第1 二回試験の合格者と司法修習の終了者の関係
1 裁判所法67条1項
裁判所法67条1項は,司法修習生が少なくとも1年間修習をした後,試験に合格したときに司法修習を終える旨を定めている。
最高裁判所も,司法修習の最終試験である司法修習生考試に合格して司法修習を終えることにより,判事補,検事又は弁護士となる資格が与えられると説明している。
二回試験の合格と司法修習の終了は法律上結び付いているが,裁判官会議の記録では,合格者名簿と特定の日の終了対象者を示す名簿が別に作成された例がある。
したがって,①名簿の名称が異なること,②特定の終了日時点の対象者が異なること,③後日終了者を含む最終的な人数が異なることは,区別して確認する必要がある。
2 本記事で確認する範囲
本記事は,裁判官会議記録,司法修習生考試委員会資料及び最高裁判所の統計を用い,72期・73期で通常の終了日と後日の終了日が分かれた経緯を整理するものである。
後日終了者を含む最終的な関係については人数を照合しており,合格者名簿と終了者名簿の全氏名を一人ずつ照合したものではない。
第2 72期で終了日が分かれた例
1 通常の二回試験と修習終了
72期二回試験に関する司法修習生考試委員会の配布資料によれば,応試者は1495人であり,不合格者は8人であった。
したがって,合格者は1487人である。
令和元年12月の最高裁判所裁判官会議記録は,二回試験の合格者名簿とは別に「平成30年度(第72期)司法修習生終了者名簿」を用い,その登載者を令和元年12月11日付けの修習終了者としている。
この記載から,合格者名簿をそのまま通常終了日の対象者としたものではないことが分かる。
2 令和元年12月25日の後日終了
同じ裁判官会議記録は,72期司法修習生1人について,令和元年12月25日付けで司法修習を終えることを決定している。
公開された記録には,通常の終了日から遅れた理由は記載されていないため,本記事ではその理由を推測しない。
裁判所データブック2026の「終了者の進路別人数」は,72期の終了者数を1487人としている。
これは二回試験の合格者数1487人と人数上は一致するため,72期は終了日が分かれた例であり,最終的な人数が異なる例ではない。
第3 73期で終了日が分かれた例
1 通常試験の合格者と通常の終了者
73期二回試験に関する司法修習生考試委員会の配布資料によれば,令和2年12月15日の通常試験では1465人が合格し,10人が不合格となった。
新型コロナウイルス感染症への感染が疑われた4人については,再試験を実施することとされた。
令和2年12月の最高裁判所裁判官会議記録は,合格者名簿とは別の「令和元年度(第73期)司法修習生終了者名簿」を用い,その登載者を令和2年12月16日付けの修習終了者としている。
官報公告を転記した73期司法修習の終了者名簿を数えると,通常の終了者は1464人であり,通常試験の合格者より1人少ない。
2 再試験合格者の令和3年1月27日付け終了
令和3年1月の最高裁判所裁判官会議記録によれば,再試験では3人が合格し,1人が不合格となった。
再試験合格者3人は令和3年1月27日付けで司法修習を終え,同日時点の終了者は1467人となった。
3 令和4年1月12日の後日終了と最終人数
令和4年1月12日の最高裁判所裁判官会議記録は,73期司法修習生1人について,同日付けで司法修習を終えることを決定している。
公開された記録には,この後日終了の理由も記載されていない。
73期の人数の推移は,次のとおりである。
通常終了日の対象者と最終的な終了者数を分けると,人数差がどの時点で解消したかが分かる。
| 時点 | 合否又は修習終了の処理 | 人数 |
|---|---|---|
| 令和2年12月15日 | 通常試験の合格者 | 1465人 |
| 令和2年12月16日 | 通常の修習終了者 | 1464人 |
| 令和3年1月27日 | 再試験合格後の修習終了者 | 3人 |
| 令和3年1月27日時点 | 修習終了者の累計 | 1467人 |
| 令和4年1月12日 | 後日の修習終了者 | 1人 |
| 後日終了後 | 修習終了者の累計 | 1468人 |
通常試験の合格者1465人に再試験の合格者3人を加えると,最終的な合格者は1468人となる。
裁判所データブック2026も73期の終了者数を1468人としているため,後日終了後の合格者数と終了者数は人数上は一致する。
第4 74期・75期との比較
1 74期
令和4年4月20日の裁判官会議記録は,74期二回試験合格者名簿の登載者を同日付けの修習終了者としている。
令和4年5月25日の裁判官会議記録も,再試験合格者名簿の登載者を同日付けの修習終了者としている。
2 75期
令和4年12月7日の裁判官会議記録は,75期二回試験合格者名簿の登載者を同日付けの修習終了者としている。
令和5年1月11日の裁判官会議記録も,再試験合格者名簿の登載者を同日付けの修習終了者としている。
74期・75期にも再試験後の修習終了があるが,裁判官会議は通常試験と再試験の各合格者名簿をそのまま終了対象に用いている。
この比較からも,再試験によって終了日が分かれることと,合格者名簿とは別の終了者名簿が作成されることは,同じ問題ではない。
第5 関連記事
1 72期・73期の終了者名簿
①72期司法修習の終了者名簿には,官報公告に基づく氏名を掲載している。
②73期司法修習の終了者名簿には,通常の終了日に修習を終えた者の氏名を掲載している。
2 二回試験と修習日程の資料
①65期以降の二回試験の不合格発表と修習終了・任官の日程(AI作成)は,期別の結果発表後の日程を整理している。
②65期以降の二回試験の日程等及び司法修習等の日程(70期以降の分)は,期別の日程を整理している。
③64期以降の二回試験に関する,合格者及び不合格者の決定に関する議事録及び最高裁判所裁判官会議の議事録には,考試委員会と裁判官会議の資料を掲載している。
第6 出典・参考資料
1 法令
①e-Gov法令検索・裁判所法(67条1項,令和8年8月29日確認)
②最高裁判所・司法修習(令和8年8月29日確認)
2 司法修習生考試委員会資料・裁判官会議記録
①72期二回試験に関する司法修習生考試委員会の配布資料(令和元年12月10日,PDF3頁及びPDF6頁)
②令和元年12月の最高裁判所裁判官会議議事録本文及び付議人事関係事項(PDF5頁~6頁及びPDF15頁~16頁)
③73期二回試験に関する司法修習生考試委員会の配布資料(令和2年12月15日,PDF3頁~4頁及びPDF7頁)
④令和2年12月の最高裁判所裁判官会議議事録本文及び付議人事関係事項(PDF7頁)
⑤令和3年1月の最高裁判所裁判官会議議事録本文及び付議人事関係事項(PDF6頁~7頁)
⑥令和4年1月の最高裁判所裁判官会議議事録本文及び付議人事関係事項(PDF4頁)
⑦令和4年4月,同年5月,令和4年12月及び令和5年1月の最高裁判所裁判官会議記録(順にPDF6頁,PDF11頁,PDF3頁及びPDF3頁)
3 統計・データ
①最高裁判所「裁判所データブック2026」31頁(PDF36頁)「終了者の進路別人数」
②同表は72期の終了者数を1487人,73期の終了者数を1468人とし,数値は修習終了直後の数による旨を注記している。