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最高裁判所事務総局人事局の任用課長及び参事官(AIリライト)

最高裁判所事務総局人事局任用課は,裁判官の指名・補職・人事評価・服務,司法修習生の採用・考試等を所掌する部署である。
本記事では,任用課長の制度上の位置付け,裁判官人事案の作成過程,歴代任用課長,人事局参事官との違い及び平成28年の組織改編前後を,現行規程・最高裁判所の公表資料・歴代裁判官の経歴記事・書籍に基づいて整理する。

第1 任用課長の位置付け

1 人事局任用課の課長であること

最高裁判所事務総局規則5条は,局の課に課長を置き,その課長が上司の命を受けて課の事務を掌理すると定めている。
人事局任用課長は,この「局の課長」に当たり,事務総局に直接置かれる秘書課長又は広報課長とは組織上の位置が異なる。

同規則5条は局の課長を裁判所事務官又は裁判所技官で充てるものとしている。
もっとも,司法行政上の職務に関する規則を含む関係規則により,判事又は判事補を司法行政上の職に充てることができ,少なくとも本記事で確認した歴代任用課長は裁判官である。

2 司法行政の決定機関との関係

裁判所法12条によれば,最高裁判所の司法行政事務は最高裁判所裁判官会議の議によって行われ,最高裁判所長官がこれを総括する。
最高裁判所の組織に関する公式説明も,事務総局を裁判官会議を補佐して最高裁判所の庶務をつかさどる機関と位置付けている。

したがって,任用課長は裁判官人事に関する立案・調整の実務を担う重要な職であるが,任用課長個人が裁判官人事を最終決定する制度ではない。
任用課長の実務上の影響力に関する書籍の評価と,裁判官会議が最終的に決定するという法令上の仕組みは,区別して理解する必要がある。

3 現在の任用課長

下級裁判所裁判官指名諮問委員会第125回議事要旨によれば,令和8年4月10日現在,人事局長は板津正道であり,人事局任用課長は中村修輔である。

第2 任用課の現行職掌

1 現行の分課規程

最高裁判所事務総局分課規程11条は,人事局任用課の所掌事務を次の8項目としている。

①裁判官の指名・補職等に関する事項
②裁判所法45条1項の簡易裁判所判事の選考に関する事項
③裁判官の報酬の決定に関する事項
④裁判官の人事評価に関する事項
⑤裁判官の服務に関する事項
⑥民事調停官・家事調停官・倫理監督官・再就職等監察官及び最高裁判所に設置された各種委員会等の委員等の任免等に関する事項のうち分限・懲戒を除くもの
⑦司法修習生の採用・罷免・考試等に関する事項
⑧司法修習委員会の庶務に関する事項

(1) 裁判官人事に直接関係する事務

裁判官の指名・補職,報酬,人事評価及び服務は,任用課の中核的な所掌である。
「補職」には,下級裁判所の裁判官をどの裁判所のどの職に補するかという人事が含まれる。

(2) 司法修習生等に関係する事務

任用課は裁判官人事だけでなく,司法修習生の採用・罷免・考試等及び司法修習委員会の庶務も担当する。
また,裁判所法45条1項による簡易裁判所判事の選考も任用課の所掌である。

2 人事局内の他部署との分担

現行の分課規程によれば,裁判官以外の裁判所職員の任免・採用試験・給与・人事評価等は主として人事局総務課が担当する。
また,分限・懲戒等及び栄典等は人事局調査課が担当する。

任用課が「裁判官人事に特化した部署」であるとの説明は,平成28年4月1日の組織改編後の基本構造を示すものとして有用である。
ただし,司法修習生,簡易裁判所判事の選考及び一定の委員等の任免も所掌するため,裁判官の異動だけを扱う部署という意味ではない。

3 任用課内の係

最高裁判所事務総局人事局の事務分掌(平成31年4月1日現在)では,任用課内の係を企画係・実施係・試験係に分けている。
企画係は裁判官の指名・補職等の制度及び人事評価等,実施係は任免・補職等の立案・発令,報酬,履歴書及び服務等,試験係は司法修習生及び裁判所法45条1項の選考等を担当していた。

この係別分掌は平成31年4月1日現在の公表文書であり,現行の係名又は細目を示すものとしてではなく,任用課の内部で企画・実施・試験を分担していた時点資料として参照すべきである。

第3 裁判官人事案の作成過程

1 最高裁判所の公式説明

裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況は,高等裁判所管内の異動については主として各高等裁判所が,全国単位の異動については最高裁判所事務総局人事局が原案を立案し,いずれも最高裁判所と各高等裁判所との協議を経て異動計画案を作成すると説明している。

同資料によれば,異動案は,各裁判所が必要とする経験・人数,裁判官本人の任地・担当事務の希望,家庭事情等を考慮して立案される。
承諾が得られた後,最高裁判所裁判官会議の決定を経て発令される。

この公式説明は平成14年当時の状況を説明した資料である。
もっとも,人事局が全国単位の案を立案し,各高等裁判所と協議し,裁判官会議が最終決定するという複数段階の構造を理解するための公的資料である。

2 任用課長経験者による説明

泉徳治は,任用課長在任中,8高等裁判所の事務局長と連絡を取り,裁判官本人の希望及び各裁判所の意見を踏まえて人事案を調整したと説明している(泉徳治・渡辺康行・山元一・新村とわ『一歩前へ出る司法―泉徳治元最高裁判事に聞く』日本評論社,平成29年,53頁~54頁)。

泉は,任用課長の仕事について,自分で自由に決めるというより調整が中心であり,裁量は大きくなかったとの趣旨も述べている。
任用課長経験者本人によるこの説明は,任用課長1人が全国の人事を単独で決めるという理解を修正する重要な資料である。

3 書籍の記述を読む際の注意点

(1) 人事案の調整過程

西川伸一『増補改訂版 裁判官幹部人事の研究』(五月書房新社,令和2年)17頁及び岩瀬達哉『裁判官も人である―良心と組織の狭間で』(講談社,令和2年)107頁~108頁も,高等裁判所側の案,人事局による調整及び上位者の了承という複数段階の過程を説明している。

これらの説明は細部に違いがあるものの,最高裁判所の公式説明及び泉徳治の説明と同様に,人事が任用課長だけで完結するものではないことを示している。

(2) 任用課長の影響力と昇進に関する評価

森炎『司法権力の内幕』(筑摩書房,平成25年)42頁及び46頁は,任用課長の影響力を強く評価し,任用課長経験者の昇進経路にも言及する。
これは著者による制度批評及び当時の評価であり,現行規程上の権限をそのまま説明するものではない。

同書には任用課長経験者の約半数が最高裁判所長官になるとの趣旨の記述があるが,本記事で司法キャリアの完結を確認した任用課長経験者10人のうち,最高裁判所長官に就任した者は1人である。
母数,対象期間及び集計方法が明示されない割合を,現在の歴代一覧にそのまま当てはめることはできない。

第4 裁判官人事の評価資料

1 現行の人事評価制度

裁判官の人事評価に関する規則は,判事・判事補・簡易裁判所判事について毎年人事評価を行い,事件処理能力,組織運営能力及び一般的資質・能力を評価項目とする。
評価権者は裁判官の独立に配慮し,多面的・多角的な情報の把握に努め,裁判官本人から書面の提出を受けて面談する。

裁判官の新しい人事評価制度の概要によれば,評価書には開示及び不服申出の制度がある。
任用課は裁判官の人事評価を所掌するが,個々の評価は所属裁判所の長等が行い,高等裁判所長官が調整・補充する仕組みである。

2 裁判官第一・第二・第三カード

(1) 裁判官第一カード

裁判官第一カードは,新任裁判官の基本的人事記録であり,本務庁の長が任命後速やかに作成して人事局長に提出する。

(2) 裁判官第二カード

裁判官第二カードは,対象裁判官本人が毎年8月1日現在で作成する人事資料であり,健康・家族状況,任地・担当事務等の希望を記載する。
人事局及び各高等裁判所は,個々の第二カードを異動計画案の立案・検討の参考にする。

ただし,第二カードに任地希望が記載されることから,個別の異動理由又は希望が実現しなかった理由まで分かるわけではない。

(3) 裁判官第三カード

裁判官第三カードは,人事評価に際して評価対象裁判官本人が職務状況を記載する書面である。
評価権者が作成する人事評価書とは別の文書であり,両者を同一視すべきではない。

3 人事評価関係文書

関連する原文資料として,次の記事に規則・通達本文又は資料が掲載されている。

裁判官の人事評価に関する規則
裁判官の人事評価に関する規則の運用について
裁判官の人事評価の実施等について
裁判官に関する人事事務の資料の作成等について
裁判官第一・第二・第三カード

第5 歴代の人事局任用課長

1 確認できた歴代任用課長

公開された人事資料及び各裁判官の経歴記事から確認できた歴代任用課長は,次のとおりである。
就任期間の始期又は終期は,前後任の発令日を相互に照合した。

修習期氏名任用課長の在任期間
58期中村修輔令和6年8月9日~現職
55期高田公輝令和3年8月2日~令和6年8月8日
53期馬場俊宏平成29年7月28日~令和3年8月1日
50期板津正道平成27年4月1日~平成29年7月27日
48期前澤達朗平成25年4月11日~平成27年3月31日
47期徳岡治平成22年9月13日~平成25年4月10日
45期門田友昌平成19年4月1日~平成22年9月12日
41期堀田眞哉平成14年4月1日~平成19年3月31日
35期田中昌利平成10年5月6日~平成14年3月31日
30期金井康雄平成5年4月26日~平成10年5月5日
27期山崎敏充昭和62年8月1日~平成5年4月25日
21期金築誠志昭和58年8月1日~昭和62年7月31日
19期堀籠幸男昭和54年8月1日~昭和58年7月31日
15期泉徳治昭和50年8月1日~昭和54年7月31日
11期櫻井文夫昭和45年6月16日~昭和50年7月31日
7期山木寛昭和41年5月25日~昭和45年6月15日
3期草場良八昭和38年6月20日~昭和41年5月24日
高輪2期渡邉忠之昭和33年12月24日~昭和38年6月19日

2 在任期間について特に注意すべき2件

門田友昌の任用課長在任期間の終期は平成22年9月12日であり,徳岡治が翌13日に就任している。
また,金井康雄の就任日は平成5年4月26日であり,4月6日ではない。

第6 任用課長経験者のその後

1 近年の経験者について確認できた役職

現職者の役職は変動するため,確認に用いた公表資料の基準日を併記する。

氏名確認できた役職確認資料の基準日
中村修輔最高裁判所事務総局人事局任用課長令和8年4月10日
高田公輝横浜地方裁判所判事(第5民事部)令和8年5月更新
馬場俊宏最高裁判所事務総局参事官令和7年9月10日
板津正道最高裁判所事務総局人事局長令和8年4月14日
前澤達朗東京高等裁判所判事(第11民事部)令和8年7月13日
徳岡治静岡地方裁判所長令和7年9月8日就任
門田友昌東京高等裁判所判事(第8民事部)令和8年7月13日
堀田眞哉東京高等裁判所長官令和6年9月11日就任

2 司法キャリアが完結した経験者の最終到達職

氏名裁判所における最終到達職
田中昌利知的財産高等裁判所判事
金井康雄札幌高等裁判所長官
山崎敏充最高裁判所判事
金築誠志最高裁判所判事
堀籠幸男最高裁判所判事
泉徳治最高裁判所判事
櫻井文夫東京高等裁判所長官
山木寛京都家庭裁判所長
草場良八最高裁判所長官
渡邉忠之東京高等裁判所第3民事部総括判事

3 到達職の数字から分かる範囲

上表の10人のうち,最高裁判所判事又は最高裁判所長官に就任した者は5人であり,最高裁判所長官に就任した者は1人である。
したがって,上表の完結者に限れば,最高裁判所裁判官への到達割合は50%,最高裁判所長官への到達割合は10%である。

もっとも,対象者が少なく,任用課長の在任時期も昭和33年から平成14年までと幅がある。
この数字だけから,任用課長経験と特定の昇進との因果関係を導くことも,現職者の将来の役職を予測することもできない。

第7 人事局参事官と事務総局参事官

1 2種類の参事官を区別すること

最高裁判所事務総局規則6条の2は,局又は課に参事官を置くことができ,その参事官が重要事項の企画・立案に参画すると定めている。
人事局に置かれる参事官が人事局参事官である。

これに対し,同規則3条の4により,令和6年5月1日から事務総局自体に参事官を置くことができるようになった。
事務総局参事官は,事務総局の重要事項の企画・立案に参画し,関係事務の調整を行う職であり,人事局参事官とは別の職である。

最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿の令和7年9月10日現在分では,人事局参事官は冨田環志であり,事務総局参事官は馬場俊宏である。
肩書に「参事官」とあるだけで,人事局参事官と理解してはならない。

2 確認できた人事局参事官

次の表は,公開された人事資料及び経歴記事から裁判官の就任を確認できた人事局参事官を示す。
同じ時期に複数の参事官が在任した例があるため,在任期間は重なり得る。

修習期氏名人事局参事官の在任期間
60期冨田環志令和6年8月9日~現職
58期中村修輔令和4年8月2日~令和6年8月8日
58期郡司英明令和3年8月2日~令和4年8月1日
55期高田公輝令和2年4月1日~令和3年8月1日
55期長田雅之平成29年7月28日~令和2年3月31日
53期馬場俊宏平成27年4月1日~平成29年7月27日
50期板津正道平成25年4月11日~平成27年3月31日
48期前澤達朗平成22年4月1日~平成25年4月10日
47期徳岡治平成21年4月20日~平成22年9月12日
46期川田宏一平成19年4月1日~平成21年3月31日
45期門田友昌平成17年4月1日~平成19年3月31日
44期河本雅也平成15年4月1日~平成16年7月31日
30期金井康雄平成13年7月1日~平成16年3月31日
34期戸倉三郎平成6年2月20日~平成6年7月31日
34期植村稔平成5年11月1日~平成8年5月31日

この表は公開資料から確認できた範囲を示すものであり,全期間について参事官が常に1人以上存在したことを証明するものではない。

3 参事官から任用課長への就任

門田友昌徳岡治前澤達朗板津正道馬場俊宏高田公輝中村修輔は,いずれも人事局参事官から引き続いて任用課長に就任した。

他方で,河本雅也川田宏一長田雅之郡司英明は,人事局参事官を経験した後に任用課長へ就任していない。
現職の冨田環志については,将来の人事が未確定であるため,この分類に含めるべきではない。

第8 平成28年の組織改編前後

1 人事局総務課の新設

平成28年4月1日,人事局総務課が新設され,従前の給与課が担当していた事項及び任用課が担当していた裁判官以外の職員に関する事項の多くが総務課に整理された。
その結果,任用課の職掌は裁判官・司法修習生等に重点化された。

2 平成31年時点の係別分掌

平成31年4月1日現在の事務分掌では,企画係が制度及び人事評価,実施係が人事案の立案・発令,報酬,履歴書及び服務,試験係が司法修習生及び簡易裁判所判事の選考等を担当していた。
現行の分課規程11条と併せて読むと,規程上の所掌事項が課内でどのように分担されていたかを理解しやすい。

3 職員配置図

次の画像は,令和2年4月1日現在の人事局職員配置図である。

最高裁判所事務総局人事局の職員配置図(令和2年4月1日現在)

次の画像は,組織改編前である平成25年10月1日現在の人事局職員配置図である。
2枚を比較すると,給与課が存在した時期と,総務課新設後の組織の違いを確認できる。

最高裁判所事務総局人事局の職員配置図(平成25年10月1日現在)

第9 出典

1 法令・最高裁判所規則・規程

e-Gov法令検索「裁判所法」
最高裁判所事務総局規則
最高裁判所事務総局分課規程
裁判官の人事評価に関する規則

2 最高裁判所その他の公表資料

最高裁判所の組織
裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況
裁判官の新しい人事評価制度の概要
下級裁判所裁判官指名諮問委員会第125回議事要旨
最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿
最高裁判所事務総局人事局の事務分掌(平成31年4月1日現在)
⑦各歴代任用課長及び人事局参事官の経歴記事

3 書籍

泉徳治・渡辺康行・山元一・新村とわ『一歩前へ出る司法―泉徳治元最高裁判事に聞く』日本評論社,平成29年,53頁~54頁
②西川伸一『増補改訂版 裁判官幹部人事の研究』五月書房新社,令和2年,17頁
③岩瀬達哉『裁判官も人である―良心と組織の狭間で』講談社,令和2年,107頁~108頁
森炎『司法権力の内幕』筑摩書房,平成25年,42頁・46頁