第1 連名で公布された規則がある
市長と教育委員会の所管にまたがる事務では,同じ文書で規則を制定・改正できるかが問題になる。
四日市市には,市長と教育長の連名で,市規則と教育委員会規則の番号を付して改正規則を公布した例がある。
津山市には,市長部局と教育委員会を含む複数機関の規則等を一つの例規として収録した例がある。
こうした例を検討するときは,公布文の名義と,個々の条項について規則を定める権限を分けて確認する。
それぞれの機関に権限があるか,条例等は誰に何を委ねているか,必要な制定・公布手続を経ているかは,規則ごとに検討する。
第2 市長と教育委員会の規則制定権
地方自治法15条1項によれば,普通地方公共団体の長は,法令に違反しない限り,その権限に属する事務について規則を制定できる。
同法138条の4第2項は,普通地方公共団体の委員会について,法律の定めるところにより,法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限り,その権限に属する事務に関して規則その他の規程を定めることができるとしている。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律15条1項によれば,教育委員会は,法令又は条例に違反しない限り,その権限に属する事務について教育委員会規則を制定できる。
同条2項は,教育委員会規則その他教育委員会の定める規程で公表を要するものの公布に関し必要な事項を,教育委員会規則で定めるとしている。
根拠条文が異なることと,一つの公布文に両機関の名義・規則番号を載せることは,別の問題である。
連名で公布しても,それだけで各機関の所管が広がるわけではない。
条例に施行事項の委任がある場合は,その委任先と,当該事項についての法令上の事務配分を照合する。
第3 四日市市の地区市民センター条例施行規則
四日市市の令和4年3月31日の公布文には,市長と教育長の連名があり,「四日市市規則・四日市市教委規則第1号」の表示がある。
改正の対象は,四日市市地区市民センター条例施行規則の第3号様式及び第4号様式である。
施行規則の沿革でも,この改正を確認できる。
四日市市地区市民センター条例5条は施設の使用許可を教育委員会に,7条・8条は使用料の減免・還付を市長に割り当てている。
同条例14条は,条例の施行に必要な事項を市長及び教育委員会が別に定めるとしており,施行規則1条はその委任を明示している。
連名の公布文を見た後,条例と施行規則を照合することで,使用許可と使用料の減免・還付の権限を読み分けられる。
第4 津山市の職員安全衛生規則
津山市例規集の体系目次は,平成29年3月31日付けの津山市職員安全衛生規則に,市の規則,議会規則,教育委員会規則など8機関の規則等の番号を併記している。
津山市の令和4年度事務報告書は,令和5年3月22日付けの一部改正を8機関による合同公布の欄に載せている。
津山市教育委員会の令和5年3月定例会の会議録にも,8機関による合同規則の改正が1件報告されている。
四日市市の例が市と教育委員会の2者による改正であるのに対し,津山市の例には複数の執行機関等が関わっている。
第5 起案・審査で確認すること
まず,起案する各条項について,規律する事務,決定権を持つ機関,法令又は条例の根拠を対応させる。
次に,各機関が必要な決定を行う方法と,規則番号,公布名義,公布方法を確認する。
内部向けの訓令の例を参照するときは,起案する文書の法形式と,誰に対してどのような効果を持たせるのかも確認する。
同じ目的を達成する場合でも,市規則と教育委員会規則を別に整備する方法があり得る。
例えば,大阪市の平成27年第12回教育委員会会議では,第三者委員会をめぐり,市規則と教育委員会規則を別に定める場合の条文の主語や協議の仕方が検討された。
他の自治体の例を使うときも,自分の自治体の事務配分,委任条項及び公布手続に即して形式を選ぶ。
関連記事の公立図書館は少年の推知報道を載せた雑誌の閲覧を制限できるかでは,条例で定めるべき事項と教育委員会規則の関係を扱っている。
第6 出典
地方自治法(e-Gov法令検索)
地方教育行政の組織及び運営に関する法律(e-Gov法令検索)
四日市市地区市民センター条例施行規則の一部を改正する規則の公布文(令和4年3月31日)
四日市市地区市民センター条例(四日市市例規集)
四日市市地区市民センター条例施行規則(四日市市例規集)
津山市例規集の体系目次
津山市の令和4年度事務報告書
津山市教育委員会会議令和5年3月定例会会議録
大阪市の平成27年第12回教育委員会会議