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裁判官第一・第二・第三カードの違い,記載内容と根拠資料(AIリライト)

裁判官第一カード,裁判官第二カード及び裁判官第三カードは,名称は似ているものの,目的,作成者,作成時期及び提出経路が異なる人事資料である。

第一カードは新たに任命された裁判官の基本記録,第二カードは人事異動等の希望を含む定期的な人事資料,第三カードは人事評価に際して本人が提出する職務状況の書面として位置付けられている。

本記事では,平成16年の各通達,裁判所が公表している人事評価制度の資料及び実際の様式に基づき,三つのカードの違いを整理する。

第1 裁判官第一・第二・第三カードの違い

1 三つのカードの比較

資料主な目的作成者作成時期主な提出先
裁判官第一カード新たに任命された裁判官の基本的な人事記録本務庁の長任命後速やかに最高裁判所事務総局人事局長
裁判官第二カード健康・家族状況,任地及び担当事務等の希望を把握するための人事資料対象となる裁判官本人毎年8月1日現在所属・兼務等に応じた経路で最高裁判所事務総局人事局長
裁判官第三カード人事評価に際して職務状況を本人から把握するための書面評価対象となる裁判官本人毎年の人事評価手続で評価権者が指定する期限まで評価権者を経て最高裁判所事務総局人事局長

第一カード及び第二カードの根拠は,「裁判官に関する人事事務の資料の作成等について」(平成16年5月31日付け人任E第623号最高裁判所事務総局人事局長通達)である。

第三カードの根拠は,「裁判官の人事評価の実施等について」(平成16年3月26日付け最高裁人任E第422号最高裁判所事務総局人事局長通達)である。

2 第一・第二カードと第三カードは制度目的が異なる

第一カード及び第二カードは,一般の人事事務に用いる資料である。

これに対し,第三カードは,裁判官の人事評価に関する規則3条3項が定める,担当した職務の状況に関して裁判官本人が提出する書面に対応する。

したがって,第三カードは評価権者が作成する人事評価書そのものではなく,人事評価のために本人が提出する資料である。

第2 裁判官第一カード

1 作成時期,作成者及び提出先

裁判官第一カードは,新たに裁判官に任命された者について,本務庁の長が任命後速やかに1部作成する。

本務庁の長は,記載内容について本人の確認を得た上で,最高裁判所事務総局人事局長へ提出する。

この点で,裁判官本人が毎年作成する第二カード及び第三カードとは異なる。

2 記載内容と写真の交換

第一カードは,写真及び基本的な身上・経歴事項をまとめた人事記録である。

具体的な記載方法については,「裁判官第一カード等の記載要領について」も参照できる。

判事補が判事に任命された場合,判事又は簡易裁判所判事が再任された場合,最高裁判所事務総局等での勤務を終えて本務庁へ復帰した場合等には,第一カードの写真を交換する取扱いである。

裁判官第一カードの様式
裁判官第一カードの様式

第3 裁判官第二カード

1 作成対象と基準日

裁判官第二カードを作成するのは,毎年8月1日現在で在職する裁判官のうち,高等裁判所長官を除く者である。

そのため,「全裁判官が作成する」と説明すると,高等裁判所長官の例外を落とすことになる。

2 記載内容

第二カードには,健康状態,家族状況,他に転任する場合の任地希望,転任希望の時期並びに任地及び担当事務についての特別の希望等を記載する。

平成27年度(最情)答申第8号も,第二カードに任地希望等を記載し,所属する裁判所の長等を経由して最高裁判所事務総局人事局長へ提出する運用を説明している。

第二カードは異動計画案の立案・検討に用いる資料であるが,任地又は担当事務の希望を実現することを約束する文書ではない。

3 意見の記載と提出経路

第二カードの提出経路及び意見を記載する者は,所属庁,兼務の有無,所長・長官であるかどうか,最高裁判所事務総局又は研修所等で勤務しているかどうかによって異なる。

したがって,すべての第二カードについて地裁所長と高裁長官が同じ順序で意見を記載すると一律に説明することはできない。

詳細な経路は,人任E第623号通達の本文及び別表によって確認する必要がある。

4 判事・判事補・簡易裁判所判事の各様式

第二カードには,判事用の別紙様式第2-1,判事補用の別紙様式第2-2及び簡易裁判所判事用の別紙様式第2-3がある。

「別紙様式2-3」ではなく,「別紙様式第2-3」が正式な様式名である。

裁判官第二カードの判事用様式
裁判官第二カード(判事用・別紙様式第2-1)
裁判官第二カードの判事補用様式
裁判官第二カード(判事補用・別紙様式第2-2)
裁判官第二カードの簡易裁判所判事用様式
裁判官第二カード(簡易裁判所判事用・別紙様式第2-3)

令和2年度新任判事補研修の参考資料では,第二カードの説明及び様式を資料2頁~3頁(PDF5頁~6頁)で確認できる。

第4 裁判官第三カード

1 人事評価制度における位置付け

裁判官の新しい人事評価制度の概要によれば,人事評価は毎年1回,8月1日を基準日として,前年8月1日から当年7月31日までの期間を対象に行われる。

評価権者は,人事評価に当たり,裁判官から担当した職務の状況に関する書面の提出を受けるとともに,裁判官と面談する。

裁判官第三カードは,この職務状況に関する書面として用いられる様式である。

人事評価の具体的な運用については,「裁判官の人事評価に関する規則の運用について」を収録した令和5年度新任判事補研修資料(平成16年3月26日付け最高裁人任E第421号最高裁判所事務総長通達)も定めている。

2 記載内容と提出

第三カードには,自己の職務に関する客観的な事実及びそれに関連する状況並びにそれらに対する所感等を記載する。

記載した裁判官は,評価権者が定める期限までに第三カードを評価権者へ提出する。

評価期間中に異動した場合には,異動前の評価権者へ提出した第三カードが異動後の評価権者へ送付される。

評価権者は,人事評価書を最高裁判所事務総局人事局長へ提出する際,第三カードを添付する。

裁判官第三カードの様式
裁判官第三カードの様式

令和2年度新任判事補研修の参考資料では,第三カードの様式を資料33頁(PDF36頁)で確認できる。

第5 カードの記載から分かることと分からないこと

1 第二カードの希望は人事判断の一資料である

平成27年度(最情)答申第8号によれば,最高裁判所事務総局人事局及び各高等裁判所は,各第二カードの記載内容を参考に,異動計画案の原案を立案・検討する。

もっとも,任地希望は人事異動における一つの考慮要素であり,他の要素を含めて個別に検討されると説明されている。

このため,第二カードだけから個別の異動理由又は希望が実現しなかった理由まで読み取ることはできない。

2 希望勤務地を集計した文書は作成されていない

同答申は,異動計画案の検討に際してカード又はその写しを個別に確認すれば足りるため,各項目を集計した文書を作成又は取得していないとする最高裁判所事務総長の説明を妥当とした。

したがって,人事局が個々の第二カードによって任地希望を把握していることと,全国の希望勤務地を取りまとめた集計文書が存在することとは別の問題である。

3 第二カードと第三カードを混同しない

第二カードは異動等の人事事務に用いる資料であり,第三カードは人事評価における職務状況の自己申告書面である。

いずれも毎年作成される資料であるが,第二カードの希望任地欄を第三カードによる人事評価と同一視することはできない。

第6 関連資料・関連記事

1 公開されている様式・研修資料

① 第一カード及び第二カードの通達本文・様式は,「裁判官に関する人事事務の資料の作成等について」で確認できる。

② 第三カードの通達本文・様式は,「裁判官の人事評価の実施等について」で確認できる。

③ 第二カード及び第三カードをまとめて確認する場合は,令和2年度新任判事補研修の参考資料が利用できる。

2 関連記事

① 裁判官の転出に関する約束は,第二カードの任地希望と関連する裁判官の異動条件を扱っている。

② 歴代の最高裁判所人事局長は,各通達の提出先である最高裁判所事務総局人事局の責任者を整理している。

第7 出典

1 公文書・規則

① 最高裁判所事務総局人事局長「裁判官に関する人事事務の資料の作成等について」(平成16年5月31日付け人任E第623号通達,平成24年3月1日改正)1頁~8頁

② 最高裁判所事務総長「裁判官の人事評価に関する規則の運用について」(平成16年3月26日付け最高裁人任E第421号通達)

③ 最高裁判所事務総局人事局長「裁判官の人事評価の実施等について」(平成16年3月26日付け最高裁人任E第422号通達)1頁~8頁

④ 最高裁判所「裁判官の人事評価に関する規則」(平成16年最高裁判所規則第1号)

⑤ 最高裁判所「裁判官の新しい人事評価制度の概要について」(平成16年4月)

⑥ 最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会「平成27年度(最情)答申第8号」(平成28年2月23日)1頁~3頁

⑦ 最高裁判所事務総局人事局「裁判所職員制度の概要-参考資料-」(令和2年度新任判事補研修資料)2頁~3頁及び33頁~37頁

2 文献

① 岩瀬達哉『裁判官も人である―良心と組織の狭間で』(講談社,2020年)100頁~101頁

② 新藤宗幸『司法官僚―裁判所の権力者たち』(岩波書店,2009年)127頁及び157頁

③ 森野俊彦『初心―「市民のための裁判官」として生きる』(日本評論社,2022年)119頁~120頁及び165頁