平成31年3月20日発生の,東京家裁前の殺人事件に関する国会答弁


目次
第1 平成31年3月22日の衆議院法務委員会における質疑応答
第2 平成31年3月26日の衆議院法務委員会における質疑応答
第3 関連記事その他

第1 平成31年3月22日の衆議院法務委員会における質疑応答
・ 村田最高裁判所長官代理者は,42期の村田斉志最高裁判所総務局長であり,階猛(しなたけし)は平成19年7月29日から衆議院議員をしている人です。

○階委員 国民民主党の階猛です。
(中略)最近の東京家裁前の殺人事件、これはちょうど、三月二十日、私どもが理事懇に入った三時二十分ごろの事件だというんですね。白昼堂々と、堂々とかどうかは知りませんけれども、でも、東京家裁の前ですよ、そこで殺人事件、しかも事件の当事者の間で起きている。とんでもないことだと思っています。
 裁判所として警備面等で反省すべき点はないのかどうか、最高裁、お答えください。
村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 三月二十日午後三時過ぎ、委員御指摘のとおり、東京家庭裁判所におきまして、家事調停事件の当事者が刃物で刺され、病院に搬送された後に死亡するという事件が発生いたしました。
 多くの国民の方が来庁される裁判所におきましてこのような重大な事件が生じたということは極めて深刻な事態であるというふうに受けとめておりまして、亡くなられた被害者の方、またその御遺族の方には心よりお悔やみを申し上げたいというふうに思います。
 東京家庭裁判所におきましては、入庁時に所持品検査を実施していたところではございますけれども、今回の事件の発生状況や経緯につきましては、警察による捜査が進められているところでございまして、裁判所としては、警察の捜査に引き続き可能な協力をするとともに、事実関係の把握に努めまして、それを踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。
 反省すべき点があるかないかというところでございますけれども、裁判所内の安全の確保は極めて重要なことであると認識しております。
 現段階では、事実関係が十分把握できておりませんので、警備面等での不備の有無、こういったことについては十分にお答えができないというところでございまして、今後、事実関係の把握に努めまして、それを踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。
○階委員 これは重大な問題だと思いますよ。法の支配を貫徹するべき裁判所で、力の支配のようなことが行われるということはあってはならないと思います。これは、徹底的に事実を明らかにした上で、この場で反省と再発防止のための見解をしっかり述べてください。これも後日、取り上げます。

第2 平成31年3月26日の衆議院法務委員会における質疑応答
○階委員 最高裁、この間の家庭裁判所での殺人事件について、警備体制に不備があったのではないかという問題意識をお伝えしたと思います。
   不備があったかどうかという前に、事実関係ですね、警備の人員がこれまでどうなってきたのか。同じ質問ですので繰り返しませんが、ファクトだけ、まず教えてください。
○村田最高裁判所長官代理者 まず、警備業務に従事する守衛の減少数でございます。
   前回、平成二十九年から平成三十年にかけての守衛の減少数、十六人とお答えしたんですけれども、これは下級裁の人数でございまして、このほかに最高裁の減少もございましたので、平成二十九年度から平成三十年度にかけての全国の守衛の減少数は十八でございました。このうち、東京地裁、東京家裁管内はいずれも減少なしでございました。
   その上で、委員の御質問であるところの平成二十一年度から平成三十年度にかけての全国の守衛の減少数ですが、下級裁判所で百三十七人、最高裁判所分を含めますと全国で百四十五人の守衛の減少となっております。
   このうち、東京地裁管内を担当する守衛は十一の減少でございまして、東京家裁管内を担当する守衛は六人の減少でございました。(階委員「ちょっと、まだ質問通告されていますよね、ほかの数字もありました」と呼ぶ)
   その場合の外部委託の予算額でございますけれども、守衛の削減分と直接の対応関係がないので、そこだけ切り出せないというのは前回申し上げたとおりでございますが、外部委託費を申し上げますと、平成二十一年度は約七億円でございました。平成三十年度が約十四億円、平成三十一年度が約十五億円となっております。
   東京高裁及び東京地家裁管内の予算額につきましては、平成二十一年度が約一・八億円、平成三十年度が約二・四億円になってございます。
○階委員 今のような数字で、警備業務の人数は定員減少に伴ってかなり減っているということがわかりました。
   その上で、今回の事件に関して、裁判所として警備面等で反省すべき点はないのか、お答えください。
○村田最高裁判所長官代理者 御指摘の件につきまして、亡くなられた被害者と御遺族の方には改めてお悔やみを申し上げます。
   その上で、現段階で把握している事実関係でございますけれども、東京家庭裁判所においては入庁時に所持品検査を実施しているところでございますが、今回の事件は、被害者の方が東京家庭裁判所に来庁した、建物に入ろうとした際に、庁舎の外にいた加害者が走り寄ってきて、所持品検査場より手前、被害者が玄関の中に入ろうか入るまいかという、その玄関入り口付近において加害行為があって、その後、加害者は直ちに建物の外といいますか敷地外に逃走したというふうなところまで、客観的な事実としては確認ができております。
   更に詳細な発生状況、経緯につきましては、なお関係者から事情聴取するなどして、更に詳細な事実関係の把握に努めておりますので、なお、まだちょっと十分に把握できていないところがございまして、警備面等での不備の有無については、きょうの時点ではお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、引き続き警察の捜査に可能な協力をするとともに、さらなる事実関係の把握に努めて、それを踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。
○階委員 今の事実関係だけでも反省すべき点は明らかになっていると思いますよ。
   というのは、入り口のところに入るか入らないか、ドアを通るか通らないかのところで事件が起きたわけでしょう。もう家庭裁判所の敷地内に入っていますよね。皆さんの管理権ですよ。そこで事件が起きたんだから、皆さんに警備の責任はあるでしょう。その警備の責任を果たせなかった、このことについてはどう考えているんですか。
○村田最高裁判所長官代理者 敷地内で発生した事件であるというのは御指摘のとおりでございます。
   ただ、何かあらかじめ手だてを講ずることによってこれが防げたのかどうか、そういう意味で落ち度があったかなかったか、このことについては、詳細な事実関係を把握した上で検討してまいりたいというふうに考えております。
○階委員 私も弁護士なので、家庭裁判所とか何度も入ったことはありますけれども、いつも守衛さんが入り口のところに立っているじゃないですか。あの人たちは何をしていたんですか。
○村田最高裁判所長官代理者 当時立哨をしていた警備員は中にも外にもおったんですけれども、これらの者からの事情は聴取をしております。おりますが、まだそれで十分かどうかというところで、分析の途中でございます。
ですので、そこに何か落ち度があったかなかったか、この辺については、更に詳細を検討して分析してまいりたいと考えております。

○階委員 前回質問して、次、質問しますよと言って、もう四、五日たっているわけですよ。それで何も責任について言えないというのはおかしいでしょう。大体、どういう事件が起きたのか、その重大性を認識しているんですか。とんでもないことですよ。
   法の支配を貫徹すべき裁判所で力の支配が行われた。これは、前回言いましたけれども、あってはならないことなんですよ。そういう重大なことが起きたという問題意識があれば、今のような答弁はないはずです。そんなんじゃ、質疑を続けられませんよ。真面目に答えてください。時間は十分与えたはずですから。お願いします。
○村田最高裁判所長官代理者 当時の目撃状況等、詳細は分析中でございます。いろいろ残っておる証拠等から、先ほど申し上げたような事実経過、加害者が駆け寄り、そして加害行為に及んで逃走するまで約十秒でございました。
   この間、何ができたのか、できることがあったのかなかったのか、これは更に検討してまいりたいというふうに考えております。

○階委員 何のために守衛があそこに立って、いつも見張っているか。私、弁護士バッジがないと入れてもらえないんですよ。あそこを通してもらえないんですよ。そういうことは事細かにチェックしているのに、刃物を持っていた人はフリーパスですか。おかしいでしょう。
   明らかに、私は、警備に問題があった。その背景に人員を減らしたことが影響あったのかどうか、そこはわかりませんけれども、警備体制に問題があったという反省はあってしかるべきではないですか。反省の弁はないんですか。
○村田最高裁判所長官代理者 外におりました守衛、中にもおりました守衛、いずれからも事情聴取をしておりますが、その中で見落としのようなもの、あるいはそもそも体制として不備であったかどうかというのは、もう少し分析をして、評価をさせていただきたいと思います。お時間をいただきたいと思います。
○階委員 全然、皆さんには、裁判所に対する信頼が揺らぐことへの危機感とか、そういうのが感じられないんですよ。もっと危機感を持っていただきたいし、もっと迅速に対応していただきたい。これは何なんですか。人が一人死んでいるんですよ、裁判所の入り口で。とんでもないことが起きていますよ。
   私も、家庭裁判所の前で、多分離婚調停を終えた御夫婦なのか離婚した方なのか、トラブルになっている姿を見たことがありますよ。そういうときに、警備員が、ここは裁判所だからやめてくださいと割って入ってとめた、そういう光景も見たことがあります。今回、刃物を持って走って入ってきた人を、何でとめられないんですか。
ちなみに、その警備員は外部委託なのか、それとももともとの職員なのか、この点は把握していますでしょう。
○村田最高裁判所長官代理者 申しわけございません、警備員の属性については把握しておりません。(階委員「だめだ、そんなんじゃだめだ、質問できないよ、いいかげんですよ」と呼ぶ)
○葉梨委員長 村田局長、現時点ではなかなか調査し切れていないという答弁なんだけれども、早急にちゃんと、大事な事件ですから、やりますということをちゃんと言ってください。
○村田最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、大変重大な結果をもたらした事件であるということは我々としても受けとめておるところでございます。ですので、慎重に検討をさせていただいておるところでございまして、もう少しお時間をいただきまして、分析の後、また御報告させていただきたいというふうに思います。
○階委員 では、しっかりした文書の形で、証拠に基づいて説明をして、そして、反省すべき点があれば反省すべき点もちゃんと記載していただいて、再発防止策もちゃんと記載していただいて、そうしたものがきっちりそろわなければ、裁判所への信頼は回復できないと思いますよ、安全面の信頼は。そこは重々肝に銘じてください。
 時間が無駄になってしまいました。その責任も感じてください。

第3 関連記事その他
1 大阪高裁平成27年1月22日判決(裁判長は30期の森宏司裁判官)は,
   平成19年「5月24日」,兵庫県龍野高校のテニス部の練習中に発生した高校2年生の女子の熱中症事故(当日の最高気温は27度)について,
   兵庫県に対し,「元金だけで」約2億3000万円の支払を命じ,平成27年12月15日に兵庫県の上告が棄却されました(CHRISTIAN TODAY HP「龍野高校・部活で熱中症,当時高2が寝たきりに 兵庫県に2億3千万円賠償命令確定」参照)。
   その結果,兵庫県は,平成27年12月24日,3億3985万5520円を被害者代理人と思われる弁護士の預金口座に支払いました(兵庫県の情報公開文書を見れば分かります。)。
2 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判所の敷地内において加害行為が発生した際の留意点について(平成28年8月23日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
・ 平成31年3月20日に東京家裁で発生した殺人事件に関して東京家裁が作成し,又は取得した文書
3 以下の記事も参照してください。
 裁判所の所持品検査
 全国の下級裁判所における所持品検査の実施状況
・ 平成5年4月27日発生の,東京地裁構内の殺人事件に関する国会答弁
・ 裁判所の庁舎等の管理に関する規程及びその運用


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