を担当し,期間は原則として2年であり,10名程度です。
   勤務場所は,原則として東京,大阪又は名古屋の法律事務所です。
   出向中の身分は裁判所事務官(弁護士職務従事職員)・弁護士です。

4   行政官庁
(1) 行政官庁研修
ア   行政官庁における行政事務(主として,裁判事務とは直接関連しない行政事務を行います。)を担当し,期間は原則として2年であり,数名程度です。
   勤務場所は,内閣官房(内閣官房副長官補付),金融庁(総務企画局,検査局),総務省(自治行政局,総合通信基盤局),外務省(総合外交政策局,北米局,国際法局),財務省(国際局),厚生労働省(労働基準局),農林水産省(食料産業局),経済産業省(経済産業政策局,通商政策局),国土交通省(鉄道局)です。
   出向中の身分は検事(出向先省庁の事務官に併任)です。
イ 事前研修的な趣旨で,出向前に短期間,最高裁判所事務総局に配置されることがあります。
(2) 公正取引委員会,金融庁,証券取引等監視委員会,公害等調整委員会,中央労働委員会,国税不服審判所
   行政事務(準司法的事務を含む。)(裁判官としての法律知識,経験を活用して事務を行う。)を担当し,期間は原則として2年であり,数名程度です。
   勤務場所は,公正取引委員会事務総局,金融庁,証券取引等監視委員会事務局,公害等調整委員会事務局,中央労働委員会事務局,国税不服審判所(東京,大阪,名古屋)です。
   出向中の身分は,公正取引委員会は審判官(検事に併任),金融庁は金融庁審判官(検事に併任),証券取引等監視委員会は内閣府事務官(検事に併任),公害等調整委員会は総務事務官(検事に併任),中央労働委員会は特別専門官(検事に併任),国税不服審判所は検事(財務事務官(国税審判官)に併任)です。

5   在外公館
(1)   在外公館における外交事務又は領事事務を担当し,期間は原則として約2年であり,若干名です。
   勤務場所は,在アメリカ合衆国日本国大使館,在中国日本国大使館,在ジュネーブ国際機関日本政府代表部,在ストラスブール日本国総領事館,国際連合日本政府代表部です。
   出向中の身分は外務事務官(一等若しくは二等書記官又は領事)であり,判事任命資格に算入されません。
(2) 平成27年の場合,同年秋に外務省研修所において約4ヶ月間,判事補身分で赴任前研修に参加しました。
   その後,派遣までの間,東京又は周辺の裁判所において勤務します。なお,事前研修的な趣旨で,出向前に短期間,最高裁判所事務総局に配置されることがあります。


6   法整備支援
(1)   海外における法整備支援(裁判官としての法律知識,経験を活用して法整備支援を行う。)を担当し,期間は1年又は2年であり,若干名です。
   勤務場所は,ベトナム(ハノイ)又はカンボジア(プノンペン)です。
   出向中の身分は検事(国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律による派遣職員たる検事)であり,独立行政法人国際協力機構(JICA)長期専門家です。
(2) 派遣前に判事補身分で研修に参加します。なお,派遣先に1年間勤務し,帰国後,法務省に1年間勤務する可能性もあります。

7   民間企業研修
   民間企業又は日本銀行における業務を担当し,期間は1年であり,10名程度です。
   勤務場所は,東京,大阪,名古屋,福岡地区所在の民間企業又は日本銀行です。
   出向中の身分は判事補です。

8   海外留学
   海外の大学又は裁判所等における在外研究を担当し,期間は1年又は2年であり,30数名程度です。
   勤務場所は,アメリカ,イギリス,カナダ,オーストラリア,フランス,ドイツ,ベルギーの各国です。
   出向中の身分は判事補です。

9   その他
(1) 立法機関
   立法機関における事務を担当し,期間は原則として2年であり,1名程度です。
   勤務場所は,衆議院法制局です。
   出向中の身分は衆議院法制局参事です。
(2) シンクタンク等における研修
   シンクタンク等における企画・研究業務を担当し,期間は原則として1年であり,1名程度です。
   勤務場所は,一般社団法人日本経済団体連合会21世紀政策研究所です。
   出向中の身分は判事補です。
(3) 預金保険機構
   預金保険機構における業務(裁判官としての法律知識,経験を活用して事務を行います。)を担当し,期間は原則として2年であり,若干名です。
   勤務場所は,預金保険機構(東京)です。
   出向中の身分は預金保険機構職員であり,判事任命資格に算入されません。

第3 判事補の外部経験に関する国会答弁
41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長は,平成27年5月14日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています。
① 判事補の外部経験といたしましては、民間企業等への派遣、弁護士職務経験、海外留学、行政官庁への出向等などを行ってきているところでございます。
概要を申し上げますと、民間企業等は、毎年十五人程度を一年間派遣をしております。
   弁護士職務経験につきましては、毎年十人程度を二年間派遣をしております。
   また、海外留学は、毎年三十五人程度が一年又は二年間の期間派遣をされてきているところでございます。
   さらに、行政官庁等には、毎年三十五人程度が、これは行き先によっても期間、長短がございますが、原則として二年間出向をしております。
   今後もより多くの若手の裁判官がこれらの外部での様々な経験を通じて、幅広い視野あるいは柔軟でバランスの取れた考え方というものを身に付けることができるよう、新たな外部経験先の確保等も含めた充実というものを検討してまいりたいというふうに考えております。

② 民間企業研修の意義あるいは必要性について御理解をいただいております日本経団連加入の企業等の中から、毎年、業種あるいは業態のバランスなども勘案しながら研修先を選定しているというところでございます。
③ 派遣先の企業等との関係で、公平性と申しますか中立性と申しますか、の担保が必要でございますので、そのようなことも配慮して行き先を変えますとか、あるいは、同一の業界の中で不均衡がないようにするとかそういったようなことも検討しているところでございます。

第4 外部経験から復帰後の異動の方針
   以下の記載は,平成27年2月5日及び6日に開催された,最高裁の実務協議会(冬期)の人事局配付資料を丸写ししたものであり,外部経験から復帰した裁判官の転勤パターンが分かります。

外部経験から復帰後の異動の方針について

1 前任地から引き続き地域的異動を伴わずに外部経験をする場合
   当該地の異動条件により異動

2 地域的異動を伴って外部経験をする場合
   外部経験(民間企業研修又はシンクタンク等における研修を除く。)後,希望すれば,引き続き同一地域の裁判所で2年間勤務可能
   同一地域を希望しない場合は,当該地の異動条件により異動

3 例外的に外部経験先コース,地域が希望外となった場合には,復帰後の異動について上記よりも有利に取り扱うことがある。
※ 勤務地別の異動条件(当面,外部経験の実施が予定されている地のうち,異動条件の付されているもの)
東京,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,名古屋,広島,福岡(いずれも「最高裁指定庁」)
※ 留学は地域的異動を伴わないものとして扱う。ただし,留学からの帰国後は,従前の異動条件にかかわらず,「最高裁指定庁」の異動条件が付されたものとして扱う。
※ 地域的異動を伴って民間企業研修又はシンクタンク等における研修をする場合,異動後の配属庁における任期のうち,最初の1年が民間研修,その後が裁判所での勤務となる。
※ 在外公館,法整備支援の海外勤務は派遣地を「東京」とみなす。
※ 「東京・横浜・さいたま・千葉」(各管内を含む。)又は「大阪・京都・神戸」(各管内を含む。)はそれぞれ同一地域とみなす。

第5 関連記事その他
1 「裁判官とは何者か?-その実像と虚像との間から見えるもの-」(講演者は24期の千葉勝美 元最高裁判所判事)には以下の記載があります(リンク先のPDF16頁)。
     マスコミ研修、民間企業、弁護士事務所への派遣研修、法務省等の行政府庁、公害等調整委員会、証券取引等監視委員会、公正等取引委員会等の国の準司法的機関への出向(検事に転官して法曹としての知識経験を生かすもの)、内閣法制局で法案チェック等、在外公館への出向等(大使館へのアタッシェ)は、裁判官の育成と法律家としての公的仕事への貢献という二莵をねらったもの。行政官的センスが身に着く一方、司法官のエートスは保持しており、これがミソ(法理論と行政的思考等を使い分けることができるか、独立心のある態度等が誉められるのか、けなされるのか⁇)。
2 「裁判官は劣化しているのか」(2019年2月23日出版)(著者は46期の岡口基一裁判官)129頁及び130頁には以下の記載があります。
     最近は、「裁判官の世間知らず」を解消するための「判事補の外部経験」とやらで、判事補は、仕事の基礎の基礎を教わるべき一番大事な時期に、2年間も裁判所を離れてしまいます。
     2年間の外部経験から裁判所に戻った判事補は、いきなり単独民事訴訟事件を担当させられて、一人で法廷の壇上に座らされます。そこでは、「わからない、知らない、できない、とは言わせない」という鬼のルールが存在し、判事補といえども、ベテラン裁判官と同様に、誰にも頼らず訴訟を担当し判決を書くことを強いられます。
3 以下の記事も参照してください。
・ 判事補及び検事の弁護士職務経験制度
・ 行政機関等への出向裁判官
・ 裁判官の種類
→ 判事新任のタイミングについても説明しています。
・ 裁判官の民間企業長期研修等の名簿
・ 判事補の海外留学状況


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