0 ナンバリング及び改行を追加して,国会答弁を掲載しています。
1 平成30年11月22日の参議院法務委員会における答弁
(1) 42期の村田斉志最高裁判所総務局長の答弁
① 入庁時のゲート式による所持品検査につきましては今委員から御指摘のあったとおりでございますけれども、それ以外にも法廷警備という形での警備にも努めておるところでございまして、これは事案に応じて裁判体が適切な判断をしているものと承知をしております。
一般的には、具体的な警備の方策を検討する際には、裁判の公平ということについても意識をしながら検討されるものと考えられます。
② なお、御指摘の中で、警備を行うことが裁判の公開の関係からも問題があり得るかという点ですけれども、傍聴席にいる方に危害が加えられるようなことになりますと、これは裁判の公開という理念を脅かすということにもなりかねませんので、裁判の公開を確保するためにも法廷の安全確保が必要であると考えております。
③ また、法曹三者あるいは関係者との合意形成といった点についての御指摘ございましたけれども、裁判所での安全を確保するというのは、これは裁判所の責任で行うべきものでございますので、事案に応じて裁判体が判断するということになりますので、法曹三者等と合意をしなければ実施ができないというものではないと考えておりますけれども、裁判所がこの責任を果たすためには、関係者の御意見をちゃんと踏まえて、その上で実施するか否かを検討しているということになろうかと思います。
④ それからまた、最初に御指摘のあった入庁時の一般的な所持品検査については、弁護士会あるいは検察庁に対しても事前に丁寧な説明を行った上で実施に至っているものというふうに承知をしております。
(2) 42期の笠井之彦最高裁判所経理局長の答弁
① 裁判所を安全、安心な形で利用していただくということ、そのために庁舎内の安全を確保すること、これは裁判所の重要な責務の一つであるというふうに考えているところでございます。
先ほど委員から御指摘がありました金属探知機を用いた所持品検査、それにつきまして、入庁時に行うというものもございますし、それ以外に、各庁の実情に応じて法廷入廷時の所持品検査、こういったものにつきましても、外注警備員によるスポット的な対応を行うなどして体制を整えているところでございます。
② 今後でございますけれども、このような予算を確保していくということ、これ自体は非常に重要なことであるというふうに考えておりますので、裁判所としても、引き続き必要な予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
(3) 41期の堀田眞哉最高裁判所人事局長の答弁
① 法廷警備員の警備業務に関する研修につきましては、各裁判所の実情に応じて行われているところでございます。
例えば、東京地裁におきましては、法廷警備員の採用時に約半年間にわたって警備技術の教育を行っておりますほか、所持品検査の基本的動作等をまとめたDVDを整備しておりまして、このDVDについては、研修等での利用を希望する他の裁判所にも送付をして、警備に関する知識、技能の共有を図っているところでございます。
② また、警備に関するマニュアルを整備したり、あるいは県警の職員を講師に招いて警備に関する講義を実施している裁判所もございまして、こうした取組により、法廷警備員に必要な知識、技能の習得が図られているものと認識しております。
③ 今後とも、昨今の裁判所における加害行為の状況を踏まえつつ、各裁判所の実情に応じて、法廷警備員が必要な法廷警備に関する知識、技能の習得を図れるように取り組んでまいりたいと考えております。
2 平成31年4月9日の参議院法務委員会における答弁
(1) 42期の笠井之彦最高裁判所経理局長の答弁
① 常時入庁時の所持品検査を実施するか否かにつきましては、一般的に、取扱事件数、来庁者の状況など、各庁の実情に応じてその要否を判断しているものと認識しております。
また、常時入庁時の所持品検査を実施しているか否かにかかわらず、ゲート式金属探知機につきましては、検査対象者数が多く、ハンド式金属探知機を用いて検査を実施していたのでは時間を要する場合に整備しておりまして、現在、地裁本庁五十庁舎、独立庁舎を持つ家庭裁判所本庁十七庁舎及び裁判員裁判を実施している支部十庁舎の合計七十七庁に整備しております。
② なお、その他の庁につきましては、ハンド式金属探知機を各庁の実情に応じて整備しておりまして、各庁においては、これらの機器を活用して、その必要に応じて庁舎出入口あるいは法廷出入口で金属探知機による検査を行ったりするなど、その危険の態様、度合いに応じた警備体制を取っております。
最高裁判所といたしましては、庁の規模や検査対象者の状況等を踏まえつつ整備の必要性を検討していくことが必要だと考えておりまして、各庁の警備の実情を踏まえながら、必要な体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
(2) 42期の村田斉志最高裁判所総務局長の答弁
① 当事者間で加害行為が行われるおそれがあるような事案につきまして、裁判所内での安全を確保するということは極めて重要というふうに認識をしております。
裁判所では、一般的には、当事者の申告等により加害行為のおそれがあると把握している事案につきましては、その内容に応じて、当事者にそれぞれお越しいただく時間ですとか、あるいは調停を行う部屋、これらを別々にするといったことをいたしまして、当事者同士が対面しないようにするなどの措置を講じていると承知をしております。
② 最高裁判所といたしましては、このような対策を確実に行っていくことが重要と考えておりまして、今後とも、必要な情報提供を行うなど、各地の裁判所の運用を支援してまいりたいと考えております。
3(1) 平成31年3月20日付の司法行政文書不開示通知書によれば,平成30年11月22日の参議院法務委員会における国会答弁資料のうち,裁判所の所持品検査に関するものは存在しません。
(2) 平成31年4月18日付の理由説明書には,「最高裁判所の考え方及びその理由」として以下の記載があります。
ア 本件開示申出に係る「国会答弁資料」とは,最高裁判所長官又はその代理者が,国会法72条2項の規定に基づき国会(委員会)に対して出席説明をする際の説明案を記載した書面と解される。
イ 苦情申出人は,平成30年11月22日の参議院法務委員会における国会答弁の内容からすれば,開示対象文書(国会答弁資料)が存在するはずである旨主張しているが,本件においては,司法行政文書として説明案を作成していない。
したがって,原判断は相当である。
(3) 令和元年10月18日付の答申書には,「委員会の判断の理由」として以下の記載があります(改行を追加しました。)。
苦情申出人は,特定日の参議院法務委員会における国会答弁の内容及び参議院インターネット審議中継の動画からすれば,最高裁判所において本件開示申出文書を保有している旨主張する。
しかし, 当委員会において上記法務委員会の会議録を閲読し, 出席者である長官代理者がした説明の内容を確認したところ,その内容を踏まえて検討すれば,議員の質問事項について,裁判所の基本的な見解を概括的に述べたものであり,上記法務委員会に係る国会答弁においては司法行政文書として長官代理者の説明案を作成していないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。
そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。