法曹一元


目次
第1 首相官邸HPの「法曹一元について(参考説明)」(平成12年4月25日付)
第2 昭和39年の臨時司法制度調査会意見書の記載
第3 平成に入ってからの弁護士会の決議
第4 国会答弁資料の記載
第5 関連記事その他
第1 首相官邸HPの「法曹一元について(参考説明)」(平成12年4月25日付)

・ 首相官邸HPの「法曹一元について(参考説明)」(平成12年4月25日付)には以下の記載があります。
1 明治期から臨時司法制度調査会前まで(資料6-1~6-4)
(1)   明治31年、弁護士植村俊平が国家学会において「将来ハ判事ノ数ヲ減シ新任ノ判事ハ必ラス弁護士ヨリ採用スルコトニ改メタキナリ」との演説がわが国において最初に「法曹一元」を論じたものとされている。

    その後、明治37年には、日本弁護士協会評議員会が、裁判所構成法を改正して、3年以上帝国大学法科の教授をした者及び3年以上弁護士をした者に限り司法官の資格を与えるとする提案をし、明治40年には、日本弁護士協会臨時総会において「司法官ハ総テ弁護士中ヨリ採用スルコト」との決議を行った。当時、弁護士試験と判事及び検事登用試験とは区別されており、判事又は検事となる資格のある者には弁護士資格が認められたが、その逆は認められておらず、判事又は検事に任用されるためには司法官試補としての修習が必要であったが、弁護士にはこれに対応する制度はなかった。さらに、帝国大学の法学部法律学科卒業者に弁護士資格が付与されていた。
(2)   大正12年になり、判事及び検事の登用試験と弁護士試験とは、高等試験司法科の試験に統一されるとともに、官学の特権も廃止された。その後、昭和11年には、司法官試補に対応する弁護士試補の制度が導入され、弁護士となる者についても、修習過程が要求されるようになった。
   その後、法曹一元論に関しては、「裁判というものは、社会の実相について豊富な知識を有する者にして始めて行いうるものであって、英国におけるように、裁判官は弁護士としての豊富な経験を有する者から選任することが理想的な姿である」という趣旨が強く押し出されるようになった。
   昭和13年、弁護士出身の議員提出にかかる法律案として、判事はすべて弁護士として実務に従事した者から任用することを内容とする裁判所構成法改正法律案が第73回帝国議会に提出され、衆議院で可決されて貴族院に送付されたものもあったが、成立に至らなかった。翌年の第74回帝国議会に、再度提出されたが、前年と同様に、衆議院で可決されたものもあったが、成立に至らなかった。
(3)   戦後、昭和20年11月に、司法省に司法制度改正審議会が設置され、判事、検事の任用資格について審議がなされたが、判事、検事の任用資格に付いては概ね現行の制度を維持する旨の案が可決され、判事又は検事に任ぜられるには一定年限弁護士として実務に従事したることを要するものとする旨の案は否決された。その後、昭和21年6月に司法省に設置された臨時司法制度改正準備協議会が設置され、翌7月には内閣に臨時法制調査会、司法省に司法法制審議会が設置され、昭和22年の裁判所法等の成立へとつながっていくが、裁判所法によって司法修習制度が新設され、従来の司法官試補と弁護士試補とは合体した形となって、養成段階である出発点における法曹一元が実現された。また、先にみたとおり、弁護士から裁判官及び検察官の任用も戦後の一時期において、ある程度積極的に推進された。
   ところで、前記のとおり、判事任命資格について法曹として10年以上の経歴を有することを必要とする裁判所法の規定ではあるが、その運用の実際においては、判事補が判事の主要な給源となるに至って事実上キャリアシステムがとられるようになり、そこで、このようないわゆるキャリアシステムに対するものとして、裁判官の給源を在野法曹に求めるべきであるという意義における法曹一元が、特に弁護士会から強い念願として叫ばれることになった。

第2 昭和39年の臨時司法制度調査会意見書の記載
1(1) 昭和39年8月28日付の臨時司法制度調査会意見書には以下の記載があります(首相官邸HPの「臨時司法制度調査会について」参照)
    法曹一元の制度は,それが円滑に実現されるならば,わが国においても一つの望ましい制度である。しかし,この制度が実現されるための基盤となる諸条件は,いまだ整備されていない。したがって,現段階においては,法曹一元の制度の長所を念頭に置きながら現行制度の改善を図るとともに,基盤の培養についても十分の考慮を払うべきである。
(2) 首相官邸HPに,司法制度改革審議会の配布資料としての「臨時司法制度調査会の意見の実施状況」(特に裁判所に関わるものを中心に)「法曹一元について(参考説明)」(平成12年4月25日付)が載っています。
2 昭和40年5月29日の日弁連定期総会決議には以下の記載があるみたいです(昭和42年5月27日の日弁連定期総会決議「司法制度の確立に関する宣言」参照)。
    司法の民主化は、在野法曹年来の主張である。そのために、われわれは強く法曹一元制度の実現を提唱してきた。
    しかるに、臨時司法制度調査会の意見書は、法曹一元が望ましい制度であることを認めながら、その具体的施策は、かえって法曹一元制度への道を阻む方向にある。われわれは、これを甚だ遺憾とする。よって、われわれは、司法の民主化を目指し、決意を新たにして、法曹一元制度の実現に邁進する。

第3 平成に入ってからの弁護士会の決議
1 関東弁護士会連合会は,平成11年9月17日,「法曹一元制度の実現に向け,行動する」という決議を出し,平成12年9月22日,「法曹一元制度と陪審制度の実現を-司法制度改革審議会に望む-」という決議を出しました。
2 日弁連は,平成12年2月18日,法曹一元の実現に向けての提言を出しました。

第4 国会答弁資料の記載
・ 平成28年11月24日の山口和之参議院議員(無所属)の質問に対する国会答弁資料に以下の記載があります。
(法曹一元とは)
・ 「法曹一元」とは,多義的であるものの,一般的には,裁判官及び検察官を主として弁護士の中から任命する制度をいうものと認識。
(法曹一元をめぐる議論)
・ 裁判官及び検察官の任用制度については,国民の求める質の高い裁判官及び検察考えられるようにすることが重要。
・ 司法制度改革審議会において,法曹一元について議論がされたものの,同審議会は,司法を担う高い質の裁判官を安定的に確保する観点から
① 判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませる制度の整備
② 弁護士任官の推進
等,給源の多様化・多元化のための措置等を提言するとともに,検察官についても,検察の厳正・公平性に対する国民の信頼を確保する等の観点から,同様の措置を提言したところ。
・ その後の司法制度改革推進計画においても,①判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませる制度や,検事が一定期間,国民の意識・感覚を学ぶことのできる場所で執務する制度を整備すること,②弁護士任官等を推進すること等が内容とされた。
(制度の整備状況)
・ これを受けて,平成16年には,判事補及び検事の能力及び資質の一層の向上等を図るため,判事補及び検事が一定期間その官を離れ,弁護士となってその職務をする弁護士職務経験制度(注)を創設したところ。
(注)平成16年通常国会(第159回国会)において成立した「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」(平成16年法律第121号)による。平成17年4月1日施行。
(所見)
・ 最高裁判所においては,裁判官についてこれら弁護士職務経験制度や弁護士任官制度を適切に運用されているものと承知。
・ 法務省としても,検察官に関するこれらの制度を適切に運用するとともに,司法制度を所管する省庁として,今後も,国民の期待する広くかつ高い識見を備えた裁判官及び検察官を確保する等の観点から,必要とされる方策を講じてまいりたい。

第5 関連記事その他
1 最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)56頁には以下の記載があります。
    臨司では司法試験改革や裁判所の適正配置問題など、今日法曹界で論議されている司法制度の問題点があらかた取り上げられた。ただ、結果的に日の目を見たものはごく一部だったところから、「裁判所がいいところだけをつまみ食いした」などとの批判もあったが、毎回ほとんど全委員の出席を得て会議の議論は終始真剣そのものだったと思う。

2 東京弁護士会の,法曹一元制度の早期実現を期する決議(1999年12月20日付)には,「民主国家における司法は、主権者たる国民の叡智と良識を反映し、国民から信頼され、国民が納得する制度でなければならない。そして、そのような信頼と納得は、裁判官が権力におもねることなく常に国民の視点と常識を持ち、裁判官の独立が実質的に保障されてこそ、得られるものである。」と書いてあります。
3 東弁リブラ2022年1月・2月号「元最高裁判所判事 木澤克之」には以下の記載があります。
    弁護士は,依頼者と向き合い,いかに主張立証するかを考えたり,一件一件の事件に深く関わってはいますが,キャリア裁判官と比べれば,圧倒的に扱った事件の数は少ない。たとえ事件への関わり方が浅くても数の重みは大きくて,キャリア裁判官には及びません。キャリア裁判官は,ありとあらゆる事案を取り扱ってますからね。
4 以下の記事も参照してください。
 弁護士任官者研究会の資料
 弁護士任官候補者に関する下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申状況
・ 弁護士任官希望者に関する情報収集の実情
 弁護士任官に対する賛成論及び反対論


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